説明

有機エレクトロルミネッセンス照明装置の製造方法

【課題】有機EL照明装置の製造効率を図り、コストの削減を図ることができる有機EL照明装置の製造方法を提供する。
【解決手段】透光性基板1上に設けられる透光性電極層2を含む1対の電極層と、該1対の電極層に挟持され、有機エレクトロスミネッセンス物質を含有する有機層とを有し、透光性電極層2上にその一部に接触して設けられる遮光性の補助電極5と、該補助電極5を被覆して補助電極と有機層間の導通を抑制する層間絶縁被膜6と、透光性電極層2の端部を被覆して1対の電極層間の導通を抑制する端部絶縁被膜7とを有する有機エレクトロルミネッセンス照明装置の製造方法であって、補助電極5の形成後、層間絶縁被膜6と端部絶縁被膜7とを一工程のフォトリソグラフィーで形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス物質(有機ELともいう。)を発光体に用いた有機EL照明装置の製造方法に関し、より詳しくは、効率よく有機EL照明装置を製造できる有機EL照明装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL照明装置は、図6の上面図、図7の側面図に示すように、透光性基板1上に透光性電極層2と、有機ELを含有する有機層3と、透光性を問わない電極層4とを順次積層した構成を有し、有機層を挟持する電極からそれぞれ有機層に注入される正孔と電子が結合して放出されるエネルギーを受け励起された有機ELが、低エネルギー準位又は基底状態に戻る際に放出する光を利用したものである。この発光を透光性電極層、透光性基板を透過させその表面の発光面から外部へ放出させる有機EL照明装置は、薄膜であって、低電圧で発光し、高速応答性に優れることから、面状光源として開発されている。
【0003】
このような有機EL照明装置においては、透光性電極層は、酸化インジウムスズ(ITO)等が用いられ、もう一方の電極層が金属薄膜等で形成され、透光性電極層と比較して抵抗が低いため、透光性電極層の補助電極5を設けている。かかる補助電極は金属等で形成され遮光性であるため、透光性電極層の表面の一部にパターニングされて形成され、更に、補助電極と有機層の導通を抑制するため、補助電極を被覆するように層間絶縁被膜6が設けられている。
【0004】
透光性電極層2、電極層4には、外部電源に接続するための配線(図示せず)がそれぞれ接続されるが、電極層と配線の接続部の抵抗の上昇を抑制するために、電極の一端の幅と同じ幅を有する配線が接続されることから、透光性電極層2と電極層4の端部が延長され接続部とされる。このため、透光性基板に対して上層に形成される電極層4の延設端部と透光性電極層2との導通を抑制するため透光性電極層の端部を被覆する端部絶縁被膜7が設けられている。
【0005】
この種の有機EL照明装置は以下のようにして製造される。透光性基板上に、透光性電極材料を積層して透光性電極層を形成する。その上に所望のパターンの補助電極材料をフォトリソグラフィー工程等で形成する。具体的には、透光性電極層上に一面に補助電極材料膜を積層し、これにレジストを塗布し、所望のパターンが形成されたマスクを介して露光、現像、エッチングにより補助電極材料膜を所望のパターンに形成した後、補助電極材料膜上のレジストを剥離する。その後、同様のフォトリソグラフィー工程により、透光性電極層の端部に端部絶縁被膜を形成する。その後、有機層、電極層を積層し、有機EL照明装置を製造する。
【0006】
このような層間絶縁被膜と端部絶縁被膜は別工場で製造される場合もあり、層間絶縁被膜と端部絶縁被膜の形成のためにフォトリソグラフィー工程を反復して行うため、製造効率が低下し、コストの上昇を免れ得ない。
【0007】
補助電極を有する有機EL装置の効率を向上させた製造方法として、例えば、基板上の透明電極層上に補助電極を設け、補助電極を絶縁層で被覆した後、発光領域を除く透明電極層と第2端子部上に絶縁層を形成し、基板の全面にわたって有機層を形成し、形成した有機層上の発光領域と第2端子部分に第2電極層を形成し、第2電極層が形成されていない領域の有機層を除去して第1端子部の前記第1電極層を露出させ、端子部を除いた部分に封止膜を形成する有機EL装置の製造方法(特許文献1)が報告されている。特許文献1に記載される有機EL装置の製造方法は、基板上の電極と端子の接続を形成するため、基板とマスクのアライメントの回数を減らし、製造効率を上げる方法であるが、補助電極と有機層間の絶縁膜や、電極相互間の絶縁膜の形成の効率を図ることはできない。
