説明

有機ゲル化剤を含む歯科用組成物、製品及び方法

重合性成分及び有機ゲル化剤を含む硬化性歯科用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、材料、具体的には光重合性が挙げられる重合性樹脂を含む歯科用材料、並びにその製造及び使用方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2006年9月13日に出願された米国特許仮出願第60/825,491号に対する優先権を主張し、本出願の全文は参照することにより本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
現在入手可能な重合性樹脂は、典型的には、フリーラジカル重合性モノマー(例えば、アクリレート、メタクリレート及びアクリルアミド)である。これらは、促進剤又は活性剤として、三級アミンのような還元剤及びペルオキシドのような酸化剤を通常含む反応開始剤系とともに使用される。この種の追加材料は、種々の用途、具体的には歯科用途で必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、種々の歯科用途で用いることができる有機ゲル化剤と有機重合性成分とを含有する組成物を目的とする。
【0005】
一実施形態では、本発明は、有機重合性成分と、有機ゲル化剤と、結晶性物質とを含む歯科用組成物を提供する。
【0006】
別の実施形態では、本発明は、有機重合性成分と、有機ゲル化剤と、60%以上のフィラー材料とを含む硬化性歯科用組成物を提供する。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、有機重合性成分と、有機ゲル化剤と、ナノスケール粒子を含むフィラー材料とを含む硬化性歯科用組成物を提供する。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、有機重合性成分と重合性有機ゲル化剤とを含む硬化性歯科用組成物を提供する。
【0009】
ある実施形態では、硬化性組成物は、流動性であることができる。流動性材料は、手圧下で、典型的には20ゲージ又は同等の、先端の狭いシリンジから分配することができるように、低粘度のものである。流動性歯科用組成物は、しばしば、他の非流動性歯科用組成物よりフィラーの負荷が低い。
【0010】
ある実施形態では、硬化性組成物は充填性(packable)であることができる。充填性材料は、歯科用アマルガムに類似する取扱特性を有する。具体的にいうと、それは典型的には彫ることが可能であり、標準的な汎用コンポジットより粘度が高い。充填性歯科用組成物は、しばしば、流動性歯科用組成物より粘度及びフィラー負荷が高い。
【0011】
ある実施形態では、硬化性組成物は、第1形状を有する硬化性自立(即ち、支えなしで立つ)構造の形態であってよい。自立構造は、第2形状に再形成されるのに十分な展性を有し、それにより、装置の簡易カスタマイズ、例えば、歯科用人工補装具の簡易カスタマイズされた取り付けを提供する。第2形状に再形成されると、例えば、改善された機械的特性を有する硬化組成物を形成するために、標準的な光重合条件下でフリーラジカル硬化機構を使用して、組成物を硬化することができる。重大なことに、本発明の組成物では、第2形状の構造を硬化すると、硬化した構造は追加のベニヤ材料(veneering material)を必要としない。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、歯列矯正用接着剤、即ち、歯列矯正器具(歯列矯正ブラケット、バッカルチューブ、舌側チューブ及びクリートが挙げられるが、これらに限定されない)に塗布して、器具を歯に接着することができる接着剤を提供する。
【0013】
ある実施形態では、硬化性組成物は、一般式(式I)の有機ゲル化剤を含む。
【化1】

式中、各Mは、独立に、水素又は重合性基であり、各Xは、独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アレニレン基又はこれらの組み合わせであり、nは1〜3である。かかる有機ゲル化剤もまた、本発明により提供される。
【0014】
ある実施形態では、硬化性組成物は、アミノ糖有機ゲル化剤を含む。
【0015】
ある実施形態では、有機ゲル化剤は、一般式LXXVのアミノ糖有機ゲル化剤である。
【化2】

式中、R1及びR2は、独立に、水素原子、アルキル基、C(O)R3、及びSO24からなる群から選択され、R3及びR4は、独立に、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択され、nは約2〜約5の整数である。ある実施形態では、有機ゲル化剤は、下記式:
【化3】

で表される化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0016】
ある実施形態では、有機ゲル化剤は、一般式LXXXIIIのアミノ糖有機ゲル化剤である。
【化4】

式中、R1、R2及びR3は、独立に、OH及びNR56からなる群から選択され;R4は、OH、OP(O)(OH)2、OSO3H及びNR56からなる群から選択され;R5及びR6は、独立に、水素原子、アルキル基、C(O)R7及びSO28からなる群から選択され;R7及びR8は、独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基からなる群から選択され;ただし、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つはNR56である。ある実施形態では、有機ゲル化剤は、下記式:
【化5】

で表される化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
本発明はまた、歯科用製品、及び歯科用製品、具体的には歯冠の製造方法を提供する。本発明はまた、硬化性歯科用組成物及び歯科用製品の使用方法を提供する。
【0018】
本明細書では、「有機ゲル化剤」は、一般に、有機流体に溶解するとき、三次元網状構造を形成し、それにより有機流体を固定化し、温度が混合物のゲル点を上回って又は下回って変動するとき液体状態とゲル状態との間を熱可逆的に転移する非流動性ゲルを形成する、低分子量有機化合物(一般に3000g/モル以下)である。
【0019】
本明細書では、「重合性成分」は1種以上の樹脂を含んでよく、そのそれぞれが1種以上のモノマー、オリゴマー及び/又は重合性ポリマーを含んでよい。
【0020】
用語「自立」は、組成物が寸法安定性であり、支えなしで立つ時に(即ち、包装又は容器の支持なしで)、少なくとも約2週間、室温で著しく変形することなく、その形状(例えば、歯冠の予備形成形状)を維持することを意味する。好ましくは、本発明のかかる自立性組成物は、少なくとも約1ヵ月間、より好ましくは少なくとも約6ヵ月間、室温で寸法安定性である。反応開始剤系を活性化する条件の非存在下及び重力以外の外部の力の非存在下で、この定義は適用される。
【0021】
用語「十分な展性(malleability)」とは、自立構造を、中程度の力(即ち、軽い指圧から、歯科用コンポジット用具のような小型ハンドツールの手動操作により適用される力までの範囲の力)の下でカスタム成形し、例えば、患者の口部に適合できることを意味する。
【0022】
用語「硬化性」とは、例えば、組成物中に含まれる1種以上の物質が関与する光重合反応及び化学重合技術(例えば、レドックス反応)を含む、重合及び/又は架橋反応を受けることができる組成物を指す。
【0023】
本発明の組成物は、多くの潜在的用途を有する。これらの用途としては、一時的、中間/暫定的及び永続的歯冠及びブリッジ、インレー、オンレー、ベニヤ、インプラント、義歯及び人工歯、並びに歯科印象トレイが挙げられるが、これらに限定されない歯科修復材及び歯科補綴物、歯列矯正器具(例えば、リテーナ、ナイトガード)、歯列矯正用接着剤、歯の複製又はスプリント、顎顔面装具、並びに他のカスタマイズ構造が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物はまた、例えば充填材(具体的には、充填性材料及び流動性コンポジット)として使用することもできる。
【0024】
用語「含む」及びこの変形は、明細書及び特許請求の範囲に現れるこれらの用語を制限する意味を有さない。
【0025】
語句「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の環境下で特定の利益を供する可能性がある発明の実施形態を示す。しかしながら、同一又は他の環境下で、他の実施形態も好ましい可能性がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0026】
本明細書で使用するとき、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」及び「1つ以上(1つ又はそれ以上)」は互換的に使用される。したがって、例えば、有機ゲル化剤("an" organogelator)を含む組成物は、組成物が「1種又はそれ以上の」有機ゲル化剤を含むこと意味すると解釈することができる。
【0027】
用語「及び/又は」は、列挙した要素のうち1つ若しくは全て又は列挙した要素のうち任意の2つ以上の組み合わせを意味する(例えば、流動性、充填性、及び/又は自立性である組成物とは、組成物が流動性、充填性又は自立性であることを意味し、該組成物は例えば充填性かつ自立性であることができる)。
【0028】
また本明細書において、端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数(例えば1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等)が包含される。
【0029】
ある基が本明細書で記載した式中に2回以上存在するとき、各基は特に記載しようとしまいと、「独立に」選択される。例えば、式中に2つ以上のM基が存在するとき、各M基は独立に選択される。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「室温」は、20℃〜25℃又は22℃〜25℃の温度を指す。
【0031】
本発明の上述の「課題を解決するための手段」は、本発明の開示された各実施形態又は全ての実施を記載することを意図していない。以下の説明は、説明に役立つ実施形態をより詳細に例示する。明細書全体にわたって幾つかの箇所で、例の一覧を通して説明を提供するが、例は様々な組み合わせにて使用することが可能である。それぞれの事例において、列挙される一覧は代表的な群としてのみ与えられるのであって、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、種々の特性を有する種々の歯科用途で用いることができる、有機ゲル化剤及び重合性成分を含有する硬化性歯科用組成物を目的とする。例えば、本発明の硬化性組成物は、流動性、充填性及び/又は自立性であることができる。
【0033】
好ましい本発明の硬化性歯科用組成物は、有機系である。つまり、本発明の硬化性有機歯科用組成物は、組成物の総重量を基準として、50重量%未満、好ましくは45重量%未満、より好ましくは25重量%未満、更により好ましくは10重量%未満、更により好ましくは5重量%未満、更により好ましくは1重量%未満の水を含む。
【0034】
硬化した歯科用材料は、重合性材料から調製された任意の広範な材料であってよい。それらは、インレー、オンレー、ベニヤ、歯冠(一時的、中間/暫定的又は永続的)、ブリッジ、インプラント、義歯、人工歯、充填材(具体的には充填性材料及び流動性コンポジット)、歯列矯正器具(例えば、リテーナ、ナイトガード)、歯列矯正用接着剤、歯の複製又はスプリント、歯科印象トレイ、顎顔面装具並びに他のカスタマイズ構造のような口腔用人工補装具が挙げられる、種々の用途で用いることができる。
【0035】
本発明の硬化性歯科用組成物は、例えば、流動性、充填性又は自立性であることができる。かかる用語は必ずしも相互排他的ではないことを当業者は理解するであろう。つまり、例えば、充填性組成物はある程度自立性であることができ、逆もまた同様であるように、多少の重複が存在し得る。一般に、充填性及び自立性組成物の硬化前レオロジー特性は非常に類似している(同一ではないまでも)。一般に、充填性、流動性及び自立性能の水準は、フィラーの割合及び種類に関連し得るが、レオロジーを制御するのは成分の全体的な組み合わせである。一般に、流動性材料は、充填性又は自立性組成物より低い割合のフィラー(例えば60重量%以下)を有し、充填性又は自立性組成物より高い割合の、単一粒子状(即ち、非粒塊)のフィラーを使用することができる。自立性組成物は、高い割合の粒塊フィラーを用いることができる。しかしながら、これらは必要条件ではないことを理解すべきである。
【0036】
ある実施形態では、硬化性歯科用組成物は、第1形状、好ましくは歯冠の形状を有する硬化性自立(即ち、支えなしで立つ)構造の形態である。かかる実施形態の場合、成分は:初期自立構造を形成するために組成物を比較的容易に成型することができる;自立構造が、(反応開始剤系を活性化する条件の非存在下で、かつ、重力以外の外部の力の非存在下で)少なくとも2週間、室温で第1形状を維持する;及び自立構造が、(好ましくは15℃〜38℃、より好ましくは20℃〜38℃、最も好ましくは室温で)第2形状に再形成されるのに十分な展性を有する;ように選択される。
【0037】
かかる本発明の自立性組成物は、予備形成された歯科用製品に特に適している。本明細書で使用するとき、予備形成された歯科用製品は、所望の半完成形状(第1形状)で歯科医に提供され、次いで患者に適合するように修正する(例えば、成型する、適応させる、削る)ことができるものである。本明細書では、予備形成物品の半完成形状は、最終形状の物品があるべき形状の複製であり、ロープ、小球又はシートの形状ではない。典型的には、これは、本発明の自立性組成物が、好ましくはポジティブ及びネガティブ印象材を備える型を用いて、ある形状に形成されており、得られた成形材料が、著しく変形することなく、成形装置、好ましくは型から取り出されることを意味する。
【0038】
本発明のある組成物は、予備形成された歯冠及び複雑な形状を有する他の予備形成された歯科用製品に特に有用であるが、同一又は他の組成物を、充填材等を調製するための材料として用いることができる。成型、型からの取り出し、梱包、輸送等に関して言うと、典型的には、充填材は、例えば、ロープ形態、又は個々の断片、例えば塊様、タブレット等で歯科医に提供されるため、後者の要件は、予備形成された歯冠又は複雑な形状の他の予備形成された歯科用物品に必要な要件より厳しくない。
【0039】
一般に、本発明の硬化性自立性組成物は、比較的容易に変形することができ(即ち、展性である)、低弾性回復を示すという点で、ワックスの融点を下回る温度で、ワックスに類似するレオロジー特性を有する。しかしながら、本発明の硬化性自立性組成物は、軟化点より上で自由流動流体(即ち、液体)ではない。つまり、本発明の硬化性自立性組成物は、中程度(例えば、手による)圧力下で感知できるほどの質量流を示すが、軟化点を超えると液体流ではない。
【0040】
本発明のある硬化性組成物の所望の自立性(即ち、支えなしで立つ)構造は、三次元網状(連続又は非連続)構造であってよい非共有構造を含む形態を作製することにより維持することができる。
【0041】
好ましくは、硬化性自立性組成物から形成される、得られる硬化組成物(即ち、硬化構造)は、少なくとも25メガパスカル(MPa)、より好ましくは少なくとも40MPa、更により好ましくは少なくとも50MPa、最も好ましくは少なくとも60MPaの曲げ強度を有する。
【0042】
ある用途(例えば、歯冠又は充填材)の場合、硬化性自立性組成物から形成される、得られる硬化組成物(即ち、硬化構造)は、エナメル質様固体であり、好ましくは少なくとも100MPaの圧縮強度を有する。歯科用印象トレイのような他の用途の場合、低圧縮強度を有する材料を用いることができる。
【0043】
ある用途(例えば、歯冠又は充填材)の場合、硬化性自立性組成物から形成される、得られる硬化組成物(即ち、硬化構造)は、エナメル質様固体であり、好ましくは少なくとも20MPaのダイヤメトラル引っ張り強度を有する。歯科用印象トレイのような他の用途の場合、低ダイヤメトラル引っ張り強度を有する材料を用いることができる。
【0044】
ある用途(例えば、歯冠又は充填材)の場合、硬化性自立性組成物から形成される、得られる硬化組成物(即ち、硬化構造)は、エナメル質様固体であり、好ましくは少なくとも1000MPaの曲げ弾性率を有する。歯科用印象トレイのような他の用途の場合、低曲げ弾性率を有する材料を用いることができる。
【0045】
有機ゲル化剤
広範な有機ゲル化剤を、本発明の硬化性組成物で用いることができる。有機ゲル化剤は、一般に、有機金属化合物を含む、低分子量有機化合物(即ち、有機含有部分を有する化合物)である。「一般に低分子量」とは、化合物が一般に3000グラム/モル(g/mol)以下、好ましくは2000g/mol以下、更により好ましくは1000g/mol以下の分子量を有することを意味する。それらは、有機流体(例えば、1種以上の流体重合性成分)に溶解するとき三次元網状構造を形成し、それにより有機流体を固定化し、非流動性ゲルを形成する。
【0046】
材料は、それを含む系に対して有機ゲル化剤であると考えられる。つまり、例えば、ある材料は、三次元網状構造及び得られる非流動性ゲルが形成されるようにある特定の硬化性組成物で有機ゲル化剤として機能することができるが、同じ材料が、別の硬化性組成物では有機ゲル化剤として機能しない場合がある。本明細書の教示に基づいて、当業者は、過度に実験することなく、材料が有機ゲル化剤か否かを容易に決定することができる。例えば、候補の有機ゲル化剤を、関心の硬化性組成物中でゲル化試験に供し、材料がこの系で有機ゲル化剤であるかどうかを判断することができる。
【0047】
非流動性ゲルは、典型的には、共存する固体様相及び液体相を含み、該固体様相は液体相全体にわたって三次元網状構造を形成し、液体相が巨視的水準で流動することを防ぐ。有機ゲル化剤と重合性成分との混合物(フィラー材料及び任意添加剤なし)は、温度が混合物のゲル点を上回って又は下回って変動するとき、液体状態とゲル状態との間で熱可逆的転移を示す。
【0048】
理論に縛られるものではないが、有機ゲル化剤が、絡んで網状構造を形成する繊維様構造に自己組織化するとき、ゲル形成が生じると考えられる。分子凝集の駆動力は、水素結合、芳香族相互作用、イオン結合、配位結合、ロンドン分散相互作用、πスタッキング、疎溶媒性効果(solvophobic effect)又は他の物理的相互作用のような、物理的、非共有相互作用であってよい。
【0049】
有機ゲル化剤は、ヒュームドシリカのような増粘剤を含まないが、ヒュームドシリカは本明細書で記載したようなフィラー材料として使用できることを理解すべきである。
【0050】
有機ゲル化剤は重合性であってもなくてもよい。歯科用組成物に好ましい有機ゲル化剤は、硬化中に樹脂系に組み込むことができるように、重合性である。これは、口腔内の使用条件下で、有機ゲル化剤の浸出量を低減することができる。
【0051】
代表的な有機ゲル化剤は、米国特許出願公開第2004/0065227号(ブリトン(Breton)ら)及び同第2003/0207179号(ウエタニ(Uetani)ら)、並びに、テレチ(Terech)ら、Chem.Rev.、97巻3133〜3159頁(1997年)、デュ・ローズ(de Loos)ら、J.Am.Chem. Soc.、119巻12675〜12676頁(1997年)、マカレビック(Makarevic)ら、Chem.Eur.J.、7巻、3328〜3341頁(2001年)、ワン(Wang)ら、Chem.Eur.J.、8巻、1954〜1961頁(2002年)及び特開2003−277723号に記載されている。必要に応じて、有機ゲル化剤の種々の組み合わせを用いることができる。
【0052】
好適なかかる化合物としては、例えば:ジベンジリデンソルビトール及びα−マンノ(メチル4,6−O−ベンジリデン−α−D−マンノピラノシド)のような糖系化合物;置換脂肪酸及び12−ヒドロキシオクタデカン酸のリチウム塩のような脂肪酸の一価、二価又は三価金属塩;並びに、デオキシコール酸、アポコール酸及びリトコール酸及びこれらの塩のようなステロイド系化合物、並びにコレステロールエステル及びその誘導体が挙げられる。
【0053】
他の好適な有機ゲル化剤としては、アンスリル系(即ち、アントラセン系)化合物、並びに一般式(式II及びIII)を有するアンスリル及びアントラキノン付加ステロイド系化合物が挙げられる。
【化6】

