説明

有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子用溶液

【課題】上層の塗布の際の下層の溶解を抑制した有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子用溶液を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、陽極層と、陰極層と、陽極層と陰極層との間に設けられ有機材料を含む発光層と、発光層と陰極層との間に設けられた中間層と、を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法が提供される。製造方法は、陽極層の上に、第1有機材料と第1溶媒とを含む第1溶液を塗布して発光層を形成する工程と、発光層の上に、低分子の第2有機材料と、アセチレンアルコール系界面活性剤を含み第1溶媒の溶解度パラメータよりも小さい溶解度パラメータを有する第2溶媒と、を含む第2溶液を塗布して中間層を形成する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子用溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、自発光型素子であり、広視野角と高速応答性とを活かした表示装置への応用の他に、光源としての応用が期待されている。有機EL素子の製造プロセスには、蒸着法と塗布法とがある。塗布法は、大気圧で成膜することが可能であり、蒸着法に比べ大面積化が容易で、材料利用効率が高くコスト面で有利であると考えられている。
【0003】
有機EL素子を塗布法で製造する際に、上層の塗布の際に下層が溶解されると所望の特性が得られないことが、塗布型有機EL素子の実用化の妨げになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−319488公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、上層の塗布の際の下層の溶解を抑制した有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子用溶液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、陽極層と、陰極層と、前記陽極層と前記陰極層との間に設けられ有機材料を含む発光層と、前記発光層と前記陰極層との間に設けられた中間層と、を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法が提供される。前記製造方法は、前記陽極層の上に、第1有機材料と第1溶媒とを含む第1溶液を塗布して前記発光層を形成する工程と、前記発光層の上に、低分子の第2有機材料と、アセチレンアルコール系界面活性剤を含み前記第1溶媒の溶解度パラメータよりも小さい溶解度パラメータを有する第2溶媒と、を含む第2溶液を塗布して前記中間層を形成する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を示すフローチャート図である。
【図2】実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を示す工程順模式図である。
【図3】実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子で製造される有機エレクトロルミネッセンス素子を示す模式的断面図である。
【図4】有機エレクトロルミネッセンス素子の試料の走査透過電子顕微鏡写真像である。
【図5】実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に用いられる第2有機材料を示す模式図である。
【図6】実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に用いられる第2有機材料の特性を示す模式図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に用いられる第2有機材料を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
図1は、実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図2は、実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を例示する工程順模式図である。
図3は、実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子で製造される有機エレクトロルミネッセンス素子の構成を例示する模式的断面図である。
まず、図3を参照しつつ、実施形態に係る照明装置で製造される有機エレクトロルミネッセンス素子の例について説明する。
【0010】
図3に表したように、実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法によって製造される有機エレクトロルミネッセンス素子10は、陽極層110と、陰極層120と、陽極層110と陰極層120との間に設けられ有機材料を含む発光層130と、発光層130と陰極層120との間に設けられた中間層(電子輸送層140)と、を含む。
【0011】
