説明

有機エレクトロルミネセンス素子

本発明は、少なくとも1つのリン光エミッタを用いてドープされ、およびマトリックス中のエミッタのドープ領域が、マトリックス層の一部に渡ってのみ層に垂直に伸びることを特徴とする、明示したマトリックス材料から構成される有機エレクトロルミネセンスデバイスの改良に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス素子のための新規の設計原理およびこれに基づくディスプレイにおけるその使用を記載する。
【0002】
最も広い意味で電子産業に属し得る一連の異なるタイプのアプリケーションにおいて、機能材料としての有機半導体の使用は、近年現実のものとなり、また近い将来に予測される。例えば、感光性の有機材料(例えば、フタロシアニン)および有機電荷輸送材料(一般的には、トリアリールアミンに基づく正孔輸送体)は、既に、コピー機においてこの数年間用途を見出している。半導性有機材料(この中のいくつかは、可視スペクトル範囲において光を放射できる)の使用を、市場に、例えば、有機エレクトロルミネセンスデバイスに導入することがまさに始まっている。これらの個々の要素である、有機発光ダイオード(OLED)は、以下の非常に幅広い範囲の用途を有する。すなわち、
1.単色または多色ディスプレイ要素(例えば、ポケット計算機、携帯電話等)のための白色または有色バックライト、
2.大表面積ディスプレイ(例えば、交通標識、広告掲示板等)、
3.全ての色および全ての形態の照明要素、
4.携帯アプリケーション(例えば、携帯電話、PDA、カムコーダ等)のための単色またはフルカラーパッシブマトリックスディスプレイ、
5.種々様々なアプリケーション(例えば、携帯電話、PDA、ラップトップ、テレビ等)のための、フルカラー、大表面積、高解像度のアクティブマトリックスディスプレイ
である。
【0003】
いくつかのこれらのアプリケーションの開発は、既に非常に進歩しているにもかかわらず、なお、技術的な改善の多大なる要求が存在する。
【0004】
比較的単純なOLEDを含むデバイスは、有機ディスプレイを有する、パイオニア社製のカーラジオ、パイオニア社製の携帯電話、およびコダック社製のSNMDまたはデジタルカメラにより示されるように、市場へと既に導入されている。しかしながら、切迫した改善が要求される少なからぬ問題がなお存在する。
【0005】
1.例えば、とりわけOLEDにおける駆動寿命は未だに短く、従って、今日までのところ、単純なアプリケーションを商業的に実現することが可能であるのみである。
【0006】
2.この比較的短い寿命は、さらなる問題を生じる。とりわけ、フルカラーアプリケーション(フルカラーディスプレイ)、すなわち、全くセグメント化されず、むしろ、全表面に渡り全ての色を示すことができるディスプレイについては、現在の状況であるが、個々の色が異なる速度でここで老化する場合が特に悪い。これは、上記した寿命の終わり(これは、一般的に、初期の輝度の50%までの低下により定義される)の前でさえ、白色点の明瞭なシフトをもたらし、すなわち、ディスプレイにおける色の表示の正確さが、非常に乏しくなる。このことを回避するために、いくつかのディスプレイ製造元は、寿命を、70%または90%の寿命(すなわち、初期値の70%または90%までの初期輝度の低下)として設定する。しかしながら、これは、さらに短くなる寿命をもたらす。
【0007】
3.OLEDの効率、とりわけパワー効率(Im/Wで測定)は容認できても、勿論のこと、ここでの改善も未だに望まれる。
【0008】
4.老化プロセスは、一般的に、電圧の上昇を伴う。この効果は、電圧駆動型有機エレクトロルミネセンスデバイスを、困難または不可能にする。しかしながら、電流駆動型アドレッシングは、より複雑であり、この場合にはまさに高価である。
【0009】
5.必要とされる駆動電圧は、効率的なリン光OLEDの場合にとりわけ非常に高く、従って、パワー効率を改善するために低下させる必要がある。このことは、とりわけ携帯アプリケーションについて非常に重要である。
【0010】
6.必要とされる駆動電流は、同様に、この数年において低下しているが、パワー効率を改善するために、なおさらに低下させる必要がある。
【0011】
7.OLEDの構造は、有機層の数の多さの結果として、複雑であり高価である。層の数を減らすことは、製造工程を減らし、よって、コストを削減し、製造信頼度を高めるために、製造にとって非常に重要である。
【0012】
上記した問題は、OLEDの製造における改善を必要とする。近年持ち上がったこの方向における開発は、蛍光の代わりにリン光を示す有機金属錯体の使用である(M.A.バルドー(M.A.Baldo)、S.ラマンスキー(S.Lamansky)、P.E.バローズ(P.E.Burrows)、M.E.トンプソン(M.E.Thompson)、S.R.フォレスト(S.R.Forrest)、Appl. Phys. Lett. 1999, 75, 4-6)。量子力学的な理由のために、最大で4倍までの量子効率、エネルギー効率およびパワー効率が、有機金属化合物を用いると可能である。この新しい開発は確立されるであろうが、それ自身が、対応するデバイス構成が、OLEDにおけるこれらの利点(一重項発光=蛍光に対して、三重項発光=リン光)を利用できるということを見出せるかどうかという点に強く依存する。この分野での実用的な使用のための必須の条件は、携帯アプリケーションを可能にするために、高いパワー効率と共に、とりわけ、長い駆動寿命、熱応力に対する高い安定度、並びに低い使用電圧および低い駆動電圧である。
【0013】
蛍光有機エレクトロルミネセンスデバイスの一般的な構造は、例えば、米国特許第4,539,507号および米国特許第5,151,629号に記載される。典型的には、有機エレクロトルミネセンスデバイスは、真空方法または種々の印刷技術により設けられる複数の層から成る。リン光有機エレクトロルミネセンスデバイスについては、これらの層が、具体的である。すなわち、
1.キャリア板=支持体(典型的には、ガラスまたはプラスチックフィルム)、
2.透明陽極(典型的には、インジウムスズ酸化物、ITO)、
3.正孔注入層(Hole Injection Layer =HIL):例えば、銅フタロシアニン(CuPc)またはポリアニリン(PANI)若しくはポリチオフェン誘導体(PEDOT等)のような伝導性ポリマーに基づくもの、
4.1以上の正孔輸送層(Hole Transport Layer =HTL):典型的には、トリアリールアミン誘導体に基づくもの、例えば、第1の層として、4,4’,4’’−トリス(N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(NaphDATA)、第2の正孔輸送層として、N,N’−ジ(ナフタ−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、
