説明

有害物質を検知する装置及び方法

【課題】生物学的、化学的、及び/又は放射性の有害物質を検知することが可能なセンサを提供する。
【解決手段】有害物質を検知する装置及び方法は、第1及び第2の光ファイバと、基板に結合される再循環器を利用する。第1の光ファイバは、基板に結合され、第1及び第2の対向する端部並びに内部に組み込まれる第1の物質を有する。第1の物質は第1の有害物質タイプに反応する。第2の光ファイバは、基板に結合され、第1及び第2の対向する端部並びに内部に組み込まれる第2の物質を有する。第2の物質は第2の有害物質タイプに反応する。少なくとも1つの再循環器が基板に結合され、光が、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバのうちの少なくとも一方の両端部のうちの一方から伝搬する際に、光の少なくともいくらかが、少なくとも1つの再循環器によって各光ファイバの逆の端部に向けられるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に環境検知に関し、特に、特定の物質の有無を検出する光学ベースのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間集団への各種脅威の検出を含めた国土安全保障の重要性が増している。特に、生物学的作用物質又は化学的作用物質及び放射性源等の環境内の望ましくない有害物質の有無の検出又は検知が優先されるようになってきた。このような有害物質は、輸送用コンテナ内、建物内、空港内、又は他の場所で発見される可能性があり、市民並びに軍人に傷害を負わせる危険性がある。したがって、広範囲の有害物質を正確に検出することが可能な小型で手頃な装置を提供する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、生物学的、化学的、及び/又は放射性の有害物質を検知することが可能なセンサを提供することが望ましい。さらに、センサのパッケージサイズ及び製造費を最小に抑えながら、複数の異なる脅威の有無を検出するセンサを提供することが望ましい。さらに、本発明の他の望ましい特徴及び特性は、添付図面及び本発明のこの背景技術と併せて、続く本発明の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施の形態では、有害物質を検知する装置が提供される。当該装置は、基板と、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバと、少なくとも1つの再循環器とを備える。第1の光ファイバは、基板に結合され、第1及び第2の対向する端部、並びに内部に組み込まれる第1の物質を有する。第1の物質は第1の有害物質タイプに反応する。第2の光ファイバは、基板に結合され、第1及び第2の対向する端部、並びに内部に組み込まれる第2の物質を有する。第2の物質は第2の有害物質タイプに反応する。少なくとも1つの再循環器が基板に結合され、光が第1の光ファイバ及び第2の光ファイバのうちの少なくとも一方の両端部のうちの一方から伝搬するときに、光の少なくともいくらかが、少なくとも1つの再循環器によって各光ファイバの逆の端部に向けられるように構成される。
【0005】
別の実施の形態では、光ファイバ有害物質センサが提供される。当該光ファイバ有害物質センサは、基板と、調整可能な光源と、第1の複数の光ファイバと、第2の複数の光ファイバと、少なくとも1つの再循環器と、マルチプレクサとを備える。調整可能な光源は基板上にあり、発光するように動作可能である。第1の複数の光ファイバは基板に結合され、それぞれが、第1及び第2の対向する端部並びに内部に第1の物質をそれぞれ有する。第1の物質はそれぞれ、第1の有害物質タイプに反応する。第2の複数の光ファイバは基板に結合され、それぞれが、第1及び第2の対向する端部及び内部に第2の物質をそれぞれ有する。第2の物質はそれぞれ、第2の有害物質タイプに反応する。少なくとも1つの再循環器が基板上にあり、調整可能な光源によって発せられた光の一部が再循環器を透過し、光が光ファイバのうちの少なくとも一つの一端から伝搬する際に、その光の少なくともいくらかが、少なくとも1つの再循環器によって各光ファイバの他端に向けられるように構成される。マルチプレクサは基板上にあり、調整可能な光源と第1の複数の光ファイバ及び第2の複数の光ファイバとの間に結合される。マルチプレクサは、調整可能な光源からの光を第1及び第2の複数の光ファイバのうちの少なくとも一つに選択的に向けるように構成される。少なくとも1つの再循環器及び光ファイバのうちの少なくとも一つが一緒になって、共振周波数を有する共振器を形成する。
【0006】
さらなる一実施の形態では、有害物質を検知する方法が提供される。光が、調整可能な光源を使用して生成される。少なくとも1つの再循環器、並びに第1及び第2の対向する端部及び内部に埋め込まれた第1の物質及び第2の物質をそれぞれ有する第1の光ファイバ及び第2の光ファイバが、調整可能な光源を使用して生成された光ビームが、少なくとも1つの再循環器によって伝送され、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバのうちの選択された光ファイバの第1の端部に入り、選択された光ファイバの第2の端部から少なくとも1つの再循環器上に放射されるように構成される。光ビームの第1の部分が、少なくとも1つの再循環器によって反射されて選択された光ファイバの第1の端部に入り、光ビームの第2の部分が少なくとも1つの再循環器によって伝送され、それによって、少なくとも1つの再循環器並びに第1の光ファイバ及び第2の光ファイバのうちの選択された光ファイバが一緒になって、共振周波数を有する共振器を形成するようにする。共振器が、各有害物質タイプがない間には第1の往復損失値を有し、各有害物質タイプが存在する間には第2の往復損失値を有するように、第1の物質は第1の有害物質タイプに反応し、第2の物質は第2の有害物質タイプに反応する。少なくとも1つの再循環器によって伝送される光ビームの第2の部分が捕捉されて、共振器の現在の往復損失値が求められる。調整可能な光源は、共振器の共振を通じて調整されて、共振線形の現在の共振特性が求められる。現在の共振特性が監視される。共振特性の変化は、往復損失値の変化、ひいては各有害物質タイプの存在を示す。