式中、X1及びX2は、それぞれ、他とは独立に、窒素原子、−CH−基又は−C(O)−基であり、R1及びR2は、それぞれ、他とは独立に、アルキル基(直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環状、非置換及び置換アルキル基を含み、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアルキル基中に存在してもしなくてもよい)、アリール基(置換又は非置換アリール基を含み、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアリール基中に存在してもしなくてもよい)又はこれらの組み合わせであってよい。好適なアントラセン化合物、アントラキノン化合物及びフェナジン化合物の幾つかの具体例としては、(それぞれ式IV〜XIV)
【化7】

【化8】

【化9】

が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
他の好適な有機ゲル化剤としては、ステロイド性部分のC3で結合している高度極性アゾベンゼン基を有する分子のようなアゾベンゼンステロイド系化合物が挙げられる。好適なアゾベンゼンステロイド系化合物の幾つかの具体例としては、下記式(それぞれ、式XV〜XVIII)で表されるものが挙げられる(が、これらに限定されない)。
【化10】

【化11】

式中、R(式XVI)は1〜18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、R’及びR”(式XVII)はそれぞれ、互いと独立に、1〜18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、n(式XVIII)は1〜4の整数である。
【0055】
好適な有機ゲル化剤の他の例としては、2−オクチルドデシル4−[[(1−ナフチルアミノ)カルボニル]アミノ]ベンゾエートのようなアミノ酸系化合物;例えばCu、Mn、Co及びZnのような金属の、メソ−テトラキス(p−カルボキシフェニル)ポルフィリンの長鎖エステルのような、2,3,6,7,10,11−ヘキサペントキシトリフェニレン及びヘキサキス(n−ヘキシルオキシ)トリフェニレン−置換金属ポルフィリンのような有機金属化合物;並びに、フェノール環のパラ位に長アルカノイル鎖を有するカリックス[n]アレーン(式中、n=4〜8)のような大環状化合物が挙げられる。
【0056】
好適な有機ゲル化剤の他の例としては、部分的にフッ素化された高分子量アルカンが挙げられる。この文脈では、「高分子量」は、少なくとも400g/モル、場合によっては少なくとも800g/モル、場合によっては1,500g/モルの分子量を意味する。好適な部分的にフッ素化された高分子量アルカンとしては、下記一般式(式XIX)で表されるものが挙げられる。
F(CF2n(CH2m
式中、nは−CF2−単位の反復数を表す6〜24の整数であり、mは−CF2−単位の反復数を表す6〜20の整数である。好適な部分的にフッ素化された高分子量アルカンの幾つかの具体例としては、以下のもの(それぞれ、式XX〜XXIII)が挙げられるが、これらに限定されない:F(CF28(CH212H、F(CF210(CH212H、F(CF215(CH212H、及びF(CF212(CH28H。
【0057】
好適な有機ゲル化剤の他の例としては、共有結合している1個のヘテロ原子(即ち、炭素又は水素以外の原子)を有する高分子量アルカンが挙げられる。この文脈では、「高分子量」は、少なくとも10個の炭素原子、場合によっては14個以上の炭素原子を有する化合物を意味する。対イオンは、この定義の目的のためにヘテロ原子であるとは見なされず、例えば、化合物が1個の窒素原子を有する第四級アンモニウム化合物である場合、正荷電窒素原子に付随するアニオンはヘテロ原子とは見なされない。1個のヘテロ原子を有する好適な高分子量アルカンの幾つかの具体例としては、以下(それぞれ、式XXIV〜XXVIII)が挙げられるが、これらに限定されない。
【化12】

式中、A−(式XXVIII)は、例えばハロゲン、シュードハロゲン、PF6、BF4、ClO4、カルボキシレート又はこれらの混合物であり得るアニオンである。
【0058】
好適な有機ゲル化剤の他の例としては、キラルタータラート化合物が挙げられる。好適なキラルタータラート化合物としては、一般式XXIXで表されるものが挙げられる。
【化13】

式中(式XXIX)、nは4〜20の整数であり、mは2〜6の整数である。キラルタータラート化合物の幾つかの具体例としては、N,N’−ジヘキサデシル−N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアンモニウム−L−タータラート、N,N’−ジヘキサデシル−N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアンモニウム−D−タータラート、N,N’−ジオクタデシル−N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアンモニウム−L−タータラート、及びN,N’−ジオクタデシル−N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアンモニウム−L−タータラートが挙げられる。
【0059】
好適な有機ゲル化剤の他の例としては、キラルブテノリド系化合物が挙げられる。キラルブテノリド系化合物の幾つかの具体例としては、以下の式(式XXXI)で表されるものが挙げられる。
【化14】

式中、式XXXIのR5は、以下の基(それぞれ、式XXXII〜XXXVIII)のうちのいずれか1つである。
【化15】

【0060】
これらのキラル物質は、種々の立体異性体形態で存在する。
【0061】
好適な有機ゲル化剤の他の例としては、尿素系化合物が挙げられる。好適な尿素系化合物としては、一般式(それぞれ、式XXXIX〜XLII)で表されるものが挙げられる。
【化16】

式中、X(式XXXIX)は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アミノ基等であり;R6及びR7(それぞれの式の)は、それぞれ他とは独立に、水素原子、アルキル基(直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環状、非置換及び置換アルキル基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアルキル基中に存在してもしなくてもよい)、アリール基(置換又は非置換アリール基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアリール基中に存在してもしなくてもよい)又はアルキル及びアリール基の組み合わせであってよく;R8(式XLII)は、アルキレン基(直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環状、非置換及び置換アルキレン基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアルキレン基中に存在してもしなくてもよい)、アリーレン基(置換又は非置換アリーレン基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアリーレン基中に存在してもしなくてもよい)又はこれらの組み合わせであってよい。尿素系化合物の幾つかの具体例としては、以下(それぞれ式XLIII〜XLIX)が挙げられる。
【化17】

【化18】

【0062】
好適な有機ゲル化剤の他の例としては、バルビツレート(barbiturate)が挙げられる。好適なバルビツレートとしては、一般式(式L)で表されるものが挙げられる。
【化19】

式中、R9、R10及びR11は、それぞれ、他とは独立に、水素原子、アルキル基(直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環状、非置換及び置換アルキル基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアルキル基中に存在してもしなくてもよい)、アリール基(置換又は非置換アリール基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアリール基中に存在してもしなくてもよい)又はアルキル基及びアリール基の組み合わせであってよい。バルビツレートの幾つかの具体例としては、以下(式LI及びLII)が挙げられる。
【化20】

【0063】
好適な有機ゲル化剤の他の例としては、キラルアミド系化合物が挙げられる。好適なキラルアミド系化合物としては、一般式(式LIII及びLIV)で表されるものが挙げられる。
【化21】

式中、(各式の)R12、R13及びR14は、他とは独立に、水素原子、アルキル基(直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環状、非置換及び置換アルキル基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアルキル基中に存在してもしなくてもよい)、アリール基(置換又は非置換アリール基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアリール基中に存在してもしなくてもよい)又はアルキル基及びアリール基の組み合わせであってよく;(各式の)nは1、2又は3であり;(各式の)Qは結合、O、S、NH又はアルキル置換窒素であり;R15(式LIV)は、アルキレン基(直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環状、非置換及び置換アルキレン基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアルキレン基中に存在してもしなくてもよい)、アリーレン基(置換又は非置換アリーレン基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアリーレン基中に存在してもしなくてもよい)又はこれらの組み合わせである。式LIII及びLIVでは、点線及びくさび形の結合は、アミノ酸が特定のキラリティーのものであることを示さず、したがって、構造はD又はL型のいずれかの異性体を含むことができる。
【0064】
キラルアミド系化合物の幾つかの具体例としては、以下(それぞれ式LV〜LVII)が挙げられる。
【化22】

【0065】
特定の有用な非重合性有機ゲル化剤の例は、ジベンジリデン(dibenzilidine)ソルビトール(DBS)であり、これは、ミリケン・アンド・カンパニー(Milliken & Co.)(サウスカロライナ州スパータンバーグ(Spartanburg))から商品名ミリシックス(MILLITHIX)925Sとして市販されている。
【0066】
有機ゲル化剤のある好適なかつ好ましい部類は、オキサミド化合物である。この部類の物質の例としては、一般式(式I)で表されるものが挙げられる。
【化23】

式中、各Mは独立に水素又は重合性基(具体的には、メタクリレート、アクリレート、ビニル、スチリル等のような、フリーラジカル機構を介して重合可能な基)であり、各Xは独立にアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アレニレン基又はこれらの組み合わせであり、nは1〜3である。アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアレニレン基は、置換(例えば、ハロゲンで)されていても、置換されていなくてもよく、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のような官能基を含んでも、含まなくてもよい。好ましくは、式Iでは、Mが水素以外である場合、それは8個以下の炭素原子、より好ましくは4個以下の炭素原子を含む(例えば、メタクリレート)。好ましくは、式Iでは、Xは20個以下の炭素原子を含む。X及びMは両方とも、好ましくは、独立に、少なくとも3個の炭素原子、場合によっては少なくとも4個の炭素原子を含む。
【0067】
好適なオキサミド有機ゲル化剤の幾つかの具体例としては、式(それぞれ式LVIII〜LXV)ものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化24】

【0068】
この部類の化合物は、ジアルキルオキサレートと2当量のアミンとを反応させることにより調製することができる。テトラアミド(n=2)は、2段階法により調製することができる。第1工程では、過剰なジアルキルオキサレートをジアミンと反応させて、中間誘導体を調製する。この中間体を、次いでアミンと反応させて、図示したような最終オキサミド有機ゲル化剤(式LXVI)を得る。
【化25】

式中、Xは独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アレニレン基又はこれらの組み合わせであり(アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、又はアレニレン基は置換(例えば、ハロゲンで)されていても、置換されていなくてもよく、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基等を含んでも、含まなくてもよい);X’は独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アレニル基又はこれらの組み合わせである(アルキル、シクロアルキル、アリール又はアレニル基は置換(例えば、ハロゲンで)されていても、置換されていなくてもよく、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のような官能基を含んでも、含まなくてもよい)。オキサミドの調製に関する更なる詳細は、L.M.ライス(Rice)ら、J.Chem.Soc.、75巻242〜243頁(1953年)に見い出すことができる。
【0069】
好ましい重合性有機ゲル化剤としては、アルキルジウレアモノ−及びマルチ−メタクリレート、アクリレート化アミノ酸誘導体、及びメタクリレート化又はスチリル糖誘導体が挙げられる。かかる物質の例を以下に示す(式LXVII〜LXXIII)。
【化26】

式中、n(式LXVII〜LXIX)は1〜20の整数であり;R(式LXVIII及びLXIX)は、アルキル基(直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環状、非置換及び置換アルキル基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアルキル基中に存在してもしなくてもよい)、アリール基(置換又は非置換アリール基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアリール基中に存在してもしなくてもよい)又はこれらの組み合わせであってよく;R’(式LXXI、LXXII及びLXXIII)は、アルキレン基(直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環状、非置換及び置換アルキレン基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアルキレン基中に存在してもしなくてもよい)、アリーレン基(置換又は非置換アリーレン基が挙げられ、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンのようなヘテロ原子及び/又はカルボニル基のような官能基がアリーレン基中に存在してもしなくてもよい)又はこれらの組み合わせであってよく;P(式LXXI、LXXII及びLXXIII)は重合性基(具体的には、メタクリレート、アクリレート、ビニル、スチリルのような、フリーラジカル機構を介して重合可能な基)である。
【0070】
別の好適なかつ好ましい有機ゲル化剤の部類は、直鎖アミノ糖及び環状アミノ糖を含むアミノ糖である。
【0071】
一態様では、有機ゲル化剤は式LXXVの直鎖アミノ糖又はその薬剤として許容される塩である。
【化27】

式中、R1及びR2は、独立に、水素原子、アルキル基、C(O)R3及びSO24からなる群から選択され;R3及びR4は、独立に、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択され;nは約2〜約5の整数である。
【0072】
式LXXVでは、基R1及びR2は、独立に、水素原子、アルキル基、C(O)R3及びSO24からなる群から選択される。R1及びR2のそれぞれは、水素原子であってよく、R1及びR2のそれぞれは、アルキル基であってよく、R1及びR2のそれぞれは、C(O)R3であってよく、又はR1及びR2のそれぞれは、SO24であってよい。幾つかの実施形態では、R1は水素原子であってよく、R2はアルキル基、C(O)R3又はSO24であってよい。他の実施形態では、R1は、アルキル基であってよく、R2は、C(O)R3又はSO24であってよい。更に他の実施形態では、R1は、C(O)R3であってよく、R2は、SO24であってよい。R1及びR2のいずれか又は両方がアルキル基であるとき、アルキル基は、約1個の炭素原子、約1個を超える炭素原子、約2個を超える炭素原子、約4個を超える炭素原子、約6個を超える炭素原子、約8個を超える炭素原子、約10個を超える炭素原子、約12個を超える炭素原子、約14個を超える炭素原子、約16個を超える炭素原子、又は約18個を超える炭素原子を含むことができる。幾つかの実施形態では、アルキル基は、約30個未満の炭素原子、約26個未満の炭素原子、又は約20個未満の炭素原子を含む。幾つかの実施形態では、アルキル基は直鎖アルキル基を含む。他の実施形態では、アルキル基は分岐鎖アルキル基を含む。更に他の実施形態では、アルキル基は環状アルキル基を含む。R1及びR2のそれぞれが、アルキル基を含むとき、R1及びR2は同じアルキル基を含んでよく、又はR1及びR2は異なるアルキル基を含んでもよい。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、1−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロペニル、及びシクロオクチルが挙げられる。
【0073】
式LXXVでは、基R3及びR4は、独立に、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される。R3又はR4のいずれか又は両方がアルキル基であるとき、アルキル基は、約1個の炭素原子、約1個を超える炭素原子、約2個を超える炭素原子、約4個を超える炭素原子、約6個を超える炭素原子、約8個を超える炭素原子、約10個を超える炭素原子、約12個を超える炭素原子、約14個を超える炭素原子、約16個を超える炭素原子、又は約18個を超える炭素原子を含むことができる。幾つかの実施形態では、アルキル基は、約30個未満の炭素原子、約26個未満の炭素原子、又は約20個未満の炭素原子を含む。幾つかの実施形態では、アルキル基は直鎖アルキル基を含む。他の実施形態では、アルキル基は分岐鎖アルキル基を含む。更に他の実施形態では、アルキル基は環状アルキル基を含む。式LXXVで表される化合物又はその薬剤として許容される塩では、R3及びR4基の両方が存在するとき、かつR3及びR4のそれぞれがアルキル基を含むとき、R3及びR4は同じアルキル基を含んでよく、又はR3及びR4は異なるアルキル基を含んでもよい。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、1−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロペニル、及びシクロオクチルが挙げられる。
【0074】
式LXXVでは、R3又はR4のいずれか又は両方がアリール基であるとき、アリール基は1個のアレーン環又は1個を超えるアレーン環を含んでよい。アレーン環は、6個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、12個以下の炭素原子、14個以下の炭素原子、16個以下の炭素原子、又は18個以下の炭素原子を含んでよい。アレーン環は、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素又は硫黄を含んでよい。1個を超えるアレーン環が存在するとき、アレーン環はともに融合することができ、又は化学結合により結合することができる。式LXXVで表される化合物又はその薬剤として許容される塩では、R3及びR4基の両方が存在するとき、かつR3及びR4のそれぞれがアリール基を含むとき、R3及びR4は同じアリール基を含んでよく、又はR3及びR4は異なるアリール基を含んでもよい。アリール基の非限定的な例としては、置換及び非置換フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アントラセニルが挙げられる。
【0075】
式LXXVでは、R3又はR4のいずれか又は両方がアラルキル基であるとき、アラルキル基は1個のアレーン環又は1個を超えるアレーン環を含んでよい。アラルキル基は、6個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、12個以下の炭素原子、14個以下の炭素原子、16個以下の炭素原子、18個以下の炭素原子、又は20個以下の炭素原子を含んでよい。1個を超えるアレーン環がアラルキル基中に存在するとき、アレーン環はともに融合することができ、又は化学結合により結合することができる。アレーン環は、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素又は硫黄を含んでよい。式LXXVで表される化合物又はその薬剤として許容される塩では、R3及びR4基の両方が存在するとき、かつR3及びR4のそれぞれがアラルキル基を含むとき、R3及びR4は同じアラルキル基を含んでよく、又はR3及びR4は異なるアラルキル基を含んでもよい。アラルキル基の非限定的な例としては、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、2−ナフチルエチル及び9−アントラセニルメチルが挙げられる。
【0076】
式LXXVでは、nは約2〜約5の整数である。幾つかの実施形態では、歯科用組成物は、式LXXVで表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含み、式中nは約5、約4、約3又は約2の値を有する整数である。幾つかの実施形態では、nは5又は4又は3又は2の値を有する整数である。本発明の歯科用組成物は、1種を超える式LXXVで表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含んでよく、該化合物は異なる整数値のnを有する式LXXVにより表すことができることが理解される。これらの実施形態では、組成物のnの平均値は、整数でなくともよい。
【0077】
幾つかの実施形態では、R1及びR2はそれぞれ水素原子である。幾つかの実施形態では、薬剤として許容される塩はハロゲン化アンモニウムを含む。ある実施形態では、歯科用組成物は、式LXXVIで表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む。幾つかの実施形態では、塩はハロゲン化アンモニウムを含む。具体的な実施形態では、ハロゲン化アンモニウムは塩化アンモニウムを含む。
【化28】

【0078】
式LXXVの幾つかの実施形態では、R1はアルキル基を含み、R2はC(O)R3であり、この場合R3はアルキル基を含む。ある実施形態では、R1は、約1〜約4個の炭素原子を有するアルキル基を含み、R3は約4〜約16個の炭素原子を有するアルキル基を含む。幾つかの実施形態では、R1はメチル基を含み、R3は7、8又は9個の炭素原子を有するアルキル基を含む。幾つかの実施形態では、歯科用組成物は、式LXXVII、式LXXVIII又は式LXXIXで表される化合物を含む。
【化29】

【0079】
式LXXVの幾つかの実施形態では、R1は水素原子であり、R2はアルキル基を含む。幾つかの実施形態では、薬剤として許容される塩はハロゲン化アンモニウムを含む。幾つかの実施形態では、アルキル基は約1〜約8個の炭素原子を含む。ある実施形態では、歯科用組成物は、式LXXXで表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む。塩はハロゲン化アンモニウムを含んでよい。幾つかの実施形態では、ハロゲン化アンモニウムは塩化アンモニウムを含む。ある実施形態では、歯科用組成物は、式LXXXIで表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む。塩はハロゲン化アンモニウムを含んでよい。幾つかの実施形態では、ハロゲン化アンモニウムは塩化アンモニウムを含む。幾つかの実施形態では、R1及びR2は、独立に、約1〜約8個の炭素原子を有するアルキル基を含む。ある実施形態では、歯科用組成物は、式LXXXIIで表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む。塩はハロゲン化アンモニウムを含んでよい。幾つかの実施形態では、ハロゲン化アンモニウムは塩化アンモニウムを含む。
【化30】