5.1以上の発光層(Emission Layer =EML):例えば、トリス(フェニルピリジル)イリジウム(Ir(PPy))またはトリス(2−ベンゾチオフェニルピリジル)イリジウム(Ir(BTP))であるリン光染料をドープした、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)のようなマトリックス材料から典型的に成る。しかしながら、発光層は、また、ポリマー、ポリマーの混合物、ポリマーと低分子量化合物の混合物、または異なる低分子量化合物の混合物から成り得る、
6.正孔障壁層(Hole Blocking Layer =HBL):BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン=バトクプロイン)またはビス(2−メチル−8−キノリノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)から典型的に成るもの、
7.電子輸送層(Electron Transport Layer =ETL):通常、アルミニウムトリス−8−ヒドロキシキノリネート(AIQ)に基づくもの、
8.電子注入層(Electron Injection Layer =EIL)(また、絶縁層(Insulator Layer)(ISL)として時として知られる):高い誘電率を有する材料、例えば、LiF、LiO、BaF、MgO、NaFから成る薄層、
9.陰極:ここでは、一般的に、低い仕事関数を有する金属、金属の組み合わせ、または合金、例えば、Ca、Ba、Cs、Mg、Al、In、Mg/Agが用いられる
である。
【0014】
この全体のデバイスは、適切な(アプリケーションに依存して)構造を有し、接触し、および最終的には密閉される。このようなデバイスの寿命は、一般的に、水および/または空気の存在下で劇的に短くなるためである。同じことが、光を陰極から発する逆の構造として知られるものにも当てはまる。これら逆転OLEDにおいて、陽極は、例えば、Al/Ni/NiOxまたはAl/Pt/PtOx、または5eVよりも大きいエネルギーを有するHOMOを有する他の金属/金属酸化物の組み合わせから成る。陰極は、ポイント8および9で述べたものと同じ材料から成るが、金属、例えば、Ca、Ba、Mg、Al、In等が、非常に薄く、よって透明であるという点で異なる。層の厚さは、50nm以下、より良くは30nm以下、さらにより良くは10nm以下である。例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)等のさらなる透明材料を、この透明陰極に適用することができる。
【0015】
有機エレクトロルミネセンスデバイスにおける効率と寿命を高めるためのリン光エミッタおよびマトリックス材料で構成されるエミッタ層に続く正孔障壁層(HBL)の使用は、長い間知られている。
【0016】
上記の構造のリン光OLEDからも明らかなように、次々と多くの異なる材料から成る多くの層が、連続的に設けられる必要があり、これは、市販のOLEDの製造プロセスを非常に複雑にするために、リン光OLEDは、非常に高価であり、不便である。これらの構造は、一般的に、最大効率の基準に従って最適化される。しばしば、BCPは、正孔障壁材料(HBM)として用いられ、これは、しかしながら、OLEDの寿命を大いに制限するという非常に不利な点を有する。さらなる正孔障壁材料は、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)である。これは、デバイスの安定度と寿命を改善することを可能にするが、デバイスの量子効率が、BCPと比べて、明らかに(約40%)低いという副作用を有する(T.ワタナベ(T.Watanabe)等、Proc. SPIE 2001, 4105, 175)。従って、クォン(Kwong)等(Appl. Phys. Lett. 2002, 81, 162)は、トリス(フェニルピリジル)イリジウム(III)を用いて、100cd/mにおいて10000hの寿命を達成した。しかしながら、このデバイスは、19cd/Aの効率のみを示し、これは、当該技術分野の状態よりもはるかに低い。つまり、得られる効率がとても低いために、BAlqは、全体として、満足な正孔障壁材料ではない。
【0017】
今日までのところ、この問題を解決するためのいくつかの試みがある。とりわけ、新規のマトリックス材料が提案され、これは、HBLを過剰に用いる。
【0018】
・EP 1308494 は、発光層(EML)が、リン光エミッタをドープした、電子伝導性質を有するマトリックス材料から成るOLEDを記載する。ここに記載されるOLEDの不利な点は、最も高い効率が、この構造では得られないということである。効率の損失と引き換えに、寿命のみが改善される。
【0019】
・US 2003/0146443 は、発光層(EML)が、リン光エミッタをドープされた、電子伝導性質を有するマトリックス材料から成るOLEDを記載する。ただ1つのみのさらなる正孔輸送層を用いるために、これは、層構造を簡素化する。しかしながら、これらのOLEDは、従来の構造のOLED、すなわち、HBLの使用を伴うものと同じ効率を達成しない。いくつかの場合において、わずかではあるが、用いられるマトリックスの発光が、観察される。この筆者等により批評される従来技術の側面は、HBLにおいて用いられる材料が、非常に低い安定度を有するために、従来のOLEDの寿命があまりにも短いことである。しかしながら、彼等自身は、彼等により製造された構造の寿命と安定度のいかなる発表もしてはいない。これは、ここに示される構造が、低い安定度の問題を解決してはいないという疑念をもたらす。
【0020】
・C.アダチ(C.Adachi)等(Organic Electronics 2001, 2, 37)は、カルバゾール含有マトリックス(CBP)が、三重項エミッタで完全にはドープされず、および正孔障壁層を用いず、その結果としてドープされないCBP層が、エミッタ層と陰極間に存在するリン光OLEDを記載する。しかしながら、別個の正孔障壁層を用いるかどうかに関係なく、マトリックス層が完全にドープされる場合と比較して、この場合において、明らかに乏しい効率(1オーダを超える範囲における)が得られる。ドープされない分画が大きいほど、得られる効率はより乏しい。従って、マトリックスが部分的にのみドープされる場合に、明確な不都合がここでは生じる。また、マトリックスが部分的にのみドープされる場合に、デバイスの発光色が、明瞭にシフトすることも見出される。完全にドープされたマトリックスを有するデバイスは、三重項エミッタの緑色発光を示す一方で、部分的にドープされたマトリックスを用いる場合には、発光色が、正孔輸送材料の青色発光へとシフトする。つまり、カルバゾールに基づくマトリックス材料は、不完全なドープに適さないことが明らかである。