【0008】
その他、補助電極を被覆して設けるポリイミド材料からなる層間絶縁層をフォトリソグラフィーにより形成する際、ポリイミドの現像剤により、電極取り出し配線の表面がエッチングされることに起因して剥離が生じるのを抑制するため、補助電極及び電極取り出し配線をポリイソプレンを主成分とする環化ゴムの感光性材料の被覆を形成した後、補助電極にポリイミド材料の層間絶縁層を形成する方法(特許文献2)や、透光性電極上に形成した補助電極と、これを被覆した層間絶縁膜間の密着性が悪いことにより、その後の現像工程で補助電極層の剥離が生じるのを抑制するため、透光性基板上に補助電極を形成し、その上に透光性電極を設けた有機EL発光装置(特許文献3)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−73338
【特許文献2】特開2008−10243
【特許文献3】特開2007−73305
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、有機EL照明装置の製造効率を図り、コストの削減を図ることができる有機EL照明装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、有機EL照明装置の製造工程数を減少できる方法について検討した結果、電極間の導通を抑制するために透光性電極の端部を被覆する絶縁被膜と、透光性電極層上に形成する補助電極と有機層間の導通を抑制するために補助電極を被覆する絶縁被膜は同じ材質で形成可能であり、これらを同時に形成すれば、有機EL照明装置を効率よく製造できることの知見を得、かかる知見に基き、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、透光性基板上に設けられる透光性電極層を含む1対の電極層と、該1対の電極層に挟持され、有機エレクトロスミネッセンス物質を含有する有機層とを有し、透光性電極層上にその一部に接触して設けられる遮光性の補助電極と、該補助電極を被覆して補助電極と有機層間の導通を抑制する層間絶縁被膜と、透光性電極層の端部を被覆して1対の電極層間の導通を抑制する端部絶縁被膜とを有する有機エレクトロルミネッセンス照明装置の製造方法であって、補助電極の形成後、層間絶縁被膜と端部絶縁被膜とを一工程のフォトリソグラフィーで形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス照明装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有機EL照明装置の製造方法は、有機EL照明装置の製造効率を図り、コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の有機EL照明装置の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明の有機EL照明装置の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図3】本発明の有機EL照明装置の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図4】本発明の有機EL照明装置の製造方法の他の例の一部の工程を示す工程図である。
【図5】本発明の有機EL照明装置の製造方法の一例によって製造される有機EL照明装置を示す上面図である。
【図6】有機EL照明装置の一例を示す上面図である。
【図7】有機EL照明装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の透光性基板上に設けられる透光性電極層を含む1対の電極層と、該1対の電極層に挟持され、有機EL物質を含有する有機層とを有し、透光性電極層上にその一部に接触して設けられる遮光性の補助電極と、該補助電極を被覆して補助電極と有機層間の導通を抑制する層間絶縁被膜と、透光性電極層の端部を被覆して1対の電極層間の導通を抑制する端部絶縁被膜とを有する有機エレクトロルミネッセンス照明装置の製造方法であって、補助電極の形成後、層間絶縁被膜と端部絶縁被膜とを一工程のフォトリソグラフィーで形成することを特徴とする。
【0016】
