説明

有機エレクトロルミネッセント素子

【課題】視野角依存性を低減させることができる有機エレクトロルミネッセント素子を得る。
【解決手段】反射電極と、光取り出し側電極と、反射電極及び前記光取り出し側電極の間に配置される第1の発光層及び第2の発光層とを備える有機エレクトロルミネッセント素子であって、第1の発光層の発光位置と、反射電極の反射面との間の光学距離が(n/x)λであり、第2の発光層の発光位置と反射電極の反射面との間の光学距離が〔(n+m)/2x〕λ(λは、取り出したい発光の中心波長、nは奇数、mは偶数、xは自然数である)ことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセント(有機EL)素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機ELディスプレイにおいては、視野角依存性が存在し、画像の色合いが正面と斜めでは僅かに変化するという問題がある。有機ELディスプレイにおける視野角依存性は、液晶ディスプレイのように斜めから見ると画像が反転する程大きなものではない。その理由は、有機EL素子を構成する有機層と無機層(ITO膜)などの屈折率の差が大きいことと、有機EL素子における陰極がミラーの役目を果たし、素子内で光学干渉が生じるためである。この僅かな視野角依存性は、有機ELディスプレイの表示品位を損なうものであるので、低減させることが好ましい。しかしながら、視野角依存性を十分に低減させることができる提案は未だなされていない。
【0003】
一方、有機ELディスプレイは、携帯機器用ディスプレイとして期待されており、低消費電力及び長寿命が求められている。本出願人は、複数の発光層を中間ユニットを介して積層することにより、消費電力の低減及び寿命の向上を図ることができることを見出している(特許文献1)。しかしながら、特許文献1においては、視野角依存性について何ら開示されていない。
【0004】
特許文献2においては、複数の発光層を積層することが開示されており、2つの光源において、反射電極に近い方の光源と反射電極の距離を1/4λとし、反射電極から遠い方の光源と反射電極の距離を3/4λとすることにより、輝度及び発光効率が向上する旨記載されている。このように設定することにより、確かに正面方向への光の強度は最大になるが、斜め方向(例えば60°)においては、逆に強度が低下し、視野角依存性が大きくなり、表示品位が著しく低下する。
【特許文献1】特開2006−49396号公報
【特許文献2】特開2003−272860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、反射電極と、光取り出し側電極と、反射電極及び光取り出し側電極の間に配置される第1の発光層及び第2の発光層とを備える有機エレクトロルミネッセント素子であって、第1の発光層の発光位置と、反射電極の反射面との間の光学距離が(n/x)λであり、第2の発光層の発光位置と反射電極の反射面との間の光学距離が〔(n+m)/2x〕λ(λは、取り出したい発光の中心波長、nは奇数、mは偶数、xは自然数である)ことを特徴としている。
【0006】
本発明に従い、第1の発光層の発光位置と反射電極の反射面との間の光学距離を(n/x)λとし、第2の発光層の位置と反射電極の反射面との間の光学距離を〔(n+m)/2x〕λとすることにより、有機EL素子の正面方向における第1の発光層からの発光強度を最大とすることができ、有機EL素子の視野角60°方向における第2の発光層からの発光強度を最大とすることができる。すなわち、第1の発光層からの正面方向への発光強度を最大とし、第2の発光層からの視野角60°方向への発光強度を最大としているので、視野角依存性を低減させることができる。
【0007】
図1は、上記の作用効果を説明するための模式図である。図1において、第1の発光層の発光位置を光源1とし、第2の発光層の発光位置を光源2としている。光源1と反射電極の反射面3との光学距離は(n/x)λに設定されており、光源2と反射電極の反射面3との間の光学距離は〔(n+m)/2x〕λとしている。
【0008】
図1に示すように、視野角60°方向における、光源1と反射電極の反射面3との間の光学距離は、(2n/x)λとなり、光源2と反射電極の反射面3との間の光学距離は〔(n+m)/x〕λとなる。従って、正面方向においては、光源1と反射電極の反射面3との間の光学距離が、取り出したい発光の中心波長λの奇数倍となるため、光学距離が共振条件を満たすため、最大の発光強度が得られる。
【0009】
