説明

有機ボラン・アミン錯体重合開始剤および重合性組成物

【課題】要求時硬化ポリマー系を形成するために、または要求時に硬化する接着剤系において用いることができる、自然性でなく取扱い上安全であるフリーラジカル重合用の開始剤系を提供する。
【解決手段】第1部において有機ボランアミン錯体を、および第2部においてアミン窒素原子対ホウ素原子の比率が4.0:1より大きい有機ボラン錯体を脱錯化できるイソシアネートを含む、フリーラジカルに晒された場合に硬化する1以上の重合性モノマーの硬化を開始するために有用な二部型組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーラジカル法により化合物の重合を開始するために有用な有機ボラン・アミン錯体を含有する組成物に関する。別の態様において、本発明はフリーラジカル重合可能な部分および本発明の有機ボラン・アミン錯体開始剤を含有する化合物を含む重合性組成物に関する。本発明のなお別の態様において、本発明はフリーラジカル重合可能な部分を含有する化合物を重合させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物が重合に供されたり、または接着剤が用いられる多くの実践的な状況において、要求時に硬化することができる重合性組成物および接着剤組成物を有することは望ましい。要求時に硬化するとは、必要な時に重合を開始することができることを意味する。要求時硬化組成物に伴う重大な問題点は、組成物の安定性である。多くのこうした組成物は、室温で、またはその付近で硬化を始めるか、または、部分的に室温で硬化し、取扱い困難を引き起こす粘度増加および重合性組成物または接着性組成物の機能低下をもたらす。
【0003】
ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリテトラフルオロエチレン等の低界面エネルギーオレフィンは、おもちゃ、自動車部品および家具用途等の種々の使用における多様な魅力的な特性を有する。これらのプラスチック材料の低界面エネルギーのため、これらの材料に結合する接着剤組成物を見出すことは極めて困難である。これらのプラスチック用に用いられる市販の接着剤は、接着剤が表面に結合する前に時間のかかる広範な表面前処理を必要とする。こうした前処理には、コロナ処理およびフレーム処理が含まれる。表面の広範な前処理のための要求事項は、自動車部品、おもちゃ、および家具の設計者に対して重大な制限をもたらす。必要とされる物は、広範なまたは高価な前処理の必要がなく、低界面エネルギー基板に結合すると共に、低界面エネルギー基板を他の基板に結合できる接着剤組成物である。
【0004】
モッタス(Mottus)らの米国特許第3,275,611号には、有機ボラン化合物、過酸素化合物およびアミンを含む触媒によりオレフィン化合物を重合させるための方法が開示されている。有機ボラン化合物およびアミンは個別にまたは予備形成錯体として反応混合物に添加することが可能であること、および錯体が好ましいことが開示されている。錯体中のアミンの存在は空気中での有機ボランの発火性を低下させる。開示されているアミン錯化剤には、ピリジン、アニリン、トルイジン、ジメチルベンジルアミン、およびニコチンが挙げられる。モッタスに開示されている錯体の多くは、すべてのアミン対ホウ素原子比で自然性である。加えて、アミン錯体の多くは、低界面エネルギー基板に塗布される場合、有意な接着特性を示さない。
【0005】
スコウルチ(Skoultchi)に発行された一連の特許(米国特許第5,106,928号、第5,143,884号、第5,286,821号、第5,310,835号および第5,376,746号)には、アクリル接着剤組成物において有用な二部型開始剤系が開示されている。二部型系の第1部は安定な有機ボラン・アミン錯体を含み、第2部は有機酸またはアルデヒド等の不安定剤または活性剤を含む。錯体の有機ボラン化合物は、C1〜10アルキル基またはフェニル基から選択することができる三つの配位子を有する。開示されている有用なアミンには、オクチルアミン、1,6−ジアミノヘキサン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレンジアミン、1,3−プロピレン・ジアミン、および1,2−プロピレン・ジアミンが挙げられる。接着剤組成物は、スピーカー磁石、金属対金属結合、自動車ガラス対金属結合、ガラス対ガラス結合、回路基板部品結合、精選されたプラスチックの金属への結合、ガラス対木材等の構造用および半構造用接着剤用途において、および電気自動車磁石用に有用であると開示されている。
【0006】
ザロフ(Zharov)らは、一連の米国特許(米国特許第5,539,070号;米国特許第5,690,780号;および米国特許第5,691,065号)において、有機ボラン・アミン錯体が硬化を開始するために用いられる接着剤として特に有用である重合性アクリル組成物を開示している。用いられる有機ボランは、C1〜10アルキル基およびフェニル基から選択されるボラン原子に結合される三つの配位子を有する。アミンは、アルカノールアミン、第1のアミン基が第1級または第2級アミンであり得て、第2のアミン基が第1級アミンかまたは芳香族置換アルキルアミンである直鎖アルキルジアミンである。これらの錯体は、低界面エネルギー基板に結合する接着剤の重合を開始するために最適であることが開示されている。
【0007】
ポシウス(Pocius)は、一連の特許(米国特許第5,616,796号;米国特許第5,621,143号;米国特許第5,681,910号;米国特許第5,686,544号;米国特許第5,718,977号;および米国特許第5,795,657号)において、ポリオキシアルキレン・ポリアミンおよび2第1級アミンおよび第1級アミンと反応する少なくとも二つの基を有する化合物の反応生成物であるポリアミン等の多様なアミンを有するアミン有機ボラン錯体を開示している。ポシウスの米国特許第5,686,544号は、有機ボラン・ポリアミン錯体、ポリオールおよびイソシアネート脱錯化剤を含む組成物を開示している。錯体中の第1級アミン対ホウ素比は4:1〜1:1の間にあり、最も好ましくは1:1であることが開示されている。
【0008】
ザロフ、スコウルチおよびポシウス特許において開示されている錯体の多くは、室温またはその付近の温度で、オレフィン不飽和を含有する組成物中で安定でなく、従って、錯体は、室温またはその付近の温度で、経時的に解離し重合を誘発する。室温またはその付近の温度でのこの不安定性は、望まれる前での重合をもたらすことができるし、望ましい使用に適していない組成物をもたらすことができる。更に、組成物は、一般に、一方の側が樹脂側であり、他の側が硬化剤である二部型組成物である。一つの側(硬化剤)は有機ボラン錯体を含有し、他は脱錯化剤を含有する。たいていの場合、二部型の体積比は有意に異なる、すなわち、4:1より大きく、多くの場合10:1より大きい。問題は、二部型組成物を分配するように設計された最も商業的な装置が4:1以下の比を用いることである。これらの組成物をこうした装置の中で作動させるために、樹脂または非反応性成分が適する体積比を得るために一つの側または他の側に添加される。問題は、樹脂が錯体を含有する側に添加される場合、混合物が不安定であり、室温で硬化を始め、組成物を無用なものにしてしまうことがあり得るであろうことである。過剰な不活性材料が硬化剤側に添加される場合、不活性成分は可塑剤として作用するかまたは弱い連続相を創造し、重合化組成物の特性にマイナスの影響を与えることができる。
【0009】
重合後、先行技術の組成物の多くは、室温またはその付近の温度で、優れた安定性、強度および接着性を示すが、しかし、高温では、有意な高い温度での強度および接着性の損失を受ける。これは、これらの接着剤を用いて結合された基板を用いることができる環境を限定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,275,611号
【特許文献2】米国特許第5,106,928号
【特許文献3】米国特許第5,143,884号
【特許文献4】米国特許第5,286,821号
【特許文献5】米国特許第5,310,835号
【特許文献6】米国特許第5,376,746号
【特許文献7】米国特許第5,539,070号
【特許文献8】米国特許第5,690,780号
【特許文献9】米国特許第5,691,065号
【特許文献10】米国特許第5,616,796号
【特許文献11】米国特許第5,621,143号
【特許文献12】米国特許第5,681,910号
【特許文献13】米国特許第5,686,544号
【特許文献14】米国特許第5,718,977号
【特許文献15】米国特許第5,795,657号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、要求時硬化ポリマー系を形成するために、または要求時に硬化する接着剤系において用いることができる、自然性でなく取扱い上安全であるフリーラジカル重合用の開始剤系のための必要性がある。更に必要とされるものは、低界面エネルギー基板に結合することができる接着剤系、およびこうした結合を容易にする開始剤系である。こうした必要性に加えて、錯体は熱的に安定であることが必要である、すなわち、室温またはその付近の温度で解離せず、それによって望まれる前に重合を開始しない。更に、必要とされるものは、室温またはその付近の温度で熱的に安定であり、使用者が欲する時に重合を行うポリマー組成物および接着剤系である。4:1以下の混合比で既存の商業装置において用いることができるさらなる組成物が必要とされる。高温での安定性、強度および接着性を有する組成物が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1部において有機ボラン・アミン錯体を、および第2部においてアミン窒素原子対ホウ素原子の比率が4.0:1.0より大きい有機ボラン錯体を脱錯化できるイソシアネートを含むフリーラジカルに晒された場合に硬化する、1以上の重合性モノマーの硬化を開始するために有用な二部型組成物である。
【0013】
別の態様において、本発明は、
部分1、a)アミン窒素原子対ホウ素原子の比率が4.0:1より大きい有機ボラン・アミン錯体;および
部分2、b)フリーラジカル重合による重合が可能であるオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマー、を含む二部型重合性組成物である。好ましい態様において、第2部(部分2)は、更に、部分1の錯体が解離することを引き起こし、ボランを開放してオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマーの重合を開始させるイソシアネートの有効量を含む。この態様において、脱錯化剤および錯体は早すぎる反応を防止するために別の部に保持される。
【0014】
本発明は、また、1以上のモノマー、オリゴマー、またはポリマーが重合を行うような条件下で重合性組成物の成分を接触させることを含む重合の方法である。一つの態様において、接触は室温またはその付近の温度で起こる。別の態様において、本方法は、更に、アミンおよびイソシアネートが更に反応することが可能であるような条件下の高温に重合化組成物を加熱する段階を含む。これは、重合化組成物の温度耐性を改善することができる。
【0015】
なお別の態様において、本発明は、重合が開始され;重合性組成物を2以上の基板と接触させ;重合性組成物が2以上の基板の間に置かれるように2以上の基板を位置付けし;および重合性組成物が重合し2以上の基板を一緒に結合することを可能とするような条件下で重合性組成物の成分を一緒に接触させることを含む、2以上の基板を一緒に結合する方法である。
【0016】
なお別の態様において、本発明は、
a)アミン窒素原子対ホウ素原子の比率が4.0:1より大きい有機ボラン・アミン錯体;および
b)フリーラジカル重合による重合が可能であるオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマー、を含む組成物を基板の1以上の表面と接触させ、皮膜を加熱して皮膜の硬化を開始することを含む基板組成物を被覆する方法である。
【0017】
別の態様において、本発明は、皮膜組成物が
a)アミン窒素原子対ホウ素原子の比率が4.0:1より大きい有機ボラン・アミン錯体;および
b)フリーラジカル重合による重合が可能であるオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマー;および
c)脱錯化剤、を含む、基板を被覆する方法である。
【0018】
なお別の態様において、本発明は、
a)アミン窒素原子対ホウ素原子の比率が4.0:1より大きい有機ボラン・アミン錯体;および
b)フリーラジカル重合による重合が可能であるオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマー、を含む組成物を基板の間に分配し、それぞれの基板に結合させた二つの基板を含む積層板である。
【0019】
こうした積層板における組成物は、更に、脱錯化剤を含むことが可能である。
【0020】
なお別の態様において、本発明は、
部分1、a)有機ボラン・アミン錯体;および
部分2、b)フリーラジカル重合による重合が可能であるオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマー、
c)錯体が解離することを引き起こし、それによってボランが開放されて、オレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマーの重合を開始させる化合物の有効量であって、錯体の解離を引き起こす該化合物は重合開始を必要とするまで錯体から離されて保持される;および
d)該材料を部分1、部分2のいずれかまたは両方の部分中に置くことができる、基板への接着性が維持されるように重合反応熱を管理する材料、を含む二部型重合性組成物である。
【0021】
本発明の錯体は取扱い上安全であり、すなわち、自然性でなく、室温またはその付近の温度で安定しており、従って、錯体が解離することを引き起こす開始剤がないと室温またはその付近の温度で重合を開始しない。本発明の高分子組成物は、室温またはその付近の温度で安定しており、錯体を錯体の解離を引き起こす化合物と接触させるか、または代りに高分子組成物を錯体の熱解離温度を超えて加熱することにより、要求時に硬化することができる。更に、本発明の重合性組成物は、プライマーまたは表面処理の必要性なしで、低界面エネルギー基板への良好な結合を形成することができる。これらの重合性組成物は、接着剤、塗料として用いることができるし、基板を一緒に積層するために用いることができる。本発明の錯体および重合性組成物は、二部型の体積比が4.0:1以下で商業用装置において調合されるように配合することが可能である。重合化組成物は高温での優れた皮膜引張強度および接着剤強度を示し、従って、高温での優れた安定性を示す。
【0022】
[1] フリーラジカルに晒された場合に硬化する1以上の重合性モノマーの硬化を開始するために有用な二部型(two-part)組成物であって、該組成物は第1部において有機ボランアミン錯体を、および第2部においてアミン窒素原子対ホウ素原子の当量比が4.0:1より大きい有機ボラン錯体を脱錯化(decomplexing)できるイソシアネートを含む二部型組成物。
【0023】
[2] 有機ボランがトリアルキルボランまたはアルキルシクロアルキルボランを含み、アミンが第1級アミン;第2級アミン;第1級または第2級アミンまたは両方を有するポリアミン;アンモニア;ポリオキシアルキレン・アミン;反応生成物が末端アミン基を有する、ジアミンおよびアミンと反応する部分を有する2官能性化合物の反応生成物;アリール・アミン;ヘテロ環式アミン;アミジン構造成分を有する化合物;ヘテロ環化合物が、また、ヘテロ環中に1以上の追加の第2または第3窒素原子、酸素原子、硫黄原子、または二重結合を含有することが可能であるヘテロ環式環中に少なくとも一つの第2窒素を有する脂肪族ヘテロ環;アミン部分を含有する1以上の置換基を脂環式環に結合した脂環式化合物;共役イミンまたはそれらの混合物を含む、[1]に記載の二部型組成物。
【0024】
[3] a)アミン窒素原子対ホウ素原子の比率が4.0:1より大きい有機ボランアミン錯体;および
b)フリーラジカル重合による重合が可能であるオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマー、を含む重合性組成物。
【0025】
[4] 部分1、a)アミン窒素原子対ホウ素原子の比率が4.0:1より大きい有機ボランアミン錯体;および
部分2、b)フリーラジカル重合による重合が可能であるオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマー、およびc)錯体が解離することを引き起こし、ボランを開放してオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマーの重合を開始させるイソシアネートの有効量、を含む二部型重合性組成物であって、錯体の解離を引き起こす化合物は、重合の開始が必要とされるまで、錯体から離して保持される。
【0026】
[5] 1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマーが重合を行うような条件下で、[4]に記載の重合性組成物の成分を接触させることを含む重合の方法。
【0027】
[6] 更に、アミンおよびイソシアネートが更に反応することが可能であるような条件下で、組成物を高温に加熱する段階を含む[5]に記載の方法。
【0028】
[7] a.重合が開始されるような条件下で[4]に記載の組成物の成分を一緒に接触させ;
b.接着剤組成物を2以上の基板と接触させ;
c.それらが互いに接触する2以上の基板の間に接着剤組成物が置かれるように2以上の基板を位置付け;および
d.接着剤が2以上の基板を一緒に結合するように硬化することを可能とすること、を含む2以上の基板を一緒に結合する方法。
【0029】
[8] 更に、接着剤組成物をアミンおよびイソシアネートが更に反応するような温度に加熱することを含む[7]に記載の2以上の基板を結合する方法。
【0030】
[9] [4]に記載の組成物を低界面エネルギーポリマーの少なくとも表面の第1部と接触させ、錯体の解離を引き起こしそれによって形成されるポリマーが低界面エネルギーポリマーの表面上にあるようにモノマー、オリゴマー、ポリマーまたはそれらの混合物の重合を開始することにより、低界面エネルギーポリマーの表面を変性する方法。
【0031】
[10] 部分1、a)アミン窒素原子対ホウ素原子の比率が4.0:1より大きい有機ボラン・アミン錯体;および
部分2、b)フリーラジカル重合による重合および皮膜を加熱して皮膜の硬化を開始することが可能であるオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマー、を含む組成物を接触させることを含む基板組成物を被覆する方法。
【0032】
[11] [4]に記載の組成物の成分を接触させ;接触した組成物を基板の1以上の表面と接触させ;および皮膜組成物が硬化することを可能とすることを含む基板を被覆する方法。
【0033】
[12] [4]に記載の組成物を含む皮膜組成物。
【0034】
[13] [4]に記載の組成物を基板の間に分配し、各基板に結合した少なくとも二つの基板を含む積層板。
【0035】
[14] 部分1、a)有機ボランアミン錯体;および
部分2、b)フリーラジカル重合による重合が可能であるオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマー、
c)錯体が解離することを引き起こし、それによってボランを開放してオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマーの重合を開始させる化合物の有効量であって、錯体の解離を引き起こす該化合物は重合の開始が必要とされるまで錯体から離して保持される;および
d)該材料を部分1、部分2のいずれかまたは両部中に置くことができる、基板への接着性が維持されるように重合反応熱を管理する材料、を含む二部型重合性組成物。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】アミン対ホウ素原子比の関数としての接着剤のラップ剪断強度を示す。
【図2】種々のアミン窒素対ホウ素原子比での接着剤の硬化速度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
錯体中に用いられる有機ボランは、トリアルキルボランまたはアルキルシクロアルキルボランである。好ましくは、こうしたボランは式1に相当する:
【化1】

