説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法

【課題】リーク電流を抑制でき、かつ発光特性に優れた発光素子を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に、下電極、有機層、発光層及び上電極が上記基板側からこの順に積層された発光素子を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、上記有機層は、光照射によって導電性が変化する導電性感光樹脂材料を用いて形成された導電性感光樹脂層を含み、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、上記有機層上にバンクを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法に関する。より詳しくは、製造の際にフォトリソグラフィ法によるバンク形成を好適に用いることができる有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化に伴い、フラットパネルディスプレイのニーズが高まっている。フラットパネルディスプレイとしては、非自発光型の液晶ディスプレイ(LCD)、自発光型のプラズマディスプレイ(PDP)、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」ともいう。)ディスプレイ等が知られているが、これらのフラットパネルディスプレイの中でも、有機ELディスプレイの進歩は特に著しい。
【0003】
次世代の発光素子として注目されている有機EL素子は、一対の電極間に、少なくとも有機物による発光層を備え、更に必要に応じて発光層へ電荷を注入する役割を担う電荷注入層や、電極から有機層へ電荷を輸送する役割を担う電荷輸送層等を備えたものである。この有機EL素子は、薄型化及び軽量化が可能であり、低電圧駆動、高輝度及び自発光等の特性を有することから、現在、盛んに研究開発が行われている。
【0004】
有機EL素子は、通常、各画素毎に配置された陽極及び発光層と、複数の画素にわたって配置されたホール輸送層、電子輸送層及び陰極とを含んで構成される。生産性の向上やコスト削減の観点から、発光層を各画素毎に配置するためには、隔壁(バンク)によって各画素を区画することが有効である。
【0005】
バンクを形成する方法としては、熱転写法、印刷法、フォトリソグラフィ(フォトリソ)法等が挙げられる。そのなかでも、フォトリソ法は簡便に高精度なパターニングが可能であるという点で他の方法よりも優れている。
【0006】
ところで、有機EL素子を構成する層の膜厚が不均一であった場合、局所的な電界が集中してリーク電流が発生することがあった。そこで、有機EL素子を構成する層の膜厚の均一化を図る種々の方法が開発されている。例えば、プラズマを用いた処理を行い、バンク部分表面の非親和性をバンク間部分の表面の非親和性よりも高くすることによって、バンク間に平坦な膜を積層する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、バンクの頂部に対して撥液化処理を施すことによって、有機EL材料の塗布が行われるバンク間から他のバンク間への有機EL材料の移動を防止する方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。更に、発光層材料に感光性樹脂を混合して、光照射によって発光層のパターニングをする方法が開示されている(例えば、特許文献3及び4参照。)。
【特許文献1】国際公開第99/48339号パンフレット
【特許文献2】特開2004−55159号公報
【特許文献3】特開平3−13184号公報
【特許文献4】特開平6−105894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フォトリソ法は、通常、パターニングの際にアルカリ水溶液で現像する工程を含むウェットプロセスであることから、フォトリソ法を用いてバンクを形成した場合、電荷注入輸送層等の有機薄膜がダメージを受け、発光特性が低下することがあるという点で改善の余地があった。また、有機薄膜にダメージを与えない印刷法や熱転写法等の方法では、未だ微細パターンの形成技術が充分でなく、満足のいくパターンを形成できないといった点で改善の余地があった。
【0008】
特許文献1のような場合には、基板全体の全画素に対して均一なプラズマ処理をすることは難しかったため、その上に形成する膜の膜厚が不均一になるおそれがあるという点で改善の余地があった。また、バンクで区画された領域に電荷注入輸送層等の有機薄膜を形成すると、バンクの側面に有機薄膜が這い上がり、有機層の上層に配置される発光層等によって有機層を完全に覆うことが困難であることから、局所的な電界の集中が生じて発光に寄与しないリーク電流が増大するおそれがあるという点でも改善の余地があった。
【0009】
特許文献2のような場合には、撥液処理を行うことによって、正孔輸送材料にダメージを与えるおそれがあるという点で改善の余地があった。また、バンク間に正孔輸送層の材料を塗布するときに、正孔輸送層の膜形状の制御が困難であることから、正孔輸送層の膜形状の影響を受けて、正孔輸送層に発光層に覆われない部分が生じたり、発光層の膜厚が薄い部分が生じたりする。これにより、局所的な電界の集中が生じて発光に寄与しないリーク電流が増大するおそれがあるという点でも改善の余地があった。
【0010】
特許文献3及び4のような場合には、発光層材料に混合した感光性化合物によって発光メカニズムが阻害されるために、発光特性を劣化させてしまうおそれがあるという点で改善の余地があった。
【0011】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、リーク電流を抑制でき、かつ発光特性に優れた発光素子を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、リーク電流を抑制でき、かつ発光特性に優れた発光素子を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法について種々検討したところ、光照射によって導電性が変化する導電性感光樹脂材料を用いて形成された導電性感光樹脂層を用いることに着目した。そして、有機層が導電性感光樹脂層を含むことにより、有機層に含まれる有機薄膜をフォトリソ法を用いたバンク形成工程におけるダメージから保護することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0013】
すなわち、本発明は、基板上に、下電極、有機層、発光層及び上電極が上記基板側からこの順に積層された発光素子を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、上記有機層は、光照射によって導電性が変化する導電性感光樹脂材料を用いて形成された導電性感光樹脂層を含み、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、上記有機層上にバンクを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。
以下に本発明を詳述する。
【0014】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、「有機EL表示装置」ともいう。)は、基板上に、下電極、有機層、発光層及び上電極がこの順に積層された発光素子(有機EL素子)を有するものである。上記発光素子は、下電極と上電極との間に、少なくとも有機層、発光層が基板側からこの順に配置されていれば特に限定されず、他の層を含んでいてもよい。また、上電極の上にカラーフィルター等の機能膜を含んでも良い。上記基板は、特に限定されるものではないが、絶縁性を有する透明基板であることが好ましく、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等が挙げられる。
【0015】
上記下電極及び上電極はそれぞれ、発光素子の陽極又は陰極として機能するものであることが好ましい。すなわち、上記下電極及び上電極の一方は、発光素子の陽極として機能し、上記下電極及び上電極の他方は、発光素子の陰極として機能するものであることが好ましい。陰極を構成する材料としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が挙げられる。安定性を考慮する場合、陰極は、カルシウム膜、アルミニウム膜、カルシウムとアルミニウムとの積層膜、マグネシウム合金膜、バリウム膜、バリウム化合物膜、セシウム膜、セシウム化合物膜、フッ素化合物膜等であることが好ましい。陽極を構成する材料としては、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO(登録商標))等が挙げられる。下電極を通して発光層から生じた光を出射する場合、下電極は、透明導電材料から構成されていることが好ましく、透明導電材料としては、酸化インジウム錫、酸化インジウム亜鉛等が挙げられる。上電極についても、該上電極を通して発光層で生じた光を出射する場合には、下電極と同様に、透明導電材料から構成されていることが好ましく、透明導電材料としては、酸化インジウム錫、酸化インジウム亜鉛等が挙げられる。
