説明

有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機発光媒体

【課題】色純度が高く、耐熱性に優れ、寿命が長く、かつ高効率で青色〜黄色系発光が得られる有機エレクトロルミネッセンス素子及びこの有機エレクトロルミネッセンス素子に好適に用いられる有機発光媒体を提供する。
【解決手段】(A)特定のアリールアミン化合物と、(B)特定のアントラセン誘導体とを含む有機発光媒体層を、一対の電極間に挟持させてなる有機エレクトロルミネッセンス素子、及び前記(A)成分と(B)成分とを含む有機発光媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、エレクトロルミネッセンスを「EL」と略記する。)及び有機発光媒体に関し、さらに詳しくは、色純度が高く、耐熱性に優れ、寿命が長く、かつ高効率で青色〜黄色系発光が得られる有機EL素子、及び前記有機EL素子に好適に用いられる有機発光媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、電界を印加することより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子の再結合エネルギーにより蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。
イーストマン・コダック社のC.W.Tangらによる積層型素子による低電圧駆動有機EL素子の報告(C.W.Tang,S.A.Vanslyke,アプライドフィジックスレターズ(Applied Physics Letters),51巻、913頁、1987年等)がなされて以来、有機材料を構成材料とする有機EL素子に関する研究が盛んに行われている。
Tangらは、トリス(8−ヒドロキシキノリノールアルミニウム)を発光層に、トリフェニルジアミン誘導体を正孔輸送層に用いた積層構造を採用している。積層構造の利点としては、発光層への正孔の注入効率を高めることができ、陰極より注入された電子をブロックして再結合により生成する励起子の生成効率を高めることができ、発光層内で生成した励起子を閉じ込めることができる等が挙げられる。この例のように有機EL素子の素子構造としては、正孔輸送(注入)層、電子輸送発光層の2層型、又は正孔輸送(注入)層、発光層、電子輸送(注入)層の3層型等がよく知られている。こうした積層型構造素子では、注入された正孔と電子の再結合効率を高めるために、素子構造や形成方法に種々の工夫がなされている。
【0003】
発光材料としてはトリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体等のキレート錯体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体等の発光材料が知られており、それらからは青色から赤色までの可視領域の発光が得られることが報告されており、カラー表示素子の実現が期待されている(例えば、特許文献1〜3等)。
また、正孔輸送材料又は発光材料としてビスアントラセン誘導体を用いた素子が特許文献4及び特許文献5に開示されている。ビスアントラセン誘導体は青色発光材料として用いられるが、その発光効率や寿命が実用可能なレベルにまで到達せず不十分であった。さらに、特許文献6にはアミノアントラセン誘導体を緑色発光材料として用いた素子が開示されている。しかしながら、この材料においては、ガラス転移温度が低く、これを用いた有機EL素子の耐熱性が低いこと及び長寿命かつ高効率発光が得られないことから、実用に供することができなかった。近年、長寿命で高性能な有機EL素子が開示あるいは報告されてはいるが、未だ必ずしも充分なものとはいえない。そのため、より優れた性能を有する有機EL素子の開発が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−239655号公報
【特許文献2】特開平7−183561号公報
【特許文献3】特開平3−200289号公報
【特許文献4】米国特許3008897号明細書
【特許文献5】特開平8−12600号公報
【特許文献6】特開2001−207167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下で、色純度が高く、耐熱性に優れ、寿命が長く、かつ高効率で青色〜黄色系発光が得られる有機EL素子及びこのEL素子に好適に用いられる有機発光媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、有機発光媒体が、特定のアリールアミン化合物と、特定のアントラセン誘導体、スピロフルオレン誘導体、縮合環含有化合物又は金属錯体化合物の中から選ばれる少なくとも一種の化合物とを組み合わせたものであって、この有機発光媒体を含む層を一対の電極間に挟持させてなる有機EL素子は、高耐熱性、長寿命及び高効率であり、かつ色純度が高い青色〜黄色系発光が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、一対の電極と、これらの電極間に挟持された有機発光媒体層を有する有機EL素子であって、前記有機発光媒体層が、 (A)置換もしくは無置換の炭素数10〜100のアリールアミン化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物と、
(B)下記一般式(I)
1 −L−A2 ・・・(I)
(式中、A1 及びA2 は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のモノフェニルアントリル基又は置換もしくは無置換のジフェニルアントリル基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Lは単結合又は2価の連結基を示す。)で表されるアントラセン誘導体、
下記一般式(II)
3 −An−A4 ・・・(II)
(式中、Anは置換もしくは無置換の2価のアントラセン残基を示し、A3 及びA4 は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリール基であり、A3 及びA4 の少なくとも一方は、置換もしくは無置換の1価の縮合芳香族環基又は置換もしくは無置換の炭素数10以上のアリール基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表されるアントラセン誘導体、
下記一般式(III)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Ar1 は、置換もしくは無置換のスピロフルオレン残基を示し、A5 〜A8 は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリール基である。)
で表されるスピロフルオレン誘導体、
一般式(IV)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Ar2 は、置換もしくは無置換の炭素数6〜40の芳香族環基を示し、A9 〜A11は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリーレン基を表し、A12〜A14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数5〜18のアリールオキシ基、炭素数7〜18のアラルキルオキシ基、炭素数5〜16のアリールアミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のエステル基又はハロゲン原子を示し、A9 〜A14のうち少なくとも1つは縮合芳香族環を有する基である。)
で表される縮合環含有化合物、
及び金属錯体化合物の中から選ばれた少なくとも一種の化合物とを含む有機EL素子を提供するものである。また、本発明は、前記(B)成分が、前記一般式(I)及び前記一般式(II)で表されるアントラセン誘導体の中から選ばれた少なくとも一種の化合物である有機EL素子を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、(A)置換もしくは無置換の炭素数10〜100のアリールアミン化合物から選ばれた少なくとも一種と、(B)前記一般式(I)で表されるアントラセン誘導体、前記一般式(II)で表されるアントラセン誘導体、前記一般式(III) で表されるスピロフルオレン誘導体、前記一般式(IV)で表される縮合環含有化合物及び前記金属錯体化合物の中から選ばれた少なくとも一種の化合物を含む有機発光媒体をも提供するものである。また、本発明は、前記(B)成分が、前記一般式(I)及び前記一般式(II)で表されるアントラセン誘導体の中から選ばれた少なくとも一種の化合物である有機発光媒体を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、色純度が高く、耐熱性に優れ、寿命が長く、かつ高効率で青色〜黄色系発光が得られる有機EL素子及びこのEL素子に好適に用いられる有機発光媒体を提供することができる。
この有機EL素子は、各種表示装置の発光素子として好適に用いられ、特に、フルカラー用に適している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の有機EL素子は、一対の電極と、これらの電極間に挟持された有機発光媒体層を有する構造の素子である。
本発明においては、前記有機発光媒体層には、(A)置換もしくは無置換の炭素数10〜100のアリールアミン化合物から選ばれた少なくとも一種と、(B)前記一般式(I)で表されるアントラセン誘導体、前記一般式(II)で表されるアントラセン誘導体、前記一般式(III) で表されるスピロフルオレン誘導体、前記一般式(IV)で表される縮合環含有化合物及び前記金属錯体化合物の中から選ばれた少なくとも一種の化合物とを組み合わせたものを含む有機発光媒体が用いられる。
前記(A)成分であるアリールアミン化合物としては、例えば、下記一般式(V)で表されるアリールアミン化合物を挙げることができる。
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、X3 は、核炭素数10〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族環基を示し、Ar5 及びAr6 は、それぞれ独立に炭素数6〜40の置換もしくは無置換の1価の芳香族基を示し、pは1〜4の整数を示す。)
一般式(V)において、X3 としては、例えば、ナフタレン、フェナントレン、フルオランテン、アントラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、クリセン、ピセン、ジフェニルアントラセン、フルオレン、トリフェニレン、ルビセン、ベンゾアントラセン、フェニルアントラセン、ビスアントラセン、ジアントラセニルベンゼン又はジベンゾアントラセンの残基が挙げられ、特に、クリセン、ピレン、アントラセンの残基が好ましい。
また、Ar5 及びAr6 で示される炭素数6〜40の一価の芳香族基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、コロニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、フラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基などが挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、ビフェニル基が好ましい。
【0017】
一般式(V)で表されるアリールアミン化合物としては、下記一般式(V−a)で表されるアリールアミン化合物を好ましく挙げることができる。
【化4】

