説明

有機化合物層の積層方法、エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法、エレクトロルミネッセンスディスプレイパネル

【課題】有機化合物層を積層する場合において、上層側の有機化合物層を湿式塗布法により成膜するときに隣り合う電極の間で有機化合物含有液が混ざってしまうことを防止すること。
【解決手段】トランジスタアレイパネル50の表面にサブピクセル電極20aをマトリクス状にパターニングし、サブピクセル電極20aの間に金属隔壁Wを成長させる。トランジスタアレイパネル50をトリアジン水溶液に浸漬することにより、金属隔壁Wの表面処理を行う。正孔注入材料を水に分散した有機化合物含有液をサブピクセル電極20aに塗布し、正孔輸送層20dを熱処理する。トリアジンジチオール溶液にトランジスタアレイパネル50を浸漬することにより、金属隔壁Wの表面処理を再び行う。有機化合物含有液を正孔輸送層20dに塗布することにより、正孔輸送層20d上に発光層20eを成膜すし、対向電極20cを成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極上に有機化合物層を積層する有機化合物層の積層方法及びエレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法に関するとともに、その製造方法によって製造されたエレクトロルミネッセンスディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子はアノードとカソードとの間に有機化合物層が介在した積層構造を為しており、アノードとカソードの間に正バイアス電圧が印加されると有機化合物層において発光する。このような複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を赤、緑、青の何れかに発光させるサブピクセルとして基板上にマトリクス状に配列し、画像表示を行うエレクトロルミネッセンスディスプレイパネルが実現化されている。
【0003】
また、有機化合物層の中にはインクジェット法といった湿式塗布法によって電極に積層されることが可能なものもあり、電極に対して酸素プラズマ処理を行うことによって電極を親液化し、その後電極に有機化合物含有液を塗布すると、電極に塗布した有機化合物含有液がアノード全体に広がり、均一な膜厚の有機化合物層を形成することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、隣り合う電極の間で有機化合物含有液が混ざらないように、電極の間に隔壁を凸設させることも行われている(例えば、特許文献1参照。)。隔壁を凸設させた場合でも、塗布した有機化合物含有液の量が多ければ、隣り合う電極の間で有機化合物含有液が混ざってしまう。そこで、隔壁自体に撥液性を持たせることで、それを防止している。
【特許文献1】特開2000−353594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アノードとカソードの間の有機化合物層は、一般的に発光層を含む複数の電荷輸送層の積層構造となっている。有機エレクトロルミネッセンス素子の電荷輸送特性を向上させるため、電荷輸送層の成膜後、電荷輸送層を熱処理することが行われているが、電荷輸送層の熱処理時に隔壁の撥液性が低下してしまう。そのため、電荷輸送層の上にさらに電荷輸送層を湿式塗布法により成膜しようとすると、隣り合う電極の間でこの有機化合物含有液が混ざってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決しようとしてなされたものであり、電荷輸送層となる有機化合物層を積層する場合において、上層側の有機化合物層を湿式塗布法により成膜するときに隣り合う電極の間で有機化合物含有液が混ざってしまうことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、パネル上に配列された電極上に有機化合物層を積層する積層方法において、前記電極の間に配置された金属層に第一撥液性溶液を塗布することによって前記金属層の表面処理を行い、前記電極に第一有機化合物含有液を塗布することによって第一有機化合物層を成膜してから熱処理し、第二撥液性溶液を前記金属層に塗布することによって前記金属層の表面処理を再び行い、前記第一有機化合物層上にさらに第二有機化合物含有液を塗布することによって第二有機化合物層を成膜することを特徴とする。
【0008】
前記第一撥液性溶液が、トリアジンチオール化合物またはトリアジンチオール誘導体をアルカリ金属の水酸化物とともに溶かした水溶液であることが好ましい。