【0021】
とりわけ効率的なOLEDについて、例えば、BCPまたはBAlqである正孔障壁材料(HBM)が、今日までのところ必要とされてきたが、不満足な副作用をもたらすことが、従来技術の記載から明らかである。驚くべきことに、以下に詳述する本発明の設計原理に対応するOLEDは、従来技術に対して明確な改善を有することがここに見出された。別個の電子輸送層は、この設計原理によると必ずしも用いられる必要はなく、この結果として、OLEDの構造は、相当に簡素化される。さらに、明確により高いパワー効率が、この構造によって得られる。
【0022】
従って、本発明は、陽極、陰極、並びに少なくとも1つのマトリックス層を含み、この少なくとも1つのマトリックス層が、式Y=X(式中、Xは、少なくとも1つの非結合電子対を有し、およびY基は、C、P、As、Sb、Bi、S、SeまたはTeであり、X基は、N、O、S、SeまたはTeである)の構造ユニットを含みおよび少なくとも1種のリン光エミッタでドープされる少なくとも1つのマトリックス材料を含む、有機エレクトロルミネセンスデバイスであって、層に対して垂直の、マトリックスにおけるエミッタのドープ領域が、マトリックス層の一部に渡ってのみ延びていることを特徴とするエレクトロルミネセンスデバイスを提供する。
【0023】
上記した一般式Y=Xにおいて、「=」は、二重結合を表わす。
【0024】
有機エレクトロルミネセンスデバイスは、好ましくは、式Y=Xのマトリックス材料が、式(1)〜(4)の化合物(スキーム1)を含むことを特徴とする
【化2】

【0025】
(式中、用いられる記号は、以下の通りにそれぞれ定義される。すなわち、
Yは、式(2)においてはC、式(1)および(3)においてはP、As、SbまたはBi、並びに式(1)、(2)および(4)においてはS、SeまたはTeであり、
Xは、それぞれの場合において同一であるか異なり、NR、O、S、Se、Teであり、
Rは、それぞれの場合において同一であるか異なり、H、F、CN、N(R、1〜40の炭素原子を有し、Rにより置換されていてもよく、あるいは置換されていない直鎖の、分枝のまたは環状のアルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基(ここで、1以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、−O−、−S−、−NR−または−CONR−により置き換えられてもよく、また、1以上の水素原子は、F、Cl、Br、I、CN、B(R、Si(RまたはNOにより置き換えられてもよい)、または1〜40の炭素原子を有し、1以上のR、CN、B(RまたはSi(R基により置換されていてもよい芳香族環構造若しくはヘテロ芳香族環構造であり、ここで、複数の置換基Rは、互いに、単環の環構造、多環の環構造、脂肪族環構造または芳香族環構造を形成していてもよく、
は、それぞれの場合において同一であるか異なり、1〜22の炭素原子を有する直鎖の、分枝のまたは環状のアルキル鎖またはアルコキシ鎖(ここで、1以上の非隣接の炭素原子は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、−NR−、−O−、−S−、−CO−O−または−O−CO−O−により置き換えられてもよく、1以上の水素原子は、フッ素により置き換えられてもよい)、1〜40の炭素原子を有し、および1以上のR基により置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール若しくはアリールオキシ基、またはOHまたはN(Rであり、
は、それぞれの場合において同一であるか異なり、H、または1〜20の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、
但し、前記マトリックス材料のモル質量は、150g/モルを超える)。
【0026】
本発明の文脈において、芳香族環構造またはヘテロ芳香族環構造は、必ずしも芳香族基またはヘテロ芳香族基のみを含む系でなく、複数の芳香族基またはヘテロ芳香族基が、短い非芳香族ユニット(H以外の<10%の原子、好ましくは、H以外の<5%の原子)、例えば、sp混成のC、O、N等により中断され得る系も意味すると理解される。すなわち、例えば、9,9’−スピロビフルオレン、9,9’−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジフェニルエーテル等が、芳香族系であると理解される。
【0027】
ケトン種およびイミン種からのマトリックス材料が、例えば、未公開特許出願 DE 10317556.3 に記載され、ホスフィンオキシド種、ホスフィンスルフィド種、ホスフィンセレニド種、ホスファゼン種、スルホン種およびスルホキシド種からのマトリックス材料が、例えば、未公開特許出願 DE 10330761.3 に記載されている。ケトン、ホスフィンオキシドおよびスルホキシド、すなわち、Y=C、P、SおよびX=Oである材料が好ましく、ケトン、すなわち、Y=CおよびX=Oである材料が特に好ましい。
【0028】
この文脈において、1を超えるY=X基を含む材料が、明示的に可能であり、適している。
【0029】
特に適したマトリックス材料は、平面構造を有さない化合物であることが見出された。Y=Xの形態の構造ユニットにおいて、適切な置換基が、平面からの全体の構造のずれを確実にすることができる。これは、特に、少なくとも1つの置換基Rが、少なくとも1つのsp混成炭素、シリコン、ゲルマニウムおよび/または窒素原子を含む場合であり、これらは適切な四面体結合形状、または窒素の場合には、ピラミッド形の結合形状を有する。平面からの明らかなずれを達成するためには、少なくとも1つのsp混成原子が、二級原子、三級原子または四級原子である場合が好ましく、より好ましくは、三級原子または四級原子であり、炭素、シリコン、ゲルマニウムの場合には、最も好ましくは四級原子である。二級原子、三級原子または四級原子とは、それぞれ、水素原子以外の2つの、3つのおよび4つの置換基を有する原子と理解される。
【0030】
