説明

有機ケイ素化合物を基礎とする架橋可能な組成物、その使用並びに該組成物を用いて製造された成形体、織布及び不織布

【課題】特に架橋可能な材料、織布又は一般に別のシリコーンゴム被覆もなされた基体が特定の表面特性を有するように先行技術を改良する。
【解決手段】有機ケイ素化合物、少なくとも1種の楕円形ないし球形の固体充填剤及び少なくとも1種の層状の充填剤、(1)〜(4)からの少なくとも1種の成分(E)を含有する組成物であって、加硫物の摩擦係数が、粒子(D)を含有しない組成物に対して低減されている組成物によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ケイ素化合物を基礎とする架橋可能な組成物並びに該組成物から製造された織布及び不織布及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ケイ素化合物を基礎とし、様々な種類の充填剤及び添加剤を有する架橋可能な材料は多岐に亘って知られている。例えばEP1152080号A2では、織布上で、特に表皮摩擦を低下させるための薄い接着層中に固定化された球状粒子が記載されており、かつEP0953675号A2及びWO01/12895号A1では、織布用被覆において低い摩擦係数を達成するための層状の充填剤/粒子を記載している。更に、ほぼ層状で片状の付着摩擦低減のための充填剤は、DE10211314号に記載されている。
【0003】
時が経つうちに、効果充填剤として多方面で推奨される層状の増量剤こそ、例えばゴムの接着性を著しく悪化させることが明らかになってきた。
【0004】
WO01/12895号A1は、エラストマー塗膜の物理特性が層状充填剤によって目立って悪化することを記載しており、それによりEP0953675号A2に記載される前記のような充填剤改質された被覆の使用は、ここでは単にトップコートとしての用途に限定されるべきであった。
【0005】
DE10211314号で推奨される層状ないし片状の効果充填剤を架橋可能な材料及び被覆の摩擦係数を下げるために使用することにより、望ましくない表面効果並びに不十分な加工性がもたらされる。
【0006】
EP0712956号では、球状の有機/無機の成分を有する被覆が記載されており、これらの成分は、粒度とは無関係に同様に被覆特性の悪化に導く。更に、球状の成分の均質化のために溶剤が必須成分である。
【特許文献1】EP1152080号A2
【特許文献2】EP0953675号A2
【特許文献3】WO01/12895号A1
【特許文献4】DE10211314号
【特許文献5】EP0712956号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、先行技術を改良することであり、特に架橋可能な材料、織布又は一般に別のシリコーンゴム被覆もなされた基体が特定の表面特性を有することが多方面で望ましい。主に粘着性の手触りの通常のゴム表面の場合を除き、軟質で乾燥した手触りを有し、それに伴い低い摩擦係数を有する表面にしばしば需要がある。特定の程度で、所定のゴム材料(例えばワイパーブレード、ソフトタッチ用途、非粘着性封止剤)又はエアバッグ布に対するゴム被覆において摩擦の低減が多大に要求されている。特に、エアバッグの開放をできる限り迅速にするには、物質と物質との摩擦をできる限り小さく保持せねばならない。
【0008】
多方面で望まれる、架橋可能な材料又は被覆の良好なシリコーンゴム特性、例えば非常に良好な力学、高い弾性、良好な耐熱性は、ゴム材料又は被覆それ自体の特定の改質によるか、又はシリコーンゴム−ベースコート上に薄いトップコートを施して表面改質することのいずれかによって決定的に改善できる。トップコートの良好な付着性を前提として、ショア硬度をできるだけ高くし、加硫物の手触り特性と摩擦係数とを大きく改善しつつ、力学的挙動が良好なゴム−ベースコートの摩擦係数とその難燃性の低下を達成できた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の対象は、
− (A,B)付加反応によって架橋する有機ケイ素化合物、
− (D)少なくとも1種の楕円形ないし球形の固体充填剤と、少なくとも1種の層状の充填剤、並びに
− 更に以下の群:
(1)少なくとも8個の炭素原子を有する炭化水素化合物であって、その炭化水素骨格が、場合によりヘテロ原子、例えばN、O、P又はSによって中断されていてよく、かつそれらのヘテロ原子の遊離原子価が水素又は一価の炭化水素基によって飽和されている炭化水素化合物、
(2)一般式
(RO)4−nSiX
[式中、Rは、16個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を意味し、かつXは、Rとは無関係にRの意味を有するか、又は官能性炭化水素基を意味し、この場合に、有機官能基とSi原子との間に1〜6個の炭素原子が存在し、かつ有機官能基は、場合によりエポキシ基又はメタクリルオキシ基であってよい]で示されるシラン、
(3)一般式
(RO)4−nMX
[式中、R及びXは、前記と同じ意味を有し、かつMはTi又はZrを意味する]で示される有機ジルコニウム化合物又は有機チタン化合物、場合により
(4)有機溶剤
からの少なくとも1種の成分(E)を含有する組成物であって、加硫物の摩擦係数が、粒子(D)を含有しない組成物に対して低減されている組成物である。
【0010】
本発明による組成物の接着性は、雲母又はタルクを含有する組成物と少なくとも同等のものであるが、それより良好であることが好ましい。
【0011】
有機ケイ素化合物(A)は、有利には式
SiO(4−s−t)/2
[式中、
は、同一又は異なってよく、SiC結合を有する脂肪族不飽和炭化水素基を意味し、