【0009】
前記第一有機化合物含有液が、前記第一有機化合物層となる材料を含む水溶液であることが好ましい。
【0010】
前記第二撥液性溶液が、トリアジンチオール化合物またはトリアジンチオール誘導体を疎水性の溶剤に溶解した溶液であることが好ましい。
【0011】
前記第二撥液性溶液が、前記第一有機化合物層に対し溶解性の低い溶剤にトリアジンチオール化合物またはトリアジンチオール誘導体を溶解した溶液であることが好ましい。
【0012】
前記第二有機化合物含有液が、前記第一有機化合物層に対し溶解性の低い溶剤に第二有機化合物層となる材料を溶解した溶液であることが好ましい。
【0013】
前記第一有機化合物層は、親水性の溶剤に対して溶解性があり、疎水性の溶剤に対して溶解性が低いことが好ましい。
【0014】
前記第一撥液性溶液及び前記第二撥液性溶液の少なくとも一方は、フッ素を含んだ置換基を有するトリアジンジチオール誘導体を含むことが好ましい。
【0015】
前記金属層の金属として銅、銀、アルミ又はそれらを主成分とする合金を用いることが好ましい。
【0016】
前記電極が金属酸化物であることが好ましい。
【0017】
前記金属層の表面処理を再び行った後、前記第一有機化合物層上にインタレイヤ層を湿式塗布法により成膜し、そのインタレイヤ層を不活性ガス雰囲気下において熱処理し、そのインタレイヤ層上に前記第二有機化合物含有液を塗布することが好ましい。
【0018】
請求項12に係る発明は、パネル上に配列された電極の間に配置された金属層に第一撥液性溶液を塗布することによって前記金属層の表面処理を行い、前記電極に第一有機化合物含有液を塗布することによって第一有機化合物層を成膜してから熱処理し、第二撥液性溶液を前記金属層に塗布することによって前記金属層の表面処理を再び行い、前記第一有機化合物層上にさらに第二有機化合物含有液を塗布して第二有機化合物層を成膜した後、前記第二有機化合物層上に対向電極を形成することを特徴とすることを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載のエレクトルミネッセンスディスプレイパネルは、請求項12に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、表面処理が行った金属層間の電極上に第一有機化合物層を成膜してからパネルを加熱したために金属層の表面の特性が劣化しても、再び表面処理を行うので、金属層の表面の特性が良好になり、容易に第二有機化合物含有液を塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence)という用語をELと略称する。
【0022】
図1は、ELディスプレイパネルの四画素分の平面図である。図1に示すように、このELディスプレイパネルにおいては、赤、青及び緑のサブピクセルPによって1ドットの画素が構成され、このような画素がマトリクス状に配列されている。水平方向の配列に着目すると赤のサブピクセルP、青のサブピクセルP、緑のサブピクセルPの順に繰り返し配列され、垂直方向の配列に着目すると同じ色が一列に配列されている。
【0023】
このELディスプレイパネルにおいては、サブピクセルPに各種の信号を出力するために、複数の走査線X、信号線Y及び供給線Zが設けられている。走査線X及び供給線Zは水平方向に延在し、信号線Yは垂直方向に延在している。ここでmドットのサブピクセルPが水平方向に配列されている場合(但し、Mは3の倍数)、M本の信号線Yが互いに平行となるように設けられ、NドットのサブピクセルPが垂直方向に配列されている場合(但し、Nは2以上の整数)、N本の走査線X及びN本の供給線Zが互いに平行となるように設けられている。走査線Xと供給線Zは交互に配列されている。
【0024】
図2は、サブピクセルPの等価回路図である。サブピクセルPは、3つのnチャネル型トランジスタ21〜23と、キャパシタ24と、有機EL素子20とを有し、サブピクセルPの色が有機EL素子20の発光色で決まる。以下では、トランジスタ21をスイッチトランジスタ21と称し、トランジスタ22を保持トランジスタ22と称し、トランジスタ23を駆動トランジスタ23と称する。
【0025】
スイッチトランジスタ21においては、ソース21sが信号線Yに導通し、ドレイン21dが有機EL素子20のアノード、駆動トランジスタ23のソース23s及びキャパシタ24の電極24bに導通し、ゲート21gが保持トランジスタ22のゲート22g及び走査線Xに導通している。
【0026】