式中、Bはホウ素を表し;R2は各存在で個別にC1〜10アルキル、C3〜10アルキル基であるか、または2以上のR2は組み合わさって脂環式環を形成することが可能である。好ましくは、R2はC1〜4アルキル、なお更に好ましくはC2〜4アルキル、および最も好ましくはC3〜4アルキル基である。好ましい有機ボランには、トリ−エチルボラン、トリ−イソプロピルボランおよびトリ−n−ブチルボランが挙げられる。
【0038】
熱的に安定な重合性組成物を調製するために、室温またはその付近の温度で解離しない熱的に安定な錯体が必要とされる。こうした錯体の調製に対する鍵は、アミンの選択である。有機ボラン・アミン錯体中の所定アミン使用の必要性は、結合エネルギーとして知られるルイス酸系錯体と、単離ルイス酸(有機ボラン)および塩基(アミン)のエネルギーの合計間のエネルギー差から計算することができる。結合エネルギーがより高く(更にマイナスに)なるほど、錯体は一層安定になる。結合エネルギー=−(錯体エネルギー−(ルイス酸のエネルギー+ルイス塩基のエネルギー))
【0039】
こうした結合エネルギーは、最初からハートリー・フォック法等の理論的方法および3−21G基底系を用いて計算することができる。これらの計算法は、シリコン・グラフィックス(Silicon Graphics)社ワークステーションを有するスパルタン(SPARTAN)およびガウシアン(GAUSSIAN)98プログラム等の市販ソフトウエアおよびハードウエアを用いて、商業的に使用できる。モル当り10キロカロリー以上のアミン有機ボラン結合エネルギーを有するアミンが好ましく、モル当り15キロカロリー以上の結合エネルギーを有するアミンが更に好ましく、なお更に好ましいものはモル当り20キロカロリー以上の結合エネルギーを有するアミンである。本発明の組成物の重合が脱錯化剤の使用により開始される態様において、アミンの有機ボランに対する結合エネルギーは、好ましくは50kcal/モル以下、最も好ましくは30kcal/モル以下である。本発明の組成物の重合が熱の使用により開始される態様において、アミンの結合エネルギーは、好ましくは100kcal/モル以下、更に好ましくは80kcal/モル以下、最も好ましくは50kcal/モル以下である。
【0040】
有機ボラン化合物を錯化するために用いられるアミンは、有機ボランを錯化すると共に、脱錯化剤に晒される時に脱錯化することができるあらゆるアミンまたはアミン混合物であることができる。好ましいアミンには、ザロフ米国特許第5,539,070号の5欄41〜53行、スコウルチ米国特許第5,106,928号の2欄29〜58行、およびポシウス米国特許第5,686,544号の7欄29行〜10欄行に開示されている第1級または第2級アミン基、またはアンモニア;エタノールアミン、第2級ジアルキル・ジアミンまたはポリオキシアルキレンポリアミン;およびデビニー(Deviny)米国特許第5,883,208号の7欄30行〜8欄56行に開示されているジアミンと、アミンと反応する2以上の基を有する化合物とのアミン末端反応生成物が挙げられる。デビニーに記載されている反応生成物に関して、好ましい2第1級アミンには、アルキル・2第1級アミン、アリール・2第1級アミン、アルキアリール・2第1級アミンおよびポリオキシアルキレン・ジアミンが挙げられ;およびアミンと反応する化合物には、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸ハロゲン化物、アルデヒド、エポキシド、アルコールおよびアクリル酸塩基の2以上の基を含有する化合物が挙げられる。好ましいアミンには、n−オクチルアミン、1,6−ジアミノヘキサン(1,6−ヘキサン・ジアミン)、ジエチルアミン、ジブチル・アミン、ジエチレン・トリアミン、ジプロピレン・ジアミン、1,3−プロピレン・ジアミン(1,3−プロパン・ジアミン)、1,2−プロピレン・ジアミン、1,2−エタン・ジアミン、1,5−ペンタン・ジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタン・ジアミン、3−メチル−1,5−ペンタン・ジアミン、トリエチレン・テトラアミン、ジエチレン・トリアミンが挙げられる。好ましいポリオキシアルキレン・ポリアミンには、ポリエチレンオキシド・ジアミン、ポリプロピレンオキシド・ジアミン、トリエチレン・グリコール・プロピレンジアミン、ポリテトラメチレンオキシド・ジアミンおよびポリエチレンオキシドコポリプロピレンオキシド・ジアミンが挙げられる。
【0041】
一つの好ましい態様において、アミンは、第1級アミンと水素結合受容基の間に少なくとも2個の炭素原子、好ましくは少なくとも3個ある、第1級アミンおよび1以上の水素結合受容基を有する化合物を含む。好ましくは、アルキレン部分は第1級アミンと水素受容基の間に置かれる。水素結合受容基は、本明細書において、ボラン錯化性アミンの水素との分子間または分子内相互作用のいずれかを通して、ボランと錯化するアミン基の窒素の電子密度を増大させる官能基を意味する。好ましい水素結合受容基には、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、エーテル、ハロゲン、ポリエーテル、チオフェンおよびポリアミンが挙げられる。好ましい態様において、アミンは式2に相当する:
【化2】