少なくとも1つのR基において、9,9’−スピロビフルオレン誘導体(好ましくは、2位、および/または2,7位、および/または2,2’位、および/または2,2’,7位、および/または2,2’,7,7’位を介して結合される)、9,9−二置換フルオレン誘導体(好ましくは、2位および/または2,7位を介して結合される)、6,6−および/または12,12−二または四置換インデノフルオレン誘導体、トリプチセン誘導体(好ましくは、9位および/または10位を介して結合される)、ジヒドロフェナントレン誘導体(好ましくは、2位および/または2,7−位を介して結合される)、ヘキサアリールベンゼン誘導体(好ましくは、芳香族基に対するp位を介して結合される)、またはテトラアリールメタン誘導体(好ましくは、芳香族基に対するp位を介して結合される)を含む化合物が好ましい。
【0031】
少なくとも1つのR基において、9,9’−スピロビフルオレン誘導体を含む化合物が特に好ましい。
【0032】
マトリックス材料のガラス転移温度Tが、100℃を超える、好ましくは120℃を超える、最も好ましくは140℃を超えることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスがさらに好ましい。
【0033】
有機エレクトロルミネセンスデバイスが、上記した層の他に、1以上の正孔注入層(HIL)および/または正孔輸送層(HTL)を含む場合も、好ましいであろう。有機エレクトロルミネセンスデバイスが、上記した層の他に、1以上の電子輸送層(ETL)および/または電子注入層(EIL)を含む場合もまた、好ましいであろう。原則として、別個の正孔障壁層(HBL)を使用することも可能であるが、本発明のデバイス構造におけるその使用は、必要でなく、よって、好ましくない。
【0034】
1以上のドープ領域が、マトリックス層中に存在し、および1以上のドープされない領域が、マトリックス層中に存在し、マトリックス層中の1つのドープされない領域が、電子輸送層ETL(またはEILまたは陰極)と隣接し、およびマトリックス層中の1つのドープ領域が、正孔輸送層HTL(またはHILまたは陽極)に隣接することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。
【0035】
本発明の1つのとり得る態様を、図1に記載する。ここでは、マトリックス層は、ドープされた領域とドープされない領域から成り、ドープされた領域は、HTLに隣接し、ドープされない領域は、ETLに隣接する。記載から明らかではあるが、ドープされたマトリックス層とドープされないマトリックス層(両領域1)におけるマトリックス材料は、同一であることを指摘しておく。
【0036】
図1において(以下に続く全ての図においても全く同様に)、別個のEIL、ETL、HTL、および/またはHILの使用は、絶対的に必要ではなく、これらの層の使用は、本発明の単にとり得る態様であることを、明示的に指摘しておく。つまり、図1〜8におけるこれらの層の描写は、単に、例としてみなされるのみであり、本発明の一般的な実行を制限することは意図されない。同様に、これらの層を含まない対応するデバイスは、本発明に従う。
【0037】
本発明のさらにとり得る態様を、図2に記載する。マトリックス層は、2つのドープされた領域と2つのドープされない領域から成り、1つのドープされた領域は、HTLに隣接し、および1つのドープされない領域は、ETLに隣接する。記載から明らかではあるが、マトリックス材料は、個々の領域において同一であり、好ましくは、全ての領域において同一であることを、再び明示的に指摘しておく。
【0038】
マトリックス層は、また、3つ以上のドープされた領域と3つ以上のドープされない領域から成る。2つまたは3つの交互のドープされた領域とドープされない領域が、白色発光OLEDに特に適している。
【0039】
1以上のドープ領域が、マトリックス層中に存在し、および1以上のドープされない領域がマトリックス層中に存在し、マトリックス層中の1つのドープされない領域が、正孔輸送層HTL(またはHILまたは陽極)に隣接し、マトリックス層中の1つのドープ領域が、電子輸送層ETL(またはEILまたは陰極)に隣接することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスもまた、好ましい。
【0040】
本発明のさらにとり得る態様を、図3に記載する。マトリックス層は、ドープされた領域とドープされない領域から成り、ドープされた領域は、ETLに隣接し、およびドープされない領域は、HTLに隣接する。記載から明らかではあるが、ドープされたマトリックス層とドープされないマトリックス層(両領域1)におけるマトリックス材料は、同一であることを、再び明示的に指摘しておく。
【0041】
本発明のさらにとり得る態様を、図4に記載する。マトリックス層は、2つのドープされた領域と2つのドープされない領域から成り、1つのドープされた領域は、ETLに隣接し、および1つのドープされない領域は、HTLに隣接する。記載から明らかではあるが、マトリックス材料は、それぞれの個々の領域において同一であり、好ましくは、全ての領域において同一であることを、再び明示的に指摘しておく。
【0042】
1以上のドープ領域が、マトリックス層中に存在し、および1以上のドープされない領域が、マトリックス層中に存在し、マトリックス層中の1つのドープされない領域が、電子輸送層ETL(またはEILまたは陰極)に隣接し、および1つのドープされない領域が、正孔輸送層HTL(またはHILまたは陽極)に隣接することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。
【0043】
本発明のさらにとり得る態様を、図5に記載する。マトリックス層は、1つのドープされた領域と2つのドープされない領域から成り、2つのドープされた領域は、HTLおよびETLに隣接し、およびドープされた領域は、ドープされない領域の間に存在する。記載から明らかではあるが、ドープされたマトリックス層とドープされないマトリックス層(両領域1)におけるマトリックス材料は、同一であることを、再び明示的に指摘しておく。
【0044】
本発明のさらにとり得る態様を、図6に記載する。マトリックス層は、2つのドープされた領域と3つのドープされない領域から成り、ドープされない領域は、HTLおよびETLに隣接し、ドープされた領域とドープされない領域は、それらの間で互い違いになる。記載から明らかではあるが、マトリックス材料が、それぞれの個々の領域において同一であり、好ましくは、全ての領域において同一であることを、再び明示的に指摘しておく。同様に、マトリックス層は、3つ以上のドープされた領域と4つ以上のドープされない領域からも成り得る。
【0045】
