説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】高発光効率および高寿命でかつ輝度変化に対する色度変動が小さい有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板上に、陽極と陰極と発光層を含む有機機能層とを有する。当該素子では、前記発光層を構成する層のうち、(i)最も陽極側に位置する層は、層厚が発光層全体の層厚の15%以下でかつ青色燐光ドーパント化合物濃度が40体積%以上であり、(ii)最も陰極側に位置する層は、層厚が発光層全体の層厚の50%以上でかつ青色燐光ドーパント化合物濃度が10体積%以上30体積%以下であり、(iii)最も陽極側に位置する層と最も陰極側に位置する層との間に位置する層は、青色燐光ドーパント化合物濃度が、最も陽極側に位置する層の青色燐光ドーパント化合物濃度より低く、最も陰極側に位置する層の青色燐光ドーパント化合物濃度より高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光波長の異なる複数の燐光発光性ドーパント化合物を有し、特に白色発光を呈する多色燐光発光有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(以下、ELDと略記する)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子(以下、無機EL素子ともいう)や有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)が挙げられる。
【0003】
無機EL素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。
一方、有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光する化合物を含有する発光層を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、更に自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
有機エレクトロルミネッセンス素子は、従来実用に供されてきた主要な光源、例えば、発光ダイオードや冷陰極管と異なり、面光源であることも大きな特徴である。この特性を有効に活用できる用途として、照明用光源や様々なディスプレイのバックライトがある。特に近年、需要の増加が著しい液晶フルカラーディスプレイのバックライトとして用いることも好適である。
【0004】
有機エレクトロルミネッセンス素子を、このような照明用光源、あるいはディスプレイのバックライトとして用いる場合には、白色もしくは、いわゆる電球色(以下、総合して白色と称す)を呈する光源として用いることになる。
有機エレクトロルミネッセンス素子で白色発光を得るには、(1)1つの素子中に発光波長の異なる複数の発光ドーパントを調整し、混色により白色を得る方法や、(2)多色の発光画素、例えば、青・緑・赤の3色を塗りわけ同時に発光させ、混色して白色を得る方法、(3)色変換色素を用いて白色を得る方法(例えば、青発光材料と色変換蛍光色素の組み合わせ)などがある。
低コスト、高生産性、簡便な駆動方法など、照明用光源、バックライトに求められる様々な要求から判断すると、(1)1つの素子中に発光波長の異なる複数の発光ドーパントを調整し、混色により白色を得る方法が、これらの用途には有効であり、近年、研究開発が意欲的に進められている。
【0005】
上述の(1)の方法により白色光を得る方法について、更に詳細に述べれば、(i)素子中に補色の関係にある2色の発光ドーパント、例えば、青色発光ドーパントと黄色発光ドーパントを用い混色して白色を得る方法と、(ii)青・緑・赤の3色の発光ドーパントを用い、混色して白色を得る方法とが、挙げられる。
例えば、(ii)の方法、すなわち効率の高い青、緑、赤の3色の蛍光体を発光材料としてドープすることによって、白色の有機エレクトロルミネッセンス素子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0006】
また、白色発光を呈する有機エレクトロルミネッセンス素子において、(iii)発光色の異なる層を各々別個の層にするのではなく、2色以上の発光ドーパントを1層中に共存させ、高発光エネルギーの発光ドーパントから相対的に効率の低い発光ドーパントへのエネルギー移動により、多色を発光させる方式がある。
この方式は、有機層数を削減できること、また発光ドーパントの使用量を減少できることから、白色発光の有機EL素子を得るにあたり有力な方法の1つである。例えば、特許文献3には、陽極から赤色発光層及び青色発光層が順次設けられてなり、かつ赤色発光層は少なくとも1つの緑色発光ドーパントを含有することを特徴とする有機電界発光素子が開示されている。
【0007】
ところで、近年、蛍光材料に対し、より高輝度の有機エレクトロルミネッセンス素子が得られる燐光発光ドーパントの開発が精力的に進められている(例えば、特許文献4、非特許文献1、2参照。)。
従来の蛍光材料からの発光の場合は、励起一重項からの発光であり、一重項励起子と三重項励起子との生成比が1:3であるため、発光性励起種の生成確率は25%であるのに対し、励起三重項からの発光を利用する燐光発光ドーパントの場合には、励起子生成比率と一重項励起子から三重項励起子への内部変換とにより、内部量子効率の上限が100%となるため、蛍光発光ドーパントの場合に比べ、原理的に発光効率が最大4倍となる。
【0008】
しかしながら、上述の燐光材料を使用しても、有機エレクトロルミネッセンス素子に対する効率および寿命の向上の要請に応えるには、まだ不十分であり、様々な検討の試みがなされている。
