説明

有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法

【課題】フォトリソグラフィー法を用いて有機EL層をパターニングする有機EL素子の製造方法であって、欠陥がなく、安定性、信頼性の高い有機EL素子の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも第1電極層が形成された基板上に、発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層形成工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス層上に形成するフォトレジスト層形成工程と、前記フォトレジスト層をパターン露光し、現像するフォトレジスト層パターニング工程と、フォトレジスト層が除去された部分の、前記有機エレクトロルミネッセンス層を除去する有機エレクトロルミネッセンス層パターニング工程と、パターニングされたフォトレジスト層をオゾン水に接触させるオゾン水処理工程と、残存するフォトレジスト層を剥離液によって剥離する剥離工程と、前記剥離工程後に露出した有機エレクトロルミネッセンス層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィー法を用いた有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンスをELと略す場合がある。)素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EL素子は、対向する2つの電極から注入された正孔および電子が発光層内で結合し、そのエネルギーで発光層中の有機蛍光物質を励起し、蛍光物質に応じた色の発光を取り出すものであり、自発光の面状表示素子として注目されている。
その中でも、有機物質を発光材料として用いた有機EL素子は、印加電圧が10V弱であっても高輝度な発光を実現できるなど発光効率が高く、単純な素子構造で発光が可能であり、特定のパターンを発光表示させる広告その他低価格の簡易表示ディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】
一般に、有機EL素子を用いたディスプレイの製造にあっては、発光層等のパターニングがなされている。
発光層のパターニング方法としては、マスクを介して発光材料を蒸着する方法、インクジェット法により発光材料を塗り分ける方法、フォトリソグラフィー法を応用した方法等が提案されている。
【0004】
これらの方法の中でも、フォトリソグラフィーを応用した方法では、蒸着によるパターニング方法と比較すると、高精度のアライメント機構を備えた真空蒸着設備等が不要であることから、比較的容易にかつ安価に有機EL素子を製造することができる。
また、フォトリソグラフィー法は、インクジェット法によるパターニング方法と比較すると、パターニングを補助する構造物や基板に対する前処理等を行うことがない点で好ましい。
さらに、インクジェットヘッドの吐出精度との関係から、フォトリソグラフィー法の方がより高精細なパターンの形成に対して有利である。
【0005】
フォトリソグラフィー法によって有機EL層をパターニングする際に、有機EL層上にフォトレジストを塗布する場合には、有機EL層に用いられる有機材料が、フォトレジスト溶媒だけでなく、フォトレジスト現像液、剥離液およびリンス液等に不溶であることが必要とされる。
しかしながら、一般的に有機EL層に用いられる有機材料は多くの溶剤に可溶であるため、有機EL層上にフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成するのが困難であった。
【0006】
そこで、例えば、発光材料や、正孔もしくは電子輸送材性料等の有機材料と、感光性樹脂とを混合した材料を用いて有機EL層を形成し、パターン露光して、未露光部分の有機EL層を除去することにより、有機EL層をパターニングする方法が開示されている(特開平10−69981号公報〜特許文献1、参照)。
この方法においては、有機EL層上にフォトレジスト層を形成する必要がない。
しかしながら、有機EL層内では、発光材料、正孔もしくは電子輸送性材料等が、感光性樹脂中に分散された状態であるため、駆動電圧が上昇し、発光効率が低下するという問題がある。
【0007】
また、基板上の全面に陽極、有機EL層、陰極および保護層を形成し、保護層上にフォトレジスト層を形成し、このフォトレジスト層を所望の形状にパターニングし、その後、反応性イオンエッチング(RIE)によりフォトレジスト層が除去された部分の陰極、保護層および有機EL層を連続してエッチングすることにより、有機EL層をパターニングする方法が開示されている(特開平9−293589号公報〜特許文献2、および、特開2000−113982号公報〜特許文献3、参照)。
この方法においても、有機EL層上にフォトレジスト層を形成する必要がない。
しかしながら、この方法を用いて3色の発光層をパターニングするには、有機EL層上に陰極および保護層を真空成膜し、保護層上にフォトレジスト層を形成して、その後、陰極、保護層および有機EL層をエッチングし、フォトレジスト層を除去するという工程を繰り返し行うため、工程が非常に複雑であり、製造コストが増加するという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献2では、陰極の配線を設けるために、パターン状の有機EL層、陰極および保護層が設けられた基板上の全面に、再度、陰極および保護層を形成し、パターニングしている。
この方法では、工程がさらに複雑になり、製造コストがさらに増加するだけでなく、有機EL層上に保護層が2層積層されることになるため、発光特性等の性能の低下につながるという問題がある。
【0009】
さらに、発光材料や正孔輸送性材料等の有機材料と、熱硬化性樹脂とを混合した材料を用いて有機EL層を形成し、加熱硬化処理により有機EL層を硬化させた後に、有機EL層上にフォトレジスト層を形成して、有機EL層をパターニングする方法が開示されている(特開2001−237075号公報〜特許文献4、参照)。
この方法によれば、有機EL層上にフォトレジスト層を容易に形成することができる。
【0010】
また、上記特許文献4では、1色目の発光層をドライエッチングによりパターニングした後に、一度フォトレジスト層を剥離し、1色目の発光層を完全に硬化させ、1色目の発光層の表面が露出した状態で、2色目の発光層を形成している。
この方法では、1色目の発光層の表面が、2色目の発光層をパターニングするためのドライエッチングにさらされて、ダメージを受ける。
そのため、発光特性が低下するという問題がある。
【0011】
さらに、フォトレジスト溶媒、フォトレジスト現像液および剥離液等に対して、有機EL層に用いられる有機材料の溶解度を適切に調整することにより、有機EL層上にフォトレジスト層を形成して、有機EL層をパターニングする方法が提案されている(特開2004−6231号公報〜特許文献5、参照)。
この方法では、まず、1色目の発光層上にフォトレジスト層を形成し、所望の形状にパターニングし、フォトレジスト層が除去された部分の1色目の発光層をエッチングする。その後、フォトレジスト層を除去することなく、2色目の発光層を形成し、2色目の発光層上にさらにフォトレジスト層を形成し、所望の形状にパターニングし、フォトレジスト層が除去された部分の2色目の発光層をエッチングする。
そして、このような工程を繰り返し行って、複数色の発光層をパターニングした後に、各フォトレジスト層を除去する。
この方法によれば、2色目の発光層形成時にも、1色目の発光層上にはフォトレジスト層が残されており、1色目の発光層が2色目の発光層を形成するための塗工液および2色目の発光層をパターニングするためのドライエッチングから保護されるので、ダメージを低減することができる。
【0012】
【特許文献1】特開平10−69981号公報
【特許文献2】特開平9−293589号公報
【特許文献3】特開2000−113982号公報
【特許文献4】特開2001−237075号公報
【特許文献5】特開2004−6231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記の、ドライエッチング(反応性イオンエッチングを含む)を用いてパターニングするいずれの手法によっても、ドライエッチング工程において、エッチング活性種とフォトレジストの反応によって、フォトレジスト表面に変質層が形成される。
この変質層は剥離液などの溶媒に難溶性であり、フォトレジスト剥離段階において、剥離の妨げとなる。剥離が不完全な部分があると、そこは非発光箇所となり、ディスプレイの欠陥となってしまう。
そのため、従来は、フォトレジストを完全に剥離するために、高圧の剥離液を吹き付けるなどして剥離していたが、この従来方法の場合、パターニングされた有機EL層がダメージを受けるだけでなく、圧力によって一緒に剥離されてしまい欠陥となることがあり、欠陥が発生しやすく、品質の安定性、信頼性の面で問題があり、その対応が求められていた。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、フォトリソグラフィー法を用いて有機EL層をパターニングする有機EL素子の製造方法であって、欠陥がなく、安定性・信頼性の高い有機EL素子の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、少なくとも第1電極層が形成された基板上に、少なくとも発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層を形成する有機エレクトロルミネッセンス層形成工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス層上にフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、前記フォトレジスト層をパターン露光し、現像することにより、前記フォトレジスト層をパターニングするフォトレジスト層パターニング工程と、前記フォトレジスト層パターニング工程でフォトレジスト層が除去された部分の、前記有機エレクトロルミネッセンス層を除去することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス層をパターニングする有機エレクトロルミネッセンス層パターニング工程と、パターニングされたフォトレジスト層をオゾン水に接触させるオゾン水処理工程と、残存するフォトレジスト層を剥離液によって剥離する剥離工程と、前記剥離工程後に露出した有機エレクトロルミネッセンス層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを有することを特徴とするものである。
そして、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、フォトレジスト層の表層をオゾン水で分解、除去することを特徴とするものである。
そしてまた、上記いずれかの有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、有機エレクトロルミネッセンス層用材料は、水に対して元来難溶性あるいは成膜後に硬化剤の硬化や熱エネルギーあるいは放射線の作用による硬化反応によって水に対して不溶化できるものを用いることを特徴とするものである。
また、上記いずれかの有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、有機エレクトロルミネッセンス層パターニング工程は、ドライエッチングにより、フォトレジスト層が除去された部分の有機EL層を除去するものであることを特徴とするものである。 尚、先にも述べたが、ここでは、エレクトロルミネッセンスをELと略す場合がある。
【0016】
(作用)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、このような構成にすることにより、フォトリソグラフィー法を用いて有機EL層をパターニングする有機EL素子の製造方法で、欠陥がなく、安定性、信頼性の高い有機EL素子の製造方法の提供を可能としている。
具体的には、少なくとも第1電極層が形成された基板上に、少なくとも発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層を形成する有機エレクトロルミネッセンス層形成工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス層上にフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、前記フォトレジスト層をパターン露光し、現像することにより、前記フォトレジスト層をパターニングするフォトレジスト層パターニング工程と、前記フォトレジスト層パターニング工程でフォトレジスト層が除去された部分の、前記有機エレクトロルミネッセンス層を除去することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス層をパターニングする有機エレクトロルミネッセンス層パターニング工程と、パターニングされたフォトレジスト層をオゾン水に接触させるオゾン水処理工程と、残存するフォトレジスト層を剥離液によって剥離する剥離工程と、前記剥離工程後に露出した有機エレクトロルミネッセンス層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを有することにより、これを達成している。
即ち、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、有機EL層のエッチング工程においてエッチング活性種とフォトレジストの反応によってフォトレジスト表層に形成される、フォトレジスト剥離の妨げとなる表面変質層に着目し、パターニングされたフォトレジスト層をオゾン水に接触させるオゾン水処理工程を行った後に、残存するフォトレジスト層を剥離液によって剥離する剥離工程を行うものとしている。
フォトレジスト層の剥離工程の前に、オゾンを作用させることによってフォトレジストの剥離が容易になることを見出し、本発明を完成させた。
特に、オゾンを水に溶解させたオゾン水は、オゾンガスを用いるときと比較して取り扱いが容易であり、また、基板に均一に作用させることが容易であり、有効であると考えられる。
尚、一般に、表面に形成される変質層は、フォトレジストにイオンやプラズマなどの反応活性種が衝突、反応、硬化することによって形成された難溶性の有機物である。
具体的には、フォトレジスト層の表層をオゾン水で分解、除去する、請求項2の発明の形態が挙げられ、更に具体的には、有機エレクトロルミネッセンス層用材料は、水に対して元来難溶性あるいは成膜後に硬化剤の硬化や熱エネルギーあるいは放射線の作用による硬化反応によって水に対して不溶化できるものを用いる、請求項3の発明の形態が挙げられる。