一方、視野角60°方向では、光源2と反射電極の反射面との間の光学距離が、λの奇数倍となるため、光源2からの発光強度が最大となる。
【0010】
従って、第1の発光層からの正面方向への発光強度を最大とし、第2の発光層からの視野角60°方向への発光強度を最大としているので、視野角依存性を低減させることができる。
【0011】
なお、図1においては、光源1が光源2よりも反射電極の反射面3に近い位置に設定されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、光源2すなわち第2の発光層の発光位置が、光源1すなわち第1の発光層の発光位置よりも反射電極の反射面3に近い位置に配置されていてもよい。
【0012】
本発明においては、第1の発光層と第2の発光層が、中間ユニットを介して積層されていることが好ましい。
【0013】
また、反射電極と中間ユニットの間に第1の発光層が配置され、光取り出し側電極と中間ユニットとの間に第2の発光層が配置されている場合において、反射電極と第1の発光層との間に第1のキャビティ調整層が設けられており、中間ユニットと第2の発光層との間に第2のキャビティ調整層が設けられていることが好ましい。これらの第1のキャビティ調整層及び第2のキャビティ調整層の膜厚を調整することにより、第1の発光層の発光位置と反射電極の反射面との間の光学距離及び第2の発光層の発光位置と反射電極の反射面との間の光学距離を容易に調整することが可能となる。
【0014】
第1のキャビティ調整層及び第2のキャビティ調整層は、ホール輸送性材料から構成されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明において、中間ユニットは、電子引き抜き層と、電子注入層と、電子輸送層とから構成されていることが好ましい。本発明において、反射電極及び光取り出し側電極の一方が陽極となり、他方が陰極となるが、中間ユニットにおいて、電子引き抜き層は陰極側に設けられる。電子注入層は、電子引き抜き層の陽極側に隣接して設けられる。電子輸送層は、電子注入層の陽極側に隣接して設けられる。
【0016】
上記のように構成された中間ユニットにおいては、電子引き抜き層が、その陽極側に隣接する隣接層から電子を引き抜いて、引き抜いた電子を電子注入層及び電子輸送層を介して陽極側に供給するとともに、電子の引き抜きにより隣接層に発生したホールが陰極側に供給される。このため、中間ユニットを挟み、両側の発光層において効率良く発光がなされる。
【0017】
電子引き抜き層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(A)│と、隣接層の最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルの絶対値│HOMO(B)│が、│HOMO(B)│−│LUMO(A)│≦1.5eVの関係にあり、電子注入層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値|LUMO(C)|または仕事関数の絶対値|WF(C)|は、|LUMO(A)|より小さいことが好ましい。
【0018】
中間ユニットは、中間ユニット内に設けられた電子引き抜き層による隣接層からの電子の引き抜きにより発生したホールを陰極側に位置する発光ユニットに供給するとともに、引き抜いた電子を電子注入層を介して陽極側に位置する発光ユニットに供給する。
【0019】
以下、中間ユニットの説明において、陰極側に位置する発光層を第1の発光層、陽極側に位置する発光層を第2の発光層として説明する。
【0020】
上述のように、中間ユニットにおいて、隣接層のHOMOのエネルギーレベルの絶対値│HOMO(B)│と、電子引き抜き層のLUMOのエネルギーレベルの絶対値│LUMO(A)│とは、│HOMO(B)│−│LUMO(A)│≦1.5eVの関係にあり、電子引き抜き層のLUMOのエネルギーレベルは、隣接層のHOMOのエネルギーレベルに近い値となっていることが好ましい。これにより、電子引き抜き層は隣接層から電子を引き抜くことができる。この隣接層からの電子の引き抜きにより、隣接層にはホールが発生する。隣接層が第1の発光層内に設けられている場合には、第1の発光層にホールが発生する。また、隣接層が電子引き抜き層と第1の発光層の間に設けられている場合、すなわち中間ユニット内に設けられている場合には、隣接層に発生したホールが、第1の発光層に供給される。第1の発光層に供給されたホールは、陰極からの電子と再結合し、これによって第1の発光層が発光する。
【0021】