例えば、発光層中のドーパント材料を陽極側から陰極側に連続的に変化させることで寿命が向上することが開示されている。(例えば、特許文献5、6参照)。当該技術によれば、発光ドーパントの濃度を連続的に変化させる手段として明示しているのは真空蒸着法における蒸着レートの制御である為、繰り返し再現性に乏しく、生産適正として課題がある。
さらに、発光層中のドーパント材料を陽極側から陰極側に段階的に減少させることで効率および寿命が向上することも開示されている(例えば、特許文献7、8参照)。当該技術によれば、これらは青色発光または緑色発光単色系のみの構成の開示であり、例えば、上述の白色系で2色以上の発光ドーパントを1層に共存させて、段階的にドーパント濃度を変化させた場合、条件によっては輝度変化に対する色度の安定性が不十分であることが判った。
とりわけ照明光源用途においては、発光色の安定性に対する要求は厳しく、有機エレクトロルミネッセンス素子を照明光源用途に実用化するには、効率や寿命の他に、如何にして色度の安定性を確保するかが重要な課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−207170号公報
【特許文献2】特開2004−235168号公報
【特許文献3】国際公開第2004/077886号
【特許文献4】米国特許第6,097,147号明細書
【特許文献5】特開2003−229272号公報
【特許文献6】特開2004−6102号公報
【特許文献7】特開2007−227117号公報
【特許文献8】国際公開第2008/035595号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M.A.Baldo et al.,nature、395巻、151〜154頁(1998年)
【非特許文献2】M.A.Baldo et al.,nature、403巻、17号、750〜753頁(2000年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の主な目的は、発光波長の異なる複数の燐光発光ドーパント化合物を用いて白色発光を呈する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、高発光効率および高寿命でかつ輝度変化に対する色度変動が小さい有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明によれば、
基板上に、陽極と陰極と発光層を含む有機機能層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層が少なくとも3層で構成され、
前記発光層を構成する各層が、ホスト化合物と、発光極大波長が480nm未満の青色燐光ドーパント化合物と、青色以外の他色の燐光ドーパント化合物とを、含み、
前記発光層を構成する層のうち、
(i)最も陽極側に位置する層は、層厚が前記発光層全体の層厚の15%以下でかつ青色燐光ドーパント化合物濃度が40体積%以上であり、
(ii)最も陰極側に位置する層は、層厚が前記発光層全体の層厚の50%以上でかつ青色燐光ドーパント化合物濃度が10体積%以上30体積%以下であり、
(iii)最も陽極側に位置する層と最も陰極側に位置する層との間に位置する層は、青色燐光ドーパント化合物濃度が、最も陽極側に位置する層の青色燐光ドーパント化合物濃度より低く、最も陰極側に位置する層の青色燐光ドーパント化合物濃度より高いことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高発光効率および高寿命でかつ輝度変化に対する色度変動が小さい有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の有機EL素子を組み込んだ照明装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の有機EL素子を組み込んだ照明装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態にかかる白色燐光発光有機エレクトロルミネッセンス素子(以下「有機EL素子」ともいう)の各構成要素の詳細について順次説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
《有機エレクトロルミネッセンス素子の白色色度》
本発明の有機EL素子や該素子に係る化合物の発光色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)で測定した結果を、CIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
本発明における白色素子としての好ましい色度は、相関色温度が2500K〜7000K、かつCIE1931表色系おいて、各色温度での黒体輻射線上からのy値乖離が0.1以下である。
【0017】
《有機EL素子の層構成》
次に、有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
【0018】
《発光層》
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
本発明に係る発光層は少なくとも3層で構成され、発光層を構成する各層がホスト化合物と、発光極大波長が480nm未満の青色燐光ドーパント化合物と、青色以外の他色の燐光ドーパント化合物とを、含んでいる。
発光層を構成する層のうち、
(i)最も陽極側に位置する層は、層厚が発光層全体の層厚の15%以下でかつ青色燐光ドーパント化合物の濃度が40体積%以上であり、