式中:R1は各存在で個別に水素、C1〜10アルキル、C3〜10アルキル基であるか、または2以上のR1は1以上の環式環を有することが可能である環式環構造を形成することが可能であり;Xは水素結合受容部であり;aは1〜10の整数であり;およびbは各存在で個別に0〜1の整数であり、aおよびbの合計は2〜10である。好ましくは、R1は水素、メチル基であるか、または2以上のR1は組み合わさって5または6員環式環を形成する。好ましい態様において、Xは、水素受容部分がアミンである場合それは第3級または第2級アミンであることを前提にしての水素受容部分である。更に好ましくは、Xは各存在で個別に−N(R8c、−OR10、−SR10またはハロゲンである。R8は各存在で個別にC1〜10アルキル、C3〜10シクロアルキル、−(C(R12d−W基であるか、または二つのR8は組み合わさって1以上の環式環を有する構造を形成することが可能である。R10は各存在で個別にC1〜10アルキル、C3〜10シクロアルキル、または−(C(R12d−W基である。Eは各存在で個別に0、1、または2であり、最も好ましくは、eは2である。更に好ましくは、Xは−N(R82または−OR10である。好ましくは、R8およびR10はC1〜4アルキルまたは−(C(R12d−W、更に好ましくはC1〜4アルキル、最も好ましくはメチル基である。Wは各存在で個別に水素またはC1〜10アルキル基またはX、更に好ましくは水素またはC1〜4アルキル基である。好ましくは、aは1以上更に好ましくは2以上である。好ましくは、aは6以下、最も好ましくは4以下である。好ましくは、bは1である。好ましくは、aおよびbの合計は整数2以上、最も好ましくは3以上である。好ましくは、aおよびbの合計は6以下、最も好ましくは4以下である。好ましくは、dは各存在で個別に1〜4、更に好ましくは2〜4、最も好ましくは2〜3の整数である。式2に相当する好ましいアミンには、ジメチルアミノプロピル・アミン、メトキシプロピル・アミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノブチルアミン、メトキシブチル・アミン、メトキシエチル・アミン、エトキシプロピルアミン、プロポキシプロピルアミン、アミン末端ポリアルキレン・エーテル(トリメチロールプロパン・トリス(ポリ(プロピレングリコール)、アミン末端)エーテル等)、およびアミノプロピルプロパンジアミンが挙げられる。
【0042】
一つの態様において、好ましいアミン錯体は式3に相当する:
【化3】

式中、R1、R2、X、aおよびbは上に定義された通りである。
【0043】
別の態様において、アミンはヘテロ環中に少なくとも一つの窒素を有する脂肪族ヘテロ環である。ヘテロ環化合物は、また1以上の窒素、酸素、硫黄または二重結合を含有することが可能である。加えて、ヘテロ環は、少なくとも一つの環が環中に窒素を有する多環を含むことが可能である。好ましくは、脂肪族ヘテロ環式アミンは式4に相当する:
【化4】

式中:R3は各存在で個別に水素、C1〜10アルキルC3〜10シクロアルキル基であるか、または隣接原子と二重結合を形成する。R4’は各存在で個別に水素、C1〜10アルキル基であるか、またはR3、ZまたはZ上の置換基と環式環を形成する。Zは各存在で個別に硫黄、酸素または−NR4である。R4は各存在で個別に水素、C1〜10アルキル、またはC6〜10アリールまたはC7〜10アルカリール基である。Xは、すべての存在のxの合計が2〜10であるべきとの前提の上で、各存在で個別に1〜10の整数である。Yは各存在で個別に0または1である。2以上のR3、R4、およびR4’は組み合わさって環式環を形成し、それによって多環式化合物を形成することが可能である。好ましくは、R3は各存在で個別に水素、メチル基であるか、または隣接原子と二重結合を形成する。好ましくは、ZはNR4である。好ましくは、R4は水素またはC1〜4アルキル基、更に好ましくは水素またはメチル基である。好ましくは、R4’は水素またはC1〜4アルキル基、更に好ましくは水素またはメチル基、最も好ましくは水素である。好ましくは、xは1〜5であり、すべての存在のxの合計が3〜5である。式4に相当する好ましい化合物には、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、1,3,3トリメチル6−アザビシクロ[3,2,1]オクタン、チアゾリジン、ホモピペラジン、アジリジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、3−ピロリンおよびアミノプロピル・モルホリンが挙げられる。脂肪族ヘテロ環式アミンを含有する錯体は、好ましくは、式5に相当する:
【化5】

式中、R2、R3、R4’、Z、xおよびyは上に定義された通りである。
【0044】
なお別の態様において、有機ボランと錯体化されるアミンはアミジンである。アミジンが有機ボランとの上述の十分な結合エネルギーを有するアミジン構造を有するあらゆる化合物は用いることが可能である。好ましいアミジン化合物は式6に相当する:
【化6】

式中:R5は各存在で個別に水素、C1〜10アルキル、またはC3〜10シクロアルキル基である。R6は各存在で個別に水素、C1〜10アルキル、C3〜10シクロアルキル基またはN(R52である。2以上のR5、R6、およびR7はあらゆる組合せで組み合わさって1以上の環を有することが可能である環構造を形成することが可能である。好ましくは、R5は各存在で個別に水素、C1〜4アルキルまたはC5〜6シクロアルキル基である。好ましくは、R6は各存在で個別に水素、C1〜4アルキルまたはC5〜6シクロアルキル基またはN(R52である。更に好ましくは、R6は各存在で個別にC1〜4アルキルまたはC5〜6シクロアルキル基またはN(R52である。好ましくは、R7は各存在で個別に水素、C1〜10アルキル、C3〜10シクロアルキル基または環構造の一部である。最も好ましくは、R7は水素、メチル基または環式環の一部である。2以上のR5、R6、およびR7が組み合わさって環構造を形成する態様において、環構造は、好ましくは、単一または二重環構造である。好ましいアミジンには、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,8−ジアゾビシクロ[5,4]ウンデ−7セン;テトラヒドロピリミジンおよび2−メチル−2−イミダゾリンが挙げられる。
【0045】
有機ボラン・アミジン錯体は、好ましくは、式7に相当する:
【化7】

式中、R2、R5、R6およびR7は前に定義された通りである。
【0046】
なお別の態様において、有機ボランと錯体化されるアミンは共役イミンである。イミンが有機ボランとの上に記載される十分な結合エネルギーを有する共役イミン構造を有するあらゆる化合物は、用いることが可能である。共役イミンは、直鎖または分岐鎖イミンまたは環式イミンであることができる。好ましいイミン化合物は式8に相当する:
【化8】

