説明

有機テルル化合物を用いた水性液の製造方法

【課題】 精密な分子量及び分子量分布(PD=Mw/Mn)の制御されたポリマーを含む水性液を製造する方法を提供する。
【解決手段】 水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b1)界面活性剤及び/又は分散剤を用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【化1】


(式中、Rは、C〜Cのアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーを含む水性液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リビングラジカル重合は、ラジカル重合の簡便性と汎用性を保ちつつ分子構造の精密制御を可能にする重合法で、新しい高分子材料の合成に大きな威力を発揮している。本発明者は、リビングラジカル重合の例として、有機テルル化合物を開始剤として用いたリビングラジカル重合を報告している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】WO 2004/14848
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この特許文献1の方法は、バルクや有機溶剤等を用いた均一系で検討されて、分子量と分子量分布の制御を可能にしている。しかし、環境的、工業的な観点から、これらのリビングラジカル重合技術の水性媒体での適用が望まれている。
本発明の課題は、水性媒体中、(a)有機テルル化合物、(b1)界面活性剤及び/又は分散剤を用いて、ビニルモノマーを重合することにより、精密な分子量及び分子量分布(PD=Mw/Mn)の制御されたポリマーを含む水性液を製造する方法を提供することにある。
また、本発明の課題は、水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b2)界面活性剤及び共界面活性剤を用いて、ビニルモノマーをミニエマルションすることにより、精密な分子量及び分子量分布(PD=Mw/Mn)の制御されたポリマーを含む水性液を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は以下の発明に係る。
1.水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b1)界面活性剤及び/又は分散剤を用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【0005】
【化1】

(式中、Rは、C〜Cのアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
【0006】
2.水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b1)界面活性剤及び/又は分散剤、(c)式(2)で表される化合物を用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
(RTe) (2)
(式中、Rは、上記と同じ。)
【0007】
3.水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b1)界面活性剤及び/又は分散剤、(d)アゾ系重合開始剤を用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【0008】
4.水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b1)界面活性剤及び/又は分散剤、(c)式(2)で表される化合物、(d)アゾ系重合開始剤を用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【0009】
5.水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b2)界面活性剤及び共界面活性剤を用いて、ビニルモノマーをミニエマルション重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【0010】
6.水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b2)界面活性剤及び共界面活性剤、(c)式(2)で表される化合物を用いて、ビニルモノマーをミニエマルション重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【0011】
7.水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b2)界面活性剤及び共界面活性剤、(d)アゾ系重合開始剤を用いて、ビニルモノマーをミニエマルション重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【0012】
8.水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b2)界面活性剤及び共界面活性剤、(c)式(2)で表される化合物、(d)アゾ系重合開始剤を用いて、ビニルモノマーをミニエマルション重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【0013】
9.上記1〜8に記載の製造方法で得られた水性液をマクロリビング開始剤(マクロイニシエータ)として用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
10.上記1〜9に記載の製造方法で製造されたポリマーを含む水性液。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水性媒体中で、精密な分子量及び分子量分布(PD=Mw/Mn)の制御されたポリマーを含む水性液の製造方法を提供する。また、本発明の製造方法により得られた水性液に、更に、ビニルモノマーを追加することにより、分子量の増大されたポリマー或いは任意のブロック(コ)ポリマーからなる水性液の製造を可能とする。また得られたポリマーは様々な応用分野で興味のある製品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で使用する有機テルル化合物は、式(1)で表される。
