説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

本発明は、縮合芳香族化合物を含む特定の有機化合物の、有機電子素子、特に有機エレクトロルミネセンス素子への使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
機能性材料としての有機半導体の使用は、最も広い意味において電子産業に帰され得る多くの様々なアプリケーションに、かねてから実現されてきており、あるいは、近い将来に期待されている。可視スペクトル領域において光を放射することができる半導体有機化合物の使用は、例えば、有機エレクトロルミネセンス素子において、市場への導入が始まったところである。有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の一般構造は、例えば、US 4539507、US 5151629、EP 0676461及びWO 98/27136に記載されている。しかしながら、これらの素子は、早急の改善を要するかなりの問題を未だ常に示している:
1.駆動寿命は未だ常に短く、特に青色発光の場合、これは、これまでは、簡単なアプリケーションを商業的に得ることができるのみであることを示している。
【0002】
2.いくつかの場合、使用は、異なる物理的性質(ガラス転移点、ガラス形成特性、吸収率、フォトルミネッセンス)を有する、異性体化合物の混合物からなされる。これら立体異性体はまた、ある場合、操作温度での異なる蒸気圧を有するため、均一で、再現性のある有機電子素子の製造は不可能である。この問題は、例えば未公開出願であるEP 04026402.0.に詳細に記載されている。
【0003】
3.使用される化合物は、いくつかの場合共通の有機溶媒にわずかに溶解するだけであり、そのため合成中の純化がより困難となるだけでなく、有機電子素子製造の場合にプラントの清掃もより困難となる。
【0004】
4.先行技術に関連する多くの母体材料は、純粋な炭化水素から成り、正孔輸送度及び正孔安定性は充分に高くはなく改善される必要がある。
【0005】
最も近い技術は、母体材料として、種々の縮合芳香族化合物、特に青色発光有機エレクトロルミネセンス素子に対して、特にアントラセン若しくはピレン誘導体を使用するものと考えられる。先行技術に開示された母体材料は、9,10-ビス(2-ナフチル)アントラセン(US 5935721)である。母体材料として適している更なるアントラセン誘導体は、例えば、WO 01/076323、WO 01/021729、WO 04/013073、WO 04/018588、WO 03/087023、WO 04/018587に記載されている。アリール置換ピレン及びクリセン系母体材料は、WO 04/016575に記載されており、これは、対応するアントラセン及びフェナントレン誘導体をも主として含んでいる。WO 03/095445及びCN 1362464は、9,10-ビス(1-ナフチル)アントラセン誘導体のOLEDへの使用を開示している。高品質のアプリケーションのためには、改善された入手可能な母体材料が必要とされる。上記化合物は、アトロプ異性体を形成し、そのため素子製造中の再現性が悪化するならば特に問題である。
【0006】
上記先行技術は、母体材料が、有機エレクトロルミネセンス素子の機能に重要な役割を果たすことを確信させる。したがって、有機電子素子に良好な効率と同時に長い寿命をもたらし、素子の製造と操作に再現性のある結果を生み出す、改善された材料、特に青色発光OLEDの母体材料に対する需要が引き続き存在する。驚くべきことに、アリールオキシ若しくはチオアリールオキシ置換基により官能性を付与された縮合芳香環化合物を含む有機エレクトロルミネセンス素子が、先行技術に対するかなりの改善を有することがここに見出された。これらの材料は、先行技術による材料と比較して、有機電子素子の効率と使用寿命の増加を可能とする。素子のこれらの材料は、ジアステレオマーを導くアリール-O-アリール結合についてのアトロプ異性を示すことができないことから、有機電子素子の再現性のある製造が連続して可能となる。本発明は、それ故有機電子素子におけるこれら材料の使用に関するものである。
【0007】
JP 2000/021571は、9,10-ビス(アリールオキシ)及び9,10-ビス(アリールチオ)アントラセンの、OLEDへの使用を記載する。これら化合物の特別の効果は明らかではない。
【0008】
JP 11111458は、とりわけ、アリールオキシ置換基により置換されてもよいジアントラセン誘導体を記載する。これら化合物の効果は互いに結合された2つのアントラセン単位に起因する。言及された多くの他の化合物に対するアリールオキシ置換化合物の特別な効果は明らかではなく、この置換基は、ここではたまたま非常に多くの他の可能な置換基と横並びで言及されているだけであると想定されているに違いない。
【0009】
US 2004/185298は、多くの他の置換基に加えて、アリールオキシ置換基をも主に保有し得る、1,9-ペリ-(9‘-アントリレン)-10-(9‘-アントリチル)アントラセン誘導体を記載している。しかしながら、アリールオキシ置換化合物は列記されておらず、したがって、このような化合物の効果を導き出すことはできない。特に、説明された化合物は、赤色発光OLED用ドーパントとして使用されている。拡張された縮合環系は、青色発光OLEDには適さないことを意味している。
【0010】
WO 01/21729は、スチリルアミンとある種のアントラセン誘導体を共に一層中に含むOLEDを記載している。2つのアントラセン単位は、ここでは、種々のブリッジとりわけ酸素若しくは硫黄を介してブリッジされている。後続する出願WO 01/76323では、電子輸送化合物が、上記化合物に加えて同じ層にまた使用されている。このことは、良好な結果を得るためには、別々の電子輸送化合物の使用を示唆しており、これらアントラセン誘導体の有用性をかなり制限している。
【0011】
US 6582837は、は、一般的に、9-(1‘-ナフチル)アントラセン誘導体のOLEDへの使用を記載しており、特に、それらは、ジアミノ基で置換されている。これら化合物は、更に置換基を有し、とりわけ、アントラセンの1-8及び10部位にアリールオキシ基をも有し得る。しかしながら、アリールオキシ置換化合物は、明白には開示されておらず、したがって、このような化合物の効果は、導き出すことができない。このことは、アリールオキシ置換基は、ここではたまたま非常に多くの他の可能な置換基と横並びで言及されているだけであることを示唆している。
【0012】
JP 2005/008600は、テトラヒドロナフタレンにより、9,10部位を置換されるアントラセン化合物を記載している。アントラセン単位は、更に置換基を保有しており、とりわけ、2-若しくは2,6-部位に、フェノキシ或いはナフトキシ基をも有している。しかしながら、異なる置換化合物に対する、フェノキシ或いはナフトキシ基置換化合物の、特別な効果は明らかではなく、これら化合物の特別な効果は、フェノキシ或いはナフトキシ基に基づくものではなく、その代わりテトラヒドロナフタレン単位に基づくものである。
【0013】
WO 04/018587、WO 04/013073、JP 2003/313156、WO 02/43448及びWO 01/72673は、多くの他の置換基に加えて、アントラセンの1-8部位にアリールオキシ置換基をも有し得る、アントラセン誘導体をも記載している。しかしながら、これら構造は与えられておらず、アリールオキシ置換の異なる置換に対する効果は明らかではなく、これら置換基は、たまたま多くの他の置換基と横並びでリストに開示されているだけであると考えられる。
【0014】
本発明は、陽極、陰極及び下記式(1)の少なくとも一つの化合物を含む、少なくとも一つの有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【化4】