式中、Yは各存在で独立に水素、N(R42、OR4、C(O)OR4、ハロゲン、R7またはR9と環式環を形成するアルキレン基である。R9は各存在で独立に水素、Y、C1〜10アルキル、C3〜10シクロアルキル−、C(R92−(CR9=CR9c−Yであるか、または2以上のR9は、Y中の電子リッチ基がイミン窒素の二重結合に関して共役化される場合、組み合わさって環構造を形成することができ;cは1〜10の整数である。好ましくは、R9は水素またはメチル基である。Yは、好ましくは、N(R42、SR4、OR4、またはR9と環式環を形成するアルキレン基である。Yは、更に好ましくは、N(R42またはR9と環式環を形成するアルキレン基である。好ましくは、cは1〜5の整数、最も好ましくは1である。本発明において、有用な好ましい共役イミンには、4−ジメチルアミノピリジン;2,3−ビス(ジメチルアミノ)シクロプロペンイミン;3−(ジメチルアミノ)アクロレインイミンおよび3−(ジメチルアミノ)メタクロレインイミンが挙げられる。
【0047】
好ましい環式イミンには、以下の構造に相当するものが挙げられる:
【化9】

共役イミンとの錯体は、好ましくは、式9に相当する:
【化10】

式中、R2、R7、R9、cおよびYは上に定義された通りである。
【0048】
別の態様において、アミンはアミン部分を含有する置換基を脂環式環に結合した脂環式化合物であることができる。アミン含有脂環式化合物は、1以上の窒素、酸素、硫黄原子または二重結合を含有する第2置換基を有することが可能である。脂環式環は一つまたは二つの二重結合を含有することができる。脂環式化合物は単一または多環構造であることが可能である。好ましくは、第1置換基上のアミンは第1級または第2級である。好ましくは、脂環式環は5または6員環である。好ましくは、第2置換基上の官能基はアミン、エーテル、チオエーテルまたはハロゲンである。好ましい態様において、1以上のアミン含有置換基を有する脂環式化合物は式10に相当する:
【化11】

式中、R3、X、bおよびxは上に記載された通りである。アミン置換脂環式化合物に含まれるものには、イソフォロンジアミンおよびビス(アミノエチル)シクロヘキサンがある。
【0049】
アミン置換脂環式化合物を用いる錯体は式11に相当する。
【化12】