【0080】
式LXXV〜LXXXIIで表される化合物は、キラル炭素原子を含むことが認識されている。簡略化のために、これらの式では、キラル炭素原子それぞれについての立体化学的形状を特定しない。しかしながら、かかる式は、本明細書及び特許請求の範囲で用いられるとき、任意の可能な立体化学的形状を有する化合物のそれぞれを表すことを意図する。幾つかの実施形態では、式LXXVI〜LXXXIIで表される化合物は、アミノ糖アルコール及びそれぞれ慣用名D−グルカミン、N−メチル−N−オクタノイル−D−グルカミン、N−メチル−N−ノナノイル−D−グルカミン、N−メチル−N−デカノイル−D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミン、N−オクチル−D−グルカミン及びN−メチル−N−オクチル−D−グルカミンを有する誘導体である。
【0081】
別の態様では、有機ゲル化剤は式LXXXIIIの環状アミノ糖又はその薬剤として許容される塩である。
【化31】

式中、R1、R2及びR3は、独立に、OH及びNR56からなる群から選択され;R4はOH、OP(O)(OH)2、OSO3H及びNR56からなる群から選択され;R5及びR6は、独立に、水素原子、アルキル基、C(O)R7及びSO28からなる群から選択され;R7及びR8は、独立に、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基からなる群から選択され;ただし、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つはNR56である。
【0082】
式LXXXIIIで表される化合物はキラル炭素原子を含むことが認識されている。簡略化のために、式LXXXIIIでは、キラル炭素原子のそれぞれについての立体化学的形状を特定しない。式LXXXIIIは、本明細書及び特許請求の範囲で用いられるとき、任意の可能な立体化学的形状を有する化合物のそれぞれを表すことを意図する。
【0083】
式LXXXIIIでは、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つはNR56である。R1、R2及びR3は、独立に、OH及びNR56からなる群から選択される。R1、R2及びR3のそれぞれはOHであってよく、R1、R2及びR3のうち任意の2つがOHであってよく、又はR1、R2及びR3のうち任意の1つがOHであってもよい。R1、R2及びR3のそれぞれはNR56であってよく、R1、R2及びR3のうち任意の2つがNR56であってよく、又はR1、R2及びR3のうち任意の1つがNR56であってもよい。R4は、OH、OP(O)(OH)2、OSO3H及びNR56からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、R4はOHである。他の実施形態では、R4はOP(O)(OH)2である。他の実施形態では、R4はOSO3Hである。他の実施形態では、R4はNR56である。
【0084】
式LXXXIIIでは、R5及びR6は、独立に、水素原子、アルキル基、C(O)R7及びSO28からなる群から選択される。R5及びR6のそれぞれは、水素原子であってよく、R5及びR6のそれぞれは、アルキル基であってよく、R5及びR6のそれぞれは、C(O)R7であってよく、又はR5及びR6のそれぞれは、SO28であってもよい。幾つかの実施形態では、R5は、水素原子であってよく、R6はアルキル基、C(O)R7又はSO28であってよい。他の実施形態では、R5はアルキル基であってよく、R6はC(O)R7又はSO28であってよい。更に別の実施形態では、R5はC(O)R7であってよく、R6はSO28であってよい。R5及びR6のいずれか又は両方がアルキル基であるとき、アルキル基は約1個の炭素原子、約1個を超える炭素原子、約2個を超える炭素原子、約4個を超える炭素原子、約6個を超える炭素原子、約8個を超える炭素原子、約10個を超える炭素原子、約12個を超える炭素原子、約14個を超える炭素原子、約16個を超える炭素原子、又は約18個を超える炭素原子を含んでよい。幾つかの実施形態では、アルキル基は、約30個未満の炭素原子、約26個未満の炭素原子、又は約20個未満の炭素原子を含む。幾つかの実施形態では、アルキル基は直鎖アルキル基を含む。他の実施形態では、アルキル基は分岐鎖アルキル基を含む。更に他の実施形態では、アルキル基は環状アルキル基を含む。R5及びR6のそれぞれがアルキル基を含むとき、R5及びR6は同じアルキル基を含んでよく、又はR5及びR6は異なるアルキル基を含んでもよい。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、1−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロペニル、及びシクロオクチルが挙げられる。
【0085】
式LXXXIIIでは、R7及びR8は、独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基からなる群から選択される。各R7又はR8のいずれか又は両方がアルキル基であるとき、アルキル基は、約1個の炭素原子、約1個を超える炭素原子、約2個を超える炭素原子、約4個を超える炭素原子、約6個を超える炭素原子、約8個を超える炭素原子、約10個を超える炭素原子、約12個を超える炭素原子、約14個を超える炭素原子、約16個を超える炭素原子、又は約18個を超える炭素原子を含んでよい。幾つかの実施形態では、アルキル基は、約30個未満の炭素原子、約26個未満の炭素原子、約22個未満の炭素原子、又は約20個未満の炭素原子を含む。幾つかの実施形態では、アルキル基は直鎖アルキル基を含む。他の実施形態では、アルキル基は分岐鎖アルキル基を含む。更に他の実施形態では、アルキル基は環状アルキル基を含む。式Iで表される化合物又はその薬剤として許容される塩では、R7及びR8基の両方が存在するとき、かつR7及びR8のそれぞれがアルキル基を含むとき、R7及びR8は同じアルキル基を含んでよく、又はR7及びR8は異なるアルキル基を含んでもよい。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、1−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロペニル、及びシクロオクチルが挙げられる。
【0086】
式LXXXIIIでは、R7又はR8のいずれか又は両方がアリール基であるとき、アリール基は、1個のアレーン環又は1個を超えるアレーン環を含んでよい。アレーン環は、6個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、12個以下の炭素原子、14個以下の炭素原子、16個以下の炭素原子、又は18個以下の炭素原子を含んでよい。アレーン環は、ヘテロ原子、例えば窒素、酸素又は硫黄を含んでよい。1個を超えるアレーン環がアリール基中に存在する場合、アレーン環はともに融合することができ、又は化学結合により結合することができる。式LXXXIIIで表される化合物又はその薬剤として許容される塩では、R7及びR8基の両方が存在するとき、かつR7及びR8のそれぞれがアリール基を含むとき、R7及びR8は同じアリール基を含んでよく、又はR7及びR8は異なるアリール基を含んでもよい。アリール基の非限定的な例としては、置換及び非置換フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アントラセニル及びビフェニルが挙げられる。
【0087】
式LXXXIIIでは、R7又はR8のいずれか又は両方がアラルキル基であるとき、アラルキル基は1個のアレーン環又は1個を超えるアレーン環を含んでよい。アラルキル基は、6個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、12個以下の炭素原子、14個以下の炭素原子、16個以下の炭素原子、18個以下の炭素原子又は20個以下の炭素原子を含んでよい。1個を超えるアレーン環がアラルキル基中に存在する場合、アレーン環はともに融合することができ、又は化学結合により結合することができる。アレーン環は、ヘテロ原子、例えば窒素、酸素又は硫黄を含んでよい。式LXXXIIIで表される化合物又はその薬剤として許容される塩では、R7及びR8基の両方が存在するとき、かつR7及びR8のそれぞれがアラルキル基を含むとき、R7及びR8は同じアラルキル基を含んでよく、又はR7及びR8は異なるアラルキル基を含んでもよい。アラルキル基の非限定的な例としては、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、2−ナフチルエチル及び9−アントラセニルメチルが挙げられる。
【0088】
式LXXXIIIの幾つかの実施形態では、R1はNR56であり、この場合R5及びR6はそれぞれ水素原子であり、R2、R3及びR4はそれぞれOHである。式LXXXIIIの幾つかの実施形態では、薬剤として許容される塩は、塩化アンモニウム及び硫酸アンモニウムから選択される。幾つかの実施形態では、歯科用組成物は、式LXXXIV、式LXXXV若しくは式LXXXVIで表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む。幾つかの実施形態では、塩は塩化アンモニウム又は硫酸アンモニウムを含む。
【化32】

【0089】
式LXXXIIIの幾つかの実施形態では、R1はNR56であり、この場合R5及びR6はそれぞれ水素原子であり、R2及びR3はそれぞれOHであり、R4はOP(O)(OH)2である。具体的な実施形態では、歯科用組成物は、式LXXXVIIで表される化合物又はその薬剤として許容される塩を含む。薬剤として許容される塩は、双性イオンを含んでよい。
【化33】

【0090】
式LXXXIIIの幾つかの実施形態では、R1はNR56であり、この場合R5はC(O)R7であり、R7は12個の炭素原子を有するアルキル基、14個の炭素原子を有するアルキル基、又は16個の炭素原子を有するアルキル基であり、R6は水素原子である。具体的な実施形態では、歯科用組成物は、式LXXXVIII、式LXXXIX又は式LXLで表される化合物を含む。
【化34】

【0091】
式LXXIV〜LXLでは、各環の5個のキラル炭素原子のうち4個についての立体化学的形状が、結合のための従来の表記法を用いて特定される。各環の1個のキラル炭素原子についての立体化学的形状は特定されない。これらの式は、本明細書及び特許請求の範囲で用いられるとき、任意の可能な立体化学的形状を有する化合物のそれぞれを表すことを意図する。有用な化合物は、慣用名D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−マンノサミン、D−グルコサミン−6−ホスフェート、N−ドデカノイル−D−グルコサミン、N−テトラデカノイル−D−グルコサミン及びN−ヘキサデカノイル−D−グルコサミンを有する化合物である。
【0092】
アミノ糖のうち、好ましい化合物としては、以下が挙げられる。
【化35】