【0015】
ここで、上記式中の記号は下記の意味である
Ar、Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上のR基により置換されていてもよい芳香族環系若しくは複素環式芳香族環構造であり、;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上のR基により置換されていてもよい少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合アリール若しくは複素環式アリール基であり、
Xは、出現毎にO、S、Se若しくはTeであり、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、Cl、Br、I又は1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ鎖又は3〜40個のC原子を有する分岐アルキル又は環状アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ鎖(ここで、各鎖はRにより置換されていてもよく、そしてここで、1以上の隣接しないC原子は、N-R、O、S、O-CO-O、CO-O、Si(R、CO、CO-N(R、-CR=CR-若しくは-C≡C-で置き換えられていてもよく、また加えて、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I若しくはCNで置換されていてもよい。)、又は1以上のR基により置換されていてもよい、芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、又はこれらの系の2、3、4個の組み合わせであり、2以上のR基は、ここでまた互いに更なるモノ若しくはポリ環状、脂肪族又は芳香族環構造を形成してもよく、
は、出現毎に同一であるか異なり、H若しくは1〜20個のC原子を有する脂肪族又は芳香族基であり、
但し、Ar、Ar、Ar基の多くて一つがアントラセンであり、更に、Arがアントラセンであるならば、Ar-X基は2位に結合していない。
【0016】
このことは、上記記載から明らかであるが、複数のR基は互いに環構造を形成してもよく、また、特にArとAr基との間で、環構造を形成してもよい。
【0017】
式(1)の化合物は、好ましくは70℃より大きい、特に好ましくは、100℃より大きい、非常に特に好ましくは130℃より大きいガラス転移点Tを有する。
【0018】
本発明の目的のためには、芳香族環構造は、6〜40のC原子を含む。本発明の目的のためには、複素環式芳香族環構造は、環構造に2〜40のC原子と、少なくとも1つのヘテロ原子を含むが、但し、C原子とヘテロ原子の全数が少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O及び/又はSから選択される。本発明の目的のために、芳香族環系または複素環式芳香族環構造とは、必ずしもアリール基または複素環式アリール基のみを含む構造ではなく、多数のアリール基または複素環式アリール基は、例えば、sp混成のC、NまたはO原子のような短い非芳香族単位(H以外の10%より少ない、好ましくは、H以外の5%より少ない原子)により中断されていてもよい構造を意味するものと解される。したがって、例えば、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル等も、本明細書の目的上、芳香族環構造と解釈するものである。芳香族系または複素環式芳香族環構造、若しくはそれらの部分は、ここでは次の定義の意味で縮合群であり得る。
【0019】
本発明の目的のためには、縮合アリールまたはヘテロアリール群は、少なくとも2つの芳香族または複素環式芳香族環が互いに縮合、即ち少なくとも1つの共通の辺と共通のπ電子構造を有する、10〜40の芳香族環原子を有する構造を意味するものと解される。これら環構造は、Rで置換されていても、置換されていなくてよい。縮合芳香族または複素環式芳香族環系の例は、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、クリセン、アクリジン等であり、一方、例えばビフェニルは、その2つの環系の間に共通の辺がないことから、縮合アリール系ではない。例えばフルオレンは、その2つのフェニル単位がそこに共通の芳香族電子系を形成しないことから、同様に縮合アリール系ではない。
【0020】
本発明の目的のためには、C〜C40-アルキル基は、その個々のH原子またはCH基は、上記した基により置換されていてもよいが、特に好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルまたはオクチニル基を意味するものと解される。C〜C40-アルコキシ基は、特に好ましくは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、または2-メチルブトキシを意味するものと解される。5〜40の芳香族原子を有する芳香族または複素環式芳香族環構造は、いずれの場合にも、上記したR基により置換されていてもよく、如何なる所望の部位で、芳香族または複素環式芳香族環に結合されていてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ナフサセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジフェニルエーテル、トリフェニルアミン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス若しくはトランス-インデノフルオレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザピレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン、及びベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解される。
【0021】
縮合アリール若しくはヘテロアリール基Arは、好ましくは、3、4、5、或いは6個の芳香族または複素環式芳香族単位を含み、いずれの場合でも、1以上の共通の辺により互いに縮合し、それゆえ、共通の芳香族構造を形成し、Rで置換されていてもよいし、置換されていなくともよい。縮合アリール若しくはヘテロアリール基Arは、特に好ましくは、3或いは4個の芳香族または複素環式芳香族単位を含み、いずれの場合でも、1以上の共通の辺により互いに縮合し、それゆえ、共通の芳香族構造を形成し、Rで置換されていてもよいし、置換されていなくともよい。互いに縮合した芳香族または複素環式芳香族単位は、特に好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン及びピリダジンであり、それぞれは、Rで置換されていてもよいし、置換されていなくともよいが、非常に特に好ましくは、ベンゼンとピリジンであり、特にはベンゼンである。縮合アリール若しくはヘテロアリール基Arは、特に、好ましくは、アントラセン、アクリジン、フェナントレン、フェナントロリン、ピレン、ナフタセン、クリセン、ペンタセン及びペリレンからなる群より選択され、夫々は、随意にRにより置換されていてもよい。Rによる置換は、より高度に溶解する化合物を得るために適切であり得る。縮合芳香族環構造は、特に好ましくは、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ナフタセン及びペリレン、特に、アントラセン、フェナントレン、ピレン及びペリレンからなる群より選択され、夫々は、随意にRにより置換されていてもよい。Ar及びAr単位は、好ましくは、1,10-部位、9,10-部位或いは1,4-部位で、特に好ましくは、9,10-部位でアントラセンに結合される。ピレンへの結合は、好ましくは、1,6-、1,8-、1,3-、或いは2,7-部位で、特に好ましくは、1,6-或いは2,7-部位で起こる。フェナントレンへの結合は、好ましくは、2,7-、3,6-、9,10-、2,9-或いは2,10-部位で、特に好ましくは、2,7-或いは3,6-部位で起こる。ペリレンへの結合は、好ましくは、3,4-、3,9-或いは3,10-部位で、特に好ましくは、3,9-或いは3,10-部位で起こる。
【0022】
式(1)の好ましい化合物は、それゆえ次の式(2)乃至(14)の化合物であり、それらはRにより置換されていてもよく、使用された記号は前記と同じ意味である。
【化5】