オゾンにはその高い酸化力ゆえに有機物の結合を切断し、分解する効果があり、オゾン水をフォトレジストを覆った変質層に接触させることにより、変質層をオゾンと反応させ、変質層が分解、除去される。
これにより、オゾン水処理後は変質層の一部もしくは全部が除去され、剥離液にフォトレジストが可溶となり、浸漬あるいは低圧力の吹き付けで剥離可能となり、欠陥も発生しにくくなるため、信頼性、安定性の向上につながる。
フォトレジストの残渣や有機EL層の剥がれ等による欠陥が生じない、信頼性、安定性の高い有機EL素子の作製方法の提供が可能となる。
請求項3の発明の形態とすることにより、オゾン水で処理する際に、パターニングした有機EL層が溶出し、消失あるいは欠陥を生じてしまう不具合を防止できる。
【0017】
また、有機エレクトロルミネッセンス層パターニング工程は、ドライエッチングにより、フォトレジスト層が除去された部分の有機EL層を除去するものである、請求項4の発明の形態の場合には、特に、有効である。
ドライエッチングでは、混色等が生じにくく、また、異方性が高いため信頼性が高く、より高精細なパターニングが可能となる。
【0018】
尚、パターニングされた有機EL層の上面はフォトレジストに覆われているため、オゾン水によってダメージを受けることはない。
また、フォトレジストに覆われていないエッチング側面に関しても、オゾン水によるダメージは若干受けるものの、フォトレジスト剥離に効果が出る程度のオゾン水処理では、アライメントマージン以下の程度であり、ディスプレイの表示には影響を与えない。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記のように、フォトリソグラフィー法を用いて有機EL層をパターニングする有機EL素子の製造方法で、欠陥がなく、安定性、信頼性の高い有機EL素子の製造方法の提供を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1(a)〜図1(g)は本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の実施の形態の第1の例の製造工程を示した工程断面図で、図2(a)〜図2(e)は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の実施の形態の第2の例の製造工程の一部を示した工程断面図で、図3(f)〜図3(j)は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の実施の形態の第2の例の製造工程の一部を示した工程断面図で、図4(k)〜図4(n)は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の実施の形態の第2の例の製造工程の一部を示した工程断面図で、図5(o)〜図5(p)は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の実施の形態の第2の例の製造工程の一部を示した工程断面図である。
尚、図2(a)〜図2(e)、図3(f)〜図3(j)、図4(k)〜図4(n)、図5(o)〜図5(p)の順に製造工程は行われる。
図1〜図5中、1は基板、2は第1電極層、3は絶縁層、4は正孔注入層、5は発光層、6は有機EL層、7はフォトレジスト層、7aは(現像後の)フォトレジスト層、8は第2電極層、9は発光領域、10はフォトマスク、11は露光光、21は基板、22は第1電極、23は絶縁層、24、24a、24bは正孔注入層、25、25a、25bは発光層、26、26a、26bは有機EL層、27、27a、27bはフォトレジスト層、27A、27aA、27bAは(現像後の)フォトレジスト層、28は第2電極、29、29a、29bは発光領域、30、30a,30bはフォトマスク、31、31a、31bは露光光である。
【0021】
はじめに、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の実施の形態の第1の例(以下、第1態様とも言う)を説明する。
第1の例の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、1色の有機EL層をパターン状に形成する場合のもので、順に、少なくとも第1電極層が形成された基板上に、少なくとも発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層を形成する有機エレクトロルミネッセンス層形成工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス層上にフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、前記フォトレジスト層をパターン露光し、現像することにより、前記フォトレジスト層をパターニングするフォトレジスト層パターニング工程と、前記フォトレジスト層パターニング工程でフォトレジスト層が除去された部分の、前記有機エレクトロルミネッセンス層を除去することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス層をパターニングする有機エレクトロルミネッセンス層パターニング工程と、パターニングされたフォトレジスト層をオゾン水に接触させるオゾン水処理工程と、残存するフォトレジスト層を剥離液によって剥離する剥離工程と、前記剥離工程後に露出した有機エレクトロルミネッセンス層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを有するものである。
【0022】
以下、第1の例(第1態様)の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の1例を、図1に基づいて説明する。
まず、基板1の一面上に第1電極層2をパターン状に形成し、この第1電極層2のパターン間に絶縁層3を形成し、第1電極層2および絶縁層3の上に正孔注入層4および発光層5を形成し、有機EL層6とする(図1(a)、有機EL層形成工程)。
次に、有機EL層6上にポジ型フォトレジストを塗布して、フォトレジスト層7を形成する(図1(b)、フォトレジスト層形成工程)。
次いで、少なくとも発光領域9のフォトレジスト層7が残存するように、フォトマスク10を介してフォトレジスト層7をパターン露光した後、フォトレジスト現像液により現像し、洗浄することにより、パターン状のフォトレジスト層7aを形成する(図1(c)および(d)、フォトレジスト層パターニング工程)。
尚、ここで、発光領域9とは、絶縁層3の開口部分を通して、第1電極2と第2電極8の間に挟まれた有機EL層の領域をさす。(図1(c)、図1(g)参照)
次に、フォトレジスト層7aの開口から露出した部分の有機EL層6をドライエッチングにより除去することにより、パターン状の有機EL層6を形成する(図1(e)、有機EL層パターニング工程)。
ドライエッチング処理によりフォトレジスト層7a表面には変性層が形成されている(図示していない)。
次いで、オゾン水処理することによりこの表面変性層を分解、除去し、引き続いてフォトレジスト層7aを剥離する(図1(f)、オゾン水処理・剥離工程)。
最後に、有機EL層6上に第2電極層8を形成する(図1(g)、第2電極層形成工程)。
これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子が形成される。
【0023】
ここでは、絶縁層(図1(a)の3を参照)を形成するが、絶縁層3は形成されていても良く、いなくても良いが、好ましくは、基板1上にパターニングされた第1電極2の電極間、および第1電極2上に発光領域を開口部として残す形で電極の端部を覆うように形成されていたほうが良い。
第1電極2の端部を覆う理由としては、電極端部が絶縁層で覆われていないと、電極端部でEL層の膜厚が薄くなってそこに局所的な電界がかかって、発光ムラや電流リークの原因となるからである。
絶縁層3の膜厚は0.5〜1.5μm程度が好ましい。
絶縁層3はドライエッチング耐性があることが望ましいが、耐性が低いときには、膜厚は1μm〜10μm程度の膜厚で形成し、ドライエッチングによる欠損を防止するのが好ましい。
絶縁層3に用いられる材料は、SiO2やSi3N4、AlN、Al2O3などの各種絶縁性無機材料およびポリイミドやアクリル、ノボラックなどの各種樹脂。
パターニングにはフォトリソグラフィーあるいはフォトリソグラフィーとエッチング(ドライあるいはウエット)を用いる。
尚、基板1には有機EL素子の発光駆動に用いるTFTなどが形成されている場合もある。
また、ここにおいては、ドライエッチングにより生成したレジスト表面の変質層をオゾン水によって分解、除去するため、剥離工程において、剥離液を用いてフォトレジスト層7aを容易に剥離できる。
したがって、レジスト残渣や有機EL層の剥がれなどによる欠陥がなく、安定性、信頼性に優れる有機ELディスプレイの製造を可能としている。
尚、図1(c)における発光領域9とは、所定の位置に形成された有機EL層の形成領域を意味し、具体的には、図1(g)に示す第1電極と第2電極の間に挟まれた有機EL層の領域をさすものとする。
【0024】
以下、第1の例(第1の態様)の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の各工程について説明する。
<1> 有機EL層形成工程
第1の例(第1態様)における有機EL層形成工程は、第1電極層が形成された基板上に、少なくとも発光層を含む有機EL層を形成する工程である。
以下、基板、第1電極層および有機EL層について説明する。
(1)基板(図1の基板1を参照)
第1の例(第1態様)に用いられる基板は、透明性を有していても有さなくてもよい。 例えば図1(g)に示す有機EL素子においてボトムエミッション型とする場合、基板1は透明性を有することが好ましい。
一方、例えば図1(g)に示す有機EL素子においてトップエミッション型とする場合、基板1に透明性は要求されない。
また、例えば図1(g)に示す有機EL素子において両面から光を取り出す場合には、基板1は透明性を有することが好ましい。
透明性を有する基板1には、例えば、ガラス等の無機材料や、透明樹脂などを用いることができる。
上記透明樹脂としては、フィルム状に成形可能であれば特に限定されるものではないが、透明性が高く、耐溶媒性、耐熱性の比較的高いことが好ましい。
このような透明樹脂としては、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニル(PFV)、ポリアクリレート(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、非晶質ポリオレフィン、またはフッ素系樹脂等が挙げられる。
尚、第1の例(第1態様)に用いられる基板には有機EL素子の発光駆動に用いるTFTなどが形成されていても良い。
【0025】
(2)第1電極層(図1の第1電極層2を参照)
第1の例(第1態様)において用いられる第1電極層は、陽極であってもよく陰極であってもよい。
一般に、有機EL素子を製造する際には、陽極側から積層する方が安定して有機EL素子を作製することができることから、第1電極層が陽極であることが好ましい。
陽極には、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料が好ましく用いられる。
一方、陰極には、電子が注入し易いように仕事関数の小さな導電性材料が好ましく用いられる。
導電性材料としては、一般に金属材料が用いられるが、有機物や無機化合物を用いてもよい。また、第1電極層には、複数の材料を混合して用いてもよい。
また、第1電極層は、透明性を有していても有さなくてもよく、光の取り出し面に応じて適宜選択される。
例えば、図1(g)に示す有機EL素子においてボトムエミッション型とする場合、第1電極層2は透明性を有することが好ましい。
一方、例えば図1(g)に示す有機EL素子においてトップエミッション型とする場合、第1電極層2に透明性は要求されない。
また、例えば図1(g)に示す有機EL素子において両面から光を取り出す場合には、第1電極層2は透明性を有することが好ましい。
透明性を有する導電性材料としては、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、Zn−O−Al、Zn−Sn−O等を好ましいものとして例示することができる。
また、透明性が要求されない場合、導電性材料としては、金属を用いることができ、具体的にはAu、Ta、W、Pt、Ni、Al、Pd、Cr、あるいは、Al合金、Ni合金、Cr合金等を挙げることができる。
第1電極層が陽極および陰極のいずれであっても、抵抗が比較的小さいことが好ましい。
第1電極層の成膜方法としては、一般的な電極の成膜方法を用いることができ、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、CVD法、印刷法等を挙げることができる。
また、第1電極層のパターニング方法としては、フォトリソグラフィー法を挙げることができる。
【0026】
(3)有機EL層(図1の有機EL層を参照)
第1の例(第1態様)における有機EL層は、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層から構成されるものである。
すなわち、有機EL層とは、少なくとも発光層5を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。
通常、湿式法で有機EL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、1層もしくは2層の有機層を形成する場合が多いが、溶媒への溶解性が異なるように有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
発光層以外の有機EL層を構成する有機層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等を挙げることができる。
この正孔輸送層は、正孔注入層に正孔輸送の機能を付与することにより、正孔注入層と一体化される場合が多い。
また、有機EL層を構成する有機層としては、正孔ブロック層や電子ブロック層のような正孔もしくは電子の突き抜けを防止し、さらに励起子の拡散を防止して発光層内に励起子を閉じ込めることにより、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。
有機EL層の構成としては、一般的な構成であればよく、発光層のみ、正孔注入層/発光層、正孔注入層/発光層/電子注入層、正孔注入層/正孔ブロック層/発光層/電子注入層、正孔注入層/発光層/電子輸送層などを例示することができる。
発光層を含む複数の有機層を積層する場合、例えば、発光層、または、正孔注入層および発光層をフォトリソグラフィー法によりパターニングした後に、パターン状の発光層上に、電子輸送層や電子注入層等を真空蒸着法によりパターン状に形成してもよい。
