説明

有機中間接続層を備えるタンデム式OLED

タンデム式OLEDは、アノードとカソードを備えている。このOLEDは、アノードとカソードの間に配置された少なくとも2つのエレクトロルミネッセンス・ユニットを備えていて、それぞれのエレクトロルミネッセンス・ユニットは、少なくとも1つの正孔輸送層と、1つの有機発光層を含んでいる。中間接続層が隣接するエレクトロルミネッセンス・ユニットの間に配置されていて、この中間接続層は、n型をドープされた有機層と、このn型をドープされた有機層よりもカソードの近くに配置された電子受容層とを含んでいる。この電子受容層は1種類以上の有機材料を含んでおり、各有機材料の還元電位は、飽和カロメル電極を基準として-0.5Vよりも大きく、その1種類以上の有機材料が電子受容層の50容積%を超える割合を占めている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の有機エレクトロルミネッセンス(EL)ユニットを用意してELの性能が向上したタンデム式有機エレクトロルミネッセンス・デバイスを形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイス、または有機発光ダイオード(OLED)は、印加された電圧に応答して光を出す電子デバイスである。OLEDの構造には、アノードと、有機ELユニットと、カソードが順番に含まれる。アノードとカソードの間に配置された有機ELユニットは、一般に、有機正孔輸送層(HTL)と有機電子輸送層(ETL)からなる。ETL内のHTL/ETL界面の近くで正孔と電子が再結合して光が出る。Tangらは、「有機エレクトロルミネッセンス・ダイオード」、Applied Physics Letters、第51巻、913ページ、1987年と、譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第4,769,292号において、このような層構造を利用した高効率OLEDを提示した。そのとき以来、別の層構造を有する多数のOLEDが開示されてきた。例えばOLEDはHTLとETLに挟まれた有機発光層(LEL)(HTL/LEL/ETLと表記される)を含む3層有機ELユニットを備えることができる。その例が、例えばAdachi他、「3層構造を有する有機膜におけるエレクトロルミネッセンス」、Japanese Journal of Applied Physics、第27巻、L269ページ、1988年や、Tang他、「ドープされた有機薄膜のエレクトロルミネッセンス」、Journal of Applied Physics、第65巻、3610ページ、1989年に開示されている。LELは、一般に、ゲスト材料をドープされた少なくとも1種類のホスト材料を含んでいる。さらに、有機ELユニットの中により多くの機能層が含まれた他の多層OLEDが存在している。それと同時に、多くのタイプのEL材料も合成され、OLEDで使用されている。これらの新しいデバイス構造と新しい材料によってデバイスの性能がさらに向上した。
【0003】
OLEDは、実際には電流駆動されるデバイスである。その輝度は電流密度に比例するが、寿命は電流密度に反比例する。非常に明るくするには、OLEDを比較的大きな電流密度で動作させねばらないが、すると動作寿命が短くなるであろう。したがって寿命を長くするには、OLEDの輝度効率を改善する一方で、目的とする輝度を実現できる可能な限り小さな電流密度で動作させることが極めて重要である。
【0004】
OLEDの輝度効率を劇的に向上させるとともに寿命を延ばすには、個々のOLEDを鉛直方向にいくつか積層させることによってタンデム式OLED(または積層式OLED、またはカスケード式OLED)を製造し、単一の電源だけで駆動するとよい。アメリカ合衆国特許第6,337,492号、第6,107,734号、第6,717,358号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0170491 A1、2003/0189401 A1、日本国特開2003/045676Aを参照のこと。N個(N>1)のELユニットを有するタンデム式OLEDでは、輝度効率を、ELユニットが1つだけの従来型OLEDのN倍にすることができる(もちろん駆動電圧も従来型OLEDのN倍になる可能性がある)。したがって長寿命を実現する1つの方法として、タンデム式OLEDは、従来型OLEDと同じ輝度を得るのに従来型OLEDで用いられている電流密度のほんの約1/N倍にしか必要としないが、寿命が従来型OLEDの約N倍になろう。高輝度を実現する別の方法として、タンデム式OLEDは、従来型OLEDのN倍の輝度を得るのに従来型OLEDで用いられているのとほぼ同じ電流密度しか必要としないが、ほぼ同じ寿命が維持される。
【0005】
タンデム式OLEDでは、すべてのELユニットが、隣り合ったあらゆるELユニットの間に中間接続層を挿入することによって電気的に直列に接続されている。タンデム式OLEDにおける中間接続層は、そのタンデム式OLEDを有用にする上で重要な役割を果たしている。従来のタンデム式OLEDにおける中間接続層(または中間電極)は、アメリカ合衆国特許第6,337,492号、第6,107,734号、日本国特開2003/045676Aに開示されているように、主として金属やそれ以外の無機材料、またはその組み合わせを用いて形成された。金属やそれ以外の無機材料を用いて中間接続層を形成すると、製造が複雑になる可能性がある。多くの無機材料は蒸着によって堆積させることが容易でなく、しかも堆積法がその下にある有機層と適合していないことがある。さらに、無機材料の中には、画素のクロストークを起こすものや、光の透過率が小さいものがある。譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願公開2003/0170491 A1とアメリカ合衆国特許第6,717,358号には、n型をドープされた有機層および/またはp型をドープされた有機層によって中間接続層(または接続ユニット)を形成する方法が記載されている。ドープされた有機中間接続層は1つの蒸着法だけを利用して形成することができ、画素のクロストークが起こることも、光の透過率が小さいこともない。この方法は有効であるとはいえ、寿命をさらに長くし、駆動電圧を低下させ、より製造しやすくすることが相変わらず必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの目的は、優れたEL性能を有するタンデム式OLEDを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、
a)アノードと;
b)カソードと;
c)上記アノードと上記カソードの間に配置されていて、少なくとも1つの正孔輸送層と1つの有機発光層とをそれぞれが含む少なくとも2つのエレクトロルミネッセンス・ユニットと;
d)隣り合ったエレクトロルミネッセンス・ユニットの間に配置されていて、n型をドープされた有機層と、このn型をドープされた有機層よりも上記カソードの近くに配置された電子受容層とを含む中間接続層とを備えていて、上記電子受容層が、1種類以上の有機材料を含んでおり、各有機材料の還元電位は、飽和カロメル電極を基準として-0.5Vよりも大きく、その1種類以上の有機材料が、上記電子受容層の50容積%を超える割合を占めているタンデム式OLEDによって達成される。
【0008】
本発明では、還元電位が上記のように低下したドープされていない有機材料を含むことのできる有機中間接続層を利用する。すると低コストで簡単に製造することができる。
【0009】
タンデム式OLEDは、複数のELユニットと中間接続層を用いて構成され、単一の電源だけを用いて駆動されることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
個々の層が薄すぎ、しかもさまざまな層の厚さの違いが大きすぎて実際のスケールで図示できないため、図1〜図5は実際のスケール通りになっていないことがわかるであろう。
【0011】
図1に、本発明のタンデム式OLED100を示してある。このタンデム式OLEDはアノード110とカソード170を備えており、そのうちの少なくとも一方は透明である。アノードとカソードの間にはN個のELユニットと(N-1)個の中間接続層(図では、そのそれぞれを“中間接続層”と表記してある)が配置されている。ここに、Nは2以上の整数である。これらELユニットは積層されて直列に接続されており、120.1〜120.Nと表記されている。ただし120.1は(アノードに隣接する)1番目のELユニット、120.2は2番目のELユニット、120.(N-1)は(N-1)番目のELユニット、120.Nは(カソードに近い)N番目のELユニットである。ELユニットの間に挟まれた中間接続層は、130.1〜130.(N-1)と表記してある。ただし130.1は、ELユニット120.1と120.2に挟まれた1番目の中間接続層であり、130.2は、ELユニット120.2と別のELユニット(図示せず)に接触している2番目の中間接続層であり、130.(N-1)は、ELユニット120.(N-1)と120.Nに挟まれた最後の中間接続層である。タンデム式OLED100は、導電線190を通じて外部の電圧/電流源180に接続されている。
【0012】
タンデム式OLED100は、電圧/電流源180が発生させる電位を一対の接触電極、すなわちアノード110とカソード170の間に印加することによって作動する。(V×N)の順バイアス下では、外部から印加されたこの電位は、N個のELユニットと(N-1)個の中間接続層に分布する。タンデム式OLEDに印加された電位(V×N)により、電子(マイナスに帯電したキャリア)がカソードからN番目のELユニットに注入されたときに(アノードの電位に対して)eV×Nのポテンシャル・エネルギーを持てるようになる。このN番目のELユニットでは、これらの電子がLELのLUMOに輸送された後、LELのHOMOにおいて正孔(プラスに帯電したキャリア)と再結合して発光する。再結合プロセスの間を通じて電子はLELのLUMOからHOMOに落下してポテンシャル・エネルギーの一部を失い、フォトンを発生させる。最初の再結合によって発光した後、電子はLELのHOMOからHTLのHOMOへと連続的に輸送され、次いで(N-1)番目の中間接続層に注入される。電子は、(N-1)番目の中間接続層から(N-1)番目のELユニットに注入されるときにほぼeV×(N-1)というポテンシャル・エネルギーを維持している。この“注入-輸送-再結合-輸送”プロセスがそれぞれのELユニットにおいて起こった後、電子は最終的にアノードに注入される。カソードからN個のELユニットを経由してアノードに至るこのエネルギー・カスケード式“旅行”の間、電子はN回再結合してフォトンを発生させる。言い換えるならば、カソードから注入された各電子はN個のフォトンを発生させる機会を有する。
【0013】
図2には、タンデム式OLED200を示してある。このタンデム式OLEDはアノード110とカソード170を備えており、そのうちの少なくとも一方は透明である。アノードとカソードの間には3個のELユニット(ELユニット120.1、120.2、120.3)と2個の中間接続層(1番目の中間接続層130.1と2番目の中間接続層130.2)が配置されている。タンデム式OLED200は、導電線190を通じて外部の電圧/電流源180に接続されている。タンデム式OLED200は、図1のタンデム式OLEDの簡易版である。
【0014】
タンデム式OLED100と200の各ELユニットは、正孔の注入、正孔の輸送、電子の注入、電子の輸送、電子-正孔再結合をサポートして光を発生させることができる。それぞれのELユニットは複数の層を含むことができる。そのような層として、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(LEL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、正孔阻止層(HBL)、電子阻止層(EBL)、エキシトン阻止層(XBL)のほか、従来技術で知られている他の層がある。さまざまな層が複数の機能を担うことができ(例えばETLは、HBLとしても機能することができる)、似た機能を持つ複数の層が存在していてもよい(例えばLELとETLがいくつか存在していてもよい)。本発明のELユニットとして使用できる多くの有機EL多層構造が従来技術で知られている。そのような構造として、HTL/LEL(s)/ETL、HTL/LEL(s)/EIL、HIL/HTL/LEL(s)/ETL、HIL/HTL/LEL(s)/ETL/EIL、HIL/HTL/EBL/LEL(s)/ETL/EIL、HIL/HTL/XBL/LEL(s)/ETL/EIL、HIL/HTL/LEL(s)/HBL/ETL/EILなどがある。タンデム式OLEDの各ELユニットは、他のELユニットと層構造が同じでも異なっていてもよい。ELユニットの層構造は、HIL/HTL/LEL(s)/ETLであることが好ましい。ただしアノードに隣接するELユニットは、アノードとHTLの間にHILを備え、カソードに隣接するELユニットは、カソードとETLの間にEILを備えている。タンデム式OLED100または200の特定のELユニットの中にあるLELの数については、各ELユニットのLELの数は一般に1〜3の範囲で変えることができる。さらに、タンデム式OLEDの各ELユニットは、同じ色の光を出してもよいし、異なる色の光を出してもよい。
【0015】
図3には、本発明によるELユニット構造の一実施態様を示してある。ELユニット320は、HTL322と、LEL323と、ETL324を備えている。
【0016】
ELユニット320に含まれるHTL322は、少なくとも1種類の正孔輸送材料を含んでいる。それは例えば芳香族第三級アミンである。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1個の3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。具体的なモノマー・トリアリールアミンは、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0017】
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。HTLは、単一の芳香族第三級アミン化合物で形成すること、または芳香族第三級アミン化合物の混合物で形成することができる。有用な芳香族第三級アミンの代表例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4"'-ジアミノ-1,1':4',1":4",1"'-クアテルフェニル;
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン;
1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB);
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N-フェニルカルバゾール;
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン;
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン;
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル;
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル;
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレン;
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
【0018】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。3個以上のアミノ基を有する第三級芳香族アミン(オリゴマー材料も含む)も使用することができる。さらに、ポリマー正孔輸送材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0019】
LEL323は、蛍光材料またはリン光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、1種類または複数のゲスト化合物をドープしたホスト材料を含んでいる。光は主として発光材料から発生し、任意の色が可能である。このゲスト発光材料は、発光ドーパントと呼ばれることがしばしばある。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の単一の材料または組み合わせた材料にすることができる。発光材料は、通常は強い蛍光染料およびリン光化合物(例えば、WO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)の中から選択される。発光材料は、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。
【0020】
ホスト材料および発光材料としては、小さな非ポリマー分子またはポリマー材料が可能である(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン)、PPV))。ポリマーの場合、小分子発光材料は、ホスト・ポリマーの中に分子として分散させること、または発光材料を微量成分とコポリマー化してホスト・ポリマーに添加することができる。
【0021】
発光材料を選択する際の重要な1つの関係は、その分子の最高被占軌道と最低空軌道のエネルギー差として定義されるバンドギャップ・ポテンシャルの比較である。ホスト材料から発光材料にエネルギーが効率的に移動するための必要条件は、発光材料のバンドギャップがホスト材料のバンドギャップよりも小さいことである。リン光発光体(三重項励起状態から光を出す材料、すなわちいわゆる“三重項発光体”が含まれる)では、ホスト材料から発光材料にエネルギーが移動できるよう、ホストの三重項エネルギー・レベルが十分に高いことも重要である。
【0022】
