説明

有機エレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法

【課題】有機EL装置の画素部の画素領域をインクジェットにより形成する場合に、インクジェットによる画素部の画素領域の製造品質を簡易かつ短時間にて評価することが可能であり、この評価結果をインクジェットによる画素部の製造工程に速やかにフィードバックすることで製造工程における歩留まり及びスループットを向上させることが可能な有機EL装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の有機EL装置は、素子基板2上に、複数個の画素領域3をインクジェットによりマトリックス状に形成した実表示領域4を備え、素子基板2上かつ実表示領域4の外側には、これに隣接しかつ独立して形成された複数の画素領域41と、各画素領域41にスイッチング用TFT44及び配線45を介して接続され画素領域41を定電圧駆動または定電流駆動可能な端子42、43とを備えた検査用画素領域11が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光型の平面表示型電気光学装置として、有機薄膜により発光層(電気光学層)等を構成した多層構造の有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:EL)装置が開発され、これまでにも様々な提案がなされている(例えば、特許文献1等参照)。
この有機EL装置には、トップエミッション型と、ボトムエミッション型の2種類のものがあり、薄型、軽量、フレキシブル等の優れた特徴を有することから、ディスプレイパネル、電子ペーパー等、様々な分野への応用が進められている。
【0003】
この有機EL装置を作製する方法としては、例えば、インクジェット法が挙げられる(例えば、特許文献2参照)。
インクジェット法を用いて有機EL装置を作製するには、基板上に設けられた発光領域となるバンク内の被塗布領域に、インクジェットを用いて有機半導体発光材料またはカラーフィルタ材料を含む液滴を吐出して充填し、この充填した液滴に加熱処理、減圧処理のいずれか一方または双方を施して液滴に含まれる溶媒を除去する。これにより、被塗布領域に発光層またはカラーフィルタ層となる薄膜が形成される。
有機半導体発光材料としては、例えば、赤、緑、青から選択され電界の印加によりエレクトロルミネッセンスを発生する発光材料が用いられ、また、カラーフィルタ材料としては、例えば、赤、緑、青から選択された着色材料が用いられる。
【0004】
この有機EL装置では、発光層またはカラーフィルタ層をインクジェットにより形成する場合、複数のヘッドを用い、これらのヘッドの走査方向をある一定方向に固定して複数の走査または改行を行っている。
このインクジェットによるインクの液滴の吐出量は厳密に制御されているので、通常は液滴の吐出量がばらつくことは無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−85488号公報
【特許文献2】特許第3328297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の有機EL装置では、インクジェットによるインクの液滴の吐出量を厳密に制御しているにもかかわらず、製造工程終了後の発光層またはカラーフィルタ層にばらつきが生じることがある。この場合、事前に吐出量を確認しているにも関わらず、製造工程終了後の検査工程で発光層やカラーフィルタ層のばらつきを知ることとなり、その間、発光バラツキを有する有機EL装置が生産し続けられることとなり、製品歩留まりに影響を及ぼす虞があるという問題点があった。
特に、連続製造プロセスの場合、予想外の外乱等でインクの液滴の吐出量がばらつく虞があり、このばらつきが原因で発光バラツキが生じた場合、製品歩留まりに大きな影響を与えることとなる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、有機EL装置の画素部の画素領域をインクジェットにより形成する場合に、インクジェットによる画素部の画素領域の製造品質を簡易かつ短時間にて評価することが可能であり、この評価結果をインクジェットによる画素部の製造工程に速やかにフィードバックすることで製造工程における歩留まり及びスループットを向上させることが可能な有機エレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の有機エレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法を採用した。
すなわち、本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、基板上に、複数個の画素領域をインクジェットによりマトリックス状に形成してなる表示領域を備えた画素部と、この画素部を駆動する駆動回路とを備えてなる有機エレクトロルミネッセンス装置であって、
前記基板上に、前記表示領域の外側に隣接しかつ該表示領域から独立した複数個の画素領域からなる検査用画素領域を設け、この検査用画素領域の各画素領域に、定電圧駆動または定電流駆動可能な端子を、前記駆動回路に対して独立して接続してなることを特徴とする。