また、例えば、正孔注入層を真空蒸着法によりパターン状に形成した後に、パターン状の正孔注入層上に発光層を成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングしてもよい。
また、有機EL層として、正孔注入層および発光層を形成する場合、基板上の全面に正孔注入層および発光層を形成した後に、正孔注入層および発光層をフォトリソグラフィー法によりパターニングしてもよく、発光層のみをフォトリソグラフィー法によりパターニングしてもよい。
中でも、正孔注入層の導電性が高い場合には、素子のダイオード特性を保ち、クロストークを防ぐために、正孔注入層および発光層をフォトリソグラフィー法によりパターニングすることが好ましい。
一方、正孔注入層の抵抗が高い場合には、正孔注入層をパターニングしてもよく、パターニングしなくてもよい。
【0027】
ここで、膜の溶解性について述べておく。
一般的に、膜の溶解性は、膜中の固体成分を溶剤に溶解した場合の溶解度(100×溶解した固形分重量/(溶解した固形分重量+溶剤量))で定義される。
このような定義では、溶解度が0.1%を下回るような場合には、難溶もしくは不溶と判断されることが多い。
しかしながら、上記定義において難溶もしくは不溶であると判断される溶剤を使用しても、膜を溶剤に浸漬した場合に、膜が溶解して膜減りが発生する。
特に、有機EL素子では、有機EL層の膜厚が非常に薄く、一般的に有機EL層を構成する有機層1層の膜厚は100nm以下である。
このため、上記定義において溶解度が0.1%以下であり、難溶もしくは不溶であると判断された溶剤に膜を浸漬した場合でも、100nm程度の膜厚であれば厚みが容易に減少してしまう。
そこで、ここでは、膜の溶解性について、基板上に膜を形成し十分に乾燥させて、その膜を25℃で1分間溶剤に浸漬させた後、浸漬前後での膜厚を測定し、その差(浸漬前の膜厚−浸漬後の膜厚)により、以下のように定義することとした。
膜減り量が1nm以下/minの場合 … 不溶
膜減り量が1nm超/min〜10nm以下/minの場合 … 難溶
膜減り量が10nm超/minの場合 … 可溶
なお、膜の溶解性の定義については、有機EL層だけでなく、フォトレジスト層等にも適用される。
【0028】
以下、有機EL層の各構成について説明する。
(i)2層以上の有機層
第1の例(第1態様)においては、有機EL層が、発光層を含む2層以上の有機層を有する場合であって、下層形成用塗工液を塗布して下層の有機層を形成し、この下層の有機層上に、上層形成用塗工液を塗布して上層の有機層を形成する場合、下層の有機層が上層形成用塗工液に含まれる溶媒に対して不溶であることが好ましい。
すなわち、有機EL層形成工程が、発光層を含む2層以上の有機層を形成する工程であって、下層形成用塗工液を塗布して、下層の有機層を形成する下層形成工程と、下層の有機層上に上層形成用塗工液を塗布して、上層の有機層を形成する上層形成工程とを有する場合には、下層の有機層が上層形成用塗工液に含まれる溶媒に対して不溶であることが好ましい。
具体的には、下層の有機層の溶解性は、上層形成用塗工液の溶媒に対して、1nm以下/minであることが好ましい。
これにより、上層の有機層の成膜の際に、上層形成用塗工液の溶媒が下層の有機層に接触しても、下層の有機層は溶解されないので、安定して上層の有機層を積層することができるからである。
下層の有機層を上層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとするには、下層の有機層に、硬化性バインダ、または、熱エネルギーもしくは放射線の作用により溶解性が変化する材料を用いるか、あるいは、下層の有機層および上層の有機層にそれぞれ溶解性が異なる材料を用いればよい。
また、下層の有機層を上層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとするために、下層の有機層に、光開始剤等を含有させてもよい。
例えば、正孔注入層(下層の有機層)上に発光層(上層の有機層)を形成する場合であって、発光層に高分子系発光材料を用い、正孔注入層に、ポリ(3,4−アルケンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)またはその誘導体等の導電性高分子を用いた場合、一般的に、正孔注入層(下層の有機層)は発光層形成用塗工液(上層形成用塗工液)の溶媒に対して不溶なものとはならない。
しかしながら、Applied Physics letter, Vol 81, (2002)に記載されているような光開始剤等を、上記導電性高分子に混合することにより、紫外線照射によって硬化させることができる。
中でも、下層の有機層を上層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとするには、下層の有機層に、硬化性バインダ、または、熱エネルギーもしくは放射線の作用により溶解性が変化する材料を用いることが好ましい。
すなわち、下層形成用塗工液が、硬化性バインダ、または、熱エネルギーもしくは放射線の作用により溶解性が変化する材料を含有することが好ましい。
例えば図1(a)に示すように、有機EL層6が正孔注入層4と発光層5とを有する場合、下層の有機層である正孔注入層4には、硬化性バインダ、または、熱エネルギーもしくは放射線の作用により溶解性が変化する材料を含有させることが好ましい。下層の有機層が上層形成用塗工液の溶媒に対して不溶であれば、上層の有機層形成時に下層の有機層に含まれる有機材料等が溶出するのを防ぐことができ、下層の有機層の特性が低下するのを抑制することができる。
【0029】
以下、下層の有機層が、硬化性バインダを含有する場合と、熱エネルギーまたは放射線の作用により溶解性が変化する材料を含有する場合とに分けて説明する。
(硬化性バインダ)
下層の有機層に用いられる硬化性バインダとしては、熱エネルギーまたは放射線の作用により硬化するものであることが好ましく、例えば、ゾルゲル反応液、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂を挙げることができる。
なお、ゾルゲル反応液とは、硬化後にゲル化する反応液をいう。
中でも、硬化性バインダは、オルガノポリシロキサンを含むことが好ましい。オルガノポリシロキサンは、ガラスとの結合性が高く、密着性が向上するという機能を有している。
上記オルガノポリシロキサンとしては、例えば特開2000−249821号公報に記載されているもの等を用いることができる。
下層の有機層が、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等である場合には、下層の有機層は、上記硬化性バインダと、正孔もしくは電子注入性材料、または正孔もしくは電子輸送性材料とを含有することが好ましい。
このような下層の有機層は、正孔もしくは電子の注入効率が良く、また硬化されたものとすることができ、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等として良好に機能するからである。
また、下層の有機層が発光層である場合には、下層の有機層は、上記硬化性バインダと、発光材料とを含有することが好ましい。
下層形成用塗工液は、上記の硬化性バインダと、正孔もしくは電子注入性材料、または正孔もしくは電子輸送性材料、または発光材料等とを、溶媒に分散もしくは溶解して調製される。例えば、硬化性バインダがオルガノポリシロキサンを含む場合には、溶媒としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系が好ましく用いられる。
下層形成用塗工液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法等が挙げられる。
下層の有機層は、下層形成用塗工液を塗布して得られる塗膜に硬化処理を行うことにより、形成することができる。
硬化処理としては、熱エネルギーの付与、または放射線の照射が挙げられる。
【0030】
(熱エネルギーまたは放射線の作用により溶解性が変化する材料)
ここで、材料の溶解性が変化するとは、材料の主成分が溶解もしくは分散する溶媒の極性が変化することをいう。
熱エネルギーまたは放射線の作用により溶解性が変化する材料を含有する層に対して、熱エネルギーを付与または放射線を照射することにより、材料の溶解性を変化させると、その層を形成するために用いた塗工液の溶媒と、熱エネルギー付与または放射線照射後の層が溶解する溶媒とでは、極性が異なるものとなる。
材料の溶解性が変化する程度としては、熱エネルギー付与または放射線照射後の下層の有機層が、下層形成用塗工液に用いた溶媒に、実質的に溶解したり混和したりしない程度であればよい。
具体的には、熱エネルギー付与または放射線照射後の下層の有機層の溶解性が、下層形成用塗工液に用いた溶媒に対して、1nm以下/minとなることを指標にすることができる。
下層の有機層に用いられる、熱エネルギーまたは放射線の作用により溶解性が変化する材料としては、例えば、親水性有機材料の親水性基の一部または全部が親油性基に変換されたものであり、かつ、熱エネルギーまたは放射線の作用により親油性基の一部または全部が親水性基に戻るものが好適に用いられる。
上記の材料においては、親水性有機材料の親水性基のすべてが親油性基に変換されている必要はない。
親水性基が親油性基に変換されている割合としては、一般的な非水系有機溶剤に対して、所望の濃度以上の溶解性を保持し得る程度であればよい。
具体的には、水、アルコール系溶剤に溶解もしくは分散する親水性有機材料が、一般的な非水系溶剤である、トルエン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン等に0.5質量%以上溶解する程度に、親水性基が親油性基に変換されていることが好ましい。
また、上記の材料においては、親油性基のすべてが親水性基に戻る必要はない。親油性基が親水性基に戻る割合としては、下層の有機層が上層形成用塗工液の溶媒に溶解しない程度であればよい。
具体的には、トルエン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン等に0.5質量%以上溶解する材料が、トルエン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン等に不溶もしくは難溶になる程度に、親油性基が親水性基に戻ることが好ましい。
この際、完全に当初の親水性有機材料に戻らなくてもよい。
上記親水性有機材料としては、親水性基を有し、水に分散もしくは溶解するものであればよく、下層の有機層に求められる機能に応じて適宜選択される。
例えば、正孔注入層(下層の有機層)上に発光層(上層の有機層)を形成する場合、正孔注入層に用いられる親水性有機材料としては、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、トリフェニルアミンやトリフェニルジアミン等のアリールアミン類などが挙げられる。
ポリアルキルチオフェン誘導体およびポリアニリン誘導体は、ポリスチレンスルホン酸等の酸によりドーピングされていてもよい。
また、親水性基としては、変換反応の容易さから、塩を含まない、スルホン酸基、カルボン酸基、水酸基が好ましい。
上記の正孔注入層に用いられる親水性有機材料としては、変換処理に対する耐久性、精製の容易さ、コストの点から、ポリスチレンスルホン酸もしくはポリチオフェンスルホン酸またはそれらの誘導体を含んでいることが好ましい。
親水性有機材料における親水性基を親油性基に変換する方法としては、熱エネルギーまたは放射線の作用により親油性基の一部または全部が親水性基に戻ることから、保護反応を利用する方法であることが好ましい。
ここで、保護反応とは、親水性基を誘導体化して、一時的に親水性基に保護基を導入する反応をいう。
保護反応としては、エステル化、アセチル化、トシル化、トリフェニルメチル化、アルキルシリル化、またはアルキルカルボニル化であることが好ましい。
具体的な保護反応としては、スルホン酸基やカルボン酸基の少なくとも一部を、五酸化リンや塩化チオニルなどの塩素化剤により、スルホクロリド基やカルボニルクロリド基に変換し、これらの塩化物にメタノールやエタノール等のアルコールを反応させてエステル化する方法が挙げられる。
このように親水性有機材料の親水性基の一部または全部が親油性基に変換された材料は、親水性基に保護基が導入されたために、溶解性が親水性から親油性に変化する。
【0031】
下層形成用塗工液は、上記の親水性有機材料の親水性基の一部または全部が親油性基に変換された材料を、溶媒に分散もしくは溶解することにより調製することができる。
この際、溶媒としては、親油性の材料を分散もしくは溶解できるものが用いられる。
このような溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル等が挙げられる。
また、下層形成用塗工液中の、親水性有機材料の親水性基の一部または全部が親油性基に変換された材料の濃度としては、材料の成分または組成によって異なるものではあるが、通常、0.1質量%以上で設定され、好ましくは1質量%〜5質量%程度である。
【0032】
下層の有機層は、上記下層形成用塗工液を塗布して得られる塗膜に、熱エネルギーを付与または放射線を照射して、塗膜の溶解性を変化させることにより、得ることができる。 上記下層形成用塗工液の塗布後には、乾燥を行ってもよい。
下層形成用塗工液塗布後の塗膜の溶解性は、親油性となっている。
この塗膜に熱エネルギーを付与または放射線を照射すると、上記保護反応により導入された保護基が脱離し、揮散する。
具体的には、エステル化されたスルホン酸基やカルボン酸基に、熱エネルギーを付与または放射線を照射すると、エステル結合が分解され、フリーまたは塩の状態のスルホン酸基やカルボン酸基が復元される。
保護基が脱離すると、膜の溶解性が親油性から親水性に変化する。
このように親水性となった膜は、下層形成用塗工液に用いた溶媒には混和しなくなる。 すなわち、熱エネルギー付与または放射線照射後の下層の有機層は、下層形成用塗工液の溶媒に対して不溶となる。
【0033】
熱エネルギーの付与としては、例えば、約200〜220℃で約60〜90分間加熱処理すればよい。
この加熱処理は、下層形成用塗工液塗布後の乾燥と同時に行ってもよい。
また、放射線としては、例えば、紫外線や電子線が挙げられる。
紫外線の照射条件としては、例えば、200〜250mJ/cm2程度(波長:400nm以下)で設定することができる。
また、電子線の照射条件としては、例えば、500kV以上、35mAで設定することができる。
【0034】
(ii)発光層(図1の発光層5を参照)
第1の例(第1態様)における発光層に用いられる発光材料としては、蛍光または燐光を発する材料を含み、発光するものであれば特に限定されるものではなく、発光機能と正孔輸送機能もしくは電子輸送機能とを兼ねていてもよい。
また、発光材料が、フォトレジスト溶液の溶媒、水およびフォトレジスト剥離液に不溶であることが好ましい。
