説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】りん光を発する有機EL素子において、高発光効率を得る。
【解決手段】りん光を発する発光材料を含む発光層14と、該発光層14を挟んで該発光層14にそれぞれ隣接して配置された第1および第2の隣接層13、15とを含む複数の層11〜16が、電極11、17間に積層されてなる有機エレクトロルミネッセンス素子1において、発光材料の第1励起3重項エネルギーレベルが、第1および第2の隣接層を構成する複数の材料の第1励起3重項エネルギーレベルうち最も低いエネルギーレベルよりも高くなる層構成とし、発光層14の近傍に、発光層14からの発光光によるプラズモン共鳴を表面に生じせしめる金属部材20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界の印加により発光を生じる電界発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)に関し、特に、りん光を発する発光層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、陰極、陽極間に電子輸送層、発光層、正孔輸送層などの複数層が積層されてなり、電極間に電圧をかけることにより、それぞれの電極から電子、正孔が注入され、それらが発光層で結合して、発光する。
【0003】
有機EL素子においては、正孔と電子との再結合により、発光層の発光材料が励起されて、励起子が生成される。理論的に第1励起1重項エネルギーレベル(以下、「S1レベル」という。)の励起子生成効率は25%、第1励起3重項エネルギーレベル(以下、「T1レベル」という。)の励起子生成効率は75%である。S1レベルから基底状態に戻る際に生じる発光が蛍光であり、T1レベルから基底状態に戻る際の発光がりん光である。T1レベルはS1レベルより低いことから、項間交差を促進することで、原理的には、T1の生成効率を、理論限界の75%から100%に上昇しうる。
【0004】
すなわち、理論的には蛍光よりもりん光を用いることにより、発光効率を飛躍的に大きくすることが可能である。しかしながら、現状では蛍光EL素子の実用化は進んでいるが、りん光EL素子の実用化は進んでいない。
【0005】
有機EL素子において、外部量子収率は、PL量子収率、正孔電子バランス因子、取り出し効率の積で表される。したがって、外部量子収率を高めるためには、PL量子収率、正孔電子バランス因子、取り出し効率をそれぞれ大きくなるように素子構成を設計することが求められる。
【0006】
有機EL素子は、基板上に電極層や発光層等が積層された構成をしており、一般に、発光層において発光した光を、透明電極を介して取り出している。その際、各層の屈折率の影響により、光取り出し側の層界面において臨界角以上で入射された光は、全反射して素子内に閉じ込められてしまい、外部に取り出すことができない。そのため、発光した光を高効率に取り出すことが難しく、ITO等の現在よく用いられている透明電極の屈折率の場合、その取り出し効率の上限は20%程度であると言われている。
【0007】
一方、蛍光EL、りん光ELに関わらず、実用的なEL素子としては、発光材料としてPL量子収率が1(PL発光効率100%)に近い材料が用いられるのが一般的である。
【0008】
他方、EL発光を高効率とするためには、発光層における励起エネルギーが発光層に隣接する層へ散逸しない(エネルギーが移動しない)ことが求められる。発光層から隣接層へのエネルギーの散逸により発光効率が低下するためである。
【0009】
従って、蛍光EL素子において高効率発光を得るには、発光材料のS1レベルが、隣接層の最も低いS1レベルよりも小さくなるように、発光層および隣接層を構成する材料をそれぞれ選択することが条件となる。
【0010】
また、同様にりん光EL素子において高効率発光を得るには、発光材料のT1レベルが、隣接層の最も低いT1レベルよりも小さくなるように、発光層および隣接層を構成する材料をそれぞれ選択することが条件となる。
【0011】
現在実用化が進んでいる蛍光EL素子においては、発光材料の励起レベルを、隣接層の励起レベルより低くするという条件を比較的容易に満たすことができ、発光層の隣接層を構成する電荷輸送に適する材料として、蛍光発光材料のS1レベルより高いS1レベルを有する材料が用いられている。
【0012】
なお、蛍光EL素子においては、その発光効率を高めるため、蛍光発光層の近傍(たとえば数10nm)に金属を配置することで、発光の増強を図るプラズモン増強法が非特許文献1および2等に提案されている。この発光の増強は、発光素子からの双極子放射が金属表面にプラズモン(あるいは局在プラズモン)を誘起し、エネルギーを吸収したのちに、再放射する新たな発光が加わることに伴うものである。しかしながら、上述のとおり現状の実用的な蛍光EL素子においては、PL量子収率が1に近い蛍光発光材料を用いるのが一般的であり、正孔電子バランス因子を大きくするための条件を満たしていることから、プラズモン増強法を適用しても、発光効率増加の効果はほとんど得られない。
【0013】