【0016】
【化2】

(式中、Rは、C〜Cのアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
【0017】
で示される基は、具体的には次の通りである。
〜Cのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を挙げることができる。
好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が良い。
より好ましくは、メチル基、エチル基又はn−ブチル基が良い。
【0018】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
好ましいアリール基としては、フェニル基が良い。
置換アリール基としては、置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等を挙げることができる。
上記置換基を有しているアリール基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−CORで示されるカルボニル含有基(R=C〜Cのアルキル基、アリール基、C〜Cのアルコキシ基、アリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。
好ましい置換アリール基としては、トリフルオロメチル置換フェニル基が良い。
また、これら置換基は、1個又は2個置換しているのが良く、パラ位若しくはオルト位が好ましい。
芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、ピロール基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
【0019】
及びRで示される各基は、具体的には次の通りである。
〜Cのアルキル基としては、上記Rで示したアルキル基と同様のものを挙げることができる。
で示される各基は、具体的には次の通りである。
アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基としては上記Rで示した基と同様のものを挙げることができる。
アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
オキシカルボニル基としては、−COOR(R=H、C〜Cのアルキル基、アリール基)で示される基を挙げることができる。
具体的には、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、ter−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
【0020】
好ましいRで示される各基としては、アリール基、置換アリール基、オキシカルボニル基又はシアノ基が良い。
好ましいアリール基としては、フェニル基が良い。好ましい置換アリール基としては、ハロゲン原子置換フェニル基、トリフルオロメチル置換フェニル基が良い。
また、これらの置換基は、ハロゲン原子の場合は、1〜5個置換しているのが良い。
アルコキシ基やトリフルオロメチル基の場合は、1個又は2個置換しているのが良く、1個置換の場合は、パラ位若しくはオルト位が好ましく、2個置換の場合は、メタ位が好ましい。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
【0021】
好ましい(1)で示される有機テルル化合物としては、Rが、C〜Cのアルキル基を示し、R及びRが、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示し、Rが、アリール基、置換アリール基、オキシカルボニル基で示される化合物が良い。
特に好ましくは、Rが、C〜Cのアルキル基を示し、R及びRが、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示し、Rが、フェニル基、置換フェニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
【0022】
式(1)で示される有機テルル化合物は、具体的な代表例は次の通りである。
(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(1−メチルテラニルエチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニルエチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニルエチル)ベンゼン、3,5−ビス−トリフルオロメチル−1−(1−メチルテラニルエチル)ベンゼン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロ−6−(1−メチルテラニルエチル)ベンゼン、2−メチルテラニルプロピオニトリル、(2−メチルテラニルプロピル)ベンゼン、メチル 2−メチルテラニル−2−メチル−プロピオネート、エチル 2−メチルテラニル−2−メチル−プロピオネート、2−メチルテラニル−2−メチル−プロピオニトリル等を挙げることができる。また、上記において、メチルテラニルの部分がエチルテラニル、n−ブチルテラニルと変更した化合物も全て含まれる。その他WO2004/014962に記載された有機テルル化合物の全てを例示することができる。
【0023】
式(1)で示される有機テルル化合物は、式(3)の化合物、式(4)の化合物および金属テルルを反応させることにより製造することができる。
上記、式(3)で表される化合物としては、具体的には次の通りである。
【0024】
【化4】

(式中、R、R及びRは、上記と同じ。Xは、ハロゲン原子を示す。〕
【0025】
上記、式(3)で表される化合物としては、具体的には次の通りである。
、R及びRで示される各基は、上記に示した通りである。
Xで示される基としては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素等のハロゲン原子を挙げることができる。好ましくは、塩素、臭素が良い。
【0026】
式(3)で示される化合物は、具体的には次の通りである。
ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、(1−クロロエチル)ベンゼン、(1−ブロモエチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−クロロエチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−ブロモエチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−クロロエチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−ブロモエチル)ベンゼン、3,5−ビス−トリフルオロメチル−1−(1−クロロエチル)ベンゼン、3,5−ビス−トリフルオロメチル−1−(1−ブロモエチル)ベンゼン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロ−6−(1−クロロエチル)ベンゼン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロ−6−(1−ブロモエチル)ベンゼン、2−クロロプロピオニトリル、2−ブロモプロピオニトリル、(2−クロロプロピル)ベンゼン、(2−ブロモプロピル)ベンゼン、メチル 2−クロロ−2−メチル−プロピオネート、メチル 2−ブロモ−2−メチル−プロピオネート、エチル 2−クロロ−2−メチル−プロピオネート、エチル 2−ブロモ−2−メチル−プロピオネート、2−クロロ−2−メチル−プロピオニトリル、2−ブロモ−2−メチル−プロピオニトリル等を挙げることができる。その他、WO2004/014962に記載された化合物(3)の全てを例示することができる。
【0027】
上記、式(4)で表される化合物としては、具体的には次の通りである。
M(R)m (4)
(式中、Rは、上記と同じ。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は銅原子を示す。Mがアルカリ金属の時、mは1、Mがアルカリ土類金属の時、mは2、Mが銅原子の時、mは1または2を示す。)
【0028】
で示される基は、上記に示した通りである。
Mで示されるものとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、銅を挙げることができる。好ましくは、リチウムが良い。なお、Mがマグネシウムの時、化合物(4)はMg(Rでも、或いはRMgX(Xは、ハロゲン原子)で表される化合物(グリニャール試薬)でもよい。Xは、好ましくは、クロロ原子、ブロモ原子がよい。
【0029】
具体的な化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、フェニルリチウム、p−クロロフェニルリチウム、p−メトキシフェニルリチウム、p−ニトロフェニルリチウム等を挙げることができる。好ましくは、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、フェニルリチウムが良い。
【0030】
式(1)で表される化合物の製造方法としては、具体的には次の通りである。
金属テルルを溶媒に懸濁させる。使用できる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)等の極性溶媒やトルエン、キシレン等の芳香族溶媒、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ジアルキルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。好ましくは、THFが良い。溶媒の使用量としては適宜調節すればよいが、通常、金属テルル1gに対して1〜100ml、好ましくは、5〜20mlが良い。
上記懸濁溶液に、化合物(4)をゆっくりと滴下しその後撹拌する。反応時間は、反応温度や圧力により異なるが、通常5分〜24時間、好ましくは、10分〜2時間が良い。反応温度としては、−20℃〜80℃、好ましくは、−10℃〜40℃、より好ましくは、−5℃〜40℃が良い。圧力は、通常、常圧で行うが、加圧或いは減圧しても構わない。
【0031】
次に、この反応溶液に、化合物(3)を加え、撹拌する。反応時間は、反応温度や圧力により異なるが、通常5分〜24時間、好ましくは、10分〜2時間が良い。反応温度としては、−20℃〜80℃、好ましくは、−10℃〜40℃、より好ましくは、−5℃〜40℃が良い。圧力は、通常、常圧で行うが、加圧或いは減圧しても構わない。
金属テルル、化合物(3)及び化合物(4)の使用割合としては、金属テルル1molに対して、化合物(3)を0.5〜1.5mol、化合物(4)を0.5〜1.5mol、好ましくは、化合物(3)を0.8〜1.2mol、化合物(4)を0.8〜1.2molとするのが良い。反応終了後、溶媒を濃縮し、目的化合物を単離精製する。精製方法としては、化合物により適宜選択できるが、通常、減圧蒸留や再結晶精製等が好ましい。
【0032】
本発明で使用する(b1)界面活性剤及び/又は分散剤は、次の通りである。
界面活性剤としては、特に制限はないが、具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ジオクチルコハク酸塩、ラウリルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ラウリルリン酸塩等のアニオン性化合物、オクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オキシエチレンドデシルアミン等のカチオン性化合物;ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性化合物;あるいは反応性界面活性剤等を挙げることができる。
【0033】
分散剤としては、特に制限はないが、具体的にはポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、セルロース誘導体等のノニオン系高分子化合物;ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、メタクリル酸エステルとメタクリル酸および/又はその塩との共重合体等のアニオン系高分子化合物;リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の水難溶性無機化合物を挙げることができる。これらは1種もしくはそれ以上併用しても良い。