すなわち、発光層の溶解性は、フォトレジスト溶液の溶媒に対して、1nm以下/minであることが好ましく、さらにはフォトレジスト剥離液に対して、1nm以下/minであることが好ましい。
なぜなら、成膜した発光層は、フォトレジスト成膜工程、オゾン水処理工程およびフォトレジスト剥離工程において溶解してはならないからである。
【0035】
発光材料としては、色素系発光材料、金属錯体系発光材料、および高分子系発光材料を挙げることができる。
色素系発光材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
金属錯体系発光材料としては、例えば、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、あるいは、中心金属に、Al、Zn、Be等またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子に、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができるが、ここに示したものに限定されるものではない。
高分子系発光材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体等、あるいは、上記の色素系発光材料や金属錯体系発光材料を高分子化したもの等を挙げることができる。
発光層形成用塗工液を塗布して発光層を形成する場合には、フォトリソグラフィー法によって発光層を精度良くパターニングすることができるという利点を活かすという観点から、発光材料として、上記高分子系発光材料を用いることが好ましい。
【0036】
また、上記発光材料には、種々の添加剤を添加することが可能である。
例えば、上記発光材料には、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的でドーピング剤を添加してもよい。
このようなドーピング剤としては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体、イリジウム錯体誘導体、白金錯体誘導体を挙げることができる。
【0037】
発光層の形成方法としては、上記発光材料等を含む発光層形成用塗工液を塗布する方法、あるいは、真空蒸着法等を用いることができる。中でも、製造コスト低減の観点から、発光層形成用塗工液を塗布する方法が好ましい。
【0038】
第1の例(第1態様)において、後述する正孔注入層を形成する場合であって、正孔注入層上に発光層形成用塗工液を塗布して発光層を形成する場合には、発光層の成膜の際に、正孔注入層を形成する材料が発光層形成用塗工液に混合したり溶解したりするのを防ぐとともに、発光材料本来の発光特性を保つために、発光層形成用塗工液には、正孔注入層を溶解しない溶媒を用いることが好ましい。
具体的には、発光層形成用塗工液に用いられる溶媒は、正孔注入層の溶解性が1nm以下/minであることが好ましい。
例えば、後述する正孔注入層を形成する材料が水系溶媒やジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DIMSO)、アルコール等の極性溶媒に溶解する場合には、上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンの各異性体およびそれらの混合物、メシチレン、テトラリン、p−シメン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ブチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンの各異性体およびそれらの混合物等の芳香族系;アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジグライム等のエーテル系;ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1−クロロナフタレン等の塩化炭化水素系;シクロヘキサノンなどが好ましく用いられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
また、発光層形成用塗工液の塗布方法としては、例えば、ディップコート法、ロールコート法、ブレードコート法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、キャスティング法、フレキソ印刷法等を挙げることができる。
上記発光層形成用塗工液の塗布後は、乾燥を行ってもよい。
【0040】
本様態における発光層は硬化剤を含まないものであり、また発光層形成時には硬化・架橋処理を行わない。
このため、発光層は、発光層形成用塗工液の溶媒に対して可溶な状態のままとなっている。
【0041】
発光層の膜厚としては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定されるものではなく、具体的には10nm〜500nm程度とすることができる。
【0042】
(iii)正孔注入層(図1の正孔注入層4を参照)
本例における正孔注入層は、発光層に正孔の注入が容易に行われるように、陽極と発光層との間に設けられるものである。
正孔注入層に用いられる材料としては、発光層内への正孔の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではない。
この正孔注入層に用いられる正孔注入性材料としては、例えば、アリールアミン類、フタロシアニン類、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンおよびこれらの誘導体等の導電性高分子などを挙げることができる。導電性高分子は、酸によりドーピングされていてもよい。
具体的には、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン(α−NPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
また、正孔注入層上に発光層形成用塗工液を塗布して発光層を形成する場合には、正孔注入層を形成する材料は、発光層形成用塗工液の溶媒に対して不溶であることが好ましい。
すなわち、正孔注入層の溶解性は、発光層形成用塗工液の溶媒に対して、1nm以下/minであることが好ましい。
なお、正孔注入層を発光層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとすることについては、上記「(i)2層の有機層」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0043】
正孔注入層の形成方法としては、上記の正孔注入性材料等を含む正孔注入層形成用塗工液を塗布する方法、あるいは、真空蒸着法等を用いることができる。
中でも、製造コスト低減の観点から、正孔注入層形成用塗工液を塗布する方法が好ましい。
正孔注入層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記の正孔注入性材料が分散もしくは溶解するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水、メタノール、エタノール等のアルコール系、あるいは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、正孔注入層形成用塗工液の塗布方法としては、例えば、ディップコート法、ロールコート法、ブレードコート法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、キャスティング法、フレキソ印刷法等を挙げることができる。
また、正孔注入層の膜厚としては、その機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されるものではなく、具体的には0.5nm〜1000nm程度とすることができ、中でも10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0044】
(iv)電子輸送層
本例における電子輸送層は、発光層に電子の輸送が容易に行われるように、陰極と発光層との間に設けられるものである。
電子輸送層に用いられる材料としては、陰極から注入された電子を発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定されるものではない。
この電子輸送層に用いられる電子輸送性材料としては、例えば、オキサジアゾール類、トリアゾール類、バソキュプロイン、バソフェナントロリン等のフェナントロリン類、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)等のアルミキノリノール錯体などが挙げられる。
電子輸送層の形成方法としては、上記の電子輸送性材料等を含む電子輸送層形成用塗工液を塗布する方法、あるいは、真空蒸着法等を用いることができる。通常は、真空蒸着法が用いられる。
電子輸送層の厚みとしては、その機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されない。
【0045】
(v)電子注入層
本様態における電子注入層は、発光層に電子の注入が容易に行われるように、陰極と発光層との間に設けられるものである。
電子注入層に用いられる材料としては、発光層内への電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミリチウム合金、リチウム、セシウム等のアルカリ金属やその合金;フッ化リチウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属のハロゲン化物;ストロンチウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等のアルカリ土類金属のハロゲン化物;酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム等の酸化物;などが挙げられる。また、電子注入層に用いられる材料として、ポリメチルメタクリレートポリスチレンスルホン酸ナトリウム等を挙げることができる。
電子注入層の形成方法としては、上記の材料等を含む電子注入層形成用塗工液を塗布する方法、あるいは、真空蒸着法等を用いることができる。通常は、真空蒸着法が用いられる。
電子注入層の膜厚としては、その機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されるものではない。
【0046】
(vi)有機EL層の水に対する溶解性
全ての有機EL層は、オゾン水処理耐性のため、少なくとも水に不溶であることが好ましい。
すなわち、有機EL層の水に対する溶解性が、1nm以下/minであることが好ましい。
有機EL材料は一般的には水に対して不溶であることが多いが、水に対して元来可溶あるいは難溶な有機EL材料を用いる場合には、上記記載の下層の有機層を上層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとする方法と同様に、有機EL層に、硬化剤を添加するか、または、熱エネルギーもしくは放射線の作用により水に対する溶解性が変化する材料を用いればよく、詳細については上記の方法と同様なのでここでは省略する。
【0047】
<2> フォトレジスト層形成工程
第1の例(第1態様)におけるフォトレジスト層形成工程は、有機EL層上にフォトレジストを塗布し、フォトレジスト層を形成する工程である。
本例に用いられるフォトレジストは、ポジ型およびネガ型のいずれであってもよい。
中でも、フォトレジストの剥離し易さを考慮すると、ポジ型フォトレジストが好ましい。
フォトレジストとしては、一般的なものを用いることができ、例えば、ノボラック系樹脂、ゴム+ビスアジド系樹脂等を挙げることができる。
また、フォトレジストに用いられるフォトレジスト溶媒としては、有機EL層上にフォトレジストを塗布した際に有機EL層がフォトレジストに混合したり溶解したりするのを防ぐために、有機EL材料を溶解しないものであることが好ましい。
具体的には、フォトレジスト溶媒は、有機EL層の溶解性が1nm以下/minであることが好ましい。
具体的には、フォトレジスト溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のセロソルブアセテート系;プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系;メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール系;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系;シクロヘキサン、デカリンなどが挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
フォトレジストの塗布方法としては、基板上の全面に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷法等が用いられる。
フォトレジスト層の膜厚は、特に限定されるものではないが、後述する有機EL層パターニング工程にて、有機EL層をドライエッチングする場合には、0.1μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは0.5μm〜5μmの範囲内である。フォトレジスト層の膜厚が上記範囲であれば、レジスト機能を保ったまま、加工精度の高いドライエッチングが可能となるからである。
【0048】
<3> フォトレジスト層パターニング工程
本例におけるフォトレジスト層パターニング工程は、フォトレジスト層をパターン露光し、現像することにより、発光領域のフォトレジスト層が残存するようにフォトレジスト層をパターニングする工程である。
フォトレジスト層をパターン露光する方法としては、例えば、フォトマスクを介して露光する方法、レーザー描画法など、一般的な方法を用いることができる。
パターン露光の際、ポジ型フォトレジストを用いた場合には、少なくとも発光領域が非露光領域となるように露光し、ネガ型フォトレジストを用いた場合には、少なくとも発光領域が露光領域となるように露光する。
本例に用いられるフォトレジスト現像液としては、下層に用いられる有機EL材料等を溶解しないものであれば特に限定されるものではない。
具体的には、フォトレジスト現像液は、有機EL層の溶解性が1nm以下/minであることが好ましい。
このようなフォトレジスト現像液としては、一般的に使用されている有機アルカリ系現像液を使用できる。また、フォトレジスト現像液として、無機アルカリ系現像液や、第1フォトレジスト層の現像が可能な水溶液を使用することもできる。
また、フォトレジスト層を現像した後は、水で洗浄するのが好ましい。
【0049】
<4> 有機EL層パターニング工程
本様態における有機EL層パターニング工程は、フォトレジスト層が除去された部分の有機EL層を除去することにより、有機EL層をパターニングする工程である。