一方、りん光EL素子、特に青、緑のりん光EL素子においては、駆動電圧、耐久性などの観点から実用性が高い正孔輸送層、電子輸送層の材料のT1レベルが低い(光波長換算で緑よりも長波長である)ために、りん光発光材料のT1レベルを、隣接層のT1レベルより低くするという条件を満たすのが困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Journal of Modern Optics(米国) vol. 45, pp.661-699, 1998
【非特許文献2】Proc. SPIE (米国) Vol.7032, 703224(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
既述の通り、りん光EL素子においては、りん光発光材料のT1レベルを、隣接層のT1レベルより低くするという条件を満たすのが困難であり、そのために、高い発光効率を得ることができず、これがりん光EL素子の実用化の障壁となっている。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い発光効率を実現することができる、りん光を生じる有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、りん光を発する発光材料を含む発光層と、該発光層を挟んで該発光層にそれぞれ隣接して配置された第1および第2の隣接層とを含む複数の層が、電極間に積層されてなる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光材料の第1励起3重項エネルギーレベルが、前記第1および第2の隣接層を構成する複数の材料の第1励起3重項エネルギーレベルうち最も低いエネルギーレベルよりも高く、
前記発光層の近傍に、前記発光層からの発光光によるプラズモン共鳴を表面に生じせしめる金属部材を備えていることを特徴とするものである。
【0018】
前記金属部材と前記発光領域との距離は、30nm以下であることが望ましい。
【0019】
前記金属部材は、前記複数の層の間に配置された金属膜であることが望ましい。金属膜としては、ベタ膜であってもよいし、粒状膜(発光光の波長よりも小さい凹凸構造を有する膜)であってもよいが、特には、粒径5nm以上の金属微粒子をランダムに、あるいは周期配列パターンに膜状に分散されてなるアイランド構造膜が特に望ましい。ここで、粒径は、微粒子の最大長をいうものとする。すなわち、微粒子が球状である場合にはその直径、該微粒子の長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1より大きい細長い形状(ロッド状)の微粒子の場合にはその長径をいう。
【0020】
前記金属膜の材料としては、前記発光光によりプラズモン共鳴が生じる材料であればよく、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Pt(白金)などの金属、およびこれらの金属を主成分とする合金を用いることができる。なおここで、「主成分」は、含量80質量%以上の成分と定義する。
これらの材料のうち、AgまたはAuが、特に望ましい。
【0021】
また、前記金属膜の少なくとも一方の面に、該金属膜の仕事関数を、該金属膜に隣接する層の仕事関数に近づける極性を有する末端基を備えた表面修飾が施されていることが望ましい。金属膜の仕事関数が、該金属膜の両側の隣接層の仕事関数より小さいものである場合は(陰極側)、前記末端基は電子供与性基であり、該金属膜の両側の隣接層の仕事関数より大きいものである場合は(陽極側)、前記末端基は電子吸引性基となる。
【0022】
極性を有する末端基とは、電子供与性を有する電子供与基、あるいは電子吸引性を有する電子供与基をいい、電子供与基としては、メチル基等のアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基などが挙げられ、電子吸引基としては、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基などが挙げられる。
【0023】
また、前記金属部材は、少なくとも1つの金属微粒子コアと、該金属微粒子コアを覆う絶縁体シェルとからなるコアシェル型微粒子であってもよく、コアシェル型微粒子は、発光領域近傍の層内に多数分散されていることが好ましい。ここで、コアシェル型微粒子は発光領域内に存在していてもよい。コアシェル型微粒子の金属微粒子コアの粒子径は、10nm以上1μm以下が好ましく、絶縁体シェルの厚みは、30nm程度以下程度が好ましい。ここで、「粒子径」とは、微粒子の最大径の大きさとする。
【0024】
また、前記コアシェル型微粒子又は前記金属微粒子が、該微粒子の長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1より大きい細長い形状(ロッド状)の微粒子である場合は、多数の該細長い形状の微粒子が、該微粒子の短径が前記電極面に対して略垂直方向に配向性を有して配置されていることが好ましい。
絶縁体シェル内には複数の金属微粒子コアを備えていてもよい。
【0025】
