説明

有害生物に対する保護活性を付与するための非生物材料の含浸方法および含浸用水性製剤

非生物材料を含浸する方法は、1種以上の殺有害生物剤と、10重量%以上のフッ素含有量(高分子結合剤の固体含有量に対して)を有する1種以上のフッ素化ポリアクリレートを含む高分子結合剤とを含む、有機溶媒を含まない水性製剤により非生物材料を含浸する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非生物材料、好ましくは織物材料を含浸する方法;少なくとも殺有害生物剤と、フッ素化ポリアクリレートを含む高分子結合剤とを含む、上記材料の含浸のための水性製剤;ならびに蚊帳としての前記含浸された材料の使用、ならびに植物および他の物品の保護のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱帯諸国では、感染症はしばしば刺咬昆虫または吸血昆虫により伝染する。ワクチン接種のような医学的方法に加えて、このような媒介昆虫を防除する方法に対して努力が払われてきた。このような昆虫の防除方法として、小屋および家屋の表面を処理すること、ならびにカーテンおよび蚊帳に噴霧処理および含浸処理を施すことが挙げられる。後者は、殺虫剤のエマルションまたは分散物に織物材料を浸漬することにより、またはネット上に殺虫剤を噴霧することによりおこなわれる。このような処理では織物材料の表面上への殺菌剤分子の付着が弱いため、処理は洗濯に対して耐性がなく、洗濯をおこなうごとに処理を繰り返さなければならない。
【0003】
そのため、洗濯するたびに再度処理する必要がなく、その活性が長期間持続する織物材料を得るために、特定の結合剤および/または他の助剤を用いてこのような殺虫剤を織物材料上に長期間固定することに努力が払われてきた。
【0004】
WO 92/16103(特許文献1)には、製剤にフッ素化アクリルポリマーを加えることにより、基質に適用した後に活性成分が耐水性および耐油性となるような活性成分含有液体製剤が開示されている。基質は生命物質または非生命物質のいずれであってもよい。活性成分としては、防虫剤、誘引剤、殺有害生物剤、成長調節物質、日焼け防止剤、または医薬品が挙げられる。液体製剤は、水性もしくは有機溶媒をベースとするものまたはそれらの混合物であってもよい。コーティングされた物質の洗濯堅牢度(wash fastness)の可能性はこの文書では考慮されていない。
【0005】
WO 01/37662(特許文献2)には、殺虫剤および/または防虫剤と、耐水性フィルムおよび場合により耐油性フィルムを形成することによりネットまたは布からの殺虫剤成分の流出および分解を低減させるフィルム形成成分とを含む、昆虫もしくはダニを死滅させるためのおよび/または昆虫もしくはダニを忌避するための含浸されたネットまたは布が開示されている。フィルム形成成分は、パラフィン油またはパラフィンワックスの誘導体、シリコン誘導体、シリコン油またはシリコンワックスの誘導体、およびポリフルオロカーボン誘導体より選択される1種以上の成分を含む。含浸工程において有機溶媒を使用する。
【0006】
WO 2006/128870(特許文献3)には、N-アリールヒドラジン誘導体と少なくとも1種の高分子結合剤とを含む非生物材料、特に織物材料の含浸のための組成物が開示されている。結合剤は、とりわけ、フルオロカーボン樹脂から選択されうるが、フルオロカーボン樹脂が関与する含浸工程は特定されていない。
【0007】
WO 2007/085640(特許文献4)には、数回の洗浄の後にも織物の表面上に殺虫剤を含む、含浸された殺虫剤を含有する織物が開示されている。この織物は、殺虫剤の50%以上が固体の微粒子として織物中に存在することを特徴とする。ここで、織物中の固体の微粒子の75%以上が0.1〜25μmの粒径を有する固体の微粒子であり、また、固体の微粒子は殺虫剤の微結晶粒子を(例えば、樹脂によりコーティングされた殺虫剤の微結晶粒子として)含む固体の微粒子である。結合剤としてフルオロカーボン樹脂が使用され、含浸工程において有機溶媒を使用する。
【0008】
さらに、「2層」コーティングを含む含浸された織物が開示されている。ここで、第1層は織物の繊維上に存在する殺虫剤を取り囲んでおり、この第1層において殺虫剤は比較的低い溶解度を有する。第2層は第1層の上に形成され、この第2層は第1層と比較して殺虫剤の溶解度がはるかに低い。ここで、第1のコーティングの材料は合成樹脂(例えば、ポリアクリレートまたはポリビニルをベースとする)などの樹脂であり、第1のコーティング層に比較的大きい「貯留(reservoir)」容量を持たせるために、好ましくは比較的厚い樹脂の層を形成する。また、第2のコーティングの材料は、フルオロカーボンポリマー、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリイソシアネートおよびポリ酢酸からなる群より選択されるポリマーである。ここでも、含浸工程に有機溶媒を使用する。
【0009】
WO 2008/122287(特許文献5)は、WO 01/37662(特許文献6)に開示されているような、殺虫および/または防虫特性を付与するために非生物材料、例えば布またはネットを含浸する方法に関する。この方法は、殺虫剤と、殺虫剤の流出および分解を減少させるフィルム形成成分とを含む溶液を調製することを含む。このフィルム形成成分は、非生物材料の乾燥工程および硬化工程において高分子骨格上のポリフルオロカーボン側鎖と重合してフィルムを形成する高分子骨格固定剤を含む。殺虫剤を5%未満の水含有量を有するアルコールもしくはグリコールと組み合わせた溶媒に溶解した場合、および/または殺虫剤を溶媒に溶解して30℃未満の温度を有する水相エマルションもしくは溶液と混合した場合には、殺虫剤溶液中で殺虫剤が沈殿するリスクが減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO 92/16103
【特許文献2】WO 01/37662
【特許文献3】WO 2006/128870
【特許文献4】WO 2007/085640
【特許文献5】WO 2008/122287
【特許文献6】WO 01/37662
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、室温で実施することができ、それにもかかわらず、何回も洗濯した後にも殺有害生物活性が維持される織物材料が得られるような、殺有害生物剤により織物材料を含浸する方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、製造工程における従業員または最初の使用の前に含浸を実施するエンドユーザーに害がなく、経済的で環境に配慮された織物材料の含浸方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、前記の含浸方法に使用するのに好適な製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的が、少なくとも1種の殺虫剤と、結合剤として10重量%以上のフッ素含有量を有するフッ素化ポリアクリレートとを含む、有機溶媒を含まない水性製剤を使用する含浸方法により達成することができることが見いだされた。
【0013】
本発明の第1の態様において、殺有害生物剤により処理された非生物材料を製造する方法であって、1種以上の殺有害生物剤と、10重量%以上のフッ素含有量(高分子結合剤の固体含有量に対して)を有する1種以上のフッ素化ポリアクリレートを含む高分子結合剤とを含む、有機溶媒を含まない水性製剤により非生物材料を含浸する工程を含む前記方法を提供する。
【0014】
本発明の第2の態様において、有機溶媒を含まず、1種以上の殺有害生物剤と、10重量%以上のフッ素含有量(高分子結合剤の固体含有量に対して)を有する1種以上のフッ素化ポリアクリレートを含む高分子結合剤とを含む、水性含浸用製剤を提供する。
【0015】
本発明の第3の態様において、非生物材料、好ましくは織物材料、特にネットを含浸するための上記の製剤の使用を提供する。
【0016】
本発明の第4の態様において、有害な生物体から人間、動物および材料を保護するための、前記の含浸された材料、特に前記の含浸された織物材料の使用を提供する。
【0017】
本発明の方法により含浸された材料は、優れた殺有害生物活性および洗濯堅牢度を示すと同時に、方法が簡単であり、有害である可能性のある有機溶媒の使用を必要としない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明は本発明に関する。
【0019】
製剤
本発明の製剤は、少なくとも殺有害生物剤(A)、高分子結合剤(B)、唯一の溶媒成分(C)として水、および場合によりさらなる成分(D)を含む。
【0020】
殺有害生物剤(A)
本明細書において使用する場合、用語「殺有害生物剤(pesticide)」は、有害な生物体を防除するために好適なあらゆる種類の活性成分、特に殺虫剤、防虫剤(repellent)、殺菌剤、殺軟体動物剤、および殺鼠剤を含む。
【0021】