一方、電子引き抜き層に引き抜かれた電子は、電子注入層に移動し、電子注入層及び電子輸送層から第2の発光層に供給され、陽極から供給されたホールと再結合し、これによって第2の発光層が発光する。
【0022】
また中間ユニットにおいて、電子引き抜き層が隣接層から電子を引き抜くためには、電子引き抜き層のLUMOのエネルギーレベルが、隣接層のLUMOのエネルギーレベルよりも、隣接層のHOMOのエネルギーレベルに近いことが好ましい。すなわち、隣接層のLUMOのエネルギーレベルの絶対値│LUMO(B)│は、以下の関係を満足することが好ましい。
│HOMO(B)│−│LUMO(A)│<│LUMO(A)│−│LUMO(B)│
【0023】
また、電子引き抜き層として用いる材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値は、一般に隣接層のHOMOをエネルギーレベルの絶対値よりも小さいので、このような場合、それぞれのエネルギーレベルの絶対値は、以下の関係式で示される。
0eV<│HOMO(B)│−│LUMO(A)│≦1.5eV
【0024】
電子注入層のLUMOのエネルギーレベルの絶対値|LUMO(C)|または仕事関数の絶対値|WF(C)|は、電子引き抜き層のLUMOのエネルギーレベルの絶対値|LUMO(A)|より小さいことが好ましく、これにより、電子引き抜き層より引き抜かれた電子は、電子注入層に移動し、電子注入層及び電子輸送層から第2の発光層に供給される。
【0025】
中間ユニット内の電子注入層と、第2の発光層との間には、電子輸送層が設けられる。電子輸送層のLUMOのエネルギーレベルの絶対値|LUMO(D)|は、電子注入層のLUMOのエネルギーレベルの絶対値|LUMO(C)|または仕事関数の絶対値|WF(C)|より小さいことが好ましい。電子注入層に移動した電子は、電子輸送層を通り第2の発光層に供給される。
【0026】
本発明における電子引き抜き層は、例えば、以下に示す構造式で表わされるピラジン誘導体から形成することができる。
【0027】
【化1】

【0028】
(ここで、Arはアリール基を示し、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基、アルキルオキシ基、ジアルキルアミン基、またはF、Cl、Br、IもしくはCNを示す。)
本発明において、さらに好ましくは、以下に示す構造式で表わされるヘキサアザトリフェニレン誘導体から電子引き抜き層を形成することができる。
【0029】
【化2】

【0030】
(ここで、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基、アルキルオキシ基、ジアルキルアミン基、またはF、Cl、Br、IもしくはCNを示す。)
また、中間ユニット内の電子注入層は、例えば、Li及びCsなどのアルカリ金属、LiOなどのアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属酸化物などから形成することが好ましい。
【0031】
また、中間ユニット内の電子輸送層は、有機EL素子において一般に電子輸送性材料として用いられている材料から形成することができる。例えば、Tris(8−quinolinate)aluminum誘導体などのキレート金属錯体、あるいはo−またはm−またはp−phenanthroline誘導体、あるいはシロール誘導体、あるいはオキサジアゾール誘導体、あるいはトリアゾール誘導体等を挙げることができる。
【0032】
本発明において、第1の発光層及び第2の発光層は、素子の厚み方向に積層されており、それぞれ同色を発光する発光層である。赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)などの単色の発光層であってもよいし、白色の発光層であってもよい。白色発光層の場合、オレンジ色発光層と青色発光層を積層した構造を有する白色発光層であってもよい。
【0033】
本発明において規定する光学距離は、それぞれ僅かな範囲であれば、(n/x)λ及び〔(n+m)/2x〕λからずれていても本発明の効果が得られる。従って、本発明において規定している光学距離は、これららの値の±10%の範囲内であればよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明に従い、発光層として、少なくとも第1の発光層及び第2の発光層を設け、第1の発光層の発光位置と反射電極の反射面との光学距離を(n/x)λとし、第2の発光層の発光位置と反射電極の反射面との間の光学距離を〔(n+m)/2x〕λとすることにより、有機EL素子の視野角依存性を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