中間層は、発光層130の陰極層120の側の面に接する層を含む。以下では、中間層として電子輸送層140が用いられる場合として説明する。実施形態はこれに限らず、中間層が、発光層130の陰極層120の側の面に接する層を含めば、電子輸送層140以外の層であっても良い。
【0012】
本具体例では、有機エレクトロルミネッセンス素子10は、陽極層110と発光層130とに間に設けられた正孔輸送層150をさらに備えている。正孔輸送層150は、必要に応じて設けられ省略可能である。
【0013】
本具体例では、陽極層110は、支持基板104の上に設けられている。陽極側基板105は、支持基板104と陽極層110とを含む。支持基板104には、例えば、ガラス基板が用いられる。
【0014】
陽極層110は、例えば、発光層130から放出される光に対して透光性を有する導電性物質が用いられる。陽極層110には、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)などの導電性酸化物が用いられる。
【0015】
ただし、実施形態はこれに限らず、陽極層110は、発光層130から放出される光に対して不透明(遮光性を含む)な材料を用いても良い。例えば、陰極層120が発光層130から放出される光に対して透光性を有する場合になどにおいては、陽極層110には、発光層130から放出される光に対して不透明な材料を用いても良い。
【0016】
正孔輸送層150は、陽極層110から発光層130に向けて正孔を注入する。正孔輸送層150には、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ−(スチレンスルフォネート)(PEDOT:PSS)が用いられる。
【0017】
発光層130は、発光性の有機材料を含む。発光性の有機材料は、例えば、蛍光有機材料、燐光有機材料及び金属有機錯体の少なくともいずれかを含む。
【0018】
発光層130には、ホスト化合物に発光性の有機材料をドープしてものを用いることができる。例えば、発光層130には、電子輸送性及び正孔輸送性の少なくともいずれかを有するホスト化合物に、発光性の有機材料をドープしたものを用いることができる。また、発光層130に用いられるホスト化合物には、電子輸送性材料及び正孔輸送性材料の少なくともいずれかを用いることができる。これにより、発光層130における電子輸送性及び正孔輸送性の少なくともいずれかが向上できる。
【0019】
発光層130に用いられる発光性の有機材料には、例えば、イリジウム錯体(Ir(ppy)、FIrpic、Ir(ppy)(acac)、及び、Ir(hflpy)(acac)などを含む燐光材料(いずれも分子量599〜694)、並びに、ペリレン、クマリン誘導体及びキナクリドンなどを含む蛍光材料(いずれも分子量252〜995)の少なくともいずれかが用いられる。
【0020】
発光層130に用いられるホスト材料には、例えば、4,4‘−ビス(9−カルバゾール)ビフェニル(CBP、分子量484)、及び、ポリビニルカルバゾール(PVK)などが用いられる。
【0021】
発光層130に必要に応じて用いられる正孔輸送性材料には、例えば、1,3−-ビス[5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(OXD−7)などが用いられる。
【0022】
発光層130に必要に応じて用いられる電子輸送性材料には、例えば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4オキサジアゾール(PBD、分子量354)などが用いられる。
【0023】
電子輸送層140は、陰極層120から注入される電子を発光層130に向かって輸送する。電子輸送層140は、電子輸送性材料を含む。なお、電子輸送層140は、陽極層110から注入されたホールを発光層130内に閉じ込めるためのホールブロッキング層としての機能をさらに有していても良い。
【0024】
電子輸送層140には、低分子の有機材料が用いられる。低分子の有機材料は、分子量が5000以下の有機材料である。
電子輸送層140に用いられる有機材料(後述する第2有機材料)の分子量は、ガスクロマトグラフィによって測定される。
【0025】
電子輸送層140に用いられる有機材料は、後述する溶解度パラメータが小さい溶媒に溶解可能な材料が好ましい。
【0026】
電子輸送層140には、例えば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4オキサジアゾール(PBD、分子量354)、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND、分子量322)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナンスロリン(BCP(バソキュプロイン)、分子量360)、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3イル)フェニル)ボラン(3TPYMB、分子量599)、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン(BmPyPhB、分子量539)、3,3’,5,5’−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル(BP4mPy、分子量767)、及び、1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン(TmPyPB、分子量538)よりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。