保持トランジスタ22においては、ソース22sが駆動トランジスタ23のゲート23g及びキャパシタ24の電極24aに導通し、ドレイン22dが駆動トランジスタ23のドレイン23d及び供給線Zに導通し、ゲート22gがスイッチトランジスタ21のゲート21g及び走査線Xに導通している。
【0027】
駆動トランジスタ23においては、ソース23sが有機EL素子20のアノード、スイッチトランジスタ21のドレイン21d及びキャパシタ24の電極24bに導通し、ドレイン23dが保持トランジスタ22のドレイン22d及び供給線Zに導通し、ゲート23gが保持トランジスタ22のソース22s及びキャパシタ24の電極24aに導通している。
【0028】
垂直方向に沿って一列に配列された何れのサブピクセルPのスイッチトランジスタ21のソース21sも共通の信号線Yに導通している。一方、水平方向に沿って一列に配列された何れのサブピクセルPのスイッチトランジスタ21のゲート21gも共通の走査線Xに導通している。
【0029】
なお、図2において、スイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22、駆動トランジスタ23をnチャネル型としたが、pチャネル型でもよい。この場合、ソースとドレインの関係が逆となる。
【0030】
図3は、図1の切断線III−IIIに沿ってELディスプレイパネルを厚さ方向に切断した矢視断面図である。図3に示すように、スイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23は絶縁基板2の上に設けられ、これらスイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23が共通の保護絶縁膜32によって被覆されている。
【0031】
スイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23は、何れも逆スタガ構造の薄膜トランジスタである。つまり、スイッチトランジスタ21は、絶縁基板2上に形成されたゲート21gと、ゲート絶縁膜31を挟んでゲート21gに対向した半導体膜21cと、半導体膜21cの中央部上に形成されたチャネル保護膜21pと、半導体膜21cの両端部上において互いに離間するよう形成され、チャネル保護膜21pに一部重なった不純物半導体膜21a,21bと、不純物半導体膜21a上に形成されたドレイン21dと、不純物半導体膜21b上に形成されたソース21sと、から構成されている。駆動トランジスタ23も、絶縁基板2上に形成されたゲート23gと、ゲート絶縁膜31を挟んでゲート23gに対向した半導体膜23cと、半導体膜23cの中央部上に形成されたチャネル保護膜23pと、半導体膜23cの両端部上において互いに離間するよう形成され、チャネル保護膜23pに一部重なった不純物半導体膜23a,23bと、不純物半導体膜23a上に形成されたドレイン23dと、不純物半導体膜23b上に形成されたソース23sと、から構成されている。保持トランジスタ22も、スイッチトランジスタ22及び駆動トランジスタ23と同様に構成されている。
【0032】
スイッチトランジスタ21のゲート21g、保持トランジスタ22のゲート22g、駆動トランジスタ23のゲート23g、キャパシタ24の電極24aは、気相成長法(例えば、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着等のPVD法やCVD法)によって絶縁基板2上に成膜された導電性のゲートレイヤーをフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成されたものである。走査線X及び供給線Zは、ゲートレイヤーのパターニングによってゲート21g〜23gと同時に形成されたものである。そして、ゲート21g〜23g、電極24a、走査線X及び供給線Zは、共通のゲート絶縁膜31によって被覆されている。
【0033】
スイッチトランジスタ21のドレイン21d及びソース21s、保持トランジスタ22のドレイン22d及びソース22s、駆動トランジスタ23のドレイン23d及びソース23s並びにキャパシタ24の電極24bは、気相成長法によってゲート絶縁膜31上に成膜された導電性のドレインレイヤーをフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成されたものである。信号線Yは、ドレインレイヤーのパターニングによってソース21s〜23s及びドレイン21d〜23dと同時に形成されたものである。そして、ソース21s〜23s、電極24b、ドレイン21d〜23d及び信号線Yは、窒化シリコン又は酸化シリコン等を有する共通の保護絶縁膜32によって被覆されている。
