説明

有機化合物の分解処理システム

【課題】有機化合物の分子レベルの分解処理を簡易な構成で可能とし、小規模処理に適する有機化合物の分解処理システムを提供する。
【解決手段】有機化合物の分解処理システムは、有機化合物を液体中に溶解状に混入した有機物混入液Aを貯留する貯留部2と、この貯留部2の有機物混入液Aを強制的に吸入して再び貯留部2に吐出することにより循環させる強制循環手段3と、この強制循環手段3の吐出口に介設して循環液に超音波を作用させる超音波処理部4とから構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を分子レベルで分解することができる有機化合物の分解処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の化学合成方法の成果として多様な有機化合物が産業面および生活面で用いられており、これら多様な有機化合物は、その機能を終えた場合における個々の再資源化が環境上の急務であることから、煩わしい素材別の分別処理を要することのない実用性ある処理方法として、化学的方法または熱分解方法等による処理例が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、有機化合物の分解処理において、化学的方法による場合は後処理を含め全体の処理工程の複雑化を招き、また、熱分解方法による場合は装置が大掛かりとなり、大規模な専用施設が必要となる。そのほか、力学的方法による場合は微細化処理に限度ががあることから、分子レベルの分解処理は困難である。
【0004】
本発明の目的は、有機化合物の分子レベルの分解処理を簡易な構成で可能とし、小規模処理に適する有機化合物の分解処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明に係る有機化合物の分解処理システムは、有機化合物を液体中に溶解状に混入した有機物混入液を貯留する貯留部と、この貯留部の有機物混入液を強制的に吸入して循環吐出させる強制循環手段と、この強制循環手段の吐出口に臨んで循環液に超音波を作用させる超音波処理部とから構成することを特徴とする。
上記分解処理システムは、貯留部の有機物混入液が強制循環手段によって強制的に吸入吐出により循環され、その吐出口を通過する際に超音波処理部から超音波の作用を受ける。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記強制循環手段および超音波処理部は、両者を一体的にまたは一体化可能に、かつ、貯留部と別体に構成してなることを特徴とする。
上記システムは、一体構成された強制循環手段および超音波処理部によって貯留部の有機物混入液が分解処理される。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1の構成において、前記超音波処理部は、強制循環手段の吐出口を形成するとともに、強制循環される吐出流体の通過によって超音波を発生しうるノズルによって形成してなることを特徴とする。
上記分解処理システムは、超音波処理部をノズルによって簡易に構成することができ、このノズルによる超音波処理部を通過する循環液は、キャビテーションを伴う急激な圧力変化による超音波作用を受けて有機化合物が分子レベルで分解される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の構成により、上記システムは、貯留部の有機物混入液が強制循環手段によって強制的に吸入吐出されて循環され、その吐出口を通過する際に超音波処理部から超音波作用を受けることにより、循環液中の有機化合物が分子レベルで分解される。
したがって、貯留部、強制循環手段、超音波処理部とからなる簡易な構成により、有機化合物の分子レベルの分解処理が可能となる。
【0009】
請求項2の構成により、上記システムは、強制循環手段および超音波処理部を一体化したものを貯留部内に配置することによって貯留部の有機物混入液を処理することができる。
【0010】
請求項3の構成により、上記分解処理システムは、超音波処理部をノズルによって簡易に構成することができ、このノズルによる超音波処理部を通過する循環液は、キャビテーションを伴う急激な圧力変化による超音波作用を受けて有機化合物が分子レベルで分解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る有機化合物の分解処理システム1は、図1のシステム構成図に示すように、有機化合物を液体中に溶解状に混入した有機物混入液Aを貯留する貯留部2と、この貯留部2の有機物混入液Aを強制的に吸入して再び貯留部2に吐出循環させる強制循環手段3と、この強制循環手段3により貯留部2に吐出される循環液に対して超音波を作用させる超音波処理部4とから構成する。
【0012】
詳細に説明すると、有機物混入液Aを貯留するタンク等によって貯留部2を構成し、この貯留部2には、強制循環手段3を連通して構成する。この強制循環手段3は、循環路3aにポンプ等による圧送部3bを介設して構成し、圧送部3bの上流側に流量計5、下流側に圧力計6を配置する。循環路3aの吐出口には、超音波の発生が可能なノズル等を介設して超音波処理部4を構成する。
【0013】
超音波処理部4の具体的なノズル構成は、図2の縦断面図に示すように、循環路3aから循環液を受ける案内部4aと、この案内部4aより傾斜縮径する絞り部4bと、この絞り部4bから傾斜拡径して貯留部2に送出する送出部4cとから構成する。
【0014】
上記構成の分解処理システム1は、貯留部2の有機物混入液Aが圧送部3bによって強制的に循環され、その吐出口を通過する際に超音波処理部4から超音波の作用を受けることにより、循環液中の有機化合物が分子レベルで分解される。したがって、貯留部2、強制循環手段3、超音波処理部4等からなる簡易な構成により、有機化合物の分子レベルの分解処理が可能となる。
【0015】
上記分解処理システム1は、強制循環手段3および超音波処理部4を一体化して構成し、これを貯留部2の内部に配置することによって貯留部2の有機物混入液Aを分解処理することができる。また、上記分解処理システム1は、水中ウォータージェットを発生する簡易なノズルにより超音波処理部4を構成することができ、このノズルによる超音波処理部4を通過する循環液は、キャビテーションを伴う急激な圧力変化による超音波作用を受けて有機化合物が分子レベルで分解される。
【0016】
ノズルによる超音波作用は強制循環手段3との関係により調節され、例えば、下水処理による余剰汚泥の分解処理の実測例においては、有機物混入試験液(濃度15%)について、所定時間の循環運転後において濃度5%まで低減した測定値が得られた。この場合の分解の効果は、顕微鏡観察によっても混入有機物の低減を観測することができた。
【産業上の利用可能性】
【0017】
上記分解処理システム1は、上記試験液に限らず、液状に溶解混入可能な有機物全般について超音波発生手段により分解処理することが可能であり、ノズルによる小回りのきくシステム構成が可能となり、再資源化の前段処理として幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】有機化合物の分解処理システムの構成図である。
【図2】ノズルの縦断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 分解処理システム
2 貯留部
3 強制循環手段
3a 循環路
3b 圧送部
4 超音波処理部(ノズル)
4a 案内部
4b 絞り部
4c 送出部
A 有機物混入液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物を液体中に溶解状に混入した有機物混入液を貯留する貯留部と、この貯留部の有機物混入液を強制的に吸入して再び貯留部に吐出することにより循環させる強制循環手段と、この強制循環手段の吐出口に介設して循環液に超音波を作用させる超音波処理部とからなる有機化合物の分解処理システム。
【請求項2】
前記強制循環手段および超音波処理部は、両者を一体的にまたは一体化可能に、かつ、貯留部と別体に構成してなることを特徴とする請求項1記載の有機化合物の分解処理システム。
【請求項3】
前記超音波処理部は、強制循環手段の吐出口を形成するとともに、強制循環される循環液の通過によって超音波を発生しうるノズルによって形成してなることを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の有機化合物の分解処理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−203229(P2007−203229A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26530(P2006−26530)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(399010372)株式会社光石製作所 (3)
【Fターム(参考)】