【0007】
さらなる一実施の形態では、有害物質を検知する方法が提供される。光が、調整可能な光源を使用して生成される。少なくとも1つの再循環器、並びに第1及び第2の対向する端部及び内部に埋め込まれた第1の物質及び第2の物質をそれぞれ有する第1の光ファイバ及び第2の光ファイバが、調整可能な光源を使用して生成された光ビームが、少なくとも1つの再循環器によって伝送され、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバのうちの選択された光ファイバの第1の端部に入り、選択された光ファイバの第2の端部から少なくとも1つの再循環器上に放射されるように構成される。光ビームの第1の部分が、少なくとも1つの再循環器によって反射されて選択された光ファイバの第1の端部に入り、光ビームの第2の部分が少なくとも1つの再循環器によって伝送され、それによって、少なくとも1つの再循環器並びに第1の光ファイバ及び第2の光ファイバのうちの選択された光ファイバが一緒になって、共振周波数を有する共振器を形成するようにする。共振器が、各有害物質タイプがない間には第1の往復損失値を有し、各有害物質タイプが存在する間には第2の透過値を有するように、第1の物質は第1の有害物質タイプに反応し、第2の物質は第2の有害物質タイプに反応する。光ビームの第2の部分は、少なくとも1つの再循環器によって伝送されて、共振器の現在の往復損失値が求められる。調整可能な光源は、共振器の共振を通じて調整されて、共振線形の現在の共振特性が求められる。現在の共振特性が監視される。共振特性の変化は、往復損失値の変化、ひいては各有害物質タイプの存在を示す。
【0008】
さらなる一実施の形態では、有害物質を検知する装置が提供される。装置は、基板と、光ファイバの少なくとも2つのコイルであって、第1の反射端面及び第2の反射端面をそれぞれ有し、各コイル内に線形共振器を形成する、光ファイバの少なくとも2つのコイルとを備える。第1の光ファイバは基板に結合され、第1及び第2の対向する端部並びに内部に組み込まれる第1の物質を有する。第1の物質は第1の有害物質タイプに反応する。第2の光ファイバは基板に結合され、第1及び第2の対向する端部並びに内部に組み込まれる第2の物質を有する。第2の物質は第2の有害物質タイプに反応する。各反射端面は基板に結合され、第1の反射端面はそれぞれ、基板内から、又は基板上を伝搬する光を受けるように構成される。各ファイバコイルの各端面は、共振光がファイバコイル内を前後に伝搬して線形共振器を形成するように構成される。第2の端面はそれぞれ、光の一部を基板上の光検出器に伝送させるように構成される。この実施の形態の変形形態が存在し、特に、2つ以上のこのような第2の端面が同じ光検出器に光を伝送する変形形態が存在する。
【0009】
さらなる一実施の形態では、有害物質を検知する装置が提供される。当該装置は、基板と、光ファイバの少なくとも2つのコイルであって、それぞれ4ポート光ファイバカプラの2つのポートに結合されてリング共振器を形成する、少なくとも2つのコイルとを備える。各光ファイバカプラも、他の2つのポートを介して基板に結合される。光ファイバのコイルは、内部に組み込まれる第1の物質を有する。第1の物質は第1の有害物質タイプに反応する。第2の光ファイバは、内部に組み込まれる第2の物質を有する。第2の物質は第2の有害物質タイプに反応する。各光ファイバカプラは基板に結合されて、基板内から、又は基板上を伝搬する光を受ける。各カプラ及びファイバコイルは、共振光がファイバコイルを複数回伝搬して、リング共振器を形成するように構成される。各カプラは、光の一部を基板上の光検出器に伝送させるように構成される。この実施の形態の変形形態が存在し、特に、2つ以上のこのような第2の端面が同じ光検出器に光を伝送する変形形態が存在する。
【0010】
本発明を、同様の番号が同様の要素を示す添付の図面と併せて以下において説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の以下の詳細な説明は、単に例示的な性質のものであり、本発明又は本発明の用途及び用法を制限する意図はない。さらに、本発明の上記発明の背景又は本発明の以下の詳細な説明において提示されるいかなる理論による制限も意図されない。また、図1〜図10は単なる例示であり、一定の縮尺で描かれていない場合があることにも留意されたい。
【0012】
環境内の1つ又は複数の有害物質(すなわち、生物学的作用物質又は化学的作用物質及び/又は放射性タイプ)を検知する装置及び方法が提供される。概して、当該装置は、所定の生物学的作用物質又は化学的作用物質と反応する第1の物質が組み込まれる第1の光ファイバと、所定の放射性タイプに反応する第2の物質が組み込まれる第2の光ファイバと、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバと一緒になって少なくとも1つの共振器を形成する再循環器とを備える。(例えば、光源からの)入力光ビームが共振器に供給され、入力光ビームは共振器の共振周波数に調整され、共振線形が共振周波数の領域に生成されて、これが共振器を通って循環している光によって検知される。
【0013】
検出すべき有害物質がない場合、共振線形は、共振器内を循環する光の低エネルギー損失(すなわち、共振器の第1の往復損失値又は低往復損失値)に対応する狭い形(すなわち、高い「フィネス」)を有する。光ファイバが所定の光ファイバのうちの1つに曝されると、第1又は第2の物質が反応し、それによって、各光ファイバの光学特性が変化する。その結果、光ファイバコイル内を循環する光の一部が散乱又は吸収される。通常は狭い共振線形がより広く浅い形(すなわち、低いフィネス)に変化する。この共振線形の変化は、散乱光又は吸収光に起因するより大きなエネルギー損失(すなわち、共振器の第2の往復損失値又は高い往復損失値)を表し、ひいては、所定の有害物質のうちの1つの存在を示す。複数の光ファイバコイルをセンサ内でネットワーク接続又は多重化して(例えば、時分割多重化)、複数の有害物質の存在を同時に検出する複数の共振器を形成することができる。