【0009】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記基板上に、前記表示領域の外側に隣接しかつ該表示領域から独立した複数個の画素領域からなる検査用画素領域を設け、この検査用画素領域の各画素領域に、定電圧駆動または定電流駆動可能な端子を、前記駆動回路に対して独立して接続したので、端子を用いて検査用画素領域の各画素領域を定電圧駆動または定電流駆動することにより、インクジェットによる表示領域の仕上がり状態を、表示領域を全面点灯することなく、簡易かつ短時間にて推定することができる。
【0010】
また、検査用画素領域の各画素領域を定電圧駆動または定電流駆動させながら発光輝度を測定することで、検査用画素領域の各画素領域の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を定量的に行うことができる。その結果、表示領域における画素領域各々の発光特性バラツキを速やかに把握することができ、インクジェットによる表示領域の製造工程に速やかにフィードバックすることができ、製造工程における歩留まり及びスループットを向上させることができる。したがって、発光特性のバラツキが無く、高画質で、均一な明るさの有機エレクトロルミネッセンス装置を提供することができる。
また、検査用画素領域は表示領域と完全に分離しているので、検査用画素領域と表示領域とが互いに影響を及ぼし合う虞が無く、したがって、検査用画素領域における定電圧駆動または定電流駆動が表示領域の各画素領域に対して影響を及ぼす虞もなく、表示領域の各画素領域における点灯表示品位を良好に保持することができる。
【0011】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、前記基板上に、前記画素部を複数個配列し、これらの画素部の外側に前記検査用画素領域を設けてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、基板上に設けられた複数個の画素部の外側に前記検査用画素領域を設けたので、端子を用いて検査用画素領域の各画素領域を定電圧駆動または定電流駆動することにより、インクジェットによる画素部の表示領域における仕上がり状態を、これらの画素部それぞれの画素領域を全面点灯することなく、簡易かつ短時間にて評価することができる。
また、検査用画素領域を複数個の画素部それぞれに対して設ける必要が無いので、インクジェットによる表示領域の仕上がり状態を、複数個の画素部それぞれに対して一括して評価することができる。
【0013】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、前記検査用画素領域の複数個の画素領域を、前記インクジェットの描画方向に対して垂直方向に配列してなることを特徴とする。
【0014】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、検査用画素領域の複数個の画素領域を、インクジェットの描画方向に対して垂直方向に配列したので、検査用画素領域の各画素領域の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を行うことにより、インクジェットの走査方向に対して垂直方向に発生するインクジェットヘッドのノズル間の吐出量バラツキに起因する発光ムラを定量評価することができる。
【0015】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法は、基板上に、複数個の画素領域をインクジェットによりマトリックス状に形成してなる表示領域を備えた画素部と、この画素部を駆動する駆動回路とを備えてなる有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、
前記基板上に、前記表示領域の外側に隣接しかつ該表示領域から独立した複数個の画素領域からなる検査用画素領域を形成するとともに、この検査用画素領域の各画素領域に、定電圧駆動または定電流駆動可能な端子を、前記駆動回路に対して独立して接続し、次いで、前記端子により前記検査用画素領域の各画素領域を定電圧駆動または定電流駆動させて前記検査用画素領域の発光特性を測定し、次いで、この測定結果に基づき前記表示領域における画素領域の発光特性を推定することを特徴とする。
【0016】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法では、基板上に、表示領域の外側に隣接しかつ表示領域から独立した複数個の画素領域からなる検査用画素領域を形成するとともに、この検査用画素領域の各画素領域に、定電圧駆動または定電流駆動可能な端子を、駆動回路に対して独立して接続し、次いで、端子により検査用画素領域の各画素領域を定電圧駆動または定電流駆動させて検査用画素領域の発光特性を測定し、次いで、この測定結果に基づき前記表示領域における画素領域の発光特性を推定するので、インクジェットによる表示領域の仕上がり状態を、表示領域の各画素領域を全面点灯することなく、簡易かつ短時間にて評価することができる。