前記金属微粒子コアは、Au、Ag,Al、Cu,Ptのいずれか、もしくはこれらを主成分とする合金からなることが好ましい。
前記絶縁体シェルの材料としては、SiO、Al、MgO、ZrO、PbO,B、CaO、BaO等の絶縁体を好適に用いることができる。
【0026】
また、本発明の有機EL素子は、前記複数の層が、該素子内に前記発光層からの発光光による定在波の電界強度が最大となる領域が、前記発光層と略一致するような共鳴条件を満たす層厚と屈折率とを有するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明のりん光を発する有機EL素子においては、発光材料の第1励起3重項エネルギーレベルが、発光層に隣接する第1および第2の隣接層を構成する複数の材料の第1励起3重項エネルギーレベルうち最も低いエネルギーレベルよりも高く構成されているけれども、発光層の近傍に、発光層からの発光光によるプラズモン共鳴を表面に生じせしめる金属部材を備えていることから、発光層からの双極子放射が金属表面にプラズモン(あるいは局在プラズモン)を誘起し、エネルギーを吸収したのちに、再放射する新たな発光が加わることに伴い発光効率を向上させることができる。すなわち、発光素子の持つ発光過程に新たなプラズモンによる発光遷移が付け加わった形となり、励起子寿命を短縮する効果を発現させることができ、発光層における励起エネルギーが隣接層に散逸してしまう前に、りん光発光として取り出すことができ、発光効率を向上させることができる。
【0028】
従って、緑、青色りん光など、発光材料の第1励起3重項エネルギーレベルを、発光層に隣接する第1および第2の隣接層を構成する複数の材料の第1励起3重項エネルギーレベルうち最も低いエネルギーレベルよりも高くせざるを得ない素子において、従来よりも高効率な発光を可能とし、緑、青色りん光の実用化を図ることができる。
【0029】
なお、隣接層への励起エネルギーの散逸が抑制されることにより、発熱も同時に抑制されて素子の耐久性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる有機EL素子の構造を示す模式図
【図2】本発明の第2実施形態にかかる有機EL素子の構造を示す模式図
【図3】図2の有機EL素子の仕事関数調整膜を説明するための図
【図4】本発明の第3実施形態にかかる有機EL素子の構造を示す模式図
【図5】本発明の第4実施形態にかかる有機EL素子の構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0032】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)1の構造を模式的に示す図である。
本実施形態の有機EL素子1は、基本的に陽極11、正孔注入層12、正孔輸送層13、発光層14、電子輸送層15、電子注入層16、陰極17という標準的なEL素子構造を有している。発光層14は、りん光を発する発光材料を含むものであり、陽極11、陰極17から注入された正孔、電子が発光層14再結合することにより、りん光を発する。
【0033】
発光層14に含まれる発光材料は、りん光を発するものであればよいが、特に室温でのPL量子収率が1に近いものを用いることが好ましい。なおここで、PL量子収率が1〜0.8のものを、1に近いとしている。具体的には、IrまたはPtを有する金属錯体を好適に用いることができ、例として以下のような化合物が挙げられる。
【化1】

【0034】
また、本素子1において、発光層14の発光材料の第1励起3重項エネルギーレベル(T1レベル)は、発光層14に隣接する正孔輸送層13、電子輸送層15、を構成する材料のT1レベルのうち最も低いT1レベルよりも高いものとする。一般に正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ1つもしくは2以上の材料により構成されており、材料毎に固有のT1レベルを有している。隣接する層に発光材料のT1レベルよりも低いT1レベルを有する材料が1つでもあれば、発光層の励起エネルギーの隣接層への散逸しやすい構成といえる。なお発光層のT1レベルは、隣接する層13、15を構成する全ての材料のT1レベルよりも大きいものであってもよい。
【0035】
上記条件を満たす、実用的な正孔輸送層13の材料としては、NPD、2TNATAなどを用いることができ、実用的な電子輸送層15の材料としては、BAlq、Alq3などを用いることができる(後記実施例における化学式を参照。)。
なお、ここでいう「実用的な材料」とは、EL素子に適用された場合に、素子の駆動電圧、発光効率、および駆動耐久性のすべての点で大きく劣ることのない材料のことであり、これまでの有機EL研究開発の知見の積み重ねの中で見出されてきた材料である。
【0036】
さらに、本素子1には、発光領域(発光層14)の近傍に、発光光によりプラズモン共鳴を生じる金属部材としての金属膜20が配置されている。金属膜20が反射材とならないためにも、その厚みは薄い方が好ましい。また、金属膜20は、発光層14と接触あるいは、5nm未満の距離dで近接していると、発光層14から直接電荷移動が生じ、発光の減衰が生じてしまうため、発光層14とは5nm以上離間していることが望ましい。また、一方で、発光層14から距離が離れすぎると、発光光によるプラズモン共鳴が生じず、発光増強効果を得ることができないため、発光層14との距離dは30nm以下であることが望ましい。