【0016】
上記発光層は、上電極側から注入された電子及び正孔の一方と、下電極側から注入された正孔及び電子の他方とが再結合することにより発光を生じる層である。発光層は、有機発光材料を含んで構成されていることが好ましく、有機発光材料からなることがより好ましい。
【0017】
上記有機層は、発光に寄与する電荷を下電極から発光層へ輸送することができる層であれば特に限定されないが、導電性感光樹脂層以外に、下電極から注入された電荷を発光層に安定に輸送する機能を有する電荷注入輸送層、上電極から移動してきたキャリアをブロックする層、発光層に接している電荷注入輸送層等の有機層と発光層との界面付近での励起子(エキシトン)の消失を減少させる層等の有機薄膜を含むことが好ましい。その他の有機薄膜としては、下電極と電荷注入輸送層との間に設けられるバッファ層、電荷注入層、電荷輸送層等が挙げられる。有機薄膜は、有機非発光材料(発光しない有機材料)を含んで構成されることが好ましく、有機非発光材料からなることがより好ましい。
【0018】
導電性感光樹脂層を形成する導電性感光樹脂材料は、光照射によって導電性が変化する材料であり、光による感光作用によって硬化するとともに、下電極から注入された電荷を発光層に安定して輸送するように導電性が発現又は向上することがより好ましい。また、導電性感光樹脂材料の硬化は、熱処理によって行うこともできる。また、導電性感光樹脂材料は、有機非発光材料を含んで構成されることが好ましく、有機非発光材料からなることがより好ましい。また、導電性感光樹脂層は、光照射によって導電性が変化する導電性感光樹脂材料を用いて形成された層であれば、一層であってもよいし、複数の層が積層されてもよい。
【0019】
上記導電性感光樹脂材料は、光照射によって導電性が変化する機能を発現する材料であれば、単一の化合物で該機能を発現する材料を含んでもよいし、複数の化合物で該機能を発現する材料を含んでもよい。また、導電性感光樹脂材料は、互いの機能(導電性及び感光性)を阻害しないような導電性化合物及び感光性樹脂の混合物を含んでもよい。導電性化合物は高分子材料であってもよいし、低分子材料であってもよい。導電性感光樹脂材料が複数の化合物で光照射によって導電性が変化する機能を発現する材料を含む場合、導電性感光樹脂材料は、重合性化合物、バインダー樹脂、光開始剤及び有機溶媒を混合した導電性感光樹脂組成物であってもよい。導電性感光樹脂組成物は固体状であってもよいし、液状であってもよい。導電性感光樹脂組成物が固体状である場合には、任意の溶媒に溶解または分散させることで、塗布することができる。重合性化合物の含有量は、導電性感光樹脂組成物の総固形分に対して20〜50重量%、好ましくは30〜40重量%の範囲で設定することができる。バインダー樹脂の含有量は、導電性感光樹脂組成物の総固形分に対して50〜80重量%が好ましく、より好ましくは60〜70重量%の範囲で設定することができる。光開始剤の含有量は、導電性感光樹脂組成物の総固形分に対して1〜15重量%、より好ましくは2〜10重量%の範囲で設定することができる。導電性感光樹脂層の膜厚は10〜100nmであることが好ましい。膜厚が10nm以下であると均一な膜形成が困難であり、膜厚が100nm以上であると画素領域で下電極と上電極との間に配置された層の総膜厚が厚くなり、駆動電圧が上昇してしまう。以下、導電性感光樹脂組成物に含まれる重合性化合物、バインダー樹脂、光開始剤及び有機溶媒についてより詳細に説明するが、本発明に係る導電性感光樹脂組成物はこれらに限定されない。
【0020】
重合性化合物としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーが挙げられる。このようなモノマー及びオリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート及びフェノキシエチルアクリレート等の単官能アクリレートや、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後、アクリレート化した多官能アルコール等の多官能アクリレートを挙げることができる。また、単官能アクリレート、多官能アクリレートは、それぞれ単官能メタクリレート、多官能メタクリレートであってもよい。
【0021】
バインダー樹脂は、公知の物質の中から適宜選択することができる。例えば、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基等の極性基を有するポリマー、側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体、環状酸無水物が付加された水酸基を有するポリマーが挙げられる。また、これらの極性基を有するポリマー以外に、通常の膜形成性のポリマーが挙げられる。更に、バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
光開始剤は、光照射によりラジカル等の活性種を発生し、重合性化合物の重合を開始させる化合物である。このような化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体、ベンジル、ベンジル誘導体、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、チオキサントン誘導体、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン、アントラキノン誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。また、光開始剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
有機溶剤は、化合物が分散又は溶解するものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。有機溶剤の具体的な例としては、ケトン化合物、アルキレングリコールエーテル化合物、アルコール化合物、芳香族化合物が挙げられる。また、有機溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
上記バンクは、有機層上に配置された層(例えば、発光層等)を区画すること、すなわち、有機層上に配置された層を少なくとも二方(方位が180°異なる二方)から挟んで配置されることが好ましい。上記バンクで区画された層は、バンクの側面に接して配置されている。これによれば、上記バンクで区画された層の形成領域を制御することができ、膜厚の均一性を向上させることができる。また、上記バンクで区画された層が複数の領域に分割されて配置される場合には、上記バンクで区画された層を形成するための液状材料をバンクによって仕切ることができ、該液状材料が混ざることを防止できるため、インクジェット法等の塗布方法によって容易に成膜を行うことができる。上記バンクは、上記バンクで区画された層の周囲全体を囲んで配置されていることがより好ましい。上記バンクの側面は、基板平面に対して垂直になっていてもよいし、テーパ形状、逆テーパ形状等になっていてもよく特に限定されないが、開口率を高めることができる形状であることが好ましい。
【0025】
上記バンクは、有機層の上層に設けられていればよく、有機層の直上にバンクが設けられていてもよいし、有機層とバンクとの間に他の層が設けられていてもよい。これにより、有機層を形成するための液状材料がバンクの側面に付着したり、這い上がったりすることを防止することができる。この場合、少なくとも有機層の上面(基板とは反対側の面)が、バンクの底面(バンクの基板側の面)よりも基板側に位置している。また、有機層の直上に部材を設けるとは、有機層の少なくとも一部と重畳して該部材が設けられることをいい、その場合、有機層の少なくとも一部が該部材と接している。
【0026】
上記バンクは、導電性感光樹脂層上に設けられることが好ましい。これにより、導電性感光樹脂層を形成するための液状材料がバンクの側面に付着したり、這い上がったりすることを防止することができる。また、バンクを形成する前に導電性感光樹脂層が配置されることになるため、導電性感光樹脂層によってウェットプロセスであるフォトリソ法を用いたバンク形成工程におけるダメージから有機層に含まれる電荷注入輸送層等の有機薄膜を保護することができる。このような効果を奏するためには、上記バンクは、導電性感光樹脂層上に設けられていればよく、導電性感光樹脂層の直上にバンクが設けられていてもよいし、導電性感光樹脂層とバンクとの間に他の層が設けられていてもよい。この場合、少なくとも導電性感光樹脂層の上面(基板とは反対側の面)が、バンクの底面(バンクの基板側の面)よりも基板側に位置している。また、導電性感光樹脂層の直上に部材を設けるとは、導電性感光樹脂層の少なくとも一部と重畳して該部材が設けられることをいい、その場合、導電性感光樹脂層の少なくとも一部が該部材と接している。