【0017】
また、検査用画素領域の各画素領域を定電圧駆動または定電流駆動させながら発光輝度を測定することで、検査用画素領域の各画素領域の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を定量的に行うことができる。その結果、表示領域における画素領域各々の特性バラツキを速やかに把握することができ、インクジェットによる表示領域の製造工程に速やかにフィードバックすることができ、製造工程における歩留まり及びスループットを向上させることができる。
【0018】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法は、前記推定結果に基づき前記表示領域における画素領域の形成条件を最適化することを特徴とする。
【0019】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法では、前記推定結果に基づき前記表示領域における画素領域の形成条件を最適化するので、インクジェットによる表示領域の仕上がり状態を、簡易かつ短時間にて最適化することができる。したがって、製造工程における歩留まり及びスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態の有機EL表示装置を示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の有機EL表示装置の要部を示す部分拡大平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の有機EL表示装置の配線構造を示す図である。
【図4】インクジェット法を用いた液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の有機EL表示装置の製造方法を示す過程図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の有機EL表示装置を示す平面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の有機EL表示装置を備えた電子機器の一例である映像モニタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス(EL)装置及びその製造方法を実施するための形態について説明する。
【0022】
「第1の実施形態」
図1は、本実施形態の有機EL表示装置を示す平面図、図2は、この有機EL表示装置の配線構造を示す図、図3は、この有機EL表示装置の要部を示す部分拡大平面図であり、この有機EL表示装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ( Thin Film Transistor:TFT)を用いたアクティブマトリクス型の有機EL表示装置である。
【0023】
この有機EL表示装置1は、図1に示すように、平面視略矩形状の素子基板2の中央部分に、複数の画素領域3がマトリクス状に配置されて実表示領域4が形成され、この素子基板2上の実表示領域4の外側には、この実表示領域4を囲むように信号線駆動回路5及び一対の走査線駆動回路6が設けられ、これら信号線駆動回路5及び走査線駆動回路6を含む領域がダミー領域7とされ、この素子基板2上のダミー領域7の外側には、陰極用配線8が設けられ、この実表示領域4及びダミー領域7により画素部9が構成されている。
【0024】
この素子基板2上かつ実表示領域4の外側には、この実表示領域4に隣接しかつ独立した検査用画素領域11が設けられ、さらに、この検査用画素領域11の外側には、この検査用画素領域11に隣接しかつ独立したダミー画素領域12が設けられている。そして、素子基板2の端部には、配線基板13が電気的に接続されている。
【0025】
この有機EL表示装置1の配線構造は、図2に示すように、複数(図示では5本)の走査線21と、これらの走査線21に直交して延びる複数(図示では4本)の信号線22及び電源線23とが設けられており、走査線21及び信号線22に囲まれた領域が画素領域3に対応している。
これらの画素領域3それぞれには、画素電極となる陽極層31と、陰極層32と、これら陽極層31及び陰極層32により挟まれた発光層33とにより有機EL素子が構成されている。
また、これらの画素領域3それぞれには、陽極層31をスイッチング制御するためのスイッチング用TFT34、35と保持容量36とが設けられている。
【0026】
この有機EL表示装置1における画素領域3の配列は、図3に示すY軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)各々が同一色となるように配列され、X軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)がこの順で繰り返されるように配列されている。すなわち、この画素領域3の配列は、一方向(Y軸方向)に直線状に配列された同一色の画素領域3が、他方向(X軸方向)に所定の間隔をおいて平行に配列されたストライプ型となっている。