本発明の有機EL照明装置の製造方法は、主として透光性基板上に、1対の電極層の一方の電極層である透光性電極層を積層する工程、透光性電極層上に補助電極を形成する工程、透光性電極層の端部を被覆する端部絶縁被膜及び補助電極を被覆する層間絶縁被膜を形成する工程、有機EL物質を含有する有機層を形成する工程、1対の電極層の他方の電極層を形成する工程を有する。
【0017】
上記有機EL照明装置の製造に用いる透光性基板は、後述する透光性電極層を介して設けられる有機層に含まれる有機ELからの光を入射し、入射面に対向する発光面から放出するものであり、有機層から発光される光の透過率が高いものが好ましい。透光性基板としては、例えば、石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、その他、アルミノケイ酸ガラス、ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラスのガラスや樹脂フィルム等を用いることができる。透光性基板は、例えば、0.1〜2mmの厚さのものを用いることができる。
【0018】
上記透光性基板上に透光性電極層を積層する。透光性電極層は有機層を挟持する1対の電極層を構成するものであり、有機層からの光の透過率が高い材料で形成することが好ましい。透光性電極層は陽極であっても陰極であってもよいが、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の陽極として形成することができる。透光性電極層はスパッタ法、蒸着法等により、透光性基板の所定の領域に積層したり、フォトリソグラフィー法により形成することができる。透光性電極層の一端に配線部材との接続部を形成するため、一端を延長して設けることが好ましい。透光性電極層は、例えば、100〜300nm等の厚さに形成することができる。
【0019】
透光性電極層上に補助電極を形成する。補助電極は透光性電極層の低抵抗化を図ることができる導電性を有する材料で形成することが好ましい、補助電極材料として、クロム、アルミニウム、モリブデン、ニオブ、ネオジム等の金属や、これらの合金、アルミニウム・ネオジム(ANL)、モリブデン・ニオブ、モリブデン・アルミニウム等を用いることができる。これらは、積層構造とすることもでき、例えば、Mo/Al・Nd、Mo・Nb/Al・Nd等の二層構造、Mo/Al/Mo等の三層構造とすることもできる。これらの補助電極材料は透光性を有さないため、透光性電極層表面の一部の領域に設けることが好ましく、例えば、櫛型状、梯子状、格子状等の形状を選択することができる。また、透光性電極層の端部に設けることが、透光性電極層の更なる低抵抗化及び均一な抵抗化を図ることができることから、好ましい。補助電極はシャドーマスクを用いてスパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等により所望のパターンに形成することもできるが、透光性電極層上にこれらの方法により一様に成膜した後、フォトリソグラフィー法等により、所望のパターンに形成することもできる。補助電極は、例えば、50〜500nm等の厚さに形成することができる。
【0020】
補助電極の形成後、透光性電極層の端部を被覆する端部絶縁被膜及び補助電極を被覆する層間絶縁被膜を形成する。透光性電極層の端部を被覆する端部絶縁被膜は透光性電極層と、1対の電極を構成する他方の電極層との導通を抑制するために設けられるものであり、補助電極を被覆する層間絶縁被膜は補助電極と有機層との導通を抑制するために設けられるものである。これらの絶縁被膜材料として、発光層からの光の透過率が高く、フォトリソグラフィー法によって形成可能なものであり、透光性基板、透光性電極層、補助電極との密着性が高いものを用いることが好ましい。絶縁被膜の材質としては、具体的には、ポリイミド系感光性樹脂、アクリル系感光性樹脂、ノボラック系感光製樹脂等を挙げることができる。端部絶縁被膜は透光性電極の端部を被覆し、層間絶縁被膜は補助電極を被覆するものであるが、端部絶縁被膜を、隣接する層間絶縁被膜と接触して形成することが、端部絶縁被膜において、屈曲角度をより鈍角に形成することができ、端部絶縁被膜の損傷を抑制し、これに起因する導通を抑制することができ、好ましい。
【0021】
