説明

有機化合物の使用

本発明は、心血管性の罹病および/または死亡を軽減するための方法であって、ACEインヒビターとCCB、特にベナゼプリルとベシル酸アムロジピンを含む組合せを投与することを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
世界中で6億人が罹患している本態性高血圧は、世界で最も多い血管疾患である。Martin, Clin Exp Hypertens, Vol. 21, Nos. 5-6, pp. 659-669 (1999)参照。高血圧症は冠動脈性心疾患(CHD)、卒中、心不全および慢性腎疾患の主要なリスク因子である。アテローム性動脈硬化性心血管事象の35%が高血圧症に起因し得るものと推測される。Kannel, JAMA, Vol. 275, No. 20, pp. 1571-1576 (1996)参照。高血圧症の有病率、罹患率および合併症は加齢とともに増え、集団が高齢化するにつれ、高血圧症の影響はおそらく高まるであろう。
【0002】
血圧は卒中や心血管疾患のリスクに直接的かつ継続的に関連する。Collins and MacMahon, Br Med Bull, Vol. 50, No. 2, pp. 272-298 (1994)参照。血圧が上昇するほど、心血管疾患が発生しやすくなる。疫学的研究からは、拡張期血圧(DBP)よりも収縮期血圧(SBP)の方が重要なリスク因子であることが確認されている。Stamler, Stamler and Neaton, Arch Intern Med, Vol. 153, No. 5, pp. 598-615 (1993)参照。
【0003】
多くの高血圧患者では、血圧が適切に制御できない。Berlowitz et al., N Engl J Med, Vol. 339, No. 27, pp. 1957-1963 (1998);およびMarques-Vidal and Tuomilehto, J Hum Hypertens, Vol. 11, No. 4, pp. 213-220 (1997)参照。全米健康栄養調査(The National Health and Nutrition Exemination Survey, NHANES 3)では、処置を受けた全高血圧アメリカ人のうち、血圧を140/90mmHgまでに制御できたのは半数だけであったと報告している。Burt et al., Hypertension, Vol. 25, No. 3, pp. 305-313 (1995)参照。血圧が十分制御できないことには、患者のコンプライアンスが不十分なこと、医師が薬剤のタイトレーション(titration)を行おうとしないこと、有害事象の懸念、そして単剤療法では成功が少ないことなどの多くの理由がある。Berlowitz et al. (1998), 前掲;およびMaterson et al., N Engl J Med, Vol. 328, No. 13, pp. 914-921 (1993)参照。最近の研究では、目標とする血圧に到達するには、ほとんどの患者に抗高血圧薬の組合せ投与が必要であることが示されている。Hansson et al., for the HOT Study Group, Lancet, Vol. 351, No. 9118, pp. 1755-1762 (1998); UK Prospective Diabetes Study Group: UKPDS 38, BMJ, Vol. 317, No. 7160, pp. 703-713 (1998);およびALLHAT Officers and Coordinators for the ALLHAT Collaborative Research Group. The Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trual, JAMA, Vol. 288, No. 23, pp. 2981-2997 (2002)参照。
【0004】
Lotrel(登録商標)(アムロジピン(amlodipine)と塩酸ベナゼプリル(benazepril))は、ACEインヒビターであるベナゼプリルとジヒドロピリジンカルシウムチャネル拮抗薬であるアムロジピンの組合せ剤である。このLotrel(登録商標)の成分は血圧降下に対して作用を有する相補的作用機序を持ち、その組合せはアムロジピン単独よりも、生じる副作用が少なく、特に浮腫が少ない。Lotrel(登録商標)の添付文書、Physician's Desk Reference, 57th edition (2003)参照。
【0005】
ベナゼプリル、ベナゼプリラト(benazeprilat)およびそれらの医薬上許容される塩は、その医薬上許容される投与形、用量範囲およびその好適な投与経路、およびその使用とともに米国特許第4,410,520号(520号特許)に開示されており、これらは全て出典明示により本明細書の一部とする。アムロジピンおよびその医薬上許容される塩は米国特許第4,572,909号(909号特許)に示されており、これは出典明示により本明細書の一部とする。そこにはアムロジピンおよびその塩の医薬上許容される投与形、用量範囲、好適な投与経路も示されている。米国特許第4,879,303号(303号特許)はアムロジピンのベシル酸塩を対象としたものであり、これも出典明示により本明細書の一部とする。そこにはベシル酸アムロジピンのより具体的な用量、投与経路、製剤および使用も見出すことができる。アムロジピンの優れた総説として、Burges et al., Cardiovas Drug Dev, Vol. 8, No. 1, pp. 25-44 (1990)がある。また、利尿薬も、併用療法に頻用される薬物種である。
【0006】
高血圧患者、特にハイリスク高血圧患者は心血管性の罹病および/または死亡に極めて至りやすい。従って、高血圧患者における心血管性の罹病および/または死亡を軽減する効果的な組成物および方法の必要がある。
【0007】
発明の目的
本発明の1つの目的は、高血圧症患者において心血管性の罹病および死亡を軽減するための組成物および方法を提供することであって、その組成物がアンギオテンシン変換酵素インヒビター(ACEI)とカルシウムチャネル遮断薬(CCB)とを含む。好ましい実施態様では、これらの高血圧患者はハイリスク高血圧患者である。好ましくは、ACEIはベナゼプリル、ベナゼプリラトおよびその医薬上許容される塩であり、CCBはアムロジピンおよびその医薬上許容される塩、特にベシル酸塩である。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、高血圧症患者において心血管性の罹病および死亡を軽減するための組成物および方法であって、その組成物がACEI、CCBおよび利尿薬を含む、組成物および方法を提供することである。好ましい実施態様では、これらの高血圧患者はハイリスク高血圧患者である。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、高血圧を有する哺乳類において心血管性の罹病および死亡を軽減するための方法であって、該哺乳類に
(a)アムロジピンおよびその医薬上許容される塩から選択される化合物;および
(b)ベナゼプリル、ベナゼプリラトおよびその医薬上許容される塩から選択されるACEインヒビター
を同時投与することを含む方法を提供することである。
【0010】
本発明のもう1つの目的は、該哺乳類がヒトである、上記に定義したような方法を提供することである。
【0011】
本発明のもう1つの目的は、利尿薬を同時投与することをさらに含む、上記に定義したような方法を提供することである。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、該高血圧患者がハイリスク高血圧患者である、上記に定義したような方法を提供することである。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、該化合物がアムロジピンのベシル酸塩である、上記に定義したような方法を提供することである。
【0014】
本発明のもう1つの目的は、該利尿薬がメチクロチアジド(methyclothiazide)、ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)、トルセミド(torsemide)、メトラゾン(metolazone)、フロセミド(furosemide)、クロルトサルドン(chlorthsalldone)、N−(5−スルファモイル−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)アセトアミド、トリアムテレン(triamterene)、クロロチアジド(chlorothiazide)、インダパミド(indapamide)、ブメタニド(bumetanide)、アミロライド(amiloride)、スピロノラクトンベンドロフルモチアジド(spironolactone bendroflumothiazide)、ベンズチアジド(benzthiazide)、シクロチアジド(cyclothiazide)、キネタゾン(quinethazone)、ヒドロフルメチアジド(hydroflumethiazide)、ポリチアジド(polythiazide)、トリクロルマチアジド(trichlormathiazide)およびエタクリン酸(ethacrynic acid)からなる群から選択される、上記に定義したような方法を提供することである。
【0015】
本発明のもう1つの目的は、ジゴキシンを同時投与することをさらに含む、上記に定義したような方法を提供することである。
【0016】
本発明のもう1つの目的は、同時投与が16週間より長い期間行われる、上記に定義したような方法を提供することである。
【0017】
本発明のもう1つの目的は、同時投与が6ヶ月間より長い期間行われる、上記に定義したような方法を提供することである。
【0018】
本発明のもう1つの目的は、高血圧を有する哺乳類における心血管性の罹病および/または死亡の予防、減少のための薬剤の製造を目的とした
(a)アムロジピンおよびその医薬上許容される塩から選択される化合物;および
(b)ベナゼプリル、ベナゼプリラトおよびその医薬上許容される塩から選択されるACEインヒビター
の使用である。
【0019】
本発明のもう1つの目的は、該哺乳類がヒトである、上記に定義したような使用である。
【0020】
本発明のもう1つの目的は、利尿薬を同時投与することをさらに含む、上記に定義したような使用である。
【0021】
本発明のもう1つの目的は、該高血圧患者がハイリスク高血圧患者である、上記に定義したような使用である。
【0022】
本発明のもう1つの目的は、該化合物がアムロジピンのベシル酸塩である、上記に定義したような使用である。
【0023】