【0027】
上記バンクの直下に配置される層(以下、「第一層」ともいう。)は、基板とは反対側の表面のバンクが形成されていない領域が、第一層の直上に配置された層(以下、「第二層」ともいう。)に覆われていることが好ましい。これによれば、第一層と第二層の上層に配置された層とが、第二層によって隔絶されるため、発光に寄与しないリーク電流を抑制することができる。このように、第一層の基板とは反対側の表面が、バンクと、第二層とにより覆われていることが好ましい。また、第一層は、バンクの側面と接していないことが好ましい。バンクの側面と接していないことにより、バンクで区画された層の膜厚が不均一になることを抑制することができるため、発光に寄与しないリーク電流を抑制することができる。
【0028】
上記バンクで区画された層毎に複数色の画素を形成する場合、各色毎の画素の配置としては、特に限定されず、例えば、ストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列、スクウェア配列等が挙げられる。また、画素を構成する色としては、赤、緑及び青の三色、シアン、マゼンダ及びイエローの三色等が挙げられるが、四色で構成してもよいし、特に限定されるものではない。そして、赤色の画素、緑色の画素及び青色の画素等は、各色ごとの占有面積の割合が、必ずしも1:1:1である必要はなく、各色毎に画素の占有面積が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、発光層と上電極との間に他の層が配置されていてもよいが、発光に寄与しないリーク電流を抑制する観点からは、上記有機層の直上にバンクが配置され、かつ発光層が有機層の直上に配置され、更に発光層の直上に上電極が配置されることが好ましい。これによれば、発光層以外の層がバンクで区画されていないため、発光層以外の層を形成するための液状材料がバンクの側面に付着したり、這い上がったりすることを防止することができる。
【0030】
本発明の有機EL表示装置によれば、有機層が導電性感光樹脂層を含むことから、導電性感光樹脂層により、ウェットプロセスであるフォトリソ法を用いたバンク形成工程によって有機層がダメージを受けて、発光素子の発光特性が低下することを抑制することができる。より具体的には、導電性感光樹脂層を有機層に含まれる電荷注入輸送層等の有機薄膜上に配置することで、有機薄膜をバンク形成工程のダメージから保護することができる。また、導電性感光樹脂層が、電荷輸送だけでなく、下電極から発光層へ電荷を注入することができる材料を用いて形成されてもよく、この場合、導電性感光樹脂層を電荷注入輸送層としても利用することができるため、バンク形成工程でのダメージを受けにくい層で有機層を構成にすることができる。このようにして、発光素子の発光特性の低下を抑制しながら、簡便に微細パターンの形成が可能なフォトリソ法を用いてバンクを形成することが可能となる。また、導電性感光樹脂層材料は、光照射を行った部分の導電性が変化するため、光照射を行う場所を調節することで、導電性を有する導電部を選択的に形成することができる。これにより、画素領域には発光層に電荷を輸送する経路として導電部を選択的に配置することができ、発光素子の発光特性を維持することができる。また、バンクが有機層上に配置されることで、有機層を形成するための液状材料がバンクの側面に付着したり、這い上がったりすることを防止することができるため、発光に寄与しないリーク電流を低減することができる。更に、有機層をパターニングする必要がないため、スピンコート法やスプレー法を用いて有機層を形成することができ、有機EL表示装置の大型化に容易に対応することができるとともに、製造工程の簡略化による生産性の向上やコスト削減を図ることができる。スピンコート法やスプレー法を用いて有機層を形成することが可能となることで、有機層表面形状の制御が簡便となり、有機層の平坦性を向上させることができるため、有機層上に形成される発光層等の膜厚が不均一になることを抑制することができる。これにより、有機層の上層に形成される発光層等に局所的な電流の集中が生じることを抑制することができ、発光に寄与しないリーク電流をより抑制することができる。その結果、リーク電流がより抑制されることから、発光効率、寿命に優れた発光素子とすることができる。
【0031】
なお、本明細書において、上とは、基板からより遠い方を意味し、下とは、基板により近い方を意味する。
【0032】
本発明の有機EL表示装置の構成としては、このような構成要素を必須として形成されるものである限り、その他の構成要素を含んでいても含んでいなくてもよく、特に限定されるものではない。
本発明の有機EL表示装置における好ましい形態について以下に詳しく説明する。なお、以下に示す各形態は、適宜組み合わされてもよい。
【0033】
隣接する画素領域が導通すると、クロストークが発生して不要な部分に電流が流れることで、発光特性が悪化する。したがって、隣接する二つの画素領域は、導通しないことが好ましい。このような観点からは、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、隣接する第一画素領域及び第二画素領域を有し、上記導電性感光樹脂層の非導電部は、基板を平面視したときに、上記第一画素領域と上記第二画素領域との間に配置されることが好ましい。同様の観点からは、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、隣接する第三画素領域及び第四画素領域を有し、上記導電性感光樹脂層は、基板を平面視したときに、上記第三画素領域と上記第四画素領域との間に配置されないことが好ましい。
【0034】
上記画素領域は、基板を平面視したときに、下電極、発光層、上電極が重なる領域であればよい。有機エレクトロルミネッセンス表示装置がバンクを備える場合、通常、バンクによって区画された領域が画素領域となる。
【0035】
上記バンク及び上記発光層は、上記導電性感光樹脂層の直上に配置され、上記発光層は、上記バンクによって区画されることが好ましい。このように、導電性感光樹脂層と発光層との間に他の層が配置されないことで、バンクで区画された発光層の膜厚の均一性を向上させることができる。その結果、発光に寄与しないリーク電流をより低減することができる。
【0036】
上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、上記有機層と上記発光層との間に上記上電極から移動してきたキャリアをブロックする中間層を備えることが好ましい。中間層は、それ自体は発光せず、(1)上電極から移動してきたキャリア(電子又は正孔)をブロックする機能、すなわち、上電極から発光層を経て送られてくるキャリアが中間層よりも下電極側に注入されることを抑制する機能を有する。また、中間層は、(1)の機能に加え、(2)発光層内にエキシトンを閉じ込めることでエキシトンの消失を減少させる機能、及び、(3)下電極側から注入された電荷が発光層へ注入されることを促進する機能の少なくとも一つを備えていることがより好ましい。(1)の機能を有することにより、発光層から陽極への電子の流出を抑制することができるため、発光効率の向上を図ることができる。また、発光層から正孔注入輸送層へ電子が流れ込むことによる正孔注入輸送層の劣化を抑制することもできる。上記キャリアは、下電極から電荷注入輸送層を経て発光層に輸送される電荷と反対の符号の電気を帯びているものであり、下電極から電荷注入輸送層を経て発光層に輸送される電荷が正孔の場合には、上記キャリアは電子であり、下電極から電荷注入輸送層を経て発光層に輸送される電荷が電子の場合には、上記キャリアは正孔である。(2)の機能を有することにより、発光層に接している電荷注入輸送層等の有機層と発光層との界面付近でのエキシトンの消失を抑制することができるため、より発光効率を向上させることができる。(3)の機能を有することにより、電荷注入輸送層から注入される電荷をより効率的に発光層へ輸送することができるため、発光効率の向上を図ることができる。
【0037】
上記中間層は、上記バンクによって区画されることが好ましい。これにより、中間層の形成をバンク形成後に行うことができるため、バンク形成工程で中間層がダメージを受け、中間層の特性が低下することを防止することができる。
【0038】