式中、R2、R3、X、bおよびxは上に定義された通りである。
【0050】
錯体中のアミン化合物(複数を含む)対ボラン化合物の当量比は、比較的重要である。過剰のアミンは、本明細書において記載される樹脂側と重合性組成物の硬化剤側の体積のバランスをとることを可能とするために好ましい。アミン含量が増えれば増えるほど、有機ボラン・アミン錯体は一層安定する。また、アミンは脱錯化剤と反応して熱的に安定な尿素、ポリ尿素またはポリ尿素/ウレタンを生成する。好ましくは、アミン化合物対有機ボラン化合物の当量比は4.0:1.0以上である。更に好ましくは、アミン化合物対有機ボラン化合物の当量比は、4.0:1.0より大きく、なお更に好ましくは5.0:1.0以上、最も好ましくは6.0:1以上である。アミン量の上限は、実用性、アミンとイソシアネート脱錯化剤の反応により発生する熱の量、および上述のように存在する脱錯化剤の量に基づく。更に好ましくは、アミン化合物対有機ボラン化合物の当量比は20.0:1.0以下、最も好ましくは16.0:1.0以下である。
【0051】
本発明の重合組成物中に用いることが可能である重合性化合物には、フリーラジカル重合により重合することができるオレフィン不飽和を含有する、あらゆるモノマー、オリゴマー、ポリマーまたはそれらの混合物が挙げられる。こうした化合物は当業者には周知である。モッタス(Mottus)米国特許第3,275,611号には、欄2、46行〜欄4、16行にこうした化合物の記載が提供されている。オレフィン不飽和を含有する好ましい部類の化合物には、アクリル酸塩およびメタクリル酸塩から誘導されるモノマー、オリゴマー、ポリマーおよびそれらの混合物;オレフィン不飽和炭化水素、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1−オクテン、1−ドデセン、1−ヘプタデセン、1−エイコセン;スチレン、ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、ビニルナフチレン、アルファメチルスチレン等のビニル化合物;ハロゲン化ビニルおよびビニリデン;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル;酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル;ビニルオキシエタノール;トリメチル酢酸ビニル;ビニルヘキソネート;ラウリン酸ビニル;クロロ酢酸ビニル;ステアリン酸ビニル;メチルビニルケトン;ビニルイソブチルエーテル;ビニルエチルエーテル;ブタジエン、2−クロロブタジエンおよびイソプレン等の共役二重結合を有するもの等の複数のエチレン性結合を有する化合物が挙げられる。好ましいアクリル酸塩およびメタクリル酸塩の例は、スコウルチ米国特許第5,286,821号、欄3の50行〜欄6の12行、およびポシウス米国特許第5,681,910号欄9の28行〜欄12の25行に開示されている。更に好ましいオレフィン化合物は、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシ、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸エチル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリルアミド、n−メチルアクリルアミド、および他の類似のアクリル酸含有モノマーを含む。また、有用なものには、いくつかの供給会社から市販されており、ヒドロキシアクリレート等のイソシアネート反応性アクリル酸塩モノマー、オリゴマーまたはポリマーを、イソシアネート官能性プレポリマーと反応させることにより調製されるアクリレート付きポリウレタン・プレポリマーの部類が挙げられる。
【0052】
組成物が接着剤として用いられる態様において、好ましくは、アクリル酸塩および/またはメタクリル酸塩系化合物が用いられる。最も好ましいアクリル酸塩および/またはメタクリル酸塩化合物には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、およびメタクリル酸シクロヘキシルメチルが挙げられる。
【0053】
好ましくは、本発明の重合化組成物は、高温耐性を示すポリマーを形成することができる。高温耐性とは、ポリマーが高温で認められるほどに軟化せず、劣化しないことを意味する。好ましくは、ポリマーはそれらの期待される最大使用温度を10℃超える温度に耐えることができる。好ましくは、こうした使用温度は60℃以上、更に好ましくは90℃以上である。高温耐性を有するポリマーを調製する好ましいモノマーには、メタクリル酸メチル(MMA)、およびメタクリル酸イソボルニルがある。好ましい高温ポリマーには、sPMMA(シンジオタクチック・ポリメタクリル酸メチル)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ポリメタクリル酸イソボルニル、ポリアクリルアミドおよび架橋(メタ)アクリルポリマーが挙げられる。
【0054】
本発明の組成物は、更に、有機ボランを遊離し、重合を開始するために錯体化アミンと反応するイソシアネート含有化合物(脱錯化剤)の有効量を含む。アミン反応性化合物はアミンと反応することにより有機ボランを遊離し、それによって有機ボランをアミンとの化学結合から取り外す。望ましい脱錯化剤は、簡単に用いられ、室温下で硬化することができる組成物を提供するために、室温またはそれ未満で、更に好ましくは室温、すなわち、20〜22℃で容易に反応生成物を形成することができるようなイソシアネートである。好ましくは、存在するイソシアネート含有化合物の量は、組成物中に存在する有機ボラン・アミン錯体が脱錯化を引き起こすために十分な量である。好ましくは、存在するアミン全部と反応するに十分なイソシアネート含有化合物が存在する。過剰アミンは形成されたポリマーを可塑化し、その結果形成されたポリマーの特性を弱めることができる。好ましくは、過剰のイソシアネートは、有機ボラン・アミン錯体中の活性水素(一般的に、第1級および第2級アミンおよびヒドロキシ基)の遊離全体量を基準にして存在する。好ましくは、イソシアネート当量対アミン当量比は、本明細書において用いられるように1.0:1.0以上、更に好ましくは1.1:1.0以上、最も好ましくは1.25:1以上であり、これは存在するあらゆる遊離アミン、および錯体化アミンを指す。イソシアネート含有化合物は、組成物中に存在するアミンと反応して尿素、ポリ尿素またはポリウレタン/尿素相を形成する。過剰のイソシアネート含有化合物が用いられる場合、得られる製品中には遊離アミンはほとんどまたは全く存在しない。遊離アミンの存在を排除することによりアミンの可塑化効果は防止される。更に、存在する尿素またはポリ尿素は得られる製品の熱耐性を改善する。好ましくは、得られる重合化製品中に存在する尿素またはポリ尿素の量は5重量%以上、更に好ましくは10%以上、最も好ましくは15%以上である。好ましくは、得られる重合化製品中に存在するポリ尿素の量は、50%以下、更に好ましくは45%以下、最も好ましくは40%以下である。尿素%は最終製品中の尿素/ウレタン相の重量%を意味する。これは、一般に、イソシアネートおよびアミン(および存在するあらゆる他のイソシアネート反応性化合物)の重量を加え、この合計値を成分の全体重量で割ることにより決定することができる。
【0055】
一つの態様において、本発明のポリマーまたは接着剤配合物は、更に、1を越える、好ましくは2以上のイソシアネートと反応する部分を有する1以上の化合物を含有することが可能である。一般に、アミンに加えて、活性水素原子を含有する部分はイソシアネート基と反応し、こうした部分にはヒドロキシル、カルボン酸塩、およびチオール部分が挙げられる。アミンの次に、更に好ましい活性水素部分はヒドロキシル部である。好ましいヒドロキシル含有化合物にはポリオールおよびアミノールがある。イソシアネートと反応するために有用なあらゆるポリオールは、用いることが可能である。好ましくは、第1級および第2級アミンは、イソシアネート含有化合物と反応するために存在する最適の化合物である。好ましくは、イソシアネート含有化合物は、有機ボラン・アミン錯体を脱錯化するあらゆるイソシアネート化合物である。好ましくは、イソシアネートは化合物当り名目上2以上のイソシアネート部分を有するポリイソシアネートである。有用なイソシアネート化合物は、デビニー米国特許第5,872,197号、欄4の57行〜欄5の65行に開示されている。更に好ましいイソシアネート含有化合物には、メチレン・ジフェニル・ジイソシアネート、イソフォロン・ジイソシアネート、ヘキサメチレン・ジイソシアネート、トルエン・ジイソシアネート、異性体またはビス・イソシアナートメチル・シクロヘキサンおよびテトラメチルキシリル・ジイソシアネートの高分子版が挙げられる。
【0056】
好ましくは、重合性組成物または接着剤中の重合性化合物の量は、全体組成物の重量に対して20重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、最も好ましくは40重量%以上である。好ましくは、重合性化合物の量は、95重量%以下、好ましくは90重量%以下、最も好ましくは85重量%以下である。組成物中に用いられる錯体の量は、一旦錯体が解離すれば重合を開始するために十分なあらゆる量であることができる。有機ボランのより高い濃度で、重合速度は、一般に、より高くなる。好ましくは、存在する有機ボラン錯体の量は、全体組成物の重量に対して0.02重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上のホウ素量を提供するために十分な量である。好ましくは、存在する有機ボラン錯体の量は組成物全体量に対して1重量%以下、好ましくは0.7重量%以下、最も好ましくは0.4重量%以下のホウ素量を提供するために十分な量である。
【0057】
好ましくは、存在するイソシアネートの量は、錯体化および遊離型両方の存在するアミンの当量に対して80当量%以上、更に好ましくは100当量%以上、最も好ましくは110当量%以上である。
【0058】
有機ボラン・アミン錯体は公知の技術を用いて容易に調製することが可能である。一般に、アミンは攪拌により不活性雰囲気中で有機ボランと混合される。多くの場合発熱が観察され、従って、混合物の冷却が薦められる。成分が高い蒸気圧を有する場合、反応温度を70℃〜80℃未満に保持することは望ましい。一旦材料が良好に混合されると、錯体は室温に冷却することが可能とされる。次に、溶媒は除去される。錯体が冷たく暗い場所で不活性雰囲気下キャップ付き槽中に保持されることは好ましいが、特別の保存条件は全く必要とされない。有利には、本発明の錯体は、それらがそう望まれる場合に溶媒中に調製することができるであろうが、後に除去しなければならないであろう有機溶媒なしで調製することができる。錯体の調製において用いられる溶媒は、好ましくは、アミンと配位結合しないものであるべきで、好ましい溶媒には、例えば、テトラヒドロフランまたはジエチルエーテル、またはヘキサンまたはヘプタン等の低分子量アルカンがある。
【0059】
本発明において有用な錯体は空気安定である。「空気安定」とは、錯体が室温(20℃〜22℃)、および他の周囲条件下(すなわち、真空下でなく、不活性雰囲気中でない)でキャップ付き槽中に保存される場合、錯体は、錯体が何ヶ月にもわたりこれらの条件下で容易に保存することは可能であるが、少なくとも2週間にわたり重合開始剤として有用なままで残ることを意味する。
【0060】
「空気安定」とは、また、錯体が自然性でないことを意味する(錯体の数滴を周囲条件下で紙タオル上に置く場合、紙タオルは発火しないし、黒く焦げないし、または煙を出さない)。錯体の空気安定性は、錯体が結晶材料である場合に強化される。しかし、本発明の錯体は、それらが液体である場合でさえ、少なくとも6ヶ月間にわたり空気安定である。液錯体は結晶錯体の場合よりも取扱いおよび混合がより簡単である。
【0061】
本発明の重合性組成物は二部型組成物である。一つの態様において、組成物は、1部が本発明の錯体を含有し、他部が脱錯化剤(開始剤)を含有する二部型組成物である。重合は組成物の二部型を接触させることにより開始される。重合は室温で、またはそれ未満でさえ開始することができる。開始または重合を加速するため、および存在するイソシアネート化合物の活性水素含有化合物との反応に役立つために、重合性組成物に熱をかけることが可能である。二部型組成物を用いるための主理由は、互いの存在下で不安定であり得る組成物の成分を離しておくことである。
【0062】
組成物の硬化を達成するために熱が用いられる態様において、組成物は、組成物中に用いられる錯体が分解して、次にフリーラジカル重合を開始する有機ボランを放出する温度以上の温度に組成物を加熱する熱源に晒される。一般に、組成物は、モノマーが自然な重合を行う温度より低い温度に加熱される。錯体が解離を行う温度は、錯体の結合エネルギーに関係する。錯体のより高い結合エネルギーでは、重合を開始するためにより高い温度が必要とされる。
【0063】
錯体の結合エネルギーが高い場合、重合は熱的に開始することが可能である。組成物が重合を開始するために加熱される温度は、錯体の結合エネルギーにより決定される。一般に、錯体を脱錯化することにより重合を開始するために用いられる温度は、30℃以上、好ましくは50℃以上である。好ましくは、熱開始重合が開始される温度は、120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。熱源が組成物の成分またはその機能にマイナスの影響を与えない場合、組成物を必要温度まで加熱するあらゆる熱源を用いることができる。このように、組成物は、組成物が熱に晒される前または後のいずれかで基板と接触することが可能である。組成物が基板と接触する前に加熱される場合、組成物は、組成物がもはや基板に接着することができない点まで重合してしまう前に基板と接触することが好ましい。熱開始反応において、重合を抑制することなくラジカル形成に好ましい条件を造るために適切な酸素が存在するように酸素含量を制御することは、必要である場合がある。
【0064】
硬化を促進するために(開始剤に加えて)熱が用いられる場合、かけられる熱は直ぐにまたは遅れて(すなわち、室温での一部の硬化時間後に適用される)適用することができる。遅延加熱または硬化後加熱が用いられる場合、重合化組成物は、期待最大使用温度と同じかまたはそれよりわずかに高い温度にさらすことが可能である。好ましくは、十分な強度が室温で硬化化合物において達成された後、あらゆる遅延加熱が適用される。硬化を加速するために硬化性化合物に直ぐに熱をかける場合、次に、この熱は、好ましくは、有機ボラン・アミン錯体の解離温度未満かほぼ等しいものである。