【0014】
これより図面を参照すると、図1は、本発明の例示的な一実施形態による有害物質センサ10を概略的に示す。センサ10は、集積光学チップ(IOC)12並びに光ファイバ(又は光ファイバケーブル)14及び15を備える。一実施形態では、IOC12は、調整可能な光源16(例えば、レーザダイオード)、部分透過性を有する第1の反射器18、第2の反射器19、再循環器22(例えば、低いがゼロではない透過率を有する高反射性ミラー)、光検出器(例えば、フォトダイオード)24及び25、並びに光検出器24及び25並びに光源16に結合される電子回路26を備える。再循環器22並びに光ファイバ14及び15は一緒になって、2つの共振器28及び29をそれぞれ形成する(しかし、同様の手段によってより多くの共振器を追加することができる)。共振器28及び29は様々な構成を有することができ、いくつかの例示的な実施形態を本明細書において説明する。一実施形態では、共振器28及び29に導入される光は単色であり、光ファイバ14及び15の複数の巻き(turn)を通ってそれぞれ循環し、再循環器22を使用して各コイルを複数回通過する。
【0015】
例示的な一実施形態では、光源16は、周波数安定性、実質的に狭い線幅、及び比較的高出力性能を有する調整可能なレーザである。光源16は、各光ファイバ共振器を通って伝搬する光の時計回り(CW)方向又は逆時計回り(CCW)方向での共振周波数に対応する周波数fを含む周波数領域を通じて調整される。概して、再循環器22は、光ファイバコイルの一端から出た光をファイバコイルの他端に再導入して、光ファイバコイルに光を複数回伝搬させる任意の光学要素であることができる。再循環器22において光ファイバカプラに代えて入力ミラーを使用することは、ミラーが、偏光誤差及び他の誤差メカニズムの減衰に使用可能であり、導入される欠点をより少なくすることができるため、センサ10の1つの利点である。
【0016】
光ファイバ14及び15は、少なくとも第1の光ファイバ端30及び第2の光ファイバ端32をそれぞれ含み、各光ファイバ14及び15は巻かれてコイルになる。図2は、第1の光ファイバ14の断面を示す。図示のように、第1の光ファイバ14は実質的に円形であり、コア34及びのクラッド36を含む。一実施形態では、コア34は、屈折率(n)がおよそ1.47であるシリカガラスで作られ、例えば、5〜10マイクロメートル(μm)の直径38を有する。クラッド36は、屈折率が1.47未満(例えば、1.3〜1.4)である透過性物質で作ることができ、内部に組み込まれる生物学的又は化学的な指標(又は第1の物質)42を有する。一実施形態では、クラッド36はアクリレート重合体で作られ、100〜150μmの直径40を有する。生物学的又は化学的な指標42は、生物学的作用物質又は化合物(例えば、硫化水素、シアン化物、塩化物、神経ガス、セリン等)等の、1つ又は複数の生物学的又は化学的な物質若しくは材料に反応する化学物質又は他の物質であることができ、このような生物学的又は化学的な物質又は材料に曝されると、光学的特性、例えば、色、光学損失、屈折率等を変化させる。
【0017】
当業者によって理解されるように、指標42は、クラッド36の形成中にクラッド36内に組み込むことができる。図2に示すファイバ構造は、コア内の光の単一空間モードをガイドすることを目的とし、これは、高感度共振器の製造に非常に有利である。しかし、重合体を有する薄いシリカコアは物理的な強度の欠点を呈し得る。したがって、コア及び光のモードサイズを拡大し、したがって、単一モードのままでありながらなおコア34がより大きなガラス直径を有するように、コア34の代わりに、微細構造ファイバを使用して空気穴パターンを有する2つの同心層ガラス構造(図示せず)を用いてもよい。最大で30〜50ミクロンのガラスサイズを実現することができ、これは物理的にはるかに強度がある。
【0018】
図3は、第2の光ファイバ15の断面を示す。第2の光ファイバ15は、コア44、クラッド46、及びジャケット48を含む。コア44は、図2に示す第1の光ファイバ30のコア34と同様であることができる。しかし、第2の光ファイバ15のコア44には、アルファ粒子、ベータ粒子、及びガンマ粒子のうちの少なくとも1つに敏感なリン(P)又はボロン(B)等の放射能に敏感なドーパント(又は第2の物質)50でドープすることができる。一実施形態では、ジャケット48はプラスチックで作られ、例えば、170〜500μmの直径を有する。
【0019】
図示のように、光ファイバ14及び15は巻かれてコイルになる。好ましくは、光ファイバは、極めて低い曲げ損失を有し、そのコイルは、実質的に小さな面積の周りに比較的多数の巻きを有する。例えば、光ファイバ14及び15のコイルは、およそ20〜40回の巻きを有することができ、直径およそ1センチメートル(cm)を有することができる。一般に、光ファイバ14及び15によって提供されるような光路が長いほど、センサ10の信号対雑音比は大きくなる。センサ10の信号対雑音比を向上させるために、光ファイバコイルの巻き数を増大させることによって、光路を増大させることができる。光ファイバ14及び15では、再循環器22によって導入された光の大半は、コアの内部を横断し、光の光学エネルギーのおよそ数パーセントのみが光ファイバ14及び15のコア外に含まれる。
【0020】
動作時に、光源16が生成した光は反射器18及び19に向けられ、次に、反射器18及び19はこの光を再循環器22に向ける。光の第1の部分は、再循環器22を透過して第1の光ファイバ14及び/又は第2の光ファイバ15の第1の端部に入り、その各コイルを伝搬する(例えば、時計回り方向に)。第2の部分(すなわち、反射部分又は反射波)は、再循環器22から光検出器24及び25に反射される。光検出器24に衝突する第2の部分は、ミラー19から再循環器22に向けられる光から派生し、光検出器25に衝突する第2の部分は、ミラー18から再循環器22に向けられる光から派生する。第1の光ファイバ14及び/又は第2の光ファイバ15を通るパスの共振周波数は、各光路内での循環に成功したビームの強め合う(constructive)干渉に基づく。光の第1の部分が各光ファイバのコアを通って伝搬した後、その光は各光ファイバの第2の端部から出てくる。