有用であることが知られているホスト分子および発光分子としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号、第6,475,648号、第6,534,199号、第6,661,023号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0127427 A1、2003/0198829 A1、2003/0203234 A1、2003/0224202 A1、2004/0001969 A1に開示されているものなどがある。
【0023】
8-ヒドロキシキノリン(オキシン)の金属錯体と、それと同様の誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト化合物の1つのクラスを形成する。有用なキレート化オキシノイド系化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0024】
有用なホスト材料の別のクラスとして、アメリカ合衆国特許第5,935,721号、第5,972,247号、第6,465,115号、第6,534,199号、第6,713,192号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0048687 A1、2003/0072966 A1、WO 04/018587 A1に記載されているようなアントラセン誘導体がある。いくつか例示すると、9,10-ジ-ナフチルアントラセンと9-ナフチル-10-フェニルアントラセンの誘導体がある。有用なホスト材料の別のクラスとして、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体、ベンズアゾール誘導体(例えば2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール])などがある。
【0025】
望ましいホスト材料は、連続膜を形成することができる。発光層は、デバイスの膜の形態、電気的特性、発光効率、寿命を改善するため、2種類以上のホスト材料を含むことができる。電子輸送材料と正孔輸送材料の混合物も有用なホストとして知られている。さらに、上記のホスト材料と正孔輸送材料または電子輸送材料との混合物も適切なホストになりうる。
【0026】
有用な蛍光ドーパントとしては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタンホウ素化合物、ジスチリルベンゼンの誘導体、ジスチリルビフェニルの誘導体、カルボスチリル化合物などがある。ジスチリルベンゼンの誘導体の中では、ジアリールアミノ基で置換されたもの(非公式にはジスチリルアミンとして知られる)が特に有用である。
【0027】
リン光発光体(三重項励起状態から光を出す材料、すなわちいわゆる“三重項発光体”が含まれる)に適したホスト材料は、三重項エキシトンがホスト材料からリン光材料に効率的に移動できるように選択せねばならない。この移動が起こるためには、リン光材料の励起状態のエネルギーが、ホストの最低三重項状態と基底状態のエネルギー差よりも小さいという条件が満たされることが非常に望ましい。しかしホストのバンド・ギャップは、OLEDの駆動電圧が許容できないほど大きくなるように選択してはならない。適切なホスト材料は、WO 00/70655 A2、WO 01/39234 A2、WO 01/93642 A1、WO 02/074015 A2、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0117662 A1に記載されている。適切なホスト材料としては、ある種のアリールアミン、トリアゾール、インドール、カルバゾール化合物などがある。望ましいホスト材料の例は、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、2,2'-ジメチル-4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル、m-(N,N'-ジカルバゾール)ベンゼン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)であり、これらの誘導体も望ましいホスト材料に含まれる。
【0028】
本発明の発光層で使用できる有用なリン光材料の例として、WO 00/57676 A1、WO 00/70655 A1、WO 01/41512 A1、WO 02/15645 A1、WO 01/93642 A1、WO 01/39234 A2、WO 02/074015 A2、WO 02/071813 A1、アメリカ合衆国特許第6,458,475号、第6,573,651号、第6,451,455号、第6,413,656号、第6,515,298号、第6,451,415号、第6,097,147号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0017361 A1、2002/0197511 A1、2003/0072964 A1、2003/0068528 A1、2003/0124381 A1、2003/0059646 A1、2003/0054198 A1、2002/0100906 A1、2003/0068526 A1、2003/0068535 A1、2003/0141809 A1、2003/0040627 A1、2002/0121638 A1、ヨーロッパ特許第1 239 526 A2号、ヨーロッパ特許第1 238 981 A2号、ヨーロッパ特許第1 244 155 A2号、日本国特開2003/073387A、日本国特開2003/073388A、日本国特開2003/059667A、日本国特開2003/073665Aに記載されているものなどがある。有用なリン光ドーパントとしては、遷移金属の錯体(例えばイリジウムや白金の錯体)などがある。
【0029】
ELユニットに含まれる1つ以上のLELが広帯域の光(例えば白色光)を出すと有用である場合がある。多数のドーパントを1つ以上の層に添加して白色発光OLEDを製造することができる。そのためには、例えば青色発光材料と黄色発光材料を組み合わせたり、シアン色発光材料と赤色発光材料を組み合わせたり、赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料を組み合わせたりする。白色発光デバイスが記載されているのは、例えばヨーロッパ特許第1 187 235号、ヨーロッパ特許第1 182 244号、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,182号、第6,627,333号、第6,696,177号、第6,720,092号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0186214 A1、2002/0025419 A1、2004/0009367 A1である。これらの系の中には、1つの発光層のためのホストが正孔輸送材料であるものがある。
【0030】
ELユニット320に含まれるETL324は、1種類以上の金属キレート化オキシノイド化合物を含むことができる。その中には、オキシンそのもの(一般に、8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)も含まれる。このような化合物は、電子を注入して輸送するのを助け、高レベルの性能を示し、薄膜の形態にするのが容易である。オキシノイド化合物の例は、上に示したCO-1〜CO-9である。(これらのオキシノイド化合物は、LEL323のホスト材料としても、ETL324の電子輸送材料としても使用することができる。)
【0031】
他の電子輸送材料としては、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に記載されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。ベンズアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、ピリジンチアジアゾール、トリアジン、フェナントロリン誘導体と、いくつかのシロール誘導体も、有用な電子輸送材料である。
【0032】
ELユニット320に含まれるそれぞれの層は、小分子OLED材料、またはポリマーLED材料、またはこれらの組み合わせから形成することができる。いくつかのELユニットをポリマーにし、他のELユニットを小分子(または非ポリマー)(例えば蛍光材料やリン光材料)にすることができる。タンデム式OLEDの各ELユニットの互いに対応する層は、対応する他の層と同じ材料または異なる材料を用いて形成することができ、層の厚さは同じでも異なっていてもよい。
【0033】
タンデム式OLEDが効率的に機能するためには、中間接続層が隣接するELユニットにキャリアを効率的に注入する必要がある。中間接続層を構成する層の光透過率ができるだけ大きくてELユニットで発生した光がデバイスの外に出られるようになっていることも好ましい。
【0034】
図4Aに示してあるように、本発明の中間接続層430は、少なくとも2つの層を含んでいる。それは例えば、n型をドープされた有機層431と電子受容層433である。電子受容層433は、n型をドープされた有機層431よりもカソードの近くに配置されている。これら2つの層は、互いに接触させること、またはインターフェイス層432によって分離すること(図4Bに図示)ができる。中間接続層430は、図4Cに示したように、電子受容層433の上にp型をドープされた有機層435も備えることができる。p型をドープされた有機層435は、電子受容層433よりもカソードに近い。p型をドープされた有機層435は、電子受容層433と接触していることが好ましい。中間接続層430は、図4Dに示したように、インターフェイス層432とp型をドープされた有機層435の両方を備えることができる。
【0035】
n型をドープされた有機層は、ホスト材料としての少なくとも1種類の電子輸送材料と、少なくとも1種類のn型ドーパントを含んでいる。“n型をドープされた有機層”という用語は、この層がドーピング後に半導特性を持ち、この層を流れる電流が実質的に電子によって担われることを意味する。ホスト材料は、電子の注入と電子の輸送をサポートすることができる。ETLで使用するすでに説明した電子輸送材料は、n型をドープされた有機層のためのホスト材料の有用なクラスを形成する。好ましい材料は金属キレート化化合物(例えばトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq))であり、その中にはオキシンそのもの(一般に、8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートも含まれる。他の材料としては、Tangらによってアメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体や、VanSlykeらによってアメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤、トリアジン、ヒドロキシキノリン誘導体、ベンズアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体などがある。シロール誘導体(例えば2,5-ビス(2',2"-ビピリジン-6-イル)-1,1-ジメチル-3,4-ジフェニルシラシクロペンタジエンも有用な有機ホスト材料である。2種類以上のホストを組み合わせて適切な電荷注入特性や安定特性を得ると有用な場合がある。n型をドープされた有機層における有用なホスト材料の特別な例として、Alq、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(Bphen)、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)、2,2'-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイルビス[4,6-(p-トリル)-1,3,5-トリアジン](TRAZ)や、これらの組み合わせがある。
【0036】
n型をドープされた有機層のn型ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、またはこれらの組み合わせがある。“金属化合物”という用語には、有機金属錯体、金属-有機塩、無機塩、酸化物、ハロゲン化物が含まれる。金属含有n型ドーパントというクラスのうちで特に有用なのは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybのいずれかと、これらの化合物である。n型をドープされた有機層においてn型ドーパントとして使用される材料としては、強力な電子供与特性を有する有機還元剤も挙げられる。“強力な電子供与特性”とは、有機ドーパントが少なくともいくつかの電荷をホストに与えてホストと電荷移動錯体を形成できねばならないことを意味する。有機分子の例としては、ビス(エチレンジチオ)-テトラチアフルバレン(BEDT-TTF)、テトラチアフルバレン(TTF)、ならびにこれらの誘導体などがある。ホストがポリマーである場合には、ドーパントは上記の任意のものが可能であり、分子として分散させた材料、または微量成分としてホストとコポリマー化した材料でもよい。n型をドープされた有機層のn型ドーパントは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybのいずれか、またはこれらの化合物であることが好ましい。ドープするn型ドーパントの濃度は、0.01〜20容積%の範囲であることが好ましい。n型をドープされた有機層の厚さは、一般に200nm未満であるが、100nm未満であることが好ましい。
【0037】
中間接続層の電子受容層433は、1種類以上の有機材料を含んでいてその中間接続層の50容積%を超える割合を占めており、それぞれの有機材料は、電子受容特性を持ち、還元電位が飽和カロメル電極(SCE)を基準にして-0.5Vよりも大きい。電子受容層433は、還元電位がSCEを基準にして-0.1Vよりも大きい1種類以上の有機材料を含んでいることが好ましい。より好ましいのは、電子受容層433が単一の有機材料を含んでいて、その有機材料が電子受容特性を持ち、還元電位がSCEを基準にして-0.1Vよりも大きいことである。“電子受容特性”とは、有機材料が、隣接している他のタイプの材料から少なくともいくつかの電荷を受け入れる能力または傾向を持つことを意味する。
【0038】
“還元電位”はボルトを単位として表現され、ある物質が電子に対して持っている親和性の測定値である。正の値が大きいほど親和性が大きい。ヒドロニウム・イオンを還元して水素ガスにするときの還元電位は、標準的な条件下では0.00Vであろう。ある物質の還元電位はサイクリック・ボルタンメトリー(CV)によって容易に得られ、SCEを基準にして測定される。ある物質の還元電位の測定は、以下のようにして実施できる。すなわちモデルCHI660電気化学分析装置(CHインスツルメンツ社、オースチン、テキサス州)を用いて電気化学的測定を行なう。CVとオスターヤング矩形波ボルタンメトリー(SWV)の両方を用いてその物質の酸化還元特性を明らかにすることができる。ガラス状炭素(GC)からなるディスク電極(A=0.071cm2)を作用電極として使用する。GC電極は、0.05μmのアルミナ・スラリーで研磨した後、脱イオン水の中で超音波洗浄し、次いでアセトンを用いてリンスし、再び脱イオン水の中で超音波洗浄する。電極は最終的にクリーンにされて電気化学的処理によってアクティブにされた後、使用される。白金ワイヤーを補助電極として用いることができ、SCEを準参照電極として用いて標準的な3電極電気化学的セルを完成させる。アセトニトリルとトルエンの混合物(1:1=MeCN:トルエン)または塩化メチレン(MeCl2)を有機溶媒系として用いることができる。使用するどの溶媒も、含水量が極めて少ないグレードである(水が10ppm未満)。サポート用電解質であるテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(TBAF)をイソプロパノールの中で2回再結晶させ、真空下で3日間にわたって乾燥させる。フェロセン(Fc)を内標準(1:1=MeCN:トルエンの中ではSCEを基準としたE還元Fcが0.50Vであり、MeCl2、0.1MのTBAFの中ではSCEを基準としたE還元Fcが0.55Vである)として用いることができる。テスト溶液を高純度窒素ガスで約15分間にわたってパージして酸素を除去し、実験中は窒素ブランケットが溶液の上部に被さった状態を維持する。すべての測定を25±1℃という周囲温度で実施する。興味の対象である化合物の溶解度が不十分である場合には、当業者なら他の溶媒を選択して用いることができよう。あるいは適切な溶媒系を特定できない場合には、電子受容材料を電極の上に堆積させ、その変化した電極の環元電位を測定するとよい。
【0039】
電子受容層は、還元電位がSCEを基準にして-0.5Vよりも大きく、電子受容層の中で50容積%を超える割合を占める1種類以上の有機材料を含んでおり、タンデム式OLEDにおいて、効率的なキャリアの注入と、大きな光透過率という両方の性質を持つことができる。電子受容層で用いるのに適した有機材料としては、少なくとも炭素と水素を含んでいる単純な化合物だけでなく、還元電位がSCEを基準にして-0.5Vよりも大きい金属錯体(例えば有機リガンドと有機金属化合物を含む遷移金属錯体)も挙げられる。電子受容層のための有機材料としては、小分子(蒸着によって堆積させることのできるもの)、デンドリマー、またはこれらの組み合わせが可能である。電子受容層の少なくとも一部が隣接する層と顕著に混合しないことも重要である。それは、このような拡散を阻止する十分に大きな分子量を持つ材料を選択することによって実現される。電子受容層の分子量は350よりも大きいことが好ましい。電子受容層の適切な電子受容特性を維持するためには、上記の1種類以上の有機材料がこの層の90容積%を超える割合を占めることが望ましい。簡単に製造できるようにするため、電子受容層では単一の化合物を用いるとよい。
【0040】
還元電位がSCEを基準にして-0.5Vよりも大きな有機材料のうちで電子注入層の形成に使用できるもののいくつかの例として、ヘキサアザトリフェニレンの誘導体や、テトラシアノキノジメタンの誘導体などがある。
【0041】
電子受容層で使用される有機材料として、一般式(I)の化合物:
【化1】