〔シミュレーション結果〕
表1は、図1に示す光源1(第1の発光層)と反射電極の反射面3との間の光学距離を(1/4)λと一定にし、光源2(第2の発光層)と反射電極の反射面3との間の光学距離(4/4)λ〜(3/8)λまで変化させたときの、種々の視野角での発光強度をシミュレーションした結果を示している。発光強度は正面(0°)、30°、45°、及び60°の4つの視野角で評価した。なお、表1には、正面方向における発光強度を1とした相対値を示している。「最大/最小」は、これら4つの視野角における最大値と最小値の比率を示している。「正面強度」は、発光層が第1の発光層のみである場合の正面方向の発光強度を1とした相対強度を示している。
【0037】
表1において、(2)、(4)、(6)が、本発明の条件を満たしている。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示すように、本発明の条件を満たす(2)、(4)及び(6)では、30°、45°及び60°のいずれの視野角においても相対的に高い発光強度が得られており、最大値/最小値の比率が他のものに比べ小さくなっている。従って、視野角依存性が低減されることがわかる。
【0040】
また表1から明らかなように、第1の発光層のみを設けた場合、60°の視野角において最も発光強度が低くなっている。従って、第2の発光層を60°において高い発光強度となるように設定することにより、視野角依存性を低減することができる。
【0041】
光学距離は、各層の膜厚と屈折率により求められるものであり、さらにマルチモードを考慮すべきものであるが、本願明細書においては、各層の屈折率及びマルチモードを簡略化して計算している。
【0042】
(実施例1)
図2は、本実施例において作製した有機EL素子を示す模式的断面図である。本実施例の有機EL素子は、図2に示すように、図示しない基板の上にAlからなる金属薄膜41を形成し、その上にITO(インジウム錫酸化物)膜からなる透明導電膜42(膜厚30nm)が形成されている。この透明導電膜42と金属薄膜41から反射電極が構成されており、金属薄膜41の上方端面が反射面41aとなる。
【0043】
透明導電膜42の上は、NPBからなるホール輸送層51(膜厚30nm)が形成されている。このホール輸送層51は、第1のキャビティ調整層としても機能する。
【0044】
ホール輸送層51の上には、オレンジ色発光層11(膜厚60nm)と青色発光層12(膜厚50nm)とがこの順序で積層されている。オレンジ色発光層11と青色発光層12から白色発光の第1の発光層10が構成されている。第1の発光層10の発光位置10aは、オレンジ色発光層11と青色発光層12の界面から青色発光層側に5nm離れた領域である。
【0045】
オレンジ色発光層11は、ホール輸送性材料であるNPBをホスト材料として100重量%用い、これにオレンジ色発光ドーパントであるDBzRを3重量%となるように用いて形成している。
【0046】
青色発光層12は、電子輸送性材料であるTBADNをホスト材料として100重量%用い、これに青色発光ドーパントであるTBPを1重量%となるように含有させて形成させている。
【0047】
第1の発光層10の上には、電子輸送層31(膜厚20nm)、電子注入層32(膜厚10nm)、及び電子引き抜き層33(膜厚20nm)がこの順序で積層されている。中間ユニット30は、電子輸送層31、電子注入層32、及び電子引き抜き層33から構成されている。電子輸送層31は、Alqから形成されている。電子注入層32は、Liを堆積させることにより形成されているが、非常に膜厚が薄いので、電子輸送層31のAlqとの複合体である、Alq:Li=1:1の組成を有しているものと思われる。電子引き抜き層33は、HAT−CN6から形成されている。
【0048】
中間ユニット30の上には、第2のキャビティ調整層52(膜厚275nm)が形成されている。第2のキャビティ調整層52も、NPBから形成されている。
【0049】
第2のキャビティ調整層52の上には、オレンジ色発光層21及び青色発光層22がこの順序で積層して形成されている。第2の発光層20は、オレンジ色発光層21と青色発光層22から構成されている。オレンジ色発光層21及び青色発光層22は、第1の発光層10のオレンジ色発光層11及び青色発光層12と同様にして形成されている。
【0050】
第2の発光層20の発光位置20aは、オレンジ色発光層21と青色発光層22の界面から青色発光層22側に5nm離れた領域である。