【0027】
陰極層120には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、硼素、銅、銀及び金からなる群から選択されたいずれかの単体、または、上記の群から選択された複数を含む混合物(合金など)が用いられる。陰極層120には、さらに上記の群から選択された単体の層、または、混合物の層の積層膜を用いることができる。陰極層120には、上記の積層膜にさらにフッ化リチウム、酸化リチウム、フッ化カルシウム及びフッ化セシウムなどの層を積層した構造体が用いられる。陰極層120には、テトラヒドロアルミン酸塩、炭酸セシウム及びリチウムやカルシウムを含むアセチルアセトン錯体が用いられ、陰極層120は湿式で形成されることがでる。
【0028】
このような構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子10は、以下のような製造方法で製造される。
図1及び図2(a)に表したように、陽極層110の上に、第1有機材料と第1溶媒とを含む第1溶液を塗布して発光層を形成する(ステップS110)。
【0029】
図1及び図2(b)に表したように、発光層130の上に第2有機材料と第2溶媒とを含む第2溶液を塗布して電子輸送層140(中間層)を形成する(ステップS120)。
【0030】
第2有機材料は低分子の有機材料である。第2有機材料の分子量は、5000以下である。第2溶媒は、アセチレンアルコール系界面活性剤を含む。第2溶媒は、第1溶媒の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さい溶解度パラメータを有する。
【0031】
本願明細書において、「塗布」は、膜または層を形成する湿式の方法の全てを含む。塗布法は、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、浸漬法、スプレー法、スリットコート法、メニスカスコート法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、及び、スクリーン印刷などを含む。
【0032】
アセチレンアルコール系界面活性剤は、化学構造中に親水基と疎水基とを有するアセチレンアルコール構造を有する化合物を含む。
【0033】
溶解度パラメータ(SP値)は、分子間力を表す尺度として使用される。
SP値は、例えば、Hildebrandが定義したδ=(Eco/V)1/2で表される。ここで、Ecoは、モル蒸発エネルギー(cal/mol)である。Vは、モル容積(cm/mol)である。
【0034】
δは、例えば、物性値に基づいて、Eco=ΔH−RTの関係式から求められる。ここで、ΔHは、蒸発によるエンタルピー(cal/mol)の変化である。Rは、気体定数(cal/mol)である。Tは温度(K)である。
【0035】
さらに、δを3つの項に分類し、δ=δd+δp+δhと表すこともできる。δd、δp及びδhは、それぞれ分散力項、双極子間力項及び水素結合力項に相当するSP値である。
【0036】
一般的に、2つの材料のSP値の差が小さいほど、この2つの材料における溶解度が大となることが経験的に知られておいる。SP値は、有機物の溶解性を表す指標とすることができる。
【0037】
なお、SP値を算出する方法として、化学構造の原子または原子団の蒸発エネルギー(Δei)とモル体積(Δvi)とからSP値を求めることができる。これによると、δ=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2で表される。
【0038】
第1溶剤と第2溶剤とを含む混合溶剤のSP値(δm)は、δm=δ1φ1+δ2φ2により求められる。ここで、δ1は、第1溶剤のSP値であり、φ1は第1溶剤の体積分率である。δ2は、第2溶剤のSP値であり、φ2は第2溶剤の体積分率である。
【0039】
本実施形態においては、電子輸送層140の形成に用いられる第2溶媒のSP値が、発光層130の形成に用いられる第1溶媒のSP値よりも小さいことから、発光層130は第2溶媒に対して実質的に不溶であり、電子輸送層140を形成するときに発光層130が第2溶媒によって溶解することが抑制される。このように、本製造方法によれば、上層(電子輸送層140)の塗布の際の下層(発光層130)の溶解が抑制される。これにより、所望の特性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を簡便に安価に製造でき、また、大型の有機エレクトロルミネッセンス素子を容易に製造することができる。
【0040】
電子輸送層140に用いられる材料には、高分子材料と低分子材料とがある。高分子材料を用いた場合は塗布性能は良いが、一般に、高分子材料における移動度などの電気的特性は、低分子材料よりも低い。
このため、発明者は、電気的特性の優れた低分子材料の電子輸送層140を発光層130の上に塗布法で形成する種々の方法を実験により検討した。この実験の結果により得られた新たな知見に基づいて、本実施形態に係る構成が得られた。
【0041】