が可能である。ただしR1〜R6は水素または置換基を表わし、その置換基は、ハロ、ニトリル(-CN)、ニトロ(-NO2)、スルホニル(-SO2R)、スルホキシド(-SOR)、トリフルオロメチル(-CF3)、エステル(-CO-OR)、アミド(-CO-NHRまたは-CO-NRR')、置換されたアリール、置換されていないアリール、置換されたヘテロアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されていないアルキルを含むグループの中から独立に選択される(RとR'は、置換されたアルキル、置換されていないアルキル、置換されたアリール、置換されていないアリールなどである)。あるいはR1とR2、またはR3とR4、またはR5とR6が合わさって環構造を形成する。環構造には、芳香族環、複素芳香族環、非芳香族環が含まれ、それぞれの環は置換されている場合と置換されていない場合がある。
【0042】
この定義に含まれる材料として、小分子、デンドリマー、ポリマーなどがある。例えばポリマーの場合、ヘキサアザトリフェニレン単位は、ポリマー骨格にぶら下がった基であるか、ポリマー骨格の一部となっていることが可能である。これらの化合物の調製方法は、Czarnikらによってアメリカ合衆国特許第4,780,536号に開示されている。
【0043】
電子受容層で使用される有機材料として特に可能なのは、一般式(Ia)の化合物:
【化2】