1以上のドープ領域が、マトリックス層中に存在し、および1以上のドープされない領域がマトリックス層中に存在し、マトリックス層中の1つのドープ領域が、電子輸送層ETL(またはEILまたは陰極)に隣接し、および1つのドープ領域が、正孔輸送層HTL(またはHILまたは陽極)に隣接することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。
【0046】
本発明のさらにとり得る態様を、図7に記載する。マトリックス層は、1つのドープされない領域と2つのドープされた領域から成り、2つのドープされた領域は、HTLおよびETLに隣接し、ドープされない領域は、ドープされた領域の間に存在する。記載から明らかではあるが、マトリックス材料は、それぞれの個々の領域において同一であり、好ましくは全ての領域において同一であることを、再び明示的に指摘しておく。
【0047】
本発明のさらにとり得る態様を、図8に記載する。マトリックス層は、2つのドープされない領域と3つのドープされた領域から成り、ドープされた領域は、HTLおよびETLに隣接し、およびドープされた領域とドープされない領域は、それらの間で互い違いになる。記載から明らかではあるが、マトリックス材料は、それぞれの個々の領域において同一であり、好ましくは全ての領域において同一であることを、再び明示的に指摘しておく。同様に、マトリックス層は、4つ以上のドープされた領域と3つ以上のドープされない領域からも成り得る。
【0048】
少なくとも1つが、上記した構造ユニットX=Yを含むという条件で、原則として、異なる領域に異なる材料を用いることができる。しかしながら、全てのマトリックス材料が、この構造ユニットを含む必要はない。例えば、いくつかの領域において、例えば、他のマトリックス材料が存在することが可能である。しかしながら、実行可能性および経済上の実現性の理由のために、同一のマトリックス材料が、複数の領域において用いられる場合が有利であることが見出され、複数の隣接する領域において同一のマトリックス材料を用いることが特に好ましく、全ての領域について同一のマトリックス材料を用いることが非常に特に好ましい。
【0049】
さらに好ましい態様において、ドーパントにより決定される異なる発光色が、それぞれの領域および全ての領域に割り当てられる。
【0050】
本発明の好ましい態様において、本発明のエレクトロルミネセンスデバイスは、別個の正孔障壁層(HBL)を含まない。
【0051】
本発明のさらに好ましい態様において、本発明のエレクトロルミネセンスデバイスは、別個の正孔障壁層(HBL)も、別個の電子輸送層(ETL)も含まず、すなわち、マトリックス層のドープされた部分またはドープされない部分は、陰極または電子注入層に直接的に隣接する。
【0052】
本発明のエレクトロルミネセンスデバイスは、必ずしも、正孔注入層および/または正孔輸送層(HILまたはHTL)を含まず、すなわち、マトリックス層のドープされた部分またはドープされない部分は、正孔注入層に直接的に隣接するか、陽極に直接的に隣接する。
【0053】
ドープ領域の層の厚さが、マトリックス層の厚さの98%〜40%、好ましくは90%〜60%であることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。
【0054】
マトリックス層の層の厚さが、1〜150nmの厚さ、好ましくは5〜100nmの厚さを有することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。
【0055】
マトリックス材料が、30nmのフィルム厚で、380nm〜750nmの可視スペクトル範囲において、0.2未満の、好ましくは0.1未満の、より好ましくは0.05未満の吸光度を有することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。
【0056】
存在するリン光エミッタが、36よりも大きく且つ84未満の原子番号の少なくとも1つの原子を有する化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスもまた、好ましい。
【0057】
リン光エミッタが、56よりも大きく且つ80未満の原子番号の少なくとも1つの元素を含み、例えば、特許出願 WO 98/01011、US 02/0034656、US 03/0022019、WO 00/70655、WO 01/41512、WO 02/02714、WO 02/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 03/040257 および WO 03/084972 によれば、最も好ましくは、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユーロピウム、とりわけ、イリジウムまたは白金を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが特に好ましい。
【0058】
1以上の層が、昇華プロセスを用いてコーティングされることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスもまた、好ましい。低分子量材料が、真空昇華ユニットにおいて、10−5mbar未満の、好ましくは10−6mbar未満の、より好ましくは10−7mbar未満の圧力で、真空蒸着により適用される。
【0059】
1以上の層が、OVPD(有機気相蒸着(organic vapor phase deposition))プロセスにより、またはキャリアガス昇華によりコーティングされることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが、同様に好ましい。この場合において、低分子量材料は、10−5mbar〜1barの圧力で適用される。
【0060】
1以上の層が、任意の印刷プロセス、例えば、フレキソ印刷またはオフセット印刷により、より好ましくは、LITI(光誘発熱画像処理(light-induced thermal imaging)、熱転写印刷)およびインクジェット印刷によりコーティングされることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスもまた、好ましい。
【0061】
上記した発光デバイスは、従来技術に対する以下の驚くべき利点を有する。
【0062】
1.対応するデバイスの効率が、本発明の設計に従わない系、すなわち、1以上の別個のHBLを含む系と比較して向上する。カルバゾール含有マトリックスを用いるデバイスの相当する構造は、効率の大幅な低下をもたらす(アダチ等、Organic Electronics 2001, 2, 37 を参照)ために、このことは特に驚くべきことである。