【0093】
本明細書に記載した有機ゲル化剤の多くの部類のうち、好ましいものは、尿素系又はオキサミドであり、より好ましくは重合性尿素系又はオキサミド有機ゲル化剤である。最も好ましい誘導体は、ジベンジリデンソルビトール、尿素メタクリレート及びオキサミドメタクリレートである。好ましい有機ゲル化剤としては、実施例の章に記載するものが挙げられる。
【0094】
1種以上の有機ゲル化剤は、本発明の硬化性組成物中に、有機ゲル化剤と重合性成分との合計の総重量(例えば、フィラー材料、結晶性物質及び/又は任意の添加剤を含まない、硬化性組成物)を基準として、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%、更により好ましくは少なくとも0.2重量%、更により好ましくは少なくとも0.4重量%の量で含まれることができる。1種以上の有機ゲル化剤は、本発明の硬化性組成物中に、有機ゲル化剤と重合性成分との合計の総重量(例えば、フィラー材料、結晶性物質及び/又は任意の添加剤を含まない、硬化性組成物)を基準として、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で含まれることができる。
【0095】
有機重合性成分
本発明の硬化性歯科用組成物はまた、有機重合性成分を含み、それにより重合性組成物を形成することができる。かかる重合性成分は、有機ゲル化剤と適合性があるように選択される。
【0096】
ある実施形態では、組成物は光重合可能である、即ち、組成物は、化学線を放射する際組成物の重合(又は硬化)を開始する、光開始剤(即ち、光開始剤系)を含有する。かかる光重合性組成物は、フリーラジカル重合可能であるか、又はカチオン重合可能であることができる。
【0097】
ある実施形態では、組成物は化学的に重合可能である。化学的に重合可能な系(例えば、レドックス系)は、本発明の流動性及び充填性組成物で実行可能であるが、自立性/展性組成物にはそれほど望ましくない。これは、化学的に重合可能な系が、典型的には、自立性/展性予備形成物品にとっては必ずしも望ましくない2部であるためである。化学的に重合可能な系は、典型的には、例えばフリーラジカル又はカチオン重合を受け得る、エチレン性不飽和化合物を含む。
【0098】
光重合性物質
好適な光重合性組成物としては、エポキシ樹脂(カチオン性活性エポキシ基を含有する)、ビニルエーテル樹脂(カチオン性活性ビニルエーテル基を含有する)、エチレン性不飽和化合物(フリーラジカル活性不飽和基を含有する)及びこれらの組み合わせを挙げることができる。有用なエチレン系不飽和化合物の例としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性アクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性メタクリル酸エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。同様に、単一化合物中にカチオン性活性官能基とフリーラジカル活性官能基との両方を含有する重合性物質も好適である。例としては、エポキシ官能性アクリレート、エポキシ官能性メタクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0099】
光重合性組成物は、1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマーを含み得るフリーラジカル活性官能基を有する化合物を含んでよい。好適な化合物は、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を含有し、付加重合を受けることが可能である。かかるフリーラジカル重合性化合物としては、例えば(メタ)アクリレート(即ち、アクリレート及びメタクリレート)及び(メタ)アクリルアミド(即ち、アクリルアミド及びメタクリルアミド)が挙げられる。具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサクリレート、ビス[l−(2アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[l−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、トリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレート、及び米国特許第4,648,843号に記載されている類似の化合物のようなモノ−、ジ−又はポリアクリレート及びメタクリレート;分子量200〜500のポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビス−メタクリレート;米国特許第4,652,274号(ボエッチャー(Boettcher)ら)中のもののようなアクリレート化モノマーの共重合性混合物;米国特許第4,642,126号(ザドー(Zador)ら)のもののようなアクリレート化オリゴマー;並びに、スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシナート、ジビニルアジペート及びジビニルフタレートのようなビニル化合物が挙げられる。好適なエチレン性不飽和化合物はまた、シグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))及びローム&テック社(Rhom and Tech, Inc.)(ドイツ、ダルムシュタット(Darmstadt))のような広範な市販供給元から入手可能である。他の好適なフリーラジカル重合性化合物としては、例えば、国際特許公開第00/38619号(グーゲンベルガー(Guggenberger)ら)、国際特許公開第01/92271号(ウェインマン(Weinmann)ら)、国際特許公開第01/07444号(グーゲンベルガーら)、国際特許公開第00/42092号(グーゲンベルガーら)に開示されているようなシロキサン官能性(メタ)アクリレート;並びに、例えば、米国特許第5,076,844号(フォック(Fock)ら)、米国特許第4,356,296号(グリフィス(Griffith)ら)、欧州特許第0373 384号(ヴァーゲンクネヒト(Wagenknecht)ら)、欧州特許第0201 031号(ライナーズ(reiners)ら)、及び欧州特許第0201 778号(ライナーズら)に開示されているようなフルオロポリマー官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。必要に応じて、2個以上のフリーラジカル重合性化合物の混合物を使用することができる。
【0100】
光重合性組成物は、カチオン性重合性エポキシ樹脂のようなカチオン性活性官能基を有する化合物を含んでよい。かかる物質としては、開環により重合可能であるオキシラン環を有する有機化合物が挙げられる。これらの物質としては、モノマー性エポキシ化合物及びポリマー系エポキシドが挙げられ、脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式であることができる。これらの化合物は、一般的に、平均で、1分子あたり少なくとも1つ、好ましくは少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも2つの重合性エポキシ基を有する。ポリマー性エポキシドとしては、末端エポキシ基を有する直鎖ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格オキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、及びペンダントエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)などが挙げられる。エポキシドは純粋化合物であるか、又は1分子あたり1つ、2つ、若しくはそれ以上のエポキシ基を含有する化合物の混合物であってよい。1分子あたりのエポキシ基の「平均」数は、エポキシ含有物質中のエポキシ基の総数を、存在するエポキシ含有分子の総数で除することにより決定される。
【0101】
これらのエポキシ含有物質は、低分子量のモノマー性物質から高分子量のポリマーまで様々であり、それらの骨格鎖及び置換基の性質において非常に多様であり得る。許容し得る置換基の実例としては、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホネート基、シロキサン基、ニトロ基、リン酸基等が挙げられる。エポキシ含有物質の分子量は、58〜100,000以上で異なり得る。
【0102】
本発明で有用な好適なエポキシ含有物質は、米国特許第6,187,836号(オックスマン(Oxman)ら)及び同第6,084,004号(ウェインマン(Weinmann)ら)に列挙されている。
【0103】
様々なエポキシ含有物質のブレンドも考えられる。かかるブレンドの例としては、低分子量(200未満)、中分子量(200〜10,000)及び高分子量(10,000超)のような、2つ以上の重量平均分子量分布のエポキシ含有化合物が挙げられる。あるいは又は更に、エポキシ樹脂は、脂肪族及び芳香族ような異なる化学的性質、又は極性及び非極性のような異なる官能基を有する、エポキシ含有物質のブレンドを含有し得る。
【0104】
カチオン性活性官能基を有する他の種類の有用な物質としては、ビニルエーテル、オキセタン、スピロオルトカーボネート、スピロオルトエステル等が挙げられる。
【0105】
必要に応じて、カチオン性活性官能基及びフリーラジカル活性官能基の両方を単一分子内に含有することができる。かかる分子は、例えば、ジ−又はポリエポキシドと1当量以上のエチレン性不飽和カルボン酸とを反応させることにより得ることができる。かかる物質の例は、UVR−6105(ユニオンカーバイド社(Union Carbide)より入手可能)と1当量のメタクリル酸との反応生成物である。エポキシ及びフリーラジカル活性官能基を有する市販物質としては、日本のダイセル化学(Daicel Chemical)から入手可能なサイクロマー(CYCLOMER)M−100、M−101又はA−200のようなサイクロマーシリーズ、及びジョージア州アトランタのラッドキュアー・スペシャルティーズ(Radcure Specialties)、UCBケミカルズ(UCB Chemicals)から入手可能なエベクリル(EBECRYL)−3605が挙げられる。
【0106】
カチオン性硬化性組成物は、ヒドロキシル含有有機物質を更に含んでもよい。好適なヒドロキシル含有物質は、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有する任意の有機物質であってよい。好ましくは、ヒドロキシル含有物質は、2個以上の一級又は二級脂肪族ヒドロキシル基(即ち、ヒドロキシル基が非芳香族炭素原子に直接結合している)を含有する。ヒドロキシル基は末端に位置するか、ポリマー又はコポリマーの側鎖であることができる。ヒドロキシル含有有機物質の分子量(MW)は、超低分子量(例えば、32g/モル)から超高分子量(例えば、1,000,000g/モル以上)まで異なり得る。好適なヒドロキシル含有物質は、低分子量、即ち32〜200g/モル、中分子量、即ち200〜10,000g/モル、又は高分子量、即ち10,000g/モル超を有することができる。本明細書で使用するとき、分子量は全て重量平均分子量である。
【0107】
好適な分子量は、1,000,000g/モル未満、500,000g/モル未満、200,000g/モル未満、100,000g/モル未満、50,000g/モル未満、25,000g/モル未満、15,000g/モル未満、12,500g/モル未満、又は10,000g/モル未満であってよい。
【0108】
ヒドロキシル含有物質は天然で非芳香族であるか、又は芳香族官能基を含有してよい。ヒドロキシル含有物質は、所望により、窒素、酸素、硫黄等のような分子の骨格鎖内にヘテロ原子を含有する。ヒドロキシル含有物質は、例えば、天然由来又は合成調製されたセルロース性物質から選択することができる。ヒドロキシル含有物質は、熱不安定性又は光分解不安定性であり得る基を実質的に含むべきではない。つまり、物質は、100℃未満の温度において、又は重合性組成物の所望の光重合状態において直面し得る化学光の存在下で揮発性成分を分解又は遊離すべきではない。
【0109】
本発明において有用な好適なヒドロキシル含有物質は、米国特許第6,187,836号(オックスマン(Oxman)ら)に列挙される。
【0110】
重合性組成物で用いられるヒドロキシル含有有機物質の量は、ヒドロキシル含有物質とカチオン及び/又はフリーラジカル重合性成分との適合性、ヒドロキシル含有物質の当量及び官能基、最終組成物における所望の物理的特性、所望の重合速度等のような要因に応じて、広範囲で異なり得る。
【0111】
種々のヒドロキシル含有物質のブレンドを用いることもできる。かかるブレンドの例としては、低分子量(200未満)、中分子量(200〜10,000)及び高分子量(10,000超)のような2つ以上の分子量分布のヒドロキシル含有化合物が挙げられる。あるいは又は更に、ヒドロキシル含有物質は、脂肪族及び芳香族のような異なる化学的性質、又は極性及び非極性のような異なる官能基を有する、ヒドロキシル含有物質のブレンドを含有し得る。更なる例として、2種以上の多官能性ヒドロキシ物質の混合物、又は多官能性ヒドロキシ物質との1種以上の1官能性ヒドロキシ物質の混合物を用いることができる。
【0112】
重合性物質は、単一分子内に、ヒドロキシル基及びフリーラジカル活性官能基を含有してもよい。かかる物質の例としては、ヒドロキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートのようなヒドロキシルアルキルアクリレート及びヒドロキシアルキルメタクリレート;グリセロールモノ−又はジ−(メタ)クリレート;トリメチロールプロパンモノ−又はジ−(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールモノ−、ジ−又はトリ−(メタ)アクリレート;ソルビトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、又はペンタ−(メタ)アクリレート;及び2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。
【0113】
重合性物質は、単一分子内に、ヒドロキシル基及びカチオン活性官能基を含有してもよい。一例は、ヒドロキシル基及びエポキシ基の両方を含む単一分子である。
【0114】
フリーラジカル光重合性組成物を重合させるための好適な光開始剤(即ち、1個以上の化合物を含む光開始剤系)としては、2元系及び3元系が挙げられる。典型的な3元光開始剤としては、米国特許第5,545,676号(パラゾット(Palazzotto)ら)に記載されているような、ヨードニウム塩、光増感剤、及び電子供与体化合物が挙げられる。好ましいヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート及びジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート(tetrafluoroboarate)である。好ましい光増感剤は、450nm〜520nm(好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内のいくらかの光を吸収するモノケトン及びジケトンである。より好ましい化合物は、450nm〜520nm(更により好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内のいくらかの光を吸収するαジケトンである。好ましい化合物は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン及び他の環状αジケトンである。最も好ましいのは、カンファーキノンである。好ましい電子供与体化合物としては、置換アミン、例えば、エチルジメチルアミノベンゾエートが挙げられる。
【0115】
カチオン性光重合性組成物の重合に好適な光開始剤は、2元系及び3元系が挙げられる。典型的な3元光開始剤としては、ヨードニウム塩、光増感剤及び米国特許第5,856,373号(カイサキ(Kaisaki)ら)、同第6,084,004号(ウェインマン(Weinmann)ら)、同第6,187,833号(オックスマン(Oxman)ら)、同第6,187,836号(オックスマンら)及び同第6,765,036号(デデ(Dede)ら)に記載されているような電子供与体化合物が挙げられる。好ましいヨードニウム塩、光増感剤及び電子供与体化合物は、フリーラジカル光重合性組成物を重合させるための光開始剤系用である。
【0116】
フリーラジカル光重合性組成物を重合させるための他の好適な光開始剤としては、典型的に380nm〜1200nmの機能的波長範囲を有するホスフィンオキシドの部類が挙げられる。380nm〜450nmの機能的波長範囲を有する好ましいホスフィンオキシドフリーラジカル反応開始剤は、米国特許第4,298,738号(レッケン(Lechtken)ら)、同第4,324,744号(レッケンら)、同第4,385,109号(レッケンら)、同第4,710,523号(レッケンら)、同第4,737,593号(エルリッチ(Ellrich)ら)、同第6,251,963号(コーラ−(Kohler)ら)、及び欧州特許出願公開第0 173 567 A2号(イング(Ying))に記載されているもののようなアシル及びビスアシルホスフィンオキシドである。
【0117】
380nm超〜450nmの波長範囲で照射されたときにフリーラジカル反応を開始することができる、市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(IRGACURE)819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)、ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown))、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの重量比25:75の混合物(イルガキュア1700、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの重量比1:1の混合物(ダロキュア(DAROCUR)4265、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)、及びエチル2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィナート(ルシリン(LUCIRIN)LR8894X、BASF社、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte))が挙げられる。
【0118】
典型的には、ホスフィンオキシド反応開始剤は、光重合性組成物中に、組成物の総重量を基準として0.1重量%〜5.0重量%のような、触媒として有効な量で存在する。
【0119】
三級アミン還元剤を、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用してもよい。本発明で有用な三級アミンの一例としては、エチル−4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。存在する場合、アミン還元剤は、光重合性組成物中に、組成物の全重量を基準として0.1重量%〜5重量%の量で存在する。
【0120】
化学重合性物質
化学重合性組成物、典型的には、フリーラジカル重合性組成物の場合、反応開始剤系は、放射線、熱又はレドックス/自動硬化化学反応を介して重合を開始させる系から選択することができる。
【0121】
本発明の硬化性樹脂は、重合性成分(例えば、エチレン性不飽和重合性成分)と、酸化剤及び還元剤を含むレドックス系とを含むレドックス硬化系を含むことができる。本発明で有用である好適な重合性成分及びレドックス系は、米国特許第6,624,211号(カリム(Karim)ら)及び同第6,964,985号(カリムら)に記載されている。
【0122】
樹脂系(例えば、エチレン性不飽和構成要素)の重合を開始することが可能なフリーラジカルを製造するために、還元剤及び酸化剤は、互いに反応するか、ないしは別の方法で協働すべきである。この種類の硬化は、暗反応である。即ち、光の存在に依存せずかつ光が存在しない状態で進行可能である。還元剤及び酸化剤は、好ましくは十分に貯蔵安定性があり、望ましくない着色がなく、典型的な歯科条件においての保存及び使用を可能にする。これらは、重合性組成物の他の構成要素に容易に溶解する(及び、硬化性組成物の他の構成要素からの分離を阻止する)ことを可能にするために、樹脂系と十分に混和性があるべきである。
【0123】
有用な還元剤としては、例えば、米国特許第5,501,727号(ワング(Wang)ら)に記載されているようなアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及び金属錯体アスコルビン酸化合物;アミン、特に4−t−ブチルジメチルアニリンのような三級アミン;p−トルエンスルフィン酸塩及びベンゼンスルフィン酸塩のような芳香族スルフィン酸塩;1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、及び1,3−ジブチルチオ尿素のようなチオ尿素;並びにこれらの混合物が挙げられる。他の二級還元剤としては、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に依存する)、ジチオン酸又は亜硫酸アニオンの塩、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。好ましくは、前記還元剤はアミンである。
【0124】
また好適な酸化剤は、当業者に馴染みがあり、例えば、過硫酸、並びにナトリウム、カリウム、アンモニウム、セシウム、及びアルキルアンモニウム塩のようなその塩が挙げられる。更なる酸化剤としては、例えば、過酸化ベンゾイルのような過酸化物、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びアミルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド、並びに塩化コバルト(III)及び塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)のような遷移金属の塩、過ホウ酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、過リン酸及びその塩、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0125】
1種を超える酸化剤又は1種を超える還元剤を使用することが望ましい場合がある。少量の遷移金属化合物を添加して、レドックス硬化速度を速めることもできる。
【0126】
還元剤及び酸化剤は、適切なフリーラジカル反応速度を得るのに十分な量で存在する。これは、フィラー以外の、硬化性組成物の全成分を組み合わせ、硬化した塊が得られるかどうかを観察することにより評価できる。
【0127】
還元剤は、硬化性組成物の成分の総重量を基準として、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%の量で存在する。還元剤は、硬化性組成物の成分の総重量を基準として、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。
【0128】
酸化剤は、硬化性組成物の成分の総重量を基準として、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.10重量%の量で存在する。酸化剤は、硬化性組成物の成分の総重量を基準として、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。
【0129】
還元剤又は酸化剤は、マイクロカプセル化することができる。これは、一般に、硬化性組成物の貯蔵安定性を増強し、必要に応じて、還元剤又は酸化剤をともに包装することを可能にする。例えば、カプセル化用材料を適切に選択することにより、酸化剤及び還元剤を酸官能性成分及び任意のフィラーとともに組み合わせ、保管安定性状態に維持することができる。
【0130】
更なる代替案において、フリーラジカル活性基の硬化又は重合を開始するために、熱を使用してよい。本発明の歯科用材料に好適な熱供給源の例としては、誘導、対流、及び放射が挙げられる。熱供給源は、標準条件又は高圧下において、少なくとも40℃、最大150℃の温度を生じさせることができるべきである。この方法は、口腔環境外で生じる物質の重合を開始させるのに好ましい。
【0131】
硬化性樹脂におけるフリーラジカル活性官能基の重合を開始できる反応開始剤の更に別の代替部類は、フリーラジカルを生成する熱反応開始剤を含むものである。例としては、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウリル)及びアゾ化合物(例えば、2,2−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN))が挙げられる。
【0132】
結晶性物質
ある実施形態では、硬化性組成物は、最初に予備形成された形状を維持するための非共有三次元構造を付与するための結晶性物質を含む。この結晶性物質は、重合(架橋も含む)することができる反応性基を有してもよく、有さなくてもよい。好ましくは、結晶性物質は重合性である。好ましくは、結晶性物質は、ポリマー(オリゴマーを含む)である。より好ましくは、結晶性物質は、重合性ポリマー物質である。
【0133】
「結晶性」とは、物質が、示差走査熱量計(DSC)により組成物中で測定するとき、20℃以上の結晶融点を示すことを意味する。観察された吸熱のピーク温度は、結晶融点と考えられる。
【0134】
結晶融点は、好ましくは、100℃未満、より好ましくは90℃未満、更により好ましくは80℃未満である。
【0135】
結晶性相は、物質が構成される隣接する化学部分に規則構造が存在する立体配座をとる複数の格子を含んでよい。格子内の充填配列は、化学的及び構造的観点の両方で非常に規則的であることができる。
【0136】
結晶性物質は、20℃以上で、ポリマー鎖の長いセグメントが非晶質及び結晶性の状態又は相の両方に現れる「半結晶状態」であることができる。非晶質相は、ランダムにもつれた配列のポリマー鎖であると考えることができる。非晶質ポリマーのX線回折パターンは、拡散ハロ(diffuse halo)であり、これはポリマー構造の秩序化が非常に低い又は秩序化されていないことを示す。非晶質ポリマーは、ガラス転移温度で軟化挙動を示すが、融解挙動は示さない。半結晶状態の物質は、特徴的な融点を示し、それを超えると結晶格子は無秩序な状態になる。かかる「半結晶」物質のX線回折パターンは、一般に、結晶秩序の性質を示す同心円又はスポットの対照配列のいずれかにより区別することができる。したがって、本明細書では、「結晶性」成分は半結晶物質を包含する。
【0137】
結晶性物質は、好ましくは室温を超える温度で結晶化する少なくとも1種の物質を含む。(例えば、成分が、成分の骨格鎖(即ち、主鎖)又はペンダント置換基(即ち、側鎖)中のポリマーであるとき)成分中に存在する結晶性部分の凝集により提供され得るかかる結晶化度は、周知の結晶学的、熱量分析的、又は動力学的/機械的方法により測定することができる。本発明の目的のために、この成分は、実験的に(例えば、DSCにより)測定するとき、20℃を超える少なくとも1つの融解温度(Tm)を硬化性組成物に付与する。好ましくは、この成分は硬化性組成物に30℃〜100℃のTmを付与する。1種を超える結晶性物質を硬化性組成物で用いる場合、1つを超える区別できる融点が見られる。
【0138】
結晶性物質の数平均分子量は、広い範囲にわたって多様であり得る。好ましくは、分子量は、10,000g/モル未満、好ましくは5000g/モル以下である。好ましくは、分子量は少なくとも150g/モル、より好ましくは少なくとも400g/モルである。樹脂系で用いるのに好適な結晶性モノマーとしては、ウレタン、エーテル、エステル、アミド若しくはイミド基を含有するモノマー、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい結晶性モノマーは、重合及び/又は架橋することができる反応性基を含有する。特に好ましいのは、1を超える反応性官能基を有するモノマーである。
【0139】
樹脂系で用いるのに好適な結晶性ポリマー(オリゴマーを含む)は、結晶性主鎖(即ち、直鎖)又はペンダント(即ち側鎖)セグメントを有することができる。好ましい物質は、重合及び/又は架橋することができる反応性基も含有する。特に好ましいのは、少なくとも2つの反応性官能基を有する結晶性オリゴマー又はプレポリマーである。
【0140】
結晶性主鎖又は骨格鎖セグメントを有する好適な結晶性物質の例としては、ポリエステル(ポリカプロラクトンを含む)、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリシラン、ポリアミド、ポリオレフィン(好ましくは、低級、例えばC2〜C3、オレフィンから形成される)、ポリウレタン及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
好ましい結晶性物質は、一級ヒドロキシル末端基を含有する飽和、直鎖、脂肪族ポリエステルポリオール(特にジオール)である。本発明の樹脂系で結晶性物質として有用である市販物質の例としては、イノレックス・ケミカル社(Inolex Chemical Co.)(ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia))から商品名レクソレス(LEXOREZ)として入手可能な幾つかの樹脂が挙げられる。本発明の組成物中で有用な他のポリエステルポリオールの例は、ルコ・ポリマー社(Ruco Polymer Corp.)(ニューヨーク州ヒックスビル(Hicksville))から商品名ルコフレックス(RUCOFLEX)として入手可能なものである。本発明で有用なポリカプロラクトンの例としては、ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)(ミシガン州ミッドランド(Midland))から商品名トーン(TONE)0230、トーン0240及びトーン0260、並びに、ソルベイ社(Solvay Co.)(英国、チェシャー州(Cheshire)ウォリントン(Warrington))から商品名キャパ(CAPA)として入手可能なものが挙げられる。特に好ましい物質は、化学的に修飾され又は反応して(例えば、一級ヒドロキシル末端基を介して)、重合性、不飽和官能基、例えば、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリレートクロリド、又はメタクリル酸無水物と反応したポリカプロラクトンジオールを導入する、飽和、直鎖、脂肪族ポリエステルポリオールである。
【0142】
結晶性物質はまた、例えば、分岐の程度が様々な樹状、超分岐又は星型構造を有することができる。樹状ポリマーは、多官能性化合物であり、デンドリマー、規則的デンドロン、デンドリグラフト及び超分岐ポリマーを含む任意の既知の樹状構造が挙げられる。樹状ポリマーは、多数の末端反応性基を有する高密度分岐構造を有するポリマーである。樹状ポリマーは、全て1つ以上の分岐点を有する、反復単位の数層又は数世代を含む。デンドリマー及び超分岐ポリマーを含む樹状ポリマーは、少なくとも2種の異なる種類の反応性基を有するモノマー単位の縮合、付加又はイオン反応により調製することができる。
【0143】
樹状ポリマーは、通常原子群を含む共通コアから広がる複数のデンドロンからなる。樹状ポリマーは、一般に、末梢表面基、2個以上の分岐官能基を有する内部分岐接合点、及び隣接する分岐接合点を共有結合する二価連結基からなる。
【0144】
デンドロン及びデンドリマーは、理想的であっても非理想的であってもよく、即ち不完全又は欠陥があってもよい。不完全性は、通常、不完全な化学反応又は不可避な競合副反応のいずれかの結果である。
【0145】
超分岐ポリマーは、よりほぼ完全な規則構造デンドリマーと比較して、高レベルの非理想的な不規則分岐配列を含む樹状ポリマーである。具体的には、超分岐ポリマーは、全ての反復単位が分岐接合点を含むというわけではない比較的多い数の不規則分岐配列を含む。したがって、超分岐ポリマーは、直鎖ポリマーとデンドリマーとの間の中間体として見なされることができる。それでもなお、個々の巨大分子につき、分岐接合点含有量が比較的高いため、それらは樹枝状である。
【0146】
星型ポリマーは、典型的には、中心コアから広がるポリマー鎖からなる。
【0147】
デンドリマー、デンドロン、デンドリグラフト、超分岐ポリマー及び星型の調製及び特徴付けは周知である。デンドリマー及びデンドロンの例、及びその合成方法は、米国特許第4,507,466号(トマリア(Tomalia)ら)、同第4,558,120号(トマリアら)、同第4,568,737号(トマリアら)、同第4,587,329号(トマリアら)、同第4,631,337号(トマリアら)、同第4,694,064号(トマリアら)、同第4,713,975号(トマリアら)、同第4,737,550号(トマリア)、同第4,871,779号(キラト(Killat)ら)及び同第4,857,599号(トマリアら)に記載されている。超分岐ポリマーの例及びその調製方法は、例えば、米国特許第5,418,301号(ハルト(Hult)ら)に記載されている。幾つかの樹状ポリマーもまた、市販されている。例えば、3−及び5−世代超分岐ポリエステルポリオールは、ペルストープ・ポリオールズ社(Perstorp Polyols, Inc.)(オハイオ州トレド(Toledo))から入手することができる。星型ポリマーの例及びその調製方法は、例えば、米国特許第5,830,986号(メリル(Merrill)ら)、同第5,859,148号(ボルグレブ(Borggreve)ら)、同第5,919,870号(レッチフォード(Letchford)ら)及び同第6,252,014号(ノース(Knauss))に記載されている。
【0148】
本発明において有用な樹状ポリマーは、任意の数の世代、好ましくは3〜5世代を含むことができる。
【0149】
一般的に、結晶性末梢基を有する、又は結晶性末梢基へと、別の化合物と反応することができる末梢基を有する、任意の既知の樹状ポリマーは、本発明の組成物の樹脂系で使用するのに好適である。好適な樹状ポリマーの例としては、ポリエーテル、ポリエステル、ポリチオエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリシラン、ポリアミド、ポリウレタン及び任意の他の縮合ポリマーが挙げられる。
【0150】
結晶性ペンダント部分(即ち、側鎖)を有する好適な結晶性ポリマー物質の例としては、ペンダント(側鎖)結晶性部分を含有するモノマーの重合、又は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルエステル若しくはポリ−α−オレフィンポリマー若しくはコポリマーの化学的修飾によるペンダント結晶性部分の導入により調製されるポリマー物質が挙げられるが、これらに限定されない。結晶性オリゴマー又はポリマーが結晶融点を有する限り、それは非結晶性モノマーを含んでよい。かかる側鎖結晶性又は「くし様」ポリマーの結晶特性を決定する調製及び形態/立体配座特性は、プレート(Plate)及びシバブ(Shibaev)、「くし様ポリマーの構造及び特性(Comb-Like Polymers.Structure and Properties)」、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス、マクロモレキュラー・レビューズ(Journal of Polymer Science, Macromolecular Reviews)、第8巻117〜253頁(1974年)により論評される。
【0151】
別の結晶性物質としては、下記式(式LXXIV)で表される化合物が挙げられる。
【化36】