【0037】
また金属膜20は、平坦な膜でもよいが、発光光の波長よりも小さい凹凸構造を有する膜、すなわち、表面が粒状の粒状膜、あるいは、粒径5nm以上の金属微粒子を膜状にランダムに、あるいは周期的な配列パターン状に分散させてなる、微粒子間に空隙が存在するアイランド(島状)構造膜が好適である。金属膜が平坦な膜である場合、発光光により金属膜表面に表面プラズモンが誘起されるが、放射モードへの再結合が生じにくく、非放射過程として、最終的には熱として消失してしまう割合が大きい。一方、金属膜がアイランド構造膜である場合、発光光により膜表面に誘起された表面プラズモンが、再度、放射モードに結合し、放射光を発する効率が高い。
【0038】
金属膜の材料としては、発光光によりプラズモン共鳴が生じるものであればよく、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)、Al(アルミ)、およびこれらの金属のいずれかを主成分(80%以上)とする合金が適用可能である。なお、特に、発光光が可視域波長であれば、銀が望ましい。プラズマ周波数から、銀は可視域での表面プラズモン共鳴が起こせるためである。発光光が可視域以外の波長、たとえば赤外であれば、金が望ましい。
【0039】
なお、上述のようなEL素子は、例えば、基板上に陰極側から順次積層されて、陽極側から光が取り出させるように構成される。金属膜以外の各層については、従来の有機EL素子の製造において用いられている積層方法により形成することができる。なお、金属膜は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法などを用いて形成することができる。
【0040】
本素子1は、発光層14の発光材料のT1レベルが、発光層14に隣接する正孔輸送層13、電子輸送層15、を構成する材料のうち最もT1レベルが低い材料のT1よりも大きいために、発光層14における励起エネルギーが発光材料のT1レベルから該T1レベルより低いT1レベルの材料を含む隣接層(正孔輸送層13および/または電子輸送層15)へと散逸しやすい層構成である。しかしながら、本素子1は、プラズモン共鳴を生じる金属膜を備えているので、励起子寿命を短縮させ、りん光としての発光を促進させることができ、励起エネルギーが隣接層に散逸するのを抑制することができる。すなわち、金属膜20を備えたことにより、励起エネルギーの散逸を抑制して、発光効率を向上させることができる。また、同時に、励起寿命の短縮化による耐久性の向上効果も期待できる。
【0041】
<第2の実施形態>
第2の実施形態の有機EL素子2の構成を図2に模式的に示す。なお、図2には、各層のポテンシャルエネルギーを併せて示している。なお、以下の本実施形態においては、第1の実施形態の有機EL素子1と同等の層には同符号を付し詳細な説明は省略する。
【0042】
本実施形態の有機EL素子2は、電子注入層16を備えていない点、および金属膜20の片面に仕事関数調整層25が設けられている点が第1実施形態の有機EL素子1と異なる。仕事関数調整層25は、金属膜20の仕事関数を、該金属膜20に隣接する層(ここでは、電子輸送層15)の仕事関数に近づける極性の末端基を備えた表面修飾層である。
【0043】
図2において、黒丸(●)は電子e、白丸(○)は正孔hを示している。図2に示すように、一般に、各層は、陽極11側および陰極17側から発光層14に向けて仕事関数が連続的に変化するように配置されるが、電子輸送層15中に挿入されている金属膜20は、電子輸送層15に比べて仕事関数が大きく(ポテンシャルエネルギーが低く)、電界印加時に電子トラップとなってしまい、電子の流れを阻害して発光層14における再結合ができず、発光がうまく生じなくなる恐れがある。
【0044】
ここで、仕事関数調整層25は、金属膜20が電子トラップするのを抑制する機能を有する。仕事関数調整層25により、金属膜20の実効的な仕事関数を小さく(ポテンシャルエネルギーを高く)させて、すなわち図2において、金属膜20の本来のエネルギーレベルE0を、実効的にエネルギーレベルE1へと変化させて、電子eが金属膜20にトラップされず発光層側へと移動するようにさせる。
【0045】
図3は、仕事関数調整層25の例を示すものである。ここで、金属膜20がAuからなるものとしている。仕事関数調整層25は、図3に示すように、極性を有する末端基を備えたチオールやジスルフィドがAu反応してAu膜表面に結合して形成されたSAM膜(自己組織化単分子膜)である。図3には、チオール基のパラ位にメチル基を有するベンゼンチオール(チオフェノール)のSAM膜の例が示してある。
【0046】
メチル基のようなアルキル基は電子供与性基であり、かかる末端基を有する場合、その電子供与性によりAuのポテンシャルエネルギーは高められ、仕事関数を小さくすることができる。電子供与性基としては、メチル基等のアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基などが挙げられる。