または一般式(Ib)の化合物:
【化3】


または一般式(Ic)の化合物:
【化4】


または一般式(Id)の化合物:
【化5】


または一般式(Ie)の化合物:
【化6】

である。
【0044】
電子受容層で使用される有機材料は、一般式(II)の化合物:
【化7】

でもよい。ただし、R1〜R4は水素または置換基を表わし、その置換基は、ニトリル(-CN)、ニトロ(-NO2)、スルホニル(-SO2R)、スルホキシド(-SOR)、トリフルオロメチル(-CF3)、エステル(-CO-OR)、アミド(-CO-NHRまたは-CO-NRR')、置換されたアリール、置換されていないアリール、置換されたヘテロアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されていないアルキルを含むグループの中から独立に選択される(RとR'は、置換されたアルキル、置換されていないアルキル、置換されたアリール、置換されていないアリールなどである)。あるいはR1とR2、またはR3とR4が合わさって環構造を形成する。環構造には、芳香族環、複素芳香族環、非芳香族環が含まれ、それぞれの環は置換されている場合と置換されていない場合がある。
【0045】
この定義に含まれる材料として、小分子、デンドリマー、ポリマーなどがある。例えばポリマーの場合、テトラシアノキノン単位は、ポリマー骨格にぶら下がった基であるか、ポリマー骨格の一部になっていることが可能である。これらの化合物の調製方法は、Ackerらによってアメリカ合衆国特許第3,115,506号に開示されている。
【0046】
電子受容層で使用される有機材料として特に可能なのは、一般式(IIa)の化合物:
【化8】


