有機化合物のガレヌス製剤
本出願は、コアおよび外側被覆を有する錠剤形態の経口投与用固形単位剤形であって、前記錠剤のコアは治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を含み、かつ外側被覆は、風味遮蔽特性および/または制御放出機能を有するフィルムコートの形態である固形単位剤形に関する。好ましくは、コア錠剤は、多粒子系、とりわけミニ錠剤の一部である。該固形経口剤形は、小児での使用にとりわけ適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な担体媒体中に活性成分として、経口で活性なレニン阻害剤である、アリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、とりわけそのヘミフマル酸塩、およびフィルムコートの形態での外側被覆を含む、固形経口剤形に関する。詳細には、本発明は、疾患の結果として、または年齢のため嚥下に伴う諸問題に遭遇する小児集団および/または患者における疾患または状態の治療で使用するための、アリスキレン、またはその薬学的に許容される塩、とりわけそのヘミフマル酸塩を単独でまたは別の活性薬剤と組み合わせて含む固形経口剤形を提供する。本発明は、また、前記固形経口剤形の調製方法、および薬剤としてのその使用に関する。
【0002】
以下で、用語「アリスキレン」は、特別に定義しない限り、遊離塩基、およびその塩、特にその薬学的に許容される塩、とりわけそのヘミフマル酸塩の双方と理解されるものとする。
【0003】
腎臓から放出されるレニンは、循環中のアンジオテンシノーゲンを開裂させてデカペプチドであるアンジオテンシンIを形成する。これは、次に、肺、腎臓およびその他の臓器中のアンジオテンシン変換酵素によって開裂され、オクタペプチドであるアンジオテンシンIIを形成する。該オクタペプチドは、直接的には動脈血管収縮により、および間接的には副腎からナトリウムイオン貯留ホルモンであるアルドステロンを細胞外液量の増加を伴って遊離することにより、その双方で血圧を上昇させる。レニンの酵素活性阻害剤は、アンジオテンシンIの形成の低下を引き起こす。結果として、より少量のアンジオテンシンIIが産生される。その活性ペプチドホルモンの濃度低下は、例えば、レニン阻害剤の降圧効果の直接原因である。したがって、レニン阻害剤またはその塩を、例えば、降圧剤として、または鬱血性心不全を治療するために採用することができる。
【0004】
レニン阻害剤であるアリスキレン、とりわけそのヘミフマル酸塩は、血圧を下げる治療において有効であることが知られており、かつまた十分に耐容性である。遊離塩基の形態のアリスキレンは、次式
【0005】
【化1】
で表され、化学的には2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロピル)フェニル]−オクタンアミドと定義される。前記のように、最も好ましいのは、そのヘミフマル酸塩であり、それは、欧州特許出願公開第678503号に実施例83として具体的に開示されている。
【0006】
高血圧症の子供において、アリスキレンを単剤療法として、または他の降圧剤と組み合わせて用いる研究は、今日まで実施されていない。アリスキレンは、新規な部類の降圧剤の最初のものなので(Daughertyら、2008年)、それは、高血圧症を有する0.5〜17歳の子供に対して利用可能なその他の現行療法と比較して潜在的な利益を提供する。
【0007】
子供における高血圧症の有病率が増加しているので(Sorofら、2004年)、現在利用可能な治療に対する代案が、重要性を増している。アリスキレンは、肥満の成人患者において、正常なボディマスインデックス(BMI)の患者と比較して類似の有効性を有することが示されているので、本態性高血圧症を有する6〜17歳の子供において、とりわけ重要である可能性がある(Jensenら、2008年)。肥満は、学齢に達した子供および青年における本態性高血圧症の主要な誘因であると考えられている(Weinbergerら、2008年)。
【0008】
子供の高血圧症は、成人の高血圧症に比べてそれほど広くは認められないが、腎機能不全、心疾患または糖尿病と組み合わされた高血圧症を有する小児患者は、薬理学的薬剤を用いる療法をより必要とすると思われるので、未対処の医学的要求を提示する。加えて、学齢に達した子供および青年における肥満の有病率の増加は、世界的に、増大する小児高血圧症の難題の基礎となる(Weinbergerら、2008年)。このことは、対照無作為化臨床試験によって支持された推奨小児投与量および年齢にふさわしい小児用薬物製剤の欠如によってさらに複雑になる。
【0009】
現在利用可能な薬剤としては、ACE阻害剤、カルシウムチャネル遮断剤、β遮断剤、およびARBが挙げられる。438名の北米小児腎臓病専門医での最近の調査は、ほとんどの医師が、原発性高血圧症の一次治療においてアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE)を、次にカルシウムチャネル遮断剤を使用したことを指摘した(それぞれ、47%および38%)。β遮断剤は、回答者のわずか7%によって第一選択剤として使用され、二次療法では17%によって使用された(ChesneyおよびJones、2007年)。ヒドロクロロチアジド(HCTZ)などの利尿剤も、小児患者における高血圧症の治療で使用されてきたが、これまで、HCTZを用いた小児高血圧症の対照化研究は行われていない。
【0010】
アリスキレンなどの新たな降圧治療の選択肢は、医師が成人における上に挙げた問題点に対処するのを助ける可能性がある。今日まで、子供におけるアリスキレンを用いる高血圧症の治療に関する研究;異なる作用機序を提供し、それによって0.5〜17歳の高血圧症の子供のための治療代案を提供する潜在能力を有する薬物は存在しなかった。
【0011】
小児での使用において、溶液剤、散剤、顆粒剤、錠剤もしくはフィルムコート錠、またはカプセル剤の形態での医薬剤の経口投与は、非経口投与、すなわち、i.v.またはi.m.投与などの代わりの投与形態に優るいくつかの利点を有する。痛い注射製剤での治療を必要とする疾患は、経口剤形で治療できるそれらの状態に比べてより深刻であると考えられる。しかし、経口製剤に伴う主な利点は、それらが自己投与への適合性を保持することであり、一方、非経口製剤は、ほとんどの場合に医師またはパラメディカル従事者によって投与される必要がある。
【0012】
市販のアリスキレンは、下が150mgまでの強度の即時放出性フィルムコート錠としての経口剤形で利用できる。これは、直径がほぼ11mm、厚さがほぼ4mmの分割できない円形錠剤であり、したがって、強度、用量の柔軟性、患者の認容性(嚥下能力)および大きさに関して、小児用製剤の要件を満たさない。
【0013】
また、原体の物理−化学的特性および極度に苦い風味は、0.5〜17歳の子供のための配慮の標準である液体または経口製剤の開発を妨げる。
【0014】
したがって、子供の高血圧症を治療するための治療レジメ、さらには市販のアリスキレン即時放出性フィルムコート錠の小児への適用に関する欠陥を除いた小児用アリスキレン製剤、すなわち、子供に適用するのに要求される大きさ、用量の柔軟性、および風味を有し、かつ市販医薬品に類似したバイオアベイラビリティーを維持する製剤を開発および提供することは、未対処の難題である。
【0015】
しかし、子供に適しているシロップ剤およびその他の液体製剤などの一般的に使用される小児用製剤のほとんどは、アリスキレンの物理−化学的特性および極度に苦い風味のため要求されず、そのことが、このような一般的に使用される小児用製剤の開発を妨げる。子供にとって認容できる風味を達成するのに十分な風味遮蔽を提供する甘味剤および/または風味剤および/または粘度調整剤を突きとめることができないので、例えば、アリスキレンの液体製剤を開発することは実現不可能であることが見出された。例えば苦味のより少ない風味を有する懸濁剤の形態での液体製剤の開発は、アリスキレン化合物の極めて高い水溶性(pH1から8の間で350g/lを超える)のため、さらに妨げられた。さらに、以前の臨床研究は、液状アリスキレン製剤のバイオアベイラビリティーが固形経口形態のそれと比べてより低いことを示した。
【0016】
また、大きな表面積での風味遮蔽を達成するのに必要と予想される多量のポリマーは、提案された年齢群の小児への使用にとって許容し得るものではないので、再構成のための被覆散剤または被覆顆粒剤は、適切とは考えられなかった。さらに、アリスキレンの物理−化学的特性は、また、該化合物の高い吸湿性のため、被覆散剤または被覆顆粒剤に好都合ではない。アリスキレンのこの高吸湿性は、成人集団用に限られた市販のアリスキレンフィルムコート錠製剤にとって問題であることが既に示されている水分取込みおよびその安定性に対する影響のため、このような大きな表面積を有する医薬品/製剤の開発に異を唱える。さらに、原体は、その多形的性質を、医薬品の安定性に対して有害な効果を有する可能性のある非晶性に変えるので、アリスキレンと共に層化されたフィルムコートされたペレット剤も、剤形として適切であるとは考えられなかった。
【0017】
また、信頼できる確固たる方法で錠剤形態の経口製剤を調製することは、技術的に困難であることが知られていた。
【0018】
これらの困難の1つは、例えば、原体のバルク特性、例えば流動特性および嵩密度に否定的影響を及ぼす、アリスキレンの針状形状の晶癖によって引き起こされる。原体の圧縮性は乏しく、加圧下での弱い粒子間結合および多形現象の変化につながる。アリスキレンは、粒子間結合の弱化にもつながる強い弾性構成要素を有する。原体品質は、変わりやすく、錠剤の加工性、例えば、粒度分布、嵩密度、流動性、湿潤性、表面積、および固着性に対して影響を与える。
【0019】
さらに、アリスキレンは高度に吸湿性である。水と接触すると、原体の多形現象は、結晶性状態と比較して劣った安定性を示す非晶性状態に変化する。これらの障害の組合せは、標準的な錠剤製造法を極度に困難にする。
【0020】
直接圧縮は、例えば、針状形状の粒子構造、加工性の問題を生じる不十分な流動性、および用量の均一性に関する問題のため、アリスキレンの定型的製造にとって実行可能な選択肢でない。
【0021】
小児での使用のために考えられることもある別の剤形は、少量の軟らかい食品、例えばプディングまたは潰した野菜と一緒にしてまたは一緒にしないで提供できるミニ錠剤の形態の製剤である。しかし、前に要約した技術的困難の組合せは、国際公開第2005/089729号に記載のような、ミニ錠剤を製造するための標準的な錠剤製造法を極度に困難にする。これらの技術的困難のため、この選択肢も、許容される結果につながるとは思われない。
【0022】
アリスキレンの製剤化における技術的困難にもかかわらず、多くの技術的困難を克服し、かつコアおよび外側被覆を有するミニ錠剤の形態での経口投与のためのアリスキレン固形単位剤形を提供することを可能にする、適切な方法の適合化が、ミニ錠剤の製造に関する本発明の範囲内で展開された。ここで、
・前記錠剤のコアは、治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を含み、かつ
・外側被覆は、風味遮蔽特性および/または制御放出機能を有するフィルムコート、とりわけアリスキレン化合物の苦い風味を遮蔽する能力のあるフィルムコートの形態である。
【0023】
詳細には、本発明は、技術、投与および薬物動態学的要件に合致する、年齢にふさわしい小児用製剤としての被覆されたミニ錠剤の形態での経口投与用のアリスキレン固形単位剤形を提供する。
【0024】
本発明による単位剤形は、子供における適用に限定されないが、例えば、患者の疾患または年齢のため、嚥下に関して困難を伴う患者において一般的に使用できる。
【0025】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の前記のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記ミニ錠剤は、1mmから3mmの間、とりわけ1.25mmから2.5mmの間、さらにとりわけ1.5mmから2.5mmの間の大きさを有する。
【0026】
本発明の一実施形態において、ミニ錠剤は、2mmの大きさを有する。
【0027】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の前記のようなミニ錠剤の形態の固形単位剤形が提供され、ここで、前記ミニ錠剤は、すべてがアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩からなる活性薬剤を、単位剤形当たり約2mgから約4mgの間の範囲の遊離塩基量、とりわけ、単位剤形当たり約2.5mgから3.5mgの間の範囲の遊離塩基量で含む。
【0028】
本発明の一実施形態において、ミニ錠剤は、錠剤当たり3.125mgのアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0029】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の前記のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、制御放出機能を有する。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記フィルムコートは、pHに依存する放出プロファイルを有する。
【0031】
一実施形態において、本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、約2のpHで、10分後に約75%以下の、20分後に約96%以下の、および30分後に約98%以下のアリスキレンのin vitro溶出をもたらす(バリアントA)。
【0032】
一実施形態において、本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、約4.5のpHで、10分後に約70%以下の、20分後に約95%以下の、および30分後に約98%以下のアリスキレンのin vitro溶出をもたらす(バリアントA)。
【0033】
一実施形態において、本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、約6.8のpHで、10分後に約4%以下の、20分後に約32%以下の、および30分後に約70%以下のアリスキレンのin vitro溶出をもたらす(バリアントA)。
【0034】
一実施形態において、本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、フィルム形成剤として塩基性ブチル化メタクリレートコポリマーを含む。
【0035】
一実施形態において、本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、フィルム形成剤中に、フィルム形成剤としてのエチルセルロース水性分散液、および任意選択で細孔形成剤としてのヒプロメロースを含む。
【0036】
一実施形態において、本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、フィルム形成剤としてアンモニウムメタクリレートコポリマー、とりわけアンモニウムメタクリレートコポリマーA型および/またはアンモニウムメタクリレートコポリマーB型を含む。
【0037】
一実施形態において、固形単位剤形、とりわけ本発明による、および本明細書に記載のような固形経口剤形は、小児集団における疾患または状態の治療で使用するために、治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、とりわけそのヘミフマル酸塩を含む経口投与のために提供される。
【0038】
一実施形態において、固形単位剤形、とりわけ本発明による、および本明細書に記載のような固形経口剤形は、高血圧症、鬱血性心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎障害、糖尿病性心筋症、腎機能不全、末梢血管疾患、左心室肥大、認知機能障害、脳卒中、頭痛、および慢性心不全の治療で使用するために提供される。
【0039】
定義:
用語「有効量」または「治療有効量」は、治療している状態の進行を停止または減速する、あるいはそうでなければ該状態に対して完全もしくは部分的に治癒するか緩和的に作用する、活性な成分または薬剤の量を指す。
【0040】
用語「アリスキレン」は、次式
【0041】
【化2】
によって表される化合物を指し、化学的には2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)フェニル]−オクタンアミドと定義される。
【0042】
前記および後記において、用語「アリスキレン」は、特別に規定しない限り、遊離塩基およびその塩、特に、そのヘミフマル酸塩、硫酸水素塩、オロチン酸塩、または硝酸塩などの薬学的に許容される塩、最も好ましくはそのヘミフマル酸塩の双方と解釈されるものとする。前記のように、最も好ましいのは、欧州特許出願公開第678503号に実施例83として具体的に開示されている、そのヘミフマル酸塩である。アリスキレン、とりわけ、そのヘミフマル酸塩は、年齢、性別または人種に無関係に血圧降下治療において有効であることが知られているレニン阻害剤であり、また十分に耐容性である。
【0043】
用語「放出」は、本明細書中で使用する場合、医薬経口剤形が体液と接触し、該体液が、薬物(複数可)を剤形の外部の剤形を取り囲む体液中に輸送する過程を指す。患者において所定の剤形によって提示される送達速度と送達継続期間との組合せは、そのin vivo放出プロファイルとして記述できる。剤形の放出プロファイルは、種々の放出速度および放出継続期間を提示することができ、連続的であってもよい。連続的な放出プロファイルとしては、1種または複数の活性成分が、一定または変動する速度のどちらかで連続的に放出される放出プロファイルが挙げられる。
【0044】
本出願の目的に関して、即時放出性製剤は、特別な製剤設計または製造方法によって故意に調節されていない、活性物質(複数可)の放出を示す製剤である。
【0045】
本出願の目的に関して、「調節放出製剤」は、特別な製剤設計または製造方法によって故意に調節されている、活性物質(複数可)の放出を示す製剤である。この調節放出は、典型的には、活性成分の放出時間を遅延させることによって獲得することができる。典型的には、本発明の目的に関して、調節放出は、30〜60分遅延された放出を指す。