【0047】
仕事関数調整層25は、Au膜を形成後、一般的なSAM作製法により形成することができるが、特に、塗布法等の液相法や、蒸着法、スパッタ法を用いることができる。仕事関数調整層は、金属膜20の片面のみならず、両面に備えていてもよい。
【0048】
ここでは、金属膜20を電子輸送層15中に備えた例を挙げたが、陽極側の正孔輸送層13中に金属膜20を備えていてもよい。その場合、金属膜20の仕事関数は、正孔輸送層13の仕事関数よりも小さい(ポテンシャルエネルギーが高い)ため、正孔輸送層13の仕事関数に近づけるようにポテンシャルエネルギーを低くするための仕事関数調整層を金属膜の少なくとも片面に備えればよい。この場合、仕事関数調整層は、その末端基として、図3に示す電子供与基に代えて、電子吸引基を備えることにより、実効的なポテンシャルエネルギーを低くすることができ、金属膜20の仕事関数を正孔輸送層13のものに近づけることができる。電子吸引基としては、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基などが挙げられる。
【0049】
このように、金属膜の仕事関数を調整するための仕事関数調整層(極性分子膜)25を備えているため、電界印加時に電荷の移動に対する金属膜による弊害を抑制することができる。したがって、プラズモン増強に伴う、りん光発光効率の向上、素子耐久性の向上をより効果的に実現することができる。
【0050】
なお、有機LEDにおいて、金属電極とショットキーバリアを形成する有機ポリマーとの仕事関数を調整するために、電子供与性基を備えたSAMにより金属表面を修飾することが、“Tuning the Work Function of Gold with Self-Assembled Monolayers Derived from X-[C6H4-C≡C-]nC6H4-SH(n=0,1,2; X=H,F,CH3, CF3, and OCH3)”, Robert W. Zehner et al, Langmuir 1999, 15, p.1121-1127, に記載されている。また、「戸田徹他、日本写真学会誌、70、38(2007)」には、金や銀のエネルギーレベルを、金属表面を電子供与性基や電子吸引性基により修飾することにより調整して電子の流れを制御することが記載されている。
【0051】
金属膜のエネルギーレベルを調整するだけであれば、上記文献に記載の技術を、金属膜に対して適用すればよいが、そのまま適用するだけでは、プラズモン共鳴による発光効率の向上効果を阻害する可能性がある。本発明者らは、プラズモン共鳴による発光効率の向上効果を充分に活かしたまま、金属膜のエネルギーレベルを調整する構成を見出し、耐久性を低下させることなく高発光効率を実現するエレクトロルミネッセンス素子を実現した。
【0052】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態の有機EL素子3の構成を図4に模式的に示す。
本実施形態の有機EL素子3は、図4に示すように、透光性基板10上に、陽極11、正孔輸送層13、発光層14、電子輸送層15、陰極17を備えている。ここでは、金属微粒子コア42と、該金属微粒子コア42を覆う絶縁体シェル41とからなるコアシェル型微粒子40が、発光光によりプラズモン共鳴が生じせしめる金属部材として、正孔輸送層13内に多数分散されている。ここで、絶縁体シェル41は発光光に対して透光性を有する材料からなる。ここで、透光性とは、発光光の透過率が70%以上であることとする。
【0053】
透光性基板10としては特に制限なく、ガラス、石英、ポリマー等の可撓性基板を用いることができる。
【0054】
コアシェル型微粒子40は、発光光によりプラズモン共鳴を生じうるように発光領域(発光層14)の近傍に配置されている。コアシェル型微粒子40は、内包されている金属微粒子コア42が、発光光によるプラズモン共鳴が生じる領域に配置されていれば、その配置される場所は特に制限されない。ただし、発光層14から金属微粒子コア42までの距離が離れすぎると、発光光によるプラズモン共鳴が生じにくくなり、効果的な発光増強効果を得ることができないため、金属微粒子コア42の表面と発光層14との距離dは30nm以下であることが望ましい。本実施形態の有機EL素子では、金属微粒子コア42が絶縁体シェル41で覆われているので、発光層14中に配置することもできる。
【0055】
金属微粒子コア42の材料としては、発光光によりプラズモン共鳴が生じるものであればよく、Ag(銀)に限らず、第1の実施形態の金属膜と同様に、Au(金)、Cu(銅)、Al(アルミ)、Pt(白金)およびこれらの金属のいずれかを主成分(80%以上)とする合金が適用可能である。
【0056】
一方、絶縁体シェル41の材料としては、SiO、Al、MgO、ZrO、PbO,B、CaO、BaO等の絶縁体を好適に用いることができる。
【0057】