本明細書において使用する場合、用語「殺虫剤(insecticide)」は、文脈中で他に述べない限り、殺節足動物(arthropodicidal)(特に、殺虫、殺ダニ(aricidalおよびmiticidal))活性を有する薬剤を含む。
【0022】
本明細書において使用する場合、用語「殺菌剤(fungicide)」は、文脈中で他に述べない限り、殺真菌、殺微生物および殺ウイルス活性を有する薬剤を含む。
【0023】
好ましくは、殺虫剤および/または防虫剤は、昆虫に対して即効性の麻痺または致死効果を有し、哺乳類に対して低い毒性を有する。好適な殺虫剤および/または防虫剤は当業者に公知である。好適な殺虫剤および防虫剤は、E.C. Tomlin et al., The Pesticide Manual, 14 ed., The British Crop Protection Council, Farnham 2006およびそこに引用される文献に開示されている。
【0024】
本発明を実施するために好適な殺虫剤および/または防虫剤としては、WO 2005/64072、11ページ28行〜14ページ34行およびWO 2006/128870、12ページ1行〜18ページ37行に開示されるものが挙げられる。
【0025】
以下の群に属する殺虫剤が好ましい。
【0026】
I.1. ピレスロイド類:アレトリン(allethrin)、ビフェントリン(bifenthrin)、シフルトリン(cyfluthrin)、シハロトリン(cyhalothrin)、シフェノトリン(cyphenothrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、アルファ-シペルメトリン、ベータ-シペルメトリン、ゼータ-シペルメトリン、デルタメトリン(deltamethrin)、エスフェンバレレート(esfenvalerate)、エトフェンプロックス(etofenprox)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、イミプロトリン(imiprothrin)、ラムダ-シハロトリン、ペルメトリン(permethrin)、プラレトリン(prallethrin)、ピレトリン(pyrethrin)IおよびII、レスメトリン(resmethrin)、シラフルオフェン(silafluofen)、タウ-フルバリネート(tau-fluvalinate)、テフルトリン(tefluthrin)、テトラメトリン(tetramethrin)、トラロメトリン(tralomethrin)、トランスフルトリン(transfluthrin)、プロフルトリン(profluthrin)、ジメフルトリン(dimefluthrin);
I.2. カルバメート類:アラニカルブ(alanycarb)、アルジカルブ(aldicarb)、ベンジオカルブ(bendiocarb)、ベンフラカルブ(benfuracarb)、カルバリル(carbaryl)、カルボフラン(carbofuran)、カルボスルファン(carbosulfan)、フェノキシカルブ(fenoxycarb)、フラチオカルブ(furathiocarb)、メチオカルブ(methiocarb)、メトミル(methomyl)、オキサミル(oxamyl)、ピリミカルブ(pirimicarb)、プロポクスル(propoxur)、チオジカルブ(thiodicarb)、トリアザメート(triazamate);
I.3. GABAアンタゴニスト化合物:アセトプロール(acetoprole)、エンドスルファン(endosulfan)、エチプロール(ethiprole)(III)、フィプロニル(fipronil)(II)、バニリプロール(vaniliprole)、ピラフルプロール(pyrafluprole)、ピリプロール(pyriprole);式(VI)のフェニルピラゾール化合物(下記参照);
I.4. 成長調節物質:a)キチン合成阻害剤:ベンゾイル尿素類:クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、ジフルベンズロン(diflubenzuron)、フルシクロクスロン(flucycloxuron)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、ヘキサフルムロン(hexaflumuron)、ルフェヌロン(lufenuron)、ノバルロン(novaluron)、ノビフルムロン(noviflumuron)、スルフルラミド(sulfluramid)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、テフルモロン(teflumoron)、ブプロフェジン(buprofezin)、ジオフェノラン(diofenolan)、ヘキシチアゾックス(hexythiazox)、エトキサゾール(etoxazole)、クロフェンタジン(clofentazine);b)エクジソンアンタゴニスト:ハロフェノジド(haliofenozide)、メトキシフェノジド(methoxyfenozide)、テブフェノジド(tebufenozide)、アザジラクチン(azadirachtin);c)幼若ホルモン様物質:ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、メトプレン(methoprene)、フェノキシカルブ(fenoxycarb);d)脂質生合成阻害剤:スピロジクロフェン(spirodiclofen)、スピロメシフェン(spiromesifen)、スピロテトラマト(spirotetramat);
I.5. ニコチン受容体アゴニスト/アンタゴニスト化合物:アセタミプリド(acetamiprid)、クロチアニジン(clothianidin)、ジノテフラン(dinotefuran)、イミダクロプリド(imidacloprid)、ニテンピラム(nitenpyram)、チアクロプリド(thiacloprid) 、チアメトキサム(thiamethoxam);
I.6. 有機(チオ)ホスフェート類:アセフェート(acephate)、アザメチホス(azamethiphos)、アジンホスメチル(azinphos-methyl)、クロルピリホス(chlorpyrifos)、クロルピリホスメチル、クロルフェンビンホス(chlorfenvinphos)、ジアジノン(diazinon)、ジクロルボス(dichlorvos)、ジクロトホス(dicrotophos)、ジメトエート(dimethoate)、ジスルホトン(disulfoton)、エチオン(ethion)、フェニトロチオン(fenitrothion)、フェンチオン(fenthion)、イソフェンホス(isofenphos)、イソキサチオン(isoxathion)、マラチオン(malathion)、メタミドホス(methamidophos)、メチダチオン(methidathion)、メチルパラチオン(methyl-parathion)、メビンホス(mevinphos)、モノクロトホス(monocrotophos)、オキシデメトンメチル(oxydemeton-methyl)、パラオキソン(paraoxon)、パラチオン(parathion)、フェントエート(phenthoate)、ホサロン(phosalone)、ホスメット(phosmet)、ホスファミドン(phosphamidon)、ホレート(phorate)、ホキシム(phoxim)、ピリミホスメチル(pirimiphos-methyl)、プロフェノホス(profenofos)、プロチオホス(prothiofos)、スルプロホス(sulprophos)、テトラクロルビンホス(tetrachlorvinphos)、テルブホス(terbufos)、トラゾホス(tolazophos)、トリクロルホン(trichlorfon);
I.7. 大環状ラクトン殺虫剤:アバメクチン(abamectin)、エマメクチン(emamectin)、ミルベメクチン(milbemectin)、レピメクチン(lepimectin)、スピノサド(spinosad);
I.8. サイトI電子伝達阻害剤:例えば、フェナザキン(fenazaquin)、ピリダベン(pyridaben)、テブフェンピラド(tebufenpyrad)、トルフェンピラド(tolfenpyrad);
I.9. サイトIIおよびサイトIII電子伝達阻害剤:アセキノシル(acequinocyl)、フルアシプリム(fluacyprim)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)(V);
I.10. アンカプラー化合物:クロルフェナピル(chlorfenapyr)(VI);
I.11. 酸化的リン酸化阻害化合物:シヘキサチン(cyhexatin)、ジアフェンチウロン(diafenthiuron)、フェンブタチンオキシド(fenbutatin oxide)、プロパルガイト(propargite);
I.12. キチン生合成阻害剤:シロマジン(cyromazine);
I.13. 混合機能オキシダーゼ阻害化合物:ピペロニルブトキシド(piperonyl butoxide);
I.14. ナトリウムチャネルモジュレーター:インドキサカルブ(indoxacarb)、メタフルミゾン(metaflumizone);