本発明のもう1つの目的は、該利尿薬がメチクロチアジド、ヒドロクロロチアジド、トルセミド、メトラゾン、フロセミド、クロルトサルドン、N−(5−スルファモイル−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)アセトアミド、トリアムテレン、クロロチアジド、インダパミド、ブメタニド、アミロライド、スピロノラクトンベンドロフルモチアジド、ベンズチアジド、シクロチアジド、キネタゾン、ヒドロフルメチアジド、ポリチアジド、トリクロルマチアジドおよびエタクリン酸からなる群から選択される、上記に定義したような使用である。
【0024】
本発明のもう1つの目的は、ジゴキシンを同時投与することをさらに含む、上記に定義したような使用である。
【0025】
本発明のもう1つの目的は、同時投与が16週間より長い期間行われる、上記に定義したような使用である。
【0026】
本発明のもう1つの目的は、同時投与が6ヶ月間より長い期間行われる、上記に定義したような使用である。
【0027】
発明の概要
驚くことに、本発明のこれら、および、その他の目的は本発明の組成物および方法によって達成される。一態様において本発明は、高血圧を有する哺乳類において罹病および/または死亡を軽減する方法であって、該哺乳類に
(a)ベナゼプリル、ベナゼプリラトおよびその医薬上許容される塩から選択されるACEIと
(b)アムロジピンおよびその医薬上許容される塩から選択されるCCB
との同時療法を施すことを含む方法に関する。
【0028】
好ましい実施形態では、該高血圧患者はハイリスク高血圧患者であり、アムロジピンはアムロジピンのベシル酸塩である。
【0029】
所望により、他の成分を本発明の組成物または方法の一部として含んでもよい。含まれる場合、このような成分としては一般に利尿薬が挙げられる。
【0030】
発明の詳細な説明
より具体的には、一態様において本発明は、高血圧を有する哺乳類、特にヒトにおいて心血管性の罹病および死亡を軽減するための方法であって、
(a)ベナゼプリル、ベナゼプリラトおよびその医薬上許容される塩からなる群から選択されるACEI;および
(b)アムロジピンおよびその医薬上許容される塩からなる群から選択されるCCB
を投与することを含む方法に関する。
【0031】
好ましい実施形態では、該高血圧患者はハイリスク高血圧患者であり、ベシル酸アムロジピンはCCBである。
【0032】
所望により、他の成分を本発明の組成物または方法の一部として含んでもよい。含まれる場合、このような成分としては一般に利尿薬が挙げられる。
【0033】
ベナゼプリルおよびベナゼプリラトの好適な塩は、上述の520号特許に見出すことができる。本発明の目的では、ACEIの塩酸塩が最も有利であり、最も好ましい特定のACEI化合物は塩酸ベナゼプリルである。
【0034】
本発明のCCBは、上記で引用した909号特許に示されているアムロジピンまたはその塩に限定され、最も好適な塩はベシル酸塩である(303号特許の対象物)。
【0035】
所望により、利尿薬を治療計画の一部として含んでもよく、この利尿薬も同様に当技術分野で従来公知のものから広く選択できる。有用な利尿薬としては、メチクロチアジド、ヒドロクロロチアジド、トルセミド、メトラゾン、フロセミド、クロルトサルドン、N−(5−スルファモイル−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)アセトアミド、トリアムテレン、クロロチアジド、インダパミド、ブメタニド、アミロライド、スピロノラクトン、ベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、シクロチアジド、キネタゾン、ヒドロフルメチアジド、ポリチアジド、トリクロルマチアジドおよびエタクリン酸が挙げられる。
【0036】
ACEIとCCB、および所望による利尿薬は異なる時点で投与することもできるが、同時に投与するのが最も好ましい。これは単一の所定の組合せ投与形によるのが最も便宜である。しかしながら、ACEIはCCBの投与とは別の時点で投与することもでき、本発明の利益はやはり実現する。別の時点で投与する場合には、ACEIとCCBは互いに約16時間以内、好ましくは約12時間以内、より好ましくは約8時間以内、最も好ましくは約4時間以内に与えるべきである。当然のことながら、これらの時間は、その投与形が薬剤を長期間「投与する」ものであれば、延長可能である。
【0037】
ACEIとCCB、および所望による利尿薬を実質的に同時に与える場合、それらは単一の所定の組合せ投与形によって与えてもよいし、または異なる投与形によって与えてよく、いずれでも便宜である。異なる投与形で与える場合、各薬剤で投与経路が同じであるか異なるかは問わない。個々の薬剤に対して知られているいずれの投与経路であっても、本発明の実施に許容される。最も好ましくは、これらの薬剤は所定の組合せで投与するか、または少なくとも実質的に同時に、すなわち、互いに約1時間以内に投与する。また、経口投与が臨床上好適な経路である場合には、最も好適な投与形は経口投与形である。
【0038】
この2種の薬剤の用量には、それらの薬剤を個々に用いるあらゆる用量が含まれる。一般に、ACEIの用量は約2mg〜約80mg、好ましくは約3mg〜約40mg、より好ましくは約5mg〜約20mg(塩酸ベナゼプリルに基づく)である。一般にCCBの用量は約1mg〜約20mg、より好ましくは約2mg〜約10mg、より好ましくは約2.5mg〜約5mg(アムロジピン遊離塩基に基づく)である。アムロジピンの他の塩、遊離ベナゼプリルおよびベナゼプリルの他の塩、ならびにベナゼプリラトおよびその塩に関する対応する用量は当業者ならば容易に明らかになろう。本明細書に示されている各用量において、その範囲は、およそ50kg〜約70kgの成体哺乳類に対して許容される範囲である。他の大きさのおよび発達段階の哺乳類について改変された投与範囲も当業者には明らかである。本発明の実施において、ACEIとCCBの重量比(塩酸ベナゼプリル:アムロジピン遊離塩基に基づく)は、約0.5:1〜約10:1、より好ましくは1:1〜8:1である。上記で示したもの以外の塩を用いる場合の厳密な重量比は、単に、対応する有効薬剤量の重量が異なるために違ってくる。当業者ならば、適宜計算を行うことができよう。塩酸ベナゼプリル:アムロジピン遊離塩基の特に有利な比率は、1:1、2:1、4:1および8:1である。
【0039】
ベナゼプリルおよびアムロジピンは物理的に不和合成の物質である。従って、単一投与形に配合しても、物理的に分離してしまう。これは、二層錠剤、一方の薬剤をコーティングしたペレットを他方の錠剤へ組み込んだもの、各薬剤を個々にコーティングしたペレットをカプセルまたは錠剤としたもの、一方の薬剤をコーティングしたペレットを他方の薬剤の粉末とともにカプセル化したもの、各薬剤を個々にマイクロカプセル化した後に使用のために混合して錠剤またはカプセル化したもの、二区画または複数区画経皮デバイスの使用などといった、当技術分野で公知の無数の方法のいずれで達成してもよい。配合禁忌のため、注射液中でのこれら2種の薬剤の組合せ製剤は全く許容されない。便宜上、ベナゼプリルのコーティング圧縮錠剤をアムロジピン粉末とともにカプセル化したものが最も望ましい経口形態であることが分かっている。
【0040】
利尿薬を加える場合は、下表のように用いればよい。
【表1】

【0041】
本発明の目的では、好ましい哺乳類はウサギ、イヌ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウシおよび霊長類、より好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトである。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は本発明を例示するために示すものであり、これに限定されない。
【0043】
実施例1 臨床試験
1.原理
ACCOMPLISH(Avoiding Cardiovascular Events through COMbination Therapy in Patients LIving with Systolic Hypertension)治験は、併用抗高血圧薬療法による最初の療法の、第一の主要な結果の治験である。積極的な血圧制御の重要性を認識すれば、併用療法を頻用することになろう。1つの画期的な可能性として、特定の薬物の組合せが、それらの血圧降下作用に加え、かつ、血圧降下作用とは独立に標的器官を保護し得るということがある。ACEインヒビター/利尿薬の組合せはますます使用が増え、高血圧の処置の常法となるものと思われる。ACCOMPLISH試験では、ACEインヒビターベナゼプリルとCCBアムロジピンの組合せであるLotrel(登録商標)は、ACEインヒビター(ベナゼプリル)組合せ利尿薬(Lotensin HCT(登録商標)の成分)に比べ、ハイリスク高血圧集団における心血管事象の罹病および死亡を軽減する上での付加的利益をもたらすかどうかを評価する。
【0044】
2.試験目的
主目的
本治験の主目的は、ハイリスク高血圧症患者においてベナゼプリルとヒドロクロロチアジドの組合せに比べ、Lotrel(登録商標)を用いた場合の複合的な心血管性の罹病および死亡が最初に発生するまでの時間を評価することである(第3.5.2節参照)。
【0045】
第二の目的
本治験の第二の目的は、Lotrel(登録商標)と、ベナゼプリルおよびヒドロクロロチアジドの組合せとで、複合的な心血管性の罹病、糖尿病の新たな発症、腎疾患の進行およびうっ血性心不全のための入院を比較することである。
【0046】
他の重要なパラメーター
本治験の他の重要なパラメーターとしては、Lotrel(登録商標)と、ベナゼプリルおよびヒドロクロロチアジドの組合せとで、あらゆる原因の死亡、あらゆる入院、腎機能(糸球体濾過速度の推定変化)、LVH、末梢動脈血管再生術または非外傷性切断、および微量アルブミン尿症(30〜300mg/g)または臨床アルブミン尿症(>300mg/g)の進行/回復を比較することである。
【0047】
これら2つの処置群の長期安全性と許容性も評価される。
【0048】
3.研究計画
3.1.全試験計画
ハイリスク高血圧患者患者において心血管症結果を軽減する上でのLotrel(登録商標)の効力を、ベナゼプリルとHCTZの組合せの場合と比較する無作為化、多施設、二重盲、並行群間、実薬対照試験である。ハイリスク患者は、年齢60歳以上、SBP160mmHg以上または抗高血圧薬療法中の者、心血管疾患または標的器官の損傷の証拠ある者と定義される(第3.3.2.1節の表1参照)。無作為化した後、全ての患者を用量レベル1(図3.1参照)で4週間処置し、次に、4週間、用量レベル2へと強制タイトレーションを行う。その後、目標血圧<140/<90mmHgを達成する必要があれば、患者にタイトレーションを行う。糖尿病または慢性腎疾患を有する患者については、治験責任医師は目標血圧130/80mmHgを用いることが奨励される。用量レベル3へと患者にタイトレーションを行い、目標血圧に基づき、その後抗高血圧薬を任意に追加する可能性がある。