【0023】
これらのうち、非常に特に好ましいものは、式(2)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)及び、(11)である。
【0024】
1以上のAr-X基が可能でもあり、また許容され、例えば、2、3或いは4個のAr-X基が、縮合芳香族単位に結合される。同様に、1以上のAr基が可能でもあり、また許容され、例えば、3或いは4個のAr基が、縮合芳香族単位に結合される。
【0025】
アントラセン及びピレン単位は、X及びAr基を除いて、ここでは好ましくは置換されない。フェナントレン単位も同様に、X及びAr基を除いて、好ましくは置換されず、式(6)及び(7)の化合物も9及び/又は10部位に置換基を有し、或いは、式(8)の化合物も2及び/又は7部位に或いは3及び/又は6部位に置換基を有する。ペリレン単位も同様に、X及びAr基を除いて、好ましくは置換されず、式(13)の化合物も4及び/又は9部位に置換基を有し、或いは、式(14)の化合物も4及び/又は10部位に置換基を有する。
【0026】
好ましいAr及びArは、出現毎に同一であるか異なり、5〜16個の芳香族環原子を有する単純アリール、縮合アリール若しくは複素環式アリール基又はスピロビフルオレンである。特に好ましいAr及びArは、6〜14個の芳香族環原子を有する単純アリール、縮合アリール若しくは複素環式アリール基である。これらは、夫々Rにより置換されていてもよく、置換されていなくともよい。Ar及びArは、特に好ましくは単純アリール若しくは縮合アリール基である。非常に特に好ましくは、Ar及びArの内の少なくとも1つは、特にArは、縮合アリール若しくは複素環式アリール基である。非常に特に好ましくは、Ar及びArは、両方共に、縮合アリール若しくは複素環式アリール基であり、特に縮合アリール基である。
【0027】
好ましいX基は、O、S或いはSeであり、特に好ましいものはO或いはSであり、非常に特に好ましいものはOである。
【0028】
好ましいR基は、存在するなら、出現毎に同一であるか異なり、H、F、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル若しくはアルコキシ鎖又は3〜10個のC原子を有する分岐アルキル若しくはアルコキシ鎖であり、夫々はRにより置換されていてもよく、そしてここで、1以上の隣接しないC原子は、N-R、O、S、-CR=CR-若しくは-C≡C-で置換されていてもよく、また加えて、1以上のH原子は、F若しくはCNで置換されていてもよく、又は1以上のR基により置換されていてもよい5〜16個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、又は、これらの系の2若しくは3個の組み合わせであり、2以上のR基は、ここでまた互いに更なるモノ若しくはポリ環状、脂肪族又は芳香族環構造を形成するものである。特に好ましいR基は、存在するなら、出現毎に同一であるか異なり、H、F、1〜5個のC原子を有する直鎖アルキル或いは3〜5個のC原子を有する分岐アルキル鎖であり、夫々はRにより置換されていてもよく、そしてここで、1以上の隣接しないC原子は、-CR=CR-若しくは-C≡C-で置換されていてもよく、また加えて、1以上のH原子は、F或いは1以上のR基により置換されていてもよい5〜10個の芳香族環原子を有するアリール若しくはヘテロアリール或いは、これらの系の2個の組み合わせであり、2以上のR基は、ここでまた互いに更なるモノ若しくはポリ環状、脂肪族又は芳香族環構造を形成するものである。
【0029】
式(1)化合物の適切な例は、以下の構造(1)乃至(86)に示される。
【化6−1】