(ii)最も陰極側に位置する層は、層厚が発光層全体の層厚の50%以上でかつ青色燐光ドーパント化合物の濃度が10体積%以上30体積%以下であり、
(iii)最も陽極側に位置する層と最も陰極側に位置する層との間に位置する層は、青色燐光ドーパント化合物の濃度が、最も陽極側に位置する層の青色燐光ドーパント化合物の濃度より低く、最も陰極側に位置する層の青色燐光ドーパント化合物の濃度より高いことを特徴とする。
更には、最も陽極側に位置する層は、層厚が発光層全体の10%以下であることが好ましく、青色燐光ドーパント化合物の濃度が60体積%以上であることが好ましい。
また、最も陰極側に位置する層は、層厚が発光層全体の層厚の70%以上であることが好ましく、青色燐光ドーパント化合物の濃度が15体積%以上25体積%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の発光層に含まれる青色以外の他色の燐光ドーパント化合物は、1種類でも数種類でも良い。
青色以外の他色の燐光ドーパント化合物は、上述の白色発光を得る上で少なくとも1種類の発光極大波長が580nm以上650nm以下の赤色燐光ドーパント化合物を含むことが好ましく、更には少なくとも1つの発光極大波長が580nm以上650nm以下の赤色燐光ドーパント化合物と、少なくとも1つの発光極大波長が500nm以上580nm未満の緑色燐光ドーパント化合物とを、含むことが更に好ましい。
また、少なくとも3層の発光層に用いられるホスト化合物、青色燐光ドーパント化合物および青色以外の他色の燐光ドーパント化合物は、同一の化合物であることが好ましい。
また、輝度変化に対する色度変動をより小さくする為に、少なくとも3層の発光層の青色以外の他色の燐光ドーパント化合物は、同一体積%で含有されることが好ましい。
青色以外の他色の燐光ドーパント化合物の含有量は特に制限は無いが、上述の白色発光が得られるように適宜調整されることが好ましい。
また、より高発光効率、高寿命で、輝度変化に対する色度変動をより小さくする為に、発光層全体の層厚(合計)は60nm以上120nm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の構成の発光層により、高発光効率および高寿命でかつ輝度変化に対する色度変動が小さい白色燐光発光有機エレクトロルミネッセンス素子が得られる。
本発明の効果をもたらす作用機構については、必ずしも解明されている訳ではなく、推測の域を出ないが、燐光発光層、特に青色発光を呈する燐光発光層はエネルギーギャップが大きく、電子または正孔等の電荷の発光層への注入に大きな障壁があることが予想される。本発明の構成はこの電荷の発光層への注入を改善しているものと期待されるが、どのような材料との組み合わせにおいても本発明の効果が得られるわけではなく、特に本発明の青色燐光ドーパント、更にはホスト化合物との組み合わせにおいて顕著な効果が得られることを見出した。
【0021】
以下、発光層に含まれる発光ドーパント化合物(単に発光ドーパントともいう)、発光ホスト化合物(単に発光ホストともいう)について説明する。
【0022】
(1)発光ドーパント
本発明に係る発光ドーパントとしては、燐光ドーパントを用いることを特徴とする。
本発明に係る燐光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にて燐光発光する化合物であり、燐光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましい燐光量子収率は0.1以上である。
上記燐光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中での燐光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係る燐光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記燐光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
燐光ドーパントの発光は原理としては2種挙げられ、1つはキャリアが輸送される発光ホスト上でキャリアの再結合が起こって発光ホストの励起状態が生成し、このエネルギーを燐光ドーパントに移動させることで燐光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型、もう1つは燐光ドーパントがキャリアトラップとなり、燐光ドーパント上でキャリアの再結合が起こり、燐光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、燐光ドーパントの励起状態のエネルギーは発光ホストの励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
【0023】
燐光ドーパントは、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、本発明においては、少なくとも1つの発光極大波長が480nm未満の青色燐光ドーパント化合物と、青色以外の他色の燐光ドーパント化合物とを、含有する。
本発明において、青色以外の他色の燐光ドーパント化合物とは、500nm以上の発光極大波長をもつ化合物を示すが、上述の如く、少なくとも1つは極大波長が580nm以上650nm以下の赤色燐光ドーパント化合物であることが好ましい。
【0024】
本発明においては、発光極大波長が480nm未満の青色燐光ドーパントは、一般式(A)〜(C)から選ばれる少なくとも1つの部分構造を有することが好ましい。
【0025】
【化1】