【0021】
この例示的な実施形態では、第2の端部から出てくる光は、再循環器22に向けられる。この光の一部は、再循環器22によって各光ファイバの第1の端部に反射されて戻されるが、別の部分は再循環器22によって光検出器24及び25に伝送される(すなわち、伝送部分又は伝送波)。伝送された波は、共振器28及び29の内部の再循環光波の一部であり、ここから派生する。光の周波数が各共振器の共振から離調すると、伝送部分は非常に小さくなり、反射部分のみが光検出器24又は25のいずれかに衝突し、ごくわずかな弱め合う干渉を有する最大強度を示す。光の周波数が共振器共振の中心を通じてスキャンされると、伝送波は、その共振器に対して最大化されて、反射波と共に最大の弱め合う干渉を発生させ、ひいては、共振中心を示す最小値を有する共振ディップを提供する。
【0022】
第1の光ファイバ14又は第2の光ファイバ15のいずれかにおいて、共振器28又は29のいずれか(又は両方)の共振中心周波数を観察するために、光検出器24及び25それぞれでの強度を測定するか、又は標準的な同期検出技法を使用することができる。同期検出の場合、入力光ビームが正弦波的に位相変調され、したがって、周波数(f)において周波数変調され、光検出器24及び25によって測定される共振線形にわたって入力ビーム周波数をディザリングする。例えば、電子回路26は、fで光検出器24の出力を復調して、循環光ビームの光出力によって示される共振中心を測定することができる。共振線形の線中心、すなわち共振中心において、光検出器24は基本検出周波数fで最小出力を検出し、線形の傾きが最大である線形のいずれかの側で最大値を検出する。
【0023】
共振器が共振から外れている場合、強度信号最大値が観察されるが、fでの信号は実質的にゼロである。共振線形の線幅を観察するために、光源16の周波数は、光検出器24又は25のいずれかでの光強度信号が少なくとも、最大値半値を観察し、次いで最小を観察し、次いで別の最大値半値を観察するシーケンスを経験するように単調にスキャンされる。代替的に、線形幅の第2の測定は、光源16の周波数が単調にスキャンされる際に、fでの復調信号の最大値間の周波数差を監視することによって測定することができる。この場合、傾きが最も高い点間での共振の周波数幅の測定は、共振器線幅に比例し、ひいては共振器の損失に比例する。光源16の最大値半値から最大値半値への(例えば、傾きが最も高い点間での)周波数偏移は、共振器線幅であり(例えば、共振器線幅に比例し)、これは各光ファイバ(14又は15)内の損失及び有害物質の存在の測定を示す。線幅が広がることは、このような有害物質の存在を表す。
【0024】
一実施形態では、光源16の周波数偏移は、光検出器24及び25が最大値半値信号を観察する時間と、光検出器24及び25が第2の最大値半値信号を観察する時間との間の光源16の周波数差を記録することによって測定される。光源16のこれら2つそれぞれの時点での周波数は、直接又は間接的に測定することができる。直接測定の一例は、スキャンされていない別の光源を使用して、光源16の周波数にうなりを発生させること、及び2つの時点でのうなり周波数差を測定することを含む。より安価であり得る間接的測定の一例は、光源16の周波数と光源16のスキャンに使用される電気信号入力との関係を予め較正することである。レーザが光源16に使用される場合、電気信号は、レーザの注入電流を変化させる電流駆動信号、レーザの温度を変化させるサーモエレクトリッククーラー(thermo-electric cooler)への電流駆動信号、又はレーザキャビティのパス長を変化させてレーザ周波数を変化させる圧電変換器への電圧駆動信号であることができる。これらの場合では、レーザ周波数シフトと駆動信号との関係は工場で較正することができ、この場合、駆動信号偏移は動作中の周波数偏移の尺度である。
【0025】
が共振器28又は29の共振周波数から離調する場合、再循環器22によって伝送される光は光ファイバに入らず、再循環器22から反射されて、光検出器24及び25のそれぞれで最大強度を生成する。fが共振器28又は29のうちの一方の共振周波数に調整される場合、光ビームは光ファイバ(14又は15)に入り、光検出器24又は25のうちの一方に衝突する光は最小出力を有し、それによって、共振中心を示す。
【0026】
共振器28及び29の挙動、特に、第1の光ファイバ14又は第2の光ファイバ15を通る共振伝搬の場合に光検出器24及び25のそれぞれによって検出される線形は、第1の光ファイバ14及び/又は第2の光ファイバ15がその光ファイバに関連する特定の有害物質54の存在下にある場合、変化する。すなわち、第1の光ファイバ14が特定の生物学的作用物質又は化学的作用物質の存在下にあるとき、その生物学的作用物質又は化学的作用物質がクラッド36を透過し、指標42(図2)が生物学的作用物質又は化学的作用物質に反応(例えば、結合)し、第1の光ファイバ30の光学特性を変化させる。例えば、第1の光ファイバ30の変化する光学特性は、屈折率の変化又は光学的吸収若しくは蛍光性の増減を含むことができるが、必ずしもこれらに制限されるわけではない。第2の光ファイバが特定のタイプの放射線の存在下にあるとき、放射線は第2の光ファイバ15のジャケット48及びクラッド46を通過してコア44内に入り、コア44内でドーパント50と相互作用する。放射線とドーパント50との相互作用は、コア44を通る光の透過率を低減させる。
【0027】
図4は、例示的な一実施形態による光ファイバ有害物質センサ56を示す。センサ56は、集積光学チップ(IOC)58、第1の光ファイバ60、及び第2の光ファイバ62を備える。図4に示す実施形態では、IOC12は、光源66、第1の再循環器68及び第2の再循環器70、ビームスプリッタ72、第1の光検出器74及び第2の光検出器76、コントローラ78、並びに送信器80を有する基板64を備え、これらはすべて基板64上に形成(又は配置)される。図1に示す実施形態と同様に、有害物質センサ56は、当業者に理解されるように、共振器光ファイバジャイロ(RFOG)と同様に実施されることを理解することができる。