【化6−2】

【化6−3】

【化6−4】

【化6−5】

【化6−6】

【化6−7】

【化6−8】

式(1)の化合物は、有機化学の標準的な方法により合成されることができる。したがって、例えば、パラジウム触媒を持つ鈴木(Suzuki)カップリングにおいて、第1の芳香族ユニットのハロゲン化合物をもう片方の芳香族ユニットの硼素酸誘導体にカップリングさせることによりAr-Arユニットを構築することが可能である。パラジウム触媒を持つスチール(Stille)カップリング若しくはさらなる遷移金属触媒カップリング反応において錫誘導体を使用することも可能である。次のステップでは、芳香族ユニットArは、例えばNBSを使用する或いは臭素を使用する臭素化によりハロゲン化される。選択的ハロゲン化は、ハロゲン化がここで起こることができないように、芳香族ユニットArが適切に置換されるならば、可能である。アリールオキシ置換基(或いは、対応するS、Se若しくはTe置換基)は、この化合物とフェノール或いは対応する硫黄、セレン若しくはテルル化合物との反応によって導入することができる。この反応は、例えば、芳香族求核置換反応として、或いはウルマン(Ullmann)カップリング(F. Ullmann et al.,Chem.Ber.1905,38,2211-2212)条件下での銅触媒により、或いはハートビック-ブーフバルト(Hartwig-Buchwald)カップリング(G.Mann et al.,J.Am.Chem.Soc.1999,121,3224-325;A.Aranyos et al.,J.Am.Chem.Soc.1999,121,4369-4378)条件下でのパラジウム触媒によりなされることができる。更なる可能性は、ハロゲン化された芳香族ユニットの、対応するグリニャール試薬或いはアリールリチウムへの変換と更なるそれのジアリルジチオール,-ジセレニド或いは-ジテルリドとの反応である。
【0030】
Ar基及びAr基の少なくとも1つが、縮合アリール若しくはヘテロアリール基若しくはスピロビフルオレンを含む式(1a)の化合物は、新規であり、それゆえ同様に本発明の主題である。
【0031】
本発明は、式(1a)の化合物に関する。
【化7】