【0065】
本発明の二部型重合性組成物または接着剤組成物は、独自に、二部型接着剤用の従来型の市販されている調合装置による使用に適合する。一旦二部型が混合されてしまうと、有用なポット・ライフ(開放時間)がモノマー混合、錯体の量、および結合が行われようとする温度に応じて短いことがあり得るので、組成物は速やかに用いることが好ましい。接着剤組成物は一つまたは両方の基板に塗布され、次に、基板は、好ましくは過剰の組成物を接合部外にはずすことを強いる圧力により一緒に接合される。一般に、接合は、組成物が塗布された後早めに、好ましくは10分以内になされることが好ましい。一般的な接合部の厚さは、0.005インチ(0.13mm)〜0.03インチ(0.76mm)である。本発明の組成物が接着剤およびギャップ充填剤の両方として機能することができるので、ギャップ充填が必要とされる場合、接合部はより厚くすることができる。接合法は室温で簡単に行うことができると共に、接合の程度を改善するために、温度を40℃未満、好ましくは30℃未満、最も好ましくは25℃未満に保持することは望ましい。
【0066】
接合部は妥当な圧粉体強度まで硬化して、0.5〜3時間内で接合成分の取扱いを可能とする。十分な強度は周囲条件下で24時間内に達成される。熱による後硬化は必要ならば用いることが可能である。オレフィン化合物の重合が開始されてから後、本発明の組成物は、ポリイソシアネートがイソシアネート反応性化合物と追加的に反応することを引き起こすための条件にさらすことが可能である。好ましくは、この反応は、ポリイソシアネートがイソシアネート反応性化合物と反応する温度に組成物をさらすことにより開始される。別の態様において、組成物はイソシアネートのイソシアネート反応性化合物との反応用の触媒を含有することが可能である。こうした触媒は技術上周知である。後硬化用の温度は、好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上、最も好ましくは35℃以上である。
【0067】
組成物は、更に、多様な任意の添加剤を含むことが可能である。一つの特に有用な添加剤は、組成物全体重量に対して10〜60重量%の量で組み込むことが可能である中〜高(10,000〜1,000,000)分子量ポリメタクリル酸メチル等の増粘剤である。増粘剤は組成物の粘度を増大させて組成物の塗布を容易にするために用いることが可能である。
【0068】
別の特に有用な添加剤にはエラストマー材料がある。本材料は、例えば、可撓性高分子基板等の他材料と同じように簡単には機械的にエネルギーを吸収しない金属基板等の堅く結合した高降伏強度材料の場合に有利であり得る、それと共に作製される組成物の破壊靱性を改善することが可能である。こうした添加剤は、組成物全体重量に対して5%〜35重量%の量で組み込むことができる。有用なエラストマー重合調整剤には、ハイパロン(HYPALON)30(デラウエア州、ウイルミントンのE.I.デユポン(E.I.Dupont de Nemours & Co.)から市販されている)等の塩素化またはクロロスルホン化ポリエチレン、およびスチレンおよび共役ジエンのブロックコポリマー(デキシコ・ポリマーズ(Dexco Polymers)から商品名ベクター(VECTOR)で、ファイアストン(Firestone)から商品名ステレオン(STEREON)で市販されている)が挙げられる。また、有用でなお更に好ましいものには、比較的堅い殻に包まれたゴムまたはゴム様芯または網状組織を含む粒子等のある種のグラフト共重合体樹脂があり、これらの材料は多くの場合「コア−シェル」ポリマーと呼ばれる。最も好ましいものには、ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)から市販されているアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体がある。組成物の破壊靱性を改善することに加えて、「コア−シェル」ポリマーは、また、非硬化組成物に対する強化された広がりおよび流動特性を与えることができる。これらの強化特性は、組成物が注射器型の塗布器から分配される際に望ましくない「ひも」、または垂直面に塗布された後の垂れまたは落ち込みを残す傾向が低下することにより明示することが可能である。「コア−シェル」ポリマー添加剤の20%を超える使用は、改善された垂れ−落ち込み耐性を達成するために望ましい。一般に、用いられるポリマーを強靭化する量は、調製されたポリマーまたは接着剤に所期の強靭性を与えるその量である。
【0069】
好ましい態様において、本発明の組成物は熱管理材料を含有する。重合の間熱を分散する機能を有するあらゆる材料は、用いることが可能である。有用な熱管理材料の例には、反応の間に発生する熱を吸収する結果として反応の間に蒸発する揮発性液体、発生熱を吸収することにより放熱板として機能する材料、および反応条件下で吸熱反応を経て反応する材料が挙げられる。放熱板として有用な材料には高熱容量を有する材料がある。高熱容量を有する材料の例には、セラミック粒子、ガラス玉、フルオロポリマー粉末、および中空球体が挙げられる。有用な液体材料には、塩素化アルカン、ジアルキル・エーテル、アルカン、塩化メチレンおよび低沸点石油エーテルが挙げられる。更に好ましい溶媒には、塩化メチレン、ジエチル・エーテル、ペンタンおよびヘキサンが挙げられる。用いられる熱管理材料の量は、標的反応温度および熱管理材料の熱容量に依存する。当業者は、容易に熱管理材料の必要量を決定することができる。反応熱は、また、混合速度を落とし、それによってより緩い熱発生を可能することにより影響を受けることができる。好ましくは、その機能時間帯にわたり接着剤の平均温度は、70℃以下、好ましくは60℃以下、最も好ましくは50℃以下の目標値に管理される。熱管理材料は配合物の樹脂側または硬化剤側のいずれかの上に置くことができる。熱管理材料の選択および熱管理材料の量は、重合の間に分散されることが必要とされる熱の量によって決められる。反応の間に発生する熱が長すぎる時間帯にわたり高くなりすぎる場合、基板に対する重合化組成物の接着性はマイナスの影響を受けることが可能である。有機ボラン・アミン錯体の脱錯化誘発熱の量を限定することは望ましい。錯体があまりにも急速に脱錯化する場合、接着性はマイナスの影響を受ける。熱管理材料が用いられる一つの態様において、窒素原子対ホウ素原子比はあらゆる実行可能な比率であることができる。更に、熱管理材料が用いられる場合、あらゆる公知の有機ボラン・アミン錯体および解離剤は用いることができる。
【0070】
別の有用な補助剤は架橋剤である。本発明のある種の組成物は外部からの追加架橋剤がなくてさえ良好な溶媒耐性を有するが、接着剤結合またはポリマー組成物の溶媒耐性を強化するために架橋剤を用いることができる。架橋剤は、使用温度および硬化ポリマーまたは接着剤の溶媒耐性を増大させることができる。一般的に組成物の全体重量に対して0.2〜10重量%の量で用いられるが、有用な架橋剤には、可能なアクリル変性モノマーとして上述の種々のジアクリレート、およびアクリレートおよびイソシアネート官能基両方を有する化合物ならびに他の材料が挙げられる。適する架橋剤の特定例には、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジエチレングリコール・ビスメタクリルオキシ・カーボネート、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジアクリル酸ジグリセロール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・トリス(2−メチル−1−)アジリジンプロピオネート、トリメチロールプロパン・トリメタクリレート、アクリレート付きポリウレタン含有プレポリマー、ポリエーテル・ジアクリレートおよびジメタクリル酸塩が挙げられる。
【0071】
過酸化物は、例えば、組成物が重合する速度を調整するかまたは重合を完遂させるために、場合により含むことが可能である(一般に、組成物の全体重量に対して2重量%以下の量で)。
【0072】
少量のヒンダード・フェノール(すなわち、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)等の抑制剤は、例えば、保存中のオレフィンモノマーの分解を防止するかまたは低減させるために用いることが可能である。抑制剤は、実質的に重合速度、またはそれと共に作製される接着剤または他の組成物の究極の特性を低下させない量、一般に重合性モノマーの重量に対して10〜10,000ppmで添加することが可能である。
【0073】
組成物は、また、イソシアネート反応性化合物とイソシアネート含有化合物との反応用の公知の触媒を含有することが可能である。こうした触媒は技術上周知であり、チャイオ(Chaio)米国特許第5,623,044号欄6の1行〜12行に開示されている。
【0074】
本発明の組成物は、商業的に許容可能な二つの成分の体積比を達成できるように、組成物の二部型の体積をバランスさせるために反応性または非反応性希釈剤を含有することが可能である。好ましくは、希釈剤は反応性希釈剤である。それらがポリイソシアネートと反応してポリ尿素および/またはポリウレタン相を形成するので、好ましい反応性希釈剤はイソシアネート反応性化合物である。この部類の添加物の代表は、低当量アルコール、アミン、アミノール、ポリアミン、ポリオールまたはそれらの混合物であろう。これらの反応性添加物はイソシアネート(脱錯化剤)と反応するので、従って、イソシアネートの量はこれらの添加剤に対応するために増大されなければならない。ポリ尿素/ポリウレタン相は最終製品の特性を改善することができる。一般に、この相は形成される高分子接着剤のガラス転移温度を増大させることができる。最終硬化組成物の特性は、ポリイソシアネートおよびイソシアネート反応性化合物の選択により調整することができる。
【0075】
他の可能な添加剤には、非反応性着色剤、充填剤、溶媒等が挙げられる。溶媒は有機ボラン・アミン錯体の熱解離温度未満の沸点を有するように選択されるのが好ましい。過剰の非反応性希釈剤の使用は、引張強度、耐熱性および伸び等の重合化組成物のある種の特性にマイナスの影響を与えることができる。
【0076】
種々の任意の添加物は、重合工程またはそれらと共に作製される組成物の望ましい特性に有意に悪い影響を与えない量において用いられる。
【0077】
本発明による重合性組成物は、ポリマー表面を変性するための封止剤、塗料、プライマー、および射出成形樹脂用を含む多様なやり方において、用いることが可能である。それらは、また、樹脂移送成形操作におけるような、ガラスおよび金属繊維マットと併せたマトリクス樹脂として用いることが可能である。それらは、更に、電気部品およびプリント基板の製造におけるような、カプセル材料および埋め込み用樹脂として用いることが可能である。全く望ましいことに、それらは、ポリマー、木材、セラミック、コンクリート、ガラスおよび下塗りされた金属を含む多様な無数の基板を接合することができる重合性接着剤組成物を提供する。別の望ましい関連用途は、ポリエチレン、ポリプロピレン、テレフタル酸ポリエチレンおよびポリテトラフルオロエチレン、およびそれらのコポリマー等の低界面エネルギー基板に対する塗料の接着性を促進することにおけるそれらの使用である。この態様において、組成物は、基板表面への最終皮膜の接着性を強化するように表面を変性するために基板表面上に被覆するか、または皮膜それ自体に添加することが可能である。
【0078】
本発明の組成物は、塗料用途において用いることができる。こうした用途において、組成物は、更に、溶媒等の担体を含む。塗料は、更に、塗料を着色するための顔料、抑制剤およびUV安定剤等の当業者に周知の塗料用の添加剤を含有することが可能である。組成物は、また、粉体塗料として塗布することが可能であり、当業者に周知の粉体塗料用の添加剤を含有することが可能である。
【0079】
本発明の組成物は、また、高分子成形部品、押出しフィルムまたは輪郭化物体の表面を変性するために用いることができる。本発明の組成物は、また、非変性プラスチック基板上にポリマー鎖を表面グラフト化することによりポリマー粒子の機能を変更するために用いることができる。
【0080】
本発明の重合性組成物は、歴史的に複雑な表面調製技術、下塗り、等を用いることなしで接合することが極めて難しかった低界面エネルギープラスチックまたは高分子基板を接着的に接合すために特に有用である。低界面エネルギー基板とは、45mJ/m2以下、更に好ましくは40mJ/m2以下、最も好ましくは35mJ/m2以下の界面エネルギーを有する材料を意味する。こうした材料に含まれるものには、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリアミド、シンジオタクチック・ポリスチレン、オレフィン含有ブロックコポリマー、および20mJ/m2未満の界面エネルギーを有するポリテトラフルオロエチレン(テフロン(TEFLON;登録商標))等のフッ素化ポリマーが挙げられる。(「界面エネルギー」という表現は多くの場合他で言う「臨界湿潤張力」と同意語として用いられる。)本発明の組成物と有効に接合することが可能であるいくぶん高い界面エネルギーの他のポリマーには、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、およびポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0081】
本発明の重合性組成物は、二部型接着剤として簡単に用いることができる。重合性組成物の成分は、こうした材料を扱う仕事をする時に通常なされるであろうように混合される。脱錯化剤は、通常、有機ボラン・アミン錯体からそれを分離するようにこの混合物中に含まれ、こうして二部型組成物の1部を提供する。重合開始剤系の有機ボラン・アミン錯体は、組成物の第2部を提供し、組成物を用いようと望むちょっと前に第1部に添加される。錯体は第1部に直接添加することが可能であるか、または、それは、第1部に添加する直前に、反応性希釈剤またはモノマー、すなわち、メタクリル酸メチルまたはMMA/PMMA粘性溶液等の適切な担体中か、または溶媒等の非反応性希釈剤に前溶解することが可能である。
【0082】
モノマー、オリゴマーまたはポリマーの早すぎる重合を抑制するために、錯体をモノマー、オリゴマーまたはポリマーから離して保存することは望ましい場合がある。本発明の錯体は、モノマーの存在下、脱錯化剤がない時に安定性を大きく増大させた、従って、組成物の重合性成分と一緒に保存することができる。
【0083】