式中、各Qは、独立に、ポリエステルセグメント、ポリアミドセグメント、ポリウレタンセグメント、ポリエーテルセグメント又はこれらの組み合わせを含む。好ましくは、各Qは、独立に、ポリ(カプロラクトン)セグメントを含む。より好ましくは、かかる結晶性化合物は、エポキシ、酸、アルコール及びエチレン性不飽和反応性部位のような重合性基を含む。特に好ましいかかる物質としては、メタクリル、アクリル、ビニル及びスチリル基のような不飽和重合性基が挙げられる。
【0152】
フィラー材料
本発明の硬化性組成物は、フィラーを含有してもよい。フィラーは、例えば、歯科修復組成物等において現在使用されるフィラーのような、歯科用途に使用される組成物への組み込みに好適な広範な物質のうち1種以上から選択することができる。
【0153】
フィラーは、本質的に、粒子状又は繊維状のいずれかであり得る。粒子状フィラーは、一般に、20:1以下、より一般的には10:1以下である長さ対幅の比率、即ち縦横比を有するものとして定義され得る。繊維は、20:1より大きい、より一般的には100:1より大きい縦横比を有するものとして定義され得る。球形から楕円形、又はフレーク若しくはディスクのようなより平面的なものの範囲で、粒子の形状は多様であり得る。巨視的特性は、フィラー粒子の形状、具体的には形状の均一性に大きく依存し得る。
【0154】
フィラーは、好ましくは超微粒子状である。フィラーは、単峰性又は複峰性(例えば、二峰性)の粒径分布を有することができる。好ましい粒子状フィラーは、10μm(即ちミクロン)未満の平均粒径(好ましくは、直径)を有し、これはミクロンサイズ及びナノスケールの粒子を含む。
【0155】
ミクロンサイズ粒子は、硬化後の磨耗性を改善するために非常に有効である。好ましいミクロンサイズ粒子状フィラーは、少なくとも0.2ミクロンから1ミクロン以下の平均粒径を有する。
【0156】
ナノスケールフィラーは、一般的に、粘度及びチキソトロピー変性剤として使用される。それらのサイズの小ささ、高い表面積及び関連する水素結合のために、これらの物質は、凝集網状構造に構築することができる。この種類の物質(「ナノスケール」物質)は、200ナノメートル(nm)未満の平均粒径(即ち、最大寸法、例えば直径)を有する。好ましくは、ナノスケール粒子状物質は、少なくとも2ナノメートル(nm)、より好ましくは少なくとも7nmの平均粒径を有する。好ましくは、ナノスケール粒子状物質は、50nm以下、より好ましくは20nm以下の大きさの平均粒径を有する。かかるフィラーの平均表面積は、好ましくは、少なくとも1gあたり20平方メートル(m2/g)、より好ましくは、少なくとも50m2/g、最も好ましくは少なくとも100m2/gである。ナノスケールフィラーが凝集する(即ち、ヒュームドシリカ中で生じるような凝集網状構造を形成する)場合、上記粒径は一次粒径(即ち、凝集していない物質の粒径)である。
【0157】
フィラーは、無機物質であり得る。また、フィラーは、樹脂系に不溶性である架橋有機物質であってよく、所望により無機フィラーとともに充填される。フィラーは、いかなる場合も非毒性であるべきであり、口内に使用するのに好適であるべきである。フィラーは、放射線不透過性又は放射線透過性であり得る。フィラーはまた、実質的に水に不溶性である。
【0158】
好適な無機フィラーの例は、石英;窒化物(例えば、窒化ケイ素);例えば、Ce、Sb、Sn、Ba、Zn、及びAl由来のガラス;長石;ホウケイ酸ガラス;カオリン;タルク;チタニア;米国特許第4,695,251号(ランドクルブ(Randklev)に記載されたもののような低モース硬度フィラー;及びサブミクロンシリカ粒子(例えば、「OX50」、「130」、「150」、及び「200」シリカを含むデグサ(Degussa)社(オハイオ州アクロン(Akron))製の商品名エアロジル(AEROSIL)として入手可能なもの、並びにキャボット(Cabot)社(イリノイ州タスコラ(Tuscola))製のCAB−O−SIL M5シリカのような焼成シリカ)が挙げられるがそれらに限定されない天然又は合成物質である。ヒュームドシリカは、その低価格、市販品としての入手可能性及び広範囲の利用可能な表面特性のために、自立特性を付与するために好ましい化合物である。
【0159】
好適な有機フィラー粒子の例としては、充填(filled)又は非充填粉砕ポリカーボネート、ポリエポキシド等が挙げられる。
【0160】
好ましい酸非反応性フィラー粒子は、石英、サブミクロンシリカ、及び米国特許第4,503,169号(ランドクルブ(Randklev))に記載された種類の非ガラス質微小粒子である。これら酸非反応性フィラーの混合物、並びに、有機及び無機物質から作製される混合物フィラーも考えられる。
【0161】
フィラーと樹脂との間の結合を強化するために、フィラー粒子の表面を、カップリング剤で処理してもよい。好適なカップリング剤の使用は、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を含む。
【0162】
他の好適なフィラーは、米国特許第6,387,981号(チャン(Zhang)ら)及び米国特許第6,730,156号(ウィンディッシュ(Windisch)ら)並びに国際特許公開第01/30304号(ウー(Wu)ら)、国際特許公開第01/30305号(チャンら)、国際特許公開第01/30306号(ウィンディッシュら)、及び国際特許公開第01/30307号(チャンら)に開示されている。他の好適なフィラーは、これらの刊行物に引用されている参考文献に記載されている。
【0163】
米国特許第6,306,926号(ブレッチャー(Bretscher)ら)には、フリーラジカル重合性組成物、カチオン重合性組成物の両方、並びにフリーラジカル重合性成分及びカチオン重合性成分の両方を特徴とするハイブリッド組成物で用いることができる、多数の放射線不透過性フィラーが開示されている。それらは、カチオン重合性組成物で用いるのに特に有利である。
【0164】
1つのそのようなフィラーは、5〜25重量%の酸化アルミニウム、10〜35重量%の酸化ホウ素、15〜50重量%の酸化ランタン及び20〜50重量%の酸化ケイ素を含むメルト由来のフィラーである。別のフィラーは、10〜30重量%の酸化アルミニウム、10〜40重量%の酸化ホウ素、20〜50重量%の酸化ケイ素及び15〜40重量%の酸化タンタルを含むメルト由来のフィラーである。第3のフィラーは、5〜30重量%の酸化アルミニウム、5〜40重量%の酸化ホウ素、0〜15重量%の酸化ランタン、25〜55重量%の酸化ケイ素及び10〜40重量%の酸化亜鉛を含むメルト由来のフィラーである。第4のフィラーは、15〜30重量%の酸化アルミニウム、15〜30重量%の酸化ホウ素、20〜50重量%の酸化ケイ素及び15〜40重量%の酸化イッテリビウムを含むメルト由来のフィラーである。第5のフィラーは、水性若しくは有機の分散物又は非晶質酸化ケイ素のゾルを、水性若しくは有機の分散物、ゾル、又は放射線不透過性酸化金属の溶液、又は前駆体有機物若しくは化合物と混合するゾル−ゲル法により調製される非ガラス質微小粒子の形態である。第6のフィラーは、水性若しくは有機の分散物又は非晶質酸化ケイ素のゾルを、水性若しくは有機の分散物、ゾル、又は放射線不透過性酸化金属の溶液、又は前駆体有機若しくは無機化合物と混合するゾル−ゲル法により調製される非ガラス質微小粒子の形態である。
【0165】
好ましくは、フィラーの総量は、組成物の総重量を基準として、50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、最も好ましくは70重量%以上である。好ましくは、フィラー系の総量は、組成物の総重量を基準として、約95重量%以下、より好ましくは約80重量%以下である。本発明の樹脂系によるかかる高フィラー負荷が、特に展性組成物を提供する際に予期されないことが、有意である。
【0166】
任意の添加剤
必要に応じて、本発明の硬化性組成物は、色素、阻害剤、促進剤、粘度調整剤、界面活性剤及び当業者に明らかである他の成分のような添加剤を含有してよい。更に、薬剤を所望により歯科用組成物に添加してよい。例としては、歯科用組成物でしばしば用いられる種類の抗炎症剤、抗菌剤、増白剤等が挙げられる。当業者は、所望の結果を達成するために、過度な実験をすることなく、かかる添加剤の任意の1種の選択及び量を選ぶことができる。
【0167】
組成物の調製及び使用
本発明の硬化性歯科用組成物は、従来の混合技術を用いて有機ゲル化剤と重合性成分とを組み合わせることにより調製することができる。得られる組成物は、所望により、結晶性物質、フィラー及び本発明で記載したような他の添加剤を含有してよい。使用中、組成物は、光開始剤を含有し、光開始により硬化することができ、又は組成物がフリーラジカル開始剤を含有するレドックス系のような化学重合により硬化することができる。かかる硬化系の組み合わせも可能である。
【0168】
本発明の硬化性組成物は、一部系及び多部系、例えば、2部である粉末/液体、ペースト/液体、及びペースト/ペースト系を含む、様々な形態で提供されることができる。それぞれ粉末、液体、ゲル又はペーストの形態である多部組み合わせ(即ち、2種以上の部の組み合わせ)を採用する他の形態も可能である。レドックス多部系において、一部は典型的には酸化剤を含有し、別の部分は典型的には還元剤を含有する。
【0169】
硬化性組成物の成分は、キットに含まれることができ、そこで、組成物の内容物は、下記のように、それらが必要とされるまで、成分を保管できるように梱包される。
【0170】
歯科組成物として使用されるとき、硬化性組成物の成分は混合され、従来の技術を使用して臨床的に適用され得る。光重合性組成物の反応を開始するためには、一般に硬化光が必要である。組成物は、例えば、象牙質及び/又はエナメル質に非常に良好に接着するコンポジット又は修復剤の形態であることができる。所望により、硬化性組成物が使用される歯組織上に、プライマー層を使用することができる。
【0171】
本発明の組成物は、充填材のように歯に隣接して配置された後重合するコンポジットを含む、広範な歯科用修復材の形態で用いるのに特に適している。それらはまた、装具並びに歯科用印象トレイ、歯列矯正器具(例えば、リテーナ、ナイトガード)、歯列矯正用接着剤等で用いることができる。それらは、歯冠、ブリッジ、ベニヤ、インレー、オンレー、インプラント、義歯、人工歯、歯の複製、スプリント、顎顔面装具及び他のカスタマイズ構造で用いることができ、典型的には、歯の上又は歯に隣接して配置される前に成形されている。こうした予備形成物品は、歯科医又は他のユーザーによって、研がれ(ground)てもよく、又は別の方法で特別に適合した形状に形成され得る。本発明の組成物は、歯科用修復材、特に歯冠(一時的、中間/暫定的又は永続的)で特に有用である。
【0172】
本発明の組成物の特定の実施形態は、三次元形状、予備形成シート、アーチ形トレイ、ロープ、ボタン、織布ウェブ又は不織布ウェブ等のような様々な形態に成形(例えば、成型)することができる。組成物を、例えば押出、射出成型、圧縮成型、熱成形、真空成形、プレス、カレンダリング及びローラーを使用するウェブ加工を含む様々な方法で(第1形状を形成するために)成形することができる。典型的には、半完成形状は、ポジティブ印象材とネガティブ印象材とを有する型を使用して形成される。
【0173】
成形物品を、個々に、又は複数の単位で販売することができ、好ましくはそれらを、組成物に含有される反応開始剤系を活性化し得る熱及び/又は光から保護する方法で梱包する。
【0174】
一般に、適切な大きさ及び形状(第1形状)の予備形成物品を選択し、約15℃〜38℃の温度(好ましくは、典型的な室温及び体温を含む約20℃〜38℃、より好ましくは室温)で(第2形状に)カスタム成形する。この成形は、指又は選択された器具(例えば、歯科用複合器具の手動操作)による圧力の適用、切り取り、切断、彫刻、研磨等を含む様々な方法により行われる。所望のカスタム(第2)形状が得られると、反応開始剤系の活性化を引き起こすためにそれを熱/放射線に曝露することによって物品は硬化(hardened)(例えば、硬化(cured))される。単一工程、又は中間で行われるカスタム成形の連続工程を含む複数の工程のいずれかで、これを実行することができる。これらの工程のうち1つ以上は、酸素を含まない不活性雰囲気又は真空において実行され得る。仕上げ成形及び硬化工程の後、必要に応じて、硬化物品は研磨、切り取り等により形状を更に修正されることができる。物品の最終的なカスタム(第2)形状が得られたら、意図された用途のために必要である場合、それにつや出し、塗装又は他の表面処理を行うことができる。好ましくは、本発明の組成物から調製される最終的なカスタム成形物品は、追加のベニヤ材料(例えば、所望の外観又は特性を提供する第2材料)を必要としない。意図された用途は、接着的に、機械的に、又は両方の組み合わせにより、第2物品へのカスタム成形硬化物品の実装、接着、又は別の方法での付着を必要とする場合がある。
【0175】
仮の歯冠の調製のために、適切な形状及び大きさの予備形成歯冠を選択し、予備形成歯冠を、必要な切り取り及び成形の程度を決定するために、所望により歯冠上に印を付けて、調製された歯の上に位置付けられる。予備形成歯冠を口部から取り出し、切断、切り取り、成形等によって必要な形状及び大きさの調整を行い、次いで歯の調製物上に再び位置付け、そこで追加の形状調整を行って、歯肉、側面及び咬合の適合を含む最適なカスタム調整を提供する。次いで、例えば、必要に応じて口腔内にある間、数秒間歯科用硬化光にそれを曝露し、次いで、それを注意深く口から取り出し、最終硬化のために硬化チャンバ内で所望により熱と組み合わせて硬化光に曝露することにより、予備形成及び再形成歯冠を硬化することができる。あるいは、歯冠はまた、歯科用硬化光で照射することにより、口腔内で完全に硬化することができる。必要に応じて、研磨、切り取り等により仕上げ調整を行い、完成歯冠を研磨及び洗浄する。次いで、口腔内に配置される前に、完成歯冠はそのままセメント結合、又は好適な樹脂材料で裏打ちされることができる。
【0176】
本発明の硬化性自立構造(例えば、歯科用製品)は、個々に、又は集合体として予め梱包され得る。かかる梱包材料は、これらの製品を、反応開始剤系を活性化し、それにより、例えば、光開始剤の場合、光への曝露から生じ得るような早期硬化を引き起こす条件から保護すべきである。更に、梱包材料は所望により製品の表面に適合され、それにより、輸送の間損傷に耐えるために、更なる機械強度を提供する。例えば、予備形成歯冠又はトレイは、全ての面でポリオレフィン層に梱包されることができる。ポリオレフィンは機械的構造を提供し、水との接触を回避するために密封することができる。ポリオレフィンが適切な染料又は色素、例えばカーボンブラックで充填される場合、それが密閉製品に達し得る前に、入射光は吸収されるであろう。かかる梱包層がいくぶん硬質であり、かつ本発明の予備形成物品と同様の梱包材料が成形される場合、梱包は出荷及び保管の間、予備形成製品の寸法安定性を強化することができる。場合によっては、梱包は製品系の必要不可欠な部分を形成し得る。
【0177】
本発明は、また、多くの予備形成歯列矯正器具において有用である。例えば、硬化性組成物は、舌側リテーナ、スペースリテーナ、フック、ボタン又はスプリントのようなカスタム器具に作製することができる。別の例として、組成物は、患者の歯の湾曲に密接に適合するように調整された歯列矯正ブラケットのためのカスタム基部、又は口腔内における隣接構造との接触を回避するために特定の角度で配向されたタイウィングを有する歯列矯正ブラケットのような器具の一部を製造するために用いることができる。治療過程中に歯の間の空間を隠すためにアーチワイヤーに接着される歯の複製を製造するために、組成物を使用することもできる。更に、組成物は、他の歯列矯正器具のための強い足場を設置するために、隣接する歯の群を一緒に結合するのに用いることができる。更に、組成物から、アーチワイヤーの滑り運動を防ぐために、又は他の器具の移動を防ぐために、ある位置でアーチワイヤーに接着される材料の液滴を形成することができる。歯列矯正の用途で使用される場合、本発明の組成物はインビボで所望の形状に成形し、次いで口腔内の所定の位置で硬化することができる。あるいは、必要に応じて、患者の歯の構造の模型を使用して、口腔の外側で所望の形状に組成物を成形することができる。組成物が口腔の外側で成形されるとき、組成物は好ましくは口腔に配置する前に硬化される。
【0178】
本発明はまた、器具を歯に接着するために、歯列矯正器具(歯列矯正用ブラケット、バッカルチューブ、舌側チューブ及びクリートが挙げられるが、これらに限定されない)に塗布することができる歯列矯正用接着剤としても有用である。歯列矯正用接着剤は、歯列矯正医又はブラケットの製造者により歯列矯正用ブラケットに塗布することができる。本発明のある実施形態は、米国特許第4,978,007号、同第5,015,180号及び同第5,328,363号に記載されているもののような、接着剤で予めコーティングされている歯列矯正用ブラケット上に供給される歯列矯正用接着剤として特に有用であり得る。接着剤で予めコーティングされたブラケットとしては、製造者が正確な量の光硬化性接着剤のような接着剤を塗布しているブラケットが挙げられる。接着剤は、使用まで、剥離ライナ又は外包装により、光、蒸発、酸化、汚染、湿度及び昇華から保護することができる。歯上にブラケットを実装することが望ましいとき、ブラケットは剥離ライナ(提供されている場合)から取り外され、次いで接着剤で、簡単に歯上に直接置かれる。接着剤は、次いで硬化、例えば光硬化されることができる。予めコーティングされたブラケットの利点は、製造者が各ブラケット上に置かれる接着剤の量を制御できることである。結果として、ブラケットの基部と歯との間の空隙部を実質的に充填するのに十分な接着剤が存在し、更に、ブラケットの基部の周辺を過度に清掃することが必要であるような、過剰な接着剤が存在しない。
【0179】
多くの歯列矯正医は、他の接着剤より粘度の低い(即ち、より流体である)特定の接着剤の使用を好む。しかしながら、比較的低粘度である幾つかの接着剤は、ブラケットをライナから取り外すとき、時折変形する又は剥離ライナ上に残ることがわかっており、その結果、歯列矯正医は接着剤を再形成する又はブラケットの基部に更なる接着剤を塗布するために休止する必要がある場合がある。比較的高粘度である特定の歯列矯正用接着剤は、新たに混合した又は新たにブラケットに塗布したとき、剥離コーティングから満足のいくように取り外すことができる。しかしながら、接着剤で予めコーティングされたブラケットは、しばらく患者の歯に接着しない場合がある。多くの従来の接着剤は、一般に、予めコーティングされたブラケットを満足に使用するために、接着剤が硬くなり過ぎない程度に長期間にわたって揮発する傾向がある比較的低分子量の成分を有する。一方、比較的高分子量の成分で作製された接着剤は、低揮発性を有し得るが、硬化後十分な接着強度を提供するには硬過ぎる場合がある。一般に、本発明の歯列矯正用接着剤は、歯列矯正器具に容易に塗布でき、使用に好適な範囲にレオロジー特性を維持することができるような、レオロジー特性(例えば、粘度)を有する。それらはまた、塗布中重力のために落ちることなくブラケット上に残るようにブラケットに塗布することができる。
【0180】
本発明は、本発明の硬化性歯科用組成物から歯科用製品を調製するための方法を提供する。例えば、ある実施形態では、硬化性歯科用組成物は、硬化性歯科用製品に形成され、ここで硬化性歯科用製品の硬化性歯科用組成物は、第1形状及び15℃〜38℃の温度で第2形状に形成されるのに十分な展性を有する自立構造である。
【0181】
ある実施形態では、本発明はまた、本発明の硬化性歯科用組成物が歯科用製品に塗布されている、歯科用製品を調製する方法を提供する。ある実施形態では、硬化性歯科用組成物は流動性である。ある実施形態では、硬化性歯科用組成物は、歯列矯正用接着剤である。ある実施形態では、歯科用製品は、歯列矯正器具である。
【0182】
本発明はまた、本発明の硬化性歯科用組成物を含む歯科用製品の使用方法を提供する。一実施形態では、方法は、第1形状及び15℃〜38℃の温度で第2形状に形成されるのに十分な展性を有する自立構造を有する本発明の硬化性歯科用組成物を含む、歯科用製品を提供する工程と;被験体の口腔内の歯表面上又は歯表面のモデル上に歯科用製品を設ける工程と;被験体の口腔内又は歯表面のモデル上で歯科用製品の形状をカスタマイズする工程と;歯科用製品の硬化性歯科用組成物を硬化する工程と、を含む。
【0183】
一実施形態では、硬化性歯科用組成物の使用方法は、
流動性又は充填性である本発明の硬化性歯科用組成物を提供する工程と;被験体の口腔内の歯表面上に歯科用製品を設け、該歯表面が所望により歯科用接着剤でコーティングされる工程と;硬化性歯科用組成物を硬化する工程と、を含む。
【0184】
一実施形態では、硬化性歯科用組成物の使用方法は、硬化性歯列矯正用接着剤である本発明の硬化性歯科用組成物を提供する工程と;所望により歯科用接着剤でコーティングされる歯表面にブラケットが接触する前に、歯列矯正用ブラケット上に硬化性歯列矯正用接着剤を設ける工程と;硬化性歯科用組成物を硬化する工程と、を含む。
【0185】
一実施形態では、硬化性歯科用組成物の使用方法は、硬化性歯列矯正用接着剤である本発明の硬化性歯科用組成物でコーティングされた歯列矯正用ブラケットを含む歯科用製品を提供する工程と;ブラケットを歯表面上に設け、該歯表面が所望により歯科用接着剤でコーティングされる工程と;硬化性歯科用組成物を硬化する工程と、を含む。
【0186】
代表的な実施形態
実施形態1.有機重合性成分と、有機ゲル化剤と、結晶性物質とを含む硬化性歯科用組成物。
【0187】
実施形態2.有機重合性成分と、有機ゲル化剤と、60%以上のフィラー材料とを含む硬化性歯科用組成物。
【0188】
実施形態3.有機重合性成分と、有機ゲル化剤と、ナノスケール粒子を含むフィラー材料とを含む硬化性歯科用組成物。
【0189】
実施形態4.有機重合性成分と、重合性有機ゲル化剤とを含む硬化性歯科用組成物。
【0190】
実施形態5.結晶性物質が反応性基を含む、実施形態1に記載の硬化性歯科用組成物。
【0191】
実施形態6.結晶性物質が、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリチオエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリシラン、ポリアミド、ポリウレタン又はこれらの組み合わせを含む、実施形態1に記載の組成物。
【0192】
実施形態7.結晶性物質が、一級ヒドロキシル末端基を含有する飽和、直鎖、脂肪族ポリエステルポリオールを含む、実施形態6に記載の組成物。
【0193】
実施形態8.フィラー材料を更に含む、実施形態1又は5〜7のいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物。
【0194】
実施形態9.フィラー材料が60%以上の量で存在する、実施形態3又は8に記載の硬化性歯科用組成物。
【0195】
実施形態10.フィラー材料がナノスケール粒子を含む、実施形態8に記載の硬化性歯科用組成物。
【0196】
実施形態11.ナノスケール粒子が凝集網状構造を形成する、実施形態3又は10に記載の硬化性歯科用組成物。
【0197】
実施形態12.ナノスケール粒子がヒュームドシリカを含む、実施形態11に記載の硬化性歯科用組成物。
【0198】
実施形態13.有機ゲル化剤が重合性である、実施形態1〜3又は実施形態5〜12のいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物。
【0199】
実施形態14.組成物が光重合性である、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物。
【0200】
実施形態15.重合性成分が、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、エチレン性不飽和化合物及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態14に記載の硬化性歯科用組成物。
【0201】
実施形態16.組成物が化学重合性である、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物。
【0202】
実施形態17.化学重合性成分がエチレン性不飽和化合物を含む、実施形態16に記載の硬化性歯科用組成物。
【0203】
実施形態18.有機ゲル化剤が尿素系有機ゲル化剤である、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物。
【0204】
実施形態19.有機ゲル化剤が、一般式:
【化37】