【0018】
一般式(V−a)において、X3 は、前記一般式(V)と同じである。
一般式(V−a)において、Ar15〜Ar18は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜50(好ましくは、炭素数1〜20)のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリール基(好ましくは、炭素数5〜20)、置換もしくは無置換の炭素数7〜50のアラルキル基(好ましくは、炭素数7〜40)、置換もしくは無置換の核炭素数3〜50(好ましくは、核炭素数5〜12)のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50(好ましくは、炭素数1〜6)のアルコキシル基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50(好ましくは、核炭素数5〜18)のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50(好ましくは、核炭素数5〜18)のアリールアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜20(好ましくは、炭素数1〜6)のアルキルアミノ基を表す。
【0019】
Ar15〜Ar18の置換もしくは無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基、2−フェニルイソプロピル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、α−フェノキシベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、α,α−メチルフェニルベンジル基、α,α−ジトリフルオロメチルベンジル基、トリフェニルメチル基、α−ベンジルオキシベンジル基等が挙げられる。
【0020】
Ar15〜Ar18の置換もしくは無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、ビフェニル基、4−メチルビフェニル基、4−エチルビフェニル基、4−シクロヘキシルビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、ナフチル基、5−メチルナフチル基、アントリル基、ピレニル基等が挙げられる。
Ar15〜Ar18の置換もしくは無置換のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0021】
Ar15〜Ar18の置換もしくは無置換のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
Ar15〜Ar18の置換もしくは無置換のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基,エトキシ基,プロポキシ基,イソプロポキシ基,ブトキシ基,イソブトキシ基,sec−ブトキシ基,tert−ブトキシ基、各種ペンチルオキシ基,各種ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
Ar15〜Ar18の置換もしくは無置換のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基,トリルオキシ基,ナフチルオキシ基等が挙げられる。
Ar15〜Ar18の置換もしくは無置換のアリールアミノ基としては、例えば、ジフェニルアミノ基,ジトリルアミノ基,ジナフチルアミノ基,ナフチルフェニルアミノ基等が挙げられる。
Ar15〜Ar18の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基等が挙げられる。
【0022】
一般式(V−a)において、g、h、i及びjは、それぞれ0〜5の整数を示し、0〜2であると好ましい。g、h、i、jが2以上の場合、複数のAr15〜Ar18は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して飽和もしくは不飽和の環を形成していてもよい。nは0〜3の整数を示す。ただし、Ar15〜Ar18のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換の炭素数3〜10の2級又は3級アルキル基である。2級又は3級アルキル基としては、前記Ar15〜Ar18で説明したアルキル基のうち2級又は3級ものが挙げられる。
また、一般式(V)で表されるアリールアミン化合物としては、下記一般式(V−b)で表されるアリールアミン化合物をさらに好ましく挙げることができる。
【0023】
【化5】