【0028】
図4に示す実施形態では、基板64は、例えば3センチメートル(cm)未満、例えば5ミリメートル(mm)〜1.5cm等の辺長(side length)82を有し、例えば、およそ600〜100マイクロメートル(μm)の厚さを有する実質的に矩形(例えば、正方形)である。一実施形態では、基板64はシリコンで作られ、別の実施形態では、リン化インジウム(InP)である。これらの寸法、形状、及び材料は単なる例であること、及び基板64を多くの寸法、形状、及び材料のうちの任意の1つに従って実施可能なことを理解されたい。
【0029】
光源66は、少なくとも図示の実施形態では、基板64の角付近に配置され、基板64の別の角及び/又は第1の再循環器68に向けられるか又は「照準を定める」。一実施形態では、光源66は、基板64上に形成又は実装されるレーザダイオードである。当業者に理解されるように、レーザダイオードは、ドープされた結晶ウェーハの表面上に非常に薄い層をドープして、「n型」領域及び「p型領域」を有するp−n接合又はダイオードを形成することによって形成することができる。特に示していないが、光源66は外部共振型レーザダイオード(external cavity laser diode)であることができ、一般に理解されるように、発せられるレーザ光の周波数を調整及び/又は調節する共振器長変調機構を備えることができる。さらに、1つ又は複数のレンズ及びアイソレータ等の、レーザビームの整形、コリメート、又は光学的分離を行うレーザ共振器外に実装又は形成される要素を、光源66と共に含むことができる。
【0030】
図4に示す実施形態では、第1の再循環器68は、光源66の照準が定められる基板64の角付近に配置され、第2の再循環器70は、基板64の光源66に対向する角付近に配置される。一実施形態では、再循環器68及び70は、非常に高い反射率(例えば、95%超)及び非ゼロの透過率を有する凹面鏡である。一般に理解されるように、第1の再循環器68及び第2の再循環器70は、光の所望の偏光状態に直交する偏光状態の光の反射率よりも大幅に高い所望の偏光状態の光の反射率を有することができる。再循環器68及び70は、光源66から第1の光ファイバ60及び第2の光ファイバ62それぞれの中に伝搬する光をフォーカスすると共に、光ファイバ60及び62の各端部から伝搬する光を反射して光ファイバ60及び62の対向する端部に向けてその中にフォーカスさせるような形状である。再循環器68及び70の部分透過性によって、光源66から光ファイバ60及び62の中への光の一部、並びに光ファイバ60及び62内を循環する光の一部を再循環器68及び70に透過させる。
【0031】
引き続き図4を参照すると、ビームスプリッタ72は、基板64の一辺の付近で、光源66と第1の再循環器68との間に配置される。詳細に示されていないが、ビームスプリッタ72は、好ましくは、光源66及び第1の再循環器68を相互に結ぶ線に対して(例えば、45度)傾斜した向きを有する。
【0032】
第1の光検出器74及び第2の光検出器76は、基板64上の中心部付近に配置される。好ましい実施形態では、第1の光検出器74及び第2の光検出器76はそれぞれ、例えば、基板がシリコンである場合、基板64上に形成されたゲルマニウムドープ領域を有するフォトダイオードを含み、その波長は赤外線(IR)領域にある。基板がシリコンであり、且つ光学波長が使用される場合、検出器は、基板内に直接形成されるシリコンフォトダイオードであることができ、光学波長が適したIR波長範囲内にある場合、InP基板のインジウムガリウムヒ素リン(InGaAsP)フォトダイオードであることができる。別の実施形態では、光検出器74及び76は、例えば、ゲルマニウム、シリコン、又はInGaAsPで作られた別個の光検出器チップを含む。
【0033】
一実施形態では、コントローラ78(又は処理サブシステム)が、基板64上又はその中に形成され、当業者に理解されるように、特定用途向け集積回路(ASIC)及び/又はマイクロプロセッサによって実行されて後述する方法及びプロセスを実行するための、コンピュータ可読媒体に記憶された命令等の様々な回路及び/又は集積回路(例えば、マイクロプロセッサ及び電源)を含めた電子部品を含むことができる。図示のように、コントローラ78は、光源66、第1の光検出器74及び第2の光検出器76、並びに送信器80と通信して動作可能であり、且つ/又は電気的に接続される。送信器80は基板64上に形成され、例えば、一般に理解されるように、無線周波(RF)送信器を含む。
【0034】
引き続き図4を参照すると、ICO58及び/又は基板64は、一実施形態では、一般に理解されるような「シリコン光学ベンチ」であり、基板64内に形成される(又はその上に配置される)一連のトレンチ(又は導波路)84及び反射器85を備えることができる。トレンチ84はクリアランスを提供し、反射器85は、光源66、ビームスプリッタ72、第1の光検出器74及び第2の光検出器76、並びに第1の再循環器68及び第2の再循環器70を光学的に相互接続する。図示の実施形態では、基板64は、それぞれの第1の再循環器68及び第2の再循環器70の凹面側(すなわち、外側)に隣接して形成される第1の再循環器キャビティ86及び第2の再循環器キャビティ88、並びに基板64の各角付近において再循環器キャビティ86及び88の外壁に形成される2つのv字形溝90も備える。
【0035】
第1の光ファイバ60及び第2の光ファイバ62は、それぞれの再循環器キャビティ86及び88に隣接するv字形溝90内に挿入される第1及び第2の対向する端部を有し、一実施形態では、巻かれて、例えば直径15〜125mmのコイルになる。第1の光ファイバ60及び第2の光ファイバ62は、その他の点では、図2及び図3に示し、上述した各光ファイバ14及び15と同様であることができ、同様に、第1の再循環器68及び第2の再循環器70と共にそれぞれの共振器を形成することができる。図示されていないが、光ファイバ60及び62は透過性又は半開のパッケージ内に収容することができる。
【0036】