【0046】
用語「時間遅延(time delay)」は、本明細書中で使用する場合、本発明の組成物を含む剤形の投与とその特定の構成要素からの活性成分の放出との間の時間を指す。
【0047】
用語「時間差(lag time)」は、本明細書中で使用する場合、剤形中の1つの構成要素からの活性成分の放出と、剤形中の別の構成要素からの活性成分の放出との間の時間を指す。
【0048】
用語「崩壊」は、本明細書中で使用する場合、医薬経口剤形が、典型的には体液によって、単独粒子にばらばらになり、分散される過程を指す。崩壊は、固形経口剤形が、不溶性被覆またはカプセル殻の断片を除き、存在するなら試験装置の網上に残存している固形経口剤形の任意の残留物が、米国薬局方<701>による明白に堅いコアを有さない軟質塊である状態である場合に達成される。崩壊特性を判定するための流体は、水道水または脱イオン水などの水である。崩壊時間は、当業者に公知の標準的な方法によって測定され、米国薬局方<701>および欧州薬局方2.9.1および日本薬局方中に示されたハーモナイズされた方法を参照されたい。
【0049】
用語「溶出」は、本明細書中で使用する場合、固形物質、ここでは活性成分が、媒体中に分子の形態で分散される過程を指す。本発明の医薬経口剤形中の活性成分の溶出速度は、液体/固体の界面、温度および溶媒組成に関する標準化された条件下で単位時間に溶液中に移行する原体の量によって定義される。溶出速度は、当業者に公知の標準的な方法で測定され、米国薬局方<711>および欧州薬局方2.9.3および日本薬局方中に示されたハーモナイズされた方法を参照されたい。本発明の目的に関して、試験は、個々の活性成分の溶出を測定するためであり、米国薬局方<711>に従って、100rpm(1分当たりの回転数)のバスケット法を使用し、pH2.0で実施される。溶出媒体は、好ましくは緩衝液、典型的にはリン酸緩衝液、特に実施例「溶出試験」に記載のような緩衝液である。緩衝液のモル濃度は、好ましくは0.1Mである。
【0050】
用語「ミニ錠剤」は、本出願の範囲内で、それらの非被覆形態で総重量が約2〜30mg、例えば約4〜9mg、例えば約7mgの小さな錠剤を意味する。ミニ錠剤は、本明細書中で定義されるような特定の多粒子形態である。それらは、粒子、顆粒またはビーズなどの他のより小さな多粒子からの調製を含め、本明細書に記載のように調製することができる。ミニ錠剤は、錠剤に関して当業者に公知の任意の形状、例えば、例えば約1.25〜3mmの直径を有する円形状;例えば凸状上面および凸状底面を有し、例えば円筒の直径および高さがそれぞれ独立に1〜3mmである円筒状;または例えば高さおよび直径がほぼ等しく、かつ1.25〜3mmである両凸ミニ錠剤の形状を有することができる。
【0051】
本発明によるミニ錠剤のコアは、本発明による固形経口剤形の調製に適している添加物または添加剤を含むことができる。錠剤製剤で一般に使用される打錠助剤を使用することができ、該問題に関する広範な文献が参照され、とりわけ、参照により本明細書に組み込まれるFiedlerの「Lexikon der Hilfstoffe」第4版、ECV Aulendorf 1996年を参照されたい。これら助剤としては、限定されないが、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、安定化剤、充填剤または賦形剤、界面活性剤、フィルム形成剤、柔軟化剤、顔料などが挙げられる。
【0052】
本発明は、さらに、活性薬剤として治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、および添加物としての充填剤を含む固形経口剤形に関する。さらなる添加物としては、限定されないが、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、安定化剤、賦形剤、界面活性剤、フィルム形成剤、顔料、柔軟化剤、および粘着防止剤などが挙げられる。活性成分およびさらなる添加物の量は、好ましくは前に定義したような量である。
【0053】
本発明は、さらに、活性薬剤として治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに添加物として充填剤および崩壊剤を含む固形経口剤形に関する。さらなる添加物としては、限定されないが、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、安定化剤、賦形剤、界面活性剤、フィルム形成剤、顔料、柔軟化剤、および粘着防止剤などが挙げられる。活性成分およびさらなる添加物の量は、好ましくは前に本明細書中で定義したような量である。
【0054】
本発明は、さらに、活性薬剤として治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに添加物として充填剤、崩壊剤および滑沢剤を含む固形経口剤形に関する。さらなる添加物としては、限定されないが、結合剤、流動促進剤、安定化剤、賦形剤、界面活性剤、フィルム形成剤、顔料、柔軟化剤、および粘着防止剤などが挙げられる。活性成分およびさらなる添加物の量は、好ましくは前に本明細書中で定義したような量である。
【0055】
本発明は、さらに、活性薬剤として治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに添加物として充填剤、崩壊剤、滑沢剤および流動促進剤を含む固形経口剤形に関する。さらなる添加物としては、限定されないが、結合剤、安定化剤、賦形剤、界面活性剤、フィルム形成剤、顔料、柔軟化剤、および粘着防止剤などが挙げられる。活性成分およびさらなる添加物の量は、好ましくは前に本明細書中で定義したような量である。
【0056】
本発明は、さらに、活性薬剤として治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに添加物として充填剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤および結合剤を含む固形経口剤形に関する。さらなる添加物としては、限定されないが、安定化剤、賦形剤、界面活性剤、フィルム形成剤、顔料、柔軟化剤、および粘着防止剤などが挙げられる。活性成分およびさらなる添加物の量は、好ましくは前に本明細書中で定義したような量である。
【0057】
これらの添加物の1種または複数は、固形経口剤形の特定の所望される特性に対して関心を有する当業者が定型的実験によってどんな過度の負担もなしに選択し、使用することができる。
【0058】
一実施形態において、本発明による固形経口剤形は、添加物として、例えば、粉糖、圧縮糖(compressible sugar)、デキストラート(dextrate)、デキストリン、デキストロース、乳糖、マンニトール、デンプン(例えば、バレイショデンプン、小麦デンプン、コーンスターチ)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、粉末セルロース、ソルビトール、ショ糖、およびタルクなどの充填剤または賦形剤、好ましくは、微結晶セルロース、例えば、AVICEL、FILTRAK、HEWETEN、またはPHARMACELの登録商標で入手可能な製品を含む。最も好ましい充填剤は、とりわけ約0.45g/cm3の密度を有する微結晶セルロース、例えばAVICELである。
【0059】
崩壊剤としては、とりわけ、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC−Ca)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、架橋PVP(例えば、CROSPOVIDONE、POLYPLASDONEまたはKOLLIDON XL)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、およびグアーガムを、最も好ましくは架橋PVP(CROSPOVIDONE)、架橋CMC(Ac−Di−Sol)、カルボキシメチルデンプン−Na(PRIMOJELおよびEXPLOTAB)を挙げることができる。最も好ましい崩壊剤はCROSPOVIDONEである。
【0060】
滑沢剤としては、とりわけ、ステアリン酸Mg、ステアリン酸アルミニウム(Al)またはCa、PEG4000〜8000およびタルク、水素化ヒマシ油、ステアリン酸およびその塩、グリセロールエステル、ステアリルフマル酸Na、水素化綿実油などを挙げることができる。最も好ましい滑沢剤は、ステアリン酸Mgである。
【0061】
流動促進剤としては、とりわけ、コロイダルシリカ(コロイダル二酸化ケイ素、例えばAEROSILなど)、三ケイ酸マグネシウム(Mg)、粉末セルロース、デンプン、タルクおよびリン酸三カルシウム、またはこれらと充填剤もしくは結合剤との組合せ(例えば、ケイ化微結晶セルロース(PROSOLV)を挙げることができる。最も好ましい流動促進剤は、コロイダル二酸化ケイ素(例えば、AEROSIL200)である。
【0062】
湿式造粒のための結合剤としては、とりわけ、ポリビニルピロリドン(PVP)(例えば、PVP K30)、HPMC(例えば、粘度等級3または6cps)、およびポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEG4000)を挙げることができる。最も好ましい結合剤は、PVP K30である。
【0063】
それゆえ、一実施形態において、本発明による固形経口剤形は、添加物として充填剤を、とりわけ微結晶セルロースを含む。
【0064】
一実施形態において、本発明による固形経口剤形は、添加物として充填剤に加えて崩壊剤を、とりわけ微結晶セルロースおよびクロスポビドンを含む。
【0065】
一実施形態において、本発明による固形経口剤形は、添加物として充填剤および崩壊剤に加えて滑沢剤を、とりわけ微結晶セルロース、クロスポビドン、およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0066】
一実施形態において、本発明による固形経口剤形は、添加物として充填剤、崩壊剤および滑沢剤に加えて流動促進剤を、とりわけ微結晶セルロース、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、およびコロイダル二酸化ケイ素を含む。
【0067】
一実施形態において、本発明による固形経口剤形は、添加物として充填剤、崩壊剤、滑沢剤および流動促進剤に加えて結合剤を、とりわけ微結晶セルロース、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、コロイダル二酸化ケイ素、およびポビドンを含む。
【0068】
とりわけ、本発明による、および本明細書に記載のようなミニ錠剤のコアは、アリスキレンの市販製剤SPP100と同様の顆粒と、外側または外部相、とりわけ市販の対照製剤と比較してより多量のステアリン酸マグネシウムを含み超崩壊剤(superdisintegrant)を含まない外部相との混合物から圧縮することができる。
【0069】
採用される各部類の添加物、例えば流動促進剤、結合剤、崩壊剤、充填剤または賦形剤、および滑沢剤またはフィルムコートの量は、当技術分野で通常的な範囲内で変えることができる。したがって、例えば、滑沢剤の量は、0.2〜5重量%、とりわけステアリン酸Mgの場合には1.0〜3.0重量%、例えば、1.5〜2.5重量%の範囲内で変えることができ;結合剤の量は、0〜約20重量%、例えば2.5〜4.5重量%の範囲内で変えることができ;崩壊剤の量は、0〜約20重量%、例えば3〜5重量%の範囲内で変えることができ;充填剤または賦形剤の量は、0〜約80重量%、例えば20〜50重量%の範囲内で変えることができ;一方、流動促進剤の量は、0〜約5重量%、例えば0.4〜1.0重量%の範囲内で変えることができ;フィルムコートの量は、0〜5mg/cm2、例えば0.4mg/cm2〜0.7mg/cm2の範囲内で変えることができる。
【0070】
活性薬剤の高い含有量を考慮してわずかな比較的少量の添加物を含むことが、本発明の固形経口剤形の特徴である。このことが、物理的に小さな単位剤形の製造を可能にする。所定の非被覆単位剤形中の添加物の総量は、固形経口剤形の総重量を基準にして約65重量%以下、より好ましくは約60%以下であることができる。好ましくは、添加物含有量は、ヘミフマル酸を基準にして約35〜58重量%の範囲にあり、より詳細には、添加物含有量は、約50〜約56重量%の範囲にある。
【0071】
錠剤コア中の充填剤、特に微結晶セルロースの好ましい量は、単位剤形当たり、約30〜40重量%、とりわけ約33〜約40重量%の範囲にある。
【0072】
錠剤コア中の結合剤、特にポビドンの好ましい量は、単位剤形当たり、約2.5〜4.5重量%、とりわけ約3〜4重量%の範囲にある。
【0073】
錠剤コア中の崩壊剤、特にCROSPOVIDONEの好ましい量は、単位剤形当たり、約3〜5重量%、とりわけ約3.5〜4.5重量%の範囲にある。
【0074】
錠剤コア中の流動促進剤、特にコロイダル二酸化ケイ素の好ましい量は、単位剤形当たり、約0.4〜1.0重量%、とりわけ約0.6〜0.9重量%の範囲にある。
【0075】
錠剤コア中の滑沢剤、特にステアリン酸Mgの好ましい量は、単位剤形当たり、約1.5〜3重量%、とりわけ約1.5〜2.5重量%の範囲にある。
【0076】
フィルムコートの好ましい量は、単位剤形当たり、約0.4mg/cm2〜0.7mg/cm2の範囲にある。
【0077】
アリスキレンおよび添加物の好ましい量は、実例となる実施例中でさらに示される。
【0078】
各添加物の絶対量および他の添加物に対する相対量は、同様に、固形経口剤形に関して所望される特性に依存し、やはり当業者によって定型的実験により過度の負担なしに選択できる。例えば、固形経口剤形は、活性薬剤の放出の定量的制御を伴ってまたは伴わないで、加速および/または遅延された活性薬剤の放出を提示するように選択することができる。
【0079】
本発明の特定の実施形態において、微結晶セルロースが充填剤/結合剤として、クロスポビドンが崩壊剤とし、ポビドンが充填剤/結合剤として、5%イソプロパノール含有エタノールが造粒用液体として(後で処理中に除去することができる)、シリカ、コロイダル無水/コロイダル二酸化ケイ素が流動促進剤として、かつステアリン酸マグネシウムが滑沢剤として、とりわけ実例となる実施例に示される濃度で使用される。
【0080】
詳細には、外部相中のステアリン酸マグネシウムは、単位剤形当たり、約1.5〜3重量%、とりわけ約1.5〜2.5重量%の範囲の濃度で存在することができる。
【0081】
本発明による、および本明細書に記載のようなミニ錠剤のコアは、被覆剤で被覆することができ、ここで、前記被覆剤は、原体の苦い風味を遮蔽し、それによって患者のコンプライアンスを改善し、かつ/またはアリスキレン活性化合物の放出をin vitroおよびin vivoで制御するのに役立つ可能性がある。
【0082】
したがって、本発明による固形経口剤形は、またコート錠または糖衣錠、とりわけフィルムコート錠または糖衣錠の形態で提供することができ、この場合、固形経口剤形は、被覆剤、典型的にはHPMC、PVPなどのポリマー、糖、セラック、または当技術分野でまったく通常的なその他のフィルム被覆剤を用いて提供される。当技術分野で採用される公知の多くの被覆法、例えば、Aeromatic、Glatt、WursterまたはHuttlinから入手可能な装置を使用する既知法による、例えば、流動床中での、例えば、Accela Cota、Glatt、Driamなどからの装置を使用する既知法による、有孔パンコーター中での噴霧コーティング、あるいは当技術分野で通常的なその他の方法が考慮される。糖衣において一般的に使用される添加物も、このような方法中で採用できる。
【0083】
1つのバリアントにおいて、ミニ錠剤は、風味遮蔽材料、例えば、ポリアクリレート、好ましくはEudragit(登録商標)−EまたはEudragit(登録商標)−RD100もしくは−RS/RLなどのEudragit(登録商標)、特にEudragit(登録商標)−Eで被覆される(以後示した場所にある、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」362頁を参照されたい)。
【0084】
本発明の組成物に適した被覆材料としては、ポリアクリレート、特にポリメタクリレート、好ましくは、
1.a)メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸、およびアクリル酸エステルから選択されるモノマーから形成されるコポリマー、
2.b)メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、およびメタクリル酸メチルから選択されるモノマーから形成されるコポリマー、または
3.c)アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリドから選択されるモノマーから形成されるコポリマー、
より好ましくは、2.b)で言及したもの、例えばEvonikからEudragit(登録商標)の商品名で入手可能なものが挙げられる。
【0085】
特に好ましいポリアクリルポリマーは、
1.1)Eudragit(登録商標)L、例えばEudragit(登録商標)L100の商品名で入手可能な、メタクリル酸とメタクリル酸メチルから形成される1:1コポリマー;およびEudragit(登録商標)L100−55の商品名で入手可能な、メタクリル酸とアクリル酸エチルエステルとの1:1コポリマーなどの、メタクリル酸とメタクリル酸低級アルキルエステルから選択されるモノマーから形成される1:1コポリマー、
2.2)Eudragit(登録商標)Eの商品名で入手可能な、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸2−ジメチルアミノエチルとメタクリル酸メチルから形成される1:2:1コポリマー、および
3.3)Eudragit(登録商標)RLの商品名で入手可能な、アクリル酸エチルとメタクリル酸メチルとメタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリドから形成される1:2:0.2コポリマー;またはEudragit(登録商標)RSの商品名で入手可能な対応する1:2:0.1コポリマー;またはカルボキシメチルセルロースとの組合せで存在し、Eudragit(登録商標)RDの商品名で入手可能な、アクリル酸エチルとメタクリル酸メチルとメタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリドから形成される1:2:0.2コポリマー、