【0049】
図3.1の治験計画の概要を参照。
図3.1 治験計画
【表2】

治験薬物種(ACEインヒビター、CCB、チアジドまたはチアジド様利尿薬)およびレニンアンギオテンシンアルドステロン(RAAS)系の特定のインヒビター(すなわち、ARB類、アルドステロン受容体遮断薬)からの投薬は追加療法として認可されない。
【0050】
無作為化した後、全ての患者を用量レベル1で4週間処置し、次に、4週間、用量レベル2へと強制漸増を行う。症候性低血圧を有するか、または収縮期血圧が100mmHg未満である患者には強制タイトレーションを行ってはならない。このプロトコールの最初のタイトレーション期では、3〜5回目の来院は毎月±7日で計画する。
【0051】
場合によっては、過去の抗高血圧薬療法で血圧が十分制御された患者が、治験薬剤の開始時に急速な血圧上昇を示すことがある。あるいは、過去に処置を受けていない患者が極めて高い血圧を示すこともある。このような場合、治験責任医師の判断で、次の来院予定前に用量漸増を行う。治験薬剤の用量漸増の指針は、平均座位DBPが110mmHg以上、平均座位SBPが180mmHg以上、または高血圧の症状である。用量漸増ステップを行わなくてよい場合はないであろう。これに対し、患者が高用量レベルで症候性臨床的低血圧を経験する場合は、それまでの低用量レベルでの処置に戻すことができる。
【0052】
患者数
研究の登録基準および除外基準を満たす総計およそ12,600人の患者(1処置群当たり6300人)を、対話型音声応答システム(interactive voice response system, IVRS)を用い、本研究に対して無作為化する。期待される登録者率は1施設当たり、無作為な患者少なくとも18〜20人である。
【0053】
これは事象駆動型治験である。原発性心血管事象を有する無作為化した患者の必要数(1642人)に達するまで、患者を処置する。この治験は、登録のための18ヶ月を含め、全部でおよそ5年かかると予想される。
【0054】
3.2.計画に関する考察
ACCOMPLISHは、Lotrel(登録商標)(アムロジピン/ベナゼプリル)がベナゼプリル/HCTZの組合せよりも高い程度まで心血管性の罹病および死亡を軽減する仮説を検証するために計画されている。この治験は記録されているCAD、冠動脈性の等価物(例えば、糖尿病)または心血管事象に対してハイリスクな他のもののいずれかを有するハイリスク高血圧患者を評価するものである。ACEインヒビター(またはARB)は今や、糖尿病、腎不全および/またはタンパク尿症を有する高血圧患者において第一選択薬となっている。従って、両処置群におけるACEインヒビターであるベナゼプリルの使用は、本治験においてこれらの重要なハイリスク患者のサブグループを含めることを考慮に入れている。
【0055】
血圧の積極的な処置および制御は、血圧降下の閾値を明らかに引き下げることなく心血管リスクを引き下げることが示されている。本治験においては、治験責任医師は患者の目標血圧(<140/<90mmHg)を達成することを試みることが重要であり、適当な患者においてはより低い目標血圧(すなわち、糖尿病または慢性腎疾患患者においては、<130/80mmHg)を用いることが奨励される。
【0056】
本治験では、目標血圧を達成するため、2段階の用量タイトレーションと、その後さらなる追加療法を提供する。3用量レベルのLotrel(登録商標)(アムロジピン5mg/ベナゼプリル20mg、アムロジピン5mg/ベナゼプリル40mg、アムロジピン10mg/ベナゼプリル40mg)と3用量レベルの対照(ベナゼプリル20mg/HCTZ12.5mg、ベナゼプリル40mg/HCTZ12.5mg、ベナゼプリル40mg/HCTZ25mg)がある。両群において同等でかつ高レベルのACE阻害を提供するために、患者をLotrel(登録商標)5/20mgまたはベナゼプリル20mg/HCTZ12.5mgに対して無作為化し、Lotrel(登録商標)5/40mgまたはベナゼプリル40mg/HCTZ12.5mgへと強制タイトレーションする。この強制タイトレーションの後、さらなる用量タイトレーションは達成する目標血圧(<140/<90mmHg)に基づく。目標血圧に到達しない患者には、Lotrel(登録商標)10/40mgまたはベナゼプリル40mg/HCTZ25mgへとタイトレーションを行い、さらにその後、目標血圧を達成するために必要であれば、他の許容される追加抗高血圧薬を用いる。治験薬物種ACEインヒビター、CCB類、チアジドまたはチアジド様利尿薬およびレニンアンギオテンシンアルドステロン(RAAS)系の特定のインヒビター(すなわち、ARB類、アルドステロン受容体遮断薬)からの薬剤は追加療法として認可されない。罹病および死亡に対する種々の単剤療法の効果を評価するこれまでの大規模臨床試験の結果は、血圧制御を達成するために必要であった追加療法の頻用により混乱していた。ACCOMPLISHにおける大集団の患者は、さらなる追加療法の必要のない、無作為化された併用療法で管理されると考えられる。これにより、この点に関する治験結果の解釈はより直接的なものとなるはずである。
【0057】
ACCOMPLISHにおいて登録されるハイリスク高血圧群について、年間の最初の事象の発生率は対照群(ベナゼプリル/HCTZ)では3.5%であると推定される。Lotrel(登録商標)処置群に関して事象発生率の15%減を検出率90%で検出するよう、サンプルサイズを計算する。これらの仮説を満たすためには、両処置群を合わせ、最終分析で総計1642件の事象が必要となる。この点で、患者が治験を続けるよう努力することが重要である。患者が治験の処置を永続的に続けないとしても、その患者もやはり治験期間中は追跡調査しなければならない。
【0058】
各処置群の血圧制御を評価するために、効力の変数ではないが、来院する度に外来トラフ血圧(office trough blood pressure)を測定する。24時間の血圧制御をさらに特徴づけるためには、治験中、2年目の患者の一部に携帯式血圧測定法(ambulatory blood pressure monitoring, ABPM)を行う。
【0059】
3.3.試験集団
3.3.1.患者集団
患者集団は、下記第3.3.2.1節の表1で定義するように、年齢60歳以上、収縮期高血圧症160mmHg以下または抗高血圧薬療法中、および心血管疾患もしくは標的器官の損傷の証拠がある、およそ12,600人の患者からなる。
【0060】
3.3.2.登録基準と除外基準
3.3.2.1登録基準
1.男性または女性(人種背景は問わない)
2.60歳以上
3.高血圧は過去に処置歴があるかないかは問わない
【0061】
定義:
処置歴がない患者:無作為化前のスクリーニング期間において、平均座位SBP値が、連続2回の測定(異なる2日で測定)で160mmHgを超え、かつ平均座位DBP値が115mmHgを超えないこと。
すでに抗高血圧薬処置を受けている患者:平均座位SBPまたはDBPの下限はなし。しかし、平均座位SBPの上限が210mmHgを超えないか、または平均座位DBPが115mmHgを超えないこと。
【0062】
【表3】

【0063】
4.以下に定義されるような来院1回目時点での少なくとも1つの心血管疾患または標的器官の損傷の証拠(表1)
表1 心血管疾患/標的器官の損傷
【表4】

【0064】
3.3.2.2除外基準
1.現在狭心症(すなわち、来院1回目の前3ヶ月以内に狭心症事象がないこと)
2.任意の病因の既知二次的高血圧(例えば、未矯正の腎動脈狭窄)
3.交感神経遮断薬、利尿薬および血管拡張薬の三剤投与計画に不応であり、SBPが180mmHgを超え、かつ/またはDBPが110mmHgを超えるとして定義される難治性高血圧症
4.症候性心不全(NYHAクラスII〜IV)の病歴、または既知駆出率用が40%未満
5.来院1回目の前1ヶ月以内に心筋梗塞、冠動脈血管再生(CABGまたはPCI)、不安定狭心症
6.来院1回目の前3ヶ月以内に卒中または一過性虚血事象(TIA)
7.現在アルコールを乱用しているか、または最近アルコール乱用歴があるか、またはその他の薬物乱用(過去12ヶ月)
8.精神的または法的無資格
9.現在または過去30日以内に別の薬物治験に参加した者
10.本治験の過程で手術に至ると予測される重大な閉塞性弁膜症性心血管疾患または弁膜症性
11.ASTまたはALT値の一方が正常値の上限の2倍以上であることにより定義される肝疾患の証拠
12.血清クレアチニンが2.5mg/dL(221μmol/L)以上として定義される腎機能障害
13.カリウムサプリメントのない状態で、血清カリウムの基準値が5.2meq/L未満
14.薬物吸収を妨げる可能性のある胃腸管疾患
15.本治験で投与される薬物のいずれか(アムロジピン、ベナゼプリル、ヒドロクロロチアジド)に対する既知アレルギー
16.少なくとも5年以内の白血病およびリンパ腫を含む(基底細胞皮膚癌は含まない)悪性疾患の病歴
17.全身性エリテマトーデスのような臨床上重大な自己免疫疾患の病歴
18.治験の終了前に死に至る可能性のある重大な非心血管性の疾患または症状、例えば、主要臓器の移植(平均余命5年未満)
19.インフォームドコンセントに署名できない者または署名する意志のない者
【0065】
3.3.3.治験または解析の中断または患者の除外
患者が治験を続け、治験期間中、治験薬を受けるようにあらゆる努力をなさなければならない。無作為化した各患者は、治験の終了まで、治験薬が一時的に中断された場合であれ、あるいは永続的に中止された場合であれ、追跡調査しなければならない。
【0066】
3.3.3.1.治験投薬の一時的中断
治験薬の一時的中断が必要になる場合がある。この場合も、IVRSをコールし、患者の中断をその旨報告しなければならない。一時的中断が発生した場合には、できる限り速やかに治験薬を再開しなければならない。治験薬が再開されるよう、あらゆる努力をなさなければならない。治験薬の再開には期限を設けず、何日後、何週間後、何ヶ月後または何年後にでも行ってよい。再開を試みる回数も制限しない。
【0067】
いずれの場合でも、妊娠については、妊娠中および授乳中、治験薬は中断しなければならない。
【0068】
治験薬を再開した場合には、必ずしも再び最低用量レベルで始めなくてもよい。治験薬の再開は治験責任医師の判断で、以前に投与した用量レベルで始めてもよい。
【0069】
どんな場合でも、患者に治験薬を再開しないであろうと治験責任医師が判断した場合は、現地のノバルティスモニターが、この判断の根拠を明らかにするために接触をもたなければならない。
【0070】
3.3.3.2.治験薬の永続的な中止
