説明

有害動物撃退装置

【課題】 複数台設置した有害動物撃退装置の一台でも故障したり、電源コンセントが外されたりした場合には、超音波を発信し続けることが困難になり、有害動物の侵入を許していた。
このため定期的な音圧測定を余儀なくされ保守要員が定期的に巡回点検するというコストが発生していた。
更に、有害動物駆除装置の設置は商用電源配線を敷設しなければならず危険性が高いため電気工事士の資格保持者による工事を必要とし設置コストがかかっていた。
【解決手段】 保守コストを下げ、保守サービス向上のために、超音波を発信する超音波発生装置の内部に超音波が正常に発信しているかどうかを検出し、超音波が正常に発信されているかどうかを表示する機能を設けた。
更に、設置作業の安全性向上を図ると同時に設置コストを下げるために、超音波発生装置に供給する電圧を電気工事免許不要となる36V以下にすることより、敷設、設置に対し電気工事士資格所有者による工事を不要にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はネズミ、イタチなどの有害動物が建物内に侵入を防ぐために、大きな音圧の超音波を長期的、継続的に発信し有害動物の侵入を防ぐための有害動物撃退装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を発信し、ネズミなどの有害動物に対する撃退装置は実用化され、撃退の効果をあげている。(例えば特許文献1参照)
この撃退装置に対し、ドアに開閉センサーを設置し開いているときのみ撃退装置を機能させるという技術も存在する。(例えば特許文献2参照)
またネズミの侵入を検出し、ネズミが侵入したときだけ、忌避音を発生する技術もあった。(例えば特許文献3参照)
更に、装置の敷設のときに商用電源である100Vの装置はコスト高になるため、100V配線を不要にする技術も開示されている。(例えば特許文献3参照)
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】 特開平9−322701号 公報
【特許文献2】 特許第2680548号 公報
【特許文献3】 特開2003−250427号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有害動物撃退装置は建物の外に生息しているネズミ、イタチなどの有害動物物が、建物内に進入を防止するために人間の出入り口、自動車の出入り口などに据付けられる。
自動車の出入り口はドアのような場所には進入を防ぐための障壁がなく、有害動物にとっては自由に出入りのできる場所になっているため、有害動物撃退装置が利用されてきた。
このような場所には建物の全ての出入り口に有害動物撃退装置を設置する必要があり一つの建物に多数の有害動物撃退装置が設置されている。
このため、この装置は常時超音波を発信し続ける必要があり、装置の駆動に商用電源である100Vが使われている。
【0005】
ところが、一台でも超音波発信装置が故障したり、電源コンセントが外されたりした場合には、超音波を発信し続けることが困難になり、有害動物の侵入を許してしまうという事態が発生する。
出入り口から建物内に有害動物の侵入を防ぐためには常時超音波を発信し続ける必要があるため定期的な音圧測定を余儀なくされ保守要員が定期的に巡回点検するというコストが発生していた。
【0006】
定期巡回したとしても、定期的な巡回の間に起きた故障に関しては発見が遅くなり、この間に侵入する有害動物の侵入を防ぐことができず、保守業者は十分なサービスを提供することができなかった。
更に、有害動物駆除装置の設置は商用電源配線を敷設しなければならず危険性が高いため電気工事士の資格保持者による工事を必要とし設置コストがかかっていた。
本発明はこの課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、サービス向上及び、コストダウンのために、超音波を発信する超音波発生装置の内部に超音波が正常に発信しているかどうかを検出するための超音波マイクを具備し、常に超音波が正常に発信されているかどうかを監視する機能を設けたものである。
超音波マイクで検出した音圧信号は、正常状態か、異常状態かを判断し、異常の場合は超音波発生装置に具備した表示部に表示することができる。
【0008】
また、一つの制御装置で複数台の超音波発生装置を接続し駆動する方法では、超音波発生装置内に超音波マイクで検出した音圧情報を表示することも可能である。
制御装置に、携帯電話のデータ通信機能を活用した無線通信部を具備することにより、インターネットを介し、管理端末に表示することも可能である。