【0034】
本発明で使用する(b2)界面活性剤および共界面活性剤は、次の通りである。
界面活性剤としては、上記と同様なものを挙げることができる。
共界面活性剤としては、特に制限はないが、具体的には、1−ペンタノール、1−ヘキサデカノールなどのように実質的に水に不溶な高級アルコールや、ヘキサデカン、オクタデカンなどの長鎖アルカン等を挙げることができる。
【0035】
本発明で使用する式(2)で表される化合物は、次の通りである。
(RTe) (2)
(式中、Rは、上記と同じ。)
【0036】
で示される基は、上記に示した通りである。
好ましい式(2)で示される化合物としては、RがC〜Cのアルキル基、フェニル基が良い。
【0037】
式(2)で示される化合物は、具体的には、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジ−sec−ブチルジテルリド、ジ−tert−ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス−(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス−(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス−(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。好ましくは、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリドが良い。特に好ましくは、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリドが良い。
【0038】
式(2)で表される化合物の製造方法としては、具体的には金属テルルと式(4)で示される化合物を反応させる方法を挙げることができる。
金属テルルを溶媒に懸濁させる。使用できる溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)やテトラハイドロフラン(THF)等の極性溶媒やトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ヘキサン等の脂肪族系炭化水素、ジアルキルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。好ましくは、THFが良い。有機溶媒の使用量としては適宜調節すればよいが、通常、金属テルル1gに対して1〜100ml、好ましくは、5〜20mlが良い。
上記懸濁溶液に、式(4)で表される化合物をゆっくりと滴下しその後撹拌する。反応時間は、反応温度や圧力により異なるが、通常5分〜24時間、好ましくは、10分〜2時間が良い。反応温度としては、−20℃〜80℃、好ましくは、−10℃〜40℃、より好ましくは、−5〜40℃が良い。圧力は、通常、常圧で行うが、加圧或いは減圧しても構わない。
【0039】
次に、この反応溶液に、水(食塩水等の中性水、塩化アンモニウム水溶液等のアルカリ性水、塩酸水等の酸性水でも良い)を加え、撹拌する。反応時間は、反応温度や圧力により異なるが、通常5分〜24時間、好ましくは、10分〜2時間が良い。反応温度としては、−20℃〜80℃、好ましくは、0℃〜40℃、より好ましくは、15〜40℃が良い。圧力は、通常、常圧で行うが、加圧或いは減圧しても構わない。
金属テルル及び式(4)の化合物の使用割合としては、金属テルル1molに対して、式(4)の化合物を0.5〜1.5mol、好ましくは、0.8〜1.2molとするのが良い。
反応終了後、溶媒を濃縮し、目的化合物を単離精製する。精製方法としては、化合物により適宜選択できるが、通常、減圧蒸留や再沈殿精製等が好ましい。
【0040】
本発明で使用されるアゾ系重合開始剤は、通常のラジカル重合で使用するアゾ系重合開始剤であれば特に制限なく使用することができる。
例えば2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1'−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
【0041】
これらのアゾ開始剤は反応条件に応じて適宜選択するのが好ましい。例えば低温重合の場合は2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、中温重合の場合は2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)、1,1'−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2'−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、高温重合の場合は1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]を用いるのがよい。
【0042】
本発明で使用するビニルモノマーとしては、ラジカル重合可能なものであれば特に制限なく使用することができる。これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。
例えば、(メタ)アクリル酸エステル、シクロアルキル基含有不飽和モノマー、芳香族不飽和モノマー(スチレン系モノマー)、(メタ)アクリルアミド系モノマー、(メタ)アクリロニトリル、メチルビニルケトンなど、WO2004/014962に記載されたビニルモノマーの全てを例示することができる。
具体的には例えば、下記のモノマーを挙げることができる。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル等のシクロアルキル基含有不飽和モノマー。
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸等メチル等のカルボキシル基含有不飽和モノマー。
【0043】
N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の3級アミン含有不飽和モノマー。
