説明

有機エレクトロニックモジュール用の陰極

本発明は、エレクトロニックモジュール、殊に有機発光ダイオード(OLED)に対する新種の金属性陰極層並びにこの陰極層の製造方法に関する。この陰極は低い温度で溶融する合金から製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロニックモジュール、殊に有機発光ダイオード(OLED)に対する新種の金属陰極層並びに当該金属陰極層の製造方法に関する。
【0002】
通常は2層の積層体を含むOLEDに対する陰極が既知である。第1の層は通常は、2種類の材料から選択される:これはバリウムまたはカルシウム等の、どちらかと言えば反応性の材料またはフッ化セシウムまたはフッ化リチウム等の絶縁性材料から成る。第2の層は典型的には銀またはアルミニウム等の、多かれ少なかれ貴金属である金属から構成され、電極路として、および内部層を酸化ガスから隔離するために用いられる。2つの層は従来では、10−9barの水素分圧および酸素分圧を示す条件、いわゆる「超真空」条件で製造されてきた。このような条件は一方では実際の超高真空ポンプを介して得られ、他方では10−6barより低い圧力を有する希ガス雰囲気を介して得られる。ここでこの希ガス圧力はOLEDの構成を妨害する境界を下回る水素分圧および水素分圧を有している。2つの製造プロセスは、明らかに非常にコストがかかり、それほど効果的でない。
【0003】
従って本発明の課題は、超真空条件なしに製造される、エレクトロニックモジュール、殊に有機発光ダイオード用の陰極を実現することである。
【0004】
本発明の構成要件は、実質的に金属合金の溶融物から製造されている、有機エレクトロニックモジュール用の陰極である。さらに本発明の構成要件は、金属合金の溶融物を被着させることによる、OLED用の陰極の製造方法である。
【0005】
「実質的に」金属合金からという表現は、この合金にさらに(通常の)添加物、例えば濡れ剤または定着剤等が添加され得ることを意味している。
【0006】
金属または典型的な合金の融点が高いこと(200℃より格段に高い)が原因で、物理蒸着法(PVD)とは異なる被着技術を陰極製造に使用することはできない。なぜなら、約130〜150℃を上回る温度(ポリマーに依存する)は、発光層材料に重大な障害を与えてしまうからである。しかし、いわゆる「可融合金」と称される金属合金のクラスが存在する。これは30〜200℃の間の領域における低い融点を特徴とする。ここで典型的にこの合金の融点は、基になる金属の融点よりも低い。従ってこのような金属合金によって、発光層材料がまだ耐えられる温度での溶融物から陰極製造が可能になる。多数の、商業的に販売ルートで入手可能な可融合金が存在する。これらの可融合金は全て陰極製造に使用可能である。
【0007】
有利には、陰極を製造するための金属合金は、殊に自身の溶融温度を上回っても耐酸化性である。従って溶融物の被着による製造は全く保護ガス雰囲気を必要としない。
【0008】
この方法の有利な実施形態では溶融物は有利には構造化されて、例えばスタンプ印刷またはタンポン印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版印刷および/または凹版印刷、ステンシル印刷、フレキソ印刷等の印刷プロセスによって被着される。
【0009】
本発明のさらなる実施形態では、「可融合金」の合金は鋳込み技術(Praegetechnik)を用いて、または熱可塑性樹脂のように被着される。
【0010】
同じように良好に、溶融物は構造化されずに、スピンコーティング、浸漬、ラケル方法(Rakelverfahren)等によって被着され、むしろ後で行われる製造ステップにおいて構造化される。
【0011】
「可融合金」は、例えば「共融混合物」を構成する合金の種類として知られている。すなわち、合金内の成分の特定の割合のモル分配または重量分配または体積分配で、合金または混合物の融点は個々の成分の融点をはるかに下回る。さらに共晶合金は次のような利点を有している。すなわち、場合によっては10℃または10℃それ以上の温度にわたって延在する溶融領域とは異なり、定められた融点を有しているという利点を有している。
【0012】
有利にはこれは、30℃〜200℃の間の領域で、殊に有利には150℃を下回って溶融物として存在する合金のことである。
【0013】
このような合金の構成部分は、以下の金属であり得る:すなわちビスマス、鉛、スズ、カドミウム、インジウム、水銀、銀であり得る。ここで「可融合金」は、その融点は明確であり、すなわち摂氏温度で測定可能であり、個々の構成部分の融点を下回っているという特徴を有している。
【0014】
殊に有利には、健康上懸念のない「可融合金」または合金、すなわちカドミウム、水銀および/または鉛を僅かにしか含まない、または含まない「可融合金」または合金が適している。例として以下の合金を示す:57%(重量%)のビスマス、17%のスズ、26%のインジウム(融点78℃);48%のスズ、52%のインジウム(融点118℃)または58%のビスマス、42%のスズ(融点138℃)。
【0015】
さらに本発明の方法の大きな利点は、これらの材料がPVD方法を介して製造されたフィルムに比べてより低いエラー箇所率を有する均質なフィルムをもたらすことである。PVD方法を介して製造された従来の陰極は、高いエラー箇所率を有していた。これは暗い箇所の増大を介してOLEDの劣化の主な原因である。
【0016】
陰極を製造するための本発明による方法によって、薄いフィルムが製造される。このフィルムは可撓性を示し、この可撓性によってこのフィルムは柔軟な用途に適する。
【0017】
発光ポリマーをベースにしたパッシブマトリクスディスプレイを製造するために、まずはガラス基板上に、既知の製造技術に従って、層構造が陰極まで実現される。その後、第1の陰極層、例えば「注入層」が絶縁性材料から粉体の形状で積層される。その後、「可融合金」から成る外側の陰極層が、例えば200〜500μmの厚さで被着される。このような製造方法は硬質な基板に制限されているのではなく、柔軟な基板上でも十分に使用可能である。
【0018】
これは殊に、柔軟な光源(フレキシブルライトソース)に関して重要である。ここで言及されるべきことは、「可融合金」の薄い層(<1mm)が実質的に柔軟であるということである。
【0019】
同じように有機太陽電池または光起電力セルは柔軟な基板上でも、本発明による陰極を含むことができる。
【0020】
本発明の陰極は全ての種類の有機エレクトロニックモジュールに対して使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に金属合金の溶融物から製造されている、
ことを特徴とする、有機エレクトロニックモジュール用の陰極。
【請求項2】
前記合金は、30〜200℃の温度領域で溶融物として存在する、請求項1記載の陰極。
【請求項3】
前記金属合金は耐酸化性である、請求項1または2記載の陰極。
【請求項4】
前記金属合金は、溶融物として耐酸化性である、請求項1から3までのいずれか1項記載の陰極。
【請求項5】
前記合金は少なくとも金属を含有しており、
当該金属はカドミウム、スズ、ビスマス、鉛、インジウム、水銀および/または銀の金属のグループから選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の陰極。
【請求項6】
金属合金の溶融物を被着させる、
ことを特徴とする、エレクトロニックモジュールの陰極を製造する方法。
【請求項7】
溶融物の被着を印刷プロセスによって行う、請求項6記載の方法。
【請求項8】
溶融物の被着を構造化せずに行う、請求項6または7記載の方法。

【公表番号】特表2006−515709(P2006−515709A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500002(P2006−500002)
【出願日】平成16年1月20日(2004.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000427
【国際公開番号】WO2004/066332
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Wernerwerkstrasse 2, D−93049 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】