【0032】
ここで、上記式中の記号は下記の意味である
Ar、Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上のR基により置換されていてもよい芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であり、ここで、2つの基Ar及び/又はArの少なくとも1つは、縮合アリール若しくは複素環式アリール基或いはスピロビフルオレンを含む;
その他の記号は上記で定義されるものであるが、但し、Ar、Ar、Ar基の多くて一つがアントラセンであり、更に、Arがアントラセンであるならば、Ar-X基は2部位に結合していない。
【0033】
上記説明と同様の選好がAr基及びX基に適用される。好ましい式(1a)の化合物は、それゆえAr基及び/又はAr基の少なくとも1つが、少なくとも1つの縮合アリール若しくはヘテロアリール基若しくはスピロビフルオレンを含み、夫々がRによって置換されていてもよい、式(2)乃至(12)の化合物である。
【0034】
本発明の好ましい具体例では、縮合アリール若しくはヘテロアリール基Ar若しくはArは、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、アントラセン、アクリジン、フェナントレン、フェナントロリン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ペンタセン及びペリレンからなる群より選択されるが、但し、Ar、Ar、Ar基の多くて一つがアントラセンである。特に好ましい、縮合アリール若しくはヘテロアリール基Ar及び/又はArは、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、アントラセン、フェナントレン、ピレン及びペリレンからなる群より選択される、非常に特に好ましいのは、ナフタレン及びフェナントレンである。
【0035】
本発明の好ましい具体例では、Ar基は、R基により置換されていてもよい少なくとも一つの縮合アリール若しくはヘテロアリール基を含む。本発明の特に好ましい具体例では、Ar及びAr基は、いずれもR基により置換されていてもよい少なくとも一つの縮合アリール若しくは複素環式アリール基を含む。
【0036】
本発明は更に式(1a)の化合物の有機電子素子への特に有機エレクトロルミネッセンス素子への使用に関する。
【0037】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記のとおり、陽極、陰極及び下記式(1)の少なくとも一つの化合物を含む、少なくとも一つの有機層を含む。少なくとも一つの有機層は、ここでは発光層である。有機電子素子は、更なる層を含むことも選好し得る。発光層とは別に、これらは、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び/又は電子注入層であってよい。しかしながら、これらの層のそれぞれは、必ずしも存在する必要がないことは、この時点で指摘されるべきである。
【0038】
したがって、特に式(1)の化合物の発光層への使用において、有機エレクトロルミネッセンス素子が、単独の電子輸送層を含まず、発光層が、直接電子注入層或いは陰極に隣接するならば、非常に良好な結果が更に得られる。同様に、有機エレクトロルミネッセンス素子は、単独の正孔注入層を含まず、発光層が、正孔注入層或いは陽極に隣接することが好ましい。
【0039】
随意に存在する電子輸送層に対する好ましい材料は、アルミニウム若しくはガリウムを含む金属錯体、ポリポダル(Polypodal)金属錯体(例えばWO 04/081017のとおり)、ケトン、ホスフィンオキシド或いはスルホキシド(例えばWO 05/084081及びWO 05/084082のとおり)である。特に好ましいのは、ケトン及び、ホスフィンオキシドである。
【0040】
式(1)の化合物は、特に好ましくは発光層に使用される。それは、純粋物質として使用されることができるが、好ましくはドーパントと併用して使用される。ドーパントは、好ましくは、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン及びアリールアミンのクラスより選択される。モノスチリルアミンは、スチリル基と少なくとも1個のアミン好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味すると解される。ジスチリルアミンは、2個のスチリル基と少なくとも1個のアミン好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味すると解される。トリスチリルアミンは、3個のスチリル基と少なくとも1個のアミン好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味すると解される。テトラスチリルアミンは、4個のスチリル基と少なくとも1個のアミン好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味すると解される。本発明の目的のためには、アリールアミン若しくは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3個の芳香族若しくは複素環式芳香族環構造を意味すると解される。スチリル基は、特に好ましくはスチルベン基であり、更に置換されていてもよい。特に好ましいドーパントは、トリスチリルアミンのクラスから選択される。このタイプのドーパントの例は、置換或いは非置換トリスチルベンアミン若しくはWO 06/000388、WO 06/000389、WO 06/000390及び未公開特許出願EP 04028407.7に記載されたドーパントである。
【0041】
式(1)の化合物の混合物中での割合は、通常1〜99.9重量%であり、好ましくは50〜99.5重量%であり、特に好ましくは80〜99重量%であり、特に90〜99重量%である。ドーパントの割合は、対応して0.1〜99重量%であり、好ましくは
0.5〜50重量%であり、特に好ましくは1〜20重量%であり、特に1〜10重量%である。
【0042】
多数の発光化合物が同一層に使用されるか、多数の発光層が存在し、層の少なくとも1つが少なくとも式(1)の化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が更に好ましい。この素子は、特に好ましくは、全体の発光最大値が380〜750nmの間にあり、その結果全体的には白色発光が得られる。ここで使用されることができる発光化合物は、蛍光を呈するものと燐光を呈するものの両方である。
【0043】
式(1)の化合物は、更にまた、特に蛍光及び燐光エレクトロルミネッセンス素子での電子輸送層における電子輸送材料としての使用に適している。それらは、同様に、正孔障壁材料として、特に蛍光及び燐光エレクトロルミネッセンス素子での正孔障壁層での正孔障壁材料としての使用に適している。
【0044】
式(1)の化合物は、更にまた、特に蛍光及び燐光エレクトロルミネッセンス素子での正孔輸送層における正孔輸送材料としての使用に適している。これは、特に、1以上のAr-X基が分子中に存在するときに適用される。
【0045】
1以上の層が、昇華プロセスによって被覆されることを特徴とする有機電子素子が更に好ましい。ここでは、材料は、10−5mbar以下、好ましくは10−6mbar以下、特に好ましくは10−7mbar以下の圧力の真空昇華ユニットでの真空蒸着により適用される。
【0046】
同様に、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスあるいはキャリアーガス昇華を用いて、被覆されることを特徴とする有機電子素子が更に好ましい。ここでは、材料は、一般的には10−5mbar〜1barの圧力で適用される。
【0047】
さらに、1以上の層が、溶液から、例えば、スピンコーティングにより製造され、または、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷またはオフセット印刷、特に好ましくはLITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)若しくはインクジェット印刷のような所望の印刷プロセスを使用して製造されることを特徴とする有機電子素子が好ましい。
【0048】
上記した発光デバイスは、先行技術に対する以下の驚くべき効果を有する。
【0049】
1.対応する素子の安定性は、先行技術によるシステムと比較してより高く、それは、特に、OLEDのより長い寿命により明らかである。この効果は、先行技術による化合物と比較して、式(1)の化合物のより高い正孔安定性に基づくものであろう。
【0050】
2.現在までに使われている化合物は、その一部がその溶解性の悪さのために純化することが困難であるのと対照的に、式(1)の化合物はたやすく溶解し、それゆえより純化しやすく、また、溶液からより処理しやすい。
【0051】
3.先行技術による材料は、既に前述したように、アトロプ異性体を形成し、再現性が悪くなる問題を生じる場合があった。X基の導入は、アリール-X-アリール結合についてのジアステレオマーアトロプ異性体の形成を不可能とし、それゆえ、素子の再現性のある製造を可能とする。
【0052】
本出願明細書の文脈及びまた以下の次の例では、目的は、式(1)の化合物の、OLED及びそれと対応する表示装置に関する使用である。記載が限定されているのに関わらず、当業者は、さらなる発明を必要とすることなく、式(1)の化合物を、少しだけ言及される他のデバイス、例えば、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機光発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子若しくは有機レーザーダイオード(O-laser)にも用いることが可能である。本発明は、同様に本発明による化合物の、対応する素子への使用及びこれら素子自体に関する。本発明は、以下の例によりより詳細に説明されるが、それにより限定されることを望むものではない。
【0053】