病的なエンドポイントを持つ患者を含め、無作為化した全ての患者は、死に至るか、または治験の終了時まで治験薬を続けなければならないが、中断した処置を再開するように慎重な働きかけを繰り返した後に、次のような状況がある場合は除外される。
・永続的な中止が自分にとって最大の利益であると患者が判断した全てのとき
・治験責任医師が、永続的な中止が望ましいか、または患者の最大の利益であるとみなす全てのとき
・許容されない有害事象
・背景療法を調整したにもかかわらず、治験薬に関係すると疑われる臨床上有意な検査所見異常の存在
【0071】
患者が治験薬を永続的に中断するものと治験責任医師が判断した場合には、現地のノバルティスモニターが、この判断の根拠を明らかにするために接触をもたなければならない。適当な代替療法を設けなければならない。
【0072】
【表5】

【0073】
3.3.3.3.治験からの患者の除外
永続的に治験投薬を中止した患者を含め、患者が治験を続け、来院スケジュールを必要とするプロトコールに同意するよう、あらゆる努力をなさなければならない(上記の通り)。患者が病院に再来しようとしない場合には、あらゆる連絡方法(電話、電子メール、葉書、署名の必要な書留、ファックスなど)を用いて臨床事象の評価のために患者を追跡調査しなければならない。
【0074】
患者がなぜ来院の必要なプロトコールに戻ることができないのか、またはなぜ治験を中止するのか判定するため継続的努力をなさなければならない。この情報は電子症例記録書式(electronic case report form, eCRF)の来院特記事項に記録しなければならない。
【0075】
次の理由のうち1つで、患者が治験を中止する場合、治験完了eCRFを完成させなければならない。
・「死亡」
・「同意中断」
・「追跡調査不能」、すなわち、あらゆる接触手段を尽くしても1年以上病院に連絡がなかった場合
【0076】
治験を中断する患者には、患者の一次エンドポイントおよび二次エンドポイントならびに生活状態に関する情報を収集するよう、あらゆる努力をなさなければならない。データ収集は、患者の情報源、主要な事象、すなわち、一次エンドポイントまたは二次エンドポイント、ならびに生活状態に限定されるであろう。可能であれば、報告されている全てのエンドポイントに関して入手可能なデータを全て集め、エンドポイント委員会による審判のために送る。
【0077】
3.3.3.4.分析からの患者の除外
全無作為化患者の(治療の意図による(intention-to-treat))分析から患者を除外する、想定された理由はない。
【0078】
3.4.処置
3.4.1.治験療法と参照療法
ノバルティスは治験責任医師に次の治験薬剤、Lotrel(登録商標)5/20、5/40および10/40mgおよびベナゼプリル20mg/HCTZ12.5mg、ベナゼプリル40mg/HCTZ12.5mgおよびベナゼプリル40mg/HCTZ25mg(これらは試験過程で十分なものと思われる)を提供する。これらの薬剤は外見上同じカプセルとして、CIB002のラベルを付けた瓶で提供する。
【0079】
これらの薬剤ラベルは多言語で書かれ、その地域の法的要件に従ったものである。これらのラベルには薬剤番号は記載されているが、患者についての情報は提供されていない。これらの薬剤ラベルには、治験薬の適切な保存条件も記載されている。
【0080】
無作為化二重盲検試験薬は固有の薬剤番号によって示される二部構成のラベルを貼った容器で提供する。
【0081】
任意追加の他の抗高血圧薬は、全3段階の二重盲検用量レベルでの処置の後に目標血圧140/90mmHgが達成されなかった場合に、その施設から独自に渡される。許容される追加薬剤としては、β遮断薬、α遮断薬、クロニジン(または他の中枢作用性の抗高血圧薬)およびループ利尿薬が挙げられる。
【0082】
二重盲検処置段階の間、患者は、次に来院する朝を除き、朝、水で1カプセルを服用するよう指示される。来院日は、来院評価が終わった後に試験薬剤を服用する。患者は、次の来院時に薬剤が渡される前に、前の来院時にもらった薬剤を返却しなければならない。
【0083】
3.4.2.処置の割り付け
来院1の時点で、登録/除外基準を満たす患者に固有の患者番号を割り付ける。この患者番号は各治験施設において1から始まり、連番を割り付ける。患者番号は一度割り付ければ、再利用しない。
【0084】
薬剤の符番
無作為化の際(来院2回目)、2つの処理群のうち1つに割り付けた、薬剤番号によって識別される薬剤の受け取りに関して患者を無作為化する。薬剤番号はIVRSによって患者に割り付け、患者に実際に渡された薬剤に記されている。IVRSはまた無作為化番号を割り付け、この番号は患者と割り付けられた処置群とを関連づけてデータベースに用いるものである。この無作為化番号は薬剤ラベルに設けられている空欄に記載しなければならない。
【0085】
3.4.3.盲検化
無作為化は、無作為化番号への処置群の無作為な割り付けを自動で行うバリデートシステムを用いてIVRS販売者によって行われる。無作為化のスキームはノバルティス・バイオスタティスティクス・クォリティー・アシュアランス・グループ(Novartis biostatistics quality assurance group)によって概説されており、承認後には同グループによってロックされる。
【0086】
無作為化データは非盲検化のときまで極秘にされ、権限を有する者のみが利用できる。本治験の間、IVRSはあらゆる緊急の暗号解読の発生をノバルティス臨床試験リーダー(CTL)と施設のモニターへ速やかに報告する。治験が終了した時にはじめて、データファイルを確認し、プロトコール違反を判定し、薬物コードを解読し、データ解析のために利用可能となる。緊急の場合の個々の患者の非盲検化に関する緊急措置の詳細については、第10.1.3節の非盲検化のための緊急措置を参照。
【0087】
3.4.4.付随療法
第3.4.4.1節(許容されない付随投薬)に記載されていなければ、本試験中、付随投薬を継続してもよい。患者は服用した追加投薬(OTC薬および生薬製剤を含む)について治験責任医師に知らせなければならない。この情報はeCRFではなく、その施設で患者の医療記録として文書化しなければならない。第3.4.4.1節および第3.4.4.2節に挙げた薬剤のみがeCRFで記録される。
【0088】
許容されない付随処置
無作為化の際には、高血圧症の処置のためにそれまで用いられていた全ての薬剤を中止しなければならない。これらの薬剤のいずれかによる高血圧の処置が必須であると考えられる場合には、その患者は登録してはならない。
【0089】
治験投薬が永続的に中止されないならば、いかなる理由があっても、全治験中、次の付随抗高血圧薬処置は施してはならない。
・治験薬剤以外のACEインヒビター
・治験薬剤以外のCCB
・治験薬剤以外のチアジドまたはチアジド様利尿薬(例えば、クロルタリドン、インダパミド)
・ARB類
・アルドステロン受容体遮断薬
患者はたとえ除外薬剤を服用したとしても治験を続けることができる。
【0090】
許容される付随処置
本治験の3回目の用量漸増段階を終了した後、高血圧を処置するために次の薬剤を投与してもよい。
・β遮断薬
・α遮断薬
・ループ利尿薬
・クロニジンまたは他の中枢作用性抗高血圧薬
利尿薬が容量的に必要でなければ、本発明者らはβ遮断薬(アテノロールなど)の第一追加処置を推奨する。
【0091】
無作為化の前後で、非高血圧の指示のための次の薬物の継続的使用は許容される。
・例えば前立腺肥大のためのα遮断薬
・例えば不整脈、心筋梗塞の二次予防、緑内障のためのΒ遮断薬
・例えば片頭痛または禁煙のための中枢作用性薬剤
【0092】
患者が高用量レベルの盲検化治験薬剤で耐え難い副作用、例えば、耐え難い浮腫を発症し、盲検化治験薬剤との可能性のある関係以外の原因が除外されたならば、盲検化治験薬剤の用量は以前のより低い用量レベルまで引き下げてもよい。次に、血圧を制御するために、任意追加の他の抗高血圧薬をこの低用量レベルの盲検化治験薬剤とともに投与すればよい。耐え難い副作用が持続するようであれば、治験投薬は中止してもよいが、治験の全期間のプロトコールについて患者を追跡調査しなければならない。
【0093】
【表6】

【0094】
心房不整頻拍を発症する患者は、現場医療に従い、静脈内カルシウムチャネル遮断薬で応急処置すればよい。ジゴキシンおよびβ遮断薬または他のいずれかの非カルシウムチャネル遮断薬性抗不整脈薬をこれらの患者の長期療法として用いてよい。
【0095】
3.4.5.処置のコンプライアンス
使用した治験薬剤、投与量、および来院間隔の記録は治験の間維持する。薬物の信頼性は来院の際および治験の終了時に治験監視員(field monitor)が確認する。患者には、治験の終了時に未使用の薬剤を全て返却するように頼む。
【0096】
3.5.来院スケジュールと評価
3.5.1.来院スケジュール
本治験の間、3〜5年の期間に少なくとも11回の来院を行う。各評価は午前中に行い、来院3〜5回目のスケジュールは+/−7日の範囲とし、来院6〜11回目は+/−28日の範囲で組む。血圧の制御を確実なものとするため、必要に応じて合間の来院を加えてもよい。
【0097】
この柔軟な来院スケジュールは1つの指標として示されるものであって、特殊な環境の場合は治験モニターと話し合わなければならないことに注意してほしい。この枠組みの以外で来院したからといって、患者を中断させてはならない。代わりに、患者にはできるだけ速やかに理解してもらうべきであり、次の来院は来院2回目(第1日)の線でスケジュールを組むべきである。患者には来院前の朝に治験薬剤を服用してはならないと指示しなければならない。患者が予定された来院前に治験薬剤を服用してしまった場合、トラフ血圧の評価を確保するために、来院は延期し、再度スケジュールを組まなければならない。治験患者が朝診療所に来ることができない状況があれば(すなわち、夜間シフトの労働者など)、午後の評価を行ってもよいが、治験薬剤の最後の投与から24時間以内に行わなければならず、常に治験薬剤を午後に服用しなければならず、さらに、必要があれば、空腹状態で検査を受けることができなければならない。
【0098】
【表7】

【表8】

【0099】
3.5.2.効力評価
あらゆる臨床エンドポイントおよび致死的事象を、エンドポイント評価書式を完成させ、審判のためエンドポイント委員会に全ての関連情報を送ることによって処理する。
【0100】
3.5.2.1.一次エンドポイント
複合的な心血管性の罹病および死亡の最初の事象が発生するまでの時間
心血管性罹病は、
・非致死的臨床事象としての急性心筋梗塞
・非致死的卒中
・不安定狭心症に関する入院
・冠動脈血管再生術(PCIまたはCABG)
として定義される。
心血管性死亡は、
・心性突然死、致死的MI、致死的卒中、冠動脈インターベンションによる死亡、CHFまたは他のCV原因による死亡