【0024】
一般式(V−b)において、X3 、Ar15〜Ar18、g、h、i及びjは、それぞれ前記一般式(V−a)と同じであり、g、h、i、jが2以上の場合、複数のAr15〜Ar18は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して飽和もしくは不飽和の環を形成していてもよい。
一般式(V−b)において、R24及びR25は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10(好ましくは、炭素数1〜6)のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜20(好ましくは、炭素数6〜14)のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7〜50(好ましくは、炭素数7〜40)のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50(好ましくは、炭素数1〜6)のアルコキシル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50(好ましくは、炭素数5〜18)のアリールオキシ基を示す。
これら各基の具体例としては、Ar15〜Ar18で挙げたもののうち炭素数が合致するものが挙げられる。
【0025】
ただし、R24及びR25のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換の炭素数3〜10の2級又は3級アルキル基である。2級又は3級アルキル基としては、前記Ar15〜Ar18で説明したアルキル基のうち2級又は3級ものが挙げられる。 一般式(V−b)において、k及びmは、それぞれ0〜2の整数を示す。
本発明においては、この(A)成分のアリールアミン化合物は、一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
また、前記一般式(V)、(V−a)及び(V−b)における置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数5〜18のアリールオキシ基、炭素数7〜18のアラルキルオキシ基、炭素数5〜16のアリールアミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のエステル基又はハロゲン原子が挙げられ、これらの具体例としては、下記一般式(IV)のA12〜A14で挙げるものと同様である。
【0027】
本発明において、有機発光媒体層に用いられる(B)成分の化合物としては、〔1〕下記一般式(I)で表されるアントラセン誘導体、〔2〕下記一般式(II)で表されるアントラセン誘導体、〔3〕下記一般式(III) で表されるスピロフルオレン誘導体、〔4〕下記一般式(IV)で表される縮合環含有化合物及び〔5〕下記金属錯体化合物の中から選ばれた少なくとも一種の化合物である。
【0028】
前記(B)成分は、前記一般式(I)及び前記一般式(II)で表されるアントラセン誘導体の中から選ばれた少なくとも一種の化合物であると好ましい。
〔1〕一般式(I)で表されるアントラセン誘導体
1 −L−A2 ・・・(I)
(式中、A1 及びA2 は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のモノフェニルアントリル基又は置換もしくは無置換のジフェニルアントリル基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Lは単結合又は2価の連結基を示す。) 一般式(I)で表されるアントラセン誘導体としては、下記一般式(I−a)で表されるアントラセン誘導体及び下記一般式(I−b)で表されるアントラセン誘導体を好ましく挙げることができる。
【0029】
【化6】

【0030】
(式中、R1 〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換しても良いアリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アルケニル基、アリールアミノ基又は置換しても良い複素環基を示し、a及びbは、それぞれ1〜5の整数を示し、それらが2以上の場合、R1 同士又はR2 同士は、それぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、またR1 同士又はR2 同士が結合して環を形成していてもよいし、R3 とR4 、R5 とR6 、R7 とR8 、R9 とR10が互いに結合して環を形成していてもよい。L1 は単結合、−O−、−S−、−N(R)−(Rはアルキル基又は置換しても良いアリール基である)、アルキレン基又はアリーレン基を示す。)
【0031】
【化7】