【0026】
【化2】

【0027】
【化3】

【0028】
一般式(A)中、「Ra」は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、「Rb」、「Rc」は各々水素原子または置換基を表し、「A1」は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、「M」はIrまたはPtを表す。
一般式(B)中、「Ra」は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、「Rb」、「Rc」、「Rb」、「Rc」は各々水素原子または置換基を表し、「A1」は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、「M」はIrまたはPtを表す。
一般式(C)中、「Ra」は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、「Rb」、「Rc」は各々水素原子または置換基を表し、「A1」は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、「M」はIrまたはPtを表す。
【0029】
一般式(A)〜(C)において、Raは水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、Raで表される脂肪族基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)が挙げられ、芳香族基としては、例えば、フェニル基、トリル基、アズレニル基、アントラニル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、o−テルフェニル基、m−テルフェニル基、p−テルフェニル基、アセナフテニル基、コロネニル基、フルオレニル基、ペリレニル基等を挙げることができ、これらの基はそれぞれ置換基を有していてもよい。複素環基としては、例えば、ピロリル基、インドリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドリジニル基、キノリニル基、カルバゾリル基、インドリニル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、チアジアジニル基、オキサジアゾリル基、ベンゾキノリニル基、チアジアゾリル基、ピロロチアゾリル基、ピロロピリダジニル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、クロマニル基等を挙げることができ、これらの基はそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0030】
一般式(A)〜(C)において、Rb、Rc、Rb、Rcが表す置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシル基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの置換基は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。
【0031】
一般式(A)〜(C)において、A1は芳香族環、芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、該芳香族環としてはベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられ、該芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の1つが更に窒素原子で置換されている環を示す)等が挙げられる。
【0032】
一般式(A)〜(C)の構造は部分構造であり、それ自身が完成構造の発光ドーパントとなるには、中心金属の価数に対応した配位子が必要である。
具体的には、ハロゲン(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子または沃素原子等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、フタラジニル基等)、一般式(A)〜(C)の金属を除いた部分構造等が挙げられる。
一般式(A)〜(C)において、MはIr、Ptを表し、特にIrが好ましい。
一般式(A)〜(C)の部分構造3個で完成構造となるトリス体が好ましい。
【0033】
以下、本発明に係る発光ドーパントの前記一般式(A)〜(C)の部分構造を持つ化合物を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
【化13】

【0044】
以下に、青色以外の多色の燐光発光性ドーパントとして用いられる化合物の具体例を示すが、これらに限定されない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
【0045】
【化14】

【0046】
【化15】

【0047】
【化16】

【0048】
【化17】

【0049】
【化18】

【0050】
(2)ホスト化合物
本発明の有機EL素子の発光層に含まれるホスト化合物とは、室温(25℃)における燐光発光の燐光量子収率が、0.1未満の化合物であることが好ましく、更に好ましくは燐光量子収率が0.01未満の化合物である。
ホスト化合物は、1種の化合物が単独で用いられてもよいし、または複数種の化合物が併用して用いられてもよい。
本発明に用いられる発光ホスト化合物としては、構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、または、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも1つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
【0051】
本発明に係る発光層に用いられる発光ホスト化合物としては、下記一般式(a)で表される化合物が好ましい。
【0052】
【化19】

【0053】
一般式(a)中、「X」は、NR′、O、S、CR′R″またはSiR′R″を表し、「R′」、「R″」は各々水素原子または置換基を表し、「Ar」は芳香環を表し、「n」は0から8の整数を表す。
【0054】
一般式(a)において、XにおいてR′、R″で各々表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、イソプロペニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の1つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0055】
一般式(a)において、好ましいXはNR′またはOであり、R′としては芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が特に好ましい。
【0056】
一般式(a)において、Arで表される芳香環としては、芳香族炭化水素環または芳香族複素環が挙げられる。また、該芳香環は単環でもよく、縮合環でもよく、更に未置換でも、後述するような置換基を有していてもよい。
一般式(a)において、Arで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。これらの環は更に置換基を有していてもよい。
一般式(a)において、Arで表される芳香族複素環としては、例えば、フラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の1つが更に窒素原子で置換されている環を示す)等が挙げられる。これらの環は更に置換基を有していてもよい。
上記の中でも、一般式(a)において、Arで表される芳香環として好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ジベンゾフラン環、ベンゼン環であり、特に好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ベンゼン環である。上記の中でも、置換基を有するベンゼン環が好ましく、特に好ましくは、カルバゾリル基を有するベンゼン環が好ましい。
また、一般式(a)において、Arで表される芳香環としては、下記に示すような、各々3環以上の縮合環が好ましい一態様であり、3環以上が縮合した芳香族炭化水素縮合環としては、具体的には、ナフタセン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、フェナントレン環、ピレン環、ベンゾピレン環、ベンゾアズレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、アセナフテン環、アセナフチレン環、トリフェニレン環、コロネン環、ベンゾコロネン環、ヘキサベンゾコロネン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フルオランテン環、ペリレン環、ナフトペリレン環、ペンタベンゾペリレン環、ベンゾペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピラントレン環、コロネン環、ナフトコロネン環、オバレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。尚、これらの環は更に、置換基を有していてもよい。
また、3環以上が縮合した芳香族複素環としては、具体的には、アクリジン環、ベンゾキノリン環、カルバゾール環、カルボリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、カルボリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭素原子の任意の1つが窒素原子で置き換わったものを表す)、フェナントロリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、チオファントレン環(ナフトチオフェン環)等が挙げられる。尚、これらの環は更に置換基を有していてもよい。
ここで、一般式(a)において、Arで表される芳香環が有してもよい置換基は、R′、R″で、各々表される置換基と同義である。
【0057】
また、一般式(a)において、nは0〜8の整数を表すが、0〜2であることが好ましく、特にXがO、Sである場合には1または2であることが好ましい。
【0058】
以下に、一般式(a)で表される発光ホスト化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0059】
【化20】