として定義される。
【0101】
3.5.2.2.二次エンドポイント
二次エンドポイントは、次のように個々に評価する
・複合的な心血管性罹病
・糖尿病の新たな発症(ADA定義)
・血清クレアチニンが2倍になることとして定義される腎疾患の進行、または末期腎疾患への進行
・うっ血性心不全に関する入院
3.5.2.3.他のエンドポイント
1.あらゆる原因の死亡
2.あらゆる入院
3.腎機能(糸球体濾過速度の推定変化)
4.ECGによるLVH
5.末梢動脈血管再生術または非外傷性切断
6.微量アルブミン尿症(30〜300mg/g)または臨床アルブミン尿症(>300mg/g)の進行/回復
1)基準時での糖尿病、2)基準時での冠動脈疾患、3)基準時での慢性腎不全(すなわち、血清クレアチニン>1.5mg/dL(女性)および>1.7mg/dL(男性)を有する患者のサブグループを評価する。また、サブグループを性別、人種および年齢(70歳未満と70歳以上)でも評価する。
【0102】
3.5.3.手順の説明
血圧測定
無作為化前のスクリーニングの間に血圧を記録する。最高座位拡張期圧を計測した腕を、治験中、その後の全ての計測に使用する腕とする。同じ者が各患者において、各来院時に、同じ装置でその日の同じ時刻に血圧測定値を得るよう、あらゆる試みをなさなければならない。
【0103】
較正済みの標準血圧計または較正済みのデジタル装置と適当な大きさの腕帯を用い、血圧測定に関する1988年AHA委員会報告(Hypertension 11: 210A - 222A, 1988)に従って動脈血圧測定を行う。腕を心臓の高さに支持し、最初の音が聞こえた際に収縮期圧を記録し(コロトコフ音の第1点)、音が聞こえなくなった際に拡張期圧を記録する(コロトコフ音の第5点)。各治験来院時に、患者を5分間座らせた後に収縮期/拡張期血圧と心拍数を3回測定する。1〜2分間隔で測定を繰り返す。腕帯は2mmHg/秒より速い速度でしぼませてはならない。
【0104】
脈拍数
各来院時に、座位血圧の測定のちょうど30秒前に脈拍数を測定する。
【0105】
携帯式血圧測定法
ABPMは、治験2年目に、選択された施設でおよそ560人の患者において行う。携帯式血圧測定モニターは利き腕でない腕に付ける。
【0106】
ABPMの読みとり、品質管理基準
ABPM装置は、治験特異的要件に基づいて血圧を測定および記録するよう、自動設定される。このプロトコールの空気注入法はABPM研修手引き(ABPM Training Manual)に概説されている。各24時間のABPM期間の終了時に、各ABPM記録を、本治験用に設計された品質管理基準セットに対して即座に評価する。品質管理基準を満たさなければ、患者に24時間測定期間を繰り返してもらう。さらに詳しくはABPM研修手引きを参照。
【0107】
以下の手順を2年目来院時に2日間にわたって行う。
取り付け
2年目治験来院のため、患者が診療所にやってくる。外来血圧測定と他の全ての治験評価を併せて行う。ABPM装置を取り付け、適切に作動することを確認する。その後、患者にそれぞれの二重盲検治験薬剤を投与し、投与時刻を記録する。
【0108】
取り外し
患者に、装置の取り外しのために翌日およそ24時間後に再来するように指示する。装置を取り外し(最後の薬剤投与から≧24時間)、読みとり値が品質管理基準を満たすかどうか確認する。読みとり値が品質管理基準を満たしていなければ、患者に二重盲検薬剤の服用を続けて、3日以内にABPMを繰り返してもらう。その読みとり値が許容されるものでなければ、手順を繰り返さなければならない(1ヶ月以内)。
【0109】
3.5.4.安全性評価
安全性評価は、所定の安全性および許容度のエンドポイント(下記参照)、全ての重篤な有害事象のモニタリングと記録、血液学および血液化学の定期的モニタリング、生命徴候の定期的測定および身体検査の成績からなる。また、ECG評価も行う。全ての安全性評価の結果を患者カルテ(ソースドキュメント)で管理しなければならない。
【0110】
所定の安全性および許容度パラメーター
次の所定の安全性および許容度エンドポイントは、Lotrel(登録商標)またはベナゼプリルおよびヒドロクロロチアジドの既知の副作用である。
・咳
・めまい
・末梢浮腫
・血管性浮腫
・治験薬に対するアレルギー反応
・低/高カリウム血症(これらのパラメーターは中央検査室が特定したものであり、副作用eCRFには挙げられていない)
これらの副作用の発生に関する情報は全患者について、eCRFに収集、記録する。
【0111】
有害事象
有害事象は、以下の基準を満たしていれば、eCRFまたは重篤有害事象(the Serious Adverse Event, SAE)書式に記録する。
・一次および二次効力パラメーター(第3.5.2節に記載のとおり)
・所定の安全性および許容度パラメーター(Lotrel、ベナゼプリルおよび/またはヒドロクロロチアジドのいずれかの既知の副作用、上記の節に記載のとおり)
・重篤な有害事象(以下の節に記載のとおり)
【0112】
できる限り、各有害事象には次の内容も記載する。
1.持続期間(始まりと終わりの日付)
2.重篤度(軽度、中度、重度)
3.治験薬物との関連(疑わしい/疑わしくない)
4.投与と、その結果に関連があれば
【0113】
他の重篤でない有害事象はeCRFでは収集しない。しかし、患者により自発的に提供されたものであれ、治験責任医師の質問により発見されたものであれ、または身体検査、検査室の試験もしくは他の手段を通して検出されたものであれ、全ての有害事象についての情報を患者のカルテ(ソースドキュメント)に記録し、それらの事象を追跡し、適宜処置する。有害事象は、たとえその事象が処置に関係すると見なされない場合であっても、治験処置の開始後に発生する望ましくない徴候、症候または病態である。治験処置開始前に存在する病態/疾病は、それらが治験処置開始後に悪化した場合にのみ有害事象と見なされる。異常な検査値または治験結果は、それらが臨床的徴候または症候を誘発するか、あるいは治療または治療の変更を必要とする場合にのみ有害事象となる。
【0114】
重篤な有害事象
重篤な有害事象とは、次のような望ましくない徴候、症候または病態である。
1.致死的または生命をおびやかすもの
2.入院を要するもの、または入院を延長するもの
3.持続的または重篤な機能障害/機能不全をもたらすもの
4.先天異常または出生欠陥をなすもの
5.被験者を危険にさらし、上記で挙げた結果の1つを予防するために医学的または外科的介入を必要とし得るという点で、医学的に重篤なもの
【0115】
重篤な有害事象であるとは見なされない事象としては、次のことによる入院がある。
・治験下の適応症の通常の処置またはモニタリングであって、病態の悪化を伴わないもの
・治験下の適応症とは無関連な既存の病態に対して選択されていた、または予定されていた処置であって、悪化しなかった場合
・健康管理のための病院または他の施設への収容であって、病態の悪化を伴わないもの
・上記で示した重篤なもののいずれの定義も満たさず、病院収容に至らない事象のための緊急、外来を基本とする処置
【0116】
患者がインフォームドコンセントを提出した後、患者が治験協力を止めた後4週間までに発生した重篤な有害事象はいずれも報告しなければならない。これには、治験プロトコールが患者に施された標準的な医療処置(例えば、ウォッシュアウト期間中の退薬処置、定量の付随薬物への処置の変化)で中断された期間も含まれる。
【0117】
治験の中断後4週間を超えてから発生した重篤な有害事象は、ノバルティス治験薬物(または療法)との関連が疑われる場合にのみ報告する必要がある。
【0118】
【表9】

【0119】
治験責任医師が治験投薬との関連を疑わない重篤な有害事象は、eCRFおよび/またはエンドポイント文書でノバルティスに報告する。事前および事後の重篤有害事象報告書式(initial and follow-up Serious Adverse Event Report Forms)を完成させ、それらをノバルティスに送ることに関する説明は10.1.1節の重篤な有害事象の迅速な報告に示されている。
【0120】
検査評価
血液サンプルは空腹状態で得る(飲食せず8時間)。検査治験は以下に概略を示すように、中央検査室が行う。
血液学:来院1回目(−2週間)、来院8回目(18ヶ月)および最終治験来院時に、ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球総数、白血球総数、血小板総数を調べる。
生化学:詳細化学検査(Long Chemistry)(LC):来院1回目(−2週間)、来院8回目(18ヶ月)および最終治験来院時に、AST、ALT、アルカリ性ホスファターゼ、ビリルビン、クレアチニン、尿酸、ナトリウム、カリウム、空腹時血漿グルコース、総コレステロール、HDL−C、アルブミン、BUNまたは尿素を調べる。
簡易化学検査(Short Chemistry)(SC):来院3回目(1ヶ月)、来院5回目(3ヶ月)、および来院7回目(1年)以降毎年、クレアチニン、ナトリウム、カリウム、空腹時血漿グルコースを調べる。
スポット尿:来院1回目の時点でアルブミン/クレアチニン比率を求めるために尿をスポットし、患者の適格基準がタンパク尿症(>300mg/gm、第3.3.2.1.節)のみであれば、来院2回目の前に繰り返す。来院1回目の時点で微量アルブミン尿症(≧30mg/gm)が見られれば、毎年、尿スポット検査が必要である(第3.5.4.節参照)。
【0121】
全ての安全性結果を治験責任医師とスポンサーに連絡する。サンプルの回収、配送および中央検査室による結果の報告についての詳細は検査室マニュアルにおいて治験責任医師に提供される。
【0122】
臨床上注目に値する異常の境界線を超える検査所見異常(第8.1節参照)については、治験責任医師がコメントeCRFページにコメントしなければならず、必要であると判断された場合には、さらなる評価を行わなければならない。検査所見異常が不測の入院の主要な理由であるか、またはそうでなければ有害事象の重篤度カテゴリーを満たす場合、重篤な有害事象の迅速な通告の手順に従わなければならない。同様に、検査所見異常が中断に至る場合には、その異常が解決するか、または永続的なものであると判断されるまで患者を追跡調査しなければならない。
【0123】
生命徴候
体重(着衣のまま、靴を脱いだ患者の体重)を毎年測定し、来院1〜5回目の時点と来院6〜11回目の間は6ヶ月ごとに生命徴候(脈拍とBP)を測定する。治験期間が表3−1に示されている3年を超える場合、治験が終了するまで6ヶ月ごとに患者の評価を続ける。
【0124】
異常な生命徴候が見られる場合には、正常値となるか、またはその異常に満足のいく説明がつくまで、少なくとも1時間ごとに患者をモニタリングしなければならない。生命徴候が通告基準を満たす場合には、コメントが必要となる。
【0125】
身体検査