は、同一又は異なってよく、置換もしくは非置換の、SiC結合を有する脂肪族飽和炭化水素基を意味し、
sは、0、1、2又は3、有利には0、1又は2であり、かつ
tは、0、1、2又は3であるが、但し、合計s+tは3未満又は3であり、かつ1分子当たりに少なくとも2個の基Rが存在する]で示される単位からなる直鎖状、環状又は分枝鎖状のシロキサンである。
【0012】
有機ケイ素化合物(A)は、25℃で平均粘度500〜100000mPasを有することが好ましい。
【0013】
有利には、基Rは、脂肪族で、多重結合を有する2〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、例えばビニル基、アリル基、メタリル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、エチニル基、プロパルギル基及び2−プロピニル基であり、その際、かかる基Rは2〜6個の炭素原子を有することが特に好ましく、特にビニル基及びアリル基である。
【0014】
基Rは、有利には、置換もしくは非置換の、脂肪族飽和の、1〜18個の、特に有利には1〜8個の炭素原子を有する一価の炭化水素基、特にメチル基である。
【0015】
基Rのための例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基;ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基;ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基;オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基;ノニル基、例えばn−ノニル基;デシル基、例えばn−デシル基;ドデシル基、例えばn−ドデシル基;オクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えばビニル基、1−プロペニル基及び2−プロペニル基;アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基;アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基;キシリル基及びエチルフェニル基;及びアラルキル基、例えばベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基である。
【0016】
特に有利には、有機ケイ素化合物(A)は、25℃で粘度1000〜100000mPasを有し、構造
【0017】
【化1】

[式中、Meは、メチル基を意味し、Viはビニル基を意味する]で示される直鎖状のオルガノポリシロキサンである。
【0018】
Siに結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物としては、有利には式
SiO(4−u−v)/2
[式中、
は、同一又は異なってよく、Rについて上述した意味を有し、
uは、0、1、2又は3であり、かつ
vは、0、1又は2であり、有利には0又は1であるが、但し、u+vの合計は、3未満又は3であり、かつ1分子当たりに平均して少なくとも2個のSiに結合した水素原子が存在する]で示される単位からなる、直鎖状、環状又は分枝鎖状のシロキサンが使用される。
【0019】
有機ケイ素化合物(B)は、25℃で粘度10〜2・10mPsを有することが好ましい。
【0020】
1分子当たりに3個以上の、SiH結合を有する有機ケイ素化合物(B)を使用することが好ましい。1分子当たりに2個だけのSiH結合を有する成分(B)を使用する場合に、有機ケイ素化合物(A)は、有利には1分子当たりに少なくとも3個の脂肪族の炭素−炭素多重結合を有する。従って該有機ケイ素化合物(B)を架橋剤として使用することが好ましい。
【0021】
有機ケイ素化合物(B)は、有利には0.002〜1.7質量%の水素、特に有利には0.1〜1.7質量%の水素といったSiに結合された水素の含量を有する。
【0022】
特に有利には、有機ケイ素化合物(B)は、25℃で10〜800mPasの粘度を有するオルガノポリシロキサンである。
【0023】
該ポリオルガノシロキサン(B)は、有利には、硬化可能なシリコーンゴム材料中にSiH基と、成分(A)の脂肪族の炭素−炭素多重結合を有する基とのモル比が0.5〜5、有利には1.0〜3.0となる量で含まれている。
【0024】
脂肪族の炭素−炭素多重結合を有する基とSiに結合した水素との間の付加反応(ヒドロシリル化)を促す成分(C)としては、本発明による組成物中では、今までに知られる全てのヒドロシリル化触媒を使用することができる。
【0025】
ヒドロシリル化触媒(C)のための例は、金属、例えば白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム及びイリジウム、有利には白金であり、これらは場合により微細な担持材料、例えば活性炭素、酸化アルミニウム又は二酸化ケイ素上に固定化されていてよい。
【0026】
触媒(C)として、白金並びにその化合物及び錯体を使用することが好ましい。
【0027】
触媒(C)の量は、所望の架橋速度及びその都度の用途並びに経済的見地に左右される。本発明による組成物は、触媒(C)を、得られる白金含量がそれぞれ架橋可能な材料の全質量に対して、有利には0.05〜500質量ppm(=百万質量部あたりの質量部)、特に有利には0.5〜100質量ppm、特に1〜50質量ppmとなる量で含有する。
【0028】