【0034】
保護絶縁膜32には、樹脂を硬化させた平坦化膜33が積層されている。平坦化膜33の表面が平坦となり、スイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22、駆動トランジスタ23、走査線X、信号線Y及び供給線Zによる凹凸が平坦化膜33によって解消されている。なお図示しないが、供給線Z上には供給線Zの配線の抵抗による信号遅延を解消するために、銅、銀、金、アルミ又はそれらを主成分とした合金を含む低抵抗の配線が形成されていてもよい。この配線は、平坦化膜33及び保護絶縁膜32に設けられた溝に埋設されている。この低抵抗配線は、後述する絶縁膜34によって信号線Y及び金属隔壁Wと絶縁されている。
【0035】
なお、絶縁基板2から平坦化膜33までの積層構造がトランジスタアレイパネル50である。
【0036】
平坦化膜33上には、有機EL素子20のアノードであるサブピクセル電極20aがマトリクス状に配列されている。図1において、矩形状のサブピクセルPの位置は、サブピクセル電極20a(図2等に図示)の位置を表したものである。即ち、隣り合う信号線Yの間ではサブピクセル電極20aが垂直方向に一列に配列され、走査線Xとその下隣りの供給線Zの間ではサブピクセル電極20aが水平方向に一列に配列されている。なお、これらサブピクセル電極20aは、気相成長法によって平坦化膜33上に成膜された導電性膜(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO))をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成されたものである。それぞれのサブピクセルPにおいてコンタクトホール91が平坦化膜33及び保護絶縁膜32を貫通するよう形成され、コンタクトホール91に埋められた導電性パッド92によってサブピクセル電極20aと駆動トランジスタ23のソース23sが接続されている。
【0037】
平坦化膜33上には、サブピクセル電極20aの他に絶縁膜34が形成されている。絶縁膜34はサブピクセル電極20aの間を縫うように網目状に形成されるとともにサブピクセル電極20aの一部外縁部に重なり、サブピクセル電極20aが絶縁膜34によって囲繞されている。
【0038】
絶縁膜34上には、銅、銀、金、アルミ又はそれらを主成分とした合金を含む金属隔壁Wが形成されている。図1に示すように、金属隔壁Wは垂直方向のサブピクセル電極20aの列とその隣りのサブピクセル電極20aの列との間において垂直方向に延在し、信号線Yと金属隔壁Wが平行となっているとともに平面視して重なっている。金属隔壁Wは、メッキ法により形成されたものであるので、トランジスタ21〜23の各電極、走査線X、信号線Y及び供給線Zよりも十分に厚い。また、これら金属隔壁Wは、サブピクセルPが配列されている領域の外側において互いに接続され、後述する対向電極20cと導通している。金属隔壁Wは各対向電極20cと導通して共通電圧を供給するとともに、各対向電極20cが十分低抵抗でなくても、全体として電極のシート抵抗を下げる作用をもたらす。なお、金属隔壁Wの表面に金メッキが施されていても良い。
【0039】
なお、図1において、信号線Yと金属隔壁Wとを区別しやすくするために、金属隔壁Wの幅が信号線Yの幅よりも狭くなっているが、実際には図3に示すように、金属隔壁Wは信号線Yとほぼ同じ幅となっていてもよいし、金属隔壁Wを信号線Yより幅広としてもよい。また、図1では複数の金属隔壁Wがライン状に形成されて絶縁膜34の一部に重なっているが、金属隔壁Wが網目状に形成され、その網目状の金属隔壁Wが絶縁膜34の全体に重なっていても良い。
【0040】
金属隔壁Wの表面には、撥液性を有した撥液性導通層36が成膜されている。撥液性導通層36は、次の化学式(1)に示されたトリアジルトリチオールのメルカプト基(−SH)の水素原子(H)が還元離脱し、硫黄原子(S)が選択的に金属隔壁Wの表面に酸化吸着したものである。なお、或る液体に対して接触角が50°以上になる状態を撥液性といい、或る液体に対して接触角が40°以下になる状態を親液性という。
【0041】
【化1】

【0042】