【0063】
2.対応するデバイスの安定度および寿命が、本発明の設計に従わない系、すなわち、1以上の別個のHBLを含む系と比較して向上する。
【0064】
3.駆動電圧が、本質的に低減され、これは、パワー効率を高める。このことは、別個の電子輸送層が用いらない場合、すなわち、マトリックス層が、陰極または電子注入層に直接的に隣接する場合に特に当てはまる。
【0065】
4.より少ない少なくとも1つの有機層が用いられるために、層構造は単純である。マトリックス層が、陰極または電子注入層と直接的に隣接する場合に、この場合において、別個の正孔障壁層も別個の電子輸送層も用いられないために、特に明確な利点が存在する。同様に、別個の正孔輸送層および/または別個の正孔注入層が用いられない場合に、層構造は、とりわけ簡素化する。
【0066】
5.より少ない少なくとも1つの有機層が用いられるために、製造の複雑さが減じられる。このことは、従来の製造方法においてはそれぞれの有機層のために別個の蒸着ユニットが用いられるために、製造プロセスにおけるかなりの利点であり、結果として、このようなユニットは省かれるか、完全に不要になる。
【0067】
6.発光スペクトルは、ドープされたマトリックスと正孔障壁材料により得られる発光スペクトルと同一である。このことは、アプリケーションについて必須であり、およびカルバゾール含有化合物に基づく部分的にドープされた材料は、発光スペクトルにおける極端な変化をもたらし、従って、発光は最終的に、もはや三重項エミッタに由来せず、正孔輸送材料に由来し(アダチ等、Organic Electronic 2001, 2, 37 を参照)、このようなカラーシフトと伴うデバイスを、アプリケーションには用いることができないために、特に驚くべき結果である。
【0068】
ここに述べたことに基づく詳細を、以下に記載する例においても見出すことができる。
【0069】
本明細書および以下のさらなる例は、有機発光ダイオードおよび対応するディスプレイにのみ向けられる。記載のこの制限に関わらず、さらなる発明能力を伴うことなく、いくつかのさらなるアプリケーションを挙げるだけであるが、例えば有機太陽電池(O−SC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、または他の有機レーザーダイオード(O−laser)である他の関連するデバイスのために、対応する本発明の設計を用いることは、当業者には可能である。
【0070】

本発明の構造に対応する有機エレクトロルミネセンスデバイスの製造および特性決定
OLEDは、以下に概要を述べる一般プロセスにより製造された。これは、各状況に対する個々の場合(例えば、最適な効率および色を得るための層の厚さの変化)に適応させる必要があった。本発明のデバイスの製造のために、別個の正孔障壁層は省略され、いくつかの例においては、電子輸送層も省略され、およびエミッタ層は、上の記載に従って構成された。
【0071】
本発明のエレクトロルミネセンスデバイスを、例えば、特許出願 DE10330761.3 において記載されるように調製することができる。
【0072】
以下に続く例において、種々のOLEDの結果を示す。EMLおよびHBLを除けば、基本の構造、並びに用いられた材料および層の厚さは、より良い比較のために同一であった。
【0073】
上記した一般プロセスに類似して、以下の構造を有する発光OLEDを得た。すなわち、
PEDOT(HIL):60nm(水からスピンコーティングされた;H.C.スターク(H.C.Starck)から購入したPEDOT;ポリ−[3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン])、
NaphDATA(HTM):20nm(蒸着により適用された:シンテック(Syn Tec)から購入したNaphDATA;4,4’,4’’−トリス(N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン)、
S−TAD(HTM):20nm(蒸着により適用された;WO 99/12888 に従って調製されたS−TAD;2,2’,7,7’−テトラキス(ジフェニルアミノ)スピロビフルオレン)、
エミッタ層:正確な構造については、表における例を参照のこと、
BCP(HBL):使用する場合には、10nm;表における比較例を参照のこと、
AIQ(ETL):全ての場合において使用されない(表を参照);存在する場合には、10nm(蒸着により適用された;シンテックから購入したAIQ;トリス(ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III))、
Ba−Al(陰極):3nmのBa、その上の150nmのAl
である。
【0074】
まだ最適化されるこれらのOLEDは、標準様式で特性決定された。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、電流−電圧−輝度特性(IUL特性)から計算した、輝度の関数としての効率(cd/Aで測定)およびパワー効率(Im/Wで測定)、並びに寿命を測定した。寿命は、OLEDの初期輝度が、10mA/cmの一定の電流密度において、半分まで落ちた後の時間を意味すると理解される。
【0075】
表1は、種々の例の結果をまとめる。対応する層の厚さを含む全体のEMLおよびHBLの組成を挙げる。例1および2において、別個の電子輸送層を用いた。例3〜5は、別個の電子輸送層を有するものと有さないもの双方のデバイスを記載する。ドープされたリン光EMLは、マトリックス材料M1として化合物ビス(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)ケトン、マトリックス材料M2として化合物ビス(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)スルホキシド、マトリックス材料M3として化合物ビス(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)フェニルホスフィンオキシド、およびマトリックス材料M4として化合物2,7−ビス(2−スピロ−9,9’−ビフルオレニルカルボニル)スピロ−9,9’−ビフルオレンを含む。これらの化合物の合成は、未公開特許出願 DE 10317556.3 および DE 10330761.3 において記載される。本発明の構造に対応する提示した例において、EMLは、30nm厚のドープされた領域、およびそれに続く10nm厚のドープされない領域から成る。
【0076】
表1において用いられる略語は、以下の化合物に対応する。
【化3】

【表1】

【0077】