(D)として、本発明による組成物中で、少なくとも1種の楕円形ないし球形の固体及び層状の固体を使用した。更に非補強性の、有利には補強性の充填剤も同様に可能である。
(1)
適切な球状ないし楕円の固体は、酸化ケイ素及び金属酸化物、純粋に有機的な化合物、有機ケイ素化合物から選択されるが、有利には別の金属との金属−混合酸化物又は半金属から選択される。金属酸化物の場合には、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、ハフニウム、亜鉛及びスズといった金属の酸化物が好ましく、かつ酸化ケイ素の場合には、コロイダルシリカ及び沈降シリカが好ましい。金属酸化物の場合には、酸化アルミニウム、例えばコランダム、別の金属及び/又はケイ素とのアルミニウム混合酸化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄が特に好ましい。
【0029】
楕円ないし球状あるいは球形の、効果充填剤として使用される充填剤とは、壁材料の厚さが異なる充填剤である。これは、薄壁の中空球又はマイクロカプセルであってよく、これらは選択的に作用物質流体を収容し、複層壁構造、コア−シェル構造を有し、ナノメートル範囲又はマイクロメートル範囲の粒度を有する厚壁の中空球又は充実球又はこれらの混合物であってよい。
【0030】
楕円形ないし球形の固体は、無機、異形、半自形、微結晶、クリスタライト様、X線非晶質ないし非晶質であってよく、又は種々の連晶/凝集体の混合形態からなってよく、かつ多源でも単源でもよい。ホウケイ酸塩ガラス、工業用ガラス、純粋なSiOガラス、炭酸カルシウム又はセラミック組成物からなる、有利にはアルミノケイ酸塩、例えばムライトの球、微小球又はナノ球も同様に可能である。例えばまた、官能基は、固体を官能性シラン、例えばビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン又はメタクリルオキシプロピルトリアルコキシシランで処理することによって得ることもでき、これらは先行技術に従って施与することができる。他の有機官能基のための例は、アクリル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基である。
【0031】
また、例えばビニルアセテート/エチレン−コポリマー、ポリアクリルニトリル粉末、アクリレート又はスチレンアクリレートからの、ナノメートル範囲ないしマイクロメートル範囲の粒度を有するポリマーの有機粒子又は粉末又はそれらの混合物が含まれていてもよい。球状の固体シリコーン樹脂、有利にはMQ樹脂、約30℃のガラス点を有するTD樹脂及び/又はシリコーンエラストマーであってよく、場合により先行技術に従って施されている官能基を有してもよい有機ケイ素化合物からなる粒子が好ましい。
【0032】
本発明により使用される球状の効果充填剤は、直径0.01〜100μm、有利には1〜40μm、特に有利には2〜25μmの直径を有する。
(2)
必須のものとして(D)中に含まれる層状の充填剤の場合には、少なくとも1種の物質は、天然のフィロシリケート、例えば雲母又は粘土鉱物と、その焼成された選択肢とを含む群か、合成の固体、例えば金属片又はガラス粉の群か、又は小片状の金属酸化物/金属水酸化物又はテクトケイ酸塩、例えば束沸石の群から選択した。天然のフィロシリケートの例は、タルク−パイロフィライト群の三層ケイ酸塩、雲母族の二8面体ないし三8面体の三層ケイ酸塩、例えばムスコバイト、パラゴナイト、フロゴパイト、ビオタイト、クロライト族の四層ケイ酸塩並びに粘土鉱物群の代表物、例えばカオリナイト、モンモリロナイト、イライトである。
【0033】
本発明により(D)で使用される層状の充填剤は、部分的に未処理であるか、又は官能性シランで表面処理されていてよく、それによって僅かな補強作用を達成することができる。充填剤の表面処理をすることができる官能性シランのための例は、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン又はメタクリルオキシプロピルトリアルコキシシランである。アルコキシ官能基の他に同様に有機官能基を有してよいモノ−、ジ−及びテトラアルコキシシランも可能である。
【0034】
層状の固体は、十分な層間剥離を前提として、常に、その粒子長がその厚さよりも数的に大きいことを特徴とする。天然の層状ケイ酸塩又は有利には焼成された変形のいずれであるかとは無関係に、その厚さはその長さよりも通常は10〜20倍小さい。本発明により使用される僅かに補強性の層状の固体は、0.01〜80μm、有利には0.1〜20μm、特に有利には0.8〜20μmの粒子長を有する。
(3)
(D)においては、付加的に高い比表面積>50m/g又は高い吸油量>100を有する補強性の固体を、層状の固体と組み合わせて使用することができるが、但し、架橋可能な材料の補強性成分による粘度上昇はできる限り低く保持される。
【0035】
補強性充填剤は、様々なナノスケールの成分であってもよい:アルミノケイ酸塩、炭酸カルシウム、有利には二酸化ケイ素。特に有利な補強性の固体のための例は、少なくとも50m/gのBET表面積を有する熱分解法シリカ又は沈降シリカ並びにファーネスブラック及びアセチレンブラックであり、その際、上記のシリカは親水性を有するか、又は公知法によって疎水化されていてよい。高い吸油量を有する補強性の固体の典型的な例は、珪藻土であり、珪藻土は焼成された形、又は有利には天然の形で使用することができる。
【0036】
層状の固体と付加的な補強性の固体とは(D)中で、2:1及び1:2の量比で存在してよいが、その比は1:1が好ましい。
【0037】