I.15. 活性メカニズムが不明であるか特定されていない活性物質:ベンクロチアズ(benclothiaz)、ビフェナゼート(bifenazate)、ボレート(borate)、カルタップ(cartap)、クロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)、フロニカミド(flonicamid)、ピリダリル(pyridalyl)、ピメトロジン(pymetrozine)、硫黄、チオシクラム(thiocyclam)、フルベンジアミド(flubendiamide)、シエノピラフェン(cyenopyrafen)、シフルメトフェン(cyflumetofen)、フルピラゾホス(flupyrazofos)、アミドフルメト(amidoflumet)。
【0027】
群I.1〜I.15に属する市販の化合物は、“The Pesticide Manual”, 14th edition, British Crop Protection Council, (2006)に記載されている。レピメクチンは、“Agro Project”, PJB Publications Ltd, November 2004により公知である。ベンクロチアズおよびその調製法は、EP-A1 454621に記載されている。メチダチオンおよびパラオキソンならびにそれらの調製法は、“Farm Chemicals Handbook”, volume 88, Meister Publishing Company, 2001に記載されている。アセトプロールおよびその調製法は、WO 98/28277に記載されている。フルピラゾホスは、“Pesticide Science” 54, 1988, 237〜243ページおよびUS 4822779に記載されている。ピラフルプロールおよびその調製法は、JP 2002193709およびWO 01/00614に記載されている。ピリプロールおよびその調製法は、WO 98/45274およびUS 6335357に記載されている。アミドフルメトおよびその調製法は、US 6221890およびJP 21010907に記載されている。フルフェネリムおよびその調製法は、WO 03/007717およびWO 03/007718に記載されている。シフルメトフェンおよびその調製法は、WO 04/080180に記載されている。
【0028】
好適な殺軟体動物剤は、例えば、ニクロサミド(niclosamide)である。
【0029】
好適な殺鼠剤の例としては、WO 2005/64072、18ページ9〜14行に開示されるものが挙げられる。
【0030】
好適な殺菌剤の例としては、WO 2005/64072、15ページ13行〜16ページ4行に開示されるものが挙げられる。
【0031】
好ましい殺菌剤は、以下の群より選択される。
【0032】
1. ストロビルリン類、例えば、アゾキシストロビン(azoxystrobin)、ジモキシストロビン(dimoxystrobin)、エネストロブリン(enestroburin)、フルオキサストロビン(fluoxastrobin)、クレソキシムメチル(kresoxim-methyl)、メトミノストロビン(metominostrobin)、ピコキシストロビン(picoxystrobin)、ピラクロストロビン(pyraclostrobin)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、オリサストロビン(orysastrobin)、メチル(2-クロロ-5-[1-(3-メチルベンジルオキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバメート、メチル(2-クロロ-5-[1-(6-メチルピリジン-2-イルメトキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバメート、メチル2-(オルト((2,5-ジメチルフェニルオキシメチレン)フェニル)-3-メトキシアクリレート;
2. カルボキシアミド類、例えば、カルボキシアニリド類:ベナラキシル(benalaxyl)、ベノダニル(benodanil)、ボスカリド(boscalid)、カルボキシン(carboxin)、メプロニル(mepronil)、フェンフラム(fenfuram)、フェンヘキサミド(fenhexamid)、フルトラニル(flutolanil)、フラメトピル(furametpyr)、メタラキシル(metalaxyl)、オフレース(ofurace)、オキサジキシル(oxadixyl)、オキシカルボキシン(oxycarboxin)、ペンチオピラド(penthiopyrad)、チフルザミド(thifluzamide)、チアジニル(tiadinil)、N-(4’-ブロモビフェニル-2-イル)-4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-カルボキシアミド、N-(4’-トリフルオロメチルビフェニル-2-イル)-4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-カルボキシアミド、N-(4’-クロロ-3’-フルオロビフェニル-2-イル)-4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-カルボキシアミド、N-(3’,4’-ジクロロ-4-フルオロビフェニル-2-イル)-3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-カルボキシアミド、N-(2-シアノフェニル)-3,4-ジクロロイソチアゾール-5-カルボキシアミド;カルボン酸モルホリド類:ジメトモルフ(dimethomorph)、フルモルフ(flumorph);ベンズアミド類:フルメトベル(flumetover)、フルオピコリド(fluopicolide)(ピコベンザミド(picobenzamid))、ゾキサミド(zoxamide);他のカルボキシアミド類:カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、マンジプロパミド(mandipropamid)、N-(2-(4-[3-(4-クロロフェニル)プロプ-2-イニルオキシ]-3-メトキシフェニル)エチル)-2-メタンスルホニルアミノ-3-メチルブチルアミド、N-(2-(4-[3-(4-クロロフェニル)プロプ-2-イニルオキシ]-3-メトキシフェニル)エチル)-2-エタンスルホニルアミノ-3-メチルブチルアミド;N-(3',4'-ジクロロ-5-フルオロビフェニル-2-イル)-3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-カルボキシアミドおよび3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(2-ビシクロプロピル-2-イル-フェニル)アミド;
3. アゾール類、例えば、トリアゾール類:ビテルタノール(bitertanol)、ブロムコナゾール(bromuconazole)、シプロコナゾール(cyproconazole)、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、ジニコナゾール(diniconazole)、エニルコナゾール(enilconazole)、エポキシコナゾール(epoxiconazole)、フェンブコナゾール(fenbuconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、フルキンコナゾール(fluquinconazole)、フルトリアホール(flutriafol)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、イミベンコナゾール(imibenconazole)、イプコナゾール(ipconazole)、メトコナゾール(metconazole)、ミクロブタニル(myclobutanil)、ペンコナゾール(penconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、プロチオコナゾール(prothioconazole)、シメコナゾール(simeconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、テトラコナゾール(tetraconazole)、トリアジメノール(triadimenol)、トリアジメホン(triadimefon)、トリチコナゾール(triticonazole);イミダゾール類:シアゾファミド(cyazofamid)、イマザリル(imazalil)、ペフラゾエート(pefurazoate)、プロクロラズ(prochloraz)、トリフルミゾール(triflumizole);ベンズイミダゾール類:ベノミル(benomyl)、カルベンダジム(carbendazim)、フベリダゾール(fuberidazole)、チアベンダゾール(thiabendazole);その他:エタボキサム(ethaboxam)、エトリジアゾール(etridiazole)、ヒメキサゾール(hymexazole);