以下の合成は、他に断らない限り、保護ガス雰囲気下で行われる。出発物質は、ALDRICHから購入される。(4-メチルナフタレン-1-ボロン酸、9-ブロモアントラセン、フェノール、4-フェニルフェノール、2-フェニルフェノール、パラジウム(II)アセテート、トリ-o-トリル-ホスフィン、無機物、溶媒)
例1:10-(4-メチルナフト-1-イル)-9-(フェノキシ)アントラセン(H1)
a)9-(4-メチルナフト-1-イル)アントラセンの合成
【化8】

【0054】
3.6g(11.7ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンと、それから437mg(1.9ミリモルの)パラジウム(II)アセテートが、400mlのジオキサン、600mlのトルエン及び1000mlの水のよく撹拌された混合物中の、93.0g(500ミリモル)の4-メチルナフタレン-1-ボロン酸、100.0g(389ミリモル)の9-ブロモアントラセン及び212.3g(1モル)の燐酸3カリウム懸濁液に加えられ、16時間還流下加熱される。反応後混合物は冷却され、有機相が分離され、500mlの水で3度洗浄される。有機相は、続いてシリカゲルによりろ過され、蒸発乾燥される。残留する油は、1000mlエタノールに加えられ、還流下溶液状態にされる。冷却後、無色の固形物が吸引ろ過され、再度1000mlエタノールから再結晶化され、最後に減圧下乾燥される。収量:103.0g(理論値の83.1%)、H-NMRによると約96%。
【0055】
b)9-ブロモ-10-(4-メチルナフト-1-イル)アントラセンの合成
【化9】

【0056】
100mlのジクロロメタン中の18.0ml(352ミリモル)のブロミンの混合物が、2000mlのジクロロメタン中の、102.0g(320ミリモル)の9-(4-メチルナフト-1-イル)アントラセン溶液に-5℃でよく撹拌されながら、滴下され、その混合物は、室温で12時間撹拌される。懸濁液は、引き続き1000mlのエタノールで希釈され、500mlの水中の15g亜硫酸ナトリウムの溶液が添加される。沈殿した固形物は、吸引ろ過され、500mlの水とエタノールの混合物(1:1,v:v)で洗浄され、その後200mlのエタノールで3度洗浄される。その度毎に、1000mlの沸騰エタノールで2度洗浄後、固形物は、減圧下乾燥される。収量:108.0g(理論値の84.9%)、H-NMRによると約97%。
【0057】
c)10-(4-メチルナフト-1-イル)-9-(フェノキシ)アントラセン(H1)の合成
【化10】

【0058】
840μl(3.5ミリモル)のトリ-tert-ブチルホスフィンとそれから507mg(2.3ミリモルの)パラジウム(II)アセテートが、1000mlのトルエン中の、45.0g(113ミリモル)の9-ブロモ-10-(4-メチルナフト-1-イル)アントラセン、20.2g(215ミリモル)のフェノール、48.0g(226ミリモル)の燐酸3カリウム及び200gのガラスビーズ(直径0.4mm)の懸濁液に加えられる。混合物は、100℃で12時間加熱され、冷却された後に、500mlの1N塩酸が加えられ、混合物はガラスビーズからデカントされる。有機相は、分離され、500mlの水で2度洗浄され、硫酸マグネシウムで乾燥され、シリカゲルで吸引ろ過される。有機相蒸発後残留する固形物は、300ml沸騰エタノールで洗浄され、その後、HPLCによる純度99.9%に達するまで、いずれの場合もDMSO(約3ml/g)及びDMF(7ml/g)から4度再結晶化される。固形物は、最後の減圧下(P=5×10−5mbar、T=340℃)昇華される。収量:17.8g(理論値の34.2%)、HPLCによると99.9%。
【0059】
例2:10-(4-メチルナフト-1-イル)-9-(4-フェニルフェノキシ)アントラセン(H2)
【化11】

【0060】
調製は例1と類似。フェノールに代えて、36.6g(215ミリモル)の4-フェニルフェノールが使用される。DMSO(約3ml/g)及びDMF(5ml/g)から再結晶化。昇華:P=5×10−5mbar、T=355℃。収量:25.8g(理論値の47.0%)、HPLCによると99.9%。
【0061】
例3:10-(4-メチルナフト-1-イル)-9-(2-フェニルフェノキシ)アントラセン(H3)
【化12】