撥液性導通層36は極めて薄い分子層構造である。つまり、撥液性導通層36は、トリアジルトリチオール分子が金属隔壁Wの表面に極薄い膜であるから、非常に低抵抗であるため、厚さ方向に電気的に導通することができる。トリアジルトリチオール分子は、選択的に金属と結合するが、ITO等の金属酸化物や、有機物には撥液性を示すほど被膜することはない。なお、撥液性を顕著にするためにトリアジルトリチオールに代えて、次の化学式(2)に示すようにトリアジルトリチオールのメルカプト基(−SH)がフッ化アルキルを含む撥液性官能基に置換された誘導体でも良い。撥液性官能基は化学式(2)に示したもの以外でも良い。なお、化学式(2)の化合物はメルカプト基の水素原子(H)が還元離脱し、硫黄原子(S)が金属隔壁Wの表面に酸化吸着することで、撥液性導通層36が形成される。
【0043】
【化2】

ただし、mは1以上の整数であり、好ましくは2であり、nは1以上の整数であり、好ましくは3である。
【0044】
サブピクセル電極20a上には有機EL層20bが積層されている。有機EL層20bは、有機化合物含有層を二層以上積層したものである。ここでは、有機EL層20bは、サブピクセル電極20aから順に正孔輸送層20d、発光層20eの順に積層した二層構造である。正孔輸送層は、導電性高分子であるPEDOT(ポリチオフェン)及びドーパントであるPSS(ポリスチレンスルホン酸)からなり、発光層は、ポリフルオレン系発光材料からなる。なお、有機EL層20bが、サブピクセル電極20aから順に正孔輸送層、発光層、電子輸送層となる三層構造であっても良いし、サブピクセル電極20aから順に発光層、電子輸送層となる二層構造であっても良いし、サブピクセル電極20aをカソードとし、サブピクセル電極20aから順に発光層、正孔輸送層としてもよいし、サブピクセル電極20aから順に電子輸送層、発光層としてもよいし、電荷輸送層と発光層との組合せは任意に設定できる。また、これらの層構造において適切な層間に電荷輸送を制限するインタレイヤ層が介在した積層構造であっても良いし、その他の積層構造であっても良い。
【0045】
有機EL層20bは、撥液性導通層36の形成後に湿式塗布法(例えば、インクジェット法)によって成膜される。この場合、正孔輸送層20dとなるPEDOT及びPSSを含有する有機化合物含有液をサブピクセル電極20aに塗布して成膜し、その後、発光層20eとなるポリフルオレン系発光材料を含有する有機化合物含有液を塗布するが、厚膜の金属隔壁Wが設けられているので、更には金属隔壁Wの表面に撥液性導通層36が形成されているので、隣り合うサブピクセル電極20aに塗布された有機化合物含有液が金属隔壁Wを越えて混ざり合うことを防止することができる。
【0046】
なお、サブピクセルPが赤の場合には有機EL層20b(特に、発光層20e)が赤色に発光し、サブピクセルPが緑の場合には有機EL層20bが緑色に発光し、サブピクセルPが青の場合には有機EL層20bが青色に発光するように、それぞれの発光層20eの材料を設定する。
【0047】
有機EL層20b上には、有機EL素子20のカソードである対向電極20cが成膜されている。対向電極20cは、全てのサブピクセルPに共通して形成された共通電極であり、べた一面に成膜されている。対向電極20cがべた一面に成膜されることで、対向電極20cが撥液性導通層36を挟んで金属隔壁Wを被覆している。撥液性導通層36は極めて薄い膜であるので対向電極20cと金属隔壁Wは撥液性導通層36を介して導通しており、低抵抗で張り巡らされた金属隔壁Wが出力する共通電位によって、対向電極20cの電位はどのサブピクセルにおいても均等になっている。
【0048】
対向電極20cは、サブピクセル電極20aよりも仕事関数の低い材料で形成されており、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金で形成されている。また、対向電極20cは、上記各種材料の層が積層された積層構造となっていても良いし、以上の各種材料の層に加えて金属層が堆積した積層構造となっていても良い。具体的には、対向電極20cは、ELディスプレイパネルをボトムエミッション構造の場合、有機EL層20b側に設けられた低仕事関数の高純度のバリウム層と、バリウム層を被覆するように設けられたアルミニウム層とからなる積層構造であるか、又は、有機EL層20b側に設けられたリチウム層と、バリウム層を被覆するように設けられたアルミニウム層とからなる積層構造であり、トップエミッション構造の場合、上述した仕事関数の低い単体又は合金を含む層と、上述したITO等の透明電極の積層構造でよい。また対向電極20cをアノードとする場合は、上述したITO等の透明電極で構成すればよい。
【0049】
なお、サブピクセル電極20a、有機EL層20b、対向電極20cの順に積層されたものが有機EL素子20である。
【0050】
次に、ELディスプレイパネルの製造方法について説明する。
【0051】