有機EL層の除去方法としては、混色等が生じにくく、また高精細なパターニングが可能であることから、ドライエッチングが好ましい。
ドライエッチングでは、フォトレジスト層の膜厚が有機EL層よりもかなり厚いことから、基板に対して全体的にドライエッチングを行うことにより、フォトレジスト層が除去された部分の有機EL層を除去することができる。
ドライエッチングを用いれば、エッチングの端部をよりシャープとすることができるため、有機EL層のパターンの端部に発生する膜厚不均一領域をより狭くすることができ、その結果、より高精細なパターニングが可能となる。
ドライエッチングの方法としては、例えば、大気圧プラズマエッチング、反応性イオンエッチング(RIE)、不活性ガスによるプラズマエッチング、レーザー、イオンビーム等によるエッチングなどを用いることができる。
反応性イオンエッチングでは、有機膜が化学的に反応を受け、分子量の小さい化合物となることにより、気化・蒸発して除去される。このため、反応性イオンエッチングを用いた場合には、エッチング精度が高く、短時間での加工が可能となる。
また、大気圧プラズマエッチングを用いた場合には、真空装置を要することがなく、処理時間の短縮およびコストの低減が可能である。大気圧プラズマエッチングでは、プラズマ化した大気中の酸素によって有機物が酸化分解することを利用する。この際、ガスの置換および循環によって、反応雰囲気のガス組成を任意に調整してもよい。
さらに、ドライエッチングに際して、酸素単体または酸素を含むガスを用いてもよい。酸素単体または酸素を含むガスを用いることで、有機膜の酸化反応による分解除去が可能であり、不要な有機物を除去することができるからである。
【0050】
<5> オゾン水処理工程
本様態におけるオゾン水処理工程は、上記有機EL層パターニング時のエッチング処理により生成したフォトレジスト表面の変質層を分解・ 除去する工程である。
オゾン水処理の方法としては、オゾン水に基板を浸漬させる方法、オゾン水をスプレー状に基板に対して噴射する方法等を用いることが出来る。
オゾン水中のオゾン濃度は、フォトレジスト表面に生成した変質層を分解・ 除去することが出来、かつ、フォトレジスト下層となる有機EL層へのダメージが素子特性に影響の無い範囲であれば特に限定されるものではなく、有機EL層のパターニング時に用いるエッチング手法によっても異なるものであり、適宜選択される。
具体的には、オゾン水中のオゾン濃度は、0.1ppm〜100ppmであることが好ましく、より好ましくは、10ppm〜60ppmである。
オゾン水処理時間としては、オゾン水中のオゾン濃度によって変わるものであり、たとえば、オゾン水に基板を浸漬させてオゾン水処理する場合には、オゾン水濃度20ppm、浸漬処理時間30秒でフォトレジスト変質層の分解・除去効果が得られる。
【0051】
<6> 剥離工程
本例における剥離工程は、残存するフォトレジスト層を剥離する工程である。
フォトレジスト層を剥離する方法としては、フォトレジスト剥離液に基板を浸漬させる方法、フォトレジスト剥離液をシャワー状に基板に噴出する方法等を用いることができる。
フォトレジスト剥離液は、有機EL層を溶解せずに、フォトレジスト層を溶解することができるものであれば特に限定されるものではなく、使用するフォトレジストおよび有機EL材料の組み合わせ等により異なるものであり、適宜選択される。
具体的には、フォトレジスト剥離液は、フォトレジスト層の溶解性が10nm超/minであり、有機EL層の溶解性がそれぞれ10nm以下/min、中でも1nm以下/minであることが好ましい。
このようなフォトレジスト剥離液としては、上述したフォトレジスト溶媒を使用することができる。
また、ポジ型フォトレジストを用いた場合は、フォトレジスト現像液をフォトレジスト剥離液として用いることができる。
さらに、フォトレジスト剥離液として、強アルカリ水溶液、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等、それらの混合物、および、市販のフォトレジスト剥離液を用いてもよい。
【0052】
<7> 第2電極層形成工程(図1の第2電極層8を参照)
本様態における第2電極層形成工程は、上記剥離工程後に露出した有機EL層上に第2電極層を形成する工程である。
本様態に用いられる第2電極層は、陽極であってもよく陰極であってもよい。
一般に、有機EL素子を製造する際には、陽極側から積層する方が安定して有機EL素子を作製することができることから、第2電極層が陰極であることが好ましい。
また、第2電極層は、透明性を有していても有さなくてもよく、光の取り出し面に応じて適宜選択される。
例えば図1(h)に示す有機EL素子においてトップエミッション型とする場合、第2電極層9は透明性を有することが好ましい。
一方、例えば図1(h)に示す有機EL素子においてボトムエミッション型とする場合、第2電極層9に透明性は要求されない。
また、例えば図1(h)に示す有機EL素子において両面から光を取り出す場合には、第2電極層9は透明性を有することが好ましい。
第2電極層には、上記有機EL層形成工程の第1電極層の項に記載した導電性材料を用いることができる。
また、第2電極層の厚みとしては、特に限定されるものではなく、用いる導電性材料に応じて適宜設定される。
具体的には、第2電極層の厚みとしては、無機酸化物を用いた場合は40nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、金属を用いた場合は1nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
第2電極層の厚みが薄すぎると、抵抗が高くなり、第2電極層の厚みが厚すぎると、透過率が低くなる場合があるからである。
第2電極層の成膜方法としては、例えばCVD法、または真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法が挙げられる。
【0053】
<8> その他の工程
第1の例(第1態様)においては、上記有機EL層形成工程の前に、基板の表面処理を行うのが一般的である。
表面処理の方法としては、紫外線オゾン処理やプラズマ処理、酸処理、アルカリ処理、オゾン水処理などを用いることが出来る。
これらの表面処理により、ピンホールやダークスポットの原因となる基板・電極表面に付着した塵などの不浄成分を取り除くことが出来るだけでなく、有機EL層形成用溶液の濡れ性が向上し、有機EL層の形成がしやすくなるからである。
また、本様態においては、上記フォトレジスト剥離工程後に、有機EL層の表面をプラズマ処理するプラズマ処理工程を行ってもよい。
これにより、有機EL層表面に残留する成分を取り除くことができるからである。
プラズマ処理の際に用いられる導入ガスとしては、一般的に用いられているガスを使用することが可能である。
中でも、有機EL層の表面のみを除去し、有機EL層への影響が少ないガスであることが好ましい。
このようなガスとしては、たとえば、酸素、アルゴン、ヘリウム、窒素等が挙げられる。
導入ガスとして、2種類以上の混合ガスを用いてもよい。
【0054】
次に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の実施の形態の第2の例(以下、第2態様とも言う)を説明する。
第2の例(第2態様)の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、第1電極層が形成された基板上に、(A)少なくとも発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層を形成する有機エレクトロルミネッセンス層形成工程と、(B)前記有機エレクトロルミネッセンス層上にフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、(C)前記フォトレジスト層をパターン露光し、現像することにより、前記フォトレジスト層をパターニングするフォトレジスト層パターニング工程と、(D)前記フォトレジスト層パターニング工程でフォトレジスト層が除去された部分の、前記有機エレクトロルミネッセンス層を除去することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス層をパターニングする有機エレクトロルミネッセンス層パターニング工程とを、一連の作業工程として、この一連の作業工程(A)〜(D)を3回繰り返した後、パターニングされたフォトレジスト層をオゾン水に接触させるオゾン水処理工程と、残存するフォトレジスト層を剥離液によって剥離する剥離工程と、前記剥離工程後に露出した有機エレクトロルミネッセンス層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを、行うものである。
即ち、第1例(第1の態様)における有機EL層パターニング工程のあとに、パターニングされた有機EL層とは異色の発光を示す有機EL層形成工程、フォトレジスト層形成工程、フォトレジストパターニング工程、有機EL層パターニング工程までを2回繰り返し、パターニングされたフォトレジスト層をオゾン水に接触させる工程と、残存する前記フォトレジスト層を剥離液によって剥離する剥離工程と前期剥離工程後に露出した有機EL層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを、行うものである。
第2の例(第2態様)の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法により、異色発光を示す有機EL層のパターニングを行い、マルチカラーおよびフルカラーの有機ELディスプレイを製造することが出来る。
【0055】
第2の例(第2態様)の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の1例について、図2〜図5に基づいて説明する。
まず、基板21の一面上に第1電極層22をパターン状に形成し、この第1電極層22のパターン間に絶縁層23を形成し、第1電極層22および絶縁層23の上に第1正孔注入層24および第1発光層25を形成し、第1有機EL層26とする(図2(a)、第1有機EL層形成工程)。
次に、第1の有機EL層26上にポジ型フォトレジストを塗布して、第1のフォトレジスト層27を形成する(図2(b)、第1のフォトレジスト層形成工程)。
次いで、少なくとも第1の発光領域29の第1のフォトレジスト層27が残存するように、フォトマスク30を介して第1のフォトレジスト層27をパターン露光した後、フォトレジスト現像液により現像し、洗浄することにより、パターン状の第1のフォトレジスト層27Aを形成する(図2(c)および(d)、第1のフォトレジスト層パターニング工程)。
次に、第1のフォトレジスト層27のパターニングにより除去された領域の露出した部分の第1の発光層25および第1正孔注入層24を除去することにより、パターン状の第1の発光層25および第1の正孔注入層24を形成する(図2(e)、第1の有機EL層26のパターニング工程)。
【0056】
次に、パターン状の第1のフォトレジスト層27A、パターン状の第1の発光層25および第1の正孔注入層24が形成された基板21上に、第2の正孔注入層24aおよび第2の発光層25aを形成し、第2の有機EL層26aとする(図3(f)、第2の有機EL層形成工程)。
次いで、第2の発光層25a上にポジ型フォトレジストを塗布して、第2のフォトレジスト層27aを形成する(図3(g)、第2のフォトレジスト層形成工程)。
次いで、少なくとも第2の発光領域9aの第2のフォトレジスト層27aが残存するように、フォトマスク30aを介して第2のフォトレジスト層27aをパターン露光した後、フォトレジスト現像液により現像し、洗浄することにより、パターン状の第2のフォトレジスト層27aAを形成する(図3(h)および(i)、第2のフォトレジスト層パターニング工程)。
次に、第2のフォトレジスト層のパターニングにより除去された領域の露出した部分の第2の発光層25aおよび第2の正孔注入層24bを除去することにより、パターン状の第2の発光層25aおよび第2の正孔注入層24aを形成する(図3(j)、第2の有機EL層6b´パターニング工程)。
【0057】
次に、パターン状の第1のフォトレジスト層27A、第1の発光層25および第1の正孔注入層24、ならびにパターン状の第2のフォトレジスト層27aA、第2の発光層25aおよび第2の正孔注入層24aが形成された基板21上に、第3の正孔注入層24bおよび第3の発光層25bを形成し、第3の有機EL層26bとする(図4(k)、第3の有機EL層形成工程)。
次いで、第3の発光層25b上にポジ型フォトレジストを塗布して、第3フォトレジスト層27bを形成する(図4(l)、第3のフォトレジスト層形成工程)。
次いで、少なくとも第3の発光領域29bの第3のフォトレジスト層27bが残存するように、フォトマスク30bを介して第3のフォトレジスト層27bをパターン露光した後、フォトレジスト現像液により現像し、洗浄することにより、パターン状の第3のフォトレジスト層27bAを形成する(図4(m)、第3のフォトレジスト層パターニング工程)。
次に、第3のフォトレジスト層のパターニングにより除去された領域の露出した部分の第3の発光層25bおよび第3の正孔注入層24bを除去することにより、パターン状の第3の発光層25bおよび第3の正孔注入層24bを形成する(図4(n)、第3の有機EL層26bパターニング工程)。
【0058】
次いで、最上層に位置する第1のフォトレジスト層27A、第2のフォトレジスト層27aAおよび第の3フォトレジスト層27bAに、オゾン水を接触させる(オゾン水処理工程)。
さらにオゾン水処理した第1のフォトレジスト層27A、第2のフォトレジスト層27aAおよび第3のフォトレジスト層27bAを剥離する(図5(0)、剥離工程)。
最後に、第1の発光層25、第2の発光層25aおよび第3の発光層25bの上に、第2電極層28を形成する(図5(p)、第2電極層形成工程)。
【0059】
ここにおいては、ドライエッチングにより生成したレジスト表面の変質層をオゾン水によって分解・ 除去できる。
したがって、剥離工程において、剥離液を用いてフォトレジストを容易に剥離できる。 これにより、レジスト残渣や有機EL層の剥がれなどによる欠陥がなく、安定性、信頼性に優れる有機ELディスプレイの製造を可能としている。
【0060】
なお、ここで、発光領域29、発光領域29aおよび発光領域29bとは、絶縁層の開口部分を通して、第1電極と第2電極の間に挟まれた有機EL層の領域をさす。
【0061】
以下、第2の例(第2態様)の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の各工程について、更に、説明する。
なお、第1のフォトレジスト層パターニング工程、第1の有機EL層パターニング工程、第2のフォトレジスト層パターニング工程、第2の有機EL層パターニング工程、第3のフォトレジスト層パターニング工程、第3の有機EL層パターニング工程、剥離工程および第2電極層形成工程については、上記第1の例のフォトレジスト層パターニング工程、有機EL層パターニング工程、オゾン水処理工程、剥離工程、第2電極層形成工程およびその他の工程とそれぞれ同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0062】