商業的および工業的環境下で最も簡単に用いられようとする本発明のもの等の二部型接着剤に対して、二部型が混合される体積比は使いやすい整数であることが好ましい。これは従来型の市販されている分配機による接着剤の塗布を容易にする。こうした分配機は、米国特許第4,538,920号および第5,082,147号に示されており、コンプロテック(Conprotec、Inc)(ニュージャージー州セーレム)から商品名ミックスパック(MIXPAC)で市販されている。一般に、これらの分配機は、二部型の接着剤の内一つを受け取るように意図されている各管が平行に配置された1対の管型容器を用いる。各管に一つ、二つのプランジャーは同時に進められて(例えば、手動でまたは手動歯止め機構により)、管の内容物を、二部型の混合を容易にするための静電混合機も含有することが可能である通常の中空で長い混合室中に排出する。混合された接着剤は混合室から基板上に押出される。一旦管が空になると、それらは新しい管と取り替えられ、塗布工程は続けることができる。
【0084】
接着剤の二部型が混合される比率は、管の径により制御される。(各プランジャーは一定の径の管内に入るような寸法にされ、プランジャーは同一速度で管内を進む。)単一の分配機は、多くの場合、多様な各種二部型接着剤での使用を意図していて、プランジャーは使いやすい混合比で接着剤の二部型を配送するように寸法取りされる。いくつかの通常の混合比は1:1、2:1、4:1および10:1であるが、しかし、好ましくは10:1未満である。
【0085】
アミン有機ボラン錯体を含有する本発明の接着剤または重合性組成物の部分は、好ましくは、室温以上で熱安定性を示す。本明細書において用いられる熱安定性は、アミン有機ボラン錯体が解離せず、組成物中に存在するオレフィン性不飽和化合物の重合を開始しないことを意味する。熱安定性は、組成物の粘度が増大し始める温度を測定することにより評価することができる。好ましくは、組成物の粘度が増大する温度は40℃より大きく、更に好ましくは60℃より大きく、最も好ましくは80℃より大きい。粘度の増加は、アミンボラン錯体が解離し、重合が開始されたことを示す。組成物が接着剤として用いられる態様において、接着剤は、以下の試験手順により、好ましくは100psi.(689kPa)以上、更に好ましくは250psi(1724kPa)以上、更に好ましくは400psi(2758kPa)以上のラップ剪断強度を示す。
【0086】
接着剤成分を混合し、一つまたは両方の基板(1inx4inx1/8in(25.4mmx101.6mmx3.2mm)ポリプロピレン切り取り試片)に塗布する。接着剤ビード厚さは、径が0.005〜0.030インチ(0.13mm〜0.76mm)間のガラス玉数重量%の添加により制御することが可能である。切り取り試片は結合されて、ラップ剪断試験態様における0.5平方インチ(161mm2)〜1.0平方インチ(645mm2)の基板重複体を提供する。一定の力を提供し、硬化の間接着剤中の空気泡の排除を容易にするために、試料を金属大型クリップにより所定の位置に保持する。接合された試料は、通常、試料オーブンに合わせた引張試験装置(インストロン(Instron))中に積み重ねる前に、少なくとも24時間にわたり硬化させた。試料は、室温および110℃試験条件に対してそれぞれ毎分0.05(0.13mm)および0.5(12.7mm)インチのクロスヘッド速度で評価される。破壊に対する最大負荷(ポンド)は記録され、最大応力(psi)はこの負荷を重なり面積(平方インチ)で割ることにより計算される。
【0087】
好ましくは、本発明の混合二部型組成物は、ドリッピングなしの塗布を可能とする適した粘度を有する。好ましくは、二つの個々の成分の粘度は、同位の等級からなるのが好ましい。好ましくは、混合組成物は、100(0.1Pa.s)センチポアズ以上、更に好ましくは1,000(1.0Pa.s)センチポアズ以上、最も好ましくは5,000(5.0Pa.s)センチポアズ以上の粘度を有する。好ましくは、接着性組成物は、150,000(150Pa.s)センチポアズ以下、更に好ましくは100,000(100Pa.s)センチポアズ以下、最も好ましくは50,000(50Pa.s)センチポアズ以下の粘度を有する。
【0088】
プラスチック基板中の添加剤一式は本発明の組成物のこうした基板への接着性に影響を与えることが可能である。ある種の添加剤は本発明の組成物の活性成分に対して不適合であることが見出されてきた。当業者は、基板に関する簡単な接着性試験を行うことにより、接着性に影響を与える添加剤を容易に決定することができる。接着性にマイナスの影響を与える通常の添加剤には、チバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba Specialty Chemical Corporation)から市販されている抑制剤、イルガノックス(Irganox)1076、およびヨウ化カリウムがある。接着性に有意な影響を与えない一般的な添加剤には、チバ・スペシャルティ・ケミカルから市販されているイルガホス(Irgaphos)168抑制剤、チヌビン(Tinuvin)328抑制剤、チヌビン770抑制剤、イルガノックス(Irganox)1010抑制剤、およびステアリン酸カルシウムが挙げられる。
【実施例】
【0089】
特定の態様
以下の実施例は説明目的用のみに含まれ、クレームの範囲を限定しようとは意図されていない。特記のない限りすべての部および百分率は重量による。
【0090】
接着剤組成物の調製
2成分(部)接着剤を以下に記載するように生成した。一つの成分(硬化剤)は、「反応性希釈剤」または「非反応性希釈剤」と混合した有機ボラン・アミン錯体を含んだ。「反応性希釈剤」は、樹脂の一部の成分、アクリル(重合の間)、開始剤のいずれか、または両方と反応する材料または化合物を意味した。ガラス球または低沸点溶媒等の非反応性希釈剤は、樹脂成分との反応性はなかった。低沸点溶媒は、有機ボラン・アミン錯体の解離温度、すなわち、錯体が分離する温度未満の温度で沸騰するものとして定義された。希釈剤の量は、粘度制御および/または体積測定関連事項(硬化剤成分対樹脂成分の所定の体積比を達成するための)により設定された。他の成分(樹脂)は、硬化剤と混合される場合、アミンと反応することにより、有機ボラン・アミン錯体を脱錯化する開始剤、例えば、アクリル酸または更に好ましくはイソフォロン・ジイソシアネート等のイソシアネートを有するアクリル樹脂であった。アクリル樹脂は、下に注意書きのない限りメタクリル酸メチル(MMA)およびポリメタクリル酸メチル(PMMA、350,000amu分子量)の混合物であった。MMAおよびPMMAを一夜にわたり攪拌または回転させて、PMMAをMMA中に混合した。樹脂は、%IPDI(特記のない限りイソフォロンジイソシアネート)カラムにより示される脱錯化剤(イソシアネート)の添加量を有する80/20重量%MMAおよびPMMAである。得られるアクリル樹脂プラス開始剤は、好ましくは1000〜50,000センチポアズ(cP)(1.0Pa.S〜50Pa.S)の粘度を有する。上記手順は、二部型接着剤の硬化剤側には全く重合性化学種が添加されない、好ましい態様の配合物を提供する。この配合物は極めて長い貯蔵寿命(50℃で>5週間)を与える。
【0091】
接着剤は空気中、バッグ中、または加圧ガンを通して望ましい比率に混合することが可能である。接着剤を1/2インチ(12.7mm)重なり部を有する1インチ(25.4mm)幅のテストストリップに塗布し、前述の接着剤強度の試験を行う。ポリプロピレンを低温試験用に用い、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)/ナイロン混合物またはe−被覆金属板を高温試験用に用いる。高温試験を上述のインストロン試験機を用いて行った。テストストリップを、試験開始前少なくとも5分間にわたりインストロン・テスターのオーブン中で所期の温度に平衡させた。
【0092】
アミン有機ボラン錯体を含有する本発明の重合性組成物を、本明細書において記載されるように調製し、試験した。
【0093】
以下の略語が表中に用いられる。
Amは、一般に、ボランと錯体化すると指定されるアミンを指す。
PBMAはポリメタクリル酸ブチルである。
Hは硬化剤である。
Rは樹脂である。
MOPAはメトキシ・プロピルアミンである。
MeCl2は塩化メチレンである。
ダイテック(Dytek)・Aはデュポンにより販売されている2−メチル−1,5−ジアミノペンタンである。
HMDIはヘキサメチレン・ジイソシアネートである。
TDIは2,4−トルエン・ジイソシアネートである。
P−94はPAPI*−94、NCO2.4平均当量/モルを有する高分子MDIである。
P−27はPAPI*−27、NCO2.7平均当量/モルを有する高分子MDIである。
UnRdは非反応性希釈剤である。
DMAPAはジメチルアミノプロピルアミンである。
TBBはトリ−n−ブチルボランである。
PMMAはポリメタクリル酸メチルである。
IPDAはシスまたはトランスイソフォロン・ジアミンである。
VS5500は3M(3M Corporation)の中空ガラス球製品を指す。
キャボシル(Cabosil)はコロイド状シリカ粒子へのキャボット(Cabot Corporation)の商品名である。
AP・Siはアミノプロピル・シラン化シリカゲルである。
N2PPO300(またはN2−300)はO−(2−アミノプロピル−O’−(2−メトキシエチル)ポリプロピレングリコール)(300当量)である。IPDIはイソフォロン・ジイソシアネートである。
ポリキャップ(Polycap)300は300分子量ポリカプロラクトン・トリオールである。
N2PPO115は115amu(原子質量単位)当量のポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノ−プロピルエーテル)である。
N2PPO450は450amu当量のポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノ−プロピルエーテル)である。
N2PPO1000は1000amu当量のポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)である。
DEAはジエタノールアミンである。
E400は分子量400を有するエチレンオキシド系ジオールである。
T−9は、エア・プロダクツ(Air Products Corporation)から市販されているウレタン重合用のオクタン酸第1スズ・スズ触媒である。N2−C9はジアミノ・ノナンである。RDは反応性希釈剤である。*PAPIはダウ・ケミカル(Dow Chemical Company)の登録商標である。
【0094】
実施例1〜71において、硬化剤を、反応性希釈剤(RD)、アミン(Am)プラス有機ボラン・アミン錯体としての有機ボラン(TBB)、およびVS5500ガラス球を下記の重量比で混合することにより調製し、一般に、これら成分の合計5グラムを用いた。実施例72〜91において、硬化剤を、有機ボラン・アミン錯体、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、アミンおよびVS5500を以下に規定する重量で混合することにより作製した。実施例87〜91において、硬化剤を、VS5500ガラス球、有機ボラン(TBB)、非反応性希釈剤(UnRD)、反応性希釈剤(RD)およびアミン(Am)を以下に規定する重量で混合することにより調製した。これらの実施例において用いられるすべての配合物は、硬化剤対樹脂混合比が表3に規定される実施例72〜86および25:1であるC−2を除いて、4:1の樹脂対硬化剤体積混合比を有した。接着剤を、上述のように、ポリプロピレン基板またはe−被覆金属または他の高温基板に塗布した。また、重量%としての硬化剤中の有機ボランの量(TBB/H%)、アミン窒素原子対ボラン原子比(N/B比)、アミン窒素プラスあらゆる他の活性水素当量対イソシアネート反応性基比(N/NCO比)、接着剤全体重量によって正規化されたすべてのアミンプラスイソシアネートの重量により定義される尿素重量%の値を表にする。ラップ剪断を、上述の引張試験装置を用いて測定した。表中、ラップ剪断結果に関して、>は基板破壊が接着剤破壊の前に起こることを意味する。
【0095】
実施例1〜53
実施例1〜53において、すべての硬化剤は配合されて5.0gに作製された。実施例1〜4において、75,000amu分子量を有するポリメタクリル酸メチル・ポリメタクリル酸ブチルコポリマーのポリマー希釈剤20重量%を反応性希釈剤中に混合した。実施例1〜19および22〜53のすべてにおいて、TBB/H%比は10であった(硬化剤の10重量%はTBBである)。実施例20および21において、用いられる有機ボランはトリエチルボランであった。存在するトリエチルボランの量は0.27gであり、TEB/H%比は5.4であった。実施例37および41において、イソシアネートはHMDIであった。実施例38において、イソシアネートはトルエン・ジイソシアネートであった。実施例39および42において、イソシアネートは登録商標記号標示PAPI94でダウ・ケミカルから市販されている高分子MDIであった。実施例40および43において、用いられるイソシアネートは、登録商標記号標示PAPI27でダウ・ケミカルから市販されている高分子MDIであった。実施例44〜47において、反応性希釈剤を丸括弧中の値により一覧成分の重量比として与える。実施例48、49、および51において、反応性希釈剤として用いられるアミンは、1:1重量比で液体アミン中に溶解した固形のアミンキャップ付きポリプロピレン・オキシド(1000mw)である。実施例50において、反応性希釈剤中における固形N2−PPO対液体ダイテック・Aの体積量は、それぞれ75%対25%であった。実施例52および53において、反応性希釈剤は、一覧されるアミンおよびジアミノ・ノナンの1:1重量比での混合物である。反応性希釈剤中のVS5500の量が比として特に与えられない実施例において(実施例25、29、49、および51)、ガラスの量は硬化剤全体重量の40重量%である。表1中の樹脂の密度は1である。
【0096】
表1は各種部類のアミン、およびアルコールおよび非反応性希釈剤とのアミン混合物の有効性を示す。また、表1に示されるものは脱錯化剤としての種々のイソシアネートを用いる実施例である。本明細書において示される一般的な部類には、ポリマー増粘化アミン、高機能アミンおよびアミノール、オリゴマー性ジアミン、固形および液体アミンの混合物、およびアミンおよびアルコールおよびジオールの混合物が挙げられる。アミンには、モノアミン、ジアミン、分岐鎖ジアミン、脂環式アミン、アルカノール・アミン、第1級および高次アミンを有するジアミン、およびポリエーテル・アミンを含む構造変異体が挙げられる。表1中の結果は、プラスチック基板への優れた接着性が記載される組成物により達成されることを示す。
【0097】
【表1】