身体検査ではいつも、心血管性の徴候および症候に注意を向けなければならない。詳細身体検査(来院1回目)は、頭部、胸部、腹部、脊柱の検査、および体重、身長の測定、心臓、肺および腹部の聴診、および皮膚の視診を含む。中間身体検査は、心臓および肺の聴診を含む全臓器系の簡単なチェック、心血管疾患の徴候および症候のチェックを含み、来院2回目(第1日)、5回目(3ヶ月)、6回目(6ヶ月)、7回目(1年)、9回目(2年)、11回目(3年)および治験終了まで毎年、そして最終治験来院時に行う。
【0126】
身体検査に関する情報は各治験所のソースドキュメントに記載しなければならない。
【0127】
ECG
来院1回目(第1日)、来院8回目(18ヶ月)および来院11回目(3年)時に12誘導ECGを行う。ECGは全て、スクリーニング番号/患者番号、患者イニシャル、および記録日時で識別しなければならない。ECGは全て、中央ECG読みとりに送られる。中央読みとりにおいては次のECG変数が記録される:心律動、心筋梗塞およびLVH(Sokolow LyonまたはCornell基準)。
【0128】
患者はLVH登録基準に適格でなければならない(すなわち、患者は表1に挙げられた他のCV疾患/標的器官損傷のいずれも持っていない)とすれば、ECGは来院2回目ではなくむしろスクリーニング来院(来院1回目)で行わなければならないことに注意してほしい。このECGは無作為化の前にLVH確認(有り/無し)のために中央読みとりにファックスしなければならない。
【0129】
バイオマーカー評価
高感度C反応性タンパク質(hs−CRP)および心血管疾患の他の予測因子(predictor)を来院1回目、来院7回目および最終治験来院時に評価する。測定されるパラメーターは心血管疾患の病態生理学、その症状発症の予測、または処置に対する応答に関するよりよい理解につながるものに限定される。これらの測定については、血漿および血清アリコートを分析時まで冷凍しておく。
【0130】
3.5.5.薬物レベルと薬物動態評価
計画せず。
3.5.6.薬理遺伝学的評価
薬物応答に対するヒトの遺伝的バリエーションの影響を検討するため、発明者らは本プロトコールの一環の治験として予備的薬理遺伝学研究調査を行う計画を立てている。詳細についてはPost Text Supplement 1を参照。
【0131】
3.5.7.資源活用評価
入院患者の入院は、治験中に追跡すべき唯一の資源活用パラメーターである。
【0132】
4.プロトコールの改正、治験実施中の他の変更
4.1.プロトコールの改正
このプロトコールのいかなる変更または追加にも、書類によるプロトコール改正が必要であり、これには、その変更または追加が有効であると見なされ得る前に、ノバルティス、治験責任医師、およびインスティテューショナル・レビュー・ボード(the Institutional Review Board, IRB)が承認しなければならない。
【0133】
4.2.治験実施における他の変更
実施における変更は認められない。治験実施における不測の変更は臨床治験報告に記録する。
【0134】
5.データ管理
5.1.データ収集
治験責任医師または指名されたスタッフは、電子データ取り込みのFDA要件に適合し、十分バリデートされたソフトウエアをロードしたノバルティス提供のコンピューターを用い、ノバルティスeCRFに、そのプロトコールが要求する情報を入力しなければならない。システム障害中は、書面の症例記録書式にデータを落とし、後に電子症例記録書式に移行する。
【0135】
自動バリデーションプログラムは電子症例記録書式のデータの矛盾をチェックし、適宜エラーメッセージを表示することで、安全なインターネットリンクを介してノバルティスに転送する前に、入力されたデータの修正および確認を可能とする。
【0136】
治験責任医師は、電子症例記録書式に電子署名を施すことにより、データが完全かつ正確であることを確認し、その後、その治験所での保管用に患者データのCD−ROMまたは紙コピーを受け取らなければならない。治験施設がノバルティスに送った全電子症例記録書式は重篤な有害事象の受け取りの際に再検証される。
【0137】
5.2.データベース管理と品質管理
データ項目は、電子照合付きの単一データ入力を用い、ノバルティスの研修を受けた治験責任医師スタッフの指名された者が治験データベースに直接入力するか、またはソースデータ文書から間接的に入力する。ノバルティスのスタッフはデータの完全性と正確性を再検証し、現地の職員に必要な訂正または追加をするように指示する。質問は一般に、指名された治験責任医師スタッフが行った訂正の自動監査証跡(automatic audit trail)を提示する電子データクエリーシステムを用いて治験所に送る。場合によって、質問はデータクエリーフォーム(Data Query Form)で送られる場合、署名された原本の、解答済みデータクエリーフォームは治験施設で保管され、コピーがノバルティスに送られるので、それらの解答はデータベースに中央入力することが可能である。
【0138】
データベースに入力された付随薬剤は解剖学的治療薬化学分類システム(Anatomical Therapeutic Chemical classification system)を用いたWHO薬物参照リスト(WHO Drug Reference List)を用いてコード化する。併存する疾病および有害事象は、医薬規制用語集(the Medical dictionary for reguratory activities, MedDRA)を用いてコード化する。
【0139】
検査サンプルをメディカル・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド(Medical Research laboratories Incorporated, MRLI)を介して中央処理し、それらの結果はノバルティスに電子送信される。
【0140】
データベースが完全かつ正確であることが明らかになったところで、データベースはロックされる。それ以降のデータベースのあらゆる変更は、臨床試験指導者(Clinical Trial Leader)、治験統計学者(Trial Statistician)およびデータ管理者(Data Manager)の間で共同の書面による同意がある場合にのみ可能である。
【0141】
6.統計学的方法
6.1.統計学的方法
これは事象駆動型治験である。この治験の主要な目的は、複合的な心血管性の罹病および死亡の発生率に対する、ハイリスク高血圧患者における、ベナゼプリルとヒドロクロロチアジドの組合せと比べた場合のLotrel(登録商標)(アムロジピン/ベナゼプリル)の効力を評価することである。この主要な目的の評価のための主要な処置比較はログランク検定(log-rank test)を用いて行う。この治験の第二の目的は、次の二次エンドポイント:(1)複合的な心血管性罹病、(2)糖尿病の新たな発症、(3)血清クレアチニンが2倍になることとして定義される腎疾患の進行、または末期腎疾患への進行、および(4)うっ血性心不全に関する入院に対する2つのコンパレーターの影響を調べることである。
【0142】
検定する主要な帰無仮説は、2つの処理群の間の危険率(ハザード比)が1に相当することであるのに対し、対立仮説は、主要な複合的エンドポイントに関しては危険率は1に相当しないというものである。2つの処置群の間の危険率に関する点推定値と信頼区間は、モデルに処理のみを含む単変量コックス(Cox)回帰分析を用いて得られる。
【0143】
4つの二次エンドポイントについては、多重検定において第I種誤り率を保つため、Hochberg法により有意性検定を行う。
【0144】
本プロトコールに協力する全センターからのデータを合わせるように計画されているので、分析に利用できる十分な患者数を用いることができる。
【0145】
データを人口統計的特徴および基準の特徴、効力の所見および測定、ならびに安全性の所見および測定に関してまとめる。
【0146】
6.1.1.集団
治療意図に基づく(intent-to-treat)(ITT)集団
治療の意図による(ITT)集団は、無作為化された全患者からなる。一次分析はITT集団に基づいて行う。
【0147】
プロトコール遵守(Per-protocol)(PP)集団:
プロトコール遵守集団は、有意に効力評価に影響すると思われる主要なプロトコール違反のない、無作為化された全患者からなる。プロトコール遵守集団中の患者を識別するために用いられるプロトコール違反判定のための基準は、分析のために処置コードを非盲検化する前に定義される。
【0148】
適宜、下記の打切り時間(censoring times)を用い、一次効力エンドポイント、すなわち、複合的な心血管性の罹病および死亡の第一事象が発生するまでの時間に関して、プロトコール遵守集団から得られたデータの補足分析が予定される。この補足分析をITT集団の一次分析と比較し、主要なプロトコール違反による重大な影響を調べる。患者を「プロトコールを遵守した」とする基準は、分析のために処置コードを非盲検化する前に判定される。
【0149】
安全性(SAF)集団
少なくとも1回量の治験薬剤を服用し、少なくとも1回のポスト・ベースライン(post-baseline)安全性評価を受けた、無作為化された全患者。
【0150】
6.1.2.背景および人口統計学的特徴
ITT集団を基に、人口統計学、病歴および基準効力変数に関して処置群間の比較可能性を調べる。
【0151】
カイ二乗検定を用い、次の変数に関して処置の比較可能性を調べる。
・年齢(70歳未満、70歳以上)
・性別
・人種(白人、黒人、その他)
・過去の抗高血圧薬処置(有り/無し)
・糖尿病(有り/無し)
・少なくとも1つの冠動脈性心疾患(CHD)の証拠(有り/無し)
心筋梗塞(MI) 来院1回目より1ヶ月以上前
冠動脈血管再生(CABG、PCI) 来院1回目より1ヶ月以上前
不安定狭心症に関する入院 来院1回目より1ヶ月以上前
卒中の病歴 来院1回目より1ヶ月以上前
・少なくとも1つの標的器官損傷の証拠(有り/無し)
左心室肥大(LVH)(来院1回目時に確認されたもの)
末梢動脈疾患の病歴または存在(来院1回目時に確認されたもの)
タンパク尿症(来院1回目時に確認されたもの)
女性では血清クレアチニン>1.5mg/dLまたは133μmol/L、男性では>1.7mg/dLまたは150μmol/Lとして定義される慢性腎不全(来院1回目時の中央検査室の結果)
・第3.3.2.1節の表1に挙げられた心血管疾患および標的器官損傷に関する個々の登録基準を満たす証拠
【0152】
次の変数の基準値に関して2標本t検定を用い、ITT集団の処置群間の比較可能性を調べる。
・年齢
・身長
・体重(来院1回目時)
【0153】
さらに、基準(無作為化前)平均座位収縮期血圧(BP)、平均座位拡張期BP、血清グルコース濃度、血清クレアチニン濃度および脂質特性(総コレステロールおよびHDL−C)に関する処置群の比較可能性を、2標本t検定を用いて調べる。