この画素領域3におけるR(赤)、G(緑)、B(青)各々の色は、画素領域3の発光層に発光材料を、または、画素領域3のエレクトロルミネッセンスを発生する発光層上にカラーフィルタを設けることにより可能である。例えば、発光材料としては、電界の印加によりエレクトロルミネッセンスを発生するR(赤)、G(緑)、B(青)各々の有機半導体発光材料が挙げられ、また、エレクトロルミネッセンスを発生する発光層上に設けられるカラーフィルタ材料としては、R(赤)、G(緑)、B(青)各々の着色材料が挙げられる。
【0027】
検査用画素領域11は、図3に示すように、実表示領域4の外側に、この実表示領域4に隣接しかつ実表示領域4から独立した画素領域41が複数個、この実表示領域4の一つの辺に沿って複数列に配列されている。そして、各画素領域41には、各画素領域41を定電圧駆動または定電流駆動可能な端子42、43が、スイッチング用TFT44及び配線45を介して、信号線駆動回路5及び走査線駆動回路6に対して独立に、接続されている。
【0028】
この画素領域41の配列は、画素領域3の配列と同様、図3に示すY軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)各々が同一色となるように配列され、X軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)がこの順に配列されている。すなわち、この画素領域41の配列は、一方向(Y軸方向)に直線状に配列された同一色の画素領域41が、他方向(X軸方向)に所定の間隔をおいて平行に配列されたストライプ型となっている。
この画素領域41におけるR(赤)、G(緑)、B(青)各々の色についても、画素領域3と同様、画素領域41の発光層に発光材料を、または、画素領域41のエレクトロルミネッセンスを発生する発光層上にカラーフィルタを設けることにより可能である。
【0029】
この検査用画素領域11では、画素領域41の配列方向を、後述する液滴吐出装置61の液滴吐出ヘッド66の描画方向(走査方向)(図3中、矢印方向)に対して垂直方向としている。
これにより、検査用画素領域11の各画素領域41の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を行うことで、液滴吐出ヘッド66の描画方向に対して垂直方向に発生する液滴吐出ヘッド66のノズル間の吐出量バラツキに起因する発光ムラを定量評価することが可能である。
【0030】
ダミー画素領域12は、検査用画素領域11の外側に、この検査用画素領域11に隣接しかつ検査用画素領域11から独立した画素領域51が複数個、この検査用画素領域11の一つの辺に沿って複数列に配列されている。
この画素領域51の配列も、画素領域41の配列と同様、図3に示すY軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)各々が同一色となるように配列され、X軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)がこの順に配列されている。すなわち、この画素領域51の配列においても、画素領域41の配列と同様、一方向(Y軸方向)に直線状に配列された同一色の画素領域51が、他方向(X軸方向)に所定の間隔をおいて平行に配列されたストライプ型となっている。
【0031】
次に、この有機EL表示装置1を、インクジェット法により製造する方法について説明する。
ここでは、まず、画素領域3、41、51の製造に用いられるインクジェット法を用いた液滴吐出装置について、図4に基づき説明する。
この液滴吐出装置61は、インクジェット法により素子基板2上の所定領域に液滴を吐出して複数の画素領域3、41、51を形成する装置であり、装置架台62と、ワークステージ63と、ステージ移動装置64と、キャリッジ65と、液滴吐出ヘッド66と、キャリッジ移動装置67と、チューブ68と、第1〜第3タンク69〜71と、制御装置72と、を備えている。
【0032】
装置架台62は、ワークステージ63及びステージ移動装置64の支持台である。ワークステージ63は、装置架台62上においてステージ移動装置64により主走査方向であるX軸方向に移動可能に設置されており、上流側の搬送装置(図示略)から搬送される素子基板2を真空吸着機構によりXY平面上に保持する。
ステージ移動装置64は、リニアガイド及びボールネジ等の直動機構を備えており、制御装置72から出力されるワークステージ63の移動先のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ワークステージ63をX軸方向に移動させる。
【0033】
キャリッジ65は、液滴吐出ヘッド66を保持しており、キャリッジ移動装置67により副走査方向であるY軸方向及びZ軸方向に移動可能に設けられている。
液滴吐出ヘッド66は、複数のノズル(図示略)を備えており、制御装置72から出力される描画データ信号や駆動信号に基づいて液滴を吐出する。
この液滴吐出ヘッド66は、R(赤)、G(緑)及びB(青)の各液滴に対応した数だけヘッド(図示略)が設けられており、それぞれキャリッジ65を介してチューブ68と接続されている。