【0060】
【化21】

【0061】
【化22】

【0062】
【化23】

【0063】
【化24】

【0064】
【化25】

【0065】
【化26】

【0066】
【化27】

【0067】
また、本発明に用いるホスト化合物は、低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもいい。
ホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ、発光の長波長化を防ぎ、高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
本発明においては、少なくとも3層の発光層を有するが、ホスト化合物は発光層ごとに異なっていてもよいが、同一の化合物であることが優れた駆動寿命特性、色度安定性が得られることから好ましい。
また、前記ホスト化合物は、その最低励起3重項エネルギー(T1)が、2.7eVより大きいことがより高い発光効率を得られることから好ましい。本発明でいう最低励起3重項エネルギーとは、ホスト化合物を溶媒に溶解し、液体窒素温度において観測した燐光発光スペクトルの最低振動バンド間遷移に対応する発光バンドのピークエネルギーを言う。
本発明においては、ガラス転移点が90℃以上の化合物が好ましく、更には130℃以上の化合物が優れた駆動寿命特性を得られることから好ましい。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
本発明の有機EL素子においては、ホスト材料はキャリアの輸送を担うため、キャリア輸送能を有する材料が好ましい。キャリア輸送能を表す物性としてキャリア移動度が用いられるが、有機材料のキャリア移動度は、一般的に電界強度に依存性が見られる。電界強度依存性の高い材料は、正孔と電子注入・輸送バランスを崩しやすい為、中間層材料、ホスト材料は、移動度の電界強度依存性の少ない材料を用いることが好ましい。
【0068】
《注入層:電子注入層、正孔注入層》
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記の如く陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0069】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0070】
《阻止層:正孔阻止層、電子阻止層》
阻止層は、上記の如く有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。
【0071】
本発明の有機EL素子の正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
正孔阻止層には、前述の発光ホストとして挙げたカルバゾール誘導体を含有することが好ましい。
また、本発明においては、複数の発光色の異なる複数の発光層を有する場合、その発光極大波長が最も短波にある層が、発光層中、最も陽極に近いことが好ましいが、このような場合、該最短波層と該層の次に陽極に近い発光層との間に正孔阻止層を追加して設けることが好ましい。更には、該位置に設けられる正孔阻止層に含有される化合物の50質量%以上が、前記最短波発光層の発光ホストに対しそのイオン化ポテンシャルが0.3eV以上大きいことが好ましい。
イオン化ポテンシャルは化合物のHOMO(最高被占分子軌道)レベルにある電子を真空準位に放出するのに必要なエネルギーで定義され、例えば、下記に示すような方法により求めることができる。
(1)米国Gaussian製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian98(Gaussian98、Revision A.11.4,M.J.Frisch,et al,Gaussian,Inc.,Pittsburgh PA,2002.)を用い、キーワードとしてB3LYP/6−31G*を用いて構造最適化を行うことにより算出した値(eV単位換算値)の小数点第2位を四捨五入した値としてイオン化ポテンシャルを求めることができる。この計算値が有効な背景には、この手法で求めた計算値と実験値の相関が高いためである。
(2)イオン化ポテンシャルは光電子分光法で直接測定する方法により求めることもできる。例えば、理研計器製の低エネルギー電子分光装置「Model AC−1」を用いて、あるいは紫外光電子分光として知られている方法を好適に用いることができる。
【0072】
一方、電子阻止層とは、広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に係る正孔阻止層、電子輸送層の層厚としては、好ましくは3〜100nmであり、更に好ましくは5〜30nmである。
【0073】
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。
正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。
正孔輸送材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0074】
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更には米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、所謂p型正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることからこれらの材料を用いることが好ましい。
【0075】
正孔輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。
この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
本発明においては、このようなp性の高い正孔輸送層を用いることが、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
【0076】
《電子輸送層》
電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0077】
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0078】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0079】
電子輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。
電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いてもよい。その例としては、特開平4−297076号公報、特開平10−270172号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
本発明においては、このようなn性の高い電子輸送層を用いることがより低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
【0080】
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。
このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。
この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。
更に膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0081】
《陰極》
一方、陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第2金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0082】
《支持基板》
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等とも言う)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(JSR製)あるいはアペル(三井化学製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
【0083】
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、水蒸気透過度が0.01g/m/日・atm以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更には酸素透過度10−3g/m/日以下、水蒸気透過度10−5g/m/日以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
【0084】
不透明な支持基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
【0085】
本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し量子効率は、1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=(有機EL素子外部に発光した光子数)/(有機EL素子に流した電子数)×100である。
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を、蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。色変換フィルターを用いる場合においては、有機EL素子の発光のλmaxは480nm以下が好ましい。
【0086】
《封止》
本発明に用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されておればよく、凹板状でも平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に問わない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。
【0087】
本発明においては、素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。