端部絶縁被膜及び層間絶縁被膜を形成するフォトリソグラフィー法は、絶縁被膜材料を用いて、塗布等により透光性基板上の透光性電極層及び補助電極の上面及び側面の全体を被覆するように絶縁被膜材料膜を形成し、マスクを介して絶縁被膜材料膜の上方から露光し、現像して形成することができる。絶縁被膜材料としては、具体的には、バインダー樹脂と、ポリイミド系、アクリル系、ノボラック系等の感光性モノマーと、光重合開始剤とを溶剤に分散させたフォトレジストを用いることができる。絶縁被膜材料に用いる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)や、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(MEC)等を挙げることができ、必要に応じて分散剤、濃度調整剤等を用いることができる。透光性電極層及び補助電極層の全体を被覆するように形成した絶縁被膜材料膜にマスクを介して照射する露光には、上記モノマーを重合させ得る紫外線等の活性線を用いることができる。露光後の絶縁被膜材料膜を現像する現像液としては、ポジ型現像として、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)等の有機系アルカリ現像液や、水酸化カリウム等の水酸化アルカリやアルカリ炭酸塩等の無機系アルカリ現像液を用いることができ、ネガ型現像としてキシレン系有機溶剤等の現像液を用いることができる。
【0022】
また、補助電極を透光性電極層の端部に形成した場合、絶縁被膜材料膜の露光を補助電極をマスクとして透光性基板側から照射するセルフアライメントとすることもできる。絶縁膜は厚さ0.5〜5μm程度に形成することが好ましい。
【0023】
透光性電極層及び絶縁被膜上に有機層を形成する。有機層は有機EL物質を含有する発光材料を用いれば、その形成方法は限定されないが、有機EL物質を含有する発光層を挟持するように正孔輸送層、電子輸送層、更に、これらを挟持する正孔注入層、電子注入層等の複数の層で構成されるものとしてもよい。電子輸送層と発光層間の電子親和力のエネルギー差が大きいことに起因して電子の注入が困難になるのを緩和するために、フッ化リチウム等から選択される仕事関数の小さい物質からなる電子注入層を設けることが好ましい。電子注入層の膜厚は、例えば、5〜10nmとすることができる。電子輸送層は電極層から注入される電子を発光層へ注入し、正孔輸送層は透光性電極層から注入される正孔を発光層へ注入するものであり、発光層において、電子と正孔が結合して放出される結合エネルギーによって有機ELが励起され、励起された有機ELが光を放射して低レベル準位、或いは基底状態に戻る際に、発光が得られる。有機EL材料としては、上記電子と正孔が結合して放出される結合エネルギーを受けて発光する有機物質であれば、いずれも用いることができ、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq3)、ビスジフェニルビニルビフェニル(BDPVBi)、1,3−ビス(p−t−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾールイル)フェニル(OXD−7)、N,N' −ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(BPPC)、1,4ビス(N−p−トリル−N−4−(4−メチルスチリル)フェニルアミノ)ナフタレン等の低分子化合物、ポリフェニレンビニレン系ポリマー等の高分子化合物を挙げることができる。
【0024】
また、有機ELは、電荷輸送材料や正孔輸送材料にドープして用いることもできる。例えば、Alq3等のキノリノール金属錯体に4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、2,3−キナクリドン等のキナクリドン誘導体や、3−(2' −ベンゾチアゾール)−7−ジエチルアミノクマリン等のクマリン誘導体をドープしたもの、電子輸送材料ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)−4−フェニルフェノール−アルミニウム錯体にペリレン等の縮合多環芳香族をドープしたもの、あるいは正孔輸送材料4,4' −ビス(m−トリルフェニルアミノ)ビフェニル(TPD)にルブレン等をドープしたもの、カルバゾール化合物に白金錯体やイリジウム錯体をドープしたもの等として用いることができる。
【0025】