4. 含窒素複素環化合物、例えば、ピリジン類:フルアジナム(fluazinam)、ピリフェノックス(pyrifenox)、3-[5-(4-クロロフェニル)-2,3-ジメチルイソキサゾリジン-3-イル]ピリジン;ピリミジン類:ブピリメート(bupirimate)、シプロジニル(cyprodinil)、フェリムゾン(ferimzone)、フェナリモール(fenarimol)、メパニピリム(mepanipyrim)、ヌアリモール(nuarimol)、ピリメタニル(pyrimethanil);ピペラジン類:トリホリン(triforine);
ピロール類:フルジオキソニル(fludioxonil)、フェンピクロニル(fenpiclonil);モルホリン類:アルジモルフ(aldimorph)、ドデモルフ(dodemorph)、フェンプロピモルフ(fenpropimorph)、トリデモルフ(tridemorph);ジカルボキシイミド類:イプロジオン(iprodione)、プロシミドン(procymidone)、ビンクロゾリン(vinclozolin);その他:アシベンゾラル-S-メチル(acibenzolar-S-methyl)、アニラジン(anilazine)、キャプタン(captan)、カプタホール(captafol)、ダゾメット(dazomet)、ジクロメジン(diclomezine)、フェノキサニル(fenoxanil)、ホルペット(folpet)、フェンプロピジン(fenpropidin)、ファモキサドン(famoxadone)、フェナミドン(fenamidone)、オクチリノン(octhilinone)、プロベナゾール(probenazole)、プロキナジド(proquinazid)、ピロキロン(pyroquilon)、キノキシフェン(quinoxyfen)、トリシクラゾール(tricyclazole)、5-クロロ-7-(4-メチルピペリジン-1-イル)-6-(2,4,6-トリフルオロフェニル)[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン、2-ブトキシ-6-ヨード-3-プロピルクロメン-4-オン、N,N-ジメチル-3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-スルホニル)-[1,2,4]トリアゾール-1-スルホンアミド;
5. カルバメート類およびジチオカルバメート類、例えば、ジチオカルバメート類:フェルバム(ferbam)、マンコゼブ(mancozeb)、マネブ(maneb)、メチラム(metiram)、メタム(metam)、プロピネブ(propineb)、チラム(thiram)、ジネブ(zineb)、ジラム(ziram);カルバメート類:ジエトフェンカルブ(diethofencarb)、フルベンチアバリカルブ(flubenthiavalicarb)、イプロバリカルブ(iprovalicarb)、プロパモカルブ(propamocarb)、メチル3-(4-クロロフェニル)-3-(2-イソプロポキシカルボニルアミノ-3-メチルブチリルアミノ)プロピオネート、4-フルオロフェニルN-(1-(1-(4-シアノフェニル)エタンスルホニル)ブト-2-イル)カルバメート;
6. 他の殺菌剤、例えば、グアニジン類:ドジン(dodine)、イミノクタジン(iminoctadine)、グアザチン(guazatine);抗生物質:カスガマイシン(kasugamycin)、ポリオキシン(polyoxins)、ストレプトマイシン(streptomycin)、バリダマイシンA(validamycin A);有機金属化合物:フェンチン塩(fentin salts);含硫黄複素環化合物:イソプロチオラン(isoprothiolane)、ジチアノン(dithianon);有機リン化合物:エジフェンホス(edifenphos)、ホセチル(fosetyl)、ホセチルアルミニウム、イプロベンホス(iprobenfos)、ピラゾホス(pyrazophos)、トルクロホスメチル(tolclofos-methyl)、亜リン酸およびその塩;有機塩素化合物:チオファネートメチル(thiophanate-methyl)、クロロタロニル(chlorothalonil)、ジクロフルアニド(dichlofluanid)、トリルフルアニド(tolylfluanid)、フルスルファミド(flusulfamide)、フタリド(phthalide)、ヘキサクロルベンゼン、ペンシクロン(pencycuron)、キントゼン(quintozene);ニトロフェニル誘導体:ビナパクリル(binapacryl)、ジノカップ(dinocap)、ジノブトン(dinobuton);無機活性化合物:ボルドー液(Bordeaux mixture)、酢酸銅、水酸化銅、オキシ塩化銅、塩基性硫酸銅、硫黄;その他:スピロキサミン(spiroxamine)、シフルフェナミド(cyflufenamid)、シモキサニル(cymoxanil)およびメトラフェノン(metrafenone)。
【0033】
好適な殺有害生物剤は、想定される製剤の用途、またはより具体的には製剤により処理される非生物材料の想定される用途に応じて、当業者が選択することができる。1種のみの殺有害生物剤を使用してもよいが、当然2種以上の異なる殺有害生物剤の混合物を使用することも可能である。
【0034】
好ましい殺虫剤および/または防虫剤は、アルファシペルメトリン、シフルトリン、デルタメトリン、エトフェンプロックスおよびペルメトリンなどの合成ピレスロイド、ビフェントリンなどの他のピレスロイド、ならびにカルボスルファンなどの非ピレスロイド、クロルフェナピルなどのピロール殺虫剤、ならびにフィプロニルなどのピラゾール殺虫剤からなる群より選択される。殺虫剤および防虫剤がキラル物質である場合、それらはラセミ体、純粋なエナンチオマーもしくはジアステレオマーとして、または富化されたキラル混合物において施用することができる。最も好ましいものは、アルファシペルメトリン、クロルフェナピルおよびフィプロニルである。
【0035】
1種のみの殺有害生物剤部分を使用してもよいが、2種以上の異なる殺有害生物剤の混合物を使用してもよい。好ましいのは、上に挙げたピレスロイドと他のクラスに属する1種以上の殺虫剤、特に他のピロールまたはピラゾール殺虫剤、例えばクロルフェナピルおよびフィプロニルとの混合物である。アルファシペルメトリンと他の殺虫剤、特にクロルフェナピルとの混合物が特に好ましい。さらに、アルファシペルメトリンと共力剤、特にピペロニルブトキシドとの混合物も特に好ましい。ピレスロイドと混合する他の殺虫剤との重量比は、一般に10:1〜1:10の範囲である。
【0036】
製剤は有機溶媒を含んではならないことが要求されるため、殺虫剤は工業用活性成分(technical active ingredient)(a.i.)として、または有機溶媒を含まない製剤、例えばSC(フロアブル製剤)、WG(顆粒水和剤)またはWP(水和剤)のいずれかとして加える。
【0037】
高分子結合剤(B)
有機溶媒を含まない水性製剤は、さらに、製剤中に分散された、1種以上のフッ素化アクリルコポリマーを含む少なくとも1種の高分子結合剤(B)を含む。本発明の耐水性および耐油性製剤に有用なフッ素化アクリルコポリマーとしては、式(I)のパーフルオロアルキルアクリレートモノマーと、コモノマー、特に式(II)のアクリレートモノマーとの重合により調製されたコポリマーが挙げられる:
【化1】


【0038】
[式中、Rは水素または1〜4個の炭素原子を有する低級アルキルであり、Wは1〜6個の炭素原子を有するアルキレンであり、R’は2〜20個の炭素原子を有するパーフルオロアルキルであり、R’’は1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル、2〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキレンまたは基-(CH2)n-NH-R’’’(式中、R’’’は1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルまたはシクロアルキルであり、nは2〜4の整数である)である]。
【0039】
用語「アルキル」は、直鎖および分枝鎖アルキル基を含む。
【0040】
用語「シクロアルキル」は、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル炭化水素を意味する。
【0041】
フッ素化アクリルコポリマーは、米国特許第4,478,975号および第4,778,915号(その開示を参照により本明細書に組み入れる)に記載される標準的な方法を用いて、乳化重合などの重合により調製することができる。コポリマーは、モノマーIおよびIIの総重量に対して、約1〜30%、より一般的には1〜10%の式IIのモノマーを用いて調製される。
【0042】
本発明の製剤(=含浸溶液)に含まれるフッ素化アクリルコポリマーの量は、製剤により多様である。フッ素化アクリルコポリマーの最も有効な量は通常の試験により容易に決定することができる。一般に、フッ素化アクリルコポリマーは、製剤の総量に対して約0.05〜20重量%、より一般的には0.1〜10%の範囲で液体製剤中に存在する。