更には、ポリマーフィルムはJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/m/24h以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%)が、1×10−3g/(m/24h)以下のものであることが好ましい。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
【0088】
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
【0089】
また、有機層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。
更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
【0090】
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
【0091】
《保護膜、保護板》
有機層を挟み支持基板と対向する側の前記封止膜、あるいは前記封止用フィルムの外側に、素子の機械的強度を高めるために保護膜、あるいは保護板を設けてもよい。
特に封止が前記封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量、且つ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
【0092】
《光取り出し》
有機EL素子は空気よりも屈折率の高い(屈折率が1.7〜2.1程度)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15%から20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。
これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極乃至発光層を導波し、結果として光が素子側面方向に逃げるためである。
【0093】
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(米国特許第4,774,435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(特開昭62−172691号公報)、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)等がある。
本発明においては、これらの方法を本発明の有機EL素子と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、あるいは基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
本発明はこれらの手段を組み合わせることにより、更に高輝度あるいは耐久性に優れた素子を得ることができる。
【0094】
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚みで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど外部への取り出し効率が高くなる。
低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー等が挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度であるので、低屈折率層は屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。また、更に1.35以下であることが好ましい。
また、低屈折率媒質の厚みは媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。
これは低屈折率媒質の厚みが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む膜厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
【0095】
全反射を起こす界面もしくはいずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。
この方法は回折格子が1次の回折や2次の回折といった所謂ブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間もしくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。
これは発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な1次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることによりあらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
回折格子を導入する位置としては前述の通り、いずれかの層間もしくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でもよいが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。
このとき、回折格子の周期は媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度が好ましい。
回折格子の配列は正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状等、2次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
【0096】
《集光シート》
本発明の有機EL素子は基板の光取り出し側に、例えば、マイクロレンズアレイ状の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば、素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付く、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0097】
集光シートとしては、例えば、液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして、例えば、住友スリーエム製輝度上昇フィルム(BEF)等を用いることができる。プリズムシートの形状としては、例えば、基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であってもよい。
また、発光素子からの光放射角を制御するために、光拡散板・フィルムを集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)等を用いることができる。
【0098】
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
【0099】
まず、適当な支持基板上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。
【0100】
次に、この上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層の有機化合物薄膜を形成させる。
この有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)、スプレー法、印刷法、スロット型コータ法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法、スロット型コータ法が特に好ましい。更に層毎に異なる製膜法を適用してもよいが、本発明の発光層は、少なくとも3層を有することから、ウエットプロセスでは製膜することが困難であり、真空蒸着法での製膜が好ましい。
製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50℃〜450℃、真空度10−6Pa〜10−2Pa、蒸着速度0.01nm/秒〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚(層厚)0.1nm〜5μm、好ましくは5nm〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0101】
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより所望の有機EL素子が得られる。
【0102】
この有機EL素子の作製は、1回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
また作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた多色の表示装置に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2V〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
(1)サンプルの作製
(1.1)有機EL素子101の作製
陽極として厚さ0.7mmのガラス基板上に、ITO(インジウムチンオキシド)を110nmの厚さで成膜した支持基板にパターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
【0105】
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量、充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
次いで、真空度1×10−4Paまで減圧した後、化合物HT−1の入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板に蒸着し、20nmの正孔注入層(HIL)を設けた。次いで、化合物HT−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し20nmの正孔輸送層(HTL)を設けた。
次いで、ホスト化合物1−1、青色燐光ドーパント化合物D−66、緑色燐光ドーパント化合物Ir−1d及び赤色燐光ドーパント化合物Ir−14dを、それぞれ蒸着速度0.4nm/秒、0.1nm/秒、0.001nm/秒、0.001nm/秒で厚さ80nmになるよう共蒸着して発光層(EML)を形成した。
その後、化合物ET−1を膜厚(層厚)30nmに蒸着して電子輸送層を形成し、更にKFを厚さ2nmで形成した。更に、アルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成した。
【0106】
【化28】