【0154】
基準比較可能性の全ての検定は処置の差がないとする帰無仮説に基づき、両側5%(0.05)有意性水準で行われる。しかし、これらのp値は表示目的で与えられるものであり、統計モデルに含めるべき決定因子における形式的基盤を定義するものであるとはみなされない。いくつかの変数について処置群の不均衡が見られれば、これらの変数を付加した共分散の補足分析を行って、適宜、効力の影響を評価すればよい。
【0155】
6.1.3.治験薬剤
治験薬剤に対する期間および患者数は処置群、用量レベルおよび来院によってまとめられる。服用した最大用量および最終用量に関しては、患者の頻度および割合%も示される。
【0156】
6.1.4.付随療法
治験中の抗高血圧薬の付随使用は、処置群および薬剤種(例えば、β遮断薬、α遮断薬、ループ利尿薬)によってまとめられる。
【0157】
6.1.5.効力評価
一次エンドポイント
複合的な心血管性の罹病および死亡の第一事象が発生するまでの時間。ここで、心血管性の罹病は、
・非致死的臨床事象としての急性心筋梗塞
・非致死的卒中
・不安定狭心症に関する入院
・冠動脈血管再生術(PCIまたはCABG)
として定義される。
心血管性の死亡は、
心性突然死、致死的MI、致死的卒中、冠動脈インターベンションによる死亡、CHFまたは他のCV原因による死亡
として定義される。
【0158】
二次エンドポイント
二次エンドポイントは、次のような事象発生までの時間(time-to-event)の個々の4つの変数を含む。
・非致死的臨床事象としての急性心筋梗塞、非致死的卒中、不安定狭心症に関する入院、および冠動脈血管再生術(PCIまたはCABG)として定義される、複合的な心血管性の罹病
・糖尿病の新たな発症
・血清クレアチニンが2倍になることとして定義される腎疾患の進行、または末期腎疾患への進行
・うっ血性心不全に関する入院
として定義される。
【0159】
他のエンドポイント
対象とする他のエンドポイントとしては、次のものがある。
・あらゆる原因の死亡
・あらゆる入院
・腎機能(糸球体濾過速度(GFR)の推定変化)。ここで、GFRは、以下に示す簡易型腎疾患食事療法試験式35(Abbreviated MDRD (Modification of Diet in renal Disease) Study Equationによって基準時とエンドポイントにおいて計算する。
【表10】

・ECGによるLVH
・末梢動脈血管再生術または非外傷性切断
・微量アルブミン尿症(30〜300mg/g)または臨床アルブミン尿症(>300mg/g)の進行/回復
【0160】
一般に、全ての効力エンドポイントは、(1)time−to−event変数と、(2)非time−to−event変数の2つのカテゴリーに分類できる。
【0161】
time−to−event変数
time−to−event効力変数については、ある患者の事象発生までの時間を、患者の事象発生日(二重盲検期間中)と無作為化日との差として計算する。あるエンドポイントが複数回発生した患者については、最初の発生までの時間を分析に用いる。
【0162】
全てのtime−to−event変数に関して分析した一次データセットはITT集団に基づくものである。
【0163】
一次事象を有する必要数1642人の無作為化患者が見られた時点か、または統計学的に有意な中間分析結果が得られた時点で治験を終了する。
【0164】
エンドポイントを観察した患者については、治験終了時(または早ければ、分析カットオフ日)またはそれ以前に発生したエンドポイントを、それらのエンドポイントが二重盲検投薬の永続的中止の前に発生したものであれ後に発生したものであれ、非打切り事象として一次分析に含められる。全ての事象に関して、無作為化日から事象発生日までの時間は一次分析で非打切り時間として用いられる。
【0165】
また、一次分析に加えて補足分析も行う。補足分析では、二重盲検投薬の永続的中止時の前後30日に発生した事象のみを非打切り事象として処理し、無作為化日から事象発生日までの時間を補足分析での非打切り時間として用いる。しかしながら、二重盲検投薬の永続的中止後30日を超えて発生した事象は打切りとみなし、無作為化から二重盲検投薬の永続的中止後の30日目までの時間を補足分析での打切り時間として用いる。補足分析から得られた結果を一次分析から得られたものと比較し、二重盲検投薬の永続的中止の影響を評価する。
【0166】
治験の終了時までその治験を続け、治験の終了(または早ければ、分析カットオフ日)までにエンドポイントが発生しなかった患者については、エンドポイントまでの時間は打ち切られたものとみなし、無作為化から治験終了時(または分析カットオフ日)までの時間を一次分析の打切り時間として用いる。
【0167】
治験を中止し(例えば、同意の取り下げ、または追跡不能による)、事象の発生が見られなかった患者については、事象発生までの時間は打ち切られたものとみなし、無作為化から患者が治験を中止したとみなれた日までの時間を分析の打切り時間として用いる。
【0168】
治験を中止する患者数は、治験の処置を永続的に中止する患者であっても治験が終了するまで追跡調査によって治験を続けることになるので、少数であると予測される。中間分析カットオフ日の後に発生した事象は、対応する中間分析の目的で、打ち切られたものとみなされる。
【0169】
補足分析では、治験中にエンドポイントを持たず、二重盲検投薬を永続的に中止した患者については、打切り時間は、無作為化から二重盲検投薬の永続的中止後30日目までの時間である。
【0170】
非time−to−event変数
非time−to−event変数は予定されている各測定時点で分析され、これはある変数に関するITT集団を基にしたものである。計画ごとに測定値を収集する努力がなされるが、欠損値がなお存在するかもしれず、それはLOCF法(the last observation carried forward approach)によって補完される。この手法は分析される各変数のポスト・ベースライン値とは独立に適用される。
【0171】
分析
一次効力エンドポイント
一次エンドポイント、すなわち、複合的な心血管性の罹病および死亡の第一事象が発生するまでの時間については、一次治験は、ログランク検定を用いた、ITT集団に関する処置比較に基づく。この検定は、第6.1.7節で述べる中間分析に対してO’Brien−Fleming境界とLan−DeMetsα消費関数を用い、全体の両側有意水準0.05で行う。もし、Lotrel(登録商標)に有利な正のリスク減少が統計学的に有意であれば、Lotrel(登録商標)の効力が優るものと結論づけることができる。危険率の点推定値と対応する信頼区間(CI)は、モデルに処理のみを含む単変量コックス回帰分析を用いて得られる。
【0172】
一次エンドポイントに関する予備分析としては、(処置効果に加えて)時間依存共変量として平均座位収縮期血圧を調整したコックス回帰モデルを用いて、結果に対する処置の影響が完全に血圧を媒介とするかどうか評価する。さらに、拡張期血圧も、適宜、時間依存共変量とみなしてよい。
【0173】
二次効力エンドポイント
一次効力エンドポイントの一次分析に関して上記したログランク検定および単変量コックス回帰モデル(処置効果のみを含む)を、4つの、事象が発生するまでの時間としての二次エンドポイント(すなわち、複合的な心血管性の罹病、糖尿病の新たな発症、血清クレアチニンが2倍になることとして定義される腎疾患の進行または末期腎疾患への進行、およびうっ血性心不全に関する入院)の各々に用いる。モデルに処置効果のみを含む単変量コックス回帰分析に基づき、その危険率に関する点推定値および対応する95%信頼区間を記録する。これら4つの二次エンドポイントについては、多重検定において全体の第I種誤り率0.05を保つため、Hochbergを用いて有意性検定を行う。
【0174】
以下に記載する分析については(すなわち、他の効力エンドポイントおよび24時間携帯式血圧に関するもの)、処置比較は、処理の差がないとする帰無仮説に対し、処理の差があるとする両側対立仮説に基づく。分析は全て両側有意水準5%(0.05)で行い、対応する95%信頼区間を示す。
【0175】
他の効力エンドポイント
5つの二分効力エンドポイント(すなわち、あらゆる原因の死亡、あらゆる入院、ECGによるLVH、末梢動脈血管再生術または非外傷性切断、および微量アルブミン尿症または臨床アルブミン尿症の進行/回復)の各々について、適当であれば、カイ二乗検定により、発生率を2つの処理群の間で比較する。発生回数が得られる場合には、これらの二分変数を、一次および二次効力エンドポイントに関して上記したもの(すなわち、ログランク検定および単変量コックス回帰モデル)と同種のtime−to−event分析によって分析する。
【0176】
残りの非time−to−event型の連続エンドポイント、すなわち、腎機能(GFRの推定変化)については、治験終了時に二元配置共分散分析(ANCOVA)を行い、ここでは、GFR推定値を従属変数とし、処置およびセンターを2因子とし、基準GFRを共変量として基準からの変化を調べる。このモデルに基づいて、95%信頼区間を持つ処置比較を行う。また、センターによる処置(treatment-by-center)、および基準による処置(treatment-by-baseline)の相互作用を有する補足的ANCOVAモデルも行い、これらの処置の相互作用に関して評価する。
【0177】
24時間携帯式血圧
・毎時平均携帯式収縮期血圧(MASBP)
毎時平均携帯式収縮期血圧は、2年目来院時に対応する投与後時間でとった読みとり値の平均をとることにより、24時間の各投与後時間について算出する。毎時MASBP(1、2、3、…24時間)に対する処置の効果を評価するため、反復測定に関する共分散分析(ANCOVA)を用いる。基準の外来収縮期血圧の測定値をANCOVAモデルの共変量とする。ANCOVAモデルの因子としては、処置、センター、投与後時間(1、2、3、…24時間)、投与後時間による処置の相互作用、および反復クラスター変数としての対象が含まれる。適当な対比を用いて24時間平均に関する処置の差ならびに各投与後毎時平均値に関する処置の差を評価する。
【0178】
・毎時平均携帯式拡張期血圧(MADBP)
毎時MASBPと同様の分析を毎時MADBPについても行う。
【0179】
・日中/夜間の平均自由行動下収縮期血圧(MASBP)
反復測定に関する共分散分析(ANCOVA)を用い、2年目来院時の日中/夜間MASBPに対する処置の効果を評価する。各患者の日中平均は、午前6時から午後10時の間(>午前6時、≦午後10時)にとった全ての読みとり値の平均値とする。一方、夜間平均は、午後10時から午前6時の間(>午後10時、≦午前6時)にとった全ての読みとり値の平均値とする。基準の外来収縮期血圧測定値をANCOVAモデルの共変量とする。ANCOVAモデルの因子としては、処置、センター、時間(日中、夜間)、時間による処置の相互作用、および反復クラスター変数としての対象が含まれる。適当な対比を用いて日中平均ならびに夜間平均に関する処置の差を評価する。