更に、設置コストを下げるために、超音波発生装置に供給する電圧を電気工事免許不要となる36V以下にすることより、敷設、設置に対し電気工事士資格所有者による工事を不要にした。
【0009】
以下本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1は超音波発生装置1のブロック図である。
この超音波発生装置1の実施例では制御装置2から電源を供給され動作する。
しかしながら、電源コンセントから設置場所が近く、配線に電気工事士不要なときは超音波発生装置内に電源を組み込むことも可能であり、市販の電源アダプタを利用することも可能である。
【0010】
超音波発生装置1は発信器制御部11、駆動部12、超音波スピーカ13、超音波マイク14、増幅部15、表示部17、通信部16で構成されている。
発信制御部11はマイクロコンピュータで構成され、超音波スピーカから発信する信号を出力する。
駆動部12はこの発信制御部11から出力された信号を、超音波スピーカ13を駆動するために必要な信号に増幅する。
超音波スピーカ13は、有害動物を撃退させるために、大音量を必要とする。
このため実施例では超音波スピーカとしてピエゾ効果を用いた圧電セラミックが用いられている。
【0011】
発信はピエゾ効果を用いた圧電セラミックの共振を利用するため、単一周波数で大音量の音波を出すのには適している。
人間の可聴上限が20kHzに対し、ネズミは可聴上限が50kHzとも言われている。
建物の入り口等に設定された超音波スピーカら発信された人間の可聴範囲外の超音波信号を大音量で発信するとネズミはこの音を回避する行動をするため、有害動物を撃退することが可能になる。
【0012】
ところが、商用電源のコンセントが抜かれたり、電源回路が故障したり、超音波スピーカが故障したりしたときには超音波の信号が途絶えてしまう。
建物に侵入を防止するために複数の超音波発生装置を取り付けている場所で、1箇所でもこのような事態が発生したならば、その場所からネズミの侵入を許してしまうことになってしまうため、できるだけ早く故障を発見する必要がある。
ところが、超音波信号は人間にとって非可聴帯域の周波数であるため、人間が故障を発見することが難しく、故障を発見するためには、保守契約により定期的に機器の点検をし、音量を測定する必要があった。
【0013】
本発明ではこのような異常状態をできるだけ早く発見するための機能を付加し、音圧の変化を常時監視することにより音圧状態を表示、通知することが可能になり利用者には早急に対処するというサービス向上を可能にしたものである。
【0014】
超音波発生装置1の内部には超音波マイク14が具備されている。
超音波マイクとして、実施例では超音波スピーカがピエゾ振動子を用いたタイプであるが、他の方式の超音波スピーカを利用することも可能である。
前記のように、超音波スピーカとして、圧電セラミックを利用している場合は、この圧電スピーカを超音波マイクとして利用することが可能である。
超音波スピーカを超音波マイクとして利用すると超音波マイクの共振周波数が一致するため、発信周波数に対しては、非常に高感度で音を拾うことが可能であり、共振周波数以外の音には低感度になるので、超音波スピーカから発信する音に対しては選択的に高感度なセンサーとして利用することができる。
【0015】
音に対する慣れを防止するために、複数の超音波スピーカを具備する場合もある。
このような超音波発生装置1の場合は、一方の超音波スピーカが発信しているとき、もう一方の超音波スピーカを超音波マイクとして利用することも可能である。
超音波マイク14は超音波発生装置の内部の音圧を測定してもよいし、外部の音圧を測定してもよい。
装置の内部に超音波マイクを具備しても、超音波スピーカの背面に音漏れが発生しており、十分に駆動状態を検出することができた。
【0016】
設置直後の音圧を記憶しておき、この音圧の径時変化を測定することにより、この装置が正常に動作しているかどうかを判断することが可能になる。
電源供給が停止しているときには、異常の表示も消灯してしまうが、電源供給表示用の表示も消灯してしまうので判断できる。
音圧の径時変化を処理することにより、超音波スピーカを構成している圧電セラミックの特性劣化を判断することも可能である。
超音波マイクで検出した音圧信号は増幅部15で処理可能なレベルの信号に増幅される。
このとき、増幅回路に対数演算機能を付加することにより、この音圧信号は通常管理されている音圧管理に使われている単位であるdB(デシベル)に変換することができる。
【0017】
また発信制御部11、駆動部12、超音波スピーカ13のどれかが故障しているときには通電表示はされているにも関わらず、超音波スピーカの出力が出なくなる。