【0051】
第2の発光層20の上には、電子輸送層53(膜厚20nm)が形成されている。電子輸送層53は、Alqから形成されている。
【0052】
電子輸送層53の上には、光取り出し側電極であるLi/Agからなる金属薄膜電極54(Li膜厚1nm:Ag膜厚15nm)が形成されている。
【0053】
第1のキャビティ調整層51の膜厚を調整することにより、第1の発光層の発光位置と反射電極の反射面との間の光学距離、及び第2の発光層の発光位置と反射電極の反射面との間の光学距離を調整することができる。また、キャビティ調整層52の膜厚を調整することにより、第2の発光層の発光位置と反射電極の反射面との間の光学距離を調整することができる。
【0054】
以上のようにして構成された有機EL素子において、第1の発光層10の発光位置10aと反射電極の反射面41aとの間の光学距離は、125nmとなっている。また、第2の発光層20の発光位置20aと反射電極40の反射面41aとの間の光学距離は、312.5nmとなっている。
【0055】
本実施例における第1の発光層10及び第2の発光層20は、オレンジ色発光層と青色発光層で積層させた白色発光層であり、取り出したい発光の中心波長λは500nmである。従って、第1の発光層の発光位置と反射電極の反射面との光学距離は(1/4)λとなっており、第2の発光層の発光位置と反射電極の反射面との光学距離は(5/8)λとなっている。従って、本発明の範囲内となるように設定されている。
【0056】
図3は、図2に示す有機EL素子の正面方向での発光スペクトル及び視野角60°方向での発光スペクトルを示す図である。図3に示すように、正面方向での発光強度と視野角60°方向での発光強度はほぼ同程度であり、視野角依存性が低減されていることがわかる。波長500nmにおける正面方向の発光強度を100であるとすると、視野角60°方向での発光強度は83である。
【0057】
NPBは、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジンであり、以下の構造を有している。
【0058】
【化3】

【0059】
DBzRは、5,12−ビス{4−(6−メチルベンゾチアゾール−2−イル)フェニル}−6,11−ジフェニルナフタセンであり、以下の構造を有している。
【0060】
【化4】

【0061】
TBADNは、2−ターシャリー−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセンであり、以下の構造を有している。
【0062】
【化5】

【0063】
TBPは、2,5,8,11−テトラ−ターシャリー−ブチルペリレンであり、以下の構造を有している。
【0064】
【化6】

【0065】
HAT−CN6は、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルであり、以下の構造を有している。
【0066】
【化7】

【0067】
Alqは、トリス−(8−キノリラト)アルミニウム(III)であり、以下の構造を有している。
【0068】
【化8】

【0069】
(比較例1)
図4は、比較例1の有機EL素子の構造を示す模式的断面図である。実施例1と同様に、基板の上に金属薄膜41が形成されており、金属薄膜41の上に透明導電膜42が形成されている。透明導電膜42の上には、ホール輸送層51が形成されている。ホール輸送層51の上には、オレンジ色発光層11及び青色発光層12が形成されている。青色発光層12の上には、電子輸送層53が形成されている。電子輸送層53の上には、光取り出し電極としてのAgから形成された金属薄膜54が形成されている。
【0070】
比較例1の有機EL素子は、発光層が1つだけ設けられており、第1の発光層10のみが設けられている。第1の発光層10の発光位置10aと反射電極40の反射面41aとの間の光学距離は125nmである。
【0071】
図5は、比較例1の正面方向での発光スペクトルと視野角60°方向での発光スペクトルを示す図である。図5から明らかように、正面方向での発光強度と、視野角60°方向での発光強度には大きな違いがある。例えば、波長500nmでは、正面方向での発光強度100に対して、視野角60°方向での発光強度は68となっており、視野角依存性が大きいことがわかる。
【0072】
(比較例2)
図2に示す実施例1と同様の構造において、第2の発光層20の発光位置20aと反射電極40の反射面41aとの間の距離を375nmにした有機EL素子を作製した。375nmは、波長λ=500nmの場合の(3/4)λに相当する。