本発明による組成物は、架橋可能な複合材料中に含まれる全ての粒子状固体の割合が、それぞれ100質量部の全配合物に対して、少なくとも15%、有利には30〜50%、特に有利には50〜85%であることを特徴とする。
【0038】
架橋可能な材料中の層状の固体と楕円ないし球状の固体との比率が1:20〜20:1の範囲で変動しうるが、有利には1:10であると、接着性の低下は層状の成分によって反対に作用することが明らかにされている。この場合に、含まれている層状の固体の種類、使用量及び官能性は、できる限り良好な接着強さにおいて、天然の層状ケイ酸塩、例えばタルク又は雲母の含量がより高いという点で際だつかかる組成物(D)と摩擦係数が少なくとも同等に良好となるように選択される。
【0039】
球状の固体と層状の固体との比率は、付加的な固体、有利には補強性の固体を含めるとそれとは異なり、基本的に1:1であってよいが、3:1が好ましく、6:1が特に好ましい。
【0040】
本発明による組成物中には、以下の群からの少なくとも1種の成分(E)が含まれている:
有機化合物(E)のための例(1)は、少なくとも8個の炭素原子を有する炭化水素化合物であり、その際、該炭化水素骨格は、場合によりヘテロ原子、例えばN、O、P又はSによって中断されていてよく、かつそのヘテロ原子の遊離原子価は水素又は一価の炭化水素基によって飽和されている。
【0041】
有利には(E)のための例(2)は、有機ケイ素化合物(E)、例えば一般式:
(RO)4−nSiX
[式中、Rは、16個までの炭素原子を有する一価の炭化水素基を意味し、かつXはRとは無関係にRの意味を有するか、又は官能性炭化水素基を意味し、その際、有機官能基とSi原子との間に1〜6個の炭素原子が存在し、かつ該有機官能基が、場合によりエポキシ基又はメタクリルオキシ基であってよい]で示されるシランである。
【0042】
有機金属化合物(E)のための例(3)は、一般式:
(RO)4−nMX
[式中、R及びXは上記と同じ意味を有し、かつMはTi又はZrを意味する]で示される有機ジルコニウム化合物又は有機チタン化合物である。
【0043】
化合物(E)は、全組成物に対して、0.05〜15%、有利には0.1〜7%、特に有利には0.5〜5%の量で組成物中に含まれている。
【0044】
成分(A)〜(E)の他に、本発明による硬化可能な組成物は、今までに付加架橋可能な組成物の製造にも使用された全ての更なる助剤(F)を含有してもよいが、但し、更なる物質(F)は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)とは異なる。
【0045】
更なる物質(F)のための例は、補強性充填剤、非補強性充填剤、シロキサン(A)及び(B)とは異なる樹脂様ポリオルガノシロキサン、分散助剤、溶剤、粘度調節剤、定着剤、顔料、染料、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤、抑制剤及び安定剤である。
【0046】
成分(F)として使用することができる慣用の抑制剤の例は、アセチレン系アルコール、例えば1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ドデシン−3−オール、ポリメチルビニルシクロシロキサン、例えば1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルテトラシクロシロキサン、テトラビニルジメチルジシロキサン、トリアルキルシアヌレート、アルキルマレエート、例えばジアリルマレエート、ジメチルマレエート及びジエチルマレエート、アルキルフマレート、例えばジアリルフマレート及びジエチルフマレート、有機ヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド及びピナンヒドロペルオキシド、有機ペルオキシド、有機スルホキシド、有機アミン、ジアミン及びアミド、ホスファン及びホスファイト、ニトリル、トリアゾール、ジアジリジン及びオキシムである。
【0047】
本発明による組成物の抑制剤含量は、有利には0〜50000ppm、特に有利には50〜2000ppm、特に100〜800ppmである。
【0048】
更なる物質(F)のための例は、充填剤、例えば物質(D)とは異なる不活性充填剤、表面特性の改善のための物質、例えば定着剤、反応性希釈剤、粘度調節剤、加工助剤、例えば可塑剤、顔料、UV吸収剤、可溶性染料、香料、殺真菌剤、純粋に有機的な樹脂、腐蝕防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、溶剤、電気的特性に影響を及ぼす試剤、例えば導電性カーボンブラック、難燃剤、光安定剤及び皮膜形成時間の延長のための試剤であり、その際、成分(F)は定着剤であることも好ましい。
【0049】
更なる物質(F)として使用することができ、かつ成分(D)とは異なる非補強性充填剤のための例は、石英粉、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、金属酸化物粉末、例えばアルミニウム、チタン、鉄又は亜鉛の酸化物、ケイ酸バリウム、炭酸カルシウム及び抑制作用を回避できれば場合により硫酸カルシウム及び硫酸バリウム並びにプラスチック粉末、例えばポリアクリルニトリル粉末又はポリテトラフルオロエチレン粉末である。更に、充填剤としては、繊維状成分、例えばガラス繊維及びプラスチック繊維を使用することができる。これらの充填剤のBET表面積は、50m/g未満であることが好ましい。成分(F)として使用することができる可塑剤のための例は、トリメチルシリル基又はヒドロキシ基を末端に有する、25℃で最大1000mm/sの粘度を有するポリジメチルシロキサン又はジフェニルシランジオールである。
【0050】