または一般式(IIb)の化合物:
【化9】

である。
【0047】
電子受容層の有効な厚さは、一般に3〜100nmである。
【0048】
“p型をドープされた有機層”という用語は、この有機層がドーピング後に半導特性を持ち、この層を流れる電流が実質的に正孔によって担われることを意味する。場合によっては存在するp型をドープされた有機層435は、本発明で使用する場合には、正孔の輸送をサポートできる少なくとも1種類の有機ホスト材料と、1種類のp型ドーパントを含んでいる。従来型OLEDデバイスで使用される正孔輸送材料は、p型をドープされた有機層のためのホスト材料の有用な1つのクラスである。好ましい材料としては、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1個の3価の窒素原子を含む芳香族第三級アミンなどがある。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。芳香族第三級アミンのより好ましいクラスは、VanSlykeらによってアメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されている少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。例示すると、N,N'-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4'-ジアミン(TPD)、N,N,N',N'-テトラナフチルベンジジン(TNB)などがある。芳香族アミンの別の好ましいクラスは、Kevin P. Klubekらによって2003年3月18日に「カスケード式有機エレクトロルミネッセンス・デバイス」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/390,973号に記載されているジヒドロフェナジン化合物である(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。上記の材料の組み合わせも、p型をドープされた有機層を形成するのに役立つ。より好ましいのは、p型をドープされた有機層435に含まれる有機ホスト材料が、NPB、TPD、TNB、4,4',4"-トリス(N-3-メチルフェニル-N-フェニルアミノ)-トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4',4"-トリス(N,N-ジフェニル-アミノ)-トリフェニルアミン(TDATA)、ジヒドロフェナジン化合物、またはこれらの組み合わせのいずれかになっていることである。
【0049】
p型をドープされた有機層435のp型ドーパントは、強い電子求引特性を有する酸化剤を含んでいる。“強い電子求引特性”とは、有機ドーパントがホストから何個かの電荷を受け取ってホスト材料と電荷移動錯体を形成できねばならないことを意味する。いくつか例示すると、有機化合物としては例えば2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)や、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)の他の誘導体などがあり、無機酸化剤としては例えばヨウ素、FeCl3、FeF3、SbCl5、他のいくつかの金属塩化物、他のいくつかの金属フッ化物などがある。p型ドーパントの組み合わせも、p型をドープされた有機層435を形成するのに役立つ。ドープするp型ドーパントの濃度は、0.01〜20容積%の範囲であることが好ましい。p型をドープされた有機層の厚さは、一般に150nm未満であるが、約1〜100nmの範囲であることが好ましい。
【0050】
中間接続層で用いるホスト材料は、小分子材料、またはポリマー材料、またはこれらの組み合わせを含むことができる。ホスト材料が上記の正孔輸送特性と電子輸送特性の両方を示すのであれば、同じホスト材料をn型をドープされた有機層とp型をドープされた有機層の両方で使用できる場合がある。n型をドープされた有機層またはp型をドープされた有機層のホストとして使用できる材料の例として、アメリカ合衆国特許第5,972,247号に記載されているさまざまなアントラセン誘導体、ある種のカルバゾール誘導体(例えば4,4-ビス(9-ジカルバゾリル)-ビフェニル(CPB))、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体(例えば4,4'-ビス(2,2'-ジフェニルビニル)-1,1'-ビフェニル)などがある。
【0051】
p型をドープされた有機層は、電子受容層とHTLの界面に単にHTL材料を堆積させることによって形成できる。本発明では、電子受容層とHTLのための材料は、互いにほんの少量だけが混合するように選択する。すなわち、電子受容層の少なくとも一部はHTL材料と混合しないことが重要である。
【0052】
中間接続層430に場合によっては含まれるインターフェイス層432は、本発明で使用する場合には、主に、n型をドープされた有機層のための材料と電子受容層のための材料の間で起こる可能性のある相互拡散を阻止するのに使用される。このインターフェイス層は、金属化合物または金属にすることができる。この層は、用いる場合には、有効な状態を維持しつつできるだけ薄くし、光学的損失を減らさなくてはならない。
【0053】
インターフェイス層432は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的酸化物または非化学量論的酸化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層432は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的硫化物または非化学量論的硫化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層432は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的セレン化物または非化学量論的セレン化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層432は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的テルル化物または非化学量論的テルル化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層432は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的窒化物または非化学量論的窒化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層432は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウムいずれかの化学量論的炭化物または非化学量論的炭化物、またはこれらの組み合わせの中から選択した金属化合物を含むことができる。インターフェイス層432で用いるのに特に有用な金属化合物は、MoO3、NiMoO4、CuMoO4、WO3、ZnTe、Al4C3、AlF3、B2S3、CuS、GaP、InP、SnTeの中から選択することができる。金属化合物は、MoO3、NiMoO4、CuMoO4、WO3の中から選択することが好ましい。
【0054】
金属化合物を用いる場合には、中間接続層に含まれるインターフェイス層432の厚さは、0.5nm〜20nmの範囲である。
【0055】
あるいはインターフェイス層432は、仕事関数が大きな金属層を含むことができる。この層を形成するのに使用される仕事関数が大きな金属は仕事関数が4.0eV以上であり、例として、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Al、In、Sn、またはこれらの組み合わせが挙げられる。仕事関数が大きな金属層は、Ag、Al、Cu、Au、Zn、In、Sn、またはこれらの組み合わせを含んでいることが好ましい。仕事関数が大きな金属層は、AgまたはAlを含んでいることがより好ましい。
【0056】
仕事関数が大きな金属層を用いる場合には、中間接続層に含まれるインターフェイス層432の厚さは、0.1nm〜5nmの範囲である。
【0057】
ELユニットのHTLのHOMO上の電子は、隣接する電子受容層のLUMOに容易に注入することができ、次いでその電子受容層に隣接するn型をドープされた有機層のLUMOに注入することができる。n型をドープされた有機層は電子を隣接するELユニットのETLに注入し、その電子は次いでLEL(発光領域)の中に移動し、一般にそのLEL内の発光ドーパント部位で正孔と再結合して光を出す。従来の中間接続層と比較すると、本発明の中間接続層を横断したときの電位低下(または電圧低下)を小さくすることと、光の透過率を大きくすることができる。中間接続層は有機層であるため、比較的低温で容易に形成することができる。したがって各中間接続層に含まれる有機層は、熱による蒸着法を利用して形成することが好ましい。
【0058】
中間接続層を合計した厚さは、一般に5nm〜200nmである。3つ以上の中間接続層がタンデム式OLEDに存在している場合には、中間接続層の厚さと材料の選択の一方または両方に関して同じでも異なっていてもよい。
【0059】
すでに説明したように、アノードとHTLの間に正孔注入層(HIL)を設けると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、あとに続く有機層の膜形成特性を向上させ、正孔輸送層に正孔を注入しやすくするのに役立つ。正孔輸送層で用いるのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物、アメリカ合衆国特許第6,127,004号、第6,208,075号、第6,208,077号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマー、いくつかの芳香族アミン(例えばm-MTDATA(4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))、無機酸化物(例えば酸化バナジウム(VOx)、酸化モリブデン(MoOx)、酸化ニッケル(NiOx))などがある。有機ELデバイスで有用であることが報告されている他の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号および第1 029 909 A1号に記載されている。中間接続層で使用するためのすでに説明したp型をドープされた有機層も、正孔注入材料の有用な1つのクラスである。アメリカ合衆国特許第6,720,573号に記載されているように、ヘキサアザトリフェニレン誘導体も有用なHIL材料である。
【0060】
カソードとETLの間に電子注入層(EIL)を設けると有用であることがしばしばある。中間接続層で使用するためのすでに説明したn型をドープされた有機層は、電子注入材料の有用な1つのクラスである。
【0061】
本発明のタンデム式OLEDは、支持用基板の上に設けられて、カソードまたはアノードがその基板と接するのが一般的である。基板と接する電極は、通常、底部電極と呼ばれる。一般に底部電極はアノードであるが、本発明がこの構成に限定されることはない。基板は、どの方向に光を出したいかに応じ、透過性または不透明にすることができる。透光特性は、基板を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は重要でないため、底部支持体は、光透過性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミック、回路板材料などがある。もちろんこのような構成のデバイスでは、透光性のある上部電極を設ける必要がある。
【0062】
EL光をアノード110を通して見る場合には、アノードは、興味の対象となる光に対して透明であるか、実質的に透明である必要がある。本発明で用いる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ-酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛-酸化物(IZO)、スズ酸化物であるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした酸化亜鉛、インジウムをドープした酸化亜鉛、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノード材料として用いることができる。EL光をカソード電極だけを通して見るような用途では、アノード材料の透過特性は重要でなく、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での具体的な導電性材料としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。典型的なアノード材料は、透過性であろうとなかろうと、仕事関数が4.0eV以上である。望ましいアノード材料は、一般に適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積される。アノード材料は、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。場合によっては、アノードの表面を研磨して凹凸を減らしてから他の層を堆積させることで、短絡を少なくしたり、反射率を大きくしたりすることができる。
【0063】
アノードだけを通して発光を見る場合には、本発明で使用するカソード170は、ほぼ任意の導電性材料で構成することができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。好ましい1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が原子比で1〜20%の割合で含まれたMgAg合金からなる。適切なカソード材料の別のクラスとして、有機層(例えば有機EILまたは有機ETL)に接触する薄い無機EILを備えていて、その上により厚い導電性金属層を被せた構成の二層がある。その場合、無機EILは、仕事関数が小さな金属または金属塩を含んでいることが好ましく、そうなっている場合には、より厚い被覆層は仕事関数が小さい必要がない。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。他の有用なカソード材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,861号、第5,059,862号、第6,140,763号に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0064】
カソードを通して発光を見る場合、カソードは、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料が含まれている必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第4,885,211号、第5,247,190号、第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、第6,278,236号、第6,284,393号、ヨーロッパ特許第1 076 368号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、一般に、蒸着、電子ビーム蒸着、イオン・スパッタリング、化学蒸着いずれかの方法によって堆積させる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。
【0065】
本発明によるタンデム式OLEDの有用な1つの構成を図5に示してある。タンデム式OLED500は、3つの有機ELユニットと2つの中間接続層を備えている。順番に、アノード510;1番目の有機ELユニット520.1(HIL521.1、HTL522.1、LEL523.1、ETL524.1が含まれている);1番目の中間接続層530.1(n型をドープされた有機層531.1と電子受容層533.1が含まれている);2番目の有機ELユニット520.2(HTL522.2、LEL523.2、ETL524.2が含まれている);2番目の中間接続層530.2(n型をドープされた有機層531.2と電子受容層533.2が含まれている);3番目の有機ELユニット520.3(HTL522.3、LEL523.3、ETL524.3、EIL526.3が含まれている);カソード570が存在している。図を見やすくするため、電源と導電性は図示していない。
【0066】
図5から明らかなように、中間接続層のn型をドープされた有機層は、有機ELユニットのETLに隣接させることができる。その場合には、ETLとn型をドープされた有機層の両方で同じ電子輸送材料を用いるとよい。しかし必ずしもそうする必要はなく、それぞれの層で電子輸送材料が異なっていてもよい。
【0067】
上記の有機材料は、気相法(例えば昇華)で堆積させることが好ましいが、流体(溶媒)から堆積させることもできる。溶媒を用いるのであれば、場合によっては結合剤も用いて膜の形成を改善する。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が有用であるが、他の方法(例えばスパッタリング、ドナー・シートからの熱転写)も利用することができる。昇華によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料からなる層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。パターニングされた堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現できる。
【0068】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で密封される。不活性な環境中でOLEDデバイスを密封する際には、有機接着剤、金属ハンダ、低融点ガラスのいずれかを用いて保護カバーを付着させることができる。一般に、ゲッターまたは乾燥剤も密封された空間に収容される。有用なゲッターおよび乾燥剤としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩などがある。封入と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx、テフロン(登録商標))や、交互に積層された無機層/ポリマー層が、封入法として知られている。
【0069】
本発明のOLEDデバイスでは、望むのであれば、よく知られたさまざまな光学的効果を利用して特性を向上させることができる。その中には、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止または反射防止のコーティングをディスプレイの表面に設けること、偏光媒体をディスプレイの表面に設けること、ディスプレイの発光領域と関係するカラー・フィルタ、中性フィルタ、カラー変換フィルタを設けることなどがある。フィルタ、偏光装置、グレア防止用または反射防止用コーティングは、カバーの表面に、またはカバーの一部として設けることもできる。
【0070】
白色発光または広帯域発光をカラー・フィルタと組み合わせてフル・カラー・ディスプレイまたはマルチカラー・ディスプレイにすることができる。カラー・フィルタとしては、赤フィルタ、緑フィルタ、青フィルタなどが可能である。例えばアメリカ合衆国特許出願公開2004/0113875 A1に記載されているように、赤フィルタ、緑フィルタ、青フィルタ、白フィルタを含むカラー・システムを用いることもできる。白の代わりにイエローまたはシアンを用いることができる。5色またはそれ以上のカラー・システムも有用である。
【0071】
OLEDデバイスはマイクロキャビティ構造を持つことができる。有用な一実施態様では、金属電極の一方は実質的に不透明かつ反射性であり、他方の電極は反射性かつ半透明である。反射性電極は、Au、Ag、Mg、Ca、またはこれらの合金の中から選択することが好ましい。2つの反射性金属電極が存在しているため、デバイスはマイクロキャビティ構造を有する。この構造内での強い光学的干渉によって共鳴条件が生まれる。共鳴波長に近い発光は増幅され、共鳴波長から離れた発光は抑制される。電極間に透明な光学的スペーサを配置して有機層の厚さを選択することにより、光路長を調節することができる。例えば本発明のOLEDデバイスは、反射性アノードと有機EL媒体の間にITOスペーサ層を備え、半透明なカソードがその有機EL媒体の上に載った状態にすることができる。
【0072】
本発明はたいていの構成のOLEDデバイスで使用することができる。その中には、単一のアノードとカソードを備える単純な構造から、より複雑なデバイス(例えば、エリア・カラー・ディスプレイや、画素を形成するアノードとカソードの直交アレイからなるパッシブ-マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)を用いて独立に制御されるアクティブ-マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。本発明は、OLEDが例えば固体発光ディスプレイやLCDディスプレイのバックライトの光源として利用されるデバイスでも使用することができる。
【実施例】
【0073】
以下の例は本発明をさらによく理解するために提示してある。以下の例では、較正された厚さモニター(INFICON IC/5堆積制御装置)を用いて有機層の厚さとドーピングの濃度をその場で制御して測定した。製造した全デバイスのEL特性は、定電流源(KEITHLEY 2400ソースメーター)と光度計(フォト・リサーチ社のスペクトラスキャンPR 650)を室温で用いて評価した。色は、国際照明委員会(CIE)座標を用いて記述する。
【0074】
例1(比較例)
従来型OLEDは以下のようにして製造する。
【0075】
透明なインジウム-スズ-酸化物(ITO)導電層でコーティングした厚さ約1.1mmのガラス基板を市販のガラス磨きツールを用いてクリーンにして乾燥させた。ITOの厚さは約42nmであり、ITOの面抵抗率は約68Ω/□である。次にITOの表面を酸化性プラズマで処理してその表面をアノードにした。RFプラズマ処理チェンバーの中でCHF3ガスを分解することにより、正孔注入層として厚さ1nmのCFx層をクリーンなITOの表面に堆積させた。次に基板を真空蒸着チェンバーに移し、基板の上に他のすべての層を堆積させた。約10-6トルという真空下で加熱したボートから蒸発させることにより、以下の層を以下の順番で堆積させた。
【0076】
1.ELユニット:
a)HTL、厚さ100nm、“4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル”(NPB)を含む;
b)LEL、厚さ20nm、1.0容積%の10-(2-ベンゾチアゾリル)-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H,11H(1)ベンゾピラノ(6,7,8-ij)キノリジン-11-オン(C545T)をドープされた“トリス(8-ヒドロキシキノリン)-アルミニウム”(Alq)を含む;
c)ETL、厚さ40nm、Alqを含む。
【0077】
2.カソード:厚さ約210nm、(約95容積%のMgと5容積%のAgを同時に蒸着することによって形成された)MgAgを含む。
【0078】
これらの層を堆積させた後、デバイスを蒸着チェンバーからドライ・ボックス(VACバキューム・アトモスフェア社)に移して封入した。このOLEDの発光面積は10mm2である。
【0079】
この従来型OLEDは、20mA/cm2を流すのに約6.8Vという駆動電圧を必要とする。この試験条件下でこのデバイスは、輝度が2164cd/m2、輝度効率が約10.8cd/Aである。CIExとCIEyは、それぞれ0.284と0.653であり、発光のピークは520nmの位置にある。EL性能に関するこれらデータを表1にまとめてある。
【0080】
例2(比較例)
タンデム式OLEDを例1と同様の製造方法で構成した。堆積させた層構造は以下の通りである。
【0081】
1.1番目のELユニット:
1番目のELユニットは、例1のELユニットと同じである。
【0082】
2.2番目のELユニット:
2番目のELユニットは、HTL(NPB層)の厚さを100nmではなく85nmにした点を除いて例1のELユニットと同じである。
【0083】
3.カソード:厚さ約210nm、MgAgを含む。
【0084】
このタンデム式OLEDは、20mA cm2を流すのに約38.5Vという駆動電圧を必要とする。この試験条件下でこのデバイスは、輝度が1410cd/m2、輝度効率が約7.1cd/Aである。CIExとCIEyは、それぞれ0.282と0.660であり、発光のピークは524nmの位置にある。EL性能に関するこれらデータを表1にまとめてある。
【0085】
2つのELユニットの間に中間接続層がないため、このタンデム式OLEDのEL性能は非常に低く、従来型OLEDの5倍の駆動電圧を必要とするのに従来型OLEDからの発光の70%未満である。この実施例は、タンデム式OLEDにおいてELユニットを接続している中間接続層が、タンデム式デバイスで大きな輝度効率を実現するのに重要な役割を担っていることを示している。
【0086】
例3(比較例)
別のタンデム式OLEDを例1と同様の製造方法で構成した。堆積させた層構造は以下の通りである。
【0087】
1.1番目のELユニット:
1番目のELユニットは、例1のELユニットと同じである。
【0088】
2.1番目の中間接続層:
金属層、厚さ10nm、Agを含む;
【0089】
3.2番目のELユニット:
2番目のELユニットは、HTL(NPB層)の厚さを100nmではなく75nmにした点を除いて例1のELユニットと同じである。
【0090】
4.カソード:厚さ約210nm、MgAgを含む。
【0091】
このタンデム式OLEDは、20mA/cm2を流すのに約28.7Vという駆動電圧を必要とする。この試験条件下でこのデバイスは、輝度が183cd/m2、輝度効率が約0.9cd/Aである。CIExとCIEyは、それぞれ0.288と0.654であり、発光のピークは524nmの位置にある。EL性能に関するこれらデータを表1にまとめてある。
【0092】
中間接続層としてAg層が2つのELユニットの間に存在しているが、この中間接続層は、アノードと接触している1番目のELユニットのETLのLUMOに電子を注入することができない。その結果、このタンデム式OLEDのEL性能は非常に悪く、駆動電圧は従来型OLEDの4倍も必要とするのに従来型OLEDからの発光の10%未満である。この例は、タンデム式OLEDにおいてELユニット同士を接続している中間接続層が、タンデム式デバイスの大きな発光効率を実現するのに重要な役割を果たしていることも示している。
【0093】
例4(比較例)
別のタンデム式OLEDを例1と同様の製造方法で構成した。堆積させた層構造は以下の通りである。
【0094】
1.1番目のELユニット:
a)HTL、厚さ100nm、NPBを含む;
b)LEL、厚さ20nm、1.0容積%のC545TをドープされたAlqを含む;
c)ETL、厚さ10nm、Alqを含む。
【0095】
2.1番目の中間接続層:
d)n型をドープされた有機層、厚さ30nm、1.2容積%のリチウムをドープされたAlqを含む;
e)p型をドープされた有機層、厚さ65nm、4容積%の2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)をドープされたNPBを含む;
【0096】
3.2番目のELユニット:
f)HTL、厚さ20nm、NPBを含む;
g)LEL、厚さ20nm、1.0容積%のC545TをドープされたAlqを含む;
h)ETL、厚さ40nm、Alqを含む。
【0097】
4.カソード:厚さ約210nm、MgAgを含む。
【0098】
このタンデム式OLEDは、20mA/cm2を流すのに約15.9Vという駆動電圧を必要とする。この試験条件下でこのデバイスは、輝度が4690cd/m2、輝度効率が約23.5cd/Aである。CIExとCIEyは、それぞれ0.290と0.659であり、発光のピークは524nmの位置にある。EL性能に関するこれらデータを表1にまとめてある。
【0099】
このタンデム式OLEDの2つのELユニットは、例1のELユニットと同じである。例1のデバイスと比較すると、例4のこのタンデム式OLEDの駆動電圧と輝度効率の両方とも、例1のデバイスの2倍を超えている。例1のデバイスの駆動電圧は20mA/cm2という試験条件下で約6.8Vであるため、例4のデバイスの駆動電圧は、有機中間接続層を横断するときに電圧低下がないのであれば、20mA/cm2という試験条件下で約6.8×2=13.6Vでなけらばならない。しかしデバイス全体で余分な2.3Vが存在している。これは、この有機中間接続層が最適なキャリア注入能力を持っていないことを示している可能性がある。したがって例4のタンデム式デバイスは例2および3よりも改善されているとはいえ、さらに改善の余地が残されている。さらに、p型をドープされた有機層は、2つの蒸発源を用いて形成されるため、製造の際の複雑さが増している。
【0100】
表1に、上記の例1〜4のEL性能をまとめてある。
【0101】
【表1】