【0032】
(式中、R11〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換しても良いアリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基又は置換しても良い複素環基を示し、c、d、e及びfは、それぞれ1〜5の整数を示し、それらが2以上の場合、R11同士、R12同士、R16同士又はR17同士は、それぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、またR11同士、R12同士、R16同士又はR17同士が結合して環を形成していてもよいし、R13とR14、R18とR19が互いに結合して環を形成していてもよい。L2 は単結合、−O−、−S−、−N(R)−(Rはアルキル基又は置換しても良いアリール基である)、アルキレン基又はアリーレン基を示す。)
なお、ここで置換しても良いとは、置換もしくは無置換を意味する。
【0033】
上記一般式(I−a)及び(I−b)において、R1 〜R20の内のアルキル基としては炭素数1〜6のものが、シクロアルキル基としては炭素数3〜6のものが、アリール基としては炭素数5〜18のものが、アルコキシル基としては炭素数1〜6のものが、アリールオキシ基としては炭素数5〜18のものが、アルケニル基としては炭素数1〜6のものが、アリールアミノ基としては炭素数5〜16のアリール基で置換されたアミノ基が、複素環基としてはトリアゾール基、オキサジアゾール基、キノキサリン基、フラニル基やチエニル基などが好ましく挙げられる。
また、L1 及びL2 の内の−N(R)−におけるRで示されるアルキル基としては炭素数1〜6のものが、アルキレン基としては炭素数1〜20のものが、アリール基としては炭素数5〜18のものが好ましい。
【0034】
〔2〕一般式(II)で表されるアントラセン誘導体
3 −An−A4 ・・・(II)
(式中、Anは置換もしくは無置換の2価のアントラセン残基を示し、A3 及びA4 は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリール基であり、A3 及びA4 の少なくとも一方は、置換もしくは無置換の1価の縮合芳香族環基又は置換もしくは無置換の炭素数10以上のアリール基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。)
3 及びA4 のアリール基の具体例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、ビフェニル基、4−メチルビフェニル基、4−エチルビフェニル基、4−シクロヘキシルビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基等に加え、置換もしくは無置換のナフタレン、フェナントレン、フルオランテン、アントラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、クリセン、ピセン、フルオレン、ターフェニル、ジフェニルアントラセン、ビフェニル、カルバゾール、トリフェニレン、ルビセン、ベンゾアントラセン、フェニルアントラセン、ビスアントラセン、ジアントラセニルベンゼン又はジベンゾアントラセン等の残基である縮合芳香族環基が挙げられる。
【0035】
前記一般式(II)で表されるアントラセン誘導体としては、下記一般式(II−a)
1 −An−X2 ・・・(II−a)
(式中、Anは置換もしくは無置換の2価のアントラセン残基を示し、X1 及びX2 は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のナフタレン、フェナントレン、フルオランテン、アントラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、クリセン、ピセン、ジフェニルアントラセン、カルバゾール、トリフェニレン、ルビセン、ベンゾアントラセン、フェニルアントラセン、ビスアントラセン、ジアントラセニルベンゼン又はジベンゾアントラセンの1価の残基を示す。)
で表されるアントラセン誘導体を好ましく挙げることができる。
【0036】
〔3〕一般式(III) で表されるスピロフルオレン誘導体
【化8】

(式中、Ar1 は、置換もしくは無置換のスピロフルオレン残基を示し、A5 〜A8 は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリール基である。)
【0037】
前記一般式(III) において、A5 〜A8 の置換もしくは無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、ビフェニル基、4−メチルビフェニル基、4−エチルビフェニル基、4−シクロヘキシルビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、ナフチル基、5−メチルナフチル基、アントリル基、ピレニル基等が挙げられる。
前記一般式(III) で表されるスピロフルオレン誘導体としては、下記一般式(III−a)で表されるスピロフルオレン誘導体を好ましく挙げることができる。
【0038】
【化9】

(式中、A5 〜A8 は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のビフェニル基又は置換もしくは無置換のナフチル基である。)
【0039】
〔4〕一般式(IV)で表される縮合環含有化合物
【化10】

【0040】
(式中、Ar2 は、置換もしくは無置換の炭素数6〜40の芳香族環基を示し、A9 〜A11は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリーレン基を表し、A12〜A14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数5〜18のアリールオキシ基、炭素数7〜18のアラルキルオキシ基、炭素数5〜16のアリールアミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のエステル基又はハロゲン原子を示し、A9 〜A14のうち少なくとも1つは縮合芳香族環を有する基である。)
【0041】
Ar2 の芳香族環基としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニルフェナントレン、フルオランテン、アントラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、クリセン、ピセン、フルオレン、カルバゾール、ルビセン、ベンゾアントラセン又はジベンゾアントラセン等の残基が挙げられる。
9 〜A11のアリーレン基とてしては、例えば、前記Ar2 で挙げた芳香族環基を2価とした残基等が挙げられる。
12〜A14の炭素数1〜6のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基などが挙げられる。
12〜A14の炭素数3〜6のシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
12〜A14の炭素数1〜6のアルコキシル基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、各種ペンチルオキシ基、各種ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0042】
12〜A14の炭素数5〜18のアリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
12〜A14の炭素数7〜18のアラルキルオキシ基の例としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルメトキシ基等が挙げられる。
12〜A14の炭素数5〜16のアリールアミノ基の例としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ナフチルフェニルアミノ基等が挙げられる。
12〜A14の炭素数1〜6のエステル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等が挙げられる。
12〜A14のハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また本発明におけるアリール基としては、スチリルフェニル、スチリルビフェニル、スチリルナフチルなども含まれる。
【0043】
前記一般式(IV)で表される縮合環含有化合物としては、下記一般式(IV−a)で表される縮合環含有化合物を好ましく挙げることができる。
【化11】

【0044】
(式中、A9 〜A14は前記と同じ、R21〜R23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数5〜18のアリールオキシ基、炭素数7〜18のアラルキルオキシ基、炭素数5〜16のアリールアミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のエステル基又はハロゲン原子を示し、A9 〜A14のうち少なくとも1つは3環以上の縮合芳香族環を有する基である。)
【0045】
21〜R23の具体例は、一般式(IV)のA12〜A14で挙げたものと同様である。
また、前記一般式(I)〜(IV)、(I−a)、(I−b)、(II−a)、(III−a) 及び(IV−a)における置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数5〜18のアリールオキシ基、炭素数7〜18のアラルキルオキシ基、炭素数5〜16のアリールアミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のエステル基又はハロゲン原子が挙げられ、これらの具体例としては、前記一般式(IV)のA12〜A14で挙げたものと同様である。
【0046】
〔5〕金属錯体化合物
上記金属錯体化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム等が挙げられ、特に、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム等のアルミニウムキレート錯体が好ましい。
【0047】
本発明においては、この(B)成分のアントラセン誘導体は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記一般式(I−a)で表されるアントラセン誘導体の具体例を以下に示す。
【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