N−2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、N−メタクリロイルアミノエチル−N,N,N−ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩基含有不飽和モノマー。
(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有不飽和モノマー。
スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン(p−メチルスチレン)、2−メチルスチレン(o−メチルスチレン)、3−メチルスチレン(m−メチルスチレン)、4−メトキシスチレン(p−メトキシスチレン)、p−t−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、2−クロロスチレン(o−クロロスチレン)、4−クロロスチレン(p−クロロスチレン)、2,4−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、p−スチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)等の芳香族不飽和モノマー(スチレン系モノマー)。
【0044】
2−ビニルチオフェン、N−メチル−2−ビニルピロール、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のヘテロ環含有不飽和モノマー。
N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のビニルアミド。
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー。1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィン。
ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等のジエン類。酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリロニトリル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン。
【0045】
この中でも好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル、シクロアルキル基含有不飽和モノマー、芳香族不飽和モノマー(スチレン系モノマー)、(メタ)アクリルアミド系モノマー、(メタ)アクリロニトリル、メチルビニルケトンが良い。
好ましい(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルが挙げられる。特に好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルが良い。
好ましいシクロアルキル基含有不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが良い。特に好ましくは、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸イソボルニルが良い。
好ましいスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロロスチレンが挙げられる。特に好ましくは、スチレン、p−クロロスチレンが良い。
好ましい(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。特に好ましくは、N−イソプロピルメタアクリルアミドが良い。
尚、上記の「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の総称である。
【0046】
本発明の水性液とは、エマルションまたはサスペンジョンなどのことである。
本発明の水性液の製造方法としては、エマルション重合法、懸濁(サスペンジョン)重合法またはミニエマルション重合法などが挙げられる。
本発明におけるエマルション重合法は、界面活性剤を使用し、主にミセル中で重合する。必要に応じてポリビニルアルコール類等の水溶性高分子などの分散剤を用いても良い。これらの界面活性剤は1種類、又は2種類以上で組み合わせて使用することができる。かかる界面活性剤の使用量は、全モノマー100重量部に対して、0.3〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜50重量部である。又、水の使用量は、全モノマー100重量部に対して、50〜2000重量部であることが好ましく、より好ましくは70〜1500重量部である。
重合温度は特に限定されないが、0〜100℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは40〜90℃である。反応時間は、反応温度または用いるモノマー組成物の組成、界面活性剤や重合開始剤の種類等に応じ、重合反応が完結するように適宜設定すればよい。好ましくは24時間以内である。
【0047】
本発明における懸濁重合法は、分散剤を使用し、主にミセルを介さないで重合する。必要に応じてこれらの分散剤と共に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マンガン等の分散助剤を併用してもよい。かかる分散剤の使用量は、全モノマー100重量部に対して、0.01〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部である。又、水の使用量は、全モノマー100重量部に対して、50〜2000重量部であることが好ましく、より好ましくは70〜1500重量部である。
重合温度は特に限定されないが、0〜100℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは40〜90℃である。反応時間は、反応温度または用いるモノマー組成物の組成、分散剤や重合開始剤の種類等に応じ、重合反応が完結するように適宜設定すればよい。好ましくは24時間以内である。
【0048】