(式中、各Mは、独立に、水素又は重合性基であり、各Xは、独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アレニレン基又はこれらの組み合わせであり、nは1〜3である)で表されるものである、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物。
【0205】
実施形態20.有機ゲル化剤が、下記式:
【化38】

で表される化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態19に記載の硬化性歯科用組成物。
【0206】
実施形態21.有機ゲル化剤がアミノ糖有機ゲル化剤である、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物。
【0207】
実施形態22.有機ゲル化剤が、一般式LXXV:
【化39】

(式中、R1及びR2は、独立に、水素原子、アルキル基、C(O)R3、及びSO24からなる群から選択され;R3及びR4は、独立に、アルキル基、アリール基、アラルキル基からなる群から選択され;nは約2〜約5の整数である)で表されるアミノ糖有機ゲル化剤又はその薬剤として許容される塩である、実施形態21に記載の硬化性歯科用組成物。
【0208】
実施形態23.有機ゲル化剤が、下記式:
【化40】

で表される化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態22に記載の硬化性歯科用組成物。
【0209】
実施形態24.有機ゲル化剤が、一般式LXXXIII:
【化41】

(式中、R1、R2及びR3は、独立に、OH及びNR56からなる群から選択され;R4は、OH、OP(O)(OH)2、OSO3H及びNR56からなる群から選択され;R5及びR6は、独立に、水素原子、アルキル基、C(O)R7及びSO28からなる群から選択され;R7及びR8は、独立に、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基からなる群から選択され;ただし、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つがNR56である)で表されるアミノ糖有機ゲル化剤、又はその薬剤として許容される塩である、実施形態21に記載の硬化性歯科用組成物。
【0210】
実施形態25.有機ゲル化剤が、下記式:
【化42】

で表される化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態24に記載の硬化性歯科用組成物。
【0211】
実施形態26.歯科用修復材の形成に好適な、実施形態1〜25のいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物。
【0212】
実施形態27.第1形状及び15℃〜38℃の温度で第2形状に形成されるのに十分な展性を有する硬化性自立構造の形態である、実施形態1〜25のいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物。
【0213】
実施形態28.第2形状の構造の硬化時、硬化した構造が少なくとも25MPaの曲げ強度を有する、実施形態27に記載の硬化性歯科用組成物。
【0214】
実施形態29.流動性である、実施形態1〜24のいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物。
【0215】
実施形態30.歯列矯正用接着剤である、実施形態1〜24のいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物。
【0216】
実施形態31.充填性である、実施形態1〜24のいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物。
【0217】
実施形態32.一般式:
【化43】

(式中、各Mは、独立に、水素又は重合性基であり、各Xは、独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アレニレン基又はこれらの組み合わせであり、nは1〜3である)で表される有機ゲル化剤。
【0218】
実施形態33.下記式:
【化44】

で表される化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態32に記載の有機ゲル化剤。
【0219】
実施形態34.実施形態1〜31のいずれか1つに記載の組成物を含む歯科用製品。
【0220】
実施形態35.予備形成された歯冠である、実施形態34に記載の歯科用製品。
【0221】
実施形態36.歯列矯正器具であって、組成物がその上にコーティングされた歯列矯正用接着剤である、実施形態34に記載の歯科用製品。
【0222】
実施形態37.有機重合性成分、有機ゲル化剤、及び結晶性物質を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程を含む、硬化性歯科用組成物の調製方法。
【0223】
実施形態38.有機重合性成分、有機ゲル化剤、及び60%以上のフィラー材料を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程を含む、硬化性歯科用組成物の調製方法。
【0224】
実施形態39.有機重合性成分、有機ゲル化剤、及びナノスケール粒子を含むフィラー材料を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程を含む、硬化性歯科用組成物の調製方法。
【0225】
実施形態40.有機重合性成分及び重合性有機ゲル化剤を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程を含む、硬化性歯科用組成物の調製方法。
【0226】
実施形態41.硬化性歯科用組成物が、第1形状及び15℃〜38℃の温度で第2形状に形成されるのに十分な展性を有する自立構造である、実施形態37〜40のいずれか1つに記載の方法。
【0227】
実施形態42.硬化性歯科用組成物が流動性である、実施形態37〜40のいずれか1つに記載の方法。
【0228】
実施形態43.硬化性歯科用組成物が歯列矯正用接着剤である、実施形態37〜40のいずれか1つに記載の方法。
【0229】
実施形態44.硬化性歯科用組成物が充填性である、実施形態37〜40のいずれか1つに記載の方法。
【0230】
実施形態45.有機重合性成分、有機ゲル化剤、及び結晶性物質を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;硬化性歯科用組成物を歯科用製品に形成する工程とを含む、歯科用製品の調製方法。
【0231】
実施形態46.有機重合性成分、有機ゲル化剤、及び60%以上のフィラー材料を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;硬化性歯科用組成物を歯科用製品に形成する工程とを含む、歯科用製品の調製方法。
【0232】
実施形態47.有機重合性成分、有機ゲル化剤、及びナノスケール粒子を含むフィラー材料を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;硬化性歯科用組成物を歯科用製品に形成する工程とを含む、歯科用製品の調製方法。
【0233】
実施形態48.有機重合性成分及び重合性有機ゲル化剤を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;硬化性歯科用組成物を歯科用製品に形成する工程とを含む、歯科用製品の調製方法。
【0234】
実施形態49.歯科用製品が硬化性であり、硬化性歯科用製品の硬化性歯科用組成物が、第1形状及び15℃〜38℃の温度で第2形状に形成されるのに十分な展性を有する自立構造である、実施形態45〜48のいずれか1つに記載の方法。
【0235】
実施形態50.有機重合性成分、有機ゲル化剤、及び結晶性物質を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;硬化性歯科用組成物を歯科用製品に塗布する工程とを含む、歯科用製品の調製方法。
【0236】
実施形態51.有機重合性成分、有機ゲル化剤、及び60%以上のフィラー材料を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;硬化性歯科用組成物を歯科用製品に塗布する工程とを含む、歯科用製品の調製方法。
【0237】
実施形態52.有機重合性成分、有機ゲル化剤、及びナノスケール粒子を含むフィラー材料を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;
硬化性歯科用組成物を歯科用製品に塗布する工程とを含む、歯科用製品の調製方法。

【0238】
実施形態53.有機重合性成分及び重合性有機ゲル化剤を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;硬化性歯科用組成物を歯科用製品に塗布する工程とを含む、歯科用製品の調製方法。
【0239】
実施形態54.硬化性歯科用組成物が流動性である、実施形態50〜53のいずれか1つに記載の方法。
【0240】
実施形態55.硬化性歯科用組成物が歯列矯正用接着剤である、実施形態50〜53のいずれか1つに記載の方法。
【0241】
実施形態56.歯科用製品が歯列矯正器具である、実施形態50〜53のいずれか1つに記載の方法。
【0242】
実施形態57.第1形状及び15℃〜38℃の温度で第2形状に形成されるのに十分な展性を有する自立構造を有する実施形態26に記載の硬化性歯科用組成物を含む、歯科用製品を提供する工程と;被験体の口腔内の歯表面上又は歯表面のモデル上に歯科用製品を設ける工程と;被験体の口腔内又は歯表面のモデル上で歯科用製品の形状をカスタマイズする工程と;歯科用製品の硬化性歯科用組成物を硬化する工程と、を含む歯科用製品の使用方法。
【0243】
実施形態58.流動性又は充填性である実施形態29又は31の硬化性歯科用組成物を提供する工程と;被験体の口腔内の歯表面上に歯科用製品を設け、該歯表面が所望により歯科用接着剤でコーティングされる工程と;硬化性歯科用組成物を硬化する工程と、を含む硬化性歯科用組成物の使用方法。
【0244】
実施形態59.硬化性歯列矯正用接着剤である実施形態30の硬化性歯科用組成物を提供する工程と;所望により歯科用接着剤でコーティングされる歯表面にブラケットが接触する前に、歯列矯正用ブラケット上に硬化性歯列矯正用接着剤を設ける工程と;硬化性歯科用組成物を硬化する工程と、を含む歯科用製品の使用方法。
【0245】
実施形態60.硬化性歯列矯正用接着剤である実施形態30の硬化性歯科用組成物でコーティングされた歯列矯正用ブラケットを含む歯科用製品を提供する工程と;ブラケットを歯表面上に設け、該歯表面が所望により歯科用接着剤でコーティングされる工程と;硬化性歯列矯正用接着剤を硬化する工程と、を含む歯科用製品の使用方法。
【実施例】
【0246】
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。特に指示がない限り、全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。
【0247】
特に指定しない限り、全ての溶媒及び試薬は、ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のシグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich, Inc.)から入手した、又は入手可能なものである。
【0248】
本明細書で使用するとき、
「IEM」は、2−イソシアナトエチルメタクリレートを指し、
「BHT」は、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを指し、
「ビスGMA」は、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]プロパンを指し、
「SR541」は、サートマー社(Sartomer Co.)(ペンシルバニア州エクストン(Exton))から商品名SR541として入手可能なエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートを指し、
「UDMA」は、ローム・アメリカ社(Rohm America LLC)(ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway))から商品名「ローアミア(ROHAMERE)6661−0」として入手可能な、ジウレタンジメタクリレートを指し、
「CPQ」は、カンファーキノンを指し、
「EDMAB」は、エチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートを指し、
「DPIHFP」は、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを指し、
「TEGDMA」は、トリエチレングリコールジメタクリレートを指し、
「ミリシックス(MILLITHIX)」は、ミリケン・ケミカル社(Milliken Chemical)(サウスカロライナ州スパータンバーグ(Spartanburg))から商品名「ミリシックス925S」として入手可能な有機ゲル化剤を指し、
「M5」は、カボット社(Cabot Corp.)(マサチューセッツ州ボストン(Boston))から商品名「CAB−O−SIL M−5」として入手可能なヒュームドシリカを指し、
「トーン(TONE)−IEM」は、トーン0230(ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)(ミシガン州ミッドランド(Midland))から入手可能なポリカプロラクトンポリオール)と、本質的に米国特許第6,506,816号に記載されているように調製した2当量の2−イソシアナトエチルメタクリレートとの反応生成物を指し、
「キャパ(CAPA)2200A−IEM」は、キャパ2200A(ソルベイ・ケミカル社(Solvay Chemical Company)(英国、ウォリントン(Warrington)から入手可能なポリカプロラクトンポリオール)と、本質的に米国特許第6,506,816号に記載されているように調製した2当量の2−イソシアナトエチルメタクリレートとの反応生成物を指し、
「プロクリレート(PROCRYLATE)」は、2,2−ビス−4−(3−ヒドロキシ−プロポキシ−フェニル)プロパンジメタクリレート(CAS番号27689−12−9、プロクリラット(PROCRYLAT)としても知られ、国際特許公開第2006/020760号に記載されているように調製した)を指し、
「チヌビン(TINUVIN)」は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown))から商品名チヌビンR796として入手可能な重合性紫外線安定剤を指し、
「フィラーA」は、本質的に米国特許出願公開第2005/0252413号でフィラーFに関して記載されているように調製した、約20nmの公称粒径を有するシラン処理ナノサイズシリカを指し、
「フィラーB」は、本質的に米国特許第6,030,606号に記載されているように調製した、シラン処理ジルコニア/シリカフィラーを指し、
「フィラーC」は、本質的に米国特許第6,730,156号に記載されているように調製した、シラン処理ジルコニア/シリカナノクラスタフィラーを指し、
グルコサミン−6−リン酸は、シグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Corp.)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))から入手し、
D−グルカミンは、TCアメリカ(オレゴン州ポートランド(Portland))から入手し、
N−メチル−D−グルカミンは、MPバイオメディカルズ(MP Biomedicals)(オハイオ州ソロン(Solon))から入手し、
N−メチル−N−デカノイル−D−グルカミドは、EMDケミカルズ社(EMD Chemicals, Inc.)(カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego))から入手した。
【0249】
ゲル化試験
有機ゲル化剤の試料及び樹脂混合物を、スクリューキャップバイアル瓶に入れて、約3重量%有機ゲル化剤の混合物を準備した。特に指定しない限り、30ミリグラム(mg)の有機ゲル化剤と、1.0グラム(g)の、70重量%のビスGMA及び30重量%のTEGDMAの混合物を使用した。有機ゲル化剤が溶解するまで混合物を加熱し、次いで室温に冷却した。4時間後、バイアル瓶を逆さにした。目に見える液体の流動が見られなかった場合、約3重量%の有機ゲル化剤を用いてゲルが形成されたと判断された。流動が観察されなかった場合、30mgの代わりに10mgの有機ゲル化剤を用いて同様の試験を実施して、約1重量%有機ゲル化剤の混合物を得た。この場合、目に見える液体の流動が見られなかった場合、約1重量%の有機ゲル化剤を用いてゲルが形成されたと判断された。
【0250】
硬化前硬度試験
歯科用組成物の試料(それぞれ約3g)を、約60℃にて水圧機(カーバー社(Carver Inc.)(インディアナ州ウォバシュ(Wabash))から入手可能)を用いて厚さ約2mmに加圧した。各加圧した試料を、次いで、室温で7日間保管し、その後、TA.Xt2i型テキスチャー・アナライザー(テクスチャ・テクノロジーズ社(Texture Technologies Corp.)(ニューヨーク州スカーズデール(Scarsdale)により製造)を用いて、25℃及び37℃にて硬化前硬度を測定した。テキスチャー・アナライザーに、直径2mmの円筒形プローブを取り付けた。各分析を実施する前に、各試料を少なくとも20分間25℃にて熱平衡化した。プローブの平坦な末端を、1mm/秒の速度で、深さ1mmまで、各歯科用組成物に押し込んだ。
【0251】
硬化後ダイヤメトラル引っ張り強度試験
ダイヤメトラル引っ張り強度を、ANSI/ADA規格番号27(1993年)に従って測定した。組成物試料を85℃に加熱し、内径4mmのガラス管に充填し、次いで充填した管にシリコーンゴムプラグで蓋をした。次いで、組成物を約0.28MPa(約40.62ポンド/平方インチ)で5分間軸方向に圧縮した。次いで、2つの向かい合って配置されたビジラックス(VISILUX)2500型青色ライトガン(3M ESPEデンタル・プロダクツ(3M ESPE Dental Products)(ミネソタ州セントポール(St.Paul)により製造)に曝露することにより、試料を90秒間光硬化し、次いでデンタカラー(DENTACOLOR)XSライトボックス(ヘレウスクルツァー(Heraeus Kulzer)(独国、ハーナウ(Hanau)により製造)内で180秒間照射した。硬化した試料を、次いで、ダイヤモンドソーを用いて横方向に切断し、それぞれ2.2mmの長さのディスクを得た。プラグを、試験前に、蒸留水中で、37℃にて24時間保管した。測定は、10−キロニュートン(kN)のロードセル及び1m/分のクロスヘッド速度で、4505型インストロン試験機(Instron tester)(インストロン社(Instron Corp.)(マサチューセッツ州ノーウッド(Norwood)により製造)で実施した。それぞれ硬化したコンポジットの5個のディスクを調製し、試験した。実施例で報告するデータのために、5つの測定値を平均した。
【0252】
調製例1:重合性組成物の調製
100重量部のビスGMA、0.18重量部のCPQ、0.52重量部のDPIHFP、1.03重量部のEDMAB、0.16重量部のBHT及び1.55重量部のチヌビン(TINUVIN)を合わせ、混合物を約60℃に加熱し、約4時間機械的攪拌機で温混合物を攪拌することにより、ビスGMA混合物を調製した。
【0253】
調製例2:重合性組成物の調製
13.33重量部のビスGMA、13.33重量部のTEGDMA、33.6重量部のUDMA、33.6重量部のSR541、0.2重量部のCPQ、0.5重量部のDPIHFP、1.0重量部のEDMAB、0.1重量部のBHT及び1.5重量部のチヌビン(TINUVIN)を合わせ、混合物を約60℃に加熱し、約4時間機械的攪拌機で温混合物を攪拌することにより、ビスGMA混合物を調製した。
【0254】
調製例3:重合性組成物の調製
トーン−IEM(TONE-IEM)(200.0g)、CPQ(0.351g)、DPIHFP(1.035g)、EDMAB(2.068g)、BHT(0.311g)及びチヌビン(TINUVIN)(3.10g)を合わせ、混合物を約60℃に加熱し、約4時間機械的攪拌機で温混合物を攪拌することにより、トーン−IEM混合物を調製した。
【0255】
調製例4:有機ゲル化剤前駆体の調製
ジエチルオキサレート(128.72g)、エタノール(180mL)及び1,3−ジアミノペンタン(20.00g)の混合物を、60℃で1時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去して、油を得た。過剰なジエチルオキサレートを、真空蒸留(60〜70℃、約27Pa(0.2mmHg))により除去して、油として50.52gの生成物を得た。
【0256】
調製例5:有機ゲル化剤前駆体の調製
ジエチルオキサレート(29.10g)、エタノール(40mL)及び2,2’−(エチレンジオキシ)ジエチルアミン(7.26g)の混合物を、60℃で1時間加熱した。溶媒を減圧下で除去して、油を得た。過剰なジエチルオキサレートを、真空蒸留(60〜70℃、約27Pa(0.2mmHg))により除去して、油として14.79gの生成物を得た。
【0257】
調製例6:有機ゲル化剤前駆体の調製
ジエチルオキサレート(29.10g)、エタノール(40mL)及び1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(5.00g)の混合物を、70℃で2時間加熱した。溶媒を減圧下で除去して、油を得た。過剰なジエチルオキサレートを、真空蒸留(60〜70℃、約27Pa(0.2mmHg))により除去して、黄色の油として11.75gの生成物を得た。
【0258】
調製例7:重合性組成物の調製
2当量の2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1当量のペンタエリスリトールトリメタクリレート及び1当量のヘキサメチレンジイソシアネート(本質的に米国特許第4,648,843号に記載されているように調製)(45重量部)の反応生成物を、ビスGMA(25重量部)、TEGDMA(30重量部)、CPQ(0.18重量部)、DPIHFP(0.52重量部)、EDMAB(1.03重量部)、BHT(0.16重量部)及びチヌビン(TIVUVIN)(1.55重量部)と合わせ、この混合物を約50℃に加熱し、約2時間攪拌した。
【0259】
調製例8:有機ゲル化剤前駆体の調製
エタノールアミン(6.67g)を、エタノール(100mL)中の調製例4の生成物(15.20g)の攪拌溶液に滴下した。溶液を攪拌し、2時間50℃に加熱した。混合物を室温に冷却させた後、沈殿した固体を濾過し、20mLのエタノールで3回洗浄した。次いで、白色固体を真空下で乾燥させて、13.53gの生成物を得た。
【0260】
実施例1:式XLVIIIの有機ゲル化剤の調製
【化45】