上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、隣接する第五画素領域及び第六画素領域を有し、上記導電性感光樹脂層の上記第五画素領域における膜厚は、上記導電性感光樹脂層の上記第六画素領域における膜厚と異なることが好ましい。このように、隣接する第五画素領域及び第六画素領域とで導電性感光樹脂層の膜厚を異ならせることにより、第五画素領域及び第六画素領域における電極間の膜厚を調節することができる。これにより、第五画素領域及び第六画素領域毎に適した膜厚に調節することができるため、マイクロキャビティと呼ばれる色純度調整を行うことが可能となる。
【0039】
上記有機層は、電荷注入輸送層を更に含み、上記電荷注入輸送層は、上記導電性感光樹脂層よりも上記基板側に配置されることが好ましい。電荷注入輸送層は、それ自体は発光せず、下電極から注入された電荷を発光層側へ輸送する機能を有するものである。従来、電荷注入輸送層は、フォトリソ法を用いたバンク形成工程でダメージを受けて発光特性が低下する場合があった。本発明によれば、電荷注入輸送層の上層に導電性感光樹脂層が配置されていることから、導電性感光樹脂層によってフォトリソ法を用いたバンク形成工程におけるダメージから電荷注入輸送層を保護することができる。これにより、電荷注入輸送層によって下電極から注入された電荷を発光層側へ安定して輸送することができる。なお、電荷注入輸送層が発光層側へ輸送する電荷は、電子であっても正孔であってもよく特に限定されない。
【0040】
上記電荷注入輸送層としては、電子注入輸送層、正孔注入輸送層等が挙げられるが、正孔注入輸送層が好ましい。正孔注入輸送層が、その材料として一般的に用いられている、下記一般式(1)で示すポリエチレンジオキシチオフェン(Polyethylenedioxythiophene:PEDOT)と下記一般式(2)で示すポリスチレンスルホン酸(Polystylenesulfonic acid:PSS)との混合材料(PEDOT−PSS)である場合により好ましい(式中nは、構造単位の数を表す)。バンクが配置された後にPEDOT−PSSを塗布して正孔注入輸送層を形成する場合には、バンクの側面の撥液性が不充分であると、バンクの側面にPEDOT−PSSが這い上がりやすく、正孔注入輸送層の上層に配置される発光層の膜厚を不均一にするおそれがある。したがって、バンクは、電荷注入輸送層、なかでも、正孔注入輸送層上に配置されることが好ましい。
【0041】
【化1】

【0042】
【化2】

【0043】
上記電荷注入輸送層は、導電性感光樹脂層と下電極との間に配置される。上記電荷注入輸送層が、正孔を輸送する正孔注入輸送層である場合には、陽極からの発光層への正孔注入を容易にするため、陽極の仕事関数と電荷注入輸送層の最高占有分子軌道(Highest Occupied Molecular Orbital:HOMO)のエネルギー準位との差が小さいほど好ましい。例えば、ITO(仕事関数W=5.0eV)を陽極として使用する場合、ITOの仕事関数と陽極と接続されたときのHOMOのエネルギー準位が5.1eVであるPEDOT−PSSを正孔注入輸送層として用いることが好ましい。また、正孔を効率よく発光層に輸送する観点から、陽極と接続されたときの正孔注入輸送層のHOMOのエネルギー準位と、発光層のHOMOのエネルギー準位との差が小さいほど好ましい。電荷注入輸送層が電子を輸送する電子注入輸送層である場合には、電子を効率よく発光層に輸送する観点から、陰極と接続されたときの電子注入輸送層の最低非占有分子軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:LUMO)のエネルギー準位と、発光層のLUMOのエネルギー準位との差が小さいほど好ましい。また、電子注入層輸送層のLUMOのエネルギー準位と、陰極の真空準位との差が小さいほど好ましい。
【0044】
上記バンクの直下に配置された層は、上記バンクに挟まれた領域(平面視したときに、少なくとも二方からバンクで挟まれた領域)の幅よりも広い幅で配置されたものであることが好ましい。すなわち、バンクの直下に配置される層は、少なくとも一部がバンクの下部と接して配置されていることが好ましい。これによれば、バンクの直下に配置される層が、バンクに挟まれた領域からバンクが配置された領域との境界を超えて配置されることによって、バンクの直下に配置される層がバンクの側面に這い上がることを防止することができる。また、バンクの直下に配置される層は、表示を行う領域の全面に配置されていることがより好ましい。これによれば、パターニング工程を省略することができるため、製造工程の簡略化を図ることができ、更に、膜厚の均一化も図ることができる。なお、バンクの直下に配置される層は、上記有機層でもよいし、他の層でもよく特に限定されない。なお、バンクに挟まれた領域は、バンクが形成されている階層のみではなく、バンクに挟まれている領域のバンクが形成されている階層の上層及び下層も含めた領域を指す。このように、バンクの直下の層であり、かつバンクに挟まれた領域に設けられた部材(有機層やその他の層)の端部は、バンクの下に潜り込み、バンクの側面を這い上がらないことが好ましい。
【0045】
上記バンクの水に対する接触角が90°未満であるとバンクの上面に発光層等を形成する液状材料(インク)が残存しやすくなるおそれがある。また、バンクで挟まれた領域内に充分な液状材料をためることができず、隣接画素との混色が発生するおそれがある。更に、所望の膜厚を得るために何度も重ね塗りを行うことで、製造のタクトタイムが増加するおそれがある。したがって、上記バンクは、水に対する接触角が90°以上である材料から構成されることが好ましい。また、上記バンクの水に対する接触角が120°を超えると、バンクの撥液性によりバンク近傍に液状材料が広がらず、液状材料によってバンクの下層の有機層を完全に覆うことができなくなり、リーク電流が増加するおそれがある。したがって、上記バンクは、水に対する接触角が120°以下である材料から構成されることが好ましい。このように、発光層の膜厚の均一性を向上させるという観点からは、水に対する接触角が90〜120°である材料から構成されることがより好ましい。上記バンクは、フッ素含有材料及び珪素含有材料の少なくとも一方を含んだ材料から構成されることが好ましい。バンクを構成する材料としては、フッ素等を含有した樹脂、フッ素化合物を添加した材料、珪素を含む材料、フッ素原子と珪素原子との両方を含む材料等が挙げられる。これにより、一般的に、有機エレクトロルミネッセンス層(下電極及び上電極を除く発光素子を構成する層)を形成する液状材料はフッ素含有材料及び珪素含有材料に弾かれやすいため、バンクが撥液性を有することによって、バンクの側面への付着を抑制することができる。
【0046】
本発明はまた、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法であって、上記製造方法は、上記有機層上に上記バンクを形成するバンク形成工程と、上記バンク形成工程の後に塗布装置を用いて上記発光層を形成する発光層形成工程とを含む有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法でもある。このように、有機層上にバンクを形成することで、有機層に含まれる導電性感光樹脂層によってバンク形成工程のダメージから電荷注入輸送層等の有機薄膜を保護することができる。したがって、発光特性の低下を抑制しながら、簡便に微細パターンの形成が可能なフォトリソ法を用いてバンクを形成することが可能となる。また、導電性感光樹脂層は、光照射を行った部分の導電性が変化するため、光照射を行う場所を調節することで、導電部を選択的に形成することができる。これにより、画素領域には発光層に電荷を輸送する経路として導電部を選択的に配置することができ、発光素子の発光特性を維持しながら有機薄膜をフォトリソ法を用いたバンク形成工程におけるダメージから保護することができる。更に、バンク形成工程を有機層上で実施することから、有機層を形成する液状材料がバンクを這い上がることを防止することができ、発光層の膜厚が不均一になることを防止することができる。そのため、発光に寄与しないリーク電流の増加を防止することができる。
【0047】
上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、上記バンク形成工程の前に上記導電性感光樹脂材料を熱処理する熱処理工程を更に含み、上記バンク形成工程は、上記導電性感光樹脂材料上にネガ型バンク材料を塗布した後、前記導電性感光樹脂材料及びに該ネガ型バンク材料に光照射を行うことが好ましい。これにより、バンクパターンの露光と同時に、導電性感光樹脂材料の導電性の発現又は向上を行うことが可能となり、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0048】