【0102】
例5(比較例)
別のタンデム式OLEDを例1と同様の製造方法で構成した。堆積させた層構造は以下の通りである。
【0103】
1.ELユニット:
a)HTL、厚さ90nm、NPBを含む;
b)LEL、厚さ30nm、1.0容積%のC545TをドープされたAlqを含む;
c)EIL、厚さ30nm、1.2容積%のリチウムをドープされたAlqを含む。
【0104】
2.カソード:厚さ約210nm、MgAgを含む。
【0105】
この従来型OLEDは、20mA/cm2を流すのに約5.3Vという駆動電圧を必要とする。この試験条件下でこのデバイスは、輝度が2011cd/m2、輝度効率が約10.1cd/Aである。CIExとCIEyは、それぞれ0.285と0.653であり、発光のピークは522nmの位置にある。EL性能に関するこれらデータを表2にまとめてある。初期輝度が1000cd/m2のときの室温における輝度と動作時間の関係、駆動電圧と動作時間の関係を、それぞれ図6と図7に示してある。
【0106】
例6(比較例)
別のタンデム式OLEDを例1と同様の製造方法で構成した。堆積させた層構造は以下の通りである。
【0107】
1.1番目のELユニット:
a)HTL、厚さ90nm、NPBを含む;
b)LEL、厚さ30nm、1.0容積%のC545TをドープされたAlqを含む;
【0108】
2.1番目の中間接続層:
c)n型をドープされた有機層、厚さ30nm、1.2容積%のリチウムをドープされたAlqを含む;
d)金属化合物層、厚さ2nm、WO3を含む。
【0109】
3.2番目のELユニット:
2番目のELユニットは、HTL(NPB層)の厚さを90nmではなく80nmに変えた点を除いて実施例5のELユニットと同じである。
【0110】
4.カソード:厚さ約210nm、MgAgを含む。
【0111】
このタンデム式OLEDは、20mA/cm2を流すのに約11.9Vという駆動電圧を必要とする。この試験条件下でこのデバイスは、輝度が4268cd/m2、輝度効率が約21.3cd/Aである。CIExとCIEyは、それぞれ0.268と0.666であり、発光のピークは522nmの位置にある。EL性能に関するこれらデータを表2にまとめてある。初期輝度が1000cd/m2のときの室温における輝度と動作時間の関係、駆動電圧と動作時間の関係を、それぞれ図6と図7に示してある。
【0112】
このタンデム式OLEDの2つのELユニットは、n型をドープされた厚さ30nmの有機層と厚さ2nmのWO3層を含む中間接続層によって接続されている。例5のデバイスと比較すると、例6のこのタンデム式OLEDの駆動電圧と輝度効率の両方とも、例5のデバイスの2倍である。これは、このタンデム式OLEDにおいてWO3が有効な中間接続層を形成したことを示している。しかしWO3の蒸着温度は1000℃と高いため、製造が難しい。
【0113】
例7(本発明)
別のタンデム式OLEDを例1と同様の製造方法で構成した。堆積させた層構造は以下の通りである。
【0114】
1.1番目のELユニット:
a)HTL、厚さ90nm、NPBを含む;
b)LEL、厚さ30nm、1.0容積%のC545TをドープされたAlqを含む;
【0115】
2.1番目の中間接続層:
c)n型をドープされた有機層、厚さ30nm、1.2容積%のリチウムをドープされたAlqを含む;
d)電子受容層、厚さ10nm、一般式(Ia)のヘキサアザトリフェニレン誘導体を含む。
【0116】
3.2番目のELユニット:
2番目のELユニットは、HTL(NPB層)の厚さを90nmではなく80nmに変えた点を除いて実施例5のELユニットと同じである。
【0117】
4.カソード:厚さ約210nm、MgAgを含む。
【0118】
このタンデム式OLEDは、20mA/cm2を流すのに約10.3Vという駆動電圧を必要とする。この試験条件下でこのデバイスは、輝度が4284cd/m2、輝度効率が約21.4cd/Aである。CIExとCIEyは、それぞれ0.269と0.667であり、発光のピークは522nmの位置にある。EL性能に関するこれらデータを表2にまとめてある。初期輝度が1000cd/m2のときの室温における輝度と動作時間の関係、駆動電圧と動作時間の関係を、それぞれ図6と図7に示してある。
【0119】
このタンデム式OLEDの2つのELユニットは、n型をドープされた厚さ30nmの有機層と厚さ10nmの電子受容層を含む中間接続層によって接続されている。電子受容層に使用したヘキサアザトリフェニレン誘導体は、還元電位がSCEを基準にして-0.08Vであり、これは-0.5Vよりも大きい。例6のデバイスと比較すると、例7のこのタンデム式OLEDは、輝度効率が同じで駆動電圧がより低い。図6に示したこのタンデム式OLEDにおける輝度の低下と動作時間の関係は、例6のデバイスと似ている。しかし図7に示したこのタンデム式OLEDにおける電圧の上昇と動作時間の関係は、700時間動作させた後に0.2V未満である。これは、例6のデバイス(700時間動作させた後の電圧の上昇は0.5Vである)よりも小さい。さらに、この有機材料の気化はWO3よりもはるかに容易であるため、製造には何らの困難もなかろう。
【0120】
例8
本発明による別のタンデム式OLEDを例1と同様の製造方法で構成した。堆積させた層構造は以下の通りである。
【0121】
1.1番目のELユニット:
a)HTL、厚さ90nm、NPBを含む;
b)LEL、厚さ30nm、1.0容積%のC545TをドープされたAlqを含む;
【0122】
2.1番目の中間接続層:
c)n型をドープされた有機層、厚さ30nm、1.2容積%のリチウムをドープされたAlqを含む;
d)電子受容層、厚さ5nm、一般式(Ia)のヘキサアザトリフェニレン誘導体を含む。
【0123】
3.2番目のELユニット:
2番目のELユニットは、HTL(NPB層)の厚さを90nmではなく85nmに変えた点を除いて実施例5のELユニットと同じである。
【0124】
4.カソード:厚さ約210nm、MgAgを含む。
【0125】
このタンデム式OLEDは、20mA/cm2を流すのに約11.0Vという駆動電圧を必要とする。この試験条件下でこのデバイスは、輝度が4524cd/m2、輝度効率が約22.6cd/Aである。CIExとCIEyは、それぞれ0.268と0.668であり、発光のピークは522nmの位置にある。EL性能に関するこれらデータを表2にまとめてある。初期輝度が1000cd/m2のときの室温における輝度と動作時間の関係、駆動電圧と動作時間の関係を、それぞれ図6と図7に示してある。
【0126】
このタンデム式OLEDの2つのELユニットは、n型をドープされた厚さ30nmの有機層と厚さ5nmの電子受容層を含む中間接続層によって接続されている。電子受容層に使用したヘキサアザトリフェニレン誘導体は、還元電位がSCEを基準として-0.5Vよりも大きい。例6のデバイスと比較すると、例8のこのタンデム式OLEDは、輝度効率がより大きくて駆動電圧がより低い。図6に示したこのタンデム式OLEDにおける輝度の低下と動作時間の関係は、例6のデバイスと似ている。しかし図7に示したこのタンデム式OLEDにおける電圧の上昇と動作時間の関係は、700時間動作させた後に0.2V未満である。これは、例6のデバイス(700時間動作させた後の電圧の上昇は0.5Vである)よりも小さい。もちろんこの有機材料の気化はWO3よりもはるかに容易であるため、製造には何らの困難もなかろう。
【0127】
表2に、上記の例5〜8のEL性能をまとめてある。
【0128】
【表2】