【0043】
高分子結合剤(B)のフッ素含有量は、10重量%以上、好ましくは15重量%以上、特に20重量%以上であり(高分子結合剤(B)の固体含有量に対して)、上限は一般に60重量%、好ましくは55重量%、特に50重量%である。
【0044】
高分子結合剤は、一般に、有機溶媒を含まない水性分散物として使用する。
【0045】
フッ素化アクリルコポリマーを含有する市販の製品としては、Lurotex(登録商標)TX RおよびLurotex(登録商標) TX S(どちらもBASF SE, Ludwigshafen, ドイツ)、Evo Protect(登録商標)FCS、Pluvioperl(登録商標)9256およびEvo Guard(登録商標)FSU(すべてDystar Textilfarben GmbH, Frankfurt am Main, ドイツ)、およびRuco Guard(登録商標)Air(Rudolf GmbH, Geretsried, ドイツ)が挙げられる。
【0046】
高分子結合剤(B)(固体成分)と殺虫剤との重量比は、一般に1:0.1〜1:20、好ましくは1:0.2〜1:5の範囲である。
【0047】
溶媒成分(C)
製剤の溶媒としては、水のみを使用する。しかしながら、痕跡量の水混和性有機溶媒が存在してもよい。溶媒の例には、水混和性アルコール、例えば、メタノール、エタノールまたはプロパノールなどのモノアルコール、エチレングリコールまたはポリエーテルポリオールなどの多価アルコール、およびブチルグリコールまたはメトキシプロパノールなどのエーテルアルコールが含まれる。好ましくは、有機溶媒の含有量は、5重量%以下(成分(C)に対して)、より好ましくは1重量%以下(成分(C)に対して)、特に0.1重量%以下(成分(C)に対して)である。
【0048】
さらなる成分(D)
処理される非生物材料の想定される用途に応じて、本発明の製剤はさらに、保存剤、界面活性剤、充填剤、衝撃改質剤(impact modifier)、防雲剤(anti-fogging agent)、発泡剤、清澄剤、核形成剤、カップリング剤、固定剤、架橋剤、伝導率向上剤(帯電防止剤)、安定剤、例えば、抗酸化剤、炭素および酸素ラジカルスカベンジャーおよび過酸化物分解剤等、難燃剤、離型剤、UV保護特性を有する薬剤、展着剤、粘着防止剤、マイグレーション防止剤、泡形成剤、防汚剤、増粘剤、さらなる殺生物剤、湿潤剤、可塑剤およびフィルム形成剤、接着剤および接着防止剤、光学増白剤(蛍光増白剤)、顔料および染料より選択される1種以上の成分を含んでもよい。
【0049】
一つの好ましい実施形態において、本発明の製剤はさらに少なくとも1種の顔料および/または少なくとも1種の染料を含む。
【0050】
製剤中の殺有害生物剤(A)および/または高分子結合剤(B)を安定化するために界面活性剤を使用してもよい。特に好ましいのは、アニオン性および/または非イオン性界面活性剤である。典型的な例は、上述の通りである。
【0051】
好適な固定剤は、例えば遊離のイソシアネート基を含むイソシアネートまたはイソシアヌレートである。好ましくは、イソシアヌレートは、アルキレン単位に4〜12個の炭素原子を有するアルキレンジイソシアネート、例えば、1,12-ドデカンジイソシアネート、2-エチルテトラメチレンジイソシアネート-1,4、2-メチルペンタメチレンジイソシアネート-1,5、テトラメチレンジイソシアネート-1,4、リシンエステル(lysinester)ジイソシアネート(LDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート-1,6(HMDI)、シクロヘキサン-1,3-および/または-1,4-ジイソシアネート、2,4-および2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネートならびに対応する異性体混合物、4,4’-、2,2’-および2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートならびに対応する混合物、1-イソシアナート-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナートメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,4-および/または2,6-トルイレンジイソシアネート、4,4’-、2,4’および/または2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(モノマーMDI)、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(ポリマーMDI)および/または前記のイソシアネートの2種以上を含む混合物に基づく。より好ましくは、イソシアヌレートは、ヘキサメチレンジイソシアネート-1,6(HMDI)に基づく。
【0052】
また、好ましくは、イソシアヌレートは、エチレンオキシドおよび/または1,2-プロピレンオキシドに基づくポリアルキレンオキシドにより、好ましくはポリエチレンオキシドにより親水性にされたイソシアヌレートである。
【0053】
好適な消泡剤は、例えばシリコン系消泡剤である。UV感受性の殺有害生物剤を保護するために好適なUV保護剤は、例えば、パラアミノ安息香酸(PABA)、オクチルメトキシシナメト(octylmethoxysinameth)、スチルベン類、スチリルまたはベンゾトリアゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ヒドロキシ置換ベンゾフェノン類、サリチル酸エステル、置換トリアジン類、桂皮酸誘導体(場合により、2-シアノ基により置換されている)、ピラゾリン誘導体、1,1’-ビフェニル-4,4’-ビス-2-(メトキシフェニル)-エテニルまたは他のUV保護剤である。好適な光学増白剤は、ジヒドロキノリノン誘導体、1,3-ジアリールピラゾリン誘導体、ピレン類、ナフタル酸イミド類、4,4’-ジスチリル(diystyryl)ビフェニレン、4,4’-ジアミノ-2,2’-スチルベンジスルホン酸類、クマリン誘導体および-CH=CH-架橋により連結されたベンズオキサゾール、ベンズイソキサゾールもしくはベンズイミダゾール系または他の蛍光増白剤である。
【0054】
本発明の製剤において使用することができる典型的な顔料は、顔料染色法(pigment dyeing)もしくは顔料印刷法(printing process)に使用される顔料、またはプラスチックの着色に用いられる顔料である。
【0055】
顔料はその化学的性質により無機または有機顔料であり得る。無機顔料は主に白色顔料(例えば、ルチル型またはアナターゼ(anatas)型の二酸化チタン、ZnO、白亜)または黒色顔料(例えば、カーボンブラック)として使用される。無機着色顔料も使用し得るが、毒物学的に危険性があるため好ましくない。着色には有機顔料または染料が好ましい。有機顔料は、モノもしくはジスアゾ、ナフトール、ベンズイミダゾロン、(チオ)インジゴイド、ジオキサジン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリノン、ペリレン、ペリノン、金属錯体またはジケトピロロピロール型の顔料であってよい。顔料は粉末または液体(すなわち、分散物として)の形態で使用することができる。好ましい顔料は、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー138、ピグメントオレンジ34、ピグメントレッド170、ピグメントレッド146、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントブルー15/1、ピグメントブルー15/3、ピグメントグリーン7、ピグメントブラック7である。他の好適な顔料は当業者に公知である。
【0056】
本発明において使用することができる典型的な染料は、粉末または液体の形態のバット染料、カチオン染料および分散染料である。バット染料の形態を使用するのが好ましい。バット染料としては、インダントロン型、例えば、C.I.バットブルー4、6もしくは14;またはフラバントロン型、例えば、C.I.バットイエロー1;またはピラントロン型、例えば、C.I.バットオレンジ2および9;またはイソベンズアントロン(イソビオラントロン)型、例えば、C.I.バットバイオレット1;またはジベンズアントロン(ビオラントロン)型、例えば、C.I.バットブルー16、19、20および22、C.I.バットグリーン1、2および9、C.I.バットブラック9;またはアントラキノンカルバゾール型、例えば、C.I.バットオレンジ11および15、C.I.バットブラウン1、3および44、C.I.バットグリーン8ならびにC.I.バットブラック27;またはベンズアントロンアクリドン型、例えば、C.I.バットグリーン3および13ならびにC.I.バットブラック25;またはアントラキノンオキサゾール型、例えば、C.I.バットレッド10;またはペリレンテトラカルボン酸ジイミド型、例えば、C.I.バットレッド23および32;またはイミダゾール誘導体、例えば、C.I.バットイエロー46;またはアミノトリアジン誘導体、例えば、C.I.バットブルー66が挙げられる。他の好適なバット染料は当業者に公知である。典型的な分散およびカチオン染料は当業者に公知である。