であり、より好ましくは、2.2)で言及したものである。
【0086】
上記のポリアクリレートは、好ましくは、約50,000〜約500,000、例えば約150,000の平均分子量を有する。
【0087】
ポリアクリレート、特にEudragitk Eは、例えば、Eudragit(登録商標)Eを用いた被覆が、口腔の中性のpHで容易には溶解しないが、5未満のpHにおいてのみ溶解し、それによってアリスキレンの苦味の溶出を胃に移動するまで防止するので、遊離塩基の形態およびその塩、例えばアリスキレンフマル酸塩の形態のアリスキレンを含む固形剤形を被覆するのにとりわけ適していることが見出された。
【0088】
前記で規定した被覆材料は、被覆処方物中で通常的なさらなる添加剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、または二酸化ケイ素、例えば、Syloid(登録商標)型(Grace)の合成非晶質ケイ酸、例えば、Syloid(登録商標)244FPまたはコロイダル二酸化ケイ素、例えば、Aerosil(登録商標)、例えば、Aerosil(登録商標)200、または湿潤化剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムまたは前述のポリエチレングリコールまたはポリソルベートとの混合物の状態で使用することができる。
【0089】
別の態様において、固形剤形は、さらなる被覆、例えば、前述の1つの被覆上に塗布される、例えば、固形剤形の互いの固着または容器材料、例えばカプセルの壁への固着を回避できる、コロイダル二酸化ケイ素製品、例えばAerosil(登録商標)を含む固着防止材料の層を含むことができる。
【0090】
本発明の特に好ましい組成物は、被覆されたアリスキレン粒子、例えば、その被覆が、(風味遮蔽)ポリアクリレート系被覆剤、好ましくはEudragit(登録商標)EまたはEudragit RD100(登録商標)、特にEudragit(登録商標)Eを含む、ミニ錠剤またはペレット剤などの錠剤である。
【0091】
被覆剤は、さらに、可塑剤、例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジエチル、ポリエチレングリコール3000、4000もしくは6000、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、またはフタル酸ジエチル;および/あるいは固着防止剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、コロイドダル二酸化ケイ素、Syloid244FPなどの合成非晶質ケイ酸、タルク、またはモノステアリン酸グリセリンなど、さらなる構成要素を含むことができる。被覆剤は、さらに、特に水性分散液中に、懸濁された添加剤の沈降を回避するための1種または複数の増粘剤、例えばHPMC(3cps)またはHPMC(6cps)を含むことができる。
【0092】
本発明の特定の実施形態において、粘着防止剤としてステアリン酸マグネシウムが、フィルム形成剤として塩基性ブチル化メタクリレートコポリマーが、可塑剤としてセバシン酸ジブチルが、可溶化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(sodium laurilsulfate)/ラウリル硫酸ナトリウムが、および溶媒として精製水が使用される(バリアントA)。
【0093】
遅延放出が所望されるなら、多粒子、ワックスマトリックス系、ポリマーマトリックス錠、もしくはポリマー被覆のための被覆技術、または当技術分野で通常的なその他の技術を採用することができる。
【0094】
活性薬剤の放出の定量的制御は、当技術分野で公知の通常的技術によって達成することができる。このような剤形は、経口浸透システム(例えば、OROS)、コート錠、マトリックス錠、圧縮コート錠、多層錠などとして知られている。
【0095】
本発明による調節放出性を有する組成物は、好都合には、体内、好ましくは腸内での、アリスキレン活性化合物またはその薬学的に許容される塩の持続的な、連続的な、緩慢な、または延長された放出を提供する構成要素、例えば調節放出性被覆剤、例えば拡散性被覆剤で被覆することができる。
【0096】
このような調節放出性被覆剤の構成要素の例は、例えば、セルロース誘導体、例えば、エチルセルロース、例えば、FMCから入手可能なAquacoat(登録商標)ECD;Colorconから入手可能なSurelease;アクリルコポリマー、好ましくは第4級アンモニウム基、例えば、トリ(C1〜4アルキル)−アンモニウムメチルメタクリレート基、例えば、トリメチルアンモニウムメチルメタクリレート基を含むアクリルおよびメタクリルコポリマー、例えば、異なる比率の第4級アンモニウム基を有するアクリル/メタクリル酸エステル20:1 RL/40:1 RS、例えば、Eudragit RL(登録商標)、Eudragit RS(登録商標)もしくはEudragit NE(登録商標)の商品名でRohm Pharmaから市販されているポリマー;ならびに/またはこれらの混合物である。重量で約75:25、好ましくは90:10、好ましくは95:5のEudragit RS(登録商標):Eudragit RL(登録商標)の比率が、とりわけ好ましい。
【0097】
調節放出性被覆剤の構成要素は、水性分散液、例えば30%水性分散液、または有機溶液、例えば12.5%有機溶液の状態で存在することができる。例えば、調節放出性被覆剤の構成要素は、30%水性分散液または12.5%有機溶液の状態のEudragit RL(登録商標)とEudragit RS(登録商標)との混合物である。
【0098】
調節放出性被覆剤の構成要素の量は、該被覆剤の総重量を基準にして約30〜約100重量%、より好ましくは約50〜約100重量%でよい。
【0099】
調節放出性被覆、例えば拡散性被覆は、好ましくは、組成物の総重量の1〜50重量%、より好ましくは2〜20重量%、さらにより好ましくは4〜10重量%を構成する。
【0100】
当業者は、調節放出性被覆用ポリマーの性質および量を、アリスキレン構成要素の溶出プロファイルに必要とされるように調節する。
【0101】
本発明の別の特定の実施形態において、可塑剤としてセバシン酸ジブチルを、フィルム形成剤としてエチルセルロース水性分散液を、もう1つのフィルム形成剤としてヒプロメロースを、流動促進剤としてシリカ、コロイダル無水/コロイダル二酸化ケイ素を、かつ溶媒として精製水を使用する、遅延放出性被覆が提供される(バリアントB)。
【0102】
調節放出性被覆剤は、さらに、例えば後に開示するような1種または複数のさらなる構成要素または添加剤、例えば、細孔形成剤、可塑剤、固着防止剤、湿潤化剤を含むことができる。
【0103】
適切な細孔形成剤は、HPMCなどのpH非依存性細孔形成剤、またはpHに依存する細孔形成剤でよい。適切なpH依存性細孔形成剤は、腸溶性の細孔形成剤、例えば、腸溶性の被覆用ポリマーでよい。
【0104】
本明細書中で定義されるように、腸溶性の細孔形成剤は、pH>5の環境中、例えば腸液中で薬物を放出し、酸性環境中、例えば、胃内での薬物放出を抑制する細孔形成剤である。本発明による腸溶性細孔形成剤の例は、フタル酸−HPMC(HPMC−P)、例えば信越化学工業からのHP50、HP55;酢酸コハク酸HPMC(HPMC−AS)、例えば信越化学工業からのAqoat LFまたはAqoat MF;メチルアクリル酸−エチルアクリル酸のコポリマー、例えばメタクリル酸コポリマー、例えばRohm PharmaからのEudragit L、S、L100−55および/もしくはL30D、ColorconからのAcryl−Eze、BASFからのKollicoat MAE30 DP;酢酸フタル酸セルロース、例えば、FMC BiopolymerからのAquacoat CPD、もしくはEastman Kodakからのポリマー;ならびにポリ酢酸フタル酸ビニル、例えばSureteric、Colorcon、またはこれらの任意の混合物である。好ましくは、HPMC−PおよびHPMC−ASは、有機被覆剤溶液中で、エチルセルロース、または第4級アンモニウム基、例えば、トリ(C1−4アルキル)−アンモニウムメチルメタクリレート基を含むアクリルおよびメタクリルコポリマー、例えば、Eudragit RSと組み合わせることができ、水中に分散されたHPMC−ASは、また、エチルセルロース水性分散液、例えば、Aquacoat ECD、FMCと組み合わせることができる。
【0105】
フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、典型的には、20,000〜100,000ダルトン、例えば80,000〜130,000ダルトンの分子量を、例えば、5〜10%のヒドロキシプロピル含有量を、18〜24%のメトキシ含有量を、および21〜35%のフタリル含有量を有する。適切なフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースの例は、6〜10%のヒドロキシプロピル含有量を、20〜24%のメトキシ含有量を、21〜27%のフタリル含有量を、約84,000ダルトンの分子量を有する、HP50の商品名で知られ、信越化学工業(東京、日本)から入手可能な市販製品、またはそれぞれ5〜9%、18〜22%、および27〜35%のヒドロキシプロピル含有量、メトキシ含有量、およびフタリル含有量を、および78,000ダルトンの分子量を有する、HP55の商品名で知られ、同上供給業者から入手可能な市販製品である。
【0106】
例を挙げれば、Aqoat LFまたはAqoat MFの商品名で知られ、例えば信越化学工業(東京、日本)から市販されているような適切な酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用できる。
【0107】
本発明の組成物の調節放出性被覆は、調節放出性被覆の総重量を基準にして0〜70重量%、より好ましくは5〜50重量%の細孔形成剤を含むことができる。
【0108】
本発明の組成物は、さらに、例えば水溶性細孔を作り出す細孔形成剤、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、または酸性媒体、例えばアンモニウム塩に可溶なその他のセルロース誘導体、アクリレートもしくはメタクリレートエステル、例えばEudragit EもしくはEudragit EPO;水中で膨潤するポリアクリル酸、例えば、Eudragit RS、RL、NE30D、;アルカリ媒体に可溶性である、すなわち腸溶性の被覆用ポリマー、例えば、Eudragit L、S、L100−55、あるいはこれらの混合物を含んでよい。HPMCは、また、その水性溶液の粘度ゆえに、増粘剤として作用することができる。本発明によれば、細孔形成剤は、親水性薬剤、例えば、水溶性可塑剤、例えば、PEG、トリアセチン、クエン酸トリエチル、または親水性二酸化ケイ素、例えば、Aerosil200またはSyloid244FPでよい。
【0109】
本発明による適切な可塑剤としては、例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチ、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、ポリエチレングリコール400、3000、4000もしくは6000、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、およびフタル酸ジエチル、またはこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、可塑剤は、クエン酸トリエチルまたはセバシン酸ジブチルである。可塑剤は、一般に、被覆用ポリマーを膨潤させ、その結果、ポリマーのガラス転移温度が降下し、その柔軟性および靭性が増加し、かつその透過性が変化する。可塑剤がポリエチレングリコールのように親水性である場合、被覆の水透過性は、一般に増加する。可塑剤がフタル酸ジエチルまたはセバシン酸ジブチルのように疎水性である場合、被覆の水透過性は、一般に減少する。
【0110】
好ましくは、可塑剤は、被覆の総重量を基準にして、1〜50重量%、好ましくは2〜35重量%、より好ましくは5〜25重量%の量で存在する。
【0111】
固着防止剤の例は、二酸化ケイ素、例えば、コロイダル二酸化ケイ素、Syloid244FPなどの合成非晶質ケイ酸、タルク、Aerosil200、またはモノステアリン酸グリセリンである。好ましくは、固着防止剤は、Aerosil200およびSyloid244FPである。固着防止剤が、Aerosil200またはSyloid244FPのように親水性である場合、被覆の水透過性/膨潤性(それゆえ薬物の放出も)は、一般に増加する。可塑剤が、タルクまたはモノステアリン酸グリセロールのように疎水性である場合、被覆の水透過性は、一般に減少する。固着防止剤は、薬物コアの固着を回避し、かつそれらの高い離脱を保証するために、任意選択で被覆処方物中に含められる。
【0112】
好ましくは、固着防止剤は、被覆の総重量を基準にして、1〜50重量%、より好ましくは5〜25重量%の量で存在する。
【0113】
適切な湿潤化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、セトマクロゴール、ワックス、モノステアリン酸グリセロール、ソルビタンエステル、およびポロキサマーが挙げられる。湿潤化剤は、界面張力を低減し、かつ噴霧溶液または懸濁液と処理表面との接触を改善するそれらの特性のため、被覆処方物中に任意選択で含められる。
【0114】
好ましくは、湿潤化剤は、被覆の乾燥重量を基準にして、0.1〜20重量%、より好ましくは1〜5重量%の量で存在する。
【0115】
本発明のさらに別の特定の実施形態において、流動促進剤としてシリカ、コロイダル無水/コロイダル二酸化ケイ素を、可塑剤としてクエン酸トリエチルを、フィルム形成剤としてアンモニオメタクリレートコポリマーA型を、もう1つのフィルム形成剤としてアンモニオメタクリレートコポリマーB型を、かつ溶媒として精製水を使用する、徐放出性被覆が提供される(バリアントC)。
【0116】
3種のバリアントA、BおよびCのすべてに関して、驚くべきことに、アリスキレン化合物のバイオアベイラビリティーが、そのバイオアベイラビリティーが、液状アリスキレン製剤のそれと比べて有意により高いことが以前の臨床研究において示された市販のアリスキレン製品またはカプセル製剤などの既知固形剤形のそれと類似のレベルに実質上維持され得ることを示すことができた。したがって、本発明による製剤を用いて、液状製剤で見出された速度に類似した、固形剤形に比べてより速い溶出速度を、公知の固形剤形のそれに類似し、かつ液体製剤と比較して改善されたバイオアベイラビリティーを危うくすることなしに達成できたことは驚くべき発見であった。
【0117】
本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形、とりわけ被覆されたミニ錠剤の形態での経口投与のためのアリスキレン固形単位剤形は、液状アリスキレン製剤のそれに比べて有意により高いバイオアベイラビリティーを有する。とりわけ、被覆されたミニ錠剤のバイオアベイラビリティーは、液状アリスキレン製剤に比較した場合に、少なくとも1.1倍、とりわけ少なくとも1.3倍、さらに特に少なくとも1.5倍だけ高められる。
【0118】
このことは、投与後に液状提示のそれに類似した極めて急速な活性成分の放出を示す、バリアントAによる固形単位剤形にとって特に驚きである。
【0119】
治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を含むコア錠剤を調製するために、湿式造粒を使用することができる。
【0120】
水および/または水性結合剤溶液を使用する、添加剤を含めたアリスキレンの湿式造粒は、原体の多形現象の変化につながり、その多形現象は、部分的に非晶質状態に変化し、医薬品(DP)の劣悪な化学的安定性をもたらす。
【0121】
しかし、有機溶媒混合物または有機結合剤溶液を使用するアリスキレンの湿式造粒は、次の利点:
・前記湿式造粒は、造粒中にアリスキレンの嵩密度を低下させること;
・原体の品質変化の影響が最小化されること;
・単位剤形当たり46重量%を超える高い薬物装填量を容易に達成できること;
・十分な硬度、破砕抵抗性、崩壊時間、溶出速度などを有する錠剤の製剤化が可能であること;
・原体の固着傾向および乏しい流動が、最小まで低減されること;
・DPの確固とした製造法が達成されること;
・製剤のスケールアップ、および再現性のあるDPの性能をもたらす方法が達成されること;および
・妥当な貯蔵寿命を達成するのに十分な安定性が達成されること;
を示す、適切なアリスキレン固形経口剤形、特に錠剤を製造する最良の方策であることが見出された。
【0122】
添加剤は、記載された本発明の事例である、部分的に内側(顆粒)相中に、部分的に外側相中に分配される。微結晶セルロース(充填剤)およびCROSPOVIDONE(崩壊剤)は、部分的に内側相中に、かつ部分的に外側相中に存在し、造粒中の結合剤であるPVP K30(結合剤)は、内側相の部分のみに存在し、一方、コロイダル二酸化ケイ素(流動促進剤)およびステアリン酸Mg(滑沢剤)は、外側相の部分のみに存在する。
【0123】
内側相の添加剤、例えば、充填剤、結合剤および崩壊剤、ならびに原体は、混合され、結合剤を含むエタノール性溶液およびさらなるエタノールを用いて造粒される。顆粒は、乾燥され、篩い分けられる。例えば、崩壊剤、充填剤、流動促進剤および滑沢剤を含む外側相は、乾燥顆粒と共に篩いにかけられ、混合される。混合物を圧縮して錠剤とする。コアは、任意選択で、フィルムコートで被覆することができる。
【0124】
顆粒相は、内側相と定義され、顆粒に添加される添加剤は、打錠混合物の外側相と定義される。
【0125】
本発明は、さらに、前に本明細書中に記載のような固形経口剤形の調製方法に関する。このような固形経口剤形は、適切な量の、前に本明細書中に記載のような構成要素を、単位剤形を形成するように処理することによって製造することができる。
【0126】