導電性感光樹脂層を形成する導電性感光樹脂層工程において、導電性感光樹脂材料への光照射に用いる光照射の光源としては、導電性感光樹脂材料を硬化しうる波長域の光(例えば、g線、h線、i線)を照射できる光源であれば適宜選定して用いることができるが、g線、h線を照射できる光源がより好ましい。露光量としては、例えば、0.1〜200mJ/cmであることが好ましく、0.1〜100mJ/cmであることがより好ましい。導電性感光樹脂への光照射は、導電性感光樹脂材料の全体に対して一括して行ってもよいし、露光量を変化させて各画素領域毎に行ってもよい。
【0049】
上記導電性感光樹脂層形成工程において、導電性感光樹脂材料の塗布方法としては、スピンコート法、スプレー法、ノズルコート法等が挙げられる。なかでも、簡便に均一な塗布が可能なスピンコート法を用いることが好ましい。これにより、導電性感光樹脂層が均一に形成されるため、導電性感光樹脂層上に配置される発光層を均一に形成することができる。
【0050】
上記導電性感光樹脂層形成工程は、光を照射していない未硬化の導電性感光樹脂材料を除去する現像工程を含んでもよい。これにより、画素領域毎に選択的に導電性感光樹脂層を配置することができる。導電性感光樹脂材料の未硬化部分の除去するための溶剤としては特に制限はなく、アルカリ溶液等の従来公知の現像液を適宜選択することができる。
【0051】
上記有機層を形成する前に、有機層が配置される基板面に親液処理を施すことが好ましい。これにより、有機層の膜厚の均一性をより向上させることができる。例えば、バンクで区画された有機層を形成する場合には、バンクが影になり、有機層が配置される領域に均一な親液処理がなされないおそれがある。また、バンクが親液性を有する場合には、バンクで区画されるように液状材料を塗布するときに、バンクの側面に該液状材料が付着するおそれがある。本発明では、バンクを形成する前に親液処理を施すことができるため、有機層を形成する基板に対して親液処理をする場合、マスク等で処理する領域を規定する必要がなく、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0052】
上記塗布装置は、インクジェット装置であることが好ましい。これにより、パターニング工程等を行う必要がなく簡易に発光層の形成を行うことができる。また、表示装置の大型化に容易に対応することができる。更に、発光層等を形成するための材料の使用効率が高く、コスト削減も図ることができる。
【0053】
上記バンクは、熱転写法、印刷法によってパターニングされてもよいが、フォトリソグラフィ(フォトリソ)法によってパターニングされることが好ましい。これにより、バンク形成工程で簡便に微細パターンを形成することができる。また、フォトリソ法は、微細パターンの形成に有利なポジ型のレジストを用いることが好ましい。従来、ウェットプロセスであるフォトリソ法を用いてバンク形成工程を行った場合、有機層に含まれる電荷注入輸送層等の有機薄膜がダメージを受けて発光特性が低下することがあった。本発明によれば、フォトリソ法で用いる現像液に対して耐性を有する導電性感光樹脂層を有機層が含むことにより、フォトリソ法を用いたバンク形成工程におけるダメージから有機薄膜を保護することができる。したがって、発光素子の発光特性の低下を抑制しながら、簡便に微細パターンの形成が可能なフォトリソ法を用いてバンク形成工程を行うことができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法によれば、リーク電流を抑制でき、かつ発光特性に優れた発光素子を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下に実施形態を掲げ、本発明を図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。なお、ここでは、青単色のボトムエミッション型の有機EL表示装置を作製しているが、本発明は単色の場合のみならず、フルカラーの有機EL表示装置にも適用できる。また、トップエミッション型の有機EL表示装置に適用することもできる。
【0056】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る有機EL表示装置の断面模式図である。
実施形態1に係る有機EL表示装置は、基板11上に膜厚が150nmの酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide:ITO)からなる下電極12がストライプ状に配置されている。下電極12は、有機EL素子10の陽極として機能する。その上には、PEDOT−PSSからなる電荷注入輸送層13と、導電性感光樹脂層19とが、それぞれ膜厚が80nm、30nmの膜厚となるように配置されて有機層を構成する。電荷注入輸送層13及び導電性感光樹脂層19は、正孔を発光層14に輸送及び注入する正孔注入輸送層として機能する。導電性感光樹脂層19上には、発光層14を区画するバンク16が下電極12上に平面視小判型(楕円形)の開口が配列されるように配置されている。発光層14は、平面視小判型の開口を有するバンク16で四方を挟まれて配置されている。バンク16の開口は、下電極12と重なり、かつ下電極12に沿って形成されている。バンク16に挟まれた領域(バンク16の開口)は、画素領域18として機能する。バンク16は、フッ素を含有した樹脂から構成されている。発光層14は、ポリフルオレン化合物からなる青色の発光層である。発光層14及びバンク16上には、カルシウムとアルミニウムとの積層膜からなる上電極17が基板11のバンク16が配置される領域及びバンク16に挟まれた領域(画素領域18)の全面に配置されて発光素子19が形成されている。このように、上電極17は、発光層14及びバンク16を覆うように形成されている。
【0057】
導電性感光樹脂層19は電荷注入輸送層13の直上に配置されており、電荷注入輸送層13とバンク16とは接していない。したがって、導電性感光樹脂層19によってバンク16を形成する工程でのダメージから電荷注入輸送層13を保護し、発光特性の低下を抑制することができる。
【0058】
導電性感光樹脂層19は、導電性を有する導電部19aと、導電性を有しない非導電部19bとを含む。基板11を平面視したときに、導電部19aは画素領域18毎に分割して配置され、非導電部19bは画素領域18の間にバンク16と重なるように配置されている。これにより、隣接する画素領域18間のクロストークに起因する発光特性の悪化を抑制することができる。
【0059】
バンク16は、導電性感光樹脂層19の直上に配置されている。すなわち、バンク16の形成を行う段階では、電荷注入輸送層13及び導電性感光樹脂層19は既に膜を形成している。また、バンク16の直下に配置されている導電性感光樹脂層19は、複数の画素領域18に渡って繋がって形成されており、導電性感光樹脂層19の幅(図1の横方向の距離)は、バンク16で挟まれた領域(画素領域18)の幅よりも大きい。これらによれば、電荷注入輸送層13及び導電性感光樹脂層19の材料がバンク16の側面に付着したり、這い上がったりすることを防止し、発光に寄与しないリーク電流の増加を抑制することができる。
【0060】
発光層14はバンク16によって区画され、かつ導電部19aの直上に配置されている。このように、発光層14と導電部19aとの間に他の層が配置されないことで、発光層14の均一性を向上させることができる。
【0061】
次に、実施形態1に係る有機EL表示装置の製造方法について説明する。
膜厚が150nmの酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide:ITO)膜が形成された基板11を、フォトリソグラフィ法によりITO膜をストライプ状にパターニングして下電極12を形成する。本実施形態では基板11としてガラス基板を用いているが、特に限定されるものではなく、石英基板、プラスチック基板等を用いてもよい。
【0062】
下電極12を形成した基板11を、イソプロピルアルコール、アセトン、純水等を用いたウェットプロセスにより洗浄し、その後、酸素プラズマ処理によって親液処理を施す。酸素プラズマ処理は、基板11の表面に酸素原子を結合又は付着させることで水素結合が生じやすくさせるとともに、基板11の表面を洗浄することができる。これらの親液処理は、下電極12を形成した基板11全体に施すことができるため、基板11の平面全体に対して均一に行うことができる。
【0063】