そして、R(赤)に対応するヘッドには、チューブ68を介して第1タンク69からR(赤)のインク(液体)が供給され、G(緑)に対応するヘッドには、チューブ68を介して第2タンク70からG(緑)のインク(液体)が供給され、B(青)に対応するヘッドには、チューブ68を介して第3タンク71からB(青)のインク(液体)が供給される。
【0034】
キャリッジ移動装置67は、装置架台62をY軸方向に沿って跨ぐように設けられた橋梁構造のものであり、Y軸方向及びZ軸方向に沿ってリニアガイド及びボールネジ等の直動機構を備え、制御装置72から出力されるキャリッジ65の移動先のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいてキャリッジ65をY軸方向及びZ軸方向に移動させる。
【0035】
チューブ68は、第1〜第3タンク69〜71からキャリッジ65にR(赤)、G(緑)及びB(青)の各インクを供給するための供給用チューブである。
第1タンク69は、R(赤)のインクを貯留すると共にチューブ68を介して液滴吐出ヘッド66のR(赤)に対応するヘッドにR(赤)のインクを供給する。また、第2タンク70は、G(緑)のインクを貯留すると共にチューブ68を介して液滴吐出ヘッド66のG(緑)に対応するヘッドにG(緑)のインクを供給する。また、第3タンク71は、B(青)のインクを貯留すると共にチューブ68を介して液滴吐出ヘッド66のB(青)に対応するヘッドにB(青)のインクを供給する。
【0036】
制御装置72は、ワークステージ63の移動による素子基板2の位置決め動作と、キャリッジ65の移動による液滴吐出ヘッド66の位置決め動作と、液滴吐出ヘッド66による素子基板2上の所定位置にインクを吐出する液滴吐出動作と、を制御する装置である。この制御装置72では、ステージ移動装置64にステージ位置制御信号を出力し、キャリッジ移動装置67にキャリッジ位置制御信号を出力し、液滴吐出ヘッド66に描画データ及び駆動信号を出力する。
【0037】
次に、この液滴吐出装置61を用いて素子基板2上に画素領域3を形成する方法について、図3〜図5に基づき説明する。
ここでは、液滴吐出ヘッド66から吐出する液滴として、電界の印加によりエレクトロルミネッセンスを発生するR(赤)、G(緑)、B(青)各々の有機半導体発光材料を含むインクを用いる。
【0038】
ここでは、ワークステージ62上に素子基板2を載置し、この素子基板2の上面と液滴吐出ヘッド66とを対向させ、素子基板2上の、ダミー画素領域12の各画素領域51それぞれに対応する領域に、上述した液滴吐出装置61を用いてインク81を吐出し、その後乾燥させ、ダミー画素領域12の各画素領域51を形成する。
【0039】
次いで、図5(a)に示すように、素子基板2上の、検査用画素領域11のR(赤)、G(緑)及びB(青)の画素領域41それぞれに対応する被塗布領域81a〜81cに、上述した液滴吐出装置61を用いてR(赤)、G(緑)及びB(青)のインクをそれぞれ吐出し、被塗布領域81a〜81cに、R(赤)、G(緑)及びB(青)の塗膜82(R)、82(G)及び82(B)を形成する。
【0040】
次いで、この塗膜82(R)、82(G)及び82(B)を乾燥させる。
これにより、図5(b)に示すように、素子基板2上に、それぞれの被塗布領域81a〜81cにR(赤)、G(緑)及びB(青)の画素領域41(R)、41(G)及び41(B)が形成される。よって、画素領域41(R)、41(G)及び41(B)を有する検査用画素領域11を備えた素子基板83が得られる。
【0041】
次いで、この素子基板83の画素領域41(R)、41(G)及び41(B)の評価を行う。
例えば、検査用画素領域11の画素領域41(R)、41(G)及び41(B)各々の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を行う場合、端子42、43間に駆動用電圧を印加してスイッチング用TFT44を「ON」状態とし、画素領域41(R)、41(G)及び41(B)各々に閾値を超える定電流を流すと、この定電流による再結合により画素領域41(R)、41(G)及び41(B)各々が発光する。この発光における画素領域41(R)、41(G)及び41(B)各々の電流−電圧と発光輝度との関係を求め、この発光輝度の値に基づき画素領域41(R)、41(G)及び41(B)各々の発光特性を評価する。
【0042】
この発光特性評価は、画素領域41(R)、41(G)及び41(B)各々に対して定量的に行うことができるので、検査用画素領域11の画素領域41(R)、41(G)及び41(B)各々の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を定量的に行うことができる。
これにより、検査用画素領域11の画素領域41(R)、41(G)及び41(B)各々の定量的な発光特性評価を基に、この液滴吐出装置61を用いて形成する実表示領域4の複数の画素領域3各々の特性バラツキを速やかに推定し、把握することができる。したがって、インクジェットによる実表示領域4の複数の画素領域3各々の仕上がり状態を、実表示領域4の各画素領域3を全面点灯することなく、簡易かつ短時間にて推定することができる。