1,9−ジアミノノナン(2.53g)及びエチルアセテート(50g)の攪拌混合物を70℃に加熱した。2−イソシアナトエチルメタクリレート(IEM、5.00g、32)を攪拌混合物に滴下し、混合物を70℃で1時間攪拌した。次いで、混合物を室温に冷却させ、次いで濾過した。濾過した固体を真空下で乾燥させて、白色固体として7.24gの生成物を得た。この化合物は、約1重量%の有機ゲル化剤でゲル化試験によってゲルを形成した。
【0261】
実施例2:式XLIXの有機ゲル化剤の調製
【化46】

1,8−ジアミノオクタン(2.31g)及びエチルアセテート(50g)の攪拌混合物を70℃に加熱した。2−イソシアナトエチルメタクリレート(IEM、5.00g)を攪拌混合物に滴下し、混合物を70℃で1時間攪拌した。次いで、混合物を室温に冷却させ、次いで濾過した。濾過した固体を真空下で乾燥させて、白色固体として6.69gの生成物を得た。この化合物は、約1重量%の有機ゲル化剤でゲル化試験によってゲルを形成した。
【0262】
実施例3:有機ゲル化剤の混合物の調製
メタクリレート基、ブチル基又はその両方を含む有機ゲル化剤の混合物を以下のように調製した。70℃で、1,12−ジアミノドデカン(10.00g)及びトルエン(100g)の攪拌混合物に、まず2−イソシアナトエチルメタクリレート(9.29g)、次いでブチルイソシアネート(3.95g)を滴下した。次いで、混合物を室温に冷却させた。沈殿した固体を濾過により収集し、真空下で乾燥して、白色固体として21.88gの生成物を得た。この化合物は、約1重量%の有機ゲル化剤でゲル化試験によってゲルを形成した。
【0263】
実施例4:式LXの有機ゲル化剤の調製
【化47】

n−ブチルアミン(6.05g)を、エタノール(60mL)中の調製例4(10.00g)の生成物の攪拌溶液に滴下した。約5分後、混合物はゲルに増粘した。ゲルを熱イソプロパノール(350mL)に溶解させ、次いで水(350mL)をゆっくりと混合物に添加し、固体の沈殿物を得た。固体を濾過により分離し、次いで真空下で乾燥させて、9.29gの生成物を得た。この化合物は、約3重量%の有機ゲル化剤でゲル化試験によってゲルを形成した。
【0264】
実施例5:式LXIIの有機ゲル化剤の調製
【化48】

アリルアミン(6.60g)を、エタノール(90mL)中の調製例4(13.10g)の生成物の攪拌溶液に滴下した。約5分後、混合物を攪拌し、約50℃に1時間加熱した。水(300mL)を混合物に添加し、これを攪拌し、約80℃に1時間加熱した。沈殿した固体を濾過により分離し、次いで真空下で乾燥させて、12.21gの生成物を得た。この化合物は、約1重量%の有機ゲル化剤でゲル化試験によってゲルを形成した。
【0265】
実施例6:式LIXの有機ゲル化剤の調製
【化49】

調製例8の生成物(7.00g)、メタクリル酸無水物(7.14g)、4−ジメチルアミノピリジン(2.58g)及びテトラヒドロフラン(100mL)の攪拌混合物を65℃に2時間加熱した。次いで、混合物を減圧下で約50mLの容量に濃縮した。混合物を室温に冷却させた後、それはゲルに増粘した。ゲルを熱エタノール(100mL)に溶解させ、次いで水(400mL)を添加した。混合物から固体が沈殿した。固体を濾過により分離し、真空下で乾燥させて、6.25gの生成物を得た。この化合物は、約3重量%の有機ゲル化剤でゲル化試験によってゲルを形成した。
【0266】
実施例7:式LVIIIの有機ゲル化剤の調製
【化50】

ジエチルオキサレート(1.00g)及びエタノール(5g)の攪拌混合物に、n−ヘプチルアミン(1.56g)を添加した。混合物を攪拌し、50℃で1時間加熱し、その後沈殿した固体を濾過により分離した。次いで固体を真空下で乾燥させて、生成物を得た。この化合物は、約3重量%の有機ゲル化剤でゲル化試験によってゲルを形成した。
【0267】
実施例8:式LXIの有機ゲル化剤の調製
【化51】

ブチルアミン(0.53g)を、エタノール(5g)中の調製例5の生成物(1.00g)の攪拌溶液に添加した。この混合物を攪拌し、60℃に約1時間加熱した。沈殿した固体を濾過により分離し、次いでエタノールで洗浄した。固体を真空下で乾燥させて、1.04gの生成物を得た。この化合物は、約1重量%の有機ゲル化剤でゲル化試験によってゲルを形成した。
【0268】
実施例9:式LXIIIの有機ゲル化剤の調製
【化52】

ブチルアミン(0.49g、6.6ミリモル)を、エタノール(5mL)中の調製例6の生成物(1.00g)の攪拌溶液に添加した。この混合物を攪拌し、60℃に約1時間加熱した。沈殿した固体を濾過により分離し、次いでエタノールで洗浄した。固体を真空下で乾燥させて、1.03gの生成物を得た。この化合物は、約3重量%の有機ゲル化剤でゲル化試験によってゲルを形成した。
【0269】
実施例10:式LXIVの有機ゲル化剤の調製
【化53】

4−ビニルベンジルアミン(4.41g、V.ベルティーニ(Bertini)ら、テトラヘドロン60巻11407頁(2004年)に記載されている方法に従って調製)を、エタノール(40mL)中の調製例6の生成物(5.00g)の攪拌溶液に滴下した。混合物を室温で5分間攪拌した後、それを攪拌し、50℃に1時間加熱し、それはゲルに増粘した。ゲルを熱イソプロパノール(250mL)と混合し、濾過し、真空下で乾燥させて、4.40gの生成物を得た。この化合物は、約1重量%の有機ゲル化剤でゲル化試験によってゲルを形成した。
【0270】
実施例11:有機ゲル化剤を含む硬化性歯科用組成物の調製
表1に示した量の、調製例1の重合性組成物を、ミリシックス(MILLITHIX)(表1に示した量)と合わせ、この混合物を約85℃に約60分間加熱し、次いで、3000rpmでDAC 150 FVZ型スピードミキサー(SpeedMixer)(フラックテック社(FlackTek, Inc.)(サウスカロライナ州ランドラム(Landrum)により製造)を用いて、それぞれ1分間2回混合した。次いでこの混合物に、表1に示した量のM5及びフィラーBを添加した。得られた混合物を、次いで、約85℃で約15分間加熱し、次いで、3000rpmでスピードミキサーを用いてそれぞれ1分間2回混合して、硬化性歯科用組成物を得た。組成物を室温に冷却させ、次いで、組成物の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃で、硬度は3060gと測定された。
【0271】
比較例1〜2及び実施例12:歯科用組成物の調製
比較例1〜2及び実施例12の組成物を、表1に示した成分量を用いて、本質的に実施例1に記載した方法を用いて調製した。比較例1は、フィラーB及び調製例1の重合性組成物を用いて調製した。比較例2は、フィラーB、M5及び調製例1の重合性組成物を用いて調製した。実施例12は、ミリシックス、フィラーB及び調製例1の重合性組成物を用いて調製した。各組成物を室温に冷却させ、次いで、各組成物の試料の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃にて、硬度は244g(比較例1)、949g(比較例2)及び334g(実施例12)と測定された。実施例12の硬度は、歯冠のような特定の用途に好適ではないが、歯冠ほど硬い必要のない充填性物質のような他の用途には好適である。
【表1】

【0272】
実施例13:有機ゲル化剤を含む硬化性歯科用組成物の調製
表2に示した量の調製例2の重合性組成物を、表2に示した量のミリシックス(MILLITHIX)と合わせ、この混合物を約85℃に約60分間加熱し、次いで、3000rpmでDAC 150 FVZ型スピードミキサー(SpeedMixer)(フラックテック社(FlackTek, Inc.)(サウスカロライナ州ランドラム(Landrum)により製造)を用いて、それぞれ1分間2回混合した。次いでこの混合物に、表2に示した量のM5及びフィラーBを添加した。得られた混合物を、次いで、約85℃で約15分間加熱し、次いで、3000rpmでスピードミキサーを用いてそれぞれ1分間2回混合して、硬化性歯科用組成物を得た。組成物を室温に冷却させ、次いで、組成物の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃で、硬度は3058gと測定された。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、92.5MPa(13,416ポンド/平方インチ)と測定された。
【0273】
比較例4〜5及び実施例14:歯科用組成物の調製
比較例4〜5及び実施例14の組成物を、表2に示した成分量を用いて、本質的に実施例13に記載した方法を用いて調製した。比較例4は、フィラーB及び調製例2の重合性組成物を用いて調製した。実施例14は、フィラーB、ミリシックス及び調製例2の重合性組成物を用いて調製した。比較例5は、M5、フィラーB及び調製例2の重合性組成物を用いて調製した。各組成物を室温に冷却させ、次いで各組成物の試料の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃にて、硬度は200g(比較例4)、900g(実施例14)及び1053g(比較例5)と測定された。各組成物の硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、比較例4は96.7MPa(14,025ポンド/平方インチ)、実施例14は95.7MPa(13,880ポンド/平方インチ)、比較例5は88.7MPa(12,865ポンド/平方インチ)と測定された。実施例14の硬度は、歯冠のような特定の用途に好適ではないが、歯冠ほど硬い必要のない充填性物質のような他の用途には好適である。
【表2】

【0274】
実施例15:トーン(TONE)−IEM及び有機ゲル化剤を含む硬化性歯科用組成物の調製
調製例2の重合性組成物を、表3に示した量の、調製例3の重合性組成物及びミリシックス(MILLITHIX)と合わせ、この混合物を約85℃に約60分間加熱し、次いで、3000rpmでDAC 150 FVZ型スピードミキサー(SpeedMixer)(フラックテック社(FlackTek, Inc.)(サウスカロライナ州ランドラム(Landrum)により製造)を用いて、それぞれ1分間2回混合した。次いでこの混合物に、表3に示した量のM5及びフィラーBを添加した。得られた混合物を、次いで、約85℃で約15分間加熱し、次いで、3000rpmでスピードミキサーを用いてそれぞれ1分間2回混合して、硬化性歯科用組成物を得た。組成物を室温に冷却させ、次いで、組成物の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃で、硬度は1554gと測定された。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、86.5MPa(12,546ポンド/平方インチ)と測定された。
【0275】
実施例16:トーン(TONE)−IEM及び有機ゲル化剤を含む硬化性歯科用組成物の調製
調製例2の重合性組成物を、表3に示した量の、調製例3の重合性組成物及びミリシックス(MILLITHIX)と合わせ、この混合物を約85℃に約60分間加熱し、次いで、3000rpmでDAC 150 FVZ型スピードミキサー(SpeedMixer)(フラックテック社(FlackTek, Inc.)(サウスカロライナ州ランドラム(Landrum)により製造)を用いて、それぞれ1分間2回混合した。次いでこの混合物に、表3に示した量のフィラーBを添加した。得られた混合物を、次いで、約85℃で約15分間加熱し、3000rpmでスピードミキサーを用いてそれぞれ1分間2回混合して、硬化性歯科用組成物を得た。組成物を室温に冷却させ、次いで、組成物の試料の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃で、硬度は3804gと測定された。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、83.5MPa(12,111ポンド/平方インチ)と測定された。
【0276】
比較例6:歯科用組成物の調製
比較例6の組成物は、本質的に実施例16に記載した方法を用いて調製した。この組成物は、表3に示した量の、調製例2の重合性組成物、調製例3の重合性組成物及びフィラーBを用いて調製した。組成物を室温に冷却させ、次いで、組成物の試料の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃で、硬度は2525gと測定された。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、73.9MPa(10,718ポンド/平方インチ)と測定された。
【表3】

【0277】
実施例17〜20及び比較例7〜9:歯冠の調製
上小臼歯の形状を有する歯冠を、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)フィルム(厚さ0.076mm(0.003インチ);19重量%ビニルアセテート)及び本質的に米国特許出願公開第2005/0040551号に記載した方法の4部鋼型を用いて、約0.5gの実施例13〜16及び比較例4〜6の各歯科用組成物で成型した。各成型された歯冠を型から取り出し、室温で少なくとも24時間静置させた。次いで、フィルムから歯冠を取り外し、次いでタイポドント(typodont)内の調製したプラスチックの上小臼歯上に歯冠を設けた後、各歯冠を評価した。評価基準は、歯冠のフィルムからの取り外し易さ、歯冠をフィルムから取り外すときの成型された歯冠の形状の保持、タイポドント内の調製された歯と歯冠との一致、及び歯冠と歯冠に隣接するタイポドント内の歯との間の接触の形成を含む。各歯冠の評価結果を表4に示す。表4では、「柔性」は、器具で更に成形するには歯冠が柔らか過ぎると考えられた、又は歯冠をフィルムから取り外すとき、その形状が保持されなかったことを意味し、「脆性」は、歯冠を器具で更に成形するとき歯冠内に亀裂が形成されたことを意味し、「展性」は、歯冠が、タイポドント内に取り付けられ、器具で更に成形されるのに十分な硬度を有していたことを意味する。実施例18の組成物は歯冠には好適ではないが、充填性物質のような他の用途には好適であると考えられる。
【表4】