1.第1有機EL層形成工程(図2の第1の有機EL層26を参照)
第2の例(第2態様)における第1の有機EL層を形成する第1有機EL層形成工程は、第1電極層が形成された基板上に、少なくとも第1の発光層を含む第1の有機EL層を形成する工程である。
本例においては、3回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、3色(例えばR,G、Bの3色)の有機EL層をパターン状に形成することができる。
したがって、第1、第2および第3の有機EL層形成工程では、それぞれ異なる種類の発光材料が用いられる。
この際、製造コスト低減の観点から、有機EL層形成用塗工液を塗布して有機EL層を形成することが好ましい。
【0063】
第1電極層が陽極であり、第1の有機EL層が第1の正孔注入層および第1の発光層から構成されている場合であって、後述する第2の有機EL層形成工程にて、第1の有機EL層、および第1のフォトレジスト層がパターン状に形成された基板上に、第2の正孔注入層形成用塗工液を塗布して第2正孔注入層を形成する場合には、第1の正孔注入層は、第2の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して不溶であることが好ましい。
すなわち、第1の正孔注入層の溶解性は、第2の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して1nm以下/minであることが好ましい。
これにより、第2の正孔注入層の成膜の際に、第2の正孔注入層形成用塗工液の溶媒が第1の正孔注入層のパターンの端部に接触しても、第1の正孔注入層は溶解されないので、安定して第2の正孔注入層を積層することができるからである。
【0064】
なお、第1の正孔注入層を第2の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとすることについては、上記第1の例の有機EL層形成工程の「(1)有機EL層 (i)2層の有機層」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0065】
第1電極層が陽極であって、第1の有機EL層が第1の正孔注入層および第1の発光層から構成されている場合であって、後述する第2有機EL層形成工程にて、第2の正孔注入層形成用塗工液を塗布して第2の正孔注入層を形成する場合には、第1の発光層は、第2の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶であることが好ましい。
【0066】
第1電極層が陽極であって、第1の有機EL層が第1の正孔注入層および第1の発光層から構成されている場合であって、後述する第2フォトレジスト層形成工程にて、第2フォトレジスト層形成用塗工液を塗布して第2のフォトレジスト層を形成する場合には、第1の正孔注入層および第1の発光層は、第2のフォトレジスト層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。第2のフォトレジスト層形成前において、第1の正孔注入層および第1の発光層は、第2の有機EL層によって覆われているため、第2のフォトレジスト層形成用塗工液の溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0067】
また、第1電極層が陽極であって、第1の有機EL層が第1の正孔注入層および第1の発光層から構成されている場合であって、後述する第2有機EL層形成工程にて、上記第2の正孔注入層上に、第2の発光層形成用塗工液を塗布して第2の発光層を形成する場合には、第1の正孔注入層および第1の発光層は、第2の発光層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。
第2の発光層形成前において、第1の正孔注入層および第1の発光層は、第2の正孔注入層によって覆われているため、第2の発光層形成用塗工液の溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0068】
さらに、第1電極層が陽極であって、第1の有機EL層が第1の正孔注入層および第1の発光層から構成されている場合であって、後述する第3有機EL層形成工程にて、第1の有機EL層および第1のフォトレジスト層がパターン状に形成された基板上に、第3の正孔注入層形成用塗工液を塗布して第3の正孔注入層を形成する場合には、第1の正孔注入層は、第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して不溶であることが好ましい。
【0069】
なお、第1の正孔注入層を第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとすることについては、上記第1の例の有機EL層形成工程の「(1)有機EL層 (i)2層の有機層」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0070】
第1電極層が陽極であって、第1の有機EL層が第1の正孔注入層および第1の発光層から構成されている場合であって、後述する第3有機EL層形成工程にて、第3の正孔注入層形成用塗工液を塗布して第3の正孔注入層を形成する場合には、第1の発光層は、第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶であることが好ましい。
【0071】
第1電極層が陽極であって、第1の有機EL層が第1の正孔注入層および第1の発光層から構成されている場合であって、後述する第3フォトレジスト層形成工程にて、第3フォトレジスト層形成用塗工液を塗布して第3のフォトレジスト層を形成する場合には、第1の正孔注入層および第1の発光層は、第3のフォトレジスト層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。第3のフォトレジスト層形成前において、第1の正孔注入層および第1の発光層は、第3の有機EL層によって覆われているため、第3のフォトレジスト層形成用塗工液の溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0072】
また、第1電極層が陽極であって、第1の有機EL層が第1の正孔注入層および第1の発光層から構成されている場合であって、後述する第3有機EL層形成工程にて、上記第3の正孔注入層上に、第3の発光層形成用塗工液を塗布して第3の発光層を形成する場合には、第1の正孔注入層および第1の発光層は、第3の発光層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。
第3の発光層形成前において、第1の正孔注入層および第1の発光層は、第3の正孔注入層によって覆われているため、第3の発光層形成用塗工液の溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0073】
なお、第1有機EL層形成工程のその他の点については、上記第1の例の有機EL層形成工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0074】
2.第1フォトレジスト層形成工程(図2の第1のフォトレジスト層27を参照)
第2の例(第2態様)における第1のフォトレジスト層を形成する第1フォトレジスト層形成工程は、第1の有機EL層上にフォトレジストを塗布し、第1のフォトレジスト層を形成する工程である。
本例においては、フォトレジスト層に第1、第2および第3の3種類を用いているが、いずれも便宜上使い分けているだけであり、すべて同様のフォトレジスト層であってもよい。
【0075】
後述する第2有機EL層形成工程にて、第1の有機EL層(26に対応)および第1のフォトレジスト層(27に対応)がパターン状に形成された基板上に、第2の正孔注入層形成用塗工液を塗布して第2の正孔注入層(24aに対応)を形成する場合には、第1のフォトレジスト層は、第2の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して不溶であることが好ましい。 すなわち、第1のフォトレジスト層(27に対応)の溶解性は、第2の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して1nm以下/minであることが好ましい。
これにより、第2の正孔注入層(24aに対応)の形成の際に、第2の正孔注入層形成用塗工液の溶媒がパターン状の第1のフォトレジスト層27Aに接触しても、第1のフォトレジスト層(27Aに対応)は溶解されないので、安定して第2の正孔注入層を積層することができるからである。
【0076】
パターン状の第1のフォトレジスト層(27Aに対応)を第2の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとするために、該第1のフォトレジスト層および第2の正孔注入層(24aに対応)に溶解性が異なる材料を用いればよい。
【0077】
また、パターン状の第1のフォトレジスト層(27Aに対応)は、第2発光層形成工程にて用いられる第2の発光層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。
第2の発光層層形成前において、該第1のフォトレジスト層(27Aに対応)は、第2の正孔注入層(24aに対応)によって覆われているため、フォトレジスト溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0078】
さらに、該第1のフォトレジスト層(27Aに対応)は、第2のフォトレジスト層形成工程にて用いられるフォトレジスト溶媒に対して、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。
第2のフォトレジスト層形成前において、該第1のフォトレジスト層は、第2の有機EL層(26に対応)によって覆われているため、フォトレジスト溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0079】
後述する第3有機EL層形成工程にて、第1の有機EL層および第1のフォトレジスト層がパターン状に形成された基板上に、第3の正孔注入層形成用塗工液を塗布して第3の正孔注入層(24bに対応)を形成する場合には、第1のフォトレジスト層は、第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して不溶であることが好ましい。
すなわち、第1のフォトレジスト層(27Aに対応)の溶解性は、第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して1nm以下/minであることが好ましい。
これにより、第3の正孔注入層(24bに対応)の成膜の際に、第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒が第1フォトレジスト層に接触しても、第1のフォトレジスト層は溶解されないので、安定して第3の正孔注入層を積層することができるからである。
【0080】
第1のフォトレジスト層(27Aに対応)を第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとするために、第1のフォトレジスト層(27Aに対応)および第3の正孔注入層(24bに対応)に溶解性が異なる材料を用いればよい。
【0081】
また、第1のフォトレジスト層(27Aに対応)は、第3の発光層形成工程にて用いられる第3の発光層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。
第3の発光層形成前において、第1のフォトレジスト層(27Aに対応)は、第3の正孔注入層(24bに対応)によって覆われているため、フォトレジスト溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0082】
さらに、第1のフォトレジスト層(27Aに対応)は、第3のフォトレジスト層形成工程にて用いられるフォトレジスト溶媒に対して、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。
第3のフォトレジスト層形成前において、第1のフォトレジスト層(27Aに対応)は、第3の有機EL層(26bに対応)によって覆われているため、フォトレジスト溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0083】
なお、第1フォトレジスト層形成工程のその他の点については、上記第1の例のフォトレジスト層形成工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0084】
3.第2有機EL層形成工程(図3の第2有機EL層26aを参照)
本例における第2有機EL層形成工程は、第1の有機EL層26および第1のフォトレジスト層27がパターン状に形成された基板上に、少なくとも第2の発光層(25aに対応)を含む第2の有機EL層(26aに対応)を形成する工程である。
【0085】
第1の有機EL層(24、25に対応)および第1のフォトレジスト層(27Aに対応)がパターン状に形成された基板上に、第2の有機EL層形成用塗工液を塗布して第2の有機EL層(26aに対応)を形成する場合には、第2の有機EL層形成用塗工液の溶媒は、第1の有機EL層および第1のフォトレジスト層を溶解しないものであることが好ましい。
すなわち、第2の有機EL層形成用塗工液の溶媒は、第1の有機EL層および第1のフォトレジスト層の溶解性がそれぞれ1nm以下/minであることが好ましい。
これは、第2の有機EL層形成の際に、第2の有機EL層形成用塗工液の溶媒が、第1の有機EL層および第1のフォトレジスト層に接触するためである。
具体的には、第2の有機EL層の形成の際に、第2の有機EL層形成用塗工液の溶媒が、第1の有機EL層のパターンの端部、ならびに、第1のフォトレジスト層のパターンの表面および端部に接触するという理由に基づく。
【0086】
上記のうち特に第2の有機EL層(26aに対応)が第2の正孔注入層(24aに対応)および第2の発光層(25aに対応)から構成されている場合であって、第2有機EL層形成工程にて、第1の有機EL層(24と25に相当)および第1のフォトレジスト層(27Aに相当)がパターン状に形成された基板上に、第2の正孔注入層形成用塗工液を塗布して第2の正孔注入層を形成する場合には、第2の正孔注入層形成用塗工液の溶媒は、第1の有機EL層および第1のフォトレジスト層を溶解しないものであることが好ましい。
【0087】