本発明におけるミニエマルション重合法は、界面活性剤及び共界面活性剤を使用し、ホモジナイザーや超音波装置を用いてモノマーを強制分散した後、主にミセルを介さないで重合する。かかる界面活性剤や共界面活性剤の使用量は、全モノマーに対して、0.3〜50重量部、特に好ましくは0.5〜50部である。超音波照射時間は、0.1〜10分、特に好ましくは0.2〜5分である。
【0049】
本発明で得られる水性液中のポリマーの分子量は、テルル化合物の量、反応時間及び重合温度により調整可能であるが、数平均分子量500〜1000000のリビングラジカルポリマーを得ることが出来る。特に数平均分子量1000〜500000のリビングラジカルポリマーを得るのに好適である。
本発明で得られる水性液中のポリマーの分子量分布(PD=MW/Mn)は1.02〜1.50の間で制御することができる。更に分子量分布1.02〜1.30、更には1.02〜1.20、更には1.02〜1.10のより狭いポリマーが得ることが出来る。
【0050】
本発明で得られる水性液中のポリマーは、リビングラジカル重合により進行しているため、マクロリビング開始剤(マクロイニシエータ)として機能する。すなわち本発明で得られた水性液に、同種または異種のビニルモノマーを追加することにより、分子量の増大されたポリマー或いは任意のブロック及びグラフト(コ)ポリマーからなる水性液を製造することが可能である。
本発明で得られた水性液はそのまま単独で用いても良いが、用途に応じて、公知の添加剤、例えば各種酸化防止剤、粘度調整剤、顔料、染料、架橋剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を添加して用いても良い。
本発明で得られた水性液は、必要に応じて遠心分離、塩析、ろ過、乾燥などの手法により水性液中からポリマーを取り出すことができる。また取り出したポリマーは目的に応じて、押出成形等の方法によりペレット形状等にすることが可能である。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが何らこれらに限定されるものではない。また、実施例および比較例において、各種物性測定は以下の機器により測定を行った。
H−NMR:H−NMR:Varian Gemini 2000(300MHz for H)、JEOL JNM−A400(400MHz for H)
13C−NMR:Varian Gemini 2000、JEOL JNM−A400
HRMS:JEOL JMS−300
ガスクロマトグラフィー:Shimadzu GC−14B
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:TOSOH Corporation, TSKgel GMHhr−H
【0052】
合成例1(エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート)
金属テルル〔Aldrich製、商品名:Tellurium(−40mesh)〕6.38g(50mmol)をTHF 50mlに懸濁させ、これにメチルリチウム(上記と同じ)52.9ml(1.04Mジエチルエーテル溶液、55mmol)を、室温でゆっくり滴下した(10分間)。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(20分間)。この反応溶液に、エチル−2−ブロモ−イソブチレート 10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物6.53g(収率51%)を得た。
HRMS、H−NMR、13C−NMRによりエチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネートであることを確認した。
HRMS(EI)m/z:Calcd for C14Te(M),260.0056;Found260.0053
H−NMR(300MHz,CDCl
1.27(t,J=6.9Hz,3H),1.74(s,6H),2.15(s,3H,TeCH),4.16(q,J=7.2Hz,2H)
13C−NMR(75MHz,CDCl)−17.38,13.89,23.42,27.93,60.80,176.75
【0053】
合成例2(エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート)
金属テルル(上記と同じ)6.38g(50mmol)をTHF 50mlに懸濁させ、これにn−ブチルリチウム(Aldrich製、1.6Mヘキサン溶液)34.4ml(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した(10分間)。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(20分間)。この反応溶液に、エチル−2−ブロモ−イソブチレート 10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物8.98g(収率59.5%)を得た。
H−NMRによりエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネートであることを確認した。
H−NMR(300MHz,CDCl
0.93(t,J=7.5Hz,3H),1.25(t,J=7.2Hz,3H),1.37(m,2H),1.74(s,6H),1.76(m,2H),2.90(t,J=7.5Hz,2H,CHTe),4.14(q,J=7.2Hz,2H)
【0054】
合成例3(ジメチルジテルリド)
金属テルル(上記と同じ)3.19g(25mmol)をTHF25mlに懸濁させ、メチルリチウム(関東化学株式会社製、ジエチルエーテル溶液)25ml(28.5mmol)を0℃でゆっくり加えた(10分間)。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(10分間)。この反応溶液に塩化アンモニウム溶液20mlを室温で加え、1時間撹拌した。有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで3回抽出した。集めた有機層を芒硝で乾燥後、減圧濃縮し、黒紫色油状物2.69g(9.4mmol:収率75%)を得た。
【0055】
実施例1
ポリメタクリル酸メチル 水性液の合成