【0278】
実施例21:歯科用組成物の調製
調製例2の重合性組成物(98重量部)を、実施例5の有機ゲル化剤(2重量部)と合わせ、この混合物を3000rpmでDAC 150 FVZ型スピードミキサー(SpeedMixer)を用いて、約1分間攪拌した。この樹脂(23重量部)を、フィラーC(69.3重量部)及びフィラーA(7.7重量部)と合わせ、混合物を85℃に約20分間加熱し、次いで3000rpmでスピードミキサーを用いて、それぞれ約1分間3回攪拌して、有機ゲル化剤を含む硬化性歯科用組成物を得た。組成物を室温に冷却させ、次いで組成物の試料の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃で、硬度は408gと測定された。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、60MPa(8,702ポンド/平方インチ)と測定された。
【0279】
実施例22:歯科用組成物の調製
実施例5の有機ゲル化剤の代わりに実施例6の有機ゲル化剤を用いたことを除き、本質的に実施例19に記載したように、硬化性歯科用組成物を調製した。組成物を室温に冷却させ、次いで組成物の試料の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃で、硬度は431gと測定された。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、67MPa(9718ポンド/平方インチ)と測定された。
【0280】
実施例23:歯科用組成物の調製
実施例5の有機ゲル化剤の代わりに実施例7の有機ゲル化剤を用いたことを除き、本質的に実施例19に記載したように、硬化性歯科用組成物を調製した。組成物を室温に冷却させ、次いで組成物の試料の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃で、硬度は492gと測定された。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、67MPa(9718ポンド/平方インチ)と測定された。
【0281】
比較例10
調製例2の重合性組成物(23重量部)を、フィラーC(69.3重量部)及びフィラーA(7.7重量部)と合わせ、混合物を85℃に約20分間加熱し、次いで3000rpmでDAC 150 FVZ型スピードミキサー(SpeedMixer)を用いて、それぞれ約1分間3回攪拌して、有機ゲル化剤を含む硬化性歯科用組成物を得た。組成物を室温に冷却させ、次いで組成物の試料の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃で、硬度は308gと測定された。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、68MPa(9863ポンド/平方インチ)と測定された。
【0282】
実施例24:有機ゲル化剤XLVIの調製
【化54】

70℃で、1,12−ジアミノドデカン(64.57g)及びエチルアセテート(1.0L)の機械的攪拌混合物に、約1時間にわたって2−イソシアナトエチルメタクリレート(100.0g)を滴下した。次いで、混合物を70℃で約2時間攪拌し、その後混合物を室温に冷却させた。形成された白色固体を濾過により分離した。濾過した白色固体を室温で乾燥させて、159.8gの生成物を得た。
【0283】
実施例25:有機ゲル化剤XLVIIの調製
【化55】

70℃で、1,10−ジアミノデカン(55.48g)及びエチルアセテート(1.0L)の機械的攪拌混合物に、約1時間にわたって2−イソシアナトエチルメタクリレート(100.00g)を滴下した。次いで、混合物を70℃で約1時間攪拌し、その後混合物を室温に冷却させた。形成された白色固体を濾過により分離した。濾過した固体を熱メタノール(800mL)に溶解させ、次いで得られた熱溶液を濾過した。濾液を室温に冷却させ、次いで沈殿した固体を濾過した。固体を真空下で乾燥させて、白色固体として130.0gの生成物を得た。
【0284】
実施例26:歯科用組成物の調製
調製例2の重合性組成物(2.24g)を、実施例24の有機ゲル化剤(0.06g)と合わせ、この混合物を約85℃に約20分間加熱し、次いで3000rpmでDAC 150 FVZ型スピードミキサー(SpeedMixer)を用いて、1分間攪拌した。この混合物に、フィラーC(6.93g)及びフィラーA(0.77g)を添加した。得られた混合物を、次いで、スピードミキサーを用いて、それぞれ約1分間3回混合して、重合性有機ゲル化剤を含む硬化性歯科用組成物を得た。組成物を室温に冷却させ、次いで組成物の試料の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃で、硬度は757gと測定された。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、68.1MPa(9877ポンド/平方インチ)と測定された。
【0285】
実施例27:歯科用組成物の調製
2.18gの調製例2の重合性組成物及び0.12gの実施例24の有機ゲル化剤を用いたことを除き、本質的に実施例26に記載したように、実施例27の組成物を調製した。25℃で、硬度は1071gと測定された。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、75.1MPa(10,892ポンド/平方インチ)と測定された。
【0286】
実施例28:歯科用組成物の調製
実施例22の生成物の代わりに、0.06gの実施例25の有機ゲル化剤を用いたことを除き、本質的に実施例26に記載したように、実施例28の組成物を調製した。25℃で、硬度は755gと測定された。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、71.5MPa(10,370ポンド/平方インチ)と測定された。
【0287】
比較例11
調製例2の重合性組成物(2.24g)を約85℃に加熱し、次いでフィラーC(6.93g)及びフィラーA(0.77g)と合わせた。得られた組成物を、次いで、DAC 150 FVZ型スピードミキサー(SpeedMixer)を用いて、それぞれ1分間3回混合して、硬化性歯科用組成物を得た。組成物を室温に冷却させ、次いで組成物の試料の硬化前機械的特性を上記のように評価した。25℃で、硬度は448gと測定された。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、77.4MPa(11,226ポンド/平方インチ)と測定された。
【0288】
実施例29:歯科用組成物の調製
調製例7の重合性組成物(2.16g)を、実施例24の有機ゲル化剤(0.14g)と合わせ、この混合物を約85℃に約20分間加熱し、次いで3000rpmでDAC 150 FVZ型スピードミキサー(SpeedMixer)を用いて、1分間混合した。この混合物に、フィラーC(6.93g)及びフィラーA(0.77g)を添加した。得られた組成物を、次いで、スピードミキサーを用いて、それぞれ1分間2回混合して、重合性有機ゲル化剤を含む硬化性歯科用組成物を得た。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、63.2MPa(9166ポンド/平方インチ)と測定された。
【0289】
実施例30:歯科用組成物の調製
実施例24の有機ゲル化剤の代わりに、0.14gの実施例25の有機ゲル化剤を用いたことを除き、本質的に実施例29に記載したように、実施例28の生成物を調製した。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、66.8MPa(9689ポンド/平方インチ)と測定された。
【0290】
比較例12
調製例7の重合性組成物(2.24g)を約85℃に加熱し、次いでフィラーC(6.93g)及びフィラーA(0.77g)と合わせた。得られた組成物を、次いで、DAC 150 FVZ型スピードミキサー(SpeedMixer)を用いて、それぞれ約1分間3回混合して、硬化性歯科用組成物を得た。硬化後直径引っ張り強度を上記のように測定し、71.3MPa(10,341ポンド/平方インチ)と測定された。
【0291】
実施例31〜32及び比較例13〜14
本質的に実施例17〜20及び比較例7〜9に記載した手順により、実施例29及び30並びに比較例11及び12の組成物それぞれを用いて、歯冠を成型した。評価基準は、歯冠のフィルムからの取り外し易さ、歯冠をフィルムから取り外すときの成型された歯冠の形状の保持、タイポドント内の調製された歯と歯冠との一致、及び歯冠と歯冠に隣接するタイポドント内の歯との間の接触の形成を含む。各歯冠の評価結果を表5に示す。表5では、「柔性」は、歯冠が器具で更に成形されるには柔らか過ぎると考えられた、又は歯冠をフィルムから取り外すとき、その形状が保持されなかったことを意味し、「展性」は、歯冠がタイポドント内に取り付けられ、器具で更に成形されるのに十分な硬度を有していたことを意味する。
【表5】

【0292】
実施例33〜36及び比較例15
幾つかの異なるアミノ糖有機ゲル化剤並びに以下のUDMA及びプロクリレート(PROCRYLATE)の樹脂混合物を用いて、上記のようにゲル化試験を実施した。表6に列挙したようなアミノ糖有機ゲル化剤の試料(90mg)、2.0gのUDMA及び1.0gのプロクリレートを、スクリューキャップバイアル瓶に入れて、3%有機ゲル化剤を含有する樹脂混合物を準備した。有機ゲル化剤が溶解するまで、混合物を約70℃の温度に加熱し、次いで混合物を室温に冷却させた。4時間後、バイアル瓶を逆さにした。液体の流動が見られなかった場合、ゲルが形成されたと判断された。
【表6】

【0293】
実施例37〜41及び比較例16〜20
特定の樹脂、フィラー、並びに以下の表7、9、11及び13に記載した有機ゲル化剤組成物を用いて、実施例13で記載した一般的手順に従って、歯科用コンポジット製剤を調製した。上記手順に従って、硬化前硬度試験を実施した。データを表8、10、12及び14に示した。


【表7】

【表8】

CTH=一定温度及び湿度;即ち相対湿度50%、23℃


【表9】

【表10】

CTH=一定温度及び湿度;即ち相対湿度50%、23℃
【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【0294】
本明細書中に引用した特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全文が参照することにより組み込まれる。本発明の様々な変更や改変は、本発明の範囲及び趣旨を逸脱せずに、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で示される例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるべく意図されないこと、並びに、かような実施例及び実施形態は、以下に示されるように、本明細書に示す請求項によってのみ限定されるべく意図される本発明の範囲に沿った例示として提示されること、を理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機重合性成分と、
有機ゲル化剤と、
結晶性物質と、を含む硬化性歯科用組成物。
【請求項2】
有機重合性成分と、
有機ゲル化剤と、
60%以上のフィラー材料と、を含む硬化性歯科用組成物。
【請求項3】
有機重合性成分と、
有機ゲル化剤と、
ナノスケール粒子を含むフィラー材料と、を含む硬化性歯科用組成物。
【請求項4】
有機重合性成分と、
重合性有機ゲル化剤と、を含む硬化性歯科用組成物。
【請求項5】
前記結晶性物質が反応性基を含む、請求項1に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項6】
前記結晶性物質が、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリチオエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリシラン、ポリアミド、ポリウレタン又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記結晶性物質が、一級ヒドロキシル末端基を含有する飽和直鎖脂肪族ポリエステルポリオールを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
フィラー材料を更に含む、請求項1又は5〜7のいずれか一項に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項9】
前記フィラー材料が60%以上の量で存在する、請求項3又は8に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項10】
前記フィラー材料がナノスケール粒子を含む、請求項8に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項11】
前記ナノスケール粒子が凝集網状構造を形成する、請求項3又は10に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項12】
前記ナノスケール粒子がヒュームドシリカを含む、請求項11に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項13】
前記有機ゲル化剤が重合性である、請求項1〜3又は請求項5〜12のいずれか一項に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項14】
前記組成物が光重合性である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項15】
前記重合性成分が、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、エチレン性不飽和化合物及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項16】
前記組成物が化学重合性である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項17】
前記化学重合性成分がエチレン性不飽和化合物を含む、請求項16に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項18】
前記有機ゲル化剤が尿素系有機ゲル化剤である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項19】
前記有機ゲル化剤が、一般式:
【化56】

(式中、各Mは、独立に、水素又は重合性基であり、各Xは、独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アレニレン基又はこれらの組み合わせであり、nは1〜3である)
で表されるものである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項20】
前記有機ゲル化剤が、下記式:
【化57】

で表される化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項21】
前記有機ゲル化剤がアミノ糖有機ゲル化剤である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項22】
前記有機ゲル化剤が、一般式LXXV:
【化58】

(式中、
1及びR2は、独立に、水素原子、アルキル基、C(O)R3、及びSO24からなる群から選択され;
3及びR4は、独立に、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基からなる群から選択され;
nは約2〜約5の整数である)
で表されるアミノ糖有機ゲル化剤又はその薬剤として許容される塩である、請求項21に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項23】
前記有機ゲル化剤が、下記式:
【化59】

で表される化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項22に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項24】
前記有機ゲル化剤が、一般式LXXXIII:
【化60】

(式中、
1、R2及びR3は、独立に、OH及びNR56からなる群から選択され;
4は、OH、OP(O)(OH)2、OSO3H、及びNR56からなる群から選択され;
5及びR6は、独立に、水素原子、アルキル基、C(O)R7及びSO28からなる群から選択され;
7及びR8は、独立に、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基からなる群から選択され;ただし、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つがNR56である)
で表されるアミノ糖有機ゲル化剤、又はその薬剤として許容される塩である、請求項21に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項25】
前記有機ゲル化剤が、下記式:
【化61】

で表される化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項24に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項26】
歯科用修復材の形成に好適な、請求項1〜25のいずれか一項に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項27】
第1形状及び15℃〜38℃の温度で第2形状に形成されるのに十分な展性を有する硬化性自立構造の形態である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項28】
前記第2形状の構造の硬化時、硬化した構造が少なくとも25MPaの曲げ強度を有する、請求項27に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項29】
流動性である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項30】
歯列矯正用接着剤である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項31】
充填性である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項32】
一般式:
【化62】

(式中、各Mは、独立に、水素又は重合性基であり、各Xは、独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アレニレン基又はこれらの組み合わせであり、nは1〜3である)
で表される有機ゲル化剤。
【請求項33】
下記式:
【化63】

で表される化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の有機ゲル化剤。
【請求項34】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を含む歯科用製品。
【請求項35】
予備形成された歯冠である、請求項34に記載の歯科用製品。
【請求項36】
歯列矯正器具であって、
前記組成物がその上にコーティングされた歯列矯正用接着剤である、請求項34に記載の歯科用製品。
【請求項37】
有機重合性成分、有機ゲル化剤、及び結晶性物質を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程を含む、硬化性歯科用組成物の調製方法。
【請求項38】
有機重合性成分、有機ゲル化剤、及び60%以上のフィラー材料を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程を含む、硬化性歯科用組成物の調製方法。
【請求項39】
有機重合性成分、有機ゲル化剤、及びナノスケール粒子を含むフィラー材料を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程を含む、硬化性歯科用組成物の調製方法。
【請求項40】
有機重合性成分及び重合性有機ゲル化剤を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程を含む、硬化性歯科用組成物の調製方法。
【請求項41】
前記硬化性歯科用組成物が、第1形状及び15℃〜38℃の温度で第2形状に形成されるのに十分な展性を有する自立構造である、請求項37〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記硬化性歯科用組成物が流動性である、請求項37〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記硬化性歯科用組成物が歯列矯正用接着剤である、請求項37〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記硬化性歯科用組成物が充填性である、請求項37〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
有機重合性成分、有機ゲル化剤、及び結晶性物質を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;
前記硬化性歯科用組成物を歯科用製品に形成する工程と、を含む歯科用製品の調製方法。
【請求項46】
有機重合性成分、有機ゲル化剤、及び60%以上のフィラー材料を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;
前記硬化性歯科用組成物を歯科用製品に形成する工程と、を含む歯科用製品の調製方法。
【請求項47】
有機重合性成分、有機ゲル化剤、及びナノスケール粒子を含むフィラー材料を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;
前記硬化性歯科用組成物を歯科用製品に形成する工程と、を含む歯科用製品の調製方法。
【請求項48】
有機重合性成分、及び重合性有機ゲル化剤を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;
前記硬化性歯科用組成物を歯科用製品に形成する工程と、を含む歯科用製品の調製方法。
【請求項49】
前記歯科用製品が硬化性であり、前記硬化性歯科用製品の前記硬化性歯科用組成物が、第1形状及び15℃〜38℃の温度で第2形状に形成されるのに十分な展性を有する自立構造である、請求項45〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
有機重合性成分、有機ゲル化剤、及び結晶性物質を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;
前記硬化性歯科用組成物を歯科用製品に塗布する工程と、を含む歯科用製品の調製方法。
【請求項51】
有機重合性成分、有機ゲル化剤、及び60%以上のフィラー材料を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;
前記硬化性歯科用組成物を歯科用製品に塗布する工程と、を含む歯科用製品の調製方法。
【請求項52】
有機重合性成分、有機ゲル化剤、及びナノスケール粒子を含むフィラー材料を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;
前記硬化性歯科用組成物を歯科用製品に塗布する工程と、を含む歯科用製品の調製方法。
【請求項53】
有機重合性成分、及び重合性有機ゲル化剤を組み合わせて、硬化性歯科用組成物を形成する工程と;
前記硬化性歯科用組成物を歯科用製品に塗布する工程と、を含む歯科用製品の調製方法。
【請求項54】
前記硬化性歯科用組成物が流動性である、請求項50〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記硬化性歯科用組成物が歯列矯正用接着剤である、請求項50〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記歯科用製品が歯列矯正器具である、請求項50〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
第1形状及び15℃〜38℃の温度で第2形状に形成されるのに十分な展性を有する自立構造を有する請求項26に記載の硬化性歯科用組成物を含む、歯科用製品を提供する工程と;
被験体の口腔内の歯表面上又は歯表面のモデル上に前記歯科用製品を設ける工程と;
被験体の口腔内又は歯表面のモデル上で前記歯科用製品の形状をカスタマイズする工程と;
前記歯科用製品の前記硬化性歯科用組成物を硬化する工程と、を含む歯科用製品の使用方法。
【請求項58】
流動性又は充填性である請求項29又は31に記載の硬化性歯科用組成物を提供する工程と;
被験体の口腔内の歯表面上に前記歯科用製品を設け、前記歯表面が所望により歯科用接着剤でコーティングされる工程と;
前記硬化性歯科用組成物を硬化する工程と、を含む硬化性歯科用組成物の使用方法。
【請求項59】
硬化性歯列矯正用接着剤である請求項30に記載の硬化性歯科用組成物を提供する工程と;
所望により歯科用接着剤でコーティングされる歯表面にブラケットが接触する前に、歯列矯正用ブラケット上に前記硬化性歯列矯正用接着剤を設ける工程と;
前記硬化性歯列矯正用接着剤を硬化する工程と、を含む歯科用製品の使用方法。
【請求項60】
硬化性歯列矯正用接着剤である請求項30に記載の硬化性歯科用組成物でコーティングされた歯列矯正用ブラケットを含む歯科用製品を提供する工程と;
ブラケットを歯表面上に設け、前記歯表面が所望により歯科用接着剤でコーティングされる工程と;
前記硬化性歯列矯正用接着剤を硬化する工程と、を含む歯科用製品の使用方法。

【公表番号】特表2010−503698(P2010−503698A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528448(P2009−528448)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/078257
【国際公開番号】WO2008/033911
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】