したがって、本発明は、本発明の固形経口剤形の製造方法を提供し、該方法は、
1)活性成分および添加物を混合すること、ならびに造粒用液体を用いて前記構成要素を造粒するステップ;
2)生じる顆粒を間に行われる篩いがけステップで乾燥するステップ;
3)乾燥された顆粒を外側相用添加剤と混合するステップ;
4)生じる混合物を圧縮してコア錠剤としての固形経口剤形を形成するステップ;および
5)生じるコア錠剤を任意選択で被覆してフィルムコート錠を得るステップを含む。
【0127】
好ましくは、ステップ(1)の添加物は、充填剤、崩壊剤および結合剤から選択され、ステップ(3)の外側相用添加剤は、充填剤、崩壊剤、滑沢剤および流動促進剤から選択される。
【0128】
造粒用液体は、エタノール、エタノールと水との混合物、エタノールと水とイソプロパノールとの混合物、またはPVPの前述の混合物中の溶液でよい。エタノールと水との好ましい混合物は、約50/50〜約99/1(w/w%)の範囲にあり、最も好ましくは約94/6(w/w%)である。エタノールと水とイソプロパノールとの好ましい混合物は、約45/45/5〜約98/1/1(w/w/w%)、最も好ましくは約88.5/5.5/6.0〜約91.5/4.5/4.0(w/w/w%)の範囲にある。上記混合物中の好ましいPVP濃度は、約5〜約30重量%、好ましくは約15〜約25重量%、より好ましくは約16〜約22重量%の範囲にある。
【0129】
当技術分野で採用される造粒、乾燥、および混合に関する公知の多くの方法、例えば、流動床中での噴霧造粒、高剪断ミキサー中での湿式造粒、溶融造粒、流動床乾燥機中での乾燥、自由落下またはタンブラーブレンダー中での混合、単発式または回転式打錠機での錠剤への圧縮が考慮される。
【0130】
顆粒の製造は、有機造粒法に適した標準的な装置で実施することができる。最終ブレンド物の製造および錠剤の圧縮も、標準的な装置で実施することができる。
【0131】
例えば、ステップ(1)は、高剪断造粒機、例えば、Collette Gralによって実施することができ;ステップ(2)は、流動床乾燥機中で実行することができ;ステップ(3)は、自由降下式ミキサー(例えば、容器型ブレンダー、タンブラーブレンダー)によって実施することができ;かつステップ(4)は、乾式圧縮法、例えば回転式打錠機を使用して実施することができる。
【0132】
前記のように、次いで、コア錠剤に任意選択でフィルムコートを施して、前に本明細書中に記載のようなフィルムコート錠を提供することができる。
【0133】
多形現象の変化に関するアリスキレンの高い吸湿性および水への感受性のため、上述の理由(非晶質状態、劣悪な化学的安定性)から、原体を多形現象の変化から防御するために、水の使用は、好ましくは回避されるべきである。前記問題の解決は、有機フィルム被覆法を適用することである。
【0134】
驚くべきことに、標準的なフィルムコート組成物を使用する水性フィルム被覆法は、多形現象の変化を伴わないでアリスキレンのコア錠剤に適用できることが見出された。
【0135】
フィルムコートは、また、ポリマーとしてのHPMC;着色剤としての酸化鉄顔料、二酸化チタン;柔軟化剤としてのPEG;および粘着防止剤としてのタルクを含むことができる。着色剤または染料の使用は、外観を向上させるのに、および組成物を識別するのに役立つ可能性がある。使用するのに適したその他の染料としては、典型的には、カロチノイド、クロロフィルおよびレーキが挙げられる。
【0136】
フィルム被覆の条件は、錠剤コアが、無視できない量の水分を吸収しないこと、および錠剤内の原体が、水滴と密接に接触しないことを確実にしなければならない。このことは、錠剤コアに到達する湿気の量を低減する処理パラメーターの設定によって達成される。
【0137】
ミニ錠剤の製造は、したがって、標準的な剤形の製造で使用される現行顆粒に基づくことができるが、製剤および製造方法に対する適合化が必要である。
【0138】
ミニ錠剤は、特別なマルチチップツーリングを備えた標準的な回転式打錠機で圧縮される。マルチチップツーリングは、パンチ当たり19個までのチップからなることができる。このようなミニ錠剤用パンチは、標準的な錠剤用パンチと比較してダイ中でより大きな接触面積を有する。したがって、製剤および/またはツーリングの滑沢化(例えば噴霧滑沢化)の選択肢が、製造方法において重要な役割を演じる。
【0139】
開発試験中に、低い排出力にもかかわらず、より低いパンチ剛性が観察された。この問題を克服するために、異なるパンチチップの設計および回転式打錠機に特別な充填カムを使用した。製剤に対する適合化、例えば滑沢剤濃度の増加も行われた。
【0140】
さらなるステップにおいて、ミニ錠剤の溶出速度挙動を、フィルム被覆の塗布により放出を調節することによって、単核錠剤(mono tablet)のそれに合わせた。
【0141】
本発明の特定の実施形態において、3種のバリアントは、市販のSPP100製剤の製造で使用される顆粒からなる同一混合物から製造されて提供され、ここで、その外側相は、異なる被覆を塗布することによって調節される。バリアントは、次のように記述される:
バリアントA:pH感受性Eudragit EPO被覆、最も早いDR
バリアントB:エチルセルロース+HPMC被覆、中度のDR
バリアントC:Eudragit RL/RS被覆、最も遅いDR
【0142】
ミニ錠剤の大きな表面積とアリスキレンの吸湿性とが連結された有害な共働、およびそれと関連する諸問題を克服するために、パン中の乾燥条件を、フィルムコートされたミニ錠剤中の高い水含有量を低減するように調節すべきである。このことは、例えば、流動床コーターなどの改善された乾燥条件を備えた被覆装置を使用することによって達成することができる。
【0143】
さらなるステップで、外側相も、本質的に吸湿性である崩壊剤を除外することによって調節することができる。このことは、可能である。なぜなら、崩壊剤の除外を、ミニ錠剤によって提供される、崩壊剤がなくてもより早い崩壊をもたらす大きな表面積によって補償することができるからである。さらに、ミニ錠剤の製造で使用されるマルチチップツーリングは大きな接触面積を有するので、滑沢剤の量を、市販剤形と比較して増加させることができる。
【0144】
本発明の固形経口剤形は、子供における収縮期もしくは拡張期またはその双方の血圧を降下させるために小児科で使用できる。本発明が有用である状態としては、限定はしないが、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期型、またはその他の二次性型のいずれにせよ)、鬱血性心不全、狭心症(安定または不安定型のいずれにせよ)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎障害、糖尿病性心筋症、腎機能不全、末梢血管疾患、左心室肥大、認知機能障害(アルツハイマー型など)および脳卒中、頭痛、ならびに慢性心不全が挙げられる。
【0145】
本発明は、さらに、そのような治療を必要とする子供、とりわけ0.5〜17歳の子供に治療上有効な本発明による固形経口剤形を投与することを含む、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期型、またはその他の二次性型のいずれにせよ)、鬱血性心不全、狭心症(安定または不安定型のいずれにせよ)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎障害、糖尿病性心筋症、腎機能不全、末梢血管疾患、左心室肥大、認知機能障害(例えば、アルツハイマー型)、脳卒中、頭痛、および慢性心不全の治療方法に関する。
【0146】
本発明は、さらに、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期型、またはその他の二次性型のいずれにせよ)、鬱血性心不全、狭心症(安定または不安定型のいずれにせよ)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎障害、糖尿病性心筋症、腎機能不全、末梢血管疾患、左心室肥大、認知機能障害、脳卒中、頭痛、および慢性心不全の小児治療のための薬剤を製造するための、本発明による固形経口剤形の使用に関する。
【0147】
本発明は、さらに、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期型、またはその他の二次性型のいずれにせよ)、鬱血性心不全、狭心症(安定または不安定型のいずれにせよ)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎障害、糖尿病性心筋症、腎機能不全、末梢血管疾患、左心室肥大、認知機能障害、脳卒中、頭痛、および慢性心不全の小児治療のための、本発明による固形経口剤形を含む医薬組成物に関する。
【0148】
最後に、投与すべき活性薬剤および特定製剤の的確な投与量は、いくつかの因子、例えば、治療されるべき状態、所望される治療継続期間、および活性薬剤の放出速度に依存する。例えば、必要とされる活性薬剤の量およびその放出速度は、特定の活性薬剤の血漿中濃度を治療効果にとって許容されるレベルにどれ程長く存続させるかを判定する、公知のin vitroまたはin vivo技術に基づいて決定することができる。
【0149】
前記の説明は、その好ましい実施形態を含め、本発明を完全に開示している。本明細書中に具体的にされている開示されている実施形態の修正および改善は、後記の特許請求の範囲に包含される。さらに詳述しないでも、当業者は、前述の説明を活用して、本発明をその最大限まで利用できると考えられる。したがって、本明細書中の実施例は、単なる例示であり、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0150】
実施例1:ミニ錠剤バリアントの調製
3種の小児用ミニ錠剤バリアント(300mgのSPP100ミニ錠剤(3.125mg/錠))を、市販のSPP100製剤中でも使用される同一の顆粒混合物から製造した。コア錠剤の外側相を変えて、被覆を塗布して次のバリアントを得た:
1.バリアントA:pH感受性Eudragit EPO被覆、最も早いDR
2.バリアントB:エチルセルロース+HPMC被覆、中度のDR
3.バリアントC:Eudragit RL/RS被覆、最も遅いDR
上記バリアントの組成を、表1−1、1−2および1−3中に記載する。
【0151】
実施例2:相対的BA研究
相対的BA研究は、小児用ミニ錠剤バリアントA(300mgのSPP100ミニ錠剤(3.125mg/錠))の製剤性能を評価するようにデザインした。被験薬の組成を表1−1に示す。市販されているような300mgのSPP100最終市販形(Final Market Image)(FMI)を、比較標準として使用した。
【0152】
薬物動態パラメーターおよび風味を成人志願者で測定した。バリアントAに関するこれらの研究の結果を表2〜3および図1に示す。
【0153】
参照例1:アリスキレンカプセル剤
カプセル充填物の組成(mg)(カプセル#0):
アリスキレンヘミフマル酸塩 41.44
Emcocel 50M 171.1
Polyplasdone XL 26.56
Aerosil200 2.4
ステアリン酸マグネシウム 3.6
合計 245.1
カプセルに原体と添加剤との乾燥ブレンド物を充填する。75mgのアリスキレン塩基の投与量は、2つのカプセルとして投与される。
【0154】
参照例2:液状アリスキレン製剤
75mgのアリスキレン塩基(=82.8mgのヘミフマル酸塩)に等価な原体を、125mlの瓶に、さらなる添加剤を含めないで充填し、次いで、200mlの水道水で処理し、それによって、原体を瓶中で一部の水で溶解し、残りの水は瓶をすすぐのに使用される。
【0155】
実施例3:小児患者における薬物動態
オープンラベル、多回投与の薬物動態学的および薬力学的研究を、年齢が6〜17歳の24名の小児患者で実施した。2mg/kgまたは6mg/kgの投与レベルでのアリスキレンの1日1回の投与量を、連続8日間投与した。血液検体を1日目および8日目に採取し、薬力学を、ノンコンパートメント解析法を使用して評価した。
【0156】
小児患者におけるアリスキレンへの暴露は、類似の投与量で健常成人において見出される暴露に類似していることが観察された。結果を表5および図2〜13に示す。2mg/kgおよび6mg/kgの双方での平均薬物暴露(AUCおよびCmax)は、健常成人で観察される暴露に類似していたが(図2〜5)、たぶんより小さな検体サイズ(12〜17歳:全部でn=19、2mg/kgでn=9、6mg/kgでn=10;6〜11歳:全部でn=5、2mg/kgでn=3、6mg/kgでn=2)のため、ばらつきがより大きかった。メディアンTmax、平均薬物蓄積指数(drug accumulation index)、および終末排泄半減期(terminal elimination half lives)は、成人において観察されるものと一致した。
【0157】
12〜17歳の患者における全般的薬物蓄積は、8日目の平均暴露曲線を1日目のそれと比較した場合、低〜中度であった。6mg/kgおよび2mg/kgの投与量の平均暴露曲線を比較すると、妥当な暴露増加が、投与量の増分に応答して観察された。12〜17歳の患者における定常状態(8日目)において、3倍の投与量増加は、2.5倍のAUC増加および1.7倍のCmax増加をもたらした。これらの発見は、成人対象におけるアリスキレンの薬物動態と一致している。6〜11歳の患者における結果は、成人および高齢小児集団で観察されるものに類似していた。
【0158】
12〜17歳の小児患者における2mg/kgでの1日目および8日目の平均濃度−時間プロファイルを図6に、6mg/kgでのプロファイルを図7に示す。
【0159】
12〜17歳の小児患者における2mg/kg(n=9)および6mg/kg(n=10)の投与量での1日目の平均濃度−時間プロファイルを図8に示す。12〜17歳の小児患者における2mg/kg(n=9)および6mg/kg(n=10)での8日目の平均濃度−時間プロファイルを図9に示す。
【0160】
図10は、6〜11歳の小児患者における2mg/kgの投与量(n=3)での1日目および8日目の平均濃度−時間プロファイルを示す。図11は、6〜11歳の小児患者におけ6mg/kgの投与量(n=3)での1日目および8日目の平均濃度−時間プロファイルを示す。
【0161】
図12は、6〜11歳の小児患者における2mg/kg(n=3)および6mg/kg(n=2)の投与量での1日目の平均濃度−時間プロファイルを示す。図13は、6〜11歳の小児患者における2mg/kg(n=3)および6mg/kg(n=2)の投与量での8日目の平均濃度−時間プロファイルを示す。
表
【0162】
【表1】
【0163】
【表2】
【0164】
【表3】
【0165】
【表4】
【0166】
【表5】
【0167】
【表6】
【0168】
本発明による製剤のバイオアベイラビリティーは、市販のアリスキレン錠剤(参照)およびカプセル製剤に類似したバイオアベイラビリティー、ならびに液体製剤と比較してより向上したバイオアベイラビリティーを有した。
【0169】
【表7】
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】説明なし
【図2】説明なし
【図3】説明なし
【図4】説明なし
【図5】説明なし
【図6】説明なし
【図7】説明なし
【図8】説明なし
【図9】説明なし
【図10】説明なし
【図11】説明なし
【図12】説明なし
【図13】説明なし
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な担体媒体中に活性成分として、経口で活性なレニン阻害剤である、アリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、とりわけそのヘミフマル酸塩、およびフィルムコートの形態での外側被覆を含む、固形経口剤形に関する。詳細には、本発明は、疾患の結果として、または年齢のため嚥下に伴う諸問題に遭遇する小児集団および/または患者における疾患または状態の治療で使用するための、アリスキレン、またはその薬学的に許容される塩、とりわけそのヘミフマル酸塩を単独でまたは別の活性薬剤と組み合わせて含む固形経口剤形を提供する。本発明は、また、前記固形経口剤形の調製方法、および薬剤としてのその使用に関する。
【0002】
以下で、用語「アリスキレン」は、特別に定義しない限り、遊離塩基、およびその塩、特にその薬学的に許容される塩、とりわけそのヘミフマル酸塩の双方と理解されるものとする。
【0003】
腎臓から放出されるレニンは、循環中のアンジオテンシノーゲンを開裂させてデカペプチドであるアンジオテンシンIを形成する。これは、次に、肺、腎臓およびその他の臓器中のアンジオテンシン変換酵素によって開裂され、オクタペプチドであるアンジオテンシンIIを形成する。該オクタペプチドは、直接的には動脈血管収縮により、および間接的には副腎からナトリウムイオン貯留ホルモンであるアルドステロンを細胞外液量の増加を伴って遊離することにより、その双方で血圧を上昇させる。レニンの酵素活性阻害剤は、アンジオテンシンIの形成の低下を引き起こす。結果として、より少量のアンジオテンシンIIが産生される。その活性ペプチドホルモンの濃度低下は、例えば、レニン阻害剤の降圧効果の直接原因である。したがって、レニン阻害剤またはその塩を、例えば、降圧剤として、または鬱血性心不全を治療するために採用することができる。
【0004】
レニン阻害剤であるアリスキレン、とりわけそのヘミフマル酸塩は、血圧を下げる治療において有効であることが知られており、かつまた十分に耐容性である。遊離塩基の形態のアリスキレンは、次式
【0005】
【化1】
で表され、化学的には2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロピル)フェニル]−オクタンアミドと定義される。前記のように、最も好ましいのは、そのヘミフマル酸塩であり、それは、欧州特許出願公開第678503号に実施例83として具体的に開示されている。
【0006】
高血圧症の子供において、アリスキレンを単剤療法として、または他の降圧剤と組み合わせて用いる研究は、今日まで実施されていない。アリスキレンは、新規な部類の降圧剤の最初のものなので(Daughertyら、2008年)、それは、高血圧症を有する0.5〜17歳の子供に対して利用可能なその他の現行療法と比較して潜在的な利益を提供する。
【0007】