次に、下電極12を形成した基板11上に、PEDOTとPSSとを含む混合水溶液をスピンコート法によって塗布した後、200℃で30分間の加熱乾燥処理を行う。この加熱乾燥処理により、PEDOT及びPSSが分散していた溶媒が除去されて、PEDOT−PSSからなる電荷注入輸送層13が形成される。続いて、不用意に反応が起きないように安全光中で導電性感光樹脂組成物をスピンコート法によって電荷注入輸送層13上に塗布した後、120℃で5分間加熱するプリベークを行い、導電性感光樹脂組成物から溶媒を除去する。続いて、下電極と平行なストライプ状のフォトマスクを介して光照射を行い、所定の位置(画素領域18)の導電性感光樹脂材料を硬化させるとともに、導電性を発現させる。その後、140℃で3分間加熱するポストベークを行うことで、導電性感光樹脂層19が形成される。光照射される画素領域18における導電性感光樹脂層19は、導電性を有する導電部19aとなる。光照射を受けていない部分の導電性感光樹脂層19は、ブリベーク及びポストベークによって溶媒が除去されることで膜を形成しているが、光照射による硬化(化学反応)は生じていないため、導電性を有しない。すなわち、光照射を受けていない部分の導電性感光樹脂層19は、導電性を有しない非導電部19bとなる。このようにして、導電性感光樹脂層19に導電部19aと非導電部19bとを選択的に配置することができる。導電部19aの電気伝導率は、1.0×10S/m以上、より好ましくは1.0×1012S/m以上であればよい。また、非導電部19bは、導電性を有しない絶縁体であることが好ましいが、電気伝導率が1.0×10S/m以下、より好ましくは1.0×10−1S/m以下の部分であってもよい。導電性感光樹脂組成物としては、導電性化合物としてのN−置換カルバゾールの重合体にクレゾールノボラック樹脂を含む感光性樹脂を1重量%混合した混合物が分散したキシレン溶液を用いることができる。
【0064】
次に、導電性感光樹脂層19は不溶なポジ型バンク材料溶液をスピンコート法によって導電性感光樹脂層19上に塗布した後、100℃で5分間加熱乾燥処理を行う。フォトマスクによって所定の位置にバンクパターンを露光した後、2.3%TMAH溶液を用いて現像工程を行うことで、バンク16が形成される。バンク16は、フッ素を含有する樹脂から構成されており、水に対する接触角が90°である。バンク16を構成する材料としては、フッ素化合物を添加した材料を用いてもよいし、珪素含有材料等を使用することもできる。
【0065】
その後、下記一般式(3)に示すポリフルオレン化合物をキシレン等の非極性溶媒に溶解させた液状材料を、バンク16で囲まれた領域(画素領域18)内にインクジェット装置を用いてパターン塗布する。パターン塗布の後、液状材料中の溶媒を除去することで、青色の発光層14が形成される。その上に、陰極としてカルシウムとアルミニウムとを積層させた上電極17を形成し、硝子キャップにより封止を行うことで発光素子10を作製した。
【0066】
【化3】

【0067】
一般式(3)で表されるポリフルオレン化合物は、アルキル鎖R及びR’を有するフルオレン環と1以上のアリール化合物のユニットとの共重合化合物である。一般式(3)中のR,R’はアルキル鎖を表し、Ar及びAr’はアリール化合物のユニットを表し、l及びmは1以上の整数であり、nは0、又は、1以上の整数である。アリール化合物としては、例えば、メチルベンゼン、ピリジン、ベンゼン、アントラセン、スピロビフルオレン、カルバゾール、ベンゾアミン、ビピリジン、ベンゾチアジアゾール等が挙げられる。なお、発光する色は、共重合させるユニット、及びl、m、nの比率によって異なる。
【0068】
なお、本実施形態では、電荷注入輸送層13が複数の画素領域18間に渡って連続して配置される形態について説明したが、電荷注入輸送層13は、画素領域18毎に分断して配置されてもよい。図6は、実施形態1に係る別の有機EL表示装置の構成を示す断面模式図である。図6に示すように、電荷注入輸送層13と同一層で、かつバンク16と重なる領域に絶縁体20を配置することで、電荷注入輸送層13を画素領域18毎に分断して配置することができる。絶縁体20は、バンク16からはみ出さないように配置することが好ましい。これにより、隣接する画素領域18間のクロストークに起因する発光特性の悪化をより抑制することができる。なお、絶縁体20は、バンク16と重なる領域の全てに配置されることが好ましいが、図7に示すように、バンク16と重なる領域の一部に配置されていてもよい。このような絶縁体20を形成する方法としては、例えば、下電極12を形成した基板11上にスパッタ装置によって膜厚が100nmのSiO膜を形成した後、SiO膜をパターニングする方法が挙げられる。絶縁体20を形成した後の電荷注入輸送層13の形成は、ノズルコーター等を用いて行えばよい。
【0069】
(実施形態2)
図2は、実施形態2に係る有機EL表示装置の構成を示す断面模式図である。図2において、実施形態1で説明した部材と同一の部材については同一の符号を付記している。
実施形態2に係る有機EL表示装置は、バンク16で囲まれた領域(画素領域18)において、導電性感光樹脂層19と発光層14との間に中間層15が配置された発光素子20を備えること以外は、実施形態1に係る有機EL表示装置と同様の構成を有している。中間層の膜厚は25nmである。中間層15は、トリフェニルアミン化合物をキシレン等の非極性溶媒に溶解させた液状材料を、バンク16に挟まれた領域内にインクジェット装置を用いてパターン塗布することで形成することができる。中間層15を形成する材料は、上電極17から発光層14を経て送られてくる電荷が電荷注入輸送層13に注入されることを防止する機能を有するものであれば特に限定されない。本実施形態のように、上電極17が陰極であり、上電極17から発光層14を経て送られてくる電荷が電子である場合には、中間層15の材料として、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(1,4−エチレニルベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(9−エチル−3,6−カルバゾール)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(2,5−p−キシレン)]等が挙げられる。これらの化合物は非極性溶媒に溶解されて塗布される。中間層15の膜厚は、駆動電圧の増加を抑制するという観点から、発光層14の膜厚の1/2以下であることが好ましい。中間層15を用いることで、発光素子の駆動電圧の低下、発光効率の向上等を行うことができ、更に寿命等を改善することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、電荷注入輸送層13が複数の画素領域18間に渡って連続して配置される形態について説明したが、実施形態1と同様に、絶縁体20を形成し、電荷注入輸送層13を画素領域18毎に分断して配置してもよい。これにより、隣接する画素領域18間のクロストークに起因する発光特性の悪化をより抑制することができる。
【0071】
(実施形態3)
図3は、実施形態3に係る有機EL表示装置の構成を示す断面模式図である。図3において、実施形態1で説明した部材と同一の部材については同一の符号を付記している。
実施形態3に係る有機EL表示装置は、基板11を平面視したときに、隣接する画素領域18の間に導電性感光樹脂層19が配置されていない発光素子30を備えることと、バンク16が電荷注入輸送層13の直上に配置されること以外は、実施形態1に係る有機EL表示装置と同様の構成を有している。より具体的には、導電性感光樹脂層19は、非導電部19bを含まず、画素領域18に配置された導電部19aのみで構成されている。非導電部19bの除去は、実施形態1と同様の条件で導電部19aの形成までを行った後、ポストベークを行う前に、光照射を受けていない部分の導電性感光樹脂層19をキシレン等の溶剤で取り除けばよい。
【0072】
実施形態3においては、バンク16を電荷注入輸送層13の直上に形成するため、バンク16の形成工程で電荷注入輸送層13がダメージを受け、発光特性が低下することが懸念される。しかしながら、画素領域18に配置された部分の電荷注入輸送層13は、導電性感光樹脂層19によって保護されているため、例え画素領域18以外に配置された部分の電荷注入輸送層13がダメージを受けたとしても、発光特性に対する影響はない。したがって、実施形態3に係る有機EL表示装置によっても、電荷注入輸送層13がバンク16の形成工程で受けるダメージを低減し、発光特性の低下を抑制することができる。これにより、画素領域18に配置された部分の電荷注入輸送層13の平坦性と特性を維持したまま、バンク16をフォトリソ法によって形成することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、電荷注入輸送層13が複数の画素領域18間に渡って連続して配置される形態について説明したが、実施形態1及び2と同様に、絶縁体20を形成し、電荷注入輸送層13を画素領域18毎に分断して配置してもよい。これにより、隣接する画素領域18間のクロストークに起因する発光特性の悪化をより抑制することができる。
【0074】
(比較例1)
図4は、比較例1に係る有機EL表示装置の構成を示す断面模式図である。図4において、実施形態1で説明した部材と同一の部材については同一の符号を付記している。