【0180】
・日中/夜間の平均携帯式拡張期血圧(MADBP)
日中/夜間のMASBPと同様の分析を日中/夜間MADBPについても行う。
【0181】
潜在予後共変量の評価
潜在的に重要な予後共変量を検討するため、コックス回帰分析を用い、この一次変数に関する補足分析を行う。処置の効果の他、以下の潜在共変量が考えられる:基準平均座位拡張期血圧(BP)、基準平均座位収縮期BP、基準脈圧(基準平均座位収縮期と拡張期BPとの差(収縮期−拡張期))、基準血清グルコース、基準血清クレアチニン、基準脂質特性(すなわち、総コレステロールおよびHDL)、および最終的なデータベースロックの前に特定された他の共変量。
【0182】
サブ集団
以下の特性を持つ患者と持たない患者を評価する:1)基準時での糖尿病、2)基準時での冠動脈疾患、3)基準時での慢性腎不全(すなわち、血清クレアチニン>1.5mg/dL(女性)および>1.7mg/dL(男性))、および4)過去の抗高血圧薬処置。
【0183】
これらの分析の目的は、個々の各サブ集団内で、ベナゼプリルとヒドロクロロチアジドの組合せと比較してLotrel(登録商標)(アムロジピン/ベナゼプリル)の効力を評価することである。治験終了時に一次効力エンドポイント(複合的な心血管性の罹病および死亡)ならびに二次およびその他の効力エンドポイントに関して各サブ集団の分析を行う。同様に、time−to−event変数に関して上記したログランク検定およびコックス回帰モデルもサブ集団分析に用いられる。各サブ集団分析の処置比較は、それぞれ処置の差がない、そしてあるとする帰無仮説および対立仮説に基づき、両側0.05有意水準で対応する検定を行う。その危険率に対する95%信頼区間も示す。
【0184】
さらに、性別、人種(アフリカ人−アメリカ人と非アフリカ人−アメリカ人)および年齢集団(70歳未満と70歳以上)についてのサブ集団分析も調査する。
【0185】
6.1.6.安全性評価
安全性の評価は、主として有害事象の頻度および所定の範囲の外側にある検査値の数に基づく。適当であれば、他の安全性データ(例えば、心電図、生命徴候、特殊試験)も考慮する。
【0186】
有害事象は、各処置群について、有害事象を有する患者の数と割合%、各身体系に有害事象を有する患者の数と割合%、および個々の各有害事象を有する患者の数と割合%を提示することによりまとめる。収集した他の情報(例えば、重篤度または治験薬との関連)があれば、適宜一覧化する。
【0187】
検査データは、拡張した正常範囲外の患者の数と割合%を示すこと、生データの簡易統計と基準値からの変化(平均値、中央値、標準偏差、範囲)を示すこと、およびデータ一覧において顕著な値にフラッグを付けることによりまとめる。
【0188】
他の治験からのデータ(例えば、心電図または生命徴候)も一覧化し、著しい値にフラッグを付け、収集した他の情報があれば、適宜一覧化する。データ調査のために行った統計学的検定は、単に、さらなる考慮を保証し得る注目される比較を強調するために用いられる。
【0189】
6.1.7.中間分析
一次効力エンドポイントについては、定期的に予定した中間分析と1回の最終分析を計画する。中間分析の厳密な時期と頻度はデータ監視委員会(Data Monitoring Committee, DMC)が決定し、計画を立てる。
【0190】
本治験の早期終了に関する効力を評価するための仮定停止規則(a priori stopping rule)は、一次効力エンドポイントに関する両側有意性検定とともにLan−DeMetsα消費関数を用いるO’Brien−Fleming境界に基づく。この特殊な境界に基づいてLotrel(登録商標)処置に有利な統計学的に有意なリスク減少が見られれば、有利な利益を結論づけるために治験を早期に終了してもよい。効力および安全性の中間モニタリングに関する詳細な計画および手順は、DMCの特権において独立DMCにより提供される。
【0191】
これらの中間分析のカットオフデータは、中間分析を行う独立した職員にデータベースおよび処置コードを解放する前に決定する(下記参照)。各中間分析について、分析するデータセットはカットオフデータの前に無作為化した全ての患者からなる。
【0192】
これらの中間分析は、治験の実施には関与しない独立したノバルティス統計学者によって行われる。中間分析の結果は独立DMCに直接送られる。治験の実施および/またはモニタリングに関与したか、または最終治験結果の分析に関与した全ての治験責任医師およびノバルティス職員は、全てのモニタリング判断がなされ、最終分析用のデータベースがロックされるまで処置コードおよび中間分析結果に対して盲検化を維持する。
【0193】
独立DMCは定期的に予定された間隔で中間分析を再検証し、運営委員会(Steering Committee)に治験のプロトコールまたは終了の改変の可能性に関して進言を行う。
【0194】
6.1.8 その他の事項
治験する他の事項はない。
【0195】
6.2 サンプルサイズと検出率に関する考慮
治験全体のサンプルサイズ
サンプルサイズの算出は、一次効力エンドポイント、すなわち、複合的な心血管性罹病および死亡の一次エンドポイントの第一事象発生までの時間に対して行う。
【0196】
主要な大規模心血管事象治験(例えば、最近のALLHAT11)によって報告されているデータに基づけば、対照群(ベナゼプリル+HCTZ)の患者に関しては、一次エンドポイントについて年間第一事象発生率は3.5%と推定される。サンプルサイズは、両側全有意水準5%でLotrel(登録商標)処置群の一次エンドポイントに関するリスクにおいて15%の減少という対立仮説の下で、処置の差を検出する検出率90%として算出する。O’Brien−Flemingの群逐次法(group-sequential method)を用いた、等間隔で行う4回の中間分析と1回の最終分析も考慮する。
【0197】
これらの仮説を満たすには、最終分析において、両処置群を合わせ、一次エンドポイントを有する総数1642人の患者が必要となる(有意な統計学的中間結果のための治験の早期終了を除く)。募集期間を1〜1.5年、対応する最低追跡期間を3.97年〜3.72年(全治験期間およそ4.97〜5.22年)とすると、この事象数を達成するには総数12,000人の、無作為化され、完了した患者が必要となる。追跡不能の患者の割合を若干5%未満と見込むと、総数12,600人の無作為化された患者が計画される。
【0198】
これは事象駆動型治験である。この治験は、一次エンドポイントに関する統計学的に有意な中間分析結果のために早期に終了してもよいが、それ以外の場合は、この治験は、一次エンドポイントを有する総数1642人の患者が得られた時点で終了する。
【0199】
治験期間の実際の長さは観察される事象の割合によって異なる。
【0200】
5年以内の治験終了を容易にするため、登録期間の長さおよび/または患者の事象の特定の最大数を得るのに必要な無作為化患者の推定数の調整があれば、治験中に行ってもよい。
【0201】
携帯式血圧測定サブセットのサンプルサイズ
携帯式血圧のサンプルサイズの算出は、対象とする一次パラメーター、すなわち、24時間平均携帯式血圧に基づく。24時間平均携帯式収縮期血圧および拡張期血圧それぞれにおいて、以下の差を検出するためには、脱落10%と仮定すると、処置群当たり無作為化被験者n=280(すなわち、完了被験者255人)の全サンプルサイズが必要となる。
・携帯式収縮期血圧
携帯式収縮期血圧=10mmHgの標準偏差を仮定すると、両側有意水準α=0.05において検出率80%で処置の差(Δ)が2.5mmHg。
標準偏差10mmHgを用いて処置の差がない場合、95%信頼区間がおよそ±1.74mmHg
・携帯式拡張期血圧
携帯式拡張期血圧=7.5mmHgの標準偏差を仮定すると、両側有意水準α=0.05において検出率85%で処置の差(Δ)が2mmHg
標準偏差7.5mmHgを用いて処置の差がない場合、95%信頼区間がおよそ±1.30mmHg
これらの標準偏差は過去の治験から観察された推定値の範囲内にある。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高血圧を有する哺乳類における心血管性の罹病および/または死亡の予防、減少のための薬剤の製造を目的とした
(a)アムロジピンおよびその医薬上許容される塩から選択される化合物;および
(b)ベナゼプリル、ベナゼプリラトおよびその医薬上許容される塩から選択されるACEインヒビター
の使用。
【請求項2】
該哺乳類がヒトである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
利尿薬を同時投与することをさらに含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
該高血圧患者がハイリスク高血圧患者である、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
該化合物がアムロジピンのベシル酸塩である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
該利尿薬がメチクロチアジド、ヒドロクロロチアジド、トルセミド、メトラゾン、フロセミド、クロルトサルドン、N−(5−スルファモイル−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)アセトアミド、トリアムテレン、クロロチアジド、インダパミド、ブメタニド、アミロライド、スピロノラクトンベンドロフルモチアジド、ベンズチアジド、シクロチアジド、キネタゾン、ヒドロフルメチアジド、ポリチアジド、トリクロルマチアジドおよびエタクリン酸からなる群から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
ジゴキシンを同時投与することをさらに含む、請求項2に記載の使用。
【請求項8】
同時投与が16週間より長い期間行われる、請求項2に記載の使用。
【請求項9】
同時投与が6ヶ月間より長い期間行われる、請求項8に記載の使用。


【公表番号】特表2007−511473(P2007−511473A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536030(P2006−536030)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011824
【国際公開番号】WO2005/037278
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】