図9は、新規設計原理に従うもの(実験3aによる、三角印)および比較標準に相当するもの(実験3cによる、菱形印)の、M1においてIr(ppy)でドープされた場合におけるパワー効率(Im/W)の例を示す。例3aからのパワー効率は、高さが約2倍である。HBLおよびETLを有さない、パワー効率(実験3bによる、丸印)は、さらに約30〜50%高い。
【0078】
例3について示されるものと同じ観察が、表1から理解され得る通り、他の例においても成された。
【0079】
まとめると、新規設計原理により製造されたOLEDは、表1から容易に見受けることができる通り、より低い電圧におけるより高い効率と、より長い寿命を有する。このことは、ケトン、ホスフィンオキシドおよびスルホキシドについての例において示されるような、記載した全てのマトリックス材料およびマトリックス材料種に当てはまる。別個の電子輸送層が用いられない場合に、すなわち、マトリックス層が、陰極または電子注入層に直接的に隣接する場合に、電圧はとりわけ低く、従って、パワー効率は、特に高い。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の1つのとり得る態様。
【図2】本発明のさらにとり得る態様。
【図3】本発明のさらにとり得る態様。
【図4】本発明のさらにとり得る態様。
【図5】本発明のさらにとり得る態様。
【図6】本発明のさらにとり得る態様。
【図7】本発明のさらにとり得る態様
【図8】本発明のさらにとり得る態様。
【図9】新規設計原理に従うもの(三角印)および比較標準に相当するもの(菱形印)の、M1においてIr(ppy)でドープされた場合におけるパワー効率(Im/W)のグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、陰極、並びに少なくとも1つのマトリックス層を含み、前記少なくとも1つのマトリックス層が、式Y=X(式中、Xは、少なくとも1つの非結合電子対を有し、およびY基は、C、P、As、Sb、Bi、S、SeまたはTeであり、X基は、N、O、S、SeまたはTeである)の構造ユニットを含み、および少なくとも1種のリン光エミッタでドープされた少なくとも1つのマトリックス材料を含む、有機エレクトロルミネセンスデバイスであって、前記層に対して垂直の、前記マトリックスにおける前記エミッタのドープ領域が、前記マトリックス層の一部に渡ってのみ延びていることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項2】
前記マトリックス材料として、式(1)〜(4)の化合物(スキーム1)を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【化1】

(式中、用いられる記号は、以下の通りにそれぞれ定義される。
Yは、式(2)においてはCであり、式(1)および(3)においてはP、As、SbまたはBiであり、並びに式(1)、(2)および(4)においてはS、SeまたはTeであり、
Xは、それぞれの場合において同一であるか異なり、NR、O、S、Se、Teであり、
Rは、それぞれの場合において同一であるか異なり、H、F、CN、N(R、1〜40の炭素原子を有し、Rにより置換されていてもよいか、あるいは置換されていない直鎖の、分枝のまたは環状のアルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基(ここで、1以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、−O−、−S−、−NR−または−CONR−により置き換えられてもよく、また、1以上の水素原子は、F、Cl、Br、I,CN、B(R、Si(RまたはNOにより置き換えられてもよい)、または1〜40の炭素原子を有し、1以上のR、CN、B(RまたはSi(R基により置換されていてもよい芳香族環構造若しくはヘテロ芳香族環構造であり、ここで、複数の置換基Rは、互いに、単環の環構造、多環の環構造、脂肪族環構造または芳香族環構造を形成していてもよく、
は、それぞれの場合において同一であるか異なり、1〜22の炭素原子を有する直鎖の、分枝のまたは環状のアルキル鎖またはアルコキシ鎖(ここで、1以上の非隣接の炭素原子は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、−NR−、−O−、−S−、−CO−O−または−O−CO−O−により置き換えられてもよく、1以上の水素原子は、フッ素により置き換えられてもよい)、1〜40の炭素原子を有し、および1以上のR基により置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール若しくはアリールオキシ基、またはOHまたはN(Rであり、
は、それぞれの場合において同一であるか異なり、H、または1〜20の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、
但し、前記マトリックス材料のモル質量は、150g/モルを超える)
【請求項3】
Y=C、PまたはS、およびX=Oであることを特徴とする請求項1および/または2に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項4】
少なくとも1つの前記R基が、少なくとも1つの二級原子、三級原子または四級原子を含むことを特徴とする請求項1〜3の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項5】
少なくとも1つの前記R基が、四級原子を含むことを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項6】
少なくとも1つの前記R基が、9,9’−スピロビフルオレン誘導体、9,9−二置換フルオレン誘導体、6,6−および/または12,12−二置換または四置換インデノフルオレン誘導体、トリプチセン誘導体、ジヒドロフェナントレン誘導体、ヘキサアリールベンゼン誘導体またはテトラアリールメタン誘導体を含むことを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項7】
少なくとも1つの前記R基が、9,9’−スピロビフルオレン誘導体を含むことを特徴とする請求項6に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項8】
前記マトリックス材料のガラス転移温度Tが、100℃を超えることを特徴とする請求項1〜7の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項9】