【0062】
調製は例1と類似。フェノールに代えて、36.6g(215ミリモル)の2-フェニルフェノールが使用される。ジオキサン(4ml/g)から再結晶化。昇華:P=5×10−5mbar、T=353℃。収量:22.8g(理論値の41.5%)、HPLCによると99.9%。
【0063】
例4:10-(4-メチルナフト-1-イル)-9-(9-フェナンテノキシ)アントラセン(H4)
【化13】

【0064】
調製は例1と類似。フェノールに代えて、41.8g(215ミリモル)の9-ヒドロキシフェナントレンが使用される。DMSO(5ml/g)から再結晶化。昇華:P=5×10−5mbar、T=335℃。収量:29.6g(理論値の51.3%)、HPLCによると99.9%。
【0065】
例5:1-(4-メチルナフト-1-イル)-7-(6-フェノキシ)ピレン(H5)
a)1-(4-メチルナフト-1-イル)ピレンの合成
【化14】

【0066】
3.6g(11.7ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンとそれから437mg(1.9ミリモルの)パラジウム(II)アセテートが、400mlのジオキサン、600mlのトルエン及び1000mlの水のよく撹拌された混合物中の、93.0g(500ミリモル)の4-メチルナフタレン-1-ボロン酸、109.4g(389ミリモル)の1-ブロモピレン及び212.3g(1モル)の燐酸3カリウム懸濁液に加えられ、混合物は、26時間還流下加熱される。冷却後、無色の固形物が吸引ろ過され、その後1000mlの熱エタノールで撹拌により洗浄され、最後に減圧下乾燥される。収量:119.2g(理論値の89.5%)、H-NMRによると約97%。
【0067】
b)1-ブロモ-6-(4-メチルナフト-1-イル)ピレンの合成
【化15】

【0068】
25.0ml(220ミリモル)の臭化水素酸(48%水溶液)が、500mlのメタノール及び500mlのジブチルエーテル混合物中の、68.5g(200ミリモル)の1-(4-メチルナフタト-1-イル)ピレン懸濁液に、遮光下添加される。18.0ml(205ミリモル)の過酸化水素(35%水溶液)が、よく撹拌されながら4時間に亘りこの混合物に滴下される。室温で12時間撹拌された後、析出した沈殿物はろ過される、得られた固形物は、水で中性になるまで洗浄され、引き続きエタノールで洗浄され、減圧下乾燥され、最後に2度DMSO(約3ml/g)から再結晶化される。収量:54.5g(理論値の64.7%)、H-NMRによると約96%
c)1-(4-メチルナフト-1-イル)-7-(6-フェノキシ)ピレン(H5)の合成
【化16】

【0069】
調製は例1と類似。9-ブロモ-10-(4-メチルナフト-1-イル)アントラセンに代えて、47.6g(113ミリモル)の1-ブロモ-6-(4-メチルナフト-1-イル)-ピレンが使用される。NMP(3ml/g)から再結晶化。昇華:P=5×10−5mbar、T=380℃。収量:20.3g(理論値の41.3%)、HPLCによると99.8%。
【0070】
例6:OLEDの製造
OLEDが、WO 04/058911に記載される一般的プロセスにより製造されるが、これは、個々の場合において、特別な状況(例えば、最適な効率と色を達成するための層の厚さの変化)に適合される。
【0071】
種々のOLEDの結果が、以下の例7乃至12に示される。使用された基本構造と材料は(発光層を除いて)、より良い比較のために全ての例で同一である。上記の一般的プロセスと同様にして、以下の構造を有するOLEDが製造される。
【0072】
正孔注入層(HIL):20nmのPEDOT(水からスピンコーティング;H.C.シュターク、ゴスラー、独国(H.C.Starck,Goslar)社から購入;ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン))、
正孔輸送層(HTL):10nmの2,2’,7,7’-テトラキス(ジ-para-トリルアミノ)-スピロ-9,9’-ビフルオレン(HTL-1と略称する)、
正孔輸送層(HTL):30nmのNPB(N-ナフチル-N-フェニル-4,4’-ジアミノビフェニル)、
発光層(EML):材料、濃度、膜厚については表1参照、
電子伝導体(ETC):20nmAlQ(SynTecから購入したトリス(キノリナト)アルミニウム(III)、
陰極:150nmのAl上の1nmLiF。
【0073】
これらのOLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、効率(cd/Aで測定)、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としてのパワー効率(Im/Wで測定)、および寿命が測定される。寿命は、1000cd/mの初期輝度が、半分にまで低下した時間として定義される。
【0074】
表1は、いずれの場合も示された層の厚さを含むEMLの組成と共に、母体材料H0(比較例)及びH1乃至H5(本発明の実施例)を含むいくつかのOLED(例7乃至12)の結果を示す。母体材料H0は、9,10-ビス(1-ナフチル)アントラセンであり、すべての例で使用されたドーパントは、以下に示すD1である。
【化17】

【0075】
これらOLEDに対するドープ度、即ち母体材料に対するドープ割合は、5%で一定に保たれる。
【表1】

【0076】
表1の例から見て取れるように、本発明によるトリスチルベンアミン誘導体は、先行技術による母体材料H0と比較して、より良い色座標と改善された効率と非常に改善された寿命を有する青色発光を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、陰極及び下記式(1)の少なくとも一つの化合物を含む、少なくとも一つの有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】