【0050】
【化14】

【0051】
【化15】

【0052】
【化16】

【0053】
前記一般式(I−b)で表されるアントラセン誘導体の具体例を以下に示す。
【化17】

【0054】
【化18】

【0055】
【化19】

【0056】
前記一般式(II−a)で表されるアントラセン誘導体の具体例を以下に示す。
【化20】

【0057】
【化21】

【0058】
【化22】

【0059】
【化23】

【0060】
前記一般式(III−a)で表されるスピロフルオレン誘導体の具体例を以下に示す。
【化24】

【0061】
前記一般式(IV−a)で表される縮合環含有化合物の具体例を以下に示す。
【化25】

【0062】
【化26】

【0063】
前記一般式(V)、(V−a)又は(V−b)で表されるアリールアミン化合物の具体例を以下に示す。
【0064】
【化27】

【0065】
【化28】

【0066】
【化29】

【0067】
【化30】

【0068】
【化31】

【0069】
【化32】

【0070】
【化33】

【0071】
【化34】

【0072】
【化35】

【0073】
【化36】

【0074】
【化37】

【0075】
【化38】

【0076】
【化39】

【0077】
【化40】

【0078】
本発明においては、有機発光媒体層における前記(A)成分のアリールアミン化合物と前記(B)成分のアントラセン誘導体との含有割合は、重量比1:99〜99:1の範囲で、使用する化合物の種類などに応じて適宜選定するのが有利である。特に、(A)成分化合物は正孔輸送性を有し、一方(B)成分化合物は電子輸送性を有することを考慮して、得られる素子の寿命と効率が最も良好となるように選定するのが望ましい。
(A)成分と(B)成分の好ましい割合は重量比1:99〜20:80の範囲であり、この範囲で特に高い効率が得られる。
この有機発光媒体層の厚さとしては、5〜200nmの範囲が好ましく、特に素子の印加電圧を非常に低くしうることから、10〜40nmの範囲が好適である。
【0079】
このように、(A)成分と(B)成分を組み合わせて有機発光媒体層に用いることにより、(B)成分単独使用の場合に比べて、効率が3〜5倍程度高くなると共に、寿命も少なくとも3倍以上、最適化すれば10倍以上に長くすることができる。
また、(A)成分として前記一般式(V)で表されるようなアリールアミン化合物を用いることにより、アリールアミン化合物同士の立体障害が大きく、分子会合による濃度消光を防止できると共にさらなる長寿命化が可能となり、さらに、アミノ置換基又は縮合芳香族環に分岐状アルキル基を導入することにより縮合芳香族環とアミノ置換基との立体反発を大きくできるため、色純度を示す指標ともなる発光スペクトルの半値幅が狭くなり、発光スペクトルがシャープになるため、フルカラー用のディスプレイに適している。
【0080】
さらに、(A)成分と(B)成分を組み合わせることにより、有機発光媒体層がより非晶質性となって、安定性が向上し、耐熱性に優れるものになる。(B)成分の化合物としては、ガラス転移点が110℃以上のものが好ましく、一方、(A)成分の化合物としては、ガラス転移点が70℃以上のものが好ましい。このようなガラス転移点を有する化合物を混合することにより、有機発光媒体層のガラス転移点を90℃以上にすることができ、85℃、500時間以上の保存耐熱性を得ることが可能となる。
【0081】
本発明の有機EL素子は、一対の電極の間に、前記の(A)成分と(B)成分との組み合わせを含む有機発光媒体層(以下、発光媒体層と略記する)を挟持させてなるものであるが、該電極とこの発光媒体層の間に種々の中間層を介在させるのが好ましい。この中間層としては、例えば正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などが挙げられる。これらは、有機、無機の種々の化合物が知られている。
【0082】
このような有機EL素子の代表的な素子構成としては、
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/有機半導体層/発光層/陰極
(6)陽極/有機半導体層/電子障壁層/発光層/陰極
(7)陽極/有機半導体層/発光層/付着改善層/陰極
(8)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(9)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(10)陽極/無機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(11)陽極/有機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(12)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
(13)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
などの構造を挙げることができる。
これらの中で通常(8)の構成が好ましく用いられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0083】
この有機EL素子は、通常透光性の基板上に作製する。この透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、その透光性については、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上であるものが望ましく、さらに平滑な基板を用いるのが好ましい。
このような透光性基板としては、例えば、ガラス板、合成樹脂板などが好適に用いられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などで成形された板が挙げられる。また、合成樹脂 板としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルファイド樹脂、ポリサルフォン樹脂などの板か挙げられる。
【0084】
次に、上記の陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Auなどの金属、CuI、ITO(インジウムチンオキシド)、SnO2 、ZnO、In−Zn−Oなどの導電性材料が挙げられる。この陽極を形成するには、これらの電極物質を、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることができる。この陽極は、上記発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率が10%より大きくなるような特性を有していることが望ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下のものが好ましい。さらに、陽極の膜厚は、材料にもよるが通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0085】
次に、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム/酸化アルミニウム、Al/Li2 O、Al/LiO2 、Al/LiF、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属などが挙げられる。
この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
ここで、発光媒体層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、さらに、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
【0086】