上記正孔輸送層は、例えば、ビス(ジ(p−トリル)アミノフェニル)−1,1−シクロヘキサン、TPD、N,N'−ジフェニル−N−N−ビス(1−ナフチル)−1,1'−ビフェニル)−4,4'−ジアミン(α−NPD)等のトリフェニルジアミン類や、スターバースト型芳香族アミン分子等の正孔輸送材料を用いて形成することができる。また、上記電子輸送層は、例えば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(Bu−PBD)、OXD−7等のオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、キノリノール系の金属錯体等の有機物質や、フッ化リチウム等の無機物質等の電子輸送材料を用いて形成することができる。
【0026】
これら電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層は、上記材料を用いて、スパッタリング法、蒸着法、CVD法等でシャドーマスクを介して所望の形状に成膜してもよく、また、これらの方法により順次積層したものをフォトリソグラフィー法により所望の形状に形成してもよい。有機層は、厚さ100〜500nmに形成することができる。
【0027】
有機層上に1対の電極層の他方の電極層を形成する。有機層上に設ける他方の電極層は上記透光性電極層と共に1対の電極層を構成するものであり、透光性を問われるものでなく、透光性電極層が上記透光性電極材料で形成される場合、例えば、マグネシウム、銀マグネシウム合金、カルシウム等の遮光性電極材料で陰極として形成することが、有機層の発光を透光性電極層側へ反射し、発光面からの放出光量の減少を抑制できることから、好ましい。電極層は、スパッタ法、蒸着法等により、所定の領域に積層したり、フォトリソグラフィー法により形成することができる。また、電極層の一端に配線部材との接続部を形成するため、一端を延長して設けることが好ましい。電極層は、例えば、50〜100nmの厚さに形成することができる。
【0028】
上記透光性電極層及び電極層の一端を延設して形成した接続部に配線部材の一端を接続する。配線部材は、接続部の抵抗の上昇を抑制するために、電極の一端の幅の全体に亘る幅を有するものを用いることができる。配線部材として、銅ポリイミド等のフィルムを適用することができる。銅ポリイミドは導電性を有し低抵抗であり、可撓性を有することから、精密な位置決めせずに接続することができるため好ましい。更に、配線部材の他端を、点灯回路、点灯回路の制御回路等を設けた基板の接続端子に接続し、透光性電極層及び電極層に外部電源の供給を可能とする。
【0029】
このように製造工程数を減少させ、効率よく製造された有機EL照明装置は、透光性電極層の端部に設けた端部絶縁被膜と、補助電極を被覆して設けた層間絶縁被膜により、電極層間、補助電極と有機層との導通を抑制し、有機ELを発光させることができる。特に、透光性電極の端部に補助電極を形成した有機EL照明装置は、透光性電極層の低抵抗化と抵抗の均一化を図ることができ、また、端部絶縁被膜とこれに隣接する層間絶縁被膜とを接触して形成した有機EL照明装置は、端部絶縁被膜の損傷を抑制し、これに起因する導通を抑制することができる。
【実施例】
【0030】
本発明の有機EL照明装置の製造方法の一例を、具体的に説明する。
【0031】
図1に示すように、透光性基板であるガラス基板1上に、真空スパッタ法、真空蒸着法等により、ITOの透光性電極膜を積層し、フォトリソグラフィー法により透光性電極膜を露光し、ドライエッチング又はウエットエッチングにより所望の形状に形成し、透光性電極層2を形成する。その後、ANL又はCr等の補助電極材料を用い、透光性電極層2全面に補助電極材料膜5aを、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等により成膜する(a)。補助電極材料膜上にポジ型レジストを塗布し、適宜加熱し、レジスト膜5bを形成する(b)。その後、補助電極のパターンに形成したマスク5cを介してレジスト膜5bを露光する(c)。これを現像し、レジスト膜5bを補助電極の形状に形成する(d)。その後、ドライエッチングにより、レジスト膜5bに被覆されていない補助電極材料膜5aを除去し(e)、レジスト膜5bを除去して、透光性電極層2の一部の上に補助電極5を形成する(f)。透光性電極層2及び補助電極5の全面に、ポジ型レジストの絶縁被膜材料を塗布し、適宜加熱し、絶縁被膜材料膜6aを形成する(g)。更に、層間絶縁被膜及び端部絶縁被膜の形状に形成したマスク6bを介して絶縁被膜材料膜6aを露光し(h)、現像し、適宜ポストベースクを行い、端部絶縁被膜7及び層間絶縁被膜6を形成する(i)。その後、α−NPD等の正孔輸送材料、Alq等の有機EL材料、電子輸送材料を用いて、インクジェット印刷法、真空スパッタ法、真空蒸着法等により順次薄膜を形成し、正孔輸送層3a、発光層3b、電子輸送層3cを形成し、更に、マグネシウム銀等の電極材料を用いて、真空蒸着法で薄膜を積層して電極層4を形成する(j)。その後、透光性電極層と電極層の接続部に、銅箔を積層したポリイミドフィルムからなる配線部材をそれぞれ熱圧着して接続し、他端を、点灯回路、点灯回路の制御回路等を設けた基板の接続端子に接続し、有機EL照明装置を得る。