定着剤のための例は、エポキシシラン、メタクリルオキシシラン又はポリシロキサンである。
【0051】
熱安定剤のための例は、遷移金属脂肪酸塩、例えばオクタン酸鉄、遷移金属シラノレート、例えば鉄−シラノレート並びにセリウム(IV)化合物である。
【0052】
付加的な充填剤を使用するのであれば、それは、100質量部の全配合物に対してそれぞれ、有利には1〜20質量部、特に有利には2〜5質量部の量である。
【0053】
付加的に、水及び溶剤、例えばトルエン、キシレン、ベンジン、酢酸エステルを使用することもでき、無水及び溶剤不含で作業することが好ましい。
【0054】
本発明による組成物は、必要であれば、液体、例えば溶剤又は水中に溶解、分散、懸濁又は乳化させることができる。本発明による組成物は、特に成分の粘度並びに充填剤含量に応じて、低粘度かつ流延可能であってよく、ペースト状の粘稠性を有してよく、粉末状であってよく、又は展性で高粘度の組成物であってよく、このことは、周知のように当該技術分野でしばしばRTV−1、RTV−2、LSR及びHTVと呼称される組成物が該当する。
【0055】
本発明による組成物の製造のための混合工程は、より強力な剪断混合であることが好ましい。基礎媒体の粘稠性及び粘性に応じて、混合工程は、練りロール機、混練機、ディゾルバー、Z型ミキサー、ボールミル又は単純な攪拌機で行うことができる。混合工程は、有利には簡易化のために周囲圧力でさえも実施される。しかしながら混合は、減圧下又は高められた圧力下でも可能である。同様に簡易化のために、混合工程は、有利には周囲温度でさえも実施される。しかしながら、高められた温度又は冷却しながら混合することも可能である。本発明による組成物は、製造において簡単にかつ良好に加工できるという利点を有する。更に本発明による組成物は、該組成物から、低い摩擦係数と高いショア硬度を有する指触乾燥表面を有する加硫物を製造できるという利点を有する。
【0056】
本発明による組成物は、今までに知られる有機ケイ素化合物を基礎とする架橋可能な組成物と同じ条件下に架橋させることができる。この場合に、製造方法として、シリコーンゴムの加工のための全ての通常の方法を使用することができる。このための例は、カレンダー加工、圧縮成形、射出成形、押出成形及び流展成形である。
【0057】
本発明の更なる対象は、本発明による組成物の使用によって製造される成形体である。
【0058】
本発明による組成物は、織布、例えば織物、経編物、不織スクリム(Gelege)、緯編物、フリース、フェルトなどの被覆のためにも使用することができる。該被覆は、ナイフ塗布法、浸漬法、押出法、噴霧法又は吹き付け法で施与することができる。また全ての種類のローラ被覆、例えば彫刻ロール、スロップパジング又はマルチローラ系による施与並びにスクリーン印刷も可能である。
【0059】
被覆された織物は、低減された表面摩擦、隠蔽力、低減された発熱量が好ましく、かつトップコート用途では引裂伝播抵抗及び極限引裂強さが好ましいあらゆるところで使用することができる。パラグライダー、パラシュート、熱気球、普段着、余暇物品、例えばテント又はリュックサック、帆又はエアバッグである。工業的範囲において、その被覆された織物は、有利にはベルトコンベア、補償板、日よけ、織物構造物のために、又は遮蔽領域で使用される。
【0060】
本発明の更なる対象は、本発明による組成物で被覆された織布又は不織布である。
【0061】
本発明による組成物の架橋によって、有利には良好な接着性と、後処理なくして低減された摩擦係数を有する表面を有する加硫物が得られる。本発明による加硫物は、更に低減された発熱量を有するという利点を有する。
【0062】
Siに結合した水素と脂肪族多重結合との付加によって架橋可能な本発明による組成物は、今までに知られたヒドロシリル化反応によって架橋可能な組成物と同じ条件下で架橋させることができる。有利には、その条件は、温度100〜220℃、特に有利には130〜190℃であり、圧力900〜1100hPaである。しかしながら、より高い又はより低い温度及び圧力を使用することもできる。
【0063】
本発明による組成物並びに該組成物から製造される本発明による架橋生成物は、今までにエラストマーへと架橋可能なオルガノポリシロキサン組成物もしくはエラストマーが使用されていた全ての目的のために使用することができる。これは、特にシリコーン被覆、成形部材の製造、例えば射出成形法、真空押出成形法、押出成形法、流展成形法及び圧縮成形法での成形部材の製造並びに型どり、シーリング材料、埋没材及び注形コンパウンドとしての使用を含む。
【0064】
驚くべきことに、円形又は層状が好ましい種々の形態の、種々の寸法比の、組成の、及び部分的な表面官能性の固体粒子からなる混合物を織布、シート又は他の基体用のシリコーンゴム材料又はシリコーンゴム被覆において使用する場合に、1種だけの楕円ないし球状の固体、1種だけの天然の層状の固体、及び通常の補強性充填剤を有する現存の系と比較して複数の生成物特性の目立った改善を達成することができた。
【0065】
本発明による組成物の特定の固体組成物は、以下の点で優れている:
(1)本発明による組成物の加硫物の摩擦係数が、ほぼ同等の良好な接着性において、通常の粒子改質されていないシリコーンゴムに対して大きく低減されていること。摩擦係数の低減は、少なくとも10%、有利には20%であり、特に有利には80%までである。
(2)シリコーンゴム被覆された基体に対する接着性と被覆されていない織物基体に対する接着性が、層状の固体を含まない被覆で実質的に下回らない、もしくは有利には高められており、かつ専ら球状の成分を有する加硫物の接着性が少なくとも達成されるのと同時に、部分的に、天然の層状ケイ酸塩に富む被覆からも知られるような加硫物の摩擦係数が低いこと。