【0043】
次いで、検査用画素領域11の画素領域41(R)、41(G)及び41(B)各々の定量的な発光特性評価を基に、この液滴吐出装置61の液滴吐出ヘッド66の走査速度、液滴吐出ヘッド66から吐出されるR(赤)、G(緑)及びB(青)のそれぞれのインクの吐出量、塗膜の乾燥条件等を最適化する。
次いで、この最適化された条件の下で、この液滴吐出装置61を用いて実表示領域4の複数の画素領域3各々を形成する。
これにより、検査用画素領域11の定量的な発光特性評価を、インクジェットによる実表示領域4の製造工程に速やかにフィードバックすることができ、製造工程における実表示領域4の歩留まり及びスループットを向上させることができる。
【0044】
また、検査用画素領域11は実表示領域4と完全に分離しているので、検査用画素領域11と実表示領域4とが互いに影響を及ぼし合う虞が無く、したがって、検査用画素領域11における定電圧駆動または定電流駆動が実表示領域4の各画素領域3に対して影響を及ぼす虞もなく、実表示領域4の各画素領域3における点灯表示品位を良好に保持することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の有機EL表示装置1によれば、素子基板2上に、実表示領域4の外側に隣接しかつ実表示領域4から独立した複数個の画素領域41からなる検査用画素領域11を設け、この検査用画素領域11の各画素領域41に、定電圧駆動または定電流駆動可能な端子42、43を接続したので、検査用画素領域11の画素領域41(R)、41(G)及び41(B)各々の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を定量的に行うことができる。したがって、この評価に基づき、インクジェットによる実表示領域4の各画素領域3の仕上がり状態を、実表示領域4を全面点灯することなく、簡易かつ短時間にて推定することができる。
【0046】
また、検査用画素領域11の各画素領域41を定電圧駆動または定電流駆動させながら発光輝度を測定することで、検査用画素領域11の各画素領域41の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を定量的に行うことができる。その結果、実表示領域4における画素領域3各々の特性バラツキを速やかに把握することができ、インクジェットによる実表示領域4の製造工程に速やかにフィードバックすることができ、製造工程における実表示領域4の特性バラツキを歩留まり及びスループットを向上させることができる。したがって、発光特性のバラツキが無く、高画質で、均一な明るさの有機EL表示装置を提供することができる。
【0047】
また、本実施形態の有機EL表示装置1の製造方法によれば、インクジェットによる実表示領域4の仕上がり状態を、実表示領域4の各画素領域3を全面点灯することなく、簡易かつ短時間にて推定することができる。
また、検査用画素領域11の各画素領域41の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を定量的に行うことができ、その結果、インクジェットによる実表示領域4の画素領域3各々の特性バラツキを速やかに把握することができる。したがって、インクジェットによる実表示領域4の製造工程に速やかにフィードバックすることで、発光特性にバラツキの無い実表示領域4を作製することができ、製造工程における実表示領域4の歩留まり及びスループットを向上させることができる。
【0048】
また、推定結果に基づき実表示領域4における画素領域3の形成条件を最適化するので、インクジェットによる表示領域の仕上がり状態を、簡易かつ短時間にて最適化することができる。したがって、製造工程における歩留まり及びスループットを向上させることができる。
【0049】
また、検査用画素領域11の画素領域41の配列方向を、液滴吐出装置61の液滴吐出ヘッド66の描画方向(走査方向)に対して垂直方向としたので、検査用画素領域11の各画素領域41の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を行うことで、液滴吐出ヘッド66の描画方向(走査方向)に対して垂直方向に発生する液滴吐出ヘッド66のノズル間の吐出量バラツキに起因する実表示領域4における画素領域3の発光ムラを定量評価することができる。
【0050】
なお、本実施形態の有機EL表示装置1では、インクジェットにより実表示領域4の画素領域3各々を作製する場合について説明したが、インクジェットに限ることなく、例えば、低分子材料を用いた蒸着プロセスに対しても適用可能である。この場合においても、検査用画素領域11の各画素領域41の発光特性を定量的に評価することで、低分子材料を用いた蒸着プロセスにおける実表示領域4の画素領域3の形成条件を最適化することができる。
【0051】
「第2の実施形態」