本発明の有機EL素子においては、このようにして作製された一対の電極の少なくとも一方の表面に、カルコゲナイド層、ハロゲン化金属層又は金属酸化物層(以下、これらを表面層ということがある。)を配置するのが好ましい。具体的には、発光媒体層側の陽極表面にケイ素やアルミニウムなどの金属のカルコゲナイド(酸化物を含む)層を、また、発光媒体層側の陰極表面にハロゲン化金属層又は金属酸化物層を配置するのがよい。これにより、駆動の安定化を図ることができる。
上記カルコゲナイドとしては、例えばSiOx(1≦X≦2)、AlOx(1≦X≦1.5)、SiON、SiAlONなどが好ましく挙げられ、ハロゲン化金属としては、例えばLiF、MgF2 、CaF2 、フッ化希土類金属などが好ましく挙げられ、金属酸化物としては、例えばCs2 O、Li2 O、MgO、SrO、BaO、CaOなどが好ましく挙げられる。
【0087】
本発明の有機EL素子においては、前記(A)成分と(B)成分との使用割合によって、発光媒体層の電子輸送性及び正孔輸送性共に良好となり、前記した正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層などの中間層を省略することが可能となる。該表面層は、この場合においても設けることが可能であり、好ましい。
さらに、本発明の有機EL素子においては、このようにして作製された一対の電極の少なくとも一方の表面に電子伝達化合物と還元性ドーパントの混合領域又は正孔伝達化合物と酸化性ドーパントの混合領域を配置するのも好ましい。このようにすると、電子伝達化合物が還元され、アニオンとなり混合領域がより発光媒体に電子を注入、伝達しやすくなる。また、正孔伝達化合物は酸化され、カチオンとなり混合領域がより発光媒体に正孔を注入、伝達しやすくなる。好ましい酸化性ドーパントとしては、各種ルイス酸やアクセプター化合物がある。好ましい還元性ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、希土類金属及びこれらの化合物がある。
【0088】
本発明の有機EL素子においては、発光媒体層は、
(1) 注入機能;電界印加時に陽極又は正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極又は電子注入層より電子を注入することができる機能
(2) 輸送機能;注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能
(3) 発光機能;電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能
を有する。
この発光媒体層を形成する方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、LB法等の公知の方法を適用することができる。発光媒体層は、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態又は液相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。
また特開昭57−51781号公報に開示されているように、樹脂等の結着剤と材料化合物とを溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、発光媒体層を形成することができる。
【0089】
本発明においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、発光媒体層に、前記(A)成分及び(B)成分以外の他の公知の有機発光媒体を含有させてもよく、また、本発明に係る化合物を含む発光媒体層に、他の公知の有機発光媒体を含む発光媒体層を積層してもよい。
次に、正孔注入・輸送層は、発光媒体層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい。このような正孔注入・輸送層としてはより低い電界強度で正孔を発光媒体層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば104 〜106 V/cmの電界印加時に、少なくとも10-6cm2 /V・秒であるものが好ましい。このような材料としては、従来、光導伝材料において正孔の電荷輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0090】
そして、この正孔注入・輸送層を形成するには、正孔注入・輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化すればよい。この場合、正孔注入・輸送層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmである。
次に、電子注入層・輸送層は、発光媒体層への電子の注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、電子移動度が大きく、また付着改善層は、この電子注入層の中で特に陰極との付着が良い材料からなる層である。電子注入層に用いられる材料としては、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体が好適である。上記8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウムを電子注入材料として用いることができる。
【0091】
また、本発明の有機EL素子は、超薄膜に電界を印可するために、リークやショートによる画素欠陥が生じやすい。これを防止するために、一対の電極間に絶縁性の薄膜層を挿入しても良い。
絶縁層に用いられる材料としては、例えば、酸化アルミニウム、弗化リチウム、酸化リチウム、弗化セシウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、弗化マグネシウム、酸化カルシウム、弗化カルシウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化バナジウム等が挙げられる。これらの混合物や積層物を用いてもよい。
次に、本発明の有機EL素子を作製する方法については、例えば上記の材料及び方法により陽極、発光媒体層、必要に応じて正孔注入層、及び必要に応じて電子注入層を形成し、最後に陰極を形成すればよい。また、陰極から陽極へ、前記と逆の順序で有機EL素子を作製することもできる。
【0092】
以下、透光性基板上に、陽極/正孔注入層/発光媒体層/電子注入層/陰極が順次設けられた構成の有機EL素子の作製例について説明する。
まず、適当な透光性基板上に、陽極材料からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着法あるいはスパッタリング法により形成し、陽極とする。次に、この陽極上に正孔注入層を設ける。正孔注入層の形成は、前述したように真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法により正孔注入層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物(正孔注入層の材料)、目的とする正孔注入層の結晶構造や再結合構造等により異なるが、一般に蒸着源温度50〜450℃、真空度10-7〜10-3torr、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選択することが好ましい。
【0093】
次に、この正孔注入層上に発光媒体層を設ける。この発光媒体層の形成も、本発明に係る有機発光媒体を用いて真空蒸着法、スパッタリング、スピンコート法、キャスト法等の方法により、有機発光媒体を薄膜化することにより形成できるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法により発光媒体層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物により異なるが、一般的に正孔注入層の形成と同様な条件範囲の中から選択することができる。膜厚は10〜40nmの範囲が好ましい。
【0094】