スパッタリング、蒸着といった気相成長法によってゲートレイヤーを絶縁基板2上にべた一面に成膜する。次に、そのゲートレイヤーに対してフォトリソグラフィー法・エッチング法を順に施すことによって、ゲート21g、ゲート22g、ゲート23g及び電極24aを形成するとともに、同時に複数の走査線X及び供給線Zをパターニングする。
【0052】
次に、気相成長法によってゲート絶縁膜31をべた一面に成膜する。
【0053】
次に、気相成長法・フォトリソグラフィー法・エッチング法を適宜何回か行うことによって、スイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22、駆動トランジスタ23の半導体膜、チャネル保護膜及び不純物半導体膜をパターニングする。
【0054】
次に、気相成長法によってドレインレイヤーをゲート絶縁膜31上にべた一面に成膜する。次に、そのドレインレイヤーに対してフォトリソグラフィー法・エッチング法を順に施すことによって、ドレイン21d,22d,23d、ソース21s,22s,23s及び電極24bを形成するとともに、同時に複数の信号線Yをパターニングする。
【0055】
次に、気相成長法によって保護絶縁膜32をべた一面に成膜する。次に、保護絶縁膜32全体に樹脂を塗布し、その樹脂を乾燥させることで、平坦化膜33をべた一面に成膜する。
【0056】
次に、コンタクトホール91を保護絶縁膜32及び平坦化膜33に形成し、メッキ法等によってコンタクトホール91の導電性パッド92を形成する。このとき、走査線X、信号線Y及び供給線Zの端子部を露出するようにコンタクトホールを形成してもよい。
【0057】
次に、気相成長法によって導電性膜を平坦化膜33の表面べた一面に成膜し、その導電性膜に対してフォトリソグラフィー法・エッチング法を順に施すことによって、サブピクセル電極20aをパターニングする。
【0058】
次に、気相成長法によって絶縁膜を成膜後、絶縁膜に対してフォトリソグラフィー法・エッチング法を順次行うことで、その絶縁膜を網目状の下地層となる絶縁膜34にパターニングする。これにより、サブピクセル電極20aが露出される。次に、水平方向に隣り合うサブピクセル電極20aの間であってその絶縁膜34の上に金属隔壁Wをメッキ法によって成長させる。
【0059】
次に、紫外線/オゾン洗浄法によってトランジスタアレイパネル50を洗浄する。
【0060】
次に、表面全体にトリアジンチオール化合物またはトリアジンチオール誘導体(化学式(1)又は化学式(2))の水溶液をトランジスタアレイパネル50に塗布することによって、或いは、トランジスタアレイパネル50をトリアジンチオール化合物またはトリアジンチオール誘導体の水溶液に浸漬することによって、金属隔壁Wの表面処理を行う。トリアジンチオール化合物またはトリアジンチオール誘導体の性質により、金属隔壁Wの表面にはトリアジンチオール水溶液が塗布されて、金属隔壁Wの表面には撥液性導通層36が形成されるが、サブピクセル電極20aのような金属酸化物や絶縁膜の表面には撥液性導通層がほとんど形成されない。
【0061】
ここで、化学式(2)のフッ素系トリアジンジチオール誘導体は、水に難溶又は不溶であるが、同モル量のNaOH又はKOHの水溶液に溶解し、フッ素系トリアジンジチオール誘導体水溶液を調製することができる。水溶液の濃度は、1×10-4〜1×10-2mol/Lの範囲とする。フッ素系トリアジンジチオール誘導体水溶液を用いる場合には、水溶液の温度を20〜30℃とし、浸漬時間を1〜10分とすることが好ましい。フッ素系トリアジンジチオール誘導体のフッ素は多い程、撥水性を示すが溶媒に溶解しにくくなるので多すぎないことが好ましい。
なお、化学式(1)、化学式(2)のトリアジンチオール水溶液の代わりに、6-ジメチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール−ナトリウム塩の水溶液を用いても良い。この水溶液の濃度を1×10-3mol/Lに調整し、その水溶液の温度を20〜30℃とし、浸漬時間を1〜30分とした。
また、トリアジンチオール水溶液として、6-ジドデシルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール−ナトリウム塩の水溶液を用いても良い。この水溶液の濃度を1×10-3mol/Lに調整し、その水溶液の温度を30〜50℃とし、浸漬時間を1〜30分とした。
なお、上述のトリチオールやジチオールに限らず、モノチオールとしてもよく、モノチオールの場合、フッ化アルキルを含む撥液性官能基を一つまたは二つ設けてもよい。
【0062】