【表2】

【0098】
実施例54〜71
硬化剤の配合物中の有機ボランTBB(トリブチルボラン)触媒の量を変え、N/B比を変えることにより、実施例54〜73を行った。これらの実施例において、有機ボランアミンモル比は、トリエチルボラン・ダイテックAアミン錯体に対しては1:0.5モル比、他の錯体に対しては1:1.4である。実施例54〜77およびC1のすべてにおいて、反応性希釈剤は40重量%のVS5500を含んだ。実施例57、62および68〜71において用いられる有機ボランはトリエチルボラン(TEB)であった。
【0099】
【表3】

実施例1. 比較例2. アクリル酸脱錯化剤
【0100】
本発明のすべての接着剤は、室温および高温で良好な強度を与えた。本発明の高N/B比を有するが、しかし開始剤としてイソシアネートの代りにAA(アクリル酸)を用いる比較例(C−1)は、すべての温度で不良な接着剤を生成した。低N/B比、25:1混合比、およびアクリル酸開始剤を用いる第2比較例(C−2)は、良好な室温接着剤を、しかし本発明の対象物に比べて高温で不良な接着剤を生成した。第2比較例において、1.36モルのMOPAを1モルのTBBに添加することにより、錯体を作製した。その錯体4重量%を、4重量%のアクリル酸を添加した80部のMMAおよび20部のPMMA(350kMw)からなる樹脂に添加した。この混合物をそれぞれRTまたは125℃で試験するためにポリプロピレンまたはe−被覆金属基板に塗布した。接着剤を放置して試験前3日間にわたり硬化させた。
【0101】
実施例72〜86
いくつかの接着剤配合物を上述のように調製した。実施例72〜77において、反応性希釈剤およびアミンは両方ともイソフォロン・ジアミンであった。実施例78〜82において、反応性希釈剤およびアミンは両方ともMOPAであり、非反応性希釈剤は塩化メチレンであった。実施例83〜86において、アミンおよび反応性希釈剤はダイテック・Aであった。ラップ剪断試験をナイロン6およびシンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)の混合物から作製されたプラークを用いて125℃および150℃で行った。実施例72〜77において150℃、78〜82において125℃でのラップ剪断試験のために、プラークはナイロン6中に30%SPSを含んだ。125℃で試験した実施例72〜77および83〜86は、ナイロン6中に15%SPSを含有するプラークを用いた。
【0102】
実施例72〜86は各種のアミン系硬化剤、および高温ラップ剪断変形に及ぼすN/B比変動の効果を説明する。一連のそれぞれの組において一定なものは、接着剤中の有機ボランの量(硬化剤中では一定でない)、充填剤(VS5500)量/硬化剤中の液体g、およびN/NCO比である。これらの実施例において独特なものは、一連の中の2において変動した(varied in 2)混合比(R/H、樹脂/硬化剤)である。樹脂は前述の通りであった。図1はN/B比を増大させると関数として増大するラップ剪断強度を示す。低N/B比接着剤は、また、熱管理補助として溶媒および/またはVS5500ガラス球の使用ため良好な強度を有する。
【0103】
【表4】

3.体積比
【0104】
実施例87〜91
非反応性希釈剤がメタクリル酸メチルであり、反応性希釈剤がイソフォロン・ジアミンであり、硬化剤側が6.0グラムのVS5500ガラス玉配合物(実施例91は硬化剤中に4.5グラムおよびVS5500樹脂中に1.5グラムを用いる)、アミン重量が1.2gであり、樹脂対硬化剤体積比が4.0:1.0であり、およびアミン当量対イソシアネート当量比が0.8である、前述のMMA−PMMA樹脂側および表4中に記載される硬化剤側を用いて、接着剤配合物を調製した。図2は変動N/B比での一連の接着剤の硬化速度を示す。線は、接着剤が所定の強度、50psiに対して硬化する時間(グリーン・タイム)をグラフ的に観察するための、時間データに対する3次適合である。これらの接着剤に対して、グリーン・タイムはN/B比1.1、3、4、6.1、9.9に対してそれぞれ39、38、25.6、26.3、27.7分である。なお低いN/B比に対するグリーン・タイムは、脱錯化剤、アクリル樹脂成分、および熱管理成分の選択ため良好である。
【0105】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーラジカルに晒された場合に硬化する1以上の重合性モノマーの硬化を開始するために有用な二部型(two-part)組成物であって;該組成物は第1部において有機ボランアミン錯体を、および第2部においてアミン窒素原子対ホウ素原子の当量比が4.0:1より大きい有機ボラン錯体を脱錯化(decomplexing)できるイソシアネートを含み、且つ、イソシアネート対アミンの当量比が、1.0:1.0より大きい二部型組成物。
【請求項2】
前記アミン対ホウ素原子の当量比が5.0:1.0より大きい請求項1に記載の二部型組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート対アミンの当量比が1.1:1.0より大きい請求項1または2に記載の二部型組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート対アミンの当量比が1.25:1.0より大きい請求項1または2に記載の二部型組成物。
【請求項5】
部分1、a)アミン窒素原子対ホウ素原子の比率が4.0:1より大きい有機ボランアミン錯体;および
部分2、b)フリーラジカル重合による重合が可能であるオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマー、およびc)錯体が解離することを引き起こし、ボランを開放してオレフィン不飽和を有する1以上のモノマー、オリゴマーまたはポリマーの重合を開始させるイソシアネートの有効量、を含む二部型重合性組成物であって;錯体の解離を引き起こす化合物は、重合の開始が必要とされるまで、錯体から離して保持され、且つ、イソシアネート対アミンの当量比が、1.0:1.0より大きい二部型重合性組成物。
【請求項6】
前記アミン対ホウ素原子の当量比が5.0:1.0より大きい請求項5に記載の二部型重合性組成物。
【請求項7】
前記イソシアネート対アミンの当量比が1.1:1.0より大きい請求項5または6に記載の二部型重合性組成物。
【請求項8】
前記イソシアネート対アミンの当量比が1.25:1.0より大きい請求項5または6に記載の二部型重合性組成物。
【請求項9】
一旦重合された際に、得られた組成物が、5〜50重量%以下の尿素またはポリ尿素を含む請求項5〜8のいずれかに記載の二部型重合性組成物。
【請求項10】
a.重合が開始されるような条件下で請求項4に記載の組成物の成分を一緒に接触させ;
b.接着剤組成物を2以上の基板と接触させ;
c.それらが互いに接触する2以上の基板の間に接着剤組成物が置かれるように2以上の基板を位置付け;および
d.接着剤が2以上の基板を一緒に結合するように硬化することを可能とすること、を含む2以上の基板を一緒に結合する(bonding)方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−280891(P2010−280891A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−162071(P2010−162071)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2003−540273(P2003−540273)の分割
【原出願日】平成14年10月29日(2002.10.29)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】