【0107】
次いで、上記素子の非発光面をガラスケースで覆い、図1、図2に示す構成からなる「有機EL素子101」を作製した。
図1は有機EL素子の概略図を示している。
有機EL素子101は、ガラスカバー102で覆われている。ガラスカバー102による封止作業は、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行った。
図2は有機EL素子の断面図を示している。
図2に示すとおり、陰極105および有機EL層106が透明電極付きガラス基板107上に形成されている。ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
【0108】
(1.2)有機EL素子102の作製
有機EL素子101の作製において、正孔輸送層を形成後、ホスト化合物1−1、青色燐光ドーパント化合物D−66、緑色燐光ドーパント化合物Ir−1d及び赤色燐光ドーパント化合物Ir−14dを、それぞれ蒸着速度0.15nm/秒、0.35nm/秒、0.001nm/秒、0.001nm/秒で厚さ20nmになるよう共蒸着して陽極側発光層(第1層)を形成し、次いでホスト化合物1−1、青色燐光ドーパント化合物D−66、緑色燐光ドーパント化合物Ir−1d及び赤色燐光ドーパント化合物Ir−14dを、それぞれ蒸着速度0.4nm/秒、0.1nm/秒、0.001nm/秒、0.001nm/秒で厚さ60nmになるよう共蒸着して陰極側発光層(第3層)を形成した。
それ以外は、有機EL素子101の作製と同様にして「有機EL素子102」を作製した。
【0109】
(1.3)有機EL素子103の作製
有機EL素子101の作製において、正孔輸送層を形成後、ホスト化合物1−1、青色燐光ドーパント化合物D−66、緑色燐光ドーパント化合物Ir−1d及び赤色燐光ドーパント化合物Ir−14dを、それぞれ蒸着速度0.30nm/秒、0.20nm/秒、0.001nm/秒、0.001nm/秒で厚さ20nmになるよう共蒸着して陽極側発光層(第1層)を形成し、次いでホスト化合物1−1、青色燐光ドーパント化合物D−66、緑色燐光ドーパント化合物Ir−1d及び赤色燐光ドーパント化合物Ir−14dを、それぞれ蒸着速度0.4nm/秒、0.1nm/秒、0.001nm/秒、0.001nm/秒で厚さ60nmになるよう共蒸着して陰極側発光層(第3層)を形成した。
それ以外は、有機EL素子101の作製と同様にして「有機EL素子103」を作製した。
【0110】
(1.4)有機EL素子104の作製
有機EL素子101の作製において、正孔輸送層を形成後、ホスト化合物1−1、青色燐光ドーパント化合物D−66、緑色燐光ドーパント化合物Ir−1d及び赤色燐光ドーパント化合物Ir−14dを、それぞれ蒸着速度0.15nm/秒、0.35nm/秒、0.001nm/秒、0.001nm/秒で厚さ5nmになるよう共蒸着して陽極側発光層(第1層)を形成し、次いでホスト化合物1−1、青色燐光ドーパント化合物D−66、緑色燐光ドーパント化合物Ir−1d及び赤色燐光ドーパント化合物Ir−14dを、それぞれ蒸着速度0.3nm/秒、0.2nm/秒、0.001nm/秒、0.001nm/秒で厚さ15nmになるよう共蒸着して中間発光層(第2層)を形成し、さらにホスト化合物1−1、青色燐光ドーパント化合物D−66、緑色燐光ドーパント化合物Ir−1d及び赤色燐光ドーパント化合物Ir−14dを、それぞれ蒸着速度0.4nm/秒、0.1nm/秒、0.001nm/秒、0.001nm/秒で厚さ60nmになるよう共蒸着して陰極側発光層(第3層)を形成した。
それ以外は、有機EL素子101の作製と同様にして「有機EL素子104」を作製した。
【0111】
(1.5)有機EL素子105〜118の作製
有機EL素子104の作製において、第1発光層、第2発光層、第3発光層のホスト化合物、青色燐光ドーパント化合物、緑色燐光ドーパント化合物、赤色燐光ドーパント化合物の体積比率、膜厚(層厚)を、表1に記載の値になるようコントロールして蒸着して製膜した。
それ以外は、有機EL素子101の作製と同様にして「有機EL素子105〜118」を作製した。
【0112】
【表1】