上層(電子輸送層140)の第2溶液に用いられる第2溶媒のSP値が、下層(発光層130)を溶解できる溶媒(すなわち第1溶媒)のSP値の範囲外の値であるときに、上層を下層の上に塗布するときに、下層が第2溶媒に溶解しないと考えられる。すなわち、上層の第2溶媒が下層の第1溶媒と同等なSPを有しているときには、上層の第2溶媒によって下層が溶解する。上層の第2溶媒のSP値が、下層の第1溶媒のSP値よりも小さいとき、または、上層の第2溶媒のSP値が、下層の第1溶媒のSP値よりも大きいときに、上層の第2溶媒による下層の溶解が抑制できると考えられる。
【0042】
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層130の材料(第2有機物)のSP値は、一般的に、約8.0(cal/cm1/2以上で、約10(cal/cm1/2以下である。
【0043】
10(cal/cm1/2よりも大きいSP値を有する溶剤としては、アルコールなどの親水性の溶媒がある。このような親水性の溶媒を第2溶媒に用いた場合には、第2溶媒に含まれる水などにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の特性が劣化し易い。
【0044】
このため、発明者は、上層の第2溶媒として、下層の第1溶媒のSP値よりも小さいSP値を有する溶媒を選択することにした。SP値が小さい溶媒は、疎水性であり、上記のような水の悪影響が抑制される。
【0045】
SP値が小さい第2溶媒と低分子の第2有機材料とを組み合わせた場合には、第2有機材料の結晶が析出することが分かった。
【0046】
SP値が小さい第2溶媒と高分子の第2有機材料と組み合わせた溶液を塗布した場合には、塗布された膜のアモルファス性が高く、塗布後の乾燥の際に平滑な膜になり易く、大きな問題は生じない。しかしながら、既に説明したように、第2有機材料として高分子材料を用いた場合は、電気的特性が低く、所望の特性が得られない。
【0047】
これに対し、SP値が小さい第2溶媒と低分子の第2有機材料とを組み合わせた溶液を塗布すると、溶液が乾燥して濃縮される過程において結晶が析出し易い。そして、析出した結晶の塊が残ったまま素子を作製するとショートの原因になる場合がある。
【0048】
発明者は、SP値の小さい溶媒と、低分子の第2有機材料と、を組み合わせた場合においても結晶を析出が生させない構成に関して種々の実験を行った。その結果、SP値の小さい溶媒にアセチレンアルコール系界面活性剤を添加することで、低分子の第2有機材料の結晶の析出が抑制できることを見出した。
この結果に基づき、実施形態の構成が得られた。
【0049】
すなわち、第2有機材料として、分子量が5000以下の低分子の有機材料を用いることで、電子輸送層140の高い電気特性を維持できる。
そして、第2溶媒として、第1溶媒のSP値よりも小さいSP値を有する材料を用いることで、発光層130が第2溶媒に溶解されず、さらに、水などによる素子の特性の劣化を抑制できる。そして、第2溶媒がアセチレンアルコール系界面活性剤を含むことで、SP値が小さい第2溶媒を用いても低分子の第2有機材料(例えば電子輸送性材料)の結晶の析出を抑制できる。
【0050】
発光層130の形成のために用いられる第1溶媒には、キシレン(SP値=8.75〜9.0)、トルエン(SP値=8.9)、テトラリン(SP値=9.5)、クロロベンゼン(SP値=9.6)、ジクロロベンゼン(SP値=9.9)、シクロヘキサノン(SP値=9.9)、クロロホルム(SP値=9.2)、ジクロロエタン(SP値=9.9)、及び、テトラヒドロフランよりなる群からされた少なくともいずれか、及び、前記群から選択された複数を含む混合物を用いることができる。
【0051】
電子輸送層140の形成のために用いられる第2溶媒には、ヘキサン(SP値=7.22)、ヘプタン(SP値=7.5)、オクタン(SP値=7.5)、ノナン(SP値=7.6)及びデカン(SP値=7.7)などの飽和炭化水素溶媒、シクロヘキサン(SP=8.2)などの不飽和炭化水素溶媒、並びに、キシレン(SP値=8.75〜9.0)、トルエン(SP値=8.9)、及び、テトラリン(SP値=9.5)などの芳香族炭化水素溶媒の少なくともいずれかを用いることができる。
第2溶媒には、SP値が小さい材料が用いられる。第2溶媒には、第1溶媒のSP値よりSP値が小さい材料が選択されることが望ましい。
【0052】
アセチレンアルコール系界面活性剤は、界面活性剤として機能しつつ、揮発性を有する化合物である。アセチレンアルコール系界面活性剤として、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール(SP値=12.3、沸点=103.6℃)、3−メチル−1−ペンチン−3−オール(SP値=11.4、沸点=121.4℃)、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(SP値=10.0、沸点=150℃)、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール(SP値=10.3、沸点=205℃)、及び、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール(SP値=9.3、沸点=250℃)よりなる群から選択された少なくともいずれかを用いることができる。
【0053】
なお、アセチレンアルコール系界面活性剤のSP値は、前述したδ=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2の式から算出される。