窒素置換したグローブボックス内で、合成例2で製造したエチル−2−メチル−2−ブチルテラニル−プロピオネート23μL(0.10mmol)とメタクリル酸メチル1.00g(10mmol)と合成例3で製造したジブチルジテルライド12.4μL(0.05mmol)と2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)8.2mg(0.05mmol)とドデシルスルホン酸ナトリウム0.1gと窒素バブリングにより十分に脱気した蒸留水15gからなる混合液を調製し、60℃で24時間反応させ、ポリメタクリル酸メチルの水性液(エマルション)を得た。
重量法により算出した重合率は77%であった。
GPC〔TOSOH Corporation, TSKgel GMHhr−H, 7.8mm(id.)×30cm〕分析(ポリスチレン標準サンプルの分子量を基準)により、Mn=20,900、PD=1.36であった。
動的光散乱法(大塚電子株式会社 DLS−700)による測定した平均粒子径は29nmであった。
【0056】
実施例2
ポリメタクリル酸メチル 水性液の合成
実施例1のドデシルスルホン酸ナトリウムの添加量を0.45gに変更した以外は、実施例1と同様に反応を行い、ポリメタクリル酸メチルの水性液(エマルション)を得た。
重量法により算出した重合率は91%であった。
GPC〔TOSOH Corporation, TSKgel GMHhr−H, 7.8mm(id.)×30cm〕分析(ポリスチレン標準サンプルの分子量を基準)により、Mn=14,600、PD=1.20であった。
動的光散乱法(大塚電子株式会社 DLS−700)による測定した平均粒子径は26nmであった。
【0057】
実施例3
ポリメタクリル酸メチル 水性液の合成
窒素置換したグローブボックス内で、合成例2で製造したエチル−2−メチル−2−ブチルテラニル−プロピオネート23μL(0.10mmol)とメタクリル酸メチル1.00g(10mmol)と合成例3で製造したジブチルジテルライド12.4μL(0.05mmol)と2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)8.2mg(0.05mmol)とヘキサデカン0.05gとドデシルスルホン酸ナトリウム0.01gと窒素バブリングにより十分に脱気した蒸留水15gからなる混合液を調製し、超音波ホモジナイザーを用いて30秒間超音波を照射し均一分散した。分散液を窒素パージしたガラス管中にて60℃で24時間反応させ、ポリメタクリル酸メチルの水性液(エマルション)を得た。
ガスクロマトグラフィー分析より重合率は100%であった。
GPC〔TOSOH Corporation, TSKgel GMHhr−H, 7.8mm(id.)×30cm〕分析(ポリスチレン標準サンプルの分子量を基準)により、Mn=9,300、PD=1.37であった。
動的光散乱法(大塚電子株式会社 DLS−700)による平均粒子径は151nmであった。
【0058】
実施例4
ポリメタクリル酸n−ブチル 水性液の合成
実施例3のメタクリル酸メチルをメタクリル酸n−ブチル 1.42g(10mmol)に変更した以外は、実施例1と同様に反応を行い、ポリメタクリル酸n−ブチルの水性液(エマルション)を得た。
ガスクロマトグラフィー分析より重合率は96%であった。
GPC〔TOSOH Corporation, TSKgel GMHhr−H, 7.8mm(id.)×30cm〕分析(ポリスチレン標準サンプルの分子量を基準)により、Mn=13,700、PD=1.18であった。
動的光散乱法(大塚電子株式会社 DLS−700)による平均粒子径は466nmであった。
【0059】
実施例5
ポリスチレン 水性液の合成
窒素置換したグローブボックス内で、合成例2で製造したエチル−2−メチル−2−ブチルテラニル−プロピオネート23μL(0.10mmol)とスチレン1.00g(10mmol)と2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)8.2mg(0.05mmol)とヘキサデカン0.05gとドデシルスルホン酸ナトリウム0.01gと窒素バブリングにより十分に脱気した蒸留水15gからなる混合液を調製し、超音波ホモジナイザーを用いて30秒間超音波を照射し均一分散した。分散液を窒素パージしたガラス管中にて60℃で24時間反応させ、ポリスチレンの水性液(エマルション)を得た。
ガスクロマトグラフィー分析より重合率は93%であった。
GPC[〔TOSOH Corporation, TSKgel GMHhr−H, 7.8mm(id.)×30cm〕分析(ポリスチレン標準サンプルの分子量を基準)により、Mn=16,600、PD=1.46であった。
動的光散乱法(大塚電子株式会社 DLS−700)による平均粒子径は166nmであった。
【0060】
実施例6
ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレンジブロックポリマー 水性液の合成
窒素置換したグローブボックス内で、実施例3で合成したマクロイニシエータとしてのポリメタクリル酸メチル 水性液 4g(ポリメタクリル酸メチル成分 0.25g)とスチレン0.25g(2.5mmol)からなる混合液を調製した。
混合液を窒素パージしたガラス管中に封管し60℃で12時間反応させ、ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレンジブロックポリマーの水性液(エマルション)を得た。
【0061】
実施例7
ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレンジブロックポリマー 水性液の合成
実施例3と同様な手法で作成したポリメタクリル酸メチル 水性液(Mn=7,500、PD=1.37)を用い、実施例6の反応温度を80℃に変更した以外は、実施例6と同様に反応を行い、ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレンジブロックポリマーの水性液(エマルション)を得た。
【0062】
実施例8
ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレンジブロックポリマー 水性液の合成