また、第2の有機EL層(26aに対応)が第2の正孔注入層(24aに対応)および第2の発光層(25aに対応)から構成されている場合であって、第2有機EL層形成工程にて、上記第2の正孔注入層上に、第2の発光層形成用塗工液を塗布して第2の発光層を形成する場合には、第1の有機EL層(24と25に対応)および第1のフォトレジスト層(27Aに対応)は、第2の発光層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。
第2の発光層形成前において、第1の有機EL層および第1のフォトレジスト層は、第2の正孔注入層によって覆われているため、第2の発光層形成用塗工液の溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0088】
さらに、第2の有機EL層(26aに対応)が第2の正孔注入層(24aに対応)および第2の発光層(25aに対応)から構成されている場合であって、後述する第3有機EL層形成工程にて、第2の有機EL層(26aに対応)および第2のフォトレジスト層(27aAに対応)がパターン状に形成された基板上に、第3の正孔注入層形成用塗工液を塗布して第3の正孔注入層(24bに対応)を形成する場合には、第2の正孔注入層(24aに対応)は、第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して不溶であることが好ましい。
【0089】
なお、第2の正孔注入層(24aに対応)を第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとすることについては、上記第1の例の有機EL層形成工程の「(1)有機EL層 (i)2層の有機層」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0090】
第1電極層(22に対応)が陽極であって、第2の有機EL層が第2の正孔注入層(24aに対応)および第2の発光層(25aに対応)から構成されている場合であって、後述する第3有機EL層形成工程にて、第3の正孔注入層形成用塗工液を塗布して第3の正孔注入層(24bに対応)を形成する場合には、第2の発光層は、第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶であることが好ましい。
【0091】
第1電極層(22に対応)が陽極であって、第2の有機EL層が第2の正孔注入層(24aに対応)および第2の発光層(25aに対応)から構成されている場合であって、後述する第3有機EL層形成工程にて、上記第3の正孔注入層(24bに対応)上に、第3の発光層形成用塗工液を塗布して第3の発光層(25bに対応)を形成する場合には、第2の正孔注入層および第2の発光層は、第3の発光層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。
第3の発光層形成前において、第2の正孔注入層および第2の発光層は、第3の正孔注入層によって覆われているため、第3の発光層形成用塗工液の溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0092】
また、第2の有機EL層が第2の正孔注入層(24aに対応)および第2の発光層(25aに対応)から構成されている場合であって、後述する第3フォトレジスト層形成工程にて、第3フォトレジスト層形成用塗工液を塗布して第3のフォトレジスト層(27bに対応)を形成する場合には、第2の正孔注入層および第2の発光層は、第3のフォトレジスト層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。
第3のフォトレジスト層形成前において、第2の正孔注入層および第2の発光層は、第3の有機EL層(26bに対応)によって覆われているため、第3のフォトレジスト層形成用塗工液の溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0093】
また、第2有機EL層形成工程のその他の点については、上記第1の例の有機EL層形成工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0094】
4.第2フォトレジスト層形成工程(図3の第2のフォトレジスト層27aを参照)
第2の例(第2態様)における第2のフォトレジスト層形成工程は、第2の有機EL層(24aと25aとに対応)に第2のフォトレジストを塗布し、第2のフォトレジスト層27aを形成する工程である。
【0095】
本工程に用いられるフォトレジスト溶媒は、第1の有機EL層(26に対応)および第1のフォトレジスト層(27Aに対応)を溶解するものであってもよく溶解しないものであってもよい。
第2のフォトレジスト層形成前において、第1の有機EL層および第1のフォトレジスト層は、第2の有機EL層(26aに対応)によって覆われているため、フォトレジスト溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0096】
また、第1電極が陽極であって、第3の有機EL層が第3の正孔注入層および第3の発光層から構成されている場合に、後述する第3有機EL層形成工程にて、第2の有機EL層(24aと25aに対応)および第2のフォトレジスト層(27aAに対応)がパターン状に形成された基板上に、第3の正孔注入層形成用塗工液を塗布して第3の正孔注入層(24bに対応)を形成する場合には、第2のフォトレジスト層は、第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して不溶であることが好ましい。
すなわち、該第2のフォトレジスト層の溶解性は、第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して1nm以下/minであることが好ましい。
これにより、第3の正孔注入層(24bに対応)の形成の際に、第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒が該第2フォトレジスト層に接触しても、該第2のフォトレジスト層は溶解されないので、安定して第3の正孔注入層を積層することができるからである。
【0097】
該第2のフォトレジスト層(27aAに対応)を第3正孔注入層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとするために、該第2のフォトレジスト層および第3正孔注入層(24bに対応)に溶解性が異なる材料を用いればよい。
【0098】
また、パターン状の第2のフォトレジスト層(27aAに対応)は、後述する第3発光層形成工程にて用いられる第3の発光層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。
第3の発光層形成前において、該第2のフォトレジスト層は、第3の正孔注入層(27aAに対応)によって覆われているため、フォトレジスト溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0099】
さらに、該第2のフォトレジスト層(27aAに対応)は、第3のフォトレジスト層形成工程にて用いられるフォトレジスト溶媒に対して、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。
第3のフォトレジスト層形成前において、該第2のフォトレジスト層は、第3の有機EL層(26bに対応)によって覆われているため、フォトレジスト溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0100】
なお、第2フォトレジスト層形成工程のその他の点については、上記第1の例のフォトレジスト層形成工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0101】
5.第3有機EL層形成工程(図4の第3有機EL層26aを参照)
本例における第3有機EL層形成工程は、第1の有機EL層(24と25とに対応)および第1のフォトレジスト層(27Aに対応)がパターン状に形成され、さらに第2の有機EL層(24ato25aとに対応)および第2のフォトレジスト層(27aAに対応)がパターン状に形成された基板上に、少なくとも第3の発光層(25bに相当)を含む第3の有機EL層を形成する工程である。
【0102】
第1の有機EL層(24と25とに相当)および第1のフォトレジスト層(27Aに対応)がパターン状に形成され、さらに第2の有機EL層(24ato25aとに対応)および第2のフォトレジスト層(27aAに対応)がパターン状に形成された基板上に、第3の有機EL層形成用塗工液を塗布して第3の有機EL層(26bに対応)を形成する場合には、第3の有機EL層形成用塗工液の溶媒は、第1の有機EL層、第1のフォトレジスト層、第2の有機EL層および第2フォトレジスト層を溶解しないものであることが好ましい。
すなわち、第3の有機EL層形成用塗工液の溶媒は、第1の有機EL層、第1のフォトレジスト層、第2の有機EL層および第2のフォトレジスト層の溶解性がそれぞれ1nm以下/minであることが好ましい。
【0103】
上記のうち特に第3の有機EL層(26bに対応)が第3の正孔注入層(24bに対応)および第3の発光層(25bに対応)から構成されている場合であって、第3有機EL層形成工程にて、第1の有機EL層(24と25とに対応)および第1のフォトレジスト層(27Aに対応)がパターン状に形成され、さらに第2の有機EL層(24aと25aとに対応)および第2のフォトレジスト層(27aAに対応)がパターン状に形成された基板上に、第3の正孔注入層形成用塗工液を塗布して第3の正孔注入層(24bに対応)を形成する場合には、第3の正孔注入層形成用塗工液の溶媒は、第1の有機EL層および第1のフォトレジスト層ならびに第2の有機EL層および第2のフォトレジスト層を溶解しないものであることが好ましい。
【0104】
また、第3の有機EL層(26bに対応)が第3の正孔注入層(24bに対応)および第3の発光層(25bに対応)から構成されている場合であって、第3有機EL層形成工程にて、上記第3の正孔注入層上に、第3の発光層形成用塗工液を塗布して第3の発光層を形成する場合には、第1の有機EL層(24と25とに対応)および第1のフォトレジスト層(27Aに対応)ならびに第2の有機EL層(24aと25aとに対応)および第2のフォトレジスト層(27aAに対応)は、第3の発光層形成用塗工液の溶媒に対して、不溶、難溶および可溶のいずれであってもよい。
第3の発光層形成前において、第1の有機EL層および第1のフォトレジスト層ならびに第2の有機EL層および第2のフォトレジスト層は、第3の正孔注入層によって覆われているため、第3の発光層形成用塗工液の溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0105】
なお、第3有機EL層形成工程のその他の点については、上記第1の例の有機EL層形成工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0106】
6.第3フォトレジスト層形成工程(図4の第3フォトレジスト層27bを参照)
本発明における第3フォトレジスト層形成工程は、第3の有機EL層(26bに対応)上にフォトレジストを塗布し、第3のフォトレジスト層(27bに対応)を形成する工程である。
【0107】
本工程に用いられるフォトレジスト溶媒は、第1の有機EL層(26に対応)、第1のフォトレジスト層(27Aに対応)、第2の有機EL層(26aに対応)および第2のフォトレジスト層(27aAに対応)を溶解するものであってもよく溶解しないものであってもよい。
第3のフォトレジスト層形成前において、第1の有機EL層、第1のフォトレジスト層、第2の有機EL層および第2のフォトレジスト層は、第3の有機EL層(26bに対応)によって覆われているため、フォトレジスト溶媒に対して可溶であっても、その溶媒に接触することがなく、溶解しないからである。
【0108】
なお、第3フォトレジスト層形成工程のその他の点については、上記第1の例のフォトレジスト層形成工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0109】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、上記の第1の例、第2の例に限定されるものではない。
第1例における有機EL層パターニング工程のあとに、パターニングされた有機EL層とは異色の発光を示す有機EL層形成工程、フォトレジスト層形成工程、フォトレジストパターニング工程、有機EL層パターニング工程までを少なくとも1回以上繰り返す、形態の1例として、第2の例を挙げたが、1回、あるいは、3回以上繰り返す形態においても、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、適用できる。
【0110】
(実施例)
更に、実施例および比較例を挙げて、具体的に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を説明する。
<実施例1>
実施例1は、上記第1の例を、以下のようにして行ったものである。
1)正孔注入層の成膜
6インチ□、板厚0.7mmのガラス基板(図1の1に相当)の一面上に第1電極層(図1の2に相当)を形成したパターン形成済みのITOガラス基板を、洗浄し、前記一面側上に下記組成の正孔注入層形成用溶液をスピンコーターにより塗布し、150℃、10分間の加熱・乾燥処理を行い、硬化させ、膜厚80nmの透明な正孔注入層(図1の4に相当)を得た。
(正孔注入層形成用溶液の組成)
・脱イオン水 96.7%
・PEDOT;PSS(Bayer社製) 3%
・オルガノアルコキシシラン(東芝シリコーン(株)社製 TSL8350) 0.3%
2)発光層の成膜
発光層(図1の5に相当)として、正孔注入層上に下記組成の発光層形成用溶液をスピンコーターにより塗布し、130℃、10分間の間加熱・乾燥処理を行い、膜厚80nmの発光層を得た。
(発光層形成用溶液の組成)
・モノクロロベンゼン 97.98wt%
・ポリビニルカルバゾール 1.4wt%
・オキサジアゾール 0.6wt%
・ジシアノメチレンピラン誘導体 0.02wt%
3)フォトレジスト層の成膜)
発光層上に、ポジ型フォトレジスト溶液(東京応化工業(株)社製 OFPR−800)を滴下し、スピンコーターにより塗布し、さらに110℃で5分間プリベイクを行い、膜厚約1.5μmのフォトレジスト層を得た。
4)発光部パターニング
その後、アライメント露光機に露光マスクと共に設置し、発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線照射した。
フォトレジスト現像液(東京応化工業(株)社製 NMD−3)でフォトレジストを現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。
110℃で5分間ポストベイクし、酸素プラズマを用いた反応性イオンエッチングによりフォトレジスト層が除去された部分の正孔注入層、発光層を除去した。