次に、この発光媒体層上に電子注入層を設ける。この場合にも正孔注入層、発光媒体層と同様、均質な膜を得る必要から真空蒸着法により形成することが好ましい。蒸着条件は正孔注入層、発光媒体層と同様の条件範囲から選択することができる。
そして、最後に陰極を積層して有機EL素子を得ることができる。陰極は金属から構成されるもので、蒸着法、スパッタリングを用いることができる。しかし、下地の有機物層を製膜時の損傷から守るためには真空蒸着法が好ましい。
【0095】
以上の有機EL素子の作製は、一回の真空引きで、一貫して陽極から陰極まで作製することが好ましい。
この有機EL素子に直流電圧を印加する場合、陽極を+、陰極を−の極性にして、3〜40Vの電圧を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れず、発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加した場合には、陽極が+、陰極が−の極性になった時のみ均一な発光が観測される。この場合、印加する交流の波形は任意でよい。
【0096】
本発明はまた、前記(A)成分と、前記(B)成分を含む有機発光媒体をも提供するものである。この有機発光媒体は、耐熱性に優れ、寿命が長く、かつ高効率で青色〜黄色系発光が得られる有機EL素子に好適に用いられる。
【実施例】
【0097】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
25×75×1.1mmサイズのガラス基板上に、膜厚120nmのインジウムスズ酸化物からなる透明電極を設けた。このガラス基板に紫外線及びオゾンを照射して洗浄したのち、真空蒸着装置にこの基板を設置した。
まず、正孔注入層として、N,N’−ビス[4−(ジフェニルアミノ)フェニル]−N,N’−ジフェニルビフェニル−4,4’−ジアミンを60nmの厚さに蒸着したのち、その上に正孔輸送層として、N,N,N',N' −テトラキス(4−ビフェニル)−4,4’−ベンジジンを20nmの厚さに蒸着した。次いで、(B)成分として上記化合物(EM4)と(A)成分として上記化合物(EM83)とを、重量比40:3で同時蒸着し、厚さ40nmの発光層を形成した。 次に、電子注入層として、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)を20nmの厚さに蒸着した。次に、フッ化リチウム(LiF)を0.3nmの厚さに蒸着し、次いで、アルミニウム(Al)を150nmの厚さに蒸着した。このLiF/Al膜は陰極として機能する。このようにして有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子に通電試験を行ったところ、電圧6.5V、電流密度10mA/cm2にて、発光輝度205cd/m2の純青色発光(半値幅42nm)が得られた。また、初期輝度500cd/m2で直流の連続通電試験を行ったところ、半減寿命は900時間であった。
【0098】
実施例2〜19
実施例1において、(B)成分及び(A)成分の化合物として表1に記載のものを用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に電流密度10mA/cm2にて、通電試験を行った結果を表1に示す。また、表1に記載の初期輝度で直流の連続通電試験を行ったところの半減寿命を表1に示す。
【0099】
比較例1
実施例1において、化合物(EM4)及び化合物(EM83)の代わりに、化合物(EM4)のみで厚さ40nmの発光層を形成した以外は同様にして、有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に電流密度10mA/cm2にて、通電試験を行った結果を表1に示す。また、初期輝度500cd/m2で直流の連続通電試験を行ったところ、半減寿命は90時間と短かった。
【0100】
比較例2
実施例1において、化合物(EM83)の代わりに、4,4‘−ビス(ジフェニルアミノ)スチルベン(H2)を用いた以外は同様にして、有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に電流密度10mA/cm2にて、通電試験を行った結果を表1に示す。また、初期輝度500cd/m2で直流の連続通電試験を行ったところ、半減寿命は300時間と短かった。
【0101】
比較例3
実施例1において、化合物(EM83)の代わりに、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(H3)を用いた以外は同様にして、有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に電流密度10mA/cm2にて、通電試験を行った結果を表1に示す。また、初期輝度1000cd/m2で直流の連続通電試験を行ったところ、半減寿命は200時間と短かった。
【0102】
比較例4
実施例1において、化合物(EM83)の代わりに、N,N’−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンゼン(H4)を用いた以外は同様にして、有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に電流密度10mA/cm2にて、通電試験を行った結果を表1に示す。また、初期輝度500cd/m2で直流の連続通電試験を行ったところ、半減寿命は200時間と短かった。
【0103】
比較例5
実施例11において、化合物(EM98)の代わりに、1,3−ビス[2−{4−N,N’−(ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ベンゼン(H5)を用いた以外は同様にして、有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に電流密度10mA/cm2にて、通電試験を行った結果を表1に示す。また、初期輝度1000cd/m2で直流の連続通電試験を行ったところ、半減寿命は750時間と短かった。
【0104】
実施例20
実施例1において、(B)成分及び(A)成分として表2に記載のものを用い、陰極としてAlq:Cs/Alを用いた。Alq:Csは電子伝達化合物であるAlqとCs(セシウム)金属のモル比1:1の混合層である。得られた有機EL素子に電流密度10mA/cm2にて、通電試験を行った結果を表2に示す。また、表2に記載の初期輝度で直流の連続通電試験を行ったところの半減寿命を表2に示す。
【0105】
実施例21〜41
実施例20において、(B)成分及び(A)成分の化合物として表2に記載のものを用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に電流密度10mA/cm2にて、通電試験を行った結果を表2に示す。また、表2に記載の初期輝度で直流の連続通電試験を行ったところの半減寿命を表2に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
表1及び表2に示したように、緑色、青色、及びさらに達成が難しい純青色素子において、実施例1〜41に記載したように、優れた効率、寿命を達成している。これは、比較例の素子に比べ、発光スペクトルの半値幅が小さくなり、高色純度の発光が可能となったからである。
特に、(A)成分として、緑色発光のジアミノアントラセン誘導体、青色発光のジアミノピレン誘導体、純青色発光のジアミノクリセン誘導体の有機EL素子は、比較例のいずれの素子に対しても、発光効率、寿命ともに優れている。
さらには(B)成分としてアントラセン誘導体、(A)成分として、ジアミノアントラセン誘導体、ジアミノピレン誘導体、又はジアミノクリセン誘導体を用いることで、それぞれ、緑色発光、青色発光、純青色発光素子において、最も発光効率、寿命ともに優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、これらの電極間に挟持された有機発光媒体層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機発光媒体層が、
(A)一般式(V)
【化1】