【0073】
この比較例2の波長500nmにおける正面方向での発光強度を100とすると、視野角60°方向での発光強度は64となる。従って、実施例1に比べ視野角依存性が大きくなることがわかる。
【0074】
以上のことから明らかなように、本発明に従い設計された実施例1の有機EL素子は、比較例1及び比較例2の有機EL素子に比べ大幅に視野角依存性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の作用効果を説明するための模式図。
【図2】本発明に従う一実施例の有機EL素子を示す模式的断面図。
【図3】本発明に従う一実施例の有機EL素子の正面方向の発光スペクトル及び視野角60°方向の発光スペクトルを示す図。
【図4】比較例1の有機EL素子を示す模式的断面図。
【図5】比較例1の有機EL素子の正面方向の発光スペクトル及び視野角60°方向の発光スペクトルを示す図。
【符号の説明】
【0076】
1…光源(第1の発光層の発光位置)
2…光源(第2の発光層の発光位置)
3…反射電極の反射面
10…第1の発光層
10a…第1の発光層の発光位置
11…オレンジ色発光層
12…青色発光層
20…第2の発光層
20a…第2の発光層の発光位置
21…オレンジ色発光層
22…青色発光層
30…中間ユニット
31…電子輸送層
32…電子注入層
33…電子引き抜き層
40…反射電極
41…金属薄膜
41a…反射電極の反射面
42…透明導電膜
51…第1のキャビティ調整層
52…第2のキャビティ調整層
53…電子輸送層
54…光取り出し側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射電極と、光取り出し側電極と、前記反射電極及び前記光取り出し側電極の間に配置される第1の発光層及び第2の発光層とを備える有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記第1の発光層の発光位置と、前記反射電極の反射面との間の光学距離が(n/x)λであり、前記第2の発光層の発光位置と前記反射電極の反射面との間の光学距離が〔(n+m)/2x〕λ(λは、取り出したい発光の中心波長、nは奇数、mは偶数、xは自然数である)ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項2】
前記第1の発光層と前記第2の発光層が中間ユニットを介して積層されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項3】
前記反射電極と前記中間ユニットの間に前記第1の発光層が配置され、前記光取り出し側電極と前記中間ユニットの間に前記第2の発光層が配置されている場合において、前記反射電極と前記第1の発光層との間に第1のキャビティ調整層が設けられており、前記中間ユニットと前記第2の発光層との間に第2のキャビティ調整層が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項4】
前記反射電極及び前記光取り出し側電極のうちの一方が陽極であり、他方が陰極であり、
前記中間ユニットが、陰極側に設けられる電子引き抜き層と、該電子引き抜き層の陽極側に隣接する電子注入層と、該電子注入層の陽極側に隣接する電子輸送層とから構成されており、
前記電子引き抜き層が、その陽極側に隣接する隣接層から電子を引き抜き、引き抜いた電子を前記電子注入層及び前記電子輸送層を介して陽極側に供給するとともに、電子の引き抜きにより、前記隣接層に発生したホールが陰極側に供給されることを特徴とする請求項2または3に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項5】
前記第1のキャビティ調整層及び/または前記第2のキャビティ調整層が、ホール輸送性材料から形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項6】
前記第1の発光層及び前記第2の発光層のそれぞれが、オレンジ色発光層と青色発光層を積層した構造を有する白色発光層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−265638(P2007−265638A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85321(P2006−85321)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】