前記有機エレクトロルミネセンスデバイスが、1以上の正孔注入層(HIL)および/または1以上の正孔輸送層(HTL)を含むことを特徴とする請求項1〜8の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項10】
前記有機エレクトロルミネセンスデバイスが、1以上の電子輸送層(ETL)および/または1以上の電子注入層(EIL)を含むことを特徴とする請求項1〜9の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項11】
1以上のドープ領域が、前記マトリックス層中に存在し、および1以上のドープされない領域が、前記マトリックス層中に存在し、前記マトリックス層中の1つの前記ドープされない領域が、前記電子輸送層ETL(またはEILまたは陰極)に隣接し、および前記マトリックス層中の1つの前記ドープ領域が、前記正孔輸送層HTL(またはHILまたは陽極)に隣接することを特徴とする請求項1〜10の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項12】
1以上のドープ領域が、前記マトリックス層中に存在し、および1以上のドープされない領域が、前記マトリックス層中に存在し、前記マトリックス層中の1つの前記ドープされない領域が、前記正孔輸送層HTL(またはHILまたは陽極)に隣接し、前記マトリックス層中の1つの前記ドープ領域が、電子輸送層ETL(またはEILまたは陰極)に隣接することを特徴とする請求項1〜10の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項13】
1以上のドープ領域が、前記マトリックス層中に存在し、および1以上のドープされない領域が、前記マトリックス層中に存在し、前記マトリックス層中の1の前記ドープされない領域が、前記電子輸送層ETL(またはEILまたは陰極)に隣接し、および1の前記ドープされない領域が、前記正孔輸送層HTL(またはHILまたは陽極)に隣接することを特徴とする請求項1〜10の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項14】
1以上のドープ領域が、前記マトリックス層中に存在し、および1以上のドープされない領域が、前記マトリックス層中に存在し、前記マトリックス層中に1の前記ドープ領域が、前記電子輸送層ETL(またはEILまたは陰極)に隣接し、1の前記ドープ領域が、前記正孔輸送層HTL(またはHILまたは陽極)に隣接することを特徴とする請求項1〜10の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項15】
前記ドープされたマトリックス層または前記ドープされないマトリックス層が、前記陰極または前記電子注入層(EIL)に直接的に隣接することを特徴とする請求項1〜14の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項16】
前記ドープされたマトリックス層または前記ドープされないマトリックス層が、前記正孔注入層(HIL)に直接的に隣接するか、または前記陽極に直接的に隣接することを特徴とする請求項1〜15の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項17】
前記ドープ領域の層の厚さが、前記マトリックス層の厚さの98%〜40%であることを特徴とする請求項1〜16の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項18】
前記マトリックス層が、1〜150nmの層の厚さを有することを特徴とする請求項1〜17の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項19】
前記マトリックス層が、30nmのフィルム厚で、380nm〜750nmの可視スペクトル領域において、0.2未満の吸光度を有することを特徴とする請求項1〜18の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項20】
存在する前記リン光エミッタが、36よりも大きく且つ84未満の原子番号の少なくとも1つの原子を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜19の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項21】
前記リン光エミッタが、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユーロピウムを含むことを特徴とする請求項20に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項22】
1以上の層が、昇華プロセスにより生成されることを特徴とする請求項1〜21の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項23】
1以上の層が、OPVD(有機気相蒸着(organic vapor phase deposition))プロセスにより設けられることを特徴とする請求項1〜21の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項24】
1以上の層が、印刷プロセスによりコーティングされることを特徴とする請求項1〜21の1以上に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項25】
1以上の層が、LITI(光誘発熱画像処理(light-induced thermal imaging))プロセスによりコーティングされることを特徴とする請求項24に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項26】
1以上の層が、インクジェット印刷プロセスによりコーティングされることを特徴とする請求項24に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−506270(P2007−506270A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526586(P2006−526586)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010379
【国際公開番号】WO2005/034260
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】