(3)粘度範囲が1000〜1000000mPasであり、有利には5000〜100000であり、特に有利には基本的に低粘度の複合ゴムのダイラタント及びレオペキシー挙動を有するのとともに、非常に良好な加工可能性を有すること。
【実施例】
【0066】
本発明による組成物の以下の配合例において、全ての部とパーセンテージの表記は、特に記載がない限り質量に対するものである。特に記載がない限り、以下の実施例は、大気の圧力、従って約1000hPaで、かつ室温、従って約20℃で、あるいは付加的な加熱又は冷却をせずに反応物を室温で一緒にしたときに生ずる温度で実施される。実施例で示される全ての粘度表記は、25℃の温度に対するものを示すべきである。
【0067】
基礎配合物1(B−1)
粘度1000mPasを有するビニル末端を有するジメチルポリシロキサン83gをケイ酸塩充填剤55gと混合して、基礎材料とする。層状の固体として、層状ケイ酸塩(微粒タルク)20gとアルミニウム水和物20gとをディゾルバーを用いて、少なくとも12m/秒のディゾルバーディスクの周囲速度でよく剪断混合する。この粉砕物バッチに、テトラエチルケイ酸塩6g、トリメチルシラノール0.4g及び白金触媒(1質量%の白金を有する白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体)1.2g、定着剤を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含量は1.25質量%であり、粘度は10〜20mPasである)10g及びエチニルシクロヘキサノール0.6gを混加する。調整された粘度は51600mPasである。
【0068】
基礎配合物2(B−2)
基礎配合物(B−1)中で、層状で微粒の増量剤の代わりに、より粗粒で十分に球状の形態を有するアルミノケイ酸塩充填剤80gを剪断混合し、同等に調整された粘度は48800mPasである。
【0069】
こうして得られたシリコーンゴム材料(B−1)及び(B−2)を180℃で3分間以内で加硫させた。
【0070】
実施例1(BE−1)、効果充填剤としてタルクを有する最適化された配合物
粘度1000mPasを有するビニル末端を有するジメチルポリシロキサンと官能化されていないケイ酸塩充填剤とからなる基礎材料128gを、更なる70gのジメチルポリシロキサン及び微粒で層状の固体(微粒タルク)110gと一緒にディゾルバーを用いて、少なくとも12m/sのディゾルバーディスクの周囲速度でよく剪断混合する。この粉砕物バッチに、22.6gのドデセン−1、6gのテトラエチルケイ酸塩、0.4gのトリメチルシラノール及び1.2gの白金触媒(1質量%の白金を有する白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体)、定着剤を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含量は1.25質量%であり、粘度は10〜20mPasである)10g及び0.6gのエチニルシクロヘキサノールを混加する。調整された粘度は53600mPasであった。
【0071】
実施例2、(BE−2)、効果充填剤として雲母を有する配合物
例示配合物(BE−1)中で、微粒タルクの代わりに、56gの粗粒のムスコバイト雲母を剪断混合し、同等に調整された粘度は57200mPasであった。
【0072】
実施例3、(BE−3)、効果充填剤として球状粒子を有する配合物
例示配合物(BE−1)中で、微粒タルクの代わりに、石英ガラス(Quarzgut)を基礎とするナノスケールの球状粒子16gを剪断混合し、同等に調整された粘度は50800mPasであった。
【0073】
実施例4、(BE−4)、効果充填剤として球状粒子を有する配合物
例示配合物(BE−1)中で、微粒タルクの代わりに、アルミノケイ酸塩を基礎とするμm大の十分に球状の粒子210gを剪断混合し、同等に調整された粘度は48400mPasであった。
【0074】
実施例5、(BE−5)、最適化された基礎材料と効果充填剤としての球状粒子とを用いる
例示配合物(BE−1)中で、粘度1000mPasを有するビニル末端を有するジメチルポリシロキサンと補強作用を有する官能化された層状の焼成された固体とからなる改質された基礎材料(128g)を使用した。効果充填剤としての微粒タルクの代わりに、ここでは効果充填剤としてのアルミノケイ酸塩を基礎とするμm大の十分に球状の粒子335gを剪断混合し、同等に調整された粘度は64400mPasであった。
【0075】
実施例6、(BE−6)、改質された基礎材料と効果充填剤としての球状粒子とを用いる
例示配合物(BE−5)中で、粘度1000mPasを有するビニル末端を有するジメチルポリシロキサンと官能化されていない層状の焼成された固体とからなる改質された基礎材料(128g)を使用した。効果充填剤としての、アルミノケイ酸塩を基礎とする剪断混合される十分に球状の粒子の添加量は390gである。粘度は53600mPasである。
【0076】
実施例7、(BE−7)、改質された基礎材料と効果充填剤としての球状粒子とを用いる
例示配合物(BE−5)中で、粘度1000mPasを有するビニル末端を有するジメチルポリシロキサンと補強作用を有する官能化された層状の焼成された固体とからなる改質された基礎材料(128g)を、官能化されていないケイ酸塩充填剤と組み合わせて使用した。効果充填剤としての、アルミノケイ酸塩を基礎とする剪断混合される十分に球状の粒子の添加量は300gである。粘度は53600mPasである。
【0077】
実施例8、(BE−8)、改質された基礎材料と効果充填剤としての球状粒子とを用いる