【0057】
製剤の製造
本発明の製剤は、場合により凝集体を好適に混合および/または分散して、すべての成分を水と共に混合することにより形成することができる。一般に、製剤は10〜70℃、好ましくは15〜50℃、より好ましくは20〜40℃の温度で形成する。
【0058】
固体の殺有害生物剤(A)、固体の高分子(B)および場合によりさらなる添加物(D)を使用し、それらを水性成分(C)に分散することが可能である。
【0059】
しかしながら、あらかじめ別々に調製した高分子結合剤(B)の水分散物ならびに水中の殺有害生物剤(A)の水性製剤を使用することが好ましい。このような別々の製剤は、それぞれの製剤中に(A)および/または(B)を安定化するためのさらなる添加物を含有してもよく、市販されている。第2の工程において、このような原料の製剤および場合によりさらなる水(成分(C))を加える。
【0060】
上記方法の組合せ、すなわち、あらかじめ形成された(A)および/または(B)の分散物を使用し、それを固体の(A)および/または(B)と混合することも可能である。
【0061】
高分子結合剤(B)の分散物は、化学薬品製造者により既に製造された既製の分散物であってもよい。
【0062】
しかしながら、「ハンドメイド」の分散物、すなわち、エンドユーザーが小規模に製造した分散物を使用することも本発明の範囲に含まれる。このような分散物は、約20%の結合剤(B)と水との混合物を調製し、その混合物を90〜100℃の温度に加熱し、混合物を数時間激しく攪拌することにより製造することができる。
【0063】
エンドユーザーが製剤を本発明の方法に容易に使用することができるように、製剤を最終製品として製造することが可能である。
【0064】
しかしながら、当然、濃縮物を製造し、エンドユーザーが水(C)を加えることにより所望の使用濃度に希釈するようにすることも可能である。
【0065】
さらに、製剤を、少なくとも
・少なくとも1種の殺有害生物剤(A)を含む第1の構成要素;および
・少なくとも1種の高分子結合剤(B)を含む第2の構成要素
を含むキットとしてエンドユーザーに出荷することも可能である。
【0066】
さらなる添加物(D)はキットの第3の別の構成要素としてもよいし、あらかじめ構成要素(A)および/または(B)と混合してあってもよい。
【0067】
エンドユーザーは、単にキットの構成要素に水(C)を加えて混合することにより、使用する製剤を調製することができる。
【0068】
キットの構成要素は、粉末、カプセル、錠剤、または発泡錠などの乾燥した組成物の形態であってよい。好適な乾燥した形態の殺有害生物剤は、発泡錠または水和剤として提供され、手で攪拌または振盪することにより容易に溶解して均一な製剤を形成することができる。
【0069】
キットの構成要素は水中の製剤であってもよい。
【0070】
当然ながら、水性製剤である一方の構成要素と、乾燥した製剤である他方の構成要素とを組み合わせることも可能である。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、キットは、
・殺有害生物剤(A)および場合により水(C)からなる第1の製剤;および
・少なくとも1種の高分子結合剤(B)、成分(C)の水、および場合により成分(D)からなる第2の別の製剤
を含む。
【0072】
成分の濃度
成分(A)、(B)、(C)および場合により(D)の濃度は、含浸に使用する技術に応じて当業者により選択される。
【0073】
一般に、殺有害生物剤(A)の量は、すべての成分(A)、(B)および(D)(すなわち、水性溶媒(C)を除くすべての成分)の合計量に対して、80重量%以下、好ましくは5〜50重量%である。
【0074】
高分子結合剤(B)の量は、すべての成分(A)、(B)および(D)の合計量に対して、10〜90%の範囲である。
【0075】
存在する場合、さらなる成分(D)の量は、(A)、(B)および(D)の合計量に対して、一般に0.1〜40%、好ましくは0.5%〜35%である。存在する場合、顔料および/または染料の好適な量は、(A)、(B)および(D)に対して、一般に0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%である。
【0076】
含浸工程にそのまま使用できる典型的な製剤は、0.01〜10%、好ましくは0.1〜5%の成分(A)、(B)および場合により(D)を含み、残りの量は水(C)である。
【0077】
エンドユーザーが希釈して使用する濃縮物の典型的な濃度は、5〜50%の成分(A)、(B)および場合により(D)を含み、残りは水(C)である。
【0078】
含浸の方法
本発明の目的は、非生物材料を殺有害生物剤および高分子結合剤により処理することにより、種々の有害生物、例えば、蚊、マダニ(ticks)、ゴキブリ、ダニ(mites)、ノミ、シラミ、ヒル、イエバエ、および他の飛翔性および歩行性昆虫を防除することである。
【0079】
高分子結合剤は、殺有害生物剤を、好ましくはその非生物材料の表面に結合し、長期間の効果を保証する。結合剤を使用することにより、雨などの環境の作用による、または洗濯および/またはクリーニングなどの非生物材料に対して人が与える衝撃による、殺有害生物剤の非生物材料からの脱離が減少する。
【0080】
非生物材料はいかなる種類の非生物材料であってもよい。例としては、建造物、皮革、合成的に改質された皮革、植毛織物、シート、箔および包装材料、木材、壁内張材および塗装材、絨毯が挙げられる。
【0081】
好ましくは、非生物材料は織物材料である。用語「織物材料」には、繊維、紡績糸、織布、不織布、成形ループニット(formed-loop knits)、延伸ループニット(drawn-loop knits)が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、織物材料は布材料および特にネットである。布材料またはネットは、種々の天然および合成繊維から製造され、また、織布および不織布の形態で混紡として、そして、ニット製品または繊維として製造される。天然繊維は、例えば、綿、羊毛、絹、ジュートまたは麻である。合成繊維は、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、例えばポリプロピレンまたはポリエチレン、テフロン(登録商標)および繊維の混合物、例えば合成繊維および天然繊維の混合物から製造し得る。ポリアミド、ポリオレフィンおよびポリエステルが繊維材料として好ましい。ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。最も好ましいのは、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートから作られたネットである。
【0083】
布材料は、カバーリング、例えばマットレス、枕、羽布団、クッション、カーテン、壁装材、壁内張材ならびに窓およびドアスクリーンの形態であり得る。さらなる典型的な布材料は、テント、マット、衣類、例えば靴下、ズボン、シャツ(すなわち、好ましくは虫さされ等に曝される体の領域に使用する衣類)等である。ネットは、例えば寝室用ネット(例えば蚊帳)として、または覆いに使用される。他の用途は、浮遊する低い所を飛ぶ昆虫に対して人間および動物を保護するための可動式のフェンスである。布またはネットは、食品および飼料の袋、容器を包むために使用してもよく、これにより、物を昆虫による攻撃から保護する一方で、物が殺虫剤により処理したネットまたは布に直接接触することを回避することができる。処理された箔または防水布は、難民キャンプなどの、永久的または一時的な居住用のすべての人間用施設に使用することができる。
【0084】
本発明の方法は、蚊帳として使用するためのポリエステルのネットの含浸に特に好適である。
【0085】
含浸の方法は、特定の処理技術に限定されない。含浸は、非生物材料を製剤の中に浸すまたは沈めることにより、または非生物材料の表面に製剤を噴霧することにより実施することができる。処理の後、処理された非生物材料を単に室温で乾燥する。非生物材料を分散することまたは沈めることが好ましい含浸方法である。
【0086】
本発明の方法において使用する高分子結合剤(B)は、高温での乾燥、架橋または他の後処理工程を必要としないが、当然ながら、このような付加的な工程を実施することも本発明の範囲に含まれる。室温での乾燥のみであっても、結合剤(B)により、殺有害生物剤の非生物材料の表面への十分な結合が提供される。本発明の好ましい実施形態において、60℃より高い温度での乾燥、架橋または後処理は行わない。
【0087】
したがって、含浸には最新式技術は必要ないので、含浸工程はエンドユーザー自身が小規模に実施することができる。例えば、典型的なエンドユーザーは、例えば家庭内で、本発明の製剤を用いて蚊帳そのものを含浸することができる。この目的には、本発明の含浸キットを使用することが特に有利である。
【0088】