【0054】
第2溶媒は、これらのアセチレンアルコール系界面活性剤と、上記のSP値が小さい溶媒と、を含む。アセチレンアルコール系界面活性剤とSP値が小さい溶媒とを混合した後の混合溶媒である第2溶媒のSP値が、第1溶媒のSP値よりも小さく設定される。
【0055】
第2溶媒におけるアセチレンアルコール系界面活剤の濃度は、例えば0.1vol%〜5vol%yとされる。濃度が0.1voll%よりも低いと、例えば、第2有機材料の結晶が発生し易くなる。濃度が5vol%よりも高いと、アルコールに含まれる微量の水分が発光層材料などに悪影響を及ぼすことがある。
【0056】
発光層130の形成のための第1溶剤に含まれる第1有機材料は、分子量が20,000以上の高分子材料を含むことが望ましい。第1有機材料が分子量が20,000以上の高分子材料を含むことにより、例えば、第1有機材料が第2溶媒により溶解し難くなり、製造条件及び用いる材料における各種の許容幅が緩和され、有機エレクトロルミネッセンス素子をより安定して製造できる。
【0057】
高分子材料は溶媒に溶解する際に溶媒に膨潤し、ゲル状の状態を経た後に溶解する。このため、第1有機材料に用いられる高分子材料は、第2溶媒からの影響を受け難い。第1有機材料に用いられる高分子材料の含有比は、重量比で50%以上であることが望ましい。第1有機材料に用いられる高分子材料の含有比を50%以上とすることで、発光層130の第2溶媒に対する耐性がより向上する。
【0058】
なお、第1有機材料の分子量は、ゲルパーエイションクロマトグラフィにより測定したポリスチレン換算重量分子量にて定義されるものとする。
【0059】
なお、塗布法で形成された有機材料の下層の上に、有機材料の上層を塗布法で形成する別の方法として、架橋による不溶化処理を行なう方法があるが、この方法は製造工程が複雑になり、また、架橋基を導入する必要があるなどの制約がある。
【0060】
これに対し、本実施形態に係る製造方法は、工程が簡単であり、架橋基などの特殊な構造を導入するなどの制約がないため、実用性が高い。
【0061】
以下、本実施形態に係る実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。
陽極側基板105として、25mm(ミリメートル)×25mm×0.7mmのガラスの支持基板104上に、陽極層110としてITOが100nm(ナノメートル)の厚さで成膜されたものを用いた。
【0062】
陽極側基板105に洗剤による超音波洗浄を施し、超純水で流水洗浄を行った。その後、イソプロピルアルコール(IPA)による浸漬超音波洗浄の後、乾燥した。さらにUVオゾン照射を10分間行い、表面の残存有機物を分解した。
【0063】
陽極層110の上に、正孔輸送層150となるPEDOT:PSS溶液(H.C.Strack−V TECH社製CH8000)をスピンコートした後、ホットプレートにて200℃で5分間乾燥して、正孔輸送層150を形成した。正孔輸送層150の厚さは、約60nmである。
【0064】
正孔輸送層150の上に、発光層130となる第1溶液を塗布した。
第1溶液は、第1有機材料と、第1溶媒と、を含む。第1有機材料は、ホスト化合物であるPVK(分子量400,000)と、電子輸送性化合物であるOXD−7と、ゲスト化合物であるFIrPic及びIr(hflpy)(acac)と、含む。第1溶媒には、クロロベンゼンが用いられた。67mgのPVKと、30mgのOXD−7と、3mgのFIrPicと、0.2mgのIr(hflpy)(acac)と、をクロロベンゼンに溶解して、第1溶液の全体を8.35gとした。第1溶液における固形分濃度は、1.2wt%(重量パーセント)である。
【0065】
正孔輸送層150の上に上記の第1溶液をスピンコートにより塗布した後に、ホットプレートにて80℃で30分間乾燥して、発光層130を形成した。発光層130の厚さは約90nmである。
【0066】
発光層130の上に、電子輸送層140となる第2溶液を塗布した。
第2溶液は、第2有機材料と、第2溶媒と、を含む。第2有機材料として、電子輸送性化合物である3TPYMBが用いられた。この3TPYMBは低分子である。第2溶媒は、アセチレンアルコール系界面活性剤のサーフィノール61(日信化学工業株式会社)と、オクタンと、を含む。第2溶媒におけるアセチレンアルコール系界面活性剤:オクタンの体積比率は、1:99である。100mgの3TPYMBを第2溶媒に溶解して、第2溶液の全体を10gとした。第2溶液における固形分濃度は、1.0wt%である。
【0067】
発光層130の上に上記の第2溶液をスピンコートにより塗布した後に、ホットプレートにて80℃で30分乾燥して、電子輸送層140を形成した。電子輸送層140の厚さは、約10nmである。
【0068】
電子輸送層140の上に、CsF膜を10−4Pa(パスカル)〜10−5Paの真空中で、蒸着した。蒸着の際の陽極側基板105の温度は室温である。CsF膜の厚さは、約1nmとされた。
【0069】
CsF膜の上に、パターニングされた開口部を有するマスクを設置した状態で、アルミニウムを蒸着した。アルミニウム膜の厚さは約150nmである。マスクの開口部は、2mm×2mmである。マスクの開口部が、発光領域に対応する。CsF膜とアルミニウム膜との積層膜が陰極層120に対応する。
【0070】