例示配合物(BE−5)中で、粘度1000mPasを有するビニル末端を有するジメチルポリシロキサンと補強作用を有する官能化された層状の焼成された固体とからなる改質された基礎材料(128g)を、官能化されていないケイ酸塩充填剤と組み合わせて使用した。(BE−5)とは異なり、22.6gのドデセン−1を8.0gのトリメトキシイソオクチルシランと交換した。効果充填剤としての、アルミノケイ酸塩を基礎とする剪断混合される十分に球状の粒子の添加量は300gである。粘度は51200mPasである。
【0078】
実施例9、(BE−9)、改質された基礎材料と効果充填剤としての球状粒子とを用いる
例示配合物(BE−5)中で、粘度1000mPasを有するビニル末端を有するジメチルポリシロキサンと補強作用を有する官能化された層状のアルミノケイ酸塩固体とからなる改質された基礎材料(128g)を、官能化されていないケイ酸塩充填剤と組み合わせて使用した。(BE−5)とは異なり、22.6gのドデセン−1を、8.0gのトリエトキシイソオクチルシランと交換した。効果充填剤としての、アルミノケイ酸塩を基礎とする剪断混合される十分に球状の粒子の添加量は300gである。粘度は72000mPasである。
【0079】
こうして得られたシリコーンゴム材料(BE−1〜BE−9)を170℃で2分以内で加硫させた。
【0080】
測定結果:
本発明による組成物を、トップコートとして、そしてベースコートとして調査した。以下に、接着性の測定結果とトップコート被覆された織物の摩擦係数の測定結果とを表す。
【0081】
ベースコート被覆されたナイロン織物(S−1〜S−2)を、比較を目的として、本発明による組成物でトップコート被覆せずに調査し、そして実施例(B−1〜B−2)及び(BE−1〜BE−9)に記載されるように、本発明による組成物のトップコート被覆をして調査した。接着性についての測定はDIN53530に従って実施し、そして加硫物の摩擦係数(静的/動的)についての測定はDIN53375に従って実施した。測定結果を第1表に示す。
【0082】
全ての試験は、ベースコート被覆されたナイロン織物(基体)で実施し、その際、ベースコートはElastosil LR 6250 F(Wacker Chemie AG社の市販製品)からなる。ベースコートの施与質量は約60g/mである。その織物のトップコート被覆はナイフ塗布によって実施した。
【0083】
比較例(S1〜S2)は、本発明による組成物のトップコートで被覆されていない基体である:
(S−1):ベースコート被覆されたトップコートなしのナイロン織物
(S−2):ベースコート被覆された、比較を目的としてトップコートElastosil EL 47005(Wacker Chemie AG社の市販製品)で被覆されたナイロン織物
基礎配合物(B−1〜B−2)及び最適化された配合を有する実施例(BE−1〜BE−4)及び最適化された配合と最適化された基礎材料とを有する実施例(BE−5〜BE−9)から、以下の特性を有するシリコーンゴムが得られる:
第1表:
【0084】
【表1】

【0085】
以下で、平均被覆質量50〜65g/mを有するベースコートを表す。これらの試験は未被覆のナイロン織物で実施した。これらの織物をナイフ塗布によって被覆した。
【0086】
未被覆の当初のナイロン織物に、実施例BE−10〜BE−15によって示される本発明による組成物のベースコートを施した。接着性についての測定はDIN53530に従って実施し、そして加硫物の摩擦係数(静的/動的)の測定はDIN53375に従って実施した。測定結果を第2表に示す。
【0087】
比較例(S−3)は、Elastosil EL LR 6250 F(Wacker Chemie AG社の市販製品)からなるベースコートで被覆された基体(ナイロン織物)である。
【0088】
最適化された配合を有する実施例(BE−10)から(BE−13)と、最適化された配合及び最適化された基礎材料を有する実施例(BE−14)〜(BE−15)から、以下の特定を有するシリコーンゴムが得られる:
実施例10、(BE−10)、効果充填剤として白雲母を有する配合物
粘度1000mPasを有するビニル末端を有するジメチルポリシロキサンと官能化されていないケイ酸塩の充填剤とからなる基礎材料128gを、更に70gのジメチルポリシロキサンと60gの粗粒の層状ケイ酸塩(白雲母)と一緒にディゾルバーを用いて、少なくとも12m/秒のディゾルバーディスクの周囲速度でよく剪断混合する。この粉砕物バッチ中に、22.6gのドデセン−1、6gのテトラエチルケイ酸塩、0.4gのトリメチルシラノール及び1.2gの白金触媒(1質量%の白金を有する白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体)、定着剤を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含量は1.25質量%であり、粘度は10〜20mPasである)10g及び0.6gのエチニルシクロヘキサノールを混加する。調整された粘度は74000mPasである。
【0089】
実施例11、(BE−11)、効果充填剤として黒雲母を有する配合物
例示配合物(BE−10)中で、白雲母の代わりに、80gの粗粒の黒雲母を剪断混合して、粘度4600mPasが得られた。
【0090】
実施例12、(BE−12)、効果充填剤としてのナノスケールの球状粒子を有する配合物
例示配合物(BE−10)中で、層状の固体(より粗粒の白雲母)の代わりに、石英ガラスを基礎とするナノスケールの球状粒子16gを剪断混合し、同等に調整された粘度は60000mPasであった。
【0091】