子供における高血圧症の有病率が増加しているので(Sorofら、2004年)、現在利用可能な治療に対する代案が、重要性を増している。アリスキレンは、肥満の成人患者において、正常なボディマスインデックス(BMI)の患者と比較して類似の有効性を有することが示されているので、本態性高血圧症を有する6〜17歳の子供において、とりわけ重要である可能性がある(Jensenら、2008年)。肥満は、学齢に達した子供および青年における本態性高血圧症の主要な誘因であると考えられている(Weinbergerら、2008年)。
【0008】
子供の高血圧症は、成人の高血圧症に比べてそれほど広くは認められないが、腎機能不全、心疾患または糖尿病と組み合わされた高血圧症を有する小児患者は、薬理学的薬剤を用いる療法をより必要とすると思われるので、未対処の医学的要求を提示する。加えて、学齢に達した子供および青年における肥満の有病率の増加は、世界的に、増大する小児高血圧症の難題の基礎となる(Weinbergerら、2008年)。このことは、対照無作為化臨床試験によって支持された推奨小児投与量および年齢にふさわしい小児用薬物製剤の欠如によってさらに複雑になる。
【0009】
現在利用可能な薬剤としては、ACE阻害剤、カルシウムチャネル遮断剤、β遮断剤、およびARBが挙げられる。438名の北米小児腎臓病専門医での最近の調査は、ほとんどの医師が、原発性高血圧症の一次治療においてアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE)を、次にカルシウムチャネル遮断剤を使用したことを指摘した(それぞれ、47%および38%)。β遮断剤は、回答者のわずか7%によって第一選択剤として使用され、二次療法では17%によって使用された(ChesneyおよびJones、2007年)。ヒドロクロロチアジド(HCTZ)などの利尿剤も、小児患者における高血圧症の治療で使用されてきたが、これまで、HCTZを用いた小児高血圧症の対照化研究は行われていない。
【0010】
アリスキレンなどの新たな降圧治療の選択肢は、医師が成人における上に挙げた問題点に対処するのを助ける可能性がある。今日まで、子供におけるアリスキレンを用いる高血圧症の治療に関する研究;異なる作用機序を提供し、それによって0.5〜17歳の高血圧症の子供のための治療代案を提供する潜在能力を有する薬物は存在しなかった。
【0011】
小児での使用において、溶液剤、散剤、顆粒剤、錠剤もしくはフィルムコート錠、またはカプセル剤の形態での医薬剤の経口投与は、非経口投与、すなわち、i.v.またはi.m.投与などの代わりの投与形態に優るいくつかの利点を有する。痛い注射製剤での治療を必要とする疾患は、経口剤形で治療できるそれらの状態に比べてより深刻であると考えられる。しかし、経口製剤に伴う主な利点は、それらが自己投与への適合性を保持することであり、一方、非経口製剤は、ほとんどの場合に医師またはパラメディカル従事者によって投与される必要がある。
【0012】
市販のアリスキレンは、下が150mgまでの強度の即時放出性フィルムコート錠としての経口剤形で利用できる。これは、直径がほぼ11mm、厚さがほぼ4mmの分割できない円形錠剤であり、したがって、強度、用量の柔軟性、患者の認容性(嚥下能力)および大きさに関して、小児用製剤の要件を満たさない。
【0013】
また、原体の物理−化学的特性および極度に苦い風味は、0.5〜17歳の子供のための配慮の標準である液体または経口製剤の開発を妨げる。
【0014】
したがって、子供の高血圧症を治療するための治療レジメ、さらには市販のアリスキレン即時放出性フィルムコート錠の小児への適用に関する欠陥を除いた小児用アリスキレン製剤、すなわち、子供に適用するのに要求される大きさ、用量の柔軟性、および風味を有し、かつ市販医薬品に類似したバイオアベイラビリティーを維持する製剤を開発および提供することは、未対処の難題である。
【0015】
しかし、子供に適しているシロップ剤およびその他の液体製剤などの一般的に使用される小児用製剤のほとんどは、アリスキレンの物理−化学的特性および極度に苦い風味のため要求されず、そのことが、このような一般的に使用される小児用製剤の開発を妨げる。子供にとって認容できる風味を達成するのに十分な風味遮蔽を提供する甘味剤および/または風味剤および/または粘度調整剤を突きとめることができないので、例えば、アリスキレンの液体製剤を開発することは実現不可能であることが見出された。例えば苦味のより少ない風味を有する懸濁剤の形態での液体製剤の開発は、アリスキレン化合物の極めて高い水溶性(pH1から8の間で350g/lを超える)のため、さらに妨げられた。さらに、以前の臨床研究は、液状アリスキレン製剤のバイオアベイラビリティーが固形経口形態のそれと比べてより低いことを示した。
【0016】
また、大きな表面積での風味遮蔽を達成するのに必要と予想される多量のポリマーは、提案された年齢群の小児への使用にとって許容し得るものではないので、再構成のための被覆散剤または被覆顆粒剤は、適切とは考えられなかった。さらに、アリスキレンの物理−化学的特性は、また、該化合物の高い吸湿性のため、被覆散剤または被覆顆粒剤に好都合ではない。アリスキレンのこの高吸湿性は、成人集団用に限られた市販のアリスキレンフィルムコート錠製剤にとって問題であることが既に示されている水分取込みおよびその安定性に対する影響のため、このような大きな表面積を有する医薬品/製剤の開発に異を唱える。さらに、原体は、その多形的性質を、医薬品の安定性に対して有害な効果を有する可能性のある非晶性に変えるので、アリスキレンと共に層化されたフィルムコートされたペレット剤も、剤形として適切であるとは考えられなかった。
【0017】
また、信頼できる確固たる方法で錠剤形態の経口製剤を調製することは、技術的に困難であることが知られていた。
【0018】
これらの困難の1つは、例えば、原体のバルク特性、例えば流動特性および嵩密度に否定的影響を及ぼす、アリスキレンの針状形状の晶癖によって引き起こされる。原体の圧縮性は乏しく、加圧下での弱い粒子間結合および多形現象の変化につながる。アリスキレンは、粒子間結合の弱化にもつながる強い弾性構成要素を有する。原体品質は、変わりやすく、錠剤の加工性、例えば、粒度分布、嵩密度、流動性、湿潤性、表面積、および固着性に対して影響を与える。
【0019】
さらに、アリスキレンは高度に吸湿性である。水と接触すると、原体の多形現象は、結晶性状態と比較して劣った安定性を示す非晶性状態に変化する。これらの障害の組合せは、標準的な錠剤製造法を極度に困難にする。
【0020】
直接圧縮は、例えば、針状形状の粒子構造、加工性の問題を生じる不十分な流動性、および用量の均一性に関する問題のため、アリスキレンの定型的製造にとって実行可能な選択肢でない。
【0021】
小児での使用のために考えられることもある別の剤形は、少量の軟らかい食品、例えばプディングまたは潰した野菜と一緒にしてまたは一緒にしないで提供できるミニ錠剤の形態の製剤である。しかし、前に要約した技術的困難の組合せは、国際公開第2005/089729号に記載のような、ミニ錠剤を製造するための標準的な錠剤製造法を極度に困難にする。これらの技術的困難のため、この選択肢も、許容される結果につながるとは思われない。
【0022】
アリスキレンの製剤化における技術的困難にもかかわらず、多くの技術的困難を克服し、かつコアおよび外側被覆を有するミニ錠剤の形態での経口投与のためのアリスキレン固形単位剤形を提供することを可能にする、適切な方法の適合化が、ミニ錠剤の製造に関する本発明の範囲内で展開された。ここで、
・前記錠剤のコアは、治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を含み、かつ
・外側被覆は、風味遮蔽特性および/または制御放出機能を有するフィルムコート、とりわけアリスキレン化合物の苦い風味を遮蔽する能力のあるフィルムコートの形態である。
【0023】
詳細には、本発明は、技術、投与および薬物動態学的要件に合致する、年齢にふさわしい小児用製剤としての被覆されたミニ錠剤の形態での経口投与用のアリスキレン固形単位剤形を提供する。
【0024】
本発明による単位剤形は、子供における適用に限定されないが、例えば、患者の疾患または年齢のため、嚥下に関して困難を伴う患者において一般的に使用できる。
【0025】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の前記のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記ミニ錠剤は、1mmから3mmの間、とりわけ1.25mmから2.5mmの間、さらにとりわけ1.5mmから2.5mmの間の大きさを有する。
【0026】
本発明の一実施形態において、ミニ錠剤は、2mmの大きさを有する。
【0027】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の前記のようなミニ錠剤の形態の固形単位剤形が提供され、ここで、前記ミニ錠剤は、すべてがアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩からなる活性薬剤を、単位剤形当たり約2mgから約4mgの間の範囲の遊離塩基量、とりわけ、単位剤形当たり約2.5mgから3.5mgの間の範囲の遊離塩基量で含む。
【0028】
本発明の一実施形態において、ミニ錠剤は、錠剤当たり3.125mgのアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0029】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の前記のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、制御放出機能を有する。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記フィルムコートは、pHに依存する放出プロファイルを有する。
【0031】
一実施形態において、本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、約2のpHで、10分後に約75%以下の、20分後に約96%以下の、および30分後に約98%以下のアリスキレンのin vitro溶出をもたらす(バリアントA)。
【0032】
一実施形態において、本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、約4.5のpHで、10分後に約70%以下の、20分後に約95%以下の、および30分後に約98%以下のアリスキレンのin vitro溶出をもたらす(バリアントA)。
【0033】
一実施形態において、本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、約6.8のpHで、10分後に約4%以下の、20分後に約32%以下の、および30分後に約70%以下のアリスキレンのin vitro溶出をもたらす(バリアントA)。
【0034】
一実施形態において、本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、フィルム形成剤として塩基性ブチル化メタクリレートコポリマーを含む。
【0035】
一実施形態において、本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、フィルム形成剤中に、フィルム形成剤としてのエチルセルロース水性分散液、および任意選択で細孔形成剤としてのヒプロメロースを含む。
【0036】
一実施形態において、本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形が提供され、ここで、前記フィルムコートは、フィルム形成剤としてアンモニウムメタクリレートコポリマー、とりわけアンモニウムメタクリレートコポリマーA型および/またはアンモニウムメタクリレートコポリマーB型を含む。
【0037】
一実施形態において、固形単位剤形、とりわけ本発明による、および本明細書に記載のような固形経口剤形は、小児集団における疾患または状態の治療で使用するために、治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、とりわけそのヘミフマル酸塩を含む経口投与のために提供される。
【0038】
一実施形態において、固形単位剤形、とりわけ本発明による、および本明細書に記載のような固形経口剤形は、高血圧症、鬱血性心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎障害、糖尿病性心筋症、腎機能不全、末梢血管疾患、左心室肥大、認知機能障害、脳卒中、頭痛、および慢性心不全の治療で使用するために提供される。
【0039】
定義:
用語「有効量」または「治療有効量」は、治療している状態の進行を停止または減速する、あるいはそうでなければ該状態に対して完全もしくは部分的に治癒するか緩和的に作用する、活性な成分または薬剤の量を指す。
【0040】
用語「アリスキレン」は、次式
【0041】
【化2】
によって表される化合物を指し、化学的には2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)フェニル]−オクタンアミドと定義される。
【0042】
前記および後記において、用語「アリスキレン」は、特別に規定しない限り、遊離塩基およびその塩、特に、そのヘミフマル酸塩、硫酸水素塩、オロチン酸塩、または硝酸塩などの薬学的に許容される塩、最も好ましくはそのヘミフマル酸塩の双方と解釈されるものとする。前記のように、最も好ましいのは、欧州特許出願公開第678503号に実施例83として具体的に開示されている、そのヘミフマル酸塩である。アリスキレン、とりわけ、そのヘミフマル酸塩は、年齢、性別または人種に無関係に血圧降下治療において有効であることが知られているレニン阻害剤であり、また十分に耐容性である。
【0043】
用語「放出」は、本明細書中で使用する場合、医薬経口剤形が体液と接触し、該体液が、薬物(複数可)を剤形の外部の剤形を取り囲む体液中に輸送する過程を指す。患者において所定の剤形によって提示される送達速度と送達継続期間との組合せは、そのin vivo放出プロファイルとして記述できる。剤形の放出プロファイルは、種々の放出速度および放出継続期間を提示することができ、連続的であってもよい。連続的な放出プロファイルとしては、1種または複数の活性成分が、一定または変動する速度のどちらかで連続的に放出される放出プロファイルが挙げられる。
【0044】
本出願の目的に関して、即時放出性製剤は、特別な製剤設計または製造方法によって故意に調節されていない、活性物質(複数可)の放出を示す製剤である。
【0045】
本出願の目的に関して、「調節放出製剤」は、特別な製剤設計または製造方法によって故意に調節されている、活性物質(複数可)の放出を示す製剤である。この調節放出は、典型的には、活性成分の放出時間を遅延させることによって獲得することができる。典型的には、本発明の目的に関して、調節放出は、30〜60分遅延された放出を指す。
【0046】
用語「時間遅延(time delay)」は、本明細書中で使用する場合、本発明の組成物を含む剤形の投与とその特定の構成要素からの活性成分の放出との間の時間を指す。
【0047】
用語「時間差(lag time)」は、本明細書中で使用する場合、剤形中の1つの構成要素からの活性成分の放出と、剤形中の別の構成要素からの活性成分の放出との間の時間を指す。
【0048】
用語「崩壊」は、本明細書中で使用する場合、医薬経口剤形が、典型的には体液によって、単独粒子にばらばらになり、分散される過程を指す。崩壊は、固形経口剤形が、不溶性被覆またはカプセル殻の断片を除き、存在するなら試験装置の網上に残存している固形経口剤形の任意の残留物が、米国薬局方<701>による明白に堅いコアを有さない軟質塊である状態である場合に達成される。崩壊特性を判定するための流体は、水道水または脱イオン水などの水である。崩壊時間は、当業者に公知の標準的な方法によって測定され、米国薬局方<701>および欧州薬局方2.9.1および日本薬局方中に示されたハーモナイズされた方法を参照されたい。
【0049】
用語「溶出」は、本明細書中で使用する場合、固形物質、ここでは活性成分が、媒体中に分子の形態で分散される過程を指す。本発明の医薬経口剤形中の活性成分の溶出速度は、液体/固体の界面、温度および溶媒組成に関する標準化された条件下で単位時間に溶液中に移行する原体の量によって定義される。溶出速度は、当業者に公知の標準的な方法で測定され、米国薬局方<711>および欧州薬局方2.9.3および日本薬局方中に示されたハーモナイズされた方法を参照されたい。本発明の目的に関して、試験は、個々の活性成分の溶出を測定するためであり、米国薬局方<711>に従って、100rpm(1分当たりの回転数)のバスケット法を使用し、pH2.0で実施される。溶出媒体は、好ましくは緩衝液、典型的にはリン酸緩衝液、特に実施例「溶出試験」に記載のような緩衝液である。緩衝液のモル濃度は、好ましくは0.1Mである。
【0050】
用語「ミニ錠剤」は、本出願の範囲内で、それらの非被覆形態で総重量が約2〜30mg、例えば約4〜9mg、例えば約7mgの小さな錠剤を意味する。ミニ錠剤は、本明細書中で定義されるような特定の多粒子形態である。それらは、粒子、顆粒またはビーズなどの他のより小さな多粒子からの調製を含め、本明細書に記載のように調製することができる。ミニ錠剤は、錠剤に関して当業者に公知の任意の形状、例えば、例えば約1.25〜3mmの直径を有する円形状;例えば凸状上面および凸状底面を有し、例えば円筒の直径および高さがそれぞれ独立に1〜3mmである円筒状;または例えば高さおよび直径がほぼ等しく、かつ1.25〜3mmである両凸ミニ錠剤の形状を有することができる。
【0051】
本発明によるミニ錠剤のコアは、本発明による固形経口剤形の調製に適している添加物または添加剤を含むことができる。錠剤製剤で一般に使用される打錠助剤を使用することができ、該問題に関する広範な文献が参照され、とりわけ、参照により本明細書に組み込まれるFiedlerの「Lexikon der Hilfstoffe」第4版、ECV Aulendorf 1996年を参照されたい。これら助剤としては、限定されないが、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、安定化剤、充填剤または賦形剤、界面活性剤、フィルム形成剤、柔軟化剤、顔料などが挙げられる。