【0129】
例9(比較例)
別の従来型OLEDを例1と同様の製造方法で構成した。堆積させた層構造は以下の通りである。
【0130】
1.ELユニット:
a)HTL、厚さ75nm、NPBを含む;
b)LEL、厚さ20nm、Alqを含む;
c)ETL、厚さ40nm、Alqを含む。
【0131】
2.カソード:厚さ約205nm、MgAgを含む。
【0132】
この従来型OLEDは、20mA/cm2を流すのに約6.8Vという駆動電圧を必要とする。この試験条件下でこのデバイスは、輝度が516cd/m2、輝度効率が約2.6cd/Aである。発光のピークは524nmの位置にある。動作安定性をT90(20mA/cm2、20℃)として測定した(すなわち20℃、20mA/cm2で動作させたときに輝度が初期値の90%を維持する時間)。T90は約300時間である。EL性能に関するこれらデータを表3にまとめてある。
【0133】
例10(比較例)
別のタンデム式OLEDを例1と同様の製造方法で構成した。堆積させた層構造は以下の通りである。
【0134】
1.1番目のELユニット:
a)HTL、厚さ75nm、NPBを含む;
b)LEL、厚さ20nm、Alqを含む;
c)ETL、厚さ5nm、Alqを含む。
【0135】
2.1番目の中間接続層:
d)n型をドープされた有機層、厚さ4nm、1.5容積%のリチウムをドープされたAlqを含む;
e)純粋なF4-TCNQ層、厚さ1nm。
【0136】
3.2番目のELユニット:
f)HTL、厚さ20nm、NPBを含む;
g)LEL、厚さ20nm、Alqを含む;
h)ETL、厚さ40nm、Alqを含む。
【0137】
4.カソード:厚さ約205nm、MgAgを含む。
【0138】
このタンデム式OLEDは、20mA/cm2を流すのに約11.9Vという駆動電圧を必要とする。この試験条件下でこのデバイスは、輝度が853cd/m2、輝度効率が約4.3cd/Aである。発光のピークは536nmの位置にある。動作安定性をT90(20mA/cm2、20℃)として測定した。T90は約50時間である。EL性能に関するこれらデータを表3にまとめてある。
【0139】
例10から、F4-TCNQは還元電位がSCEを基準として-0.5Vよりも大きいにもかかわらず(F4-TCNQの還元電位は、1:1=MeCN/トルエン有機溶媒系の中で測定するとSCEを基準として約0.64Vであった)、分子のサイズが非常に小さいために電子受容層の純粋な層または主要成分として用いるのには適していないことがわかった。GaoらによってApplied Physics Letters、第79巻、4040ページ、2001年に示されているように、このような小分子は望ましくない膜形成特性を持つことがしばしばあり、拡散性が大きい。NPBをF4-TCNQの上に堆積させる場合には、F4-TCNQからなる純粋な電子受容膜が維持されないと考えられている。得られるOLEDデバイスは動作安定性が非常に悪い。電子受容層で役立つ材料は、分子量が350を超えることが好ましい。
【0140】
【表3】