これにより、図3に例示した有機エレクトロルミネッセンス素子10が作製された。なお、作製された有機エレクトロルミネッセンス素子10は、乾燥グローブボックス内で封止された。
【0071】
第1溶媒(クロロベンゼン)のSP値は9.6である。オクタンとアセチレンアルコール系界面活性剤とを含む第2溶媒のSP値は、上記で説明したδ=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2の関係式を用いて算出される。第2溶媒のSP値は、第1溶媒のSP値よりも低い。
【0072】
一方、上記の第2溶媒に、第1有機材料に含まれるPVK、OXD−7、FIrPic、及び、Ir(hflpy)(acac)をそれぞれ0.2wt%で添加した溶液を作製した。この溶液を室温で12時間放置した後に、この溶液を目視で観察したところ、いずれの溶液においても、粉状の固形物が瓶の底に付着しており、この固形物は明らかに不透明な状態であった。このことから、第1有機材料に含まれるいずれの材料も第2溶媒に実質的に不溶であると判断された。
【0073】
一方、参考例として、上記と同様にして形成された発光層130の上に、蒸着法により電子輸送層140を形成した有機エレクトロルミネッセンス素子19(図示せず)を作製した。有機エレクトロルミネッセンス素子19においては、発光層130の上に、3TPYMBが蒸着されて電子輸送層140が形成され、その上に、有機エレクトロルミネッセンス素子10と同様に、CsF膜とアルミニウム膜の積層膜の陰極層120が形成された。
【0074】
図4は、有機エレクトロルミネッセンス素子の試料の走査透過電子顕微鏡写真像である。
すなわち、図4は、実施例に係る有機エレクトロルミネッセンス素子10と同様の方法で作製された発光層130と電子輸送層140とを有する試料10a(実施形態に係る試料)と、参考例の有機エレクトロルミネッセンス素子19と同様の方法で作成された発光層130と電子輸送層140とを有する試料19a(参考例の試料)と、の走査透過電子顕微鏡写真(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)像を示している。
【0075】
図4に表したように、参考例の試料19aにおいては、発光層130の上に蒸着法で電子輸送層140が形成されており、発光層130と電子輸送層140とが明確に区別でき、発光層130と電子輸送層140とが分離されている。
【0076】
図4に表したように、実施形態に係る試料10aにおいても、参考例の試料19aと同様に、発光層130と電子輸送層140とが明確に区別できる。実施形態に係る試料10aにおいては、塗布法で形成された発光層130の上に塗布法で電子輸送層140が形成されているが、発光層130と電子輸送層140とが分離されている。試料10aにおいて、発光層130の上に電子輸送層140を塗布する際に、発光層130が、電子輸送層140に含まれる第2溶媒に溶解することが抑制されている。
【0077】
実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子10の特性を評価したところ、100cd/mの輝度のときに41.9cd/Aであり、発光効率は26.3lm/Wであった。最大輝度のときに、42.4cd/Aであり、このときの発光効率は35.3lm/Wであった。
【0078】
参考例の有機エレクトロルミネッセンス素子19においては、100cd/mの輝度のときに40.4cd/Aであり、発光効率は27.0lm/Wであった。最大輝度のときに、41.2cd/Aであり、そのときの発光効率は40.6lm/Wであった。
【0079】
このように、電子輸送層140の形成に塗布法を採用した実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子10は、蒸着法を採用した参考例の有機エレクトロルミネッセンス素子19と同等の特性が得られた。
【0080】
このように、実施形態に係る実施例の製造方法により、上層(電子輸送層140)の塗布の際の下層(発光層130)の溶解が抑制され、良好な特性の有機エレクトロルミネッセンス素子が得られた。
【0081】
図5は、実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に用いられる第2有機材料を例示する模式図である。
図6は、実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に用いられる第2有機材料の特性を例示する模式図である。
図5は、第2有機材料142として用いられる3TPYMBの構造を例示している。図6は、3TPYMBと、アセチレンアルコール系界面活性剤143と、の相互作用をモデル的に示している。
【0082】
図5に表したように、3TPYMBはメチル基142aを有している。メチル基142aにより、炭化水素溶媒親和性及び分散力が低減されると考えられる。そして、3TPYMBにおいては、水素結合142bによるアルコール親和性が高いと考えられる。
【0083】
図6に表したように、3TPYMB(第2有機材料142)と、アセチレンアルコール系界面活性剤143と、を混合したときには、アセチレンアルコール系界面活性剤143の親水部143aは、3TPYMBの窒素元素に近接または吸着し、アセチレンアルコール系界面活性剤143の疎水部143bは、3TPYMBから遠ざかると考えられる。
【0084】