ここで、上記式中の記号は下記の意味である
Ar、Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上のR基により置換されていてもよい芳香族環系若しくは複素環式芳香族環系であり、;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上のR基により置換されていてもよい少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合アリール若しくは複素環式アリール基であり、
Xは、出現毎にO、S、Se若しくはTeであり、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、Cl、Br、I又は1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ鎖又は3〜40個のC原子を有する分岐又は環状アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ鎖(ここで各鎖は、夫々はRにより置換されていてもよく、そしてここで、1以上の隣接しないC原子は、N-R、O、S、O-CO-O、CO-O、Si(R、CO、CO-N(R、-CR=CR-若しくは-C≡C-で置き換えられていてもよく、また加えて、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I若しくはCNで置換されていてもよい)、又は1以上のR基により置換されていてもよい芳香族系若しくは複素環式芳香族系、又は、これらの系の2、3、4個の組み合わせであり、2以上のR基は、ここでまた互いに更なるモノ若しくはポリ環状、脂肪族又は芳香族環系を形成してもよく、
は、出現毎に同一であるか異なり、H若しくは1〜20個のC原子を有する脂肪族又は芳香族基であり、
但し、Ar、Ar、Ar基の多くて一つがアントラセンであり、更に、Arがアントラセンであるならば、Ar-X基は2位に結合していないものである。
【請求項2】
式(1)の化合物が70℃より大きいガラス転移点Tを有することを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
縮合アリール若しくは複素環式アリール基Arが、3、4、5若しくは6個の芳香族若しくは複素環式芳香族単位を含み、それらは、それぞれの場合において、1以上の共有の辺により互いに縮合し、共通の芳香族系を形成し、Rにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよいことを特徴とする請求項1若しくは2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
Arで互いに縮合された芳香族若しくは複素環式芳香族単位は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、及びピリダジンより選択され、夫々は、Rにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよいことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
縮合アリール若しくは複素環式アリール基Arは、アントラセン、アクリジン、フェナントレン、フェナントロリン、ピレン、ナフタセン、クリセン、ペンタセン及びペリレンからなる群より選択され、夫々は、随意にRにより置換されていてもよいことを特徴とする請求項4記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
式(1)の化合物が式(2)乃至(14)の化合物より選択され、夫々は、Rにより置換されていてもよく、ここで使用される記号は請求項1で記載された意味と同じ意味を有することを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化2】

【請求項7】
Ar及びAr基は、出現毎に同一であるか異なり、5〜16個の芳香族環原子を有する単純若しくは縮合アリール若しくは複素環式アリール基又はスピロビフルオレンであることを特徴とする請求項1乃至6何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
X基が、O若しくはSを表すことを特徴とする請求項1乃至7何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
発光層とは別に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び/又は電子注入層より選択される1以上の更なる層をも含むことを特徴とする請求項1乃至8何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
式(1)の化合物が、ドーパントを併用して発光層として使用されることを特徴とする請求項1乃至9何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
ドーパントが、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン及びアリールアミンのクラスより選択されることを特徴とする請求項10記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
式(1)の化合物の割合が、混合物中1〜99.9重量%であることを特徴とする請求項10或いは11記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機光放出トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子、または有機レーザー(O-laser)の群より選択されることを特徴とする、請求項1項による1以上の式(1)の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
式(1a)の化合物。
【化3】

ここで、上記式中の記号は下記の意味である
Ar、Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上のR基により置換されていてもよい芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であり、2つの基Ar及び/又はArの少なくとも1つは、縮合アリール若しくは複素環式アリール基或いはスピロビフルオレンを含み;
その他の記号は請求項1で定義されるものであるが、但し、Ar、Ar、Ar基の多くて一つがアントラセンであり、更に、Arがアントラセンであるならば、Ar-X基は2位に結合していないものである。
【請求項15】
縮合アリール若しくは複素環式アリール基Ar若しくはArは、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、アントラセン、アクリジン、フェナントレン、フェナントロリン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ペンタセン及びペリレンからなる群より選択されるものであるが、但し、Ar、Ar、Ar基の多くて一つがアントラセンであることを特徴とする請求項14記載の化合物。
【請求項16】
縮合アリール若しくは複素環式アリール基Ar及び/又はArは、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、アントラセン、フェナントレン、ピレン及びペリレンからなる群より選択されるものであるが、但し、Ar、Ar、Ar基の多くて一つがアントラセンであることを特徴とする請求項15記載の化合物。
【請求項17】
Ar基は、R基により置換されていてもよい少なくとも一つの縮合アリール若しくは複素環式アリール基を含むことを特徴とする請求項14乃至16記載の化合物。
【請求項18】
Ar及びAr基は、夫々がR基により置換されていてもよい少なくとも一つの縮合アリール若しくは複素環式アリール基を含むことを特徴とする請求項17記載の化合物。
【請求項19】
1以上の請求項14乃至18記載の化合物の、有機電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子への使用。

【公表番号】特表2008−536320(P2008−536320A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505760(P2008−505760)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002532
【国際公開番号】WO2006/108498
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】