これにより、発光部がパターン状に形成された基板を得た。
5)オゾン水処理
上記工程で得られた基板を、濃度50ppmのオゾン水に10秒浸漬したのち、純水で洗浄した。
6)フォトレジスト剥離
基板を剥離液アセトンに浸漬、洗浄し、フォトレジスト層を除去し、パターニングされた有機EL層を得た。
その後、130℃で1時間乾燥させた。
7)第2電極の形成)
さらに、得られた基板上に第2電極層としてCaを50nm、保護電極としてAgを300nm真空蒸着法により成膜して、有機EL素子を作製した。
【0111】
(比較例1)
比較例1として、発光部パターニングまでを上記実施例1と同じ工程で作製し、オゾン水処理を施さずにフォトレジスト剥離工程および第2電極を形成し、有機EL素子を作製した。
【0112】
(結果1)
実施例1と比較例1を比較した結果について述べる。
実施例1および比較例1で作製した有機EL素子に10Vの直流電圧を第1電極が正電圧となるように印加して発光させた。
比較例1で作製した有機EL素子は、フォトレジスト残渣のために欠陥のある発光を示した。
これに対し、実施例1 で作製した有機EL素子では、フォトレジストの残渣がなく欠陥のない発光を示した。
【0113】
<実施例2>
実施例2は、上記第2の例を、以下のようにして行ったものである。
1)第1の正孔注入層の成膜
6インチ□、板厚0.7mmのガラス基板(図1の1に相当)の一面上に第1電極層(図1の2に相当)を形成したパターン形成済みのITOガラス基板を、洗浄し、前記一面側上に下記組成の正孔注入層形成用溶液をスピンコーターにより塗布し、150℃、10分間の加熱、乾燥処理を行い、硬化させ、膜厚80nmの透明な第1の正孔注入層(図2の24に相当)を得た。
(第1の正孔注入層形成用溶液の組成)
・脱イオン水 96.7%
・PEDOT;PSS(Bayer社製) 3%
・オルガノアルコキシシラン(東芝シリコーン(株)社製 TSL8350) 0.3%
2)第1の発光層の成膜
第1の発光層として、第1の正孔注入層上に下記組成の第1の発光層形成用溶液をスピンコーターにより塗布し、130℃、10分間の間加熱・乾燥処理を行い、膜厚80nmの第1の発光層(図2の25に相当)を得た。
(第1の発光層形成用溶液の組成)
・モノクロロベンゼン 97.98wt%
・ポリビニルカルバゾール 1.4wt%
・オキサジアゾール 0.6wt%
・ジシアノメチレンピラン誘導体 0.02wt%
3)第1のフォトレジスト層の成膜
第1の発光層上に、ポジ型フォトレジスト溶液(東京応化工業(株)社製 OFPR−800)を滴下し、スピンコーターにより塗布し、さらに110℃で5分間プリベイクを行い、膜厚約1.5μmのフォトレジスト層(図2の27に相当)を得た。
4)第1の発光部のパターニング
その後、アライメント露光機に露光マスクと共に設置し、第1の発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線照射した。
フォトレジスト現像液(東京応化工業(株)社製 NMD−3)でフォトレジストを現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。
110℃で5分間ポストベイクし、酸素プラズマを用いた反応性イオンエッチングによりフォトレジスト層が除去された部分の第1正孔注入層および第1発光層を除去した。
これにより、第1の発光部(図2の26に相当)がパターン状に形成された基板を得た。
5)第2の正孔注入層の成膜
上記により得られた基板上に、第1の正孔注入層形成用溶液と同じ組成の第2の正孔注入層形成用溶液を同様に滴下し、スピンコートにより塗布し、加熱、乾燥処理を行って硬化させ、膜厚80nmの透明な第2の正孔注入層(図3の24aに相当)を得た。
第1の正孔注入層形成時と第2の正孔注入層形成時で同じ溶液を用いたが、第1の正孔注入層が硬化されているため、第2の正孔注入層形成用溶液を塗布しても第1の正孔注入層が第2の正孔注入層形成用溶液に溶出することはなかった。
6)第2の発光層の成膜
第2の発光層として、第2の正孔注入層上に下記組成の第2の発光層形成用溶液をスピンコーターにより塗布し、130℃、10分間の間加熱・乾燥処理を行い、膜厚80nmの第2の発光層(図3の25aに相当)を得た。
第2の発光層形成用溶剤には第1の発光層形成用溶剤と同じものを用いているが、第1の発光層は、硬化された第2の正孔注入層によって覆われているため、第2の発光層形成用溶液を塗布しても第1の発光層が第2の発光層形成用溶液に溶出することはなかった。 (第2の発光層形成用溶液の組成)
・モノクロロベンゼン 97.98wt%
・ポリビニルカルバゾール 1.4wt%
・オキサジアゾール 0.6wt%
・クマリン誘導体 0.02wt%
7)第2のフォトレジスト層の成膜
第2の発光層上に、ポジ型フォトレジスト溶液(東京応化工業(株)社製 OFPR−800)を滴下し、スピンコーターにより塗布し、さらに110℃で5分間プリベイクを行い、膜厚約1.5μmのフォトレジスト層(図3の27aに相当)を得た。
8)第2の発光部のパターニング
その後、アライメント露光機に露光マスクと共に設置し、第2の発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線照射した。
フォトレジスト現像液(東京応化工業(株)社製 NMD−3)でフォトレジストを現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。110℃で5分間ポストベイクし、酸素プラズマを用いた反応性イオンエッチングによりフォトレジスト層が除去された部分の第2の正孔注入層および第2の発光層を除去した。
これにより、第1の発光部および第2の発光部がパターン状に形成された基板を得た。 9)第3の正孔注入層の成膜
上記により得られた基板上に、第1および第2の正孔注入層形成用溶液と同じ組成の第3の正孔注入層形成用溶液を同様に滴下し、スピンコートにより塗布し、加熱、乾燥処理を行って硬化させ、膜厚80nmの透明な第3の正孔注入層(図4の24bに相当)を得た。
第1および第2の正孔注入層形成時と第3の正孔注入層形成時で同じ溶液を用いたが、第1および第2の正孔注入層が硬化されているため、第3の正孔注入層形成用溶液を塗布しても第1の正孔注入層および第2の正孔注入層が第3の正孔注入層形成用溶液に溶出することはなかった。
10)第3の発光層の成膜
第3の発光層として、第3の正孔注入層上に下記組成の第3の発光層形成用溶液をスピンコーターにより塗布し、130℃、10分間の間加熱、乾燥処理を行い、膜厚80nmの第3の発光層(図4の25bに相当)を得た。
第3の発光層形成用溶剤には第1および第2の発光層形成用溶剤と同じものを用いているが、第1および第2の発光層は、硬化された第3の正孔注入層によって覆われているため、第3の発光層形成用溶液を塗布しても第1および第2の発光層が第3の発光層形成用溶液に溶出することはなかった。
(第3の発光層形成用溶液の組成)
・モノクロロベンゼン 97.98wt%
・ポリビニルカルバゾール 1.4wt%
・オキサジアゾール 0.6wt%
・ペリレン誘導体 0.02wt%
11)第3フォトレジスト層の成膜
第3の発光層上に、ポジ型フォトレジスト溶液(東京応化工業(株)社製 OFPR−800)を滴下し、スピンコーターにより塗布し、さらに110℃で5分間プリベイクを行い、膜厚約1.5μmのフォトレジスト層(図4の27bに相当)を得た。
12)第3の発光部のパターニング
その後、アライメント露光機に露光マスクと共に設置し、第3の発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線照射した。
フォトレジスト現像液(東京応化工業(株)社製 NMD−3)でフォトレジストを現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。
110℃で5分間ポストベイクし、酸素プラズマを用いた反応性イオンエッチングによりフォトレジスト層が除去された部分の第3の正孔注入層および第3の発光層を除去した。
これにより、第1の発光部、第2の発光部および第3の発光部がパターン状に形成された基板を得た。
13)オゾン水処理
上記工程で得られた基板を、濃度50ppmのオゾン水に30秒浸漬したのち、純水で洗浄した。
14)フォトレジスト剥離
基板をアセトンに浸漬、洗浄し、フォトレジスト層を除去し、パターニングされた有機EL層を得た。
その後、130℃で1時間乾燥させた。
15)第2電極の形成
さらに、得られた基板上に第2電極層(図5の28に相当)としてCaを50nm、保護電極としてAgを300nm、真空蒸着法により成膜して、有機EL素子を作製した。
【0114】
(比較例2)
比較例2として、発光部パターニングまでを上記実施例2と同じ工程で作製し、オゾン水処理を施さずにフォトレジスト剥離工程および第2電極を形成し、有機EL素子を作製した。
【0115】
(結果2)
実施例2と比較例2を比較した結果について述べる。
実施例2および比較例2で作製した有機EL素子に10Vの直流電圧を第1電極が正電圧となるように印加し、発光させた。
比較例2で作製した有機EL素子は、フォトレジスト残渣のために欠陥のある発光を示した。
これに対し、実施例2で作製した有機EL素子では、フォトレジストの残渣がなく欠陥のない発光を示した。
【0116】
更に、フォトレジスト(図1の7aに相当)へのオゾン水処理の処理条件を変えたこと意外は、上記、第1の実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子形成用の有機構造体(図1の(e)に相当)を作製し、該有機構造体に対して、種々のオゾン水処理の処理条件(処理条件T1〜T6)で処理を行い、各オゾン水処理条件とエッチング後の線幅とオゾン水処理後の線幅の線幅および発光層の発する蛍光線幅を測定した。
その結果を、エッチング後の線幅に対する減り幅として、表1に処理条件とともに示す。
【表1】

上記の処理条件では、いずれの場合もオゾン水処理による剥離の向上効果は得られた。 上記の処理条件からオゾン水の影響は適切な条件で用いれば、下層の有機EL層に大きなダメージを与えることなく剥離向上の効果が得られると言える。
すなわち、オゾン濃度20ppmの場合では、時間に対しての有機EL層のダメージ幅がほとんど変化はなく、ダメージ幅の分だけ余分に幅を広げてパターニングしておくことでも対処できるため大きな問題とはならない。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1(a)〜図1(g)は本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の実施の形態の第1の例の製造工程を示した工程断面図である。
【図2】図2(a)〜図2(e)は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の実施の形態の第2の例の製造工程の一部を示した工程断面図である。
【図3】図3(f)〜図3(j)は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の実施の形態の第2の例の製造工程の一部を示した工程断面図である。
【図4】図4(k)〜図4(n)は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の実施の形態の第2の例の製造工程の一部を示した工程断面図である。
【図5】図5(o)〜図5(p)は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法の実施の形態の第2の例の製造工程の一部を示した工程断面図である。
【符号の説明】
【0118】
1 基板
2 第1電極層
3 絶縁層
4 正孔注入層
5 発光層
6 有機EL層
7 フォトレジスト層
7a (現像後の)フォトレジスト層
8 第2電極層
9 発光領域
10 フォトマスク
11 露光光
21 基板
22 第1電極
23 絶縁層
24、24a、24b 正孔注入層
25、25a、25b 発光層
26、26a、26b 有機EL層
27、27a、27b フォトレジスト層
27A、27aA、27bA (現像後の)フォトレジスト層
28 第2電極
29、29a、29b 発光領域
30、30a,30b フォトマスク
31、31a、31b 露光光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1電極層が形成された基板上に、少なくとも発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層を形成する有機エレクトロルミネッセンス層形成工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス層上にフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、前記フォトレジスト層をパターン露光し、現像することにより、前記フォトレジスト層をパターニングするフォトレジスト層パターニング工程と、前記フォトレジスト層パターニング工程でフォトレジスト層が除去された部分の、前記有機エレクトロルミネッセンス層を除去することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス層をパターニングする有機エレクトロルミネッセンス層パターニング工程と、パターニングされたフォトレジスト層をオゾン水に接触させるオゾン水処理工程と、残存するフォトレジスト層を剥離液によって剥離する剥離工程と、前記剥離工程後に露出した有機エレクトロルミネッセンス層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、フォトレジスト層の表層をオゾン水で分解、除去することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1から2のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、有機エレクトロルミネッセンス層用材料は、水に対して元来難溶性あるいは成膜後に硬化剤の硬化や熱エネルギーあるいは放射線の作用による硬化反応によって水に対して不溶化できるものを用いることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、有機エレクトロルミネッセンス層パターニング工程は、ドライエッチングにより、フォトレジスト層が除去された部分の有機EL層を除去するものであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−147072(P2008−147072A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334389(P2006−334389)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】