【0113】
(2)サンプルの評価
上記のようにして得られた有機EL素子101〜118に対し、下記のようにして、外部取り出し量子効率、発光寿命、輝度違いの色度安定性の評価を行った。
【0114】
(2.1)外部取り出し量子効率
作製した有機EL素子に対し、2.5mA/cm定電流を印加したときの外部取り出し量子効率(%)を測定した。測定には分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング製)を用いた。外部取り出し量子効率は、有機EL素子101の測定値を100とした相対値で表した。測定結果を表2に示す。
【0115】
(2.2)発光寿命
作製した有機EL素子に対し、正面輝度4000cd/mとなるような電流を与えて連続駆動させ、正面輝度が初期の半減値(2000cd/m)になるまでに要する時間を求め、これを発光寿命とした。発光寿命は、有機EL素子101の測定値を100とした相対値で表した。測定結果を表2に示す。
【0116】
(2.3)色度変動幅の測定
色度変動幅は、正面輝度300cd/m〜4000cd/mにおけるCIE1931、x、y値の変動最大距離ΔEを下式で求め、結果をA〜Dに分類した。
ΔE=(Δx+Δy1/2
A:ΔEが0.01未満
B:ΔEが0.01以上0.015未満
C:ΔEが0.015以上0.02未満
D:ΔEが0.02以上
A〜Dのうち、「A」が最も輝度変化に対する色度変動が最も小さく安定であることを示している。分類結果を表2に示す。
【0117】
【表2】

【0118】
表2の結果から明らかなように、サンプル104〜106,108,111,112,114,115,117,118は、他のサンプルと比較して、外部取り出し量子効率、発光寿命および色度安定性のいずれの面でも優れていた。
このことから、発光層が少なくとも3層で構成され、各層がホスト化合物と青色燐光ドーパント化合物と青色以外の他色の燐光ドーパント化合物とを含む有機EL素子であって、発光層を構成する層のうち、(i)陽極側発光層の層厚を発光層全体の層厚の15%以下としかつその青色燐光ドーパント化合物濃度を40体積%以上とし、(ii)陰極側発光層の層厚を発光層全体の層厚の50%以上としかつその青色燐光ドーパント化合物濃度を10体積%以上30体積%以下とし、(iii)中間発光層の青色燐光ドーパント化合物濃度を、第1層の青色燐光ドーパント化合物濃度より低く、第3層の青色燐光ドーパント化合物濃度より高くなるように設定することが、高発光効率および高寿命でかつ輝度変化に対する色度変動が少ない有機EL素子を提供するのに有用であることがわかる。
【符号の説明】
【0119】
101 有機EL素子
102 ガラスカバー
105 陰極
106 有機EL層
107 透明電極付きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、陽極と陰極と発光層を含む有機機能層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層が少なくとも3層で構成され、
前記発光層を構成する各層が、ホスト化合物と、発光極大波長が480nm未満の青色燐光ドーパント化合物と、青色以外の他色の燐光ドーパント化合物とを、含み、
前記発光層を構成する層のうち、
(i)最も陽極側に位置する層は、層厚が前記発光層全体の層厚の15%以下でかつ青色燐光ドーパント化合物濃度が40体積%以上であり、
(ii)最も陰極側に位置する層は、層厚が前記発光層全体の層厚の50%以上でかつ青色燐光ドーパント化合物濃度が10体積%以上30体積%以下であり、
(iii)最も陽極側に位置する層と最も陰極側に位置する層との間に位置する層は、青色燐光ドーパント化合物濃度が、最も陽極側に位置する層の青色燐光ドーパント化合物濃度より低く、最も陰極側に位置する層の青色燐光ドーパント化合物濃度より高いことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記青色燐光ドーパント化合物が、一般式(A)〜(C)から選ばれる少なくとも1つの部分構造を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】

〔式(A)中、「Ra」は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、「Rb」、「Rc」は各々水素原子または置換基を表し、「A1」は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、「M」はIrまたはPtを表す。〕
【化2】

〔式(B)中、「Ra」は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、「Rb」、「Rc」、「Rb」、「Rc」は各々水素原子または置換基を表し、「A1」は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、「M」はIrまたはPtを表す。〕
【化3】

〔式(C)中、「Ra」は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、「Rb」、「Rc」は各々水素原子または置換基を表し、「A1」は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、「M」はIrまたはPtを表す。〕
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記ホスト化合物が、一般式(a)で表されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化4】

〔式(a)中、「X」は、NR′、O、S、CR′R″またはSiR′R″を表し、「R′」、「R″」は各々水素原子または置換基を表し、「Ar」は芳香環を表し、「n」は0から8の整数を表す。〕
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層全体の層厚が60nm以上120nm以下であることを特徴する有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−221767(P2012−221767A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86929(P2011−86929)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発/有機EL照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】