既述の通り、積層体内に金属部材が挿入された場合、その金属部材が電荷の移動を妨げる恐れがある。本実施形態においては、これを防止するため、金属部材として、コアシェル型微粒子40を用いたものである。コアシェル型微粒子40は、金属微粒子コア42として、たとえば、Ag微粒子を、絶縁体シェル41としてSiO2などの誘電体を用いて形成される。プラズモン共鳴に寄与する金属微粒子コア42は、絶縁体シェル41で覆われているため、両電極間に電界を印加した場合にも、電荷(電子もしくは正孔)が導電体であるAgにトラップされず、電荷の流れを阻害することはなく、発光層はプラズモン共鳴の効果を得ることが出来る。したがって、プラズモン増強に伴う、りん光発光効率の向上、素子耐久性の向上をより効果的に実現することができる。
【0058】
本実施形態のEL素子3の製造方法の例を簡単に説明する。
透明基板30上に蒸着により、ITO等の透明電極からなる陽極11を形成する。コアシェル型微粒子40としては、粒径50nmのAg微粒子42を厚み10nmのSiO241でコートしたものを用いる。次いで、正孔輸送材料であるトリフェルジアミン誘導体(TPD)を溶解させたジクロロメタン中に、コアシェル型微粒子40を分散させ、スピンコート法により陽極11上に塗布することにより、コアシェル型微粒子40が分散された正孔輸送層13を形成する。次いで、発光層14、電子輸送層15を蒸着により形成し、最後に陰極17を形成する。
【0059】
上記実施形態においては、コアシェル型微粒子40が、正孔輸送層13に分散されてなる素子としたが、コアシェル型微粒子40は、電極間の、発光光によるプラズモン共鳴を生じる領域であればどの層中に配置されてもよい。特には、発光層内に存在させることにより、より効果的にプラズモン共鳴を生じさせることができ、好ましい。
【0060】
図4においては、コアシェル型微粒子40が多数存在する場合について示したが、その数は1つであってもプラズモン共鳴による発光効率増強の効果は得ることができる。
【0061】
また、図4では、絶縁体シェル41内に1つの金属微粒子コア42を備えた構成について示したが、絶縁体シェル41内に複数の金属微粒子コア42を備えたコアシェル型微粒子としてもよい。
【0062】
コアシェル型微粒子40の金属微粒子コア42の粒子径は、局在プラズモンを誘起可能な大きさであれば特に制限されないが、発光光の波長以下の大きさであることが好ましく、特に、10nm以上、1μm以下が好ましい。
【0063】
絶縁体シェル41の厚みは、発光光による金属微粒子コア42における局在プラズモンの誘起を阻害しない膜厚であることが好ましい。発光層14における発光光による局在プラズモンの誘起を効果的に得るためには、発光層14と金属微粒子コア表面との距離が30nm以下であることが好ましいことから、コアシェル型微粒子40の配置される位置と層構成、そして絶縁体シェル41の厚みはより効果的なプラズモン共鳴が得られるように設計されることが望ましい。ここで絶縁体シェル41の厚みとは、金属微粒子41が絶縁体シェル41の内部に1つだけ含まれている構成では、絶縁体シェル41の表面と金属微粒子コア表面との平均距離とする。絶縁体シェル内には複数の金属微粒子コアを備えている場合には、絶縁体シェルの表面と各金属微粒子コアの表面との最短距離の平均値を絶縁体シェルの厚みとする。
【0064】
また、その他の好適な実施形態としては、コアシェル型微粒子40として、微粒子の長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1より大きい、所謂細長い形状の微粒子を多数用い、多数の該細長い形状のコアシェル型微粒子が、微粒子の短径が電極面に対して略垂直方向に配向性を有して配置された有機EL素子が挙げられる。
かかる構成とすることにより、細長いコアシェル型微粒子の形状異方性により、光取り出し面側に強い散乱光を得ることができ、より高い取出し効率を得ることが可能となる。
【0065】
また、別の好ましい実施形態としては、発光層14内部に金属微粒子コア42が入り込むように径の大きなコアシェル型微粒子40を配する構成が挙げられる。既に述べたように、金属微粒子コア42を発光層14内に存在させることにより、より効果的にプラズモン共鳴による発光遷移を得ることができる。
【0066】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態の有機EL素子4の構成を図5に模式的に示す。
本実施形態の有機EL素子4は、第1の実施形態の有機EL素子1とほぼ同様の層構成であるが、陰極17および陽極11が発光光を反射する反射部であり、両端間に光共振器を構成する役割も担っている点、および、金属膜20が正孔輸送層13中に設けられている点が異なる。
【0067】
本実施形態の素子においては、陰極17をAg(銀)、陽極11をCu(銅)から構成することにより、この電極11、17間に定在波19を生じさせ、発光光の指向性の向上効果を生じさせることができる。さらに、発光層14と定在波の腹19aを一致させることにより、発光層14において電界強度を最大とすることができ、発光効率を最大にできる。このようなマイクロキャビティ効果を奏するための共鳴条件は、下記式で与えられ、各層12〜16は下記式を満たす屈折率および厚みを有するものとなるように設計されている。なお、下記式において、λ0は発光光の波長、niは各層における屈折率、diは各層の厚み、φおよびφはそれぞれ、陽極11、陰極17での反射による位相差、mはキャビティ次数である。