【0052】
本発明は、さらに、活性薬剤として治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、および添加物としての充填剤を含む固形経口剤形に関する。さらなる添加物としては、限定されないが、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、安定化剤、賦形剤、界面活性剤、フィルム形成剤、顔料、柔軟化剤、および粘着防止剤などが挙げられる。活性成分およびさらなる添加物の量は、好ましくは前に定義したような量である。
【0053】
本発明は、さらに、活性薬剤として治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに添加物として充填剤および崩壊剤を含む固形経口剤形に関する。さらなる添加物としては、限定されないが、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、安定化剤、賦形剤、界面活性剤、フィルム形成剤、顔料、柔軟化剤、および粘着防止剤などが挙げられる。活性成分およびさらなる添加物の量は、好ましくは前に本明細書中で定義したような量である。
【0054】
本発明は、さらに、活性薬剤として治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに添加物として充填剤、崩壊剤および滑沢剤を含む固形経口剤形に関する。さらなる添加物としては、限定されないが、結合剤、流動促進剤、安定化剤、賦形剤、界面活性剤、フィルム形成剤、顔料、柔軟化剤、および粘着防止剤などが挙げられる。活性成分およびさらなる添加物の量は、好ましくは前に本明細書中で定義したような量である。
【0055】
本発明は、さらに、活性薬剤として治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに添加物として充填剤、崩壊剤、滑沢剤および流動促進剤を含む固形経口剤形に関する。さらなる添加物としては、限定されないが、結合剤、安定化剤、賦形剤、界面活性剤、フィルム形成剤、顔料、柔軟化剤、および粘着防止剤などが挙げられる。活性成分およびさらなる添加物の量は、好ましくは前に本明細書中で定義したような量である。
【0056】
本発明は、さらに、活性薬剤として治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに添加物として充填剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤および結合剤を含む固形経口剤形に関する。さらなる添加物としては、限定されないが、安定化剤、賦形剤、界面活性剤、フィルム形成剤、顔料、柔軟化剤、および粘着防止剤などが挙げられる。活性成分およびさらなる添加物の量は、好ましくは前に本明細書中で定義したような量である。
【0057】
これらの添加物の1種または複数は、固形経口剤形の特定の所望される特性に対して関心を有する当業者が定型的実験によってどんな過度の負担もなしに選択し、使用することができる。
【0058】
一実施形態において、本発明による固形経口剤形は、添加物として、例えば、粉糖、圧縮糖(compressible sugar)、デキストラート(dextrate)、デキストリン、デキストロース、乳糖、マンニトール、デンプン(例えば、バレイショデンプン、小麦デンプン、コーンスターチ)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、粉末セルロース、ソルビトール、ショ糖、およびタルクなどの充填剤または賦形剤、好ましくは、微結晶セルロース、例えば、AVICEL、FILTRAK、HEWETEN、またはPHARMACELの登録商標で入手可能な製品を含む。最も好ましい充填剤は、とりわけ約0.45g/cm3の密度を有する微結晶セルロース、例えばAVICELである。
【0059】
崩壊剤としては、とりわけ、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC−Ca)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、架橋PVP(例えば、CROSPOVIDONE、POLYPLASDONEまたはKOLLIDON XL)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、およびグアーガムを、最も好ましくは架橋PVP(CROSPOVIDONE)、架橋CMC(Ac−Di−Sol)、カルボキシメチルデンプン−Na(PRIMOJELおよびEXPLOTAB)を挙げることができる。最も好ましい崩壊剤はCROSPOVIDONEである。
【0060】
滑沢剤としては、とりわけ、ステアリン酸Mg、ステアリン酸アルミニウム(Al)またはCa、PEG4000〜8000およびタルク、水素化ヒマシ油、ステアリン酸およびその塩、グリセロールエステル、ステアリルフマル酸Na、水素化綿実油などを挙げることができる。最も好ましい滑沢剤は、ステアリン酸Mgである。
【0061】
流動促進剤としては、とりわけ、コロイダルシリカ(コロイダル二酸化ケイ素、例えばAEROSILなど)、三ケイ酸マグネシウム(Mg)、粉末セルロース、デンプン、タルクおよびリン酸三カルシウム、またはこれらと充填剤もしくは結合剤との組合せ(例えば、ケイ化微結晶セルロース(PROSOLV)を挙げることができる。最も好ましい流動促進剤は、コロイダル二酸化ケイ素(例えば、AEROSIL200)である。
【0062】
湿式造粒のための結合剤としては、とりわけ、ポリビニルピロリドン(PVP)(例えば、PVP K30)、HPMC(例えば、粘度等級3または6cps)、およびポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEG4000)を挙げることができる。最も好ましい結合剤は、PVP K30である。
【0063】
それゆえ、一実施形態において、本発明による固形経口剤形は、添加物として充填剤を、とりわけ微結晶セルロースを含む。
【0064】
一実施形態において、本発明による固形経口剤形は、添加物として充填剤に加えて崩壊剤を、とりわけ微結晶セルロースおよびクロスポビドンを含む。
【0065】
一実施形態において、本発明による固形経口剤形は、添加物として充填剤および崩壊剤に加えて滑沢剤を、とりわけ微結晶セルロース、クロスポビドン、およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0066】
一実施形態において、本発明による固形経口剤形は、添加物として充填剤、崩壊剤および滑沢剤に加えて流動促進剤を、とりわけ微結晶セルロース、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、およびコロイダル二酸化ケイ素を含む。
【0067】
一実施形態において、本発明による固形経口剤形は、添加物として充填剤、崩壊剤、滑沢剤および流動促進剤に加えて結合剤を、とりわけ微結晶セルロース、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、コロイダル二酸化ケイ素、およびポビドンを含む。
【0068】
とりわけ、本発明による、および本明細書に記載のようなミニ錠剤のコアは、アリスキレンの市販製剤SPP100と同様の顆粒と、外側または外部相、とりわけ市販の対照製剤と比較してより多量のステアリン酸マグネシウムを含み超崩壊剤(superdisintegrant)を含まない外部相との混合物から圧縮することができる。
【0069】
採用される各部類の添加物、例えば流動促進剤、結合剤、崩壊剤、充填剤または賦形剤、および滑沢剤またはフィルムコートの量は、当技術分野で通常的な範囲内で変えることができる。したがって、例えば、滑沢剤の量は、0.2〜5重量%、とりわけステアリン酸Mgの場合には1.0〜3.0重量%、例えば、1.5〜2.5重量%の範囲内で変えることができ;結合剤の量は、0〜約20重量%、例えば2.5〜4.5重量%の範囲内で変えることができ;崩壊剤の量は、0〜約20重量%、例えば3〜5重量%の範囲内で変えることができ;充填剤または賦形剤の量は、0〜約80重量%、例えば20〜50重量%の範囲内で変えることができ;一方、流動促進剤の量は、0〜約5重量%、例えば0.4〜1.0重量%の範囲内で変えることができ;フィルムコートの量は、0〜5mg/cm2、例えば0.4mg/cm2〜0.7mg/cm2の範囲内で変えることができる。
【0070】
活性薬剤の高い含有量を考慮してわずかな比較的少量の添加物を含むことが、本発明の固形経口剤形の特徴である。このことが、物理的に小さな単位剤形の製造を可能にする。所定の非被覆単位剤形中の添加物の総量は、固形経口剤形の総重量を基準にして約65重量%以下、より好ましくは約60%以下であることができる。好ましくは、添加物含有量は、ヘミフマル酸を基準にして約35〜58重量%の範囲にあり、より詳細には、添加物含有量は、約50〜約56重量%の範囲にある。
【0071】
錠剤コア中の充填剤、特に微結晶セルロースの好ましい量は、単位剤形当たり、約30〜40重量%、とりわけ約33〜約40重量%の範囲にある。
【0072】
錠剤コア中の結合剤、特にポビドンの好ましい量は、単位剤形当たり、約2.5〜4.5重量%、とりわけ約3〜4重量%の範囲にある。
【0073】
錠剤コア中の崩壊剤、特にCROSPOVIDONEの好ましい量は、単位剤形当たり、約3〜5重量%、とりわけ約3.5〜4.5重量%の範囲にある。
【0074】
錠剤コア中の流動促進剤、特にコロイダル二酸化ケイ素の好ましい量は、単位剤形当たり、約0.4〜1.0重量%、とりわけ約0.6〜0.9重量%の範囲にある。
【0075】
錠剤コア中の滑沢剤、特にステアリン酸Mgの好ましい量は、単位剤形当たり、約1.5〜3重量%、とりわけ約1.5〜2.5重量%の範囲にある。
【0076】
フィルムコートの好ましい量は、単位剤形当たり、約0.4mg/cm2〜0.7mg/cm2の範囲にある。
【0077】
アリスキレンおよび添加物の好ましい量は、実例となる実施例中でさらに示される。
【0078】
各添加物の絶対量および他の添加物に対する相対量は、同様に、固形経口剤形に関して所望される特性に依存し、やはり当業者によって定型的実験により過度の負担なしに選択できる。例えば、固形経口剤形は、活性薬剤の放出の定量的制御を伴ってまたは伴わないで、加速および/または遅延された活性薬剤の放出を提示するように選択することができる。
【0079】
本発明の特定の実施形態において、微結晶セルロースが充填剤/結合剤として、クロスポビドンが崩壊剤とし、ポビドンが充填剤/結合剤として、5%イソプロパノール含有エタノールが造粒用液体として(後で処理中に除去することができる)、シリカ、コロイダル無水/コロイダル二酸化ケイ素が流動促進剤として、かつステアリン酸マグネシウムが滑沢剤として、とりわけ実例となる実施例に示される濃度で使用される。
【0080】
詳細には、外部相中のステアリン酸マグネシウムは、単位剤形当たり、約1.5〜3重量%、とりわけ約1.5〜2.5重量%の範囲の濃度で存在することができる。
【0081】
本発明による、および本明細書に記載のようなミニ錠剤のコアは、被覆剤で被覆することができ、ここで、前記被覆剤は、原体の苦い風味を遮蔽し、それによって患者のコンプライアンスを改善し、かつ/またはアリスキレン活性化合物の放出をin vitroおよびin vivoで制御するのに役立つ可能性がある。
【0082】
したがって、本発明による固形経口剤形は、またコート錠または糖衣錠、とりわけフィルムコート錠または糖衣錠の形態で提供することができ、この場合、固形経口剤形は、被覆剤、典型的にはHPMC、PVPなどのポリマー、糖、セラック、または当技術分野でまったく通常的なその他のフィルム被覆剤を用いて提供される。当技術分野で採用される公知の多くの被覆法、例えば、Aeromatic、Glatt、WursterまたはHuttlinから入手可能な装置を使用する既知法による、例えば、流動床中での、例えば、Accela Cota、Glatt、Driamなどからの装置を使用する既知法による、有孔パンコーター中での噴霧コーティング、あるいは当技術分野で通常的なその他の方法が考慮される。糖衣において一般的に使用される添加物も、このような方法中で採用できる。
【0083】
1つのバリアントにおいて、ミニ錠剤は、風味遮蔽材料、例えば、ポリアクリレート、好ましくはEudragit(登録商標)−EまたはEudragit(登録商標)−RD100もしくは−RS/RLなどのEudragit(登録商標)、特にEudragit(登録商標)−Eで被覆される(以後示した場所にある、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」362頁を参照されたい)。
【0084】
本発明の組成物に適した被覆材料としては、ポリアクリレート、特にポリメタクリレート、好ましくは、
1.a)メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸、およびアクリル酸エステルから選択されるモノマーから形成されるコポリマー、
2.b)メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、およびメタクリル酸メチルから選択されるモノマーから形成されるコポリマー、または
3.c)アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリドから選択されるモノマーから形成されるコポリマー、
より好ましくは、2.b)で言及したもの、例えばEvonikからEudragit(登録商標)の商品名で入手可能なものが挙げられる。
【0085】
特に好ましいポリアクリルポリマーは、
1.1)Eudragit(登録商標)L、例えばEudragit(登録商標)L100の商品名で入手可能な、メタクリル酸とメタクリル酸メチルから形成される1:1コポリマー;およびEudragit(登録商標)L100−55の商品名で入手可能な、メタクリル酸とアクリル酸エチルエステルとの1:1コポリマーなどの、メタクリル酸とメタクリル酸低級アルキルエステルから選択されるモノマーから形成される1:1コポリマー、
2.2)Eudragit(登録商標)Eの商品名で入手可能な、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸2−ジメチルアミノエチルとメタクリル酸メチルから形成される1:2:1コポリマー、および
3.3)Eudragit(登録商標)RLの商品名で入手可能な、アクリル酸エチルとメタクリル酸メチルとメタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリドから形成される1:2:0.2コポリマー;またはEudragit(登録商標)RSの商品名で入手可能な対応する1:2:0.1コポリマー;またはカルボキシメチルセルロースとの組合せで存在し、Eudragit(登録商標)RDの商品名で入手可能な、アクリル酸エチルとメタクリル酸メチルとメタクリル酸トリメチルアンモニオエチルクロリドから形成される1:2:0.2コポリマー、
であり、より好ましくは、2.2)で言及したものである。
【0086】
上記のポリアクリレートは、好ましくは、約50,000〜約500,000、例えば約150,000の平均分子量を有する。
【0087】
ポリアクリレート、特にEudragitk Eは、例えば、Eudragit(登録商標)Eを用いた被覆が、口腔の中性のpHで容易には溶解しないが、5未満のpHにおいてのみ溶解し、それによってアリスキレンの苦味の溶出を胃に移動するまで防止するので、遊離塩基の形態およびその塩、例えばアリスキレンフマル酸塩の形態のアリスキレンを含む固形剤形を被覆するのにとりわけ適していることが見出された。
【0088】
前記で規定した被覆材料は、被覆処方物中で通常的なさらなる添加剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、または二酸化ケイ素、例えば、Syloid(登録商標)型(Grace)の合成非晶質ケイ酸、例えば、Syloid(登録商標)244FPまたはコロイダル二酸化ケイ素、例えば、Aerosil(登録商標)、例えば、Aerosil(登録商標)200、または湿潤化剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムまたは前述のポリエチレングリコールまたはポリソルベートとの混合物の状態で使用することができる。
【0089】
別の態様において、固形剤形は、さらなる被覆、例えば、前述の1つの被覆上に塗布される、例えば、固形剤形の互いの固着または容器材料、例えばカプセルの壁への固着を回避できる、コロイダル二酸化ケイ素製品、例えばAerosil(登録商標)を含む固着防止材料の層を含むことができる。
【0090】
本発明の特に好ましい組成物は、被覆されたアリスキレン粒子、例えば、その被覆が、(風味遮蔽)ポリアクリレート系被覆剤、好ましくはEudragit(登録商標)EまたはEudragit RD100(登録商標)、特にEudragit(登録商標)Eを含む、ミニ錠剤またはペレット剤などの錠剤である。
【0091】
被覆剤は、さらに、可塑剤、例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジエチル、ポリエチレングリコール3000、4000もしくは6000、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、またはフタル酸ジエチル;および/あるいは固着防止剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、コロイドダル二酸化ケイ素、Syloid244FPなどの合成非晶質ケイ酸、タルク、またはモノステアリン酸グリセリンなど、さらなる構成要素を含むことができる。被覆剤は、さらに、特に水性分散液中に、懸濁された添加剤の沈降を回避するための1種または複数の増粘剤、例えばHPMC(3cps)またはHPMC(6cps)を含むことができる。
【0092】