超音波を用いた有害動物撃退装置は、非常に強い超音波信号を発信し続けるために、圧電セラミックの音圧特性が劣化する現象が発生し易い。
このような異常状態を判断し、超音波発生装置1の構成要素である表示部17で表示することが可能になる。
【0018】
超音波発生装置1に低価格なLEDを用いた表示部を具備することにより、このように故障を判断することが可能になるが、通常高いところに取り付けられている超音波発生装置1の表示状態の変化を読み取るのは困難な場合もある。
このような場合に対応するために、超音波発生装置1にはこの情報を制御装置2に伝達するために通信部16を具備している。
超音波発生装置に通信部16を具備し、電源供給のためのケーブルに通信線を併用することにより、この音圧情報を制御装置2に伝達することが可能になる。
電源ケーブルを使って情報通信を行うパワーラインコミュニケーション技術を活用すると、電源ケーブルの配線だけで、通信機能を持たせることも可能である。
【0019】
図2は制御装置2に超音波発生装置が複数接続されている超音波発生装置それぞれの稼働状況を監視するための表示部をもった制御装置のブロック図である。
制御装置2は交流100Vの商用電源8を超音波発生装置1に供給するための電圧に変換するための電圧変換部21、制御装置全体を制御するシステム制御部22、音圧情報を外部サーバーに送信するための無線通信部23、電波を発信するためのアンテナ26、超音波発生装置1と通信するための通信部24と、複数接続されている超音波発生装置1の音圧情報を表示するための表示部25で構成される。
ただし、サーバーでの管理が不要な場合は無線通信部23とアンテナ26は不要である。
また超音波発生装置1についている表示部17の表示で十分なときは通信部24と表示部25は不要である。
【0020】
電気工事士法施行令第一条には工事士免許が不要な軽微な作業として、「電鈴、インターホーン、火災感知器、豆電球その他これらに類する施設に使用する小型変圧器(二次電圧が三十六ボルト以下のものに限る。)の二次側の配線工事」と記載されている。
建物内に複数設置する超音波発生装置1の駆動電圧を36V以下にすることより、配線上の安全性が向上し、電気工事士資格者による設置配線工事が不要になる。
実施例での電圧変換部21は商用電源8である交流100Vを直流24Vに変換する。
超音波発生装置1の駆動電流は10V以下、0.1A以下で駆動することが可能であり、しかも超音波発生装置内に、安価・小型になったD−D(直流−直流)コンバータを具備することより、超音波発生装置内の回路に対し、安定した電源を供給することが可能である。
【0021】
制御装置2での電圧変換部の電流容量が例えば2Aであった場合、超音波発生装置の駆動電圧を10V以下とすると、1台の制御装置2で10台以上の超音波発生装置1を駆動することが可能であり、しかも制御装置2から超音波発生装置までの距離を100メートル以上の距離でも駆動することが可能である。
更に、従来は有害動物駆除装置全てに装備していた商用電源から回路を駆動するために具備していた、交流−直流電圧変換回路を、1箇所に集中したことにより、有害動物撃退装置の製造コストも下げることができる。
【0022】
システム制御部22は無線通信部23、通信部24、表示部25を制御する。
通信部24は1台もしくは複数台接続されている超音波発生装置1の音圧情報を受け取る。
複数台の超音波発生装置1が接続されているときには、各超音波発生装置1に装置認識用のID番号設定機能を付加し、そのID毎の音圧は通信部24を介して表示部25に表示される。
【0023】
この機能により、有害動物撃退装置の保守点検のときに制御装置2の内部に具備されている表示部22を見ることによりこの制御部2に接続されている全ての超音波発生装置1の音圧をチェックすることが可能になり、故障してから発見までの時間を短縮することが可能になる。
【0024】
保守契約をしたとしても点検する間隔は1ヶ月程度の間隔になってしまう。
このため、定期点検後すぐ故障した場合は1ヶ月後の点検までの間にネズミの侵入を許してしまう恐れがある。
これを解決するためには、更にこの各超音波発生装置1の音圧情報を常時監視する必要がある。
このために、制御部2の内部に無線通信部23を具備し、この情報をサーバーに伝達する必要がある。
【0025】
図3はサーバーによる、遠隔監視による稼働状況監視の実施例である。
制御装置2に具備されている無線通信部23により無線公衆回線を利用した通信手段を利用し、監視データはインターネット7に伝達される。インターネット7には各地の建物に設置されている超音波発生装置1の稼動状態情報が集約され、管理するためのサーバー4が接続されている。