(式中、X3 は、アントラセン残基であり、該アントラセン残基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基で置換されていてもよく、Ar5 及びAr6 は、それぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、コロニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、フラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基から選ばれる1価の芳香族基を示し、該芳香族基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基から選ばれる基で置換されていてもよく、pは1〜4の整数を示す。)
で表される炭素数100以下のアリールアミン化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物と、
(B)下記一般式(II)
3 −An−A4 ・・・(II)
(式中、Anは置換もしくは無置換の2価のアントラセン残基を示し、A3 及びA4 は、それぞれ独立に、炭素数6〜40のアリール基であり、該アリール基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基から選ばれる基で置換されていてもよく、A3 及びA4 の少なくとも一方は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基から選ばれる基で置換されていてもよい1価の縮合芳香族環基又は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基から選ばれる基で置換されていてもよい炭素数10以上のアリール基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表されるアントラセン誘導体から選ばれた少なくとも一種の化合物とを含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
(A)成分が、下記一般式(V−a)
【化2】

(式中、X3 は、アントラセン残基であり、該アントラセン残基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基で置換されていてもよく、Ar15〜Ar18は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数3〜6のシクロアルキル基を示し、g、h、i及びjは、それぞれ0〜5の整数を示し、nは0〜3の整数を示す。g、h、i、jが2以上の場合、複数のAr15〜Ar18は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して飽和もしくは不飽和の環を形成していてもよい。ただし、Ar15〜Ar18のうち少なくとも1つは炭素数3〜6の2級又は3級アルキル基である。)
で表されるアリールアミン化合物から選ばれた少なくとも一種である請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
(A)成分が、下記一般式(V−b)
【化3】

(式中、X3 は、アントラセン残基であり、Ar15〜Ar18は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数3〜6のシクロアルキル基を示し、g、h、i及びjは、それぞれ0〜5の整数を示す。g、h、i、jが2以上の場合、複数のAr15〜Ar18は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して飽和もしくは不飽和の環を形成していてもよい。
24及びR25は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基を示し、k及びmは、それぞれ0〜2の整数を示す。ただし、R24及びR25のうち少なくとも1つは炭素数3〜6の2級又は3級アルキル基である。)
で表されるアリールアミン化合物から選ばれた少なくとも一種である請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記有機発光媒体層が、(A)成分と(B)成分とを、重量比1:99〜20:80の割合で含む請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
一対の電極の少なくとも一方の表面に、カルコゲナイド層、ハロゲン化金属層又は金属酸化物層を配置する請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
一対の電極の少なくとも一方の表面に、還元性ドーパントと有機物の混合領域又は酸化性ドーパントと有機物の混合領域を配置することを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記有機発光媒体層が、厚さ10〜400nmである請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
(A)一般式(V)
【化4】

(式中、X3 は、アントラセン残基であり、該アントラセン残基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基で置換されていてもよく、Ar5 及びAr6 は、それぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、コロニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、フラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基から選ばれる1価の芳香族基を示し、該芳香族基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基から選ばれる基で置換されていてもよく、pは1〜4の整数を示す。)
で表される炭素数100以下のアリールアミン化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物と、
(B)下記一般式(II)
3 −An−A4 ・・・(II)
(式中、Anは置換もしくは無置換の2価のアントラセン残基を示し、A3 及びA4 は、それぞれ独立に、炭素数6〜40のアリール基であり、該アリール基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基から選ばれる基で置換されていてもよく、A3 及びA4 の少なくとも一方は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基から選ばれる基で置換されていてもよい1価の縮合芳香族環基又は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基から選ばれる基で置換されていてもよい炭素数10以上のアリール基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表されるアントラセン誘導体から選ばれた少なくとも一種の化合物とを含む有機発光媒体。

【公開番号】特開2012−19229(P2012−19229A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197260(P2011−197260)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【分割の表示】特願2009−213368(P2009−213368)の分割
【原出願日】平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】