比較例1に係る有機EL表示装置は、電荷注入輸送層13がバンク16の下層ではなく、バンク16に囲まれた領域の発光層14の下層に配置され、かつ導電性感光樹脂層19を含まない発光素子40を備えることと、バンク16が基板11の直上に配置されること以外は、実施形態1に係る有機EL表示装置と同様の構成を有している。比較例1に係る有機EL表示装置は、基板11上に、下電極12が配置されており、その上には、バンク16が形成されることによってバンク16に挟まれた領域(画素領域18)が形成されている。バンク16に挟まれた領域に配置された下電極12上には、PEDOT−PSSからなる膜厚が70nmの電荷注入輸送層13、ポリフルオレン化合物からなる膜厚が80nmの発光層14が基板11側からこの順に配置されている。発光層14上には、カルシウムとアルミニウムとの積層膜からなる上電極17が表示領域一面に配置されて発光素子40を形成している。比較例1では、電荷注入輸送層13は、液状材料をインクジェット法により塗布することで形成している。
【0075】
(比較例2)
図5は、比較例2に係る有機EL表示装置の構成を示す断面模式図である。図5において、実施形態1で説明した部材と同一の部材については同一の符号を付記している。
比較例2に係る有機EL表示装置は、バンク16に囲まれた領域に配置された電荷注入輸送層13と発光層14との間に中間層15が配置された発光素子50を備えることと、バンク16が基板11の直上に配置されること以外は比較例1と同様の構成である。比較例2では、電荷注入輸送層13及び中間層15は、それぞれ液状材料をインクジェット法により塗布することで形成している。
【0076】
(不良率の評価試験)
実施形態1〜3、比較例1及び2に係る有機EL表示装置についてリーク電流値を測定し、不良率を算出した。各実施形態及び比較例に係る有機EL表示装置につき、それぞれ100台の測定を行った。有機EL素子の下電極と上電極との間に1Vの電圧を印加したときの電流密度が5.0×10−5mA/cm以上であるものを不良とした。不良率の評価試験を行った結果を下記表1に示す。なお、実施形態1、2、3については、それぞれ図1、2、3に示す形態について評価試験を行っている。
【0077】
【表1】

【0078】
表1の結果から分かるように、実施形態1〜3に係る有機EL表示装置の不良率は、それぞれ9%、13%、8%であり、比較例1及び2に係る有機EL表示装置の不良率は、それぞれ53%、74%であり、実施形態1〜3の有機EL表示装置では、不良率を大幅に低減することができることがわかる。実施形態1〜3では、バンクが導電性感光樹脂層又は電荷注入輸送層の直上に配置されることで、導電性感光樹脂層及び電荷注入輸送層の材料がバンクの側面に付着したり、這い上がったりすることが防止される。これにより、発光層に印加される電界が発光層の一部に局所的に集中することを抑制することができたため、リーク電流を低減することができたと考えられる。このように、本発明では、低電圧側のリーク電流値が小さく、発光効率、寿命に優れた有機EL表示装置を提供することができる。また、実施形態1〜3では、発光領域に導電性感光樹脂層を配置されることで、発光領域の電荷注入輸送層が導電性感光樹脂層によって保護されるため、ウェットプロセスであるフォトリソ法を用いてバンク形成を行ったとしても、電荷注入輸送層が受けるダメージを低減し、発光特性の低下を抑制することができる。
【0079】
更に、実施形態1と実施形態2との比較、及び、比較例1と比較例2との比較をした場合、形成されたバンクとバンクとの間にパターン塗布を行う回数が増えることによって不良率が増大することがわかる。つまり、リーク電流を低減する観点からは、実施形態1のように、発光素子を構成する有機材料の中では、中間層を必要とせずに所望の特性を発現する発光層を形成する有機材料のみをバンクで区画するように塗布形成することが好ましい。これによれば、インクジェット装置に備えられたヘッドの飛行曲がり等に起因する液状材料の飛散を発光層以外の層で防止することができるため、よりリーク電流を抑制し、不良率を低減することができる。
【0080】
以上、実施形態1〜3においては、画素領域に配置された導電性感光樹脂層の膜厚が同一の場合について説明したが、導電性感光樹脂層の膜厚は、全ての画素領域で同一でなくてもよい。すなわち、導電性感光樹脂層の膜厚は、一部の画素領域で異なっていてもよく、画素領域毎に異なっていてもよい。これにより、画素領域毎に導電性感光樹脂層の膜厚を調節することができるため、発光層の発光に対する最適膜厚を維持したまま、マイクロキャビティと呼ばれる色純度調整を行うことができる。以下、導電性感光樹脂層の膜厚を画素領域毎に異ならせる方法について説明する。例えば、赤(R)、緑(G)及び青(B)の三色で画素が構成される場合、導電性感光樹脂層の形成において、画素(R)の所望膜厚で導電性感光樹脂層の材料を塗布した後、フォトマスクを介して画素(R)に位置する導電性感光樹脂層のみを光照射し、硬化させる。その後、光照射を行っていない未硬化の部分の導電性感光樹脂層(画素(G)、画素(B)に位置する部分を含む)を除去し、ポストベークを行うことで、膜状の導電性感光樹脂層を画素(R)のみに形成することができる。この工程を画素(G)、画素(B)に対しても行うことで、導電性感光樹脂層の膜厚を画素(R)、画素(G)、画素(B)毎に異ならせることができる。
【0081】
また、実施形態1〜3において、導電性樹脂材料の硬化を光照射によって行う場合について説明したが、導電性感光樹脂材料の硬化は熱処理によって行ってもよい。これにより、バンク16の形成工程でのバンクパターンの露光と同時に、導電性感光樹脂層19の導電性の向上を行うことが可能となり、製造工程の簡略化を図ることができる。この場合、安全光中で導電性感光樹脂組成物をスピンコート法によって電荷注入輸送層13上に塗布した後、光照射を行うことなく、180℃で15分間加熱することで、導電性感光樹脂組成物から溶媒を除去するとともに、導電性感光樹脂材料を硬化させる。次に、導電性感光樹脂層19は不溶なポジ型バンク材料溶液をスピンコート法によって導電性感光樹脂層19上に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥処理を行う。その後、フォトマスクを介して光照射を行うことで、バンク16のバンクパターンの露光を行うとともに、導電性感光樹脂材料の導電性を向上させ、導電部19aを形成することができる。
【0082】
なお、本発明に係る有機EL表示装置を構成する発光層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。有機発光材料としては、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)素子用の発光材料を用いることができる。このような発光材料は、高分子発光材料、高分子発光材料の前駆体、低分子発光材料等が挙げられるが、本発明はこれらの材料に何ら限定されるものではない。高分子発光材料としては、例えば、ポリ(2−デシルオキシ−1、4−フェニレン)(DO−PPP)、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニレン]ジブロマイド(PPP−NEt3+)、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)等が挙げられる。高分子発光材料の前駆体としては、例えば、ポリ(p−フェニレンビニレン)前駆体(Pre−PPV)、ポリ(p−ナフタレンビニレン)前駆体(Pre−PNV)等が挙げられる。低分子発光材料としては、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−ビフェニル(DPVBi)等の芳香族ジメチリデェン化合物、5−メチル−2−[2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾオキサゾ−ル等のオキサジアゾ−ル化合物、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾ−ル(TAZ)等のトリアゾ−ル誘導体、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン等のスチリルベンゼン化合物、チオピラジンジオキシド誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体等の蛍光性有機材料、アゾメチン亜鉛錯体、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム錯体(Alq)等の蛍光性有機金属化合物等が挙げられ、高分子系の材料としては、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF)、ポリスパイロ(PS)、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)DO−PPP、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイド(PPP−NEt3+)、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)等の材料が挙げられる。有機発光材料を溶解させる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、THF(テトラヒドロフラン)、クロロホルム、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等が挙げられる。また、発光層は、レベリング剤、発光アシスト剤、添加剤、電荷輸送剤、発光性のド−パント等を含んで形成されていてもよい。