本発明の特定の実施形態において、粘着防止剤としてステアリン酸マグネシウムが、フィルム形成剤として塩基性ブチル化メタクリレートコポリマーが、可塑剤としてセバシン酸ジブチルが、可溶化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(sodium laurilsulfate)/ラウリル硫酸ナトリウムが、および溶媒として精製水が使用される(バリアントA)。
【0093】
遅延放出が所望されるなら、多粒子、ワックスマトリックス系、ポリマーマトリックス錠、もしくはポリマー被覆のための被覆技術、または当技術分野で通常的なその他の技術を採用することができる。
【0094】
活性薬剤の放出の定量的制御は、当技術分野で公知の通常的技術によって達成することができる。このような剤形は、経口浸透システム(例えば、OROS)、コート錠、マトリックス錠、圧縮コート錠、多層錠などとして知られている。
【0095】
本発明による調節放出性を有する組成物は、好都合には、体内、好ましくは腸内での、アリスキレン活性化合物またはその薬学的に許容される塩の持続的な、連続的な、緩慢な、または延長された放出を提供する構成要素、例えば調節放出性被覆剤、例えば拡散性被覆剤で被覆することができる。
【0096】
このような調節放出性被覆剤の構成要素の例は、例えば、セルロース誘導体、例えば、エチルセルロース、例えば、FMCから入手可能なAquacoat(登録商標)ECD;Colorconから入手可能なSurelease;アクリルコポリマー、好ましくは第4級アンモニウム基、例えば、トリ(C1〜4アルキル)−アンモニウムメチルメタクリレート基、例えば、トリメチルアンモニウムメチルメタクリレート基を含むアクリルおよびメタクリルコポリマー、例えば、異なる比率の第4級アンモニウム基を有するアクリル/メタクリル酸エステル20:1 RL/40:1 RS、例えば、Eudragit RL(登録商標)、Eudragit RS(登録商標)もしくはEudragit NE(登録商標)の商品名でRohm Pharmaから市販されているポリマー;ならびに/またはこれらの混合物である。重量で約75:25、好ましくは90:10、好ましくは95:5のEudragit RS(登録商標):Eudragit RL(登録商標)の比率が、とりわけ好ましい。
【0097】
調節放出性被覆剤の構成要素は、水性分散液、例えば30%水性分散液、または有機溶液、例えば12.5%有機溶液の状態で存在することができる。例えば、調節放出性被覆剤の構成要素は、30%水性分散液または12.5%有機溶液の状態のEudragit RL(登録商標)とEudragit RS(登録商標)との混合物である。
【0098】
調節放出性被覆剤の構成要素の量は、該被覆剤の総重量を基準にして約30〜約100重量%、より好ましくは約50〜約100重量%でよい。
【0099】
調節放出性被覆、例えば拡散性被覆は、好ましくは、組成物の総重量の1〜50重量%、より好ましくは2〜20重量%、さらにより好ましくは4〜10重量%を構成する。
【0100】
当業者は、調節放出性被覆用ポリマーの性質および量を、アリスキレン構成要素の溶出プロファイルに必要とされるように調節する。
【0101】
本発明の別の特定の実施形態において、可塑剤としてセバシン酸ジブチルを、フィルム形成剤としてエチルセルロース水性分散液を、もう1つのフィルム形成剤としてヒプロメロースを、流動促進剤としてシリカ、コロイダル無水/コロイダル二酸化ケイ素を、かつ溶媒として精製水を使用する、遅延放出性被覆が提供される(バリアントB)。
【0102】
調節放出性被覆剤は、さらに、例えば後に開示するような1種または複数のさらなる構成要素または添加剤、例えば、細孔形成剤、可塑剤、固着防止剤、湿潤化剤を含むことができる。
【0103】
適切な細孔形成剤は、HPMCなどのpH非依存性細孔形成剤、またはpHに依存する細孔形成剤でよい。適切なpH依存性細孔形成剤は、腸溶性の細孔形成剤、例えば、腸溶性の被覆用ポリマーでよい。
【0104】
本明細書中で定義されるように、腸溶性の細孔形成剤は、pH>5の環境中、例えば腸液中で薬物を放出し、酸性環境中、例えば、胃内での薬物放出を抑制する細孔形成剤である。本発明による腸溶性細孔形成剤の例は、フタル酸−HPMC(HPMC−P)、例えば信越化学工業からのHP50、HP55;酢酸コハク酸HPMC(HPMC−AS)、例えば信越化学工業からのAqoat LFまたはAqoat MF;メチルアクリル酸−エチルアクリル酸のコポリマー、例えばメタクリル酸コポリマー、例えばRohm PharmaからのEudragit L、S、L100−55および/もしくはL30D、ColorconからのAcryl−Eze、BASFからのKollicoat MAE30 DP;酢酸フタル酸セルロース、例えば、FMC BiopolymerからのAquacoat CPD、もしくはEastman Kodakからのポリマー;ならびにポリ酢酸フタル酸ビニル、例えばSureteric、Colorcon、またはこれらの任意の混合物である。好ましくは、HPMC−PおよびHPMC−ASは、有機被覆剤溶液中で、エチルセルロース、または第4級アンモニウム基、例えば、トリ(C1−4アルキル)−アンモニウムメチルメタクリレート基を含むアクリルおよびメタクリルコポリマー、例えば、Eudragit RSと組み合わせることができ、水中に分散されたHPMC−ASは、また、エチルセルロース水性分散液、例えば、Aquacoat ECD、FMCと組み合わせることができる。
【0105】
フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、典型的には、20,000〜100,000ダルトン、例えば80,000〜130,000ダルトンの分子量を、例えば、5〜10%のヒドロキシプロピル含有量を、18〜24%のメトキシ含有量を、および21〜35%のフタリル含有量を有する。適切なフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースの例は、6〜10%のヒドロキシプロピル含有量を、20〜24%のメトキシ含有量を、21〜27%のフタリル含有量を、約84,000ダルトンの分子量を有する、HP50の商品名で知られ、信越化学工業(東京、日本)から入手可能な市販製品、またはそれぞれ5〜9%、18〜22%、および27〜35%のヒドロキシプロピル含有量、メトキシ含有量、およびフタリル含有量を、および78,000ダルトンの分子量を有する、HP55の商品名で知られ、同上供給業者から入手可能な市販製品である。
【0106】
例を挙げれば、Aqoat LFまたはAqoat MFの商品名で知られ、例えば信越化学工業(東京、日本)から市販されているような適切な酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用できる。
【0107】
本発明の組成物の調節放出性被覆は、調節放出性被覆の総重量を基準にして0〜70重量%、より好ましくは5〜50重量%の細孔形成剤を含むことができる。
【0108】
本発明の組成物は、さらに、例えば水溶性細孔を作り出す細孔形成剤、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、または酸性媒体、例えばアンモニウム塩に可溶なその他のセルロース誘導体、アクリレートもしくはメタクリレートエステル、例えばEudragit EもしくはEudragit EPO;水中で膨潤するポリアクリル酸、例えば、Eudragit RS、RL、NE30D、;アルカリ媒体に可溶性である、すなわち腸溶性の被覆用ポリマー、例えば、Eudragit L、S、L100−55、あるいはこれらの混合物を含んでよい。HPMCは、また、その水性溶液の粘度ゆえに、増粘剤として作用することができる。本発明によれば、細孔形成剤は、親水性薬剤、例えば、水溶性可塑剤、例えば、PEG、トリアセチン、クエン酸トリエチル、または親水性二酸化ケイ素、例えば、Aerosil200またはSyloid244FPでよい。
【0109】
本発明による適切な可塑剤としては、例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチ、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、ポリエチレングリコール400、3000、4000もしくは6000、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、およびフタル酸ジエチル、またはこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、可塑剤は、クエン酸トリエチルまたはセバシン酸ジブチルである。可塑剤は、一般に、被覆用ポリマーを膨潤させ、その結果、ポリマーのガラス転移温度が降下し、その柔軟性および靭性が増加し、かつその透過性が変化する。可塑剤がポリエチレングリコールのように親水性である場合、被覆の水透過性は、一般に増加する。可塑剤がフタル酸ジエチルまたはセバシン酸ジブチルのように疎水性である場合、被覆の水透過性は、一般に減少する。
【0110】
好ましくは、可塑剤は、被覆の総重量を基準にして、1〜50重量%、好ましくは2〜35重量%、より好ましくは5〜25重量%の量で存在する。
【0111】
固着防止剤の例は、二酸化ケイ素、例えば、コロイダル二酸化ケイ素、Syloid244FPなどの合成非晶質ケイ酸、タルク、Aerosil200、またはモノステアリン酸グリセリンである。好ましくは、固着防止剤は、Aerosil200およびSyloid244FPである。固着防止剤が、Aerosil200またはSyloid244FPのように親水性である場合、被覆の水透過性/膨潤性(それゆえ薬物の放出も)は、一般に増加する。可塑剤が、タルクまたはモノステアリン酸グリセロールのように疎水性である場合、被覆の水透過性は、一般に減少する。固着防止剤は、薬物コアの固着を回避し、かつそれらの高い離脱を保証するために、任意選択で被覆処方物中に含められる。
【0112】
好ましくは、固着防止剤は、被覆の総重量を基準にして、1〜50重量%、より好ましくは5〜25重量%の量で存在する。
【0113】
適切な湿潤化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、セトマクロゴール、ワックス、モノステアリン酸グリセロール、ソルビタンエステル、およびポロキサマーが挙げられる。湿潤化剤は、界面張力を低減し、かつ噴霧溶液または懸濁液と処理表面との接触を改善するそれらの特性のため、被覆処方物中に任意選択で含められる。
【0114】
好ましくは、湿潤化剤は、被覆の乾燥重量を基準にして、0.1〜20重量%、より好ましくは1〜5重量%の量で存在する。
【0115】
本発明のさらに別の特定の実施形態において、流動促進剤としてシリカ、コロイダル無水/コロイダル二酸化ケイ素を、可塑剤としてクエン酸トリエチルを、フィルム形成剤としてアンモニオメタクリレートコポリマーA型を、もう1つのフィルム形成剤としてアンモニオメタクリレートコポリマーB型を、かつ溶媒として精製水を使用する、徐放出性被覆が提供される(バリアントC)。
【0116】
3種のバリアントA、BおよびCのすべてに関して、驚くべきことに、アリスキレン化合物のバイオアベイラビリティーが、そのバイオアベイラビリティーが、液状アリスキレン製剤のそれと比べて有意により高いことが以前の臨床研究において示された市販のアリスキレン製品またはカプセル製剤などの既知固形剤形のそれと類似のレベルに実質上維持され得ることを示すことができた。したがって、本発明による製剤を用いて、液状製剤で見出された速度に類似した、固形剤形に比べてより速い溶出速度を、公知の固形剤形のそれに類似し、かつ液体製剤と比較して改善されたバイオアベイラビリティーを危うくすることなしに達成できたことは驚くべき発見であった。
【0117】
本発明による、および本明細書に記載のような固形単位剤形、とりわけ被覆されたミニ錠剤の形態での経口投与のためのアリスキレン固形単位剤形は、液状アリスキレン製剤のそれに比べて有意により高いバイオアベイラビリティーを有する。とりわけ、被覆されたミニ錠剤のバイオアベイラビリティーは、液状アリスキレン製剤に比較した場合に、少なくとも1.1倍、とりわけ少なくとも1.3倍、さらに特に少なくとも1.5倍だけ高められる。
【0118】
このことは、投与後に液状提示のそれに類似した極めて急速な活性成分の放出を示す、バリアントAによる固形単位剤形にとって特に驚きである。
【0119】
治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を含むコア錠剤を調製するために、湿式造粒を使用することができる。
【0120】
水および/または水性結合剤溶液を使用する、添加剤を含めたアリスキレンの湿式造粒は、原体の多形現象の変化につながり、その多形現象は、部分的に非晶質状態に変化し、医薬品(DP)の劣悪な化学的安定性をもたらす。
【0121】
しかし、有機溶媒混合物または有機結合剤溶液を使用するアリスキレンの湿式造粒は、次の利点:
・前記湿式造粒は、造粒中にアリスキレンの嵩密度を低下させること;
・原体の品質変化の影響が最小化されること;
・単位剤形当たり46重量%を超える高い薬物装填量を容易に達成できること;
・十分な硬度、破砕抵抗性、崩壊時間、溶出速度などを有する錠剤の製剤化が可能であること;
・原体の固着傾向および乏しい流動が、最小まで低減されること;
・DPの確固とした製造法が達成されること;
・製剤のスケールアップ、および再現性のあるDPの性能をもたらす方法が達成されること;および
・妥当な貯蔵寿命を達成するのに十分な安定性が達成されること;
を示す、適切なアリスキレン固形経口剤形、特に錠剤を製造する最良の方策であることが見出された。
【0122】
添加剤は、記載された本発明の事例である、部分的に内側(顆粒)相中に、部分的に外側相中に分配される。微結晶セルロース(充填剤)およびCROSPOVIDONE(崩壊剤)は、部分的に内側相中に、かつ部分的に外側相中に存在し、造粒中の結合剤であるPVP K30(結合剤)は、内側相の部分のみに存在し、一方、コロイダル二酸化ケイ素(流動促進剤)およびステアリン酸Mg(滑沢剤)は、外側相の部分のみに存在する。
【0123】
内側相の添加剤、例えば、充填剤、結合剤および崩壊剤、ならびに原体は、混合され、結合剤を含むエタノール性溶液およびさらなるエタノールを用いて造粒される。顆粒は、乾燥され、篩い分けられる。例えば、崩壊剤、充填剤、流動促進剤および滑沢剤を含む外側相は、乾燥顆粒と共に篩いにかけられ、混合される。混合物を圧縮して錠剤とする。コアは、任意選択で、フィルムコートで被覆することができる。
【0124】
顆粒相は、内側相と定義され、顆粒に添加される添加剤は、打錠混合物の外側相と定義される。
【0125】
本発明は、さらに、前に本明細書中に記載のような固形経口剤形の調製方法に関する。このような固形経口剤形は、適切な量の、前に本明細書中に記載のような構成要素を、単位剤形を形成するように処理することによって製造することができる。
【0126】
したがって、本発明は、本発明の固形経口剤形の製造方法を提供し、該方法は、
1)活性成分および添加物を混合すること、ならびに造粒用液体を用いて前記構成要素を造粒するステップ;
2)生じる顆粒を間に行われる篩いがけステップで乾燥するステップ;
3)乾燥された顆粒を外側相用添加剤と混合するステップ;
4)生じる混合物を圧縮してコア錠剤としての固形経口剤形を形成するステップ;および
5)生じるコア錠剤を任意選択で被覆してフィルムコート錠を得るステップを含む。
【0127】
好ましくは、ステップ(1)の添加物は、充填剤、崩壊剤および結合剤から選択され、ステップ(3)の外側相用添加剤は、充填剤、崩壊剤、滑沢剤および流動促進剤から選択される。
【0128】
造粒用液体は、エタノール、エタノールと水との混合物、エタノールと水とイソプロパノールとの混合物、またはPVPの前述の混合物中の溶液でよい。エタノールと水との好ましい混合物は、約50/50〜約99/1(w/w%)の範囲にあり、最も好ましくは約94/6(w/w%)である。エタノールと水とイソプロパノールとの好ましい混合物は、約45/45/5〜約98/1/1(w/w/w%)、最も好ましくは約88.5/5.5/6.0〜約91.5/4.5/4.0(w/w/w%)の範囲にある。上記混合物中の好ましいPVP濃度は、約5〜約30重量%、好ましくは約15〜約25重量%、より好ましくは約16〜約22重量%の範囲にある。
【0129】
当技術分野で採用される造粒、乾燥、および混合に関する公知の多くの方法、例えば、流動床中での噴霧造粒、高剪断ミキサー中での湿式造粒、溶融造粒、流動床乾燥機中での乾燥、自由落下またはタンブラーブレンダー中での混合、単発式または回転式打錠機での錠剤への圧縮が考慮される。
【0130】
顆粒の製造は、有機造粒法に適した標準的な装置で実施することができる。最終ブレンド物の製造および錠剤の圧縮も、標準的な装置で実施することができる。
【0131】
例えば、ステップ(1)は、高剪断造粒機、例えば、Collette Gralによって実施することができ;ステップ(2)は、流動床乾燥機中で実行することができ;ステップ(3)は、自由降下式ミキサー(例えば、容器型ブレンダー、タンブラーブレンダー)によって実施することができ;かつステップ(4)は、乾式圧縮法、例えば回転式打錠機を使用して実施することができる。
【0132】
前記のように、次いで、コア錠剤に任意選択でフィルムコートを施して、前に本明細書中に記載のようなフィルムコート錠を提供することができる。
【0133】
多形現象の変化に関するアリスキレンの高い吸湿性および水への感受性のため、上述の理由(非晶質状態、劣悪な化学的安定性)から、原体を多形現象の変化から防御するために、水の使用は、好ましくは回避されるべきである。前記問題の解決は、有機フィルム被覆法を適用することである。
【0134】
驚くべきことに、標準的なフィルムコート組成物を使用する水性フィルム被覆法は、多形現象の変化を伴わないでアリスキレンのコア錠剤に適用できることが見出された。
【0135】
フィルムコートは、また、ポリマーとしてのHPMC;着色剤としての酸化鉄顔料、二酸化チタン;柔軟化剤としてのPEG;および粘着防止剤としてのタルクを含むことができる。着色剤または染料の使用は、外観を向上させるのに、および組成物を識別するのに役立つ可能性がある。使用するのに適したその他の染料としては、典型的には、カロチノイド、クロロフィルおよびレーキが挙げられる。
【0136】