図6は、本発明の第2の実施形態の有機EL表示装置を示す平面図であり、本実施形態の有機EL表示装置91が第1の実施形態の有機EL表示装置1と異なる点は、大型の素子基板92上に、実表示領域4及び、信号線駆動回路5及び走査線駆動回路6を含むダミー領域7により構成された画素部9が複数(図6では2個)配列され、この大型の素子基板92上かつ画素部9、9の外側に、これらの画素部9、9に隣接しかつ独立した検査用画素領域11が設けられた点であり、これ以外の点については第1の実施形態の有機EL表示装置1と全く同様である。
【0052】
本実施形態の有機EL表示装置91においても、第1の実施形態の有機EL表示装置1と同様の作用、効果を奏することができる。
また、検査用画素領域11の画素領域41の配列方向を、液滴吐出装置61の液滴吐出ヘッド66の描画方向(走査方向)に対して垂直方向としたので、検査用画素領域11の各画素領域41の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を行うことで、液滴吐出ヘッド66の描画方向(走査方向)に対して垂直方向に発生する液滴吐出ヘッド66のノズル間の吐出量バラツキに起因する各画素部9の実表示領域4における画素領域3の発光ムラを定量評価することができる。
【0053】
また、この大型の素子基板92上かつ画素部9、9の外側に、これらの画素部9、9に隣接しかつ独立した検査用画素領域11を設けたので、インクジェットによる画素部9、9各々の画素領域3の仕上がり状態を、画素部9、9それぞれの画素領域3を全面点灯することなく、簡易かつ短時間にて推定することができる。
また、検査用画素領域11を画素部9、9それぞれに対して設ける必要が無いので、インクジェットによる画素部9、9各々の実表示領域4の仕上がり状態を、一括して評価することができる。
【0054】
「電子機器」
図7は、本発明の第1の実施形態の有機EL表示装置を備えた電子機器の一例である映像モニタを示す斜視図である。
この映像モニタ1200は、有機EL表示装置1を備えた表示部1201と、筐体1202と、スピーカ1203等を備えている。
この映像モニタ1200は、表示部1201に有機EL表示装置1を備えているので、表示部1201の発光特性のバラツキが無く、したがって、高画質で、均一な明るさの表示が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…有機EL表示装置、2…素子基板、3…画素領域、4…実表示領域、5…信号線駆動回路、6…走査線駆動回路、9…画素部、11…検査用画素領域、41、41(R)、41(G)、41(B)…画素領域、42、43…端子、61…液滴吐出装置、66…液滴
吐出ヘッド、83…素子基板、91…有機EL表示装置、92…大型の素子基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、複数個の画素領域をインクジェットによりマトリックス状に形成してなる表示領域を備えた画素部と、この画素部を駆動する駆動回路とを備えてなる有機エレクトロルミネッセンス装置であって、
前記基板上に、前記表示領域の外側に隣接しかつ該表示領域から独立した複数個の画素領域からなる検査用画素領域を設け、この検査用画素領域の各画素領域に、定電圧駆動または定電流駆動可能な端子を、前記駆動回路に対して独立して接続してなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記基板上に、前記画素部を複数個配列し、これらの画素部の外側に、前記検査用画素領域を設けてなることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記検査用画素領域の複数個の画素領域を、前記インクジェットの描画方向に対して垂直方向に配列してなることを特徴とする請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
基板上に、複数個の画素領域をインクジェットによりマトリックス状に形成してなる表示領域を備えた画素部と、この画素部を駆動する駆動回路とを備えてなる有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、
前記基板上に、前記表示領域の外側に隣接しかつ該表示領域から独立した複数個の画素領域からなる検査用画素領域を形成するとともに、この検査用画素領域の各画素領域に、定電圧駆動または定電流駆動可能な端子を、前記駆動回路に対して独立して接続し、
次いで、前記端子により前記検査用画素領域の各画素領域を定電圧駆動または定電流駆動させて前記検査用画素領域の発光特性を測定し、次いで、この測定結果に基づき前記表示領域における画素領域の発光特性を推定することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項5】
前記推定結果に基づき前記表示領域における画素領域の形成条件を最適化することを特徴とする請求項4記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−187408(P2011−187408A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54328(P2010−54328)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】