このため、3TPYMB(第2有機材料142)は、アセチレンアルコール系界面活性剤143に取り囲まれ、3TPYMB(第2有機材料142)の外側にアセチレンアルコール系界面活性剤143の疎水部143bが配置された構造体が形成されると考えられる。疎水部143bが外側に配置された構造体は、SP値が小さい第2溶媒に対する溶解性が高いと考えられる。このため、アセチレンアルコール系界面活性剤143に取り囲まれた3TPYMBは、SP値が低い第2溶媒中においても、結晶の析出が抑制されると考えられる。
【0085】
このような特性を有する第2有機材料142の例としてBmPyPhB、BP4mPy、及び、TmPyPBが挙げられる。
【0086】
図7(a)〜図7(c)は、実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に用いられる第2有機材料を例示する模式図である。
図7(a)、図7(b)及び図7(c)は、BmPyPhB、BP4mPy、及び、TmPyPBの構造をそれぞれ示している。
【0087】
これらの図に表したように、BmPyPhB、BP4mPy、及び、TmPyPBにおいても、BmPyPhB、BP4mPy、及び、TmPyPBのそれぞれがアセチレンアルコール系界面活性剤143に取り囲まれ、外側にアセチレンアルコール系界面活性剤143の疎水部143bが配置された構造体が形成されると考えられる。これにより、SP値が低い第2溶媒中においても、結晶の析出が抑制される。
【0088】
第2の実施の形態は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層の上に電子輸送層を塗布法で形成するための有機エレクトロルミネッセンス素子用溶液である。
【0089】
本有機エレクトロルミネッセンス素子用溶液は、低分子の有機材料と、アセチレンアルコール系界面活性剤を含む溶媒と、を備える。上記の有機材料の分子量は5000以下である。
【0090】
本有機材料は、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナンスロリン、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3イル)フェニル)ボラン、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン、3,3’,5,5’−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル、及び、1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼンよりなる群から選択された少なくともいずれかを含む。
【0091】
上記のアセチレンアルコール系界面活性剤は、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、及び、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールよりなる群から選択された少なくともいずれかを含む。
【0092】
上記の溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、及び、テトラリンよりなる群から選択された少なくともいずれかを含む。
【0093】
本溶液により、電子輸送層140の形成のために本溶液を塗布する際に、下層(発光層130)の溶解を抑制することができ、所望の特性の有機エレクトロルミネッセンス素子を塗布法で製造することができる。
【0094】
実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、表示装置用及び照明用などの任意の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造に適用できる。
【0095】
実施形態によれば、上層の塗布の際の下層の溶解を抑制した有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子用溶液が提供できる。
【0096】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子に含まれる陽極層、陰極層、発光層、中間層、電子輸送層、正孔輸送層及び基板、並びに、製造方法に用いられる、有機材料、界面活性剤及び溶媒などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0097】
その他、本発明の実施の形態として上述した有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子用溶液を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子用溶液も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0098】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