再循環器68及び70並びに反射器85等の基板64上の様々な光学部品は、10マイクロメートルという小さな形状を有し、このようなサイズによって、光源66からの光が自由空間を移動する場合であっても、大きなかさばる光学系をなくすことができる。基板上の光学部品及びコントローラをエッチング、形成、又は配置することによって、大量生産に理想的な実質的に小さく、低コストのシリコン光学ジャイロを製造することができる。基板及び材料系は、好ましくは、シリコンであるが、適した特性を有する他の材料(例えば、アルミナ、窒化物、III−V族元素、他の耐熱性材料等)を基板に利用してもよい。
【0037】
引き続き図4を参照すると、動作に際して、光源66はレーザ光をビームスプリッタ72に向けて発し、ビームスプリッタ72において、レーザ光は第1の部分及び第2の部分に分割される。第1の部分は、第1の再循環器68に向かって伝搬し、少なくとも部分的に第1の再循環器68を透過する。第2の部分は、基板64の対向する側に向けられ、そして第2の再循環器70に向けて反射され、少なくとも部分的に第2の再循環器70を透過する。光の第1の部分及び第2の部分の少なくともいくらかは、それぞれの第1の光ファイバ60及び第2の光ファイバ62の第1の端部に入り(レーザ周波数が、ファイバ60及び再循環器68によって形成される共振器又はファイバ62及び再循環器70によって形成される共振器の共振付近に調整されている場合)、それぞれのコイルを回って伝搬し、それぞれの光ファイバの第2の端部から再び再循環器68及び70に向けて発せられる。光のいくらかは、再循環器68及び70を透過し、第1の光検出器74及び第2の光検出器76の中に反射される。
【0038】
コントローラ78は、第1の光ファイバ60及び第2の光ファイバ62のそれぞれに関連する共振器の共振周波数を上述した様式と同様にして別個に測定するために、光源66を調整する。次に、コントローラは、第1の光検出器74及び第2の光検出器76によって検出される共振線形を監視しながら、共振周波数を切り替える。光源66が第1の光ファイバ60に関連する共振器の共振周波数に調整されている場合、第1の光検出器74によって検出される線形(上述した線形と同様)の変化は、第1の光ファイバ60が、第1の光ファイバ60に関連する特定の生物学的作用物質又は化学的作用物質に曝されたことを示す。同様に、光源66が第2の光ファイバ62に関連する共振器の共振周波数に調整されている場合、第2の光検出器76によって検出される線形の機会は、第2の光ファイバ62が、第2の光ファイバ62に関連するタイプの放射線に曝されたことを示す。
【0039】
図5は、本発明のさらなる一実施形態による光ファイバ有害物質センサ92を示す。センサ92は、IOC93並びにIOC93に結合された光ファイバの第1のセット94及び第2のセット96を備える。詳細に示されていないが、IOC93は、光源98、光検出器100、及びマルチプレクサ102を備える。図5において詳細に示されていないが、IOC93は、図4に示されるコントローラ78等の電子回路並びに図4に示されるビームスプリッタ72、反射器85、及び光検出器74及び76等の光学系を図4に示されるIOC58と同様の単一の基板上に集積する。
【0040】
上述した様式と同様に、光ファイバの第1のセット94内の各光ファイバは、特定の生物学的作用物質又は化学的作用物質の検出において役立つように構成され、光ファイバの第2のセット96内の各光ファイバは、特定の放射線タイプの検出において役立つように構成される。したがって、光ファイバの第1のセット94及び第2のセット96内の各光ファイバは、内部に組み込まれる化学的指標42又は放射線に敏感なドーパント50(図2及び図3)のいずれかを含む。
【0041】
マルチプレクサ102はIOC93(又はIOC93の基板)上に形成され、(例えば、1つ又は複数のv字形溝及び/又は反射器を介して)光ファイバの第1のセット94及び第2のセット96内の各光ファイバに結合される。マルチプレクサ102は、入力光ビームを各光ファイバに向け、光ファイバを循環した後、光ファイバからの出力光ビームを受ける。出力光ビームはそれぞれ光検出器100に向けられ、光検出器100から共振線形を判断することができる。入力光ビームはそれぞれ、対応する光ファイバの共振周波数にわたってスキャンされる。上述したように、これは、固定平均入力光周波数を使用すると共に、各共振パス長の長さをスキャンし、したがって、共振線形をスキャンして達成することができる。
【0042】
上述したように、特定の光ファイバの光出力に関連する共振線形幅の変化は、対応する生物学的作用物質若しくは化学的作用物質又は放射線タイプの存在を示す。マルチプレクサ102の使用によって、光源98からの光を随時、光ファイバのうちの1つ又は複数に選択的に向けることができる。
【0043】
上述したセンサの1つの利点は、光ファイバ内に組み込まれる異なる物質の組み合わせによって、単一のセンサを使用して生物学的作用物質又は化学的作用物質及び放射線の両方を検出することができることである。別の利点は、回路部品及び光学部品が従来の半導体処理技法を使用することができる単一の基板上に形成されるため、小型で比較的安価な有害物質センサが提供されることである。
【0044】
図6は、本発明の別の実施形態による光ファイバ104の断面を示す。光ファイバ104は、コア106、クラッド108、及び外被ジャケット110を備える。上述した光ファイバと同様に、コア106はシリカガラスで作ることができる。クラッド108は、フォトニック結晶構造を含むシリカガラスから形成することができる。外被ジャケット110は、図2に示されるクラッド36と同様に、透過性重合体ベースの材料で作成することができ、内部に組み込まれる生物学的又は化学的な指標112を含む。したがって、光ファイバ104も、指標112が反応する特定の生物学的作用物質又は化学的作用物質の検出に適することができる。
【0045】