【0141】
本発明をいくつかの好ましい実施態様を特に参照して詳細に説明してきたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく変形や変更をなしうることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】(N-1)個の中間接続層によって直列に接続されたN個(N≧1)のELユニットを備える本発明のタンデム式OLEDの概略断面図である。
【図2】2個の中間接続層によって直列に接続された3個のELユニットを備える本発明の特別なタンデム式OLEDの概略断面図である。
【図3】HTLとLELとETLを備える本発明の特別なELユニットの概略断面図である。
【図4A】本発明の一実施態様によるタンデム式OLEDに含まれる有機中間接続層の概略断面図である。
【図4B】本発明の別の一実施態様によるタンデム式OLEDに含まれる有機中間接続層の概略断面図である。
【図4C】本発明の別の一実施態様によるタンデム式OLEDに含まれる有機中間接続層の概略断面図である。
【図4D】本発明の別の一実施態様によるタンデム式OLEDに含まれる有機中間接続層の概略断面図である。
【図5】2個の中間接続層によって直列に接続された3個のELユニットを備える本発明の特別なタンデム式OLEDの概略断面図である。
【図6】初期輝度が1000cd/m2のときの室温における輝度と経過時間の関係を示すグラフである。
【図7】初期輝度が1000cd/m2のときの室温における駆動電圧と経過時間の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0143】
100 タンデム式OLED
110 アノード
120.1 1番目のELユニット
120.2 2番目のELユニット
120.3 3番目のELユニット
120.(N-1) (N-1)番目のELユニット
120.N N番目のELユニット
130.1 1番目の中間接続層
130.2 2番目の中間接続層
130.(N-1) (N-1)番目の中間接続層
170 カソード
180 電圧/電流源
190 導電線
200 3つのELユニットを備えるタンデム式OLED
320 ELユニット
322 正孔輸送層(またはHTL)
323 発光層(またはLEL)
324 電子輸送層(またはETL)
430 中間接続層
431 n型をドープされた有機層
432 インターフェイス層
433 電子受容層
435 p型をドープされた有機層
500 タンデム式OLED
510 アノード
520.1 1番目のELユニット
520.2 2番目のELユニット
520.3 3番目のELユニット
521.1 1番目のELユニットのHIL
522.1 1番目のELユニットのHTL
522.2 2番目のELユニットのHTL
522.3 3番目のELユニットのHTL
523.1 1番目のELユニットのLEL
523.2 2番目のELユニットのLEL
523.3 3番目のELユニットのLEL
524.1 1番目のELユニットのETL
524.2 2番目のELユニットのETL
524.3 3番目のELユニットのETL
530.1 1番目の中間接続層
530.2 2番目の中間接続層
531.1 1番目の中間接続層のn型をドープされた有機層
531.2 2番目の中間接続層のn型をドープされた有機層
533.1 1番目の中間接続層の電子受容層
533.2 2番目の中間接続層の電子受容層
526.3 3番目のELユニットのEIL
570 カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アノードと;
b)カソードと;
c)上記アノードと上記カソードの間に配置されていて、少なくとも1つの正孔輸送層と1つの有機発光層とをそれぞれが含む少なくとも2つのエレクトロルミネッセンス・ユニットと;
d)隣り合ったエレクトロルミネッセンス・ユニットの間に配置されていて、n型をドープされた有機層と、このn型をドープされた有機層よりも上記カソードの近くに配置された電子受容層とを含む中間接続層とを備えていて、上記電子受容層が、1種類以上の有機材料を含んでおり、各有機材料の還元電位は、飽和カロメル電極を基準として-0.5Vよりも大きく、その1種類以上の有機材料が、上記電子受容層の50容積%を超える割合を占めているタンデム式OLED。
【請求項2】
上記1種類以上の有機材料が、飽和カロメル電極を基準として-0.1Vよりも大きい還元電位を持つ、請求項1に記載のタンデム式OLED。
【請求項3】
3つのエレクトロルミネッセンス・ユニットと2つの中間接続層が存在していて、それぞれの中間接続層が隣り合ったエレクトロルミネッセンス・ユニットの間に配置されている、請求項1に記載のタンデム式OLED。
【請求項4】
上記電子受容層の厚さが3nm〜100nmの範囲である、請求項1に記載のタンデム式OLED。
【請求項5】
上記電子受容層に含まれる上記1種類以上の有機材料が、以下の一般式で表わされる化合物:
【化1】

を含む(ただし、R1〜R6は水素または置換基を表わし、その置換基は、ハロ、ニトリル(-CN)、ニトロ(-NO2)、スルホニル(-SO2R)、スルホキシド(-SOR)、トリフルオロメチル(-CF3)、エステル(-CO-OR)、アミド(-CO-NHRまたは-CO-NRR')、置換されたアリール、置換されていないアリール、置換されたヘテロアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されていないアルキルを含むグループの中から独立に選択される(RとR'は、置換されたアルキル、置換されていないアルキル、置換されたアリール、置換されていないアリールなどである)か、あるいはR1とR2、またはR3とR4、またはR5とR6が合わさって環構造を形成しており、環構造には、芳香族環、複素芳香族環、非芳香族環が含まれ、それぞれの環は置換されている場合と置換されていない場合がある)、請求項1に記載のタンデム式OLED。
【請求項6】
上記電子受容層に含まれる上記1種類以上の有機材料に
【化2】

が含まれる、請求項5に記載のタンデム式OLED。
【請求項7】
上記電子受容層に含まれる上記1種類以上の有機材料に、以下の一般式で表わされる化合物:
【化3】

が含まれる(ただし、R1〜R4は水素または置換基を表わし、その置換基は、ニトリル(-CN)、ニトロ(-NO2)、スルホニル(-SO2R)、スルホキシド(-SOR)、トリフルオロメチル(-CF3)、エステル(-CO-OR)、アミド(-CO-NHRまたは-CO-NRR')、置換されたアリール、置換されていないアリール、置換されたヘテロアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されていないアルキルを含むグループの中から独立に選択される(RとR'は、置換されたアルキル、置換されていないアルキル、置換されたアリール、置換されていないアリールなどである)か、あるいはR1とR2、またはR3とR4が合わさって環構造を形成しており、環構造には、芳香族環、複素芳香族環、非芳香族環が含まれ、それぞれの環は置換されている場合と置換されていない場合がある)、請求項1に記載のタンデム式OLED。
【請求項8】
上記電子受容層に含まれる上記1種類以上の有機材料に
【化4】

が含まれる、請求項7に記載のタンデム式OLED。
【請求項9】
上記電子受容層に含まれる上記1種類以上の有機材料に、分子量が350よりも大きい化合物が含まれる、請求項1に記載のタンデム式OLED。
【請求項10】
上記化合物が上記電子受容層の90容積%を超える割合を占める、請求項9に記載のタンデム式OLED。
【請求項11】
上記中間接続層が互いに異なっている、請求項1に記載のタンデム式OLED。
【請求項12】
上記エレクトロルミネッセンス・ユニットが、個別に、赤色光、緑色光、青色光、白色光のいずれかを発生させる、請求項1に記載のタンデム式OLED。
【請求項13】
n型をドープされた上記有機層が、1種類の電子輸送材料と、少なくとも1種類のn型ドーパントとを含む、請求項1に記載のタンデム式OLED。
【請求項14】
上記電子輸送材料に、金属キレート化オキシノイド化合物、ブタジエン誘導体、複素環式蛍光剤、トリアジン、ヒドロキシキノリン誘導体、ベンズアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項13に記載のタンデム式OLED。
【請求項15】
上記電子輸送材料に、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(Bphen)、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)、2,2'-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイルビス[4,6-(p-トリル)-1,3,5-トリアジン](TRAZ)、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項13に記載のタンデム式OLED。
【請求項16】
上記n型ドーパントに、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、希土類金属、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項13に記載のタンデム式OLED。
【請求項17】
上記n型ドーパントに、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybのいずれか、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項13に記載のタンデム式OLED。
【請求項18】
上記中間接続層が、p型をドープされた有機層を上記電子受容層と接触した位置にさらに備えていて、p型をドープされたその有機層が上記電子受容層よりもカソードの近くに位置する、請求項1に記載のタンデム式OLED。
【請求項19】
上記中間接続層が、n型をドープされた上記有機層と上記電子受容層の間に配置されたインターフェイス層をさらに備えていて、そのインターフェイス層が金属または金属化合物を含んでいる、請求項1に記載のタンデム式OLED。
【請求項20】
請求項1に記載のタンデム式OLEDを備えるOLED固体発光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−532229(P2008−532229A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557095(P2007−557095)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/006023
【国際公開番号】WO2006/091560
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】