実施例13、(BE−13)、層状の増量剤と球状の増量剤とからなる充填剤バッチを有する配合物
例示配合物(BE−10)中で、白雲母の代わりに、層状の固体(微粒タルク)と十分に球状のアルミノケイ酸塩粒子との1:1の比率のバッチ95gを剪断混合し、得られた粘度は42000mPasであった。
【0092】
実施例14、(BE−14)、改質された基礎材料と効果充填剤としての球状粒子とを有する配合物
例示配合物(BE−10)とは異なり、粘度1000mPasを有するビニル末端を有するジメチルポリシロキサンと補強作用を有する官能化された層状の焼成された固体とからなる改質された基礎材料(128g)を使用した。更に、より粗粒の効果充填剤としての白雲母の代わりに、アルミノケイ酸塩を基礎とするμm大の球状粒子335gを剪断混合し、得られた粘度は64400mPasであった。
【0093】
実施例15、(BE−15)、改質された基礎材料と効果充填剤としての球状粒子とを有する配合物
例示配合物(BE−14)とは異なり、粘度1000mPasを有するビニル末端を有するジメチルポリシロキサンと補強作用を有する官能化された層状の焼成された固体とからなる改質された基礎材料(128g)を、官能化されていないケイ酸塩充填剤と組み合わせて使用した。アルミノケイ酸塩を基礎とする剪断混合される十分に球状の粒子の添加量は300gである。粘度は53600mPasである。
【0094】
第2表:
【0095】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
− (A,B)付加反応によって架橋する有機ケイ素化合物、
− (D)少なくとも1種の楕円形ないし球形の固体と、少なくとも1種の層状の固体、並びに
− 更に以下の群:
(1)少なくとも8個の炭素原子を有する炭化水素化合物であって、その炭化水素骨格が、場合によりヘテロ原子、例えばN、O、P又はSによって中断されていてよく、かつそれらのヘテロ原子の遊離原子価が水素又は一価の炭化水素基によって飽和されている炭化水素化合物、
(2)一般式
(RO)4−nSiX
[式中、Rは、16個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を意味し、かつXは、Rとは無関係にRの意味を有するか、又は官能性炭化水素基を意味し、この場合に、有機官能基とSi原子との間に1〜6個の炭素原子が存在し、かつ有機官能基は、場合によりエポキシ基又はメタクリルオキシ基であってよい]で示されるシラン、
(3)一般式
(RO)4−nMX
[式中、R及びXは、前記と同じ意味を有し、かつMはTi又はZrを意味する]で示される有機ジルコニウム化合物又は有機チタン化合物、場合により
(4)有機溶剤
からの少なくとも1種の成分(E)を含有する組成物であって、加硫物の摩擦係数が、粒子(D)を含有しない調製物に対して低減されている組成物。
【請求項2】
成分(E)が、一般式(RO)4−nSiXで示されるシランを意味し、その際、Rが、メチル基又はエチル基であり、n=1であり、かつXがC〜C12−炭化水素基を意味する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
楕円形ないし球形の又は層状の固体、又はその両者が、一般式
4−nSiX
[式中、Rは、アルコキシ基又はヒドロキシ基であり、n=1、2、3であり、かつXがアルキル基、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリル基、ヒドロキシ基であるが、但し、該有機官能基は、Si原子に直接結合されているか、又は1〜12個の炭素原子のスペーサーによってSi原子から隔離されている]で示されるシランによる表面被覆により官能化されている、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
楕円形ないし球形の固体が粒度10nm〜100μmを有する、請求項1又は3に記載の組成物。
【請求項5】
層状の固体が長さ対厚さの比率(L/D)5〜200を有する、請求項1又は3記載の組成物。
【請求項6】
楕円形ないし球形の粒子と層状の粒子との比率が1:20〜20:1である、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
層状の粒子と楕円形ないし球形の粒子との比率が1:10である、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
全配合物中の全固体の割合が、少なくとも15%、有利には30〜50%、特に有利には50%〜85%である、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
組成物が25℃において粘度100〜500000mPasを有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
動摩擦係数が、粒子(D)を含有しない調製物に対して少なくとも10%だけ低減される、請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物を使用して製造された成形体。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物を使用して製造された織布又は不織布。

【公開番号】特開2006−342350(P2006−342350A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157341(P2006−157341)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】