図7は、本発明のさらなる一実施形態による光ファイバ有害物質センサ207を示す。センサ207は、基板208及び光ファイバコイル(例えば、4つの光ファイバコイル)を備える。図示の実施形態は、第1のファイバコイル259、第2のファイバコイル260、第3のファイバコイル261、及び第4のファイバコイル262を含む。基板208の内部又は上に、レーザ組立体210、結合装置215、3つの光学スイッチ(例えば、マッハ−ツェンダ干渉計スイッチ)228、4つの光検出器252、254、256、及び258、8つのv字形溝237、240、241、243、245、247、249、及び251、並びに導波路セグメント221、222、235、253、255、及び257が含まれる。基板の内部又は上に、電子機器プロセッサ209及び通信装置(例えば、送信器271)も含まれる。
【0046】
レーザ210は、レーザダイオード211、反射器、波長選択装置212及び213、並びに外部ビーム整形・光学分離要素214を含む単一周波数レーザである。レーザから光をすぐに受ける第1のマッハ−ツェンダ干渉計スイッチ228は、導波路217及び219並びに変調器218を備える。導波路217及び219は2つの領域において近接して、光学スプリッタ216及び光学結合器220を形成する。導波路セグメント221から光を受ける第2のマッハ−ツェンダ干渉計スイッチ228は、導波路224及び225並びに変調器226を備える。導波路224及び225は2つの領域において近接して、光学スプリッタ223及び光学結合器227を形成する。導波路222から光をすぐに受ける第3のマッハ−ツェンダ干渉計スイッチ228は、導波路230及び232並びに変調器231を備える。導波路230及び232は2つの領域において近接して、光学スプリッタ229及び光学結合器233を形成する。第1のファイバコイル259はファイバ端部236及び238を有し、各端部は、その先端に形成される高反射性であるが、部分的に透過性の表面(図示せず)を有し、ファイバ内に線形共振器を形成する。同様にして、さらに3つの共振器が、第2のファイバコイル260、第3のファイバコイル261、及び第4のファイバコイル262内にそれぞれ形成される。
【0047】
センサ207の動作中、レーザ組立体210からの光は結合装置215に向けられ、結合装置215は、例えば、ミラー及びプリズムの組み合わせであることができ、レーザビームを導波路217に反射する。次に、光は分割領域216内で2つの実質的に等しい波に分割されてから、導波路217及び219を通じて伝搬する。217内の光は、プロセッサ209からの信号を介して位相シフトされてから、結合器220内で再結合される。変調器(又は位相シフタ)218内の光に付与される位相シフトは、導波路221又は222に向けられる光の比を制御し、それによって、第1のマッハ−ツェンダ干渉計スイッチ内の光学スイッチを作用させるように制御される。同様に、光は、第2のマッハ−ツェンダ干渉計スイッチにおいて導波路235と253との間で、及び第3のマッハ−ツェンダ干渉計スイッチにおいて導波路255と257との間で切り替えられる。
【0048】
一実施形態では、光は1度に1つの共振器に向けて切り替えられる。例えば、レーザ210からの光は、結合装置215を介して導波路217に結合され、変調器218への適した電圧信号を介して導波路221に向けることができ、位相シフタ226上の適した信号を介して(例えば)導波路253に向けられる。次に、レーザ周波数が第2の共振器に調整されると、導波路253を出た光は、ファイバ260内の前後に伝搬するように導波路253からの第2の共振器に向けられる。第2の共振器内を伝搬する光の一部は、ファイバ端部242のファイバ先端の部分透過性コーティングを介して光検出器254に向けられる。ファイバ端部236、238、239、242、244、246、248、及び250は、ファイバのv字形溝237、240、241、243、245、247、249、及び251にそれぞれ配置されて、光の効率的な結合のために光ファイバを導波路に位置合わせする。
【0049】
図1において説明した様式と同様にして、生物学的、化学的、又は放射性源を示す様々な共振器の共振線形は、レーザ周波数をスキャンすることによって決定される。監視する共振器はプロセッサによって決定され、プロセッサはスイッチを介して光を向け、どの共振器を調べるかを選択する。結果を示す出力は、プロセッサ及び通信電子機器を介してユーザに伝えられ、プロセッサは光検出器と通信している。位相シフタ218、226、及び231は、シリコンの場合には熱光学装置であることができ、導波路の局所温度を変化させて、光学位相シフトを変化させるか、又は電気光学活性基板材料から成る場合には、導波路にわたって電界を印加することによって導波路内で光の位相を変化させる電気光学変調器であることができる。
【0050】
当業者によって理解されるように、様々な変更を図7に示されるセンサ207に行うことができる。例えば、図8に示されるセンサ207では、共振器は再循環器及びコイルを形成する追加の光ファイバと共に形成される。すなわち、図8に示されるように、第1の再循環器(例えば、ファイバカプラ)263は、第1のファイバコイル264と共に第1の共振器を形成し、第2の再循環器265は、第2のファイバコイル266と共に第2の共振器を形成し、第3の再循環器267は、第3のファイバコイル268と共に第3の共振器を形成し、第4の再循環器269は、第4のファイバコイル270と共に第4の共振器を形成する。
【0051】
図9に示される例では、v字形溝240、243、245、及び249は、端部238、242、246、及び250が単一の比較的大きな光検出器276と位置合わせされるように配置される。図9に示される実施形態の追加の利点は、1つのみの光検出器が利用されるため、センサ207がいくらか単純化され、したがって、全体コストが低減することである。このような実施形態では、光が1度にただ1つのファイバコイルを通って伝搬するように、マッハ−ツェンダ干渉計スイッチを動作させることが有利であり得る。図10に示される例は、図9に示される実施形態と同様であり得る。しかし、v字形溝240、243、245、及び249は、図7に示される実施形態でのように配置され、追加の導波路272、273、274、及び275が設けられて、光をファイバコイルから単一の光検出器276に運ぶ。
【0052】
本明細書における考察の大部分は有害な生物学的物質、化学的物質、及び放射性物質の検出に焦点を合わせているが、当業者には、本明細書において記載した装置及び方法を有害物質及び非有害物質の両方の検出に使用可能なことが理解されることに留意されたい。