本発明の製剤は、所望の製品を成形する前に、すなわち、紡績糸またはシートの形状であるうちに、または関連する製品を成形した後に、布材料またはネットに適用することができる。
【0089】
布および/またはネットの場合、好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも以下の工程:
a) 布および/またはネットを、以下の(a1)〜(a7)の群より選択される加工工程のいずれかにより本発明の水性製剤により処理する工程:
(a1) 布材料またはネットを製剤中に通す工程;または
(a2) 製剤中に部分的にまたは完全に浸漬されたローラーに布材料またはネットを接触させて、ローラーに接触した布材料のネットの側面に製剤を移す工程;または
(a3) 材料を製剤中に沈める工程;または
(a4) 製剤を布材料またはネットに噴霧する工程;または
(a5) 製剤を布材料またはネットの上または中にブラシで塗布する工程;または
(a6) 製剤を泡の形態で適用する工程;または
(a7) 製剤を布材料またはネット上にコーティングする工程;
b) 場合により、材料をローラー間で絞ることにより、またはドクターブレードを用いて、余分な製剤を除去する工程;および
c) 布材料またはネットを乾燥する工程
を含む、布および/またはネット材料を含浸するための方法に関する。
【0090】
原材料が前段階の製造工程の残留物、例えばサイズ剤、スピン仕上げ剤、他の助剤および/または不純物を含む場合、含浸の前に洗浄工程を実施することが有益であり得る。
【0091】
具体的には、以下の詳細が工程a)、b)およびc)に重要である。
【0092】
工程a1)
布またはネットを水性製剤に通すことにより製剤を適用する。前記工程はパディングとして当業者に知られている。好ましい実施形態において、布またはネットは、液体の入った槽の中に入れるか、または布もしくはネットを2本の水平に配列されたローラー間に保持された製剤中に通すかのいずれかの方法で、水性製剤中に完全に浸漬される。本発明によれば、布材料またはネットが製剤中を通過してもよいし、製剤が布またはネット中を通過してもよい。製剤の取り込みの量は、濃縮浴の安定性、一様な分散の必要性、布またはネットの密度、ならびに乾燥および硬化工程に使用するエネルギーコスト削減の要請によって影響を受ける。通常の液体の取り込み量は、材料の重量の40〜150%である。最適な値の決定法は当業者に公知である。工程a1)は、後にネットの形態に加工される幅広の材料を含浸するのに好適である。小規模生産または未処理のネットの再含浸のためには、簡単な手持ちのローラーで十分であろう。
【0093】
工程a2)
さらに、部分的に分散物に浸されたローラーを用いて、水性製剤を布材料またはネットに適用することにより、ローラーに接触する布材料またはネットの側面に分散物を塗布することが可能である(キスローリング)。この方法により、布材料またはネットの片面のみに含浸することができ、これは、例えば、殺虫剤処理した材料に人間が直接接触することを回避したい場合に有利である。
【0094】
工程a1)、a2)またはa3)における布材料またはネットの含浸は、典型的には10〜70℃、好ましくは15〜50℃、より好ましくは20〜40℃の温度で実施する。
【0095】
工程a4)
噴霧は、噴霧装置を備えた好適な織物機械、例えば、オープンポケット衣類洗濯/抽出装置中で、連続的方法またはバッチ式方法により実施することができる。このような装置は既製のネットの含浸に特に好適である。
【0096】
工程a6)
泡は上記の分散物よりも水の含有量が少ない。そのため、乾燥工程が非常に短くなる。この処理は、気体または気体混合物(例えば空気)をその中に注入することにより実施することができる。界面活性剤、好ましくはフィルム形成特性を有する界面活性剤の添加が必要となる可能性がある。好適な界面活性剤および必要な技術装置は当業者に公知である。
【0097】
工程a7)
コーティング法は、好ましくはドクターブレード法により実施する。方法の条件は当業者に公知である。
【0098】
工程b)
余分なエマルションは、通常布またはネットを絞ることにより、好ましくは当業者に公知の方法で布材料またはネットをローラー間に通すことにより除去して、それにより規定の液体取り込み量を達成する。搾り取られた液体は再使用することができる。あるいは、余分な水性エマルションまたは水性分散物を遠心分離または真空吸引により除去してもよい。
【0099】
工程c)
乾燥は室温で実施することができる。特に、このような受動的乾燥は、高温で乾燥した気候で実施し得る。当然ながら、温度を上げることにより乾燥工程を加速してもよい。通常、大規模な加工の場合には能動的乾燥法を実施する。乾燥は、一般に200℃未満の温度で実施する。好ましい温度は30〜170℃、より好ましくは室温である。温度の選択は、製剤中の殺虫剤の熱安定性および含浸する非生物材料の熱安定性により決定される。
【0100】
本発明の方法では、少なくとも1種の顔料および/または少なくとも1種の染料を含む水性製剤を使用して、布材料またはネットに殺有害生物剤を含浸するだけでなく、同時に着色が行われるようにしてもよい。
【0101】
開示された方法により、含浸された非生物材料が得られる。したがって、さらなる実施形態において、本発明は、本発明の方法により得られ、少なくとも1種の殺有害生物剤(A)と少なくとも1種の高分子結合剤(B)とを含む、含浸された非生物材料に関する。
【0102】
好ましくは、非生物材料はネットまたは布材料であり、好ましくは、殺有害生物剤(A)は殺虫剤および/または防虫剤である。好ましい殺虫剤および/または防虫剤、高分子結合剤(B)、ならびにネットまたは布材料の好ましい材料は上述の通りである。
【0103】
含浸されたネットまたは布における殺虫剤および/または防虫剤の典型的な量は、個々の殺虫剤の殺虫効果および防虫剤の効果に依存して、布材料またはネットの(乾燥)重量の0.01〜10%(乾燥重量)である。好ましい量は、殺虫剤および/または防虫剤に依存して、布材料またはネットの0.05〜5重量%である。デルタメトリンまたはアルファシペルメトリンのようなピレスロイドの場合には、好ましい量は、布またはネットの重量の0.08〜3.5%である。ペルメトリンまたはエトフェンプロックスのようなピレスロイドの場合には、好ましい量は0.1〜6%である。
【0104】
高分子結合剤(B)の典型的な量は、布またはネットの(乾燥)重量の0.01〜10重量%(乾燥重量)である。一般的な指標としては、殺虫剤と結合剤(B)の重量比は、殺虫剤の殺虫能力および移動能力に依存する値で大体一定となるべきである。すなわち、殺虫剤の量が多ければそれに応じて結合剤(B)の量も多くなる。結合剤(B)の好ましい量は、布またはネットの(乾燥)重量の0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%である。
【0105】
含浸された布またはネットは、少なくとも1種の顔料および/または少なくとも1種の染料を含むことが好ましい。少なくとも1種の顔料および/または染料の量は、一般に布材料またはネットの(乾燥)重量の0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3.5重量%である。
【0106】
含浸された布またはネット材料は種々の目的に使用することができる。
【0107】
特に、このような含浸された布またはネット材料は、人、動物および/または材料を有害な生物体から保護するために使用することができる。例えば、それらは蚊帳として使用し得る。本発明により含浸された蚊帳は数回洗浄しても昆虫防除活性が顕著に減少することがない。
【0108】
材料または物体、例えば建造物および施設(家、道路)を有害な生物体から保護するためには、含浸された布またはネット材料を保護すべき材料もしくは物体の周りに巻き付けてもよいし、または保護すべき材料もしくは物体をそれにより覆ってもよい。
【0109】
保護される材料の例としては、作物および/または収穫物、例えばタバコ、タバコの束または他のタバコ製品が挙げられ、これらは収穫、乾燥、キュアリング(curing)、輸送および貯蔵の間に有害な生物体から保護される。本発明の方法により、このような直接保護すべき作物を、殺有害生物剤または他の化学物質により処理する必要性を回避できる。
【0110】
さらに、ネットは、柵および畜舎内の動物を昆虫および他の有害生物から保護するために使用することもできる。
【0111】
[実施例]
使用する材料
ネット
WHOロールバックマラリア「ネット材料の仕様」(WHO-Roll Back Malaria “Specifications for netting materials”)(ジュネーブ、2001)に準拠したPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維から作られた市販のネット材料を使用した。
【実施例1】
【0112】
浸漬技術
本発明の結合剤を含む製剤
ネットの含浸
0.4 g(固体含有量)の結合剤、1.2 gのアルファシペルメトリンSC(9.4% a.i.)の混合物を、100 mlの水中において含浸溶液として製造した。4.7 mlのこの混合物を0.14 m2の75デニール(Dernier)ポリエステルのネットに加えた。このようにして処理したネットを20℃で24時間乾燥した。