【数1】

【0068】
図5のようなマイクロキャビティ型の有機EL素子において、電界強度が最大となる、定在波の腹(ピーク)から10%以内の位置に発光層14、該発光層14からおよそ20nm離間させた位置に、金属膜20を配置する。このように、金属膜も、定在波の腹に近い位置、すなわち定在波による電界強度の大きい位置に配置することにより、プラズモン共鳴の効果をより効率的に得ることができ、望ましい。本実施形態の設計においては、キャビティ次数m=1を採用している。
かかる構成により、マイクロキャビティ効果とプラズモン増強による効果が重畳されて、発光効率の向上、指向性の向上、さらには耐久性向上の効果をより顕著に得ることができる。
【0069】
上述の通り、本実施形態の素子4においては、電極11、17を金属により構成し、電極間にキャビティを構成することにより素子内部に定在波を形成させている。キャビティの反射部を構成する電極11、17の発光光に対する反射率は定在波が形成されるに十分なものであればよい。なお、本実施形態においては、光を取り出す側の電極(ここではCu陽極11)の厚みを調整し、反射率が例えば30%程度となるようにしている。なお、Ag陰極17側の反射率は90%以上の高反射率でよい。また、電極として透明電極を備え、電極の外側にさらに反射層を設けてもよい。反射層は、適切な反射率を有する金属、あるいは誘電体多層膜から構成することができる。
【0070】
なお、先に説明した第1から第3の実施形態のEL素子においても、電極11、17間をキャビティとして素子内に定在波が生じるよう構成し、発光層14と定在波の腹を略一致させ、各層を、上述の共鳴条件を満たす屈折率および厚みを有するものとなるように設計することにより、プラズモ増強による効果とマイクロキャビティ効果とを重畳的に得ることができる。
【実施例】
【0071】
上述の第1の実施形態の有機EL素子1(図1参照)についての実施例および比較例を説明する。
【0072】
「実施例1」
実施例1のEL素子は、ITO陽極11、2TNATA+0.3%F4TCNQ(120nm)正孔注入層12、NPD(10nm)正孔輸送層13、CBP-10%Ir(ppy)3(30nm)発光層14、BAlq(10nm)電子輸送層15、Ag(14nm)金属膜20、BAlq(20nm)電子輸送層15、LiF(1nm)電子注入層16、Al陰極17が順次積層してなるものとした。
発光層14の発光材料はIr(ppy)3であり、そのT1レベルは2.5eVである。金属膜20は、電子輸送層15中に配置されてなる。正孔輸送層13を構成するNPDのT1レベルは2.3eV、電子輸送層15を構成するBAlqのT1レベルは2.3eVであり、いずれも発光材料のT1レベルより低い。
【0073】
「比較例1」
比較例1のEL素子は、上記実施例1の素子において、Ag金属膜20のないものとした。
すなわち、比較例1の素子は、ITO陽極11、2TNATA+0.3%F4TCNQ(120nm)正孔注入層12、NPD(10nm)正孔輸送層13、CBP-10%Ir(ppy)3 (30nm)発光層14、BAlq(30nm) 電子輸送層15、LiF(1nm)電子注入層16、Al陰極17が順次積層してなるものとした。
【0074】
「実施例2」
実施例2のEL素子は、ITO陽極11、2TNATA+0.3%F4TCNQ(120nm)正孔注入層12、NPD(10nm)正孔輸送層13、mCP+15%Pt1(30nm)発光層14、BAlq(10nm)電子輸送層15、Ag(14nm)金属膜20、BAlq(20nm)電子輸送層15、LiF(1nm)電子注入層16、Al陰極17が順次積層してなるものとした。
発光層14の発光材料はPt1であり、そのT1レベルは2.7eVである。金属膜20は、電子輸送層15中に配置されてなる。正孔輸送層13を構成するNPDのT1レベルは2.3eV、電子輸送層15を構成するBAlqのT1レベルは2.3eVであり、いずれも発光材料のT1レベルより低い。
【0075】
「比較例2」
比較例2のEL素子は、上記実施例2の素子において、Ag金属膜20のないものとした。
【0076】
「実施例3」
実施例3のEL素子は、ITO陽極11、2TNATA+0.3%F4TCNQ(120nm)正孔注入層12、NPD(10nm)正孔輸送層13、mCP+15%Pt2(30nm)発光層14、BAlq(10nm)電子輸送層15、Ag(14nm)金属膜20、BAlq(20nm)電子輸送層15、LiF(1nm)電子注入層16、Al陰極17が順次積層してなるものとした。
発光層14の発光材料はPt2であり、そのT1レベルは2.5eVである。金属膜20は、電子輸送層15中に配置されてなる。正孔輸送層13を構成するNPDのT1レベルは2.3eV、電子輸送層15を構成するBAlqのT1レベルは2.3eVであり、いずれも発光材料のT1レベルより低い。
【0077】
「比較例3」
比較例3のEL素子は、上記実施例3の素子において、Ag金属膜20のないものとした。
【0078】