窒素置換したグローブボックス内で、実施例3で合成したマクロイニシエータとしてのポリメタクリル酸メチル 水性液 4g(ポリメタクリル酸メチル成分 0.25g)とスチレン0.25g(2.5mmol)と2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)2.05mg(0.0125mmol)からなる混合液を調製した。
混合液を窒素パージしたガラス管中に封管し60℃で12時間反応させ、ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレンジブロックポリマーの水性液(エマルション)を得た。
【0063】
実施例9
ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレンジブロックポリマー 水性液の合成
実施例3と同様な手法で作成したポリメタクリル酸メチル 水性液(Mn=7,500、PD=1.37)を用い、実施例8の反応温度を80℃に変更した以外は、実施例8と同様に反応を行い、ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレンジブロックポリマーの水性液(エマルション)を得た。実施例6〜9の実験結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
重合率は重量法より算出した。
数平均分子量(Mn)及び分子量分布(PD)はGPC〔TOSOH Corporation, TSKgel GMHhr−H, 7.8mm(id.)×30cm〕分析(ポリスチレン標準サンプルの分子量を基準)により測定した。
【0066】
実施例10
ポリアクリル酸n−ブチル 水性液の合成
窒素置換したグローブボックス内で、アクリル酸n−ブチル(シグマアルドリッチジャパン製) 1.28g(10mmol)とポリビニルアルコール〔鹸化度80%、日本合成化学工業(株)製、商品名:ゴーセナールKH−17〕3.8mgと窒素バブリングにより十分に脱気した蒸留水4.3mLからなる混合液を調製し、1時間撹拌した。
モノマー分散液に合成例1で製造したエチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート2.25μL(0.013mmol)と2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)(大塚化学株式会社製、商品名:AIBN)1.05mg(0.006mmol)を加え、60℃で7時間反応することによりポリアクリル酸n−ブチル 水性液(サスペンジョン)を得た。
GPC分析(ポリスチレン標準サンプルの分子量を基準)により、Mn=88000 PD=1.18であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b1)界面活性剤及び/又は分散剤を用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【化1】

(式中、Rは、C〜Cのアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又はC〜Cのアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
【請求項2】
水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b1)界面活性剤及び/又は分散剤、(c)式(2)で表される化合物を用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
(RTe) (2)
(式中、Rは、上記と同じ。)
【請求項3】
水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b1)界面活性剤及び/又は分散剤、(d)アゾ系重合開始剤を用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【請求項4】
水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b1)界面活性剤及び/又は分散剤、(c)式(2)で表される化合物、(d)アゾ系重合開始剤を用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【請求項5】
水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b2)界面活性剤及び共界面活性剤を用いて、ビニルモノマーをミニエマルション重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【請求項6】
水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b2)界面活性剤及び共界面活性剤、(c)式(2)で表される化合物を用いて、ビニルモノマーをミニエマルション重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【請求項7】
水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b2)界面活性剤及び共界面活性剤、(d)アゾ系重合開始剤を用いて、ビニルモノマーをミニエマルション重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【請求項8】
水性媒体中で、(a)式(1)で表される有機テルル化合物、(b2)界面活性剤及び共界面活性剤、(c)式(2)で表される化合物、(d)アゾ系重合開始剤を用いて、ビニルモノマーをミニエマルション重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の製造方法で得られた水性液をマクロリビング開始剤(マクロイニシエーター)として用いて、ビニルモノマーを重合することを特徴とするポリマーを含む水性液の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の製造方法で製造されたポリマーを含む水性液。

【公開番号】特開2006−225524(P2006−225524A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41321(P2005−41321)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】