フィルム被覆の条件は、錠剤コアが、無視できない量の水分を吸収しないこと、および錠剤内の原体が、水滴と密接に接触しないことを確実にしなければならない。このことは、錠剤コアに到達する湿気の量を低減する処理パラメーターの設定によって達成される。
【0137】
ミニ錠剤の製造は、したがって、標準的な剤形の製造で使用される現行顆粒に基づくことができるが、製剤および製造方法に対する適合化が必要である。
【0138】
ミニ錠剤は、特別なマルチチップツーリングを備えた標準的な回転式打錠機で圧縮される。マルチチップツーリングは、パンチ当たり19個までのチップからなることができる。このようなミニ錠剤用パンチは、標準的な錠剤用パンチと比較してダイ中でより大きな接触面積を有する。したがって、製剤および/またはツーリングの滑沢化(例えば噴霧滑沢化)の選択肢が、製造方法において重要な役割を演じる。
【0139】
開発試験中に、低い排出力にもかかわらず、より低いパンチ剛性が観察された。この問題を克服するために、異なるパンチチップの設計および回転式打錠機に特別な充填カムを使用した。製剤に対する適合化、例えば滑沢剤濃度の増加も行われた。
【0140】
さらなるステップにおいて、ミニ錠剤の溶出速度挙動を、フィルム被覆の塗布により放出を調節することによって、単核錠剤(mono tablet)のそれに合わせた。
【0141】
本発明の特定の実施形態において、3種のバリアントは、市販のSPP100製剤の製造で使用される顆粒からなる同一混合物から製造されて提供され、ここで、その外側相は、異なる被覆を塗布することによって調節される。バリアントは、次のように記述される:
バリアントA:pH感受性Eudragit EPO被覆、最も早いDR
バリアントB:エチルセルロース+HPMC被覆、中度のDR
バリアントC:Eudragit RL/RS被覆、最も遅いDR
【0142】
ミニ錠剤の大きな表面積とアリスキレンの吸湿性とが連結された有害な共働、およびそれと関連する諸問題を克服するために、パン中の乾燥条件を、フィルムコートされたミニ錠剤中の高い水含有量を低減するように調節すべきである。このことは、例えば、流動床コーターなどの改善された乾燥条件を備えた被覆装置を使用することによって達成することができる。
【0143】
さらなるステップで、外側相も、本質的に吸湿性である崩壊剤を除外することによって調節することができる。このことは、可能である。なぜなら、崩壊剤の除外を、ミニ錠剤によって提供される、崩壊剤がなくてもより早い崩壊をもたらす大きな表面積によって補償することができるからである。さらに、ミニ錠剤の製造で使用されるマルチチップツーリングは大きな接触面積を有するので、滑沢剤の量を、市販剤形と比較して増加させることができる。
【0144】
本発明の固形経口剤形は、子供における収縮期もしくは拡張期またはその双方の血圧を降下させるために小児科で使用できる。本発明が有用である状態としては、限定はしないが、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期型、またはその他の二次性型のいずれにせよ)、鬱血性心不全、狭心症(安定または不安定型のいずれにせよ)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎障害、糖尿病性心筋症、腎機能不全、末梢血管疾患、左心室肥大、認知機能障害(アルツハイマー型など)および脳卒中、頭痛、ならびに慢性心不全が挙げられる。
【0145】
本発明は、さらに、そのような治療を必要とする子供、とりわけ0.5〜17歳の子供に治療上有効な本発明による固形経口剤形を投与することを含む、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期型、またはその他の二次性型のいずれにせよ)、鬱血性心不全、狭心症(安定または不安定型のいずれにせよ)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎障害、糖尿病性心筋症、腎機能不全、末梢血管疾患、左心室肥大、認知機能障害(例えば、アルツハイマー型)、脳卒中、頭痛、および慢性心不全の治療方法に関する。
【0146】
本発明は、さらに、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期型、またはその他の二次性型のいずれにせよ)、鬱血性心不全、狭心症(安定または不安定型のいずれにせよ)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎障害、糖尿病性心筋症、腎機能不全、末梢血管疾患、左心室肥大、認知機能障害、脳卒中、頭痛、および慢性心不全の小児治療のための薬剤を製造するための、本発明による固形経口剤形の使用に関する。
【0147】
本発明は、さらに、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期型、またはその他の二次性型のいずれにせよ)、鬱血性心不全、狭心症(安定または不安定型のいずれにせよ)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎障害、糖尿病性心筋症、腎機能不全、末梢血管疾患、左心室肥大、認知機能障害、脳卒中、頭痛、および慢性心不全の小児治療のための、本発明による固形経口剤形を含む医薬組成物に関する。
【0148】
最後に、投与すべき活性薬剤および特定製剤の的確な投与量は、いくつかの因子、例えば、治療されるべき状態、所望される治療継続期間、および活性薬剤の放出速度に依存する。例えば、必要とされる活性薬剤の量およびその放出速度は、特定の活性薬剤の血漿中濃度を治療効果にとって許容されるレベルにどれ程長く存続させるかを判定する、公知のin vitroまたはin vivo技術に基づいて決定することができる。
【0149】
前記の説明は、その好ましい実施形態を含め、本発明を完全に開示している。本明細書中に具体的にされている開示されている実施形態の修正および改善は、後記の特許請求の範囲に包含される。さらに詳述しないでも、当業者は、前述の説明を活用して、本発明をその最大限まで利用できると考えられる。したがって、本明細書中の実施例は、単なる例示であり、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0150】
実施例1:ミニ錠剤バリアントの調製
3種の小児用ミニ錠剤バリアント(300mgのSPP100ミニ錠剤(3.125mg/錠))を、市販のSPP100製剤中でも使用される同一の顆粒混合物から製造した。コア錠剤の外側相を変えて、被覆を塗布して次のバリアントを得た:
1.バリアントA:pH感受性Eudragit EPO被覆、最も早いDR
2.バリアントB:エチルセルロース+HPMC被覆、中度のDR
3.バリアントC:Eudragit RL/RS被覆、最も遅いDR
上記バリアントの組成を、表1−1、1−2および1−3中に記載する。
【0151】
実施例2:相対的BA研究
相対的BA研究は、小児用ミニ錠剤バリアントA(300mgのSPP100ミニ錠剤(3.125mg/錠))の製剤性能を評価するようにデザインした。被験薬の組成を表1−1に示す。市販されているような300mgのSPP100最終市販形(Final Market Image)(FMI)を、比較標準として使用した。
【0152】
薬物動態パラメーターおよび風味を成人志願者で測定した。バリアントAに関するこれらの研究の結果を表2〜3および図1に示す。
【0153】
参照例1:アリスキレンカプセル剤
カプセル充填物の組成(mg)(カプセル#0):
アリスキレンヘミフマル酸塩 41.44
Emcocel 50M 171.1
Polyplasdone XL 26.56
Aerosil200 2.4
ステアリン酸マグネシウム 3.6
合計 245.1
カプセルに原体と添加剤との乾燥ブレンド物を充填する。75mgのアリスキレン塩基の投与量は、2つのカプセルとして投与される。
【0154】
参照例2:液状アリスキレン製剤
75mgのアリスキレン塩基(=82.8mgのヘミフマル酸塩)に等価な原体を、125mlの瓶に、さらなる添加剤を含めないで充填し、次いで、200mlの水道水で処理し、それによって、原体を瓶中で一部の水で溶解し、残りの水は瓶をすすぐのに使用される。
【0155】
実施例3:小児患者における薬物動態
オープンラベル、多回投与の薬物動態学的および薬力学的研究を、年齢が6〜17歳の24名の小児患者で実施した。2mg/kgまたは6mg/kgの投与レベルでのアリスキレンの1日1回の投与量を、連続8日間投与した。血液検体を1日目および8日目に採取し、薬力学を、ノンコンパートメント解析法を使用して評価した。
【0156】
小児患者におけるアリスキレンへの暴露は、類似の投与量で健常成人において見出される暴露に類似していることが観察された。結果を表5および図2〜13に示す。2mg/kgおよび6mg/kgの双方での平均薬物暴露(AUCおよびCmax)は、健常成人で観察される暴露に類似していたが(図2〜5)、たぶんより小さな検体サイズ(12〜17歳:全部でn=19、2mg/kgでn=9、6mg/kgでn=10;6〜11歳:全部でn=5、2mg/kgでn=3、6mg/kgでn=2)のため、ばらつきがより大きかった。メディアンTmax、平均薬物蓄積指数(drug accumulation index)、および終末排泄半減期(terminal elimination half lives)は、成人において観察されるものと一致した。
【0157】
12〜17歳の患者における全般的薬物蓄積は、8日目の平均暴露曲線を1日目のそれと比較した場合、低〜中度であった。6mg/kgおよび2mg/kgの投与量の平均暴露曲線を比較すると、妥当な暴露増加が、投与量の増分に応答して観察された。12〜17歳の患者における定常状態(8日目)において、3倍の投与量増加は、2.5倍のAUC増加および1.7倍のCmax増加をもたらした。これらの発見は、成人対象におけるアリスキレンの薬物動態と一致している。6〜11歳の患者における結果は、成人および高齢小児集団で観察されるものに類似していた。
【0158】
12〜17歳の小児患者における2mg/kgでの1日目および8日目の平均濃度−時間プロファイルを図6に、6mg/kgでのプロファイルを図7に示す。
【0159】
12〜17歳の小児患者における2mg/kg(n=9)および6mg/kg(n=10)の投与量での1日目の平均濃度−時間プロファイルを図8に示す。12〜17歳の小児患者における2mg/kg(n=9)および6mg/kg(n=10)での8日目の平均濃度−時間プロファイルを図9に示す。
【0160】
図10は、6〜11歳の小児患者における2mg/kgの投与量(n=3)での1日目および8日目の平均濃度−時間プロファイルを示す。図11は、6〜11歳の小児患者におけ6mg/kgの投与量(n=3)での1日目および8日目の平均濃度−時間プロファイルを示す。
【0161】
図12は、6〜11歳の小児患者における2mg/kg(n=3)および6mg/kg(n=2)の投与量での1日目の平均濃度−時間プロファイルを示す。図13は、6〜11歳の小児患者における2mg/kg(n=3)および6mg/kg(n=2)の投与量での8日目の平均濃度−時間プロファイルを示す。
表
【0162】
【表1】
【0163】
【表2】
【0164】
【表3】
【0165】
【表4】
【0166】
【表5】
【0167】
【表6】
【0168】
本発明による製剤のバイオアベイラビリティーは、市販のアリスキレン錠剤(参照)およびカプセル製剤に類似したバイオアベイラビリティー、ならびに液体製剤と比較してより向上したバイオアベイラビリティーを有した。
【0169】
【表7】
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】説明なし
【図2】説明なし
【図3】説明なし
【図4】説明なし
【図5】説明なし
【図6】説明なし
【図7】説明なし
【図8】説明なし
【図9】説明なし
【図10】説明なし
【図11】説明なし
【図12】説明なし
【図13】説明なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよび外側被覆を有する錠剤形態の経口投与のための固形単位剤形であって、
・前記錠剤のコアが、治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を含み、かつ
・外側被覆が、風味遮蔽特性および/または制御放出機能を有するフィルムコートの形態である、固形単位剤形。
【請求項2】
前記コア錠剤が、多粒子系、とりわけミニ錠剤の一部である、請求項1に記載の固形単位剤形。
【請求項3】
前記ミニ錠剤が、1mmから4mmの間、とりわけ1.5mmから3mmの間、とりわけ1.5mmから2.5mmの間の大きさを有する、請求項2に記載の固形単位剤形。
【請求項4】
前記ミニ錠剤が、2mmの大きさを有する請求項2に記載の固形単位剤形。
【請求項5】
前記ミニ錠剤が、約2mg/錠から約4mg/錠の間のアリスキレンを含む、請求項2に記載の固形単位剤形。
【請求項6】
前記ミニ錠剤が、3.125mg/錠のアリスキレンを含む、請求項2に記載の固形単位剤形。
【請求項7】
前記フィルムコートが、pH依存性放出プロファイルを有する、請求項1から6までのいずれかに記載の固形単位剤形。
【請求項8】
前記フィルムコートが、約2から4.5の間のpHで5分後に約30%以下、10分後に約80%以下、かつ15分後に約95%以下の;ならびに約6から7の間のpH、とりわけ6.8のpHで15分後に約10%以下、30分後に約70%以下、60分後に約95%以下のアリスキレンのin vitro溶出をもたらす(バリアントA)、請求項7に記載の固形単位剤形。
【請求項9】
前記フィルムコートが、フィルム形成剤として塩基性ブチル化メタクリレートコポリマーを含む、請求項8に記載の固形単位剤形。
【請求項10】
前記フィルムコートが、フィルム形成剤として、エチルセルロース水性分散液、および任意選択でヒプロメロースを含む、請求項1に記載の固形単位剤形。
【請求項11】
前記フィルムコートが、フィルム形成剤としてアンモニウムメタクリレートコポリマー、とりわけアンモニウムメタクリレートコポリマーA型および/またはアンモニウムメタクリレートコポリマーB型を含む、請求項1に記載の固形単位剤形。
【請求項12】
小児集団における疾患または状態の治療で使用するための、治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口投与用固形単位剤形。
【請求項13】
高血圧症、鬱血性心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎障害、糖尿病性心筋症、腎機能不全、末梢血管疾患、左心室肥大、認知機能障害、脳卒中、頭痛、および慢性心不全の治療で使用するための、請求項9に記載の固形経口剤形。
【請求項1】
コアおよび外側被覆を有する錠剤形態の経口投与のための固形単位剤形であって、
・前記錠剤のコアが、治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を含み、かつ
・外側被覆が、風味遮蔽特性および/または制御放出機能を有するフィルムコートの形態である、固形単位剤形。
【請求項2】
前記コア錠剤が、多粒子系、とりわけミニ錠剤の一部である、請求項1に記載の固形単位剤形。
【請求項3】
前記ミニ錠剤が、1mmから4mmの間、とりわけ1.5mmから3mmの間、とりわけ1.5mmから2.5mmの間の大きさを有する、請求項2に記載の固形単位剤形。
【請求項4】
前記ミニ錠剤が、2mmの大きさを有する請求項2に記載の固形単位剤形。
【請求項5】
前記ミニ錠剤が、約2mg/錠から約4mg/錠の間のアリスキレンを含む、請求項2に記載の固形単位剤形。
【請求項6】
前記ミニ錠剤が、3.125mg/錠のアリスキレンを含む、請求項2に記載の固形単位剤形。
【請求項7】
前記フィルムコートが、pH依存性放出プロファイルを有する、請求項1から6までのいずれかに記載の固形単位剤形。
【請求項8】
前記フィルムコートが、約2から4.5の間のpHで5分後に約30%以下、10分後に約80%以下、かつ15分後に約95%以下の;ならびに約6から7の間のpH、とりわけ6.8のpHで15分後に約10%以下、30分後に約70%以下、60分後に約95%以下のアリスキレンのin vitro溶出をもたらす(バリアントA)、請求項7に記載の固形単位剤形。
【請求項9】
前記フィルムコートが、フィルム形成剤として塩基性ブチル化メタクリレートコポリマーを含む、請求項8に記載の固形単位剤形。
【請求項10】
前記フィルムコートが、フィルム形成剤として、エチルセルロース水性分散液、および任意選択でヒプロメロースを含む、請求項1に記載の固形単位剤形。
【請求項11】
前記フィルムコートが、フィルム形成剤としてアンモニウムメタクリレートコポリマー、とりわけアンモニウムメタクリレートコポリマーA型および/またはアンモニウムメタクリレートコポリマーB型を含む、請求項1に記載の固形単位剤形。
【請求項12】
小児集団における疾患または状態の治療で使用するための、治療有効量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を含む経口投与用固形単位剤形。
【請求項13】
高血圧症、鬱血性心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎障害、糖尿病性心筋症、腎機能不全、末梢血管疾患、左心室肥大、認知機能障害、脳卒中、頭痛、および慢性心不全の治療で使用するための、請求項9に記載の固形経口剤形。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−516299(P2012−516299A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546822(P2011−546822)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050886
【国際公開番号】WO2010/086312
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050886
【国際公開番号】WO2010/086312
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
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