上記実施例および比較例において用いられている各材料の詳細な化学式およびT1レベルは次に示す通りである。なお各材料のT1レベルは、77Kにおける蒸着膜のりん光スペクトルのピーク波長から求めた。
【化2】

【0079】
上記各実施例および比較例の素子について、発光ピーク波長、発光寿命、EL外部量子収率、EL駆動半減寿命をそれぞれ測定した。また、実施例(比較例)1〜3の発光層のみの膜のPL量子収率をそれぞれ測定した。それぞれについての測定方法は、次の通りである。
<発光寿命>
窒素レーザー光(波長337 nm, パルス幅1 ns)を励起光として各素子に照射し、それぞれの発光材料からの発光寿命をストリークカメラ(浜松ホトニクス社製C4334)により測定した。
<発光ピーク波長およびEL外部量子収率>
東陽テクニカ(株)製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電流を各素子に通電し、発光させた。そのときの発光スペクトルを、トプコン社製分光放射輝度計SR−3を用いて測定し、発光ピーク波長を求めた。また、得られたスペクトルをもとに、素子の電流密度が0.25mA/cm、および25mA/cmにおける外部量子効率を、波長ごとの強度換算法により算出した。
<EL駆動半減寿命>
各素子を輝度2000cd/mになる直流電流を測定し、その電流値でそれぞれの素子を連続駆動して輝度が1000cd/mになるまでの時間を測定した。
<発光層膜のPL量子収率>
実施例(比較例)1〜3の発光層のみの膜を石英基板上に製膜し、それぞれの膜のPL量子収率を、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製C9920−02)を用いて測定した。
【0080】
測定結果を下記表1に示す。
【表1】

【0081】
表1に示すように、それぞれの実施例は、対応する比較例に対して、それぞれ発光寿命が短くなり、外部量子効率が向上し、また、素子の駆動半減寿命が延びており、各特性が改善されていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のEL素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1、2、3、4 有機EL素子
11 陰極
12 電子注入層
13 電子輸送層
14 発光層
15 正孔輸送層
16 正孔注入層
17 陽極
19 定在波
19a 腹
20 金属膜(金属部材)
25 仕事関数調整層(表面修飾)
40 コアシェル型微粒子(金属部材)
41 絶縁体シェル
42 金属微粒子コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
りん光を発する発光材料を含む発光層と、該発光層を挟んで該発光層にそれぞれ隣接して配置された第1および第2の隣接層とを含む複数の層が、電極間に積層されてなる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光材料の第1励起3重項エネルギーレベルが、前記第1および第2の隣接層を構成する複数の材料の第1励起3重項エネルギーレベルうち最も低いエネルギーレベルよりも高く、
前記発光層の近傍に、前記発光層からの発光光によるプラズモン共鳴を表面に生じせしめる金属部材を備えていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記金属部材と前記発光領域との距離が、30nm以下であることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記金属部材が、前記複数の層の間に配置された金属膜であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記金属膜が、粒径5nm以上の多数の金属微粒子が膜状に分散されてなるアイランド構造膜であることを特徴とする請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記金属膜の少なくとも一方の面に、該金属膜の仕事関数を、該金属膜に隣接する層の仕事関数に近づける極性を有する末端基を備えた表面修飾が施されていることを特徴とする請求項3または4記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記金属部材が、金属微粒子コアと、該金属微粒子コアを覆う絶縁体シェルとからなるコアシェル型微粒子であることを特徴とする請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記複数の層が、該素子内に前記発光層からの発光光による定在波の電界強度が最大となる領域が、前記発光層と略一致するような共鳴条件を満たす層厚と屈折率とを有するものであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−258197(P2010−258197A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106147(P2009−106147)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】