【0113】
活性成分(アルファシペルメトリン)の理論濃度:40 mg/m2 = 1.36 mg/g(GC分析による計測値:1.41 mg/g)。
【0114】
結合剤として、以下のものを使用した(実施例):
実施例1-1:Lurotex(登録商標)TX R (BASF、固体含有量:18.5%、F含有量:>10%)
実施例1-2:Lurotex(登録商標)TX S (BASF、固体含有量:25.5%、F含有量:>10%)
実施例1-3:Evo Protect(登録商標)FCS (Dystar、固体含有量:20.0%、F含有量:>10%)
実施例1-4:Pluvioperl(登録商標)9256 (Dystar、固体含有量:31.5%、F含有量:>10%)
実施例1-5:Evo Guard(登録商標)FSU (Dystar、固体含有量:22.0%、F含有量:>10%)
実施例1-6:Ruco-Guard(登録商標)Air (Rudolf、固体含有量:18.5%、F含有量:>10%)
比較例:
比較例1-1:結合剤なし
比較例1-2:Helizarin TOW (BASF、固体含有量:40.0%、F含有量:0%)
比較例1-3:Smart Protect P1000 (BASF、固体含有量:38.0%、F含有量 < 10.0%)
試験方法
「モンペリエ洗濯法」(“Montpellier washing procedure”)(annex World Health Organization PVC, 3/07/2002 “Evaluation of wash resistance of long-lasting insecticidal nets”に記載されている):ネットの試料を個別に、0.5 Lの脱イオン水および2 g/Lの石鹸(pH 10〜11)の入ったビーカーの中で、30℃の水浴中、155回/分の動きで10分間振盪することにより洗濯した。
【0115】
手洗いを再現する洗濯方法の工業的基準が存在しないので、発明者らは、IEC洗剤試験製剤(アニオン性、非イオン性洗剤、ゼオライト、無機ビルダーを含むが、漂白系を含まない)を用いて、金属容器中で、この金属容器を動かし(回転式)、加熱して、60℃で30分間洗濯をおこなう標準洗濯法(standard laundry process)を適用した。この方法は温度、乳化および分散効果に関して手洗いよりも過酷な条件を与えるが、ネットに与える摩擦はおそらくより小さい。
【0116】
試験方法:それぞれの試験片に対して2つのバイオアッセイを使用し、4回繰り返して試験をおこなった。3分間のバイオアッセイにおいて、実験室で飼育したハマダラカ(Anopheles)を、処理したネットに3分間強制的に接触させ、24時間保持した後、死亡率を評価した(「%死亡率」として)。
【0117】
長年に渡り確立されているITN試験の基準は、WHOコーン(WHOPES 96.1)を使用する。このコーンは、底縁の周囲に平坦なフランジと頂部に穴を有する透明なプラスチックのコーン構造(直径1.1 cm)である。一般的な方法は、フランジ側をネットに当てて、処理したネットにコーンを固定し、5匹の蚊をコーンの中に入れ、穴を綿または栓により閉じる。固有の殺虫活性の評価のためには、昆虫をネットの上に置かれたコーンの中に3分間保持した後、砂糖水を供給した保持容器に移す。4個のコーンから蚊を集めて、昆虫が保持容器あたり20匹以上となるようにする。次に、24時間までの所定の時間に、集められた蚊からノックダウン(KD)データを収集する。ノックダウンの速度の評価のため、蚊をコーンの中に入れたままにして、11匹の昆虫のうちの6匹目(中央値)がノックダウンされるまで、個々の蚊についてKDまでの時間を記録する。再び飛び上がる昆虫を2度カウントすることを防ぐため、それぞれのKDされた蚊はノックダウンされた時に取り除かれる。次に、すべての蚊を上述の通りに24時間のKDカウントのために保持する。
【0118】
すべての結果を表1に示す。
【0119】
表1
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺有害生物剤により処理された非生物材料を製造する方法であって、1種以上の殺有害生物剤(A)と、10重量%以上のフッ素含有量(高分子結合剤の固体含有量に対して)を有する1種以上のフッ素化ポリアクリレートを含む高分子結合剤(B)と、唯一の溶媒成分(C)として水とを含む、有機溶媒を含まない水性製剤により非生物材料を含浸する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
フッ素化されたアクリルコポリマーが、式(I)のパーフルオロアルキルアクリレートモノマーと、コモノマー、例えば式(II)のアクリレートモノマーとの重合により調製される、請求項1に記載の方法
【化1】

[式中、Rは水素または1〜4個の炭素原子を有する低級アルキルであり、Wは1〜6個の炭素原子を有するアルキレンであり、R'は2〜20個の炭素原子を有するパーフルオロアルキルであり、R''は1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル、2〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキレンまたは基-(CH2)n-NH-R'''(式中、R'''は1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルまたはシクロアルキルであり、nは2〜4の整数である)である]。
【請求項3】
高分子結合剤中のフッ素の量が20重量%以上で60重量%以下である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
殺有害生物剤(A)が殺虫剤および/または防虫剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
殺虫剤が、アルファシペルメトリン、シフルトリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、ペルメトリン、またはビフェントリンからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2種の異なる殺有害生物剤の混合物を使用する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
製剤が、さらに、保存剤、界面活性剤、充填剤、衝撃改質剤、防雲剤、発泡剤、清澄剤、核形成剤、カップリング剤、伝導率向上剤、抗酸化剤、難燃剤、離型剤、UV保護特性を有する薬剤、展着剤、粘着防止剤、マイグレーション防止剤、泡形成剤、防汚剤、増粘剤、殺生物剤、湿潤剤、可塑剤、フィルム形成剤、接着剤または接着防止剤、光学増白剤、顔料および染料からなる群より選択される補助成分(D)を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
(A)と(B)の重量比が1:0.1〜1:20である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
非生物材料が織物材料である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
含浸された非生物材料を室温で乾燥させる工程をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
成分(A)、(B)、(C)および場合により(D)を激しく混合することによる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性製剤の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の、非生物材料を含浸するための水性製剤。
【請求項13】
製剤が、
少なくとも1種の殺有害生物剤(A)を含む第1の構成要素および
少なくとも1種の高分子結合剤(B)を含む第2の構成要素
を少なくとも含むキットとして提供され、ここで、キットの2つの製剤が、場合により成分(C)としてさらなる水を用いて互いに激しく混合される、請求項12に記載の水性製剤。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により得ることができる、少なくとも殺有害生物剤(A)および高分子結合剤(B)を含む、含浸された非生物材料。
【請求項15】
非生物材料を含浸するための、請求項12または13に記載の水性製剤の使用。

【公表番号】特表2012−513379(P2012−513379A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541501(P2011−541501)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067663
【国際公開番号】WO2010/072724
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】