【0053】
少なくとも1つの例示的な実施形態を上記の本発明の詳細な説明において提示したが、膨大な数の変形が存在することを理解されたい。例示的な実施形態(複数可)が単なる例であり、本発明の範囲、適用性、又は構成を制限することが決して意図されていないことも理解されたい。むしろ、上記の詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態を実施するための好都合なロードマップを当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に述べられている本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態において説明した要素の機能及び構成に様々な変更を行うことができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の例示的な実施形態による有害物質センサの概略図である。
【図2】図1の有害物質センサ内の第1の光ファイバの断面図である。
【図3】図2の有害物質センサ内の第2の光ファイバの断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態によるシリコン基板を備える有害物質センサの平面図である。
【図5】本発明のさらなる一実施形態によるマルチプレクサを備える有害物質センサの等角図である。
【図6】本発明のさらなる一実施形態による有害物質センサにおいて使用するための光ファイバの断面図である。
【図7】本発明の別の例示的な実施形態による有害物質センサの平面図である。
【図8】本発明のさらなる一実施形態による有害物質センサの平面図である。
【図9】本発明のまたさらなる例示的な一実施形態による有害物質センサの平面図である。
【図10】本発明のまたさらなる例示的な一実施形態による有害物質センサの平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質を検知する装置(10)であって、
基板(12)と、
前記基板(12)に結合され、第1及び第2の対向する端部(30、32)並びに内部に組み込まれる第1の物質(42)を有する第1の光ファイバ(14)であって、前記第1の物質(42)は第1の有害物質タイプに反応する、第1の光ファイバ(14)と、
前記基板(12)に結合され、第1及び第2の対向する端部(30、32)並びに内部に組み込まれる第2の物質(50)を有する第2の光ファイバ(15)であって、前記第2の物質(50)は第2の有害物質タイプに反応する、第2の光ファイバ(15)と、
前記基板(12)に結合される少なくとも1つの再循環器(22)であって、光が、前記第1の光ファイバ(14)及び前記第2の光ファイバ(15)のうちの少なくとも一方の前記両端部のうちの一方から伝搬する際に、該光の少なくともいくらかが、前記少なくとも1つの再循環器(22)によってそれぞれの光ファイバの反対の端部に向けられるように構成される、少なくとも1つの再循環器(22)とを備える、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの再循環器(22)と、前記第1の光ファイバ(14)及び前記第2の光ファイバ(15)のうちの前記少なくとも一方とは共に、共振周波数を有する共振器(28、29)を形成し、前記共振器(28、29)は、前記各有害物質タイプが存在していない間は第1の往復損失値を有し、該各有害物質タイプが存在している間は第2の往復損失値を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
有害物質を検知する方法であって、
調整可能な光源(16)で光を生成するステップと、
少なくとも1つの再循環器(22)並びに第1及び第2の対向する端部(30、32)及び内部に組み込まれる第1及び第2の物質(42、50)をそれぞれ有する第1の光ファイバ(14)及び第2の光ファイバ(15)を構成するステップであって、それによって、前記調整可能な光源(16)で生成された光ビームが、前記少なくとも1つの再循環器(22)によって伝送され、前記第1の光ファイバ(14)及び前記第2の光ファイバ(15)のうちの選択される一方の前記第1の端部に入り、前記選択された光ファイバの前記第2の端部から出て前記少なくとも1つの再循環器(22)に入り、前記光ビームの第1の部分が、前記少なくとも1つの再循環器(22)によって反射されて前記選択された光ファイバの前記第1の端部に入り、該光ビームの第2の部分が、前記少なくとも1つの再循環器(22)によって伝送され、それによって、前記少なくとも1つの再循環器(22)と、前記第1の光ファイバ(14)及び前記第2の光ファイバ(15)のうちの前記選択された一方が共に、共振周波数を有する共振器(28、29)を形成し、
前記第1の物質(42)は第1の有害物質タイプに反応し、前記第2の物質(50)は第2の有害物質タイプに反応し、それによって、前記共振器(28、29)が、前記各有害物質タイプが存在しない間には第1の往復損失値を有し、前記各有害物質タイプが存在する間には第2の往復損失値を有する、構成するステップと、
前記少なくとも1つの再循環器(22)によって伝送される前記光ビームの前記第2の部分を捕捉するステップであって、前記共振器(28、29)の現在の往復損失値を求める、捕捉するステップと、
前記共振器(28、29)の前記共振を通じて前記調整可能な光源(16)を調整して、共振線形の現在の共振特性を決定するステップと、
前記現在の共振特性を監視するステップであって、前記共振特性の変化は、前記往復損失値の変化及び前記各有害物質タイプの存在を示す、監視するステップとを含む、方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−36767(P2009−36767A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−196350(P2008−196350)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】