インターネットに接続され、このサーバー4にアクセス権限をもつ管理端末5から、この遠隔管理対象の起音波発生装置1全ての管理状況を把握することができる。
【0026】
サーバー4が異常の超音波発生装置1を検出したときには、異常な超音波発生装置1の保守担当者に直接メールを発信することも可能である。
保守担当者の携帯電話6に超音波発生装置1異常の情報が伝達されることにより、超音波発生装置1の異常発生後短時間で、保守要員による修復が可能になる。
このように図3の実施例の形態は、最も保守サービス品質が高い保証が可能である。
しかしながら、公衆回線、サーバーなどを利用するためコスト的に高くなるので顧客が要求するサービスレベルにより、実施例1〜3までの表示方法を選択することができる。
この実施例では、有害害虫駆除装置の電源コンセントが外されたばあいには、定期的な信号がこなくなると、サーバー側で、異常状態と判断することが可能になり、より保守サービス内容を向上する。
【0027】
図4は更なるコストダウンのために、従来の様に、音圧表示機能をもたない有害動物撃退装置の構成図である。
この実施例では制御装置2は商用電源8から直流24Vに変換する電圧変換部21のみを有する。
この制御装置2で複数の超音波発生装置1を駆動することができる。
この実施例では保守コストを低減させることはできないが、電気工事士免許保持者による工事は不要であり設置コストは、更に音圧表示機能を持たないため、非常に低価格で有害動物撃退装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
超音波発生装置1に音圧検出機能を具備することにより保守コストの低減が可能になり、更に超音波発生装置の駆動電圧を36V以下にすることにより、設置コストの低下が可能になり、商用電源から、超音波発信装置への電圧変換部を1箇所に集中することにより、装置価格の低下も可能になった。
回路が多少複雑になり、コストアップの要因もあるが、回路素子の価格低下により非常に軽微なものあるにも関わらず、利用者に対しては、有害動物撃退機能というサービス品質は大幅に向上したサービスを供与される。
保守サービスを提供する業者にとっては定期巡回が不要になるため、保守コストを下げることも可能になる。
有害動物駆除業者にとっても、保守契約をしている案件で有害動物撃退装置が故障した場合、その間に有害動物が建物に侵入した場合には、駆除のために、膨大な費用が発生するがこの発明によりこのような事態を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】超音波発生装置1のブロック図。
【図2】制御装置2のブロック図
【図3】遠隔監視システム構成図。
【図4】有害動物撃退装置構成図。
【符号の説明】
【0030】
1. 超音波発生装置
2. 制御装置
3. 有害動物
4. サーバー
7. インターネット
8. 商用電源
13.超音波スピーカ
14.超音波マイク
17.表示部
21.電圧変換部
25.表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波スピーカと、前記超音波スピーカが超音波を発生していることを検出するための超音波マイクを設け、前記超音波スピーカから発信する音の音圧状態を表示する手段を具備していることを特徴とする有害動物撃退装置。
【請求項2】
音圧検出手段を具備する前記超音波を発生する超音波発生部と、1台もしくは複数台の超音波発生部に対する電源供給用の電圧変換部と音圧状態を表示する表示部を具備する制御装置とから構成されることを特徴とする請求項1記載の有害動物撃退装置。
【請求項3】
前記制御装置にはインターネットに接続するための無線通信部を具備し、インターネットには前記有害動物撃退装置の音圧情報を管理するサーバーと、敷設済みの有害動物撃退装置に関する管理端末が接続され、前記管理端末は前記有害動物撃退装置の音圧情報が表示されることを特徴とする、請求項2記載の有害動物撃退装置。
【請求項4】
超音波を発生する超音波スピーカを有する超音波発生部と、超音波発生部を駆動するために電源を供給する制御装置からなる有害動物撃退装置において、制御装置から供給される電圧は36V以下であることを特徴とする有害動物撃退装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−187089(P2012−187089A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71026(P2011−71026)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(511078602)
【Fターム(参考)】