【0083】
また、電荷注入輸送層材料としては、特に限定されず、例えば、公知の材料を用いることができる。以下に具体的な化合物を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。正孔注入輸送層の材料としては、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合材料(PEDOT−PSS)の他に、例えば、高分子材料としては、下記一般式(4)で示すPVPTA2:TBPAH、下記一般式(5)で示すEt−PTPDEK:TBPAH等が挙げられる。正孔注入輸送層を構成する低分子材料としては、下記一般式(6)で示す(1,1−ビス[4−(ジ−p−トリル)アミノフェニル]シクロヘキサン)(TAPC)、下記一般式(7)で示すN,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、下記一般式(8)で示す4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、下記化学式(9)で示す4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、下記化学式(10)で示す銅フタロシアニン(CuPc)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPD)等の芳香族第三級アミン化合物、ポルフィリン化合物、ヒドラゾン化合物、キナクリドン化合物、スチルアミン化合物等の低分子材料、ポリアニリン、ポリ(トリフェニルアミン誘導体)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン誘導体等の高分子材料、ポリ(p−フェニレンビニレン)前駆体、ポリ(P−ナフタレンビニレン)前駆体等の高分子材料前駆体が挙げられる。電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、フルオレン誘導体等の低分子材料、ポリ[オキサジアゾール]等の高分子材料が挙げられる。下記一般式において、nは構造単位の数を表す。
【0084】
【化4】

【0085】
【化5】

【0086】
【化6】

【0087】
【化7】

【0088】
【化8】

【0089】
【化9】

【0090】
【化10】

【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施形態1に係る有機EL表示装置の構成を示す断面模式図である。
【図2】実施形態2に係る有機EL表示装置の構成を示す断面模式図である。
【図3】実施形態3に係る有機EL表示装置の構成を示す断面模式図である。
【図4】比較例1に係る有機EL表示装置の構成を示す断面模式図である。
【図5】比較例2に係る有機EL表示装置の構成を示す断面模式図である。
【図6】実施形態1に係る別の有機EL表示装置の構成を示す断面模式図である。
【図7】実施形態1に係る別の有機EL表示装置の構成を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0092】
10、20、30、40、50:発光素子
11:基板
12:下電極
13:電荷注入輸送層
14:発光層
15:中間層
16:バンク
17:上電極
18:画素領域
19:導電性感光樹脂層
19a:導電部
19b:非導電部
20:絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、下電極、有機層、発光層及び上電極が該基板側からこの順に積層された発光素子を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、
該有機層は、光照射によって導電性が変化する導電性感光樹脂材料を用いて形成された導電性感光樹脂層を含み、
該有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、該有機層上にバンクを備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、隣接する第一画素領域及び第二画素領域を有し、
前記導電性感光樹脂層の非導電部は、前記基板を平面視したときに、該第一画素領域と該第二画素領域との間に配置されることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、隣接する第三画素領域及び第四画素領域を有し、
前記導電性感光樹脂層は、前記基板を平面視したときに、該第三画素領域と該第四画素領域との間に配置されないことを特徴とする請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記バンク及び前記発光層は、前記導電性感光樹脂層の直上に配置され、
前記発光層は、前記バンクによって区画されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前記有機層と前記発光層との間に前記上電極から移動してきたキャリアをブロックする中間層を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
前記中間層は、前記バンクによって区画されることを特徴とする請求項5記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
前記有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、隣接する第五画素領域及び第六画素領域を有し、
前記導電性感光樹脂層の該第五画素領域における膜厚は、前記導電性感光樹脂層の該第六画素領域における膜厚と異なることを特徴とする請求項1〜6の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項8】
前記有機層は、電荷注入輸送層を更に含み、
該電荷注入輸送層は、前記導電性感光樹脂層よりも前記基板側に配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項9】
前記バンクの直下に配置された層は、前記バンクに挟まれた領域の幅よりも広い幅で配置されたものである請求項1〜8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項10】
前記バンクは、水に対する接触角が90°以上である材料から構成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項11】
前記バンクは、水に対する接触角が120°以下である材料から構成されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法であって、
該製造方法は、前記有機層上に前記バンクを形成するバンク形成工程と、
該バンク形成工程の後に塗布装置を用いて前記発光層を形成する発光層形成工程とを含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、前記バンク形成工程の前に前記導電性感光樹脂材料を熱処理する熱処理工程を更に含み、
前記バンク形成工程は、前記導電性感光樹脂材料上にネガ型バンク材料を塗布した後、前記導電性感光樹脂材料及び該ネガ型バンク材料に光照射を行うことを特徴とする請求項12記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記塗布装置は、インクジェット装置であることを特徴とする請求項12又は13記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記バンクは、フォトリソグラフィ法によってパターニングされることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−34143(P2010−34143A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192253(P2008−192253)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】