【0032】
本発明の有機EL照明装置の製造方法の他の例は、図2に示す方法を挙げることができる。図2に示す方法において、図1に示す方法と異なる工程は、補助電極材料膜5a上に形成したレジスト膜5bの露光に用いるマスクとして、補助電極材料膜5aの端部にもパターンを形成したマスク5dを用い、露光を行う(c)。これにより、現像後、補助電極材料膜5aの端部上にレジスト膜5eが残留し(d)、現像、エッチング後、透光性電極層の端部を被覆した端部補助電極5fが形成される(f)。そして、透光性電極層の端部に形成された端部補助電極5fを被覆した端部絶縁被膜7aを得る(i)。
【0033】
本発明の有機EL照明装置の製造方法の他の例は、図3に示す方法を挙げることができる。図3に示す方法において、図2に示す方法と異なる工程は、絶縁被膜材料膜6aの露光において、露光をガラス基板側から行う(h)。これにより、マスク6bを使用せず、セルフアライメントにより露光を行うことができる。
【0034】
また、上記図2(h)に示す方法において、絶縁被膜材料膜6aを露光する際に用いるマスクを、図4(h)に示すように、透光性電極層の端部に形成される補助電極5fとこれに隣接する補助電極5gを連結したパターンに形成したマスク6cを介して、露光を行うことにより、図4(i)、図5の上面図に示すように、透光性電極層端部に形成される端部補助電極5fを被覆する端部絶縁被覆と、端部補助電極5fに隣接する隣接補助電極5gを被覆する層間絶縁膜とが接触し、一体化された結合絶縁被膜7bを形成することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 透光性基板
2 透光性電極層
3 有機層
4 電極層
5 補助電極
5f 端部補助電極
5g 隣接補助電極
6 層間絶縁被膜
7、7a 端部絶縁被膜
7b 結合絶縁被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に設けられる透光性電極層を含む1対の電極層と、該1対の電極層に挟持され、有機エレクトロスミネッセンス物質を含有する有機層とを有し、透光性電極層上にその一部に接触して設けられる遮光性の補助電極と、該補助電極を被覆して補助電極と有機層間の導通を抑制する層間絶縁被膜と、透光性電極層の端部を被覆して1対の電極層間の導通を抑制する端部絶縁被膜とを有する有機エレクトロルミネッセンス照明装置の製造方法であって、補助電極の形成後、層間絶縁被膜と端部絶縁被膜とを一工程のフォトリソグラフィーで形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス照明装置の製造方法。
【請求項2】
補助電極を透光性電極層の端部を被覆して形成することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス照明装置の製造方法。
【請求項3】
前記一工程のフォトリソグラフィーにおいて、透光性基板側から露光を照射し、セルフアラインメントすることを特徴とする請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス照明装置の製造方法。
【請求項4】
端部絶縁被膜を、隣接する層間絶縁被膜と接触して形成することを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス照明装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−249075(P2011−249075A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119309(P2010−119309)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】