10、19…有機エレクトロルミネッセンス素子、 10a、19a…試料、 104…基板、 105…支持基板、 110…陽極層、 120…陰極層、 130…発光層、 140…電子輸送層(中間層)、 142…第2有機材料、 142a…メチル基、 142b…水素結合、 143…アセチレンアルコール系界面活性剤、 143a…親水部、 143b…疎水部、 150…正孔輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極層と、陰極層と、前記陽極層と前記陰極層との間に設けられ有機材料を含む発光層と、前記発光層と前記陰極層との間に設けられた中間層と、を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記陽極層の上に、第1有機材料と第1溶媒とを含む第1溶液を塗布して前記発光層を形成する工程と、
前記発光層の上に、低分子の第2有機材料と、アセチレンアルコール系界面活性剤を含み前記第1溶媒の溶解度パラメータよりも小さい溶解度パラメータを有する第2溶媒と、を含む第2溶液を塗布して前記中間層を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項2】
前記発光層は、前記第2溶媒に不溶であることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2有機材料は、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナンスロリン、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3イル)フェニル)ボラン、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン、3,3’,5,5’−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル、及び、1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼンよりなる群から選択された少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項4】
前記アセチレンアルコール系界面活性剤は、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、及び、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールよりなる群から選択された少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項5】
前記第2溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、及び、テトラリンよりなる群から選択された少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1溶媒は、キシレン、トルエン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、シクロヘキサノン、クロロホルム、ジクロロエタン、及び、テトラヒドロフランよりなる群からされた少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1有機材料は、分子量が20,000以上の高分子材料を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項8】
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層の上に電子輸送層を塗布法で形成するための有機エレクトロルミネッセンス素子用溶液であって、
低分子の有機材料と、
アセチレンアルコール系界面活性剤を含む溶媒と、
を備え、
前記有機材料は、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナンスロリン、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3イル)フェニル)ボラン、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン、3,3’,5,5’−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル、及び、1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼンよりなる群から選択された少なくともいずれかを含み、
前記アセチレンアルコール系界面活性剤は、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、及び、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールよりなる群から選択された少なくともいずれかを含み、
前記溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、及び、テトラリンよりなる群から選択された少なくともいずれかを含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用溶液。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−33383(P2012−33383A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171909(P2010−171909)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】