化学式(1)、化学式(2)等のトリアジンチオール水溶液にトランジスタアレイパネル50を浸漬した後、そのトランジスタアレイパネル50を取り出し、アルコールによってそのトランジスタアレイパネル50をすすぐ。これにより、余分なトリアジンチオールを洗い流す。
【0063】
次に、そのトランジスタアレイパネル50を水で二次洗浄した後、不活性ガス(例えば、窒素ガス(N2))をトランジスタアレイパネル50に吹き付けることにより、トランジスタアレイパネル50を乾燥させる。
【0064】
次に、親水性の溶剤に対して溶解性を示し且つ疎水性の溶剤に対して難溶性又は不溶性である正孔注入材料(例えば導電性高分子であるPEDOT及びドーパントとなるPSS)を水に溶解した有機化合物含有液をサブピクセル電極20aに塗布する。塗布方法としては、インクジェット法(液滴吐出法)、その他の印刷方法を用いても良いし、ディップコート法、スピンコート法といったコーティング法を用いても良い。サブピクセル電極20aごとに独立して正孔輸送層20dを成膜するためには、インクジェット法等の印刷方法が好ましい。
【0065】
このように湿式塗布法により正孔輸送層20dを形成した場合、厚膜の金属隔壁Wが設けられているから、更には金属隔壁Wの表面に撥液性導通層36がコーティングされているから、隣り合うサブピクセル電極20aに塗布された有機化合物含有液が金属隔壁Wを越えて混ざり合わない。そのため、サブピクセル電極20aごとに独立して正孔輸送層20dを形成することができる。
【0066】
更に、撥液性導通層36の撥液性によって、サブピクセル電極20aに塗布された有機化合物含有液がサブピクセル電極20aの外縁部で厚くならないので、正孔輸送層20dを均一な膜厚で成膜することができる。
【0067】
正孔輸送層20dを形成した後、正孔輸送層20dを大気に曝露した状態で、ホットプレートを用いてトランジスタアレイパネル50を160〜180℃の温度で熱処理する。正孔輸送層20dが160〜180℃に加熱されると、発光特性及び寿命が向上するが、撥液性導通層36の撥液性が低下してしまう。
【0068】
次に、化学式(1)、化学式(2)等のトリアジンチオールの溶液を調整する。ここでは、溶媒を疎水性の芳香族系の有機溶剤(例えば、トルエン)とし、トリアジンチオール溶液の濃度を1×10-4〜1×10-2mol/Lとする。20〜30℃のトリアジンチオール溶液にトランジスタアレイパネル50を10〜60秒間浸漬することによって、金属隔壁Wの表面処理を再び行う。これにより、金属隔壁Wにトリアジンチオール溶液が塗布されて、撥液性導通層36の撥液性が向上する。トリアジンチオールの溶剤を有機溶剤とすることで、正孔輸送層20dがその溶液に溶けない。更に、トリアジンチオール化合物は、選択的に金属と結合するが、ITO等の金属酸化物や、有機物には撥液性を示すほど被膜することはないため、正孔輸送層20dの表面にはトリアジン化合物の膜がほとんど形成されず、正孔輸送層20dの表面の親液性が確保される。
【0069】
トリアジンチオール溶液にトランジスタアレイパネル50を浸漬した後、そのトランジスタアレイパネル50を取り出し、トルエンによってそのトランジスタアレイパネル50をすすぐ。これにより、余分なトリアジンチオールを洗い流す。
【0070】
次に、不活性ガス(例えば、窒素ガス)をトランジスタアレイパネル50に吹き付けることにより、トランジスタアレイパネル50を乾燥させる。
【0071】
次に、発光色が赤、緑、青のポリフルオレン系発光材料をそれぞれ疎水性の有機溶剤(例えば、テトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン)に溶かし、赤、緑、青それぞれの有機化合物含有液を準備する。そして、赤のサブピクセルPの正孔輸送層20d上には赤の有機化合物含有液を塗布し、緑のサブピクセルPの正孔輸送層20d上には緑の有機化合物含有液を塗布し、青のサブピクセルPの正孔輸送層20d上には青の有機化合物含有液を塗布する。これにより、正孔輸送層20d上に発光層20eを成膜する。塗布方法としてはインクジェット法(液滴吐出法)、その他の印刷方法を用いて、色ごとに塗り分けを行う。
【0072】
このように湿式塗布法により発光層20eを形成した場合、厚膜の金属隔壁Wが設けられているから、更には金属隔壁Wの表面に活性な撥液性導通層36がコーティングされているから、隣り合うサブピクセルPに塗布された有機化合物含有液が金属隔壁Wを越えて混ざり合わない。そのため、サブピクセルPごとに独立して正孔輸送層20dを形成することができる。
【0073】
次に、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素ガス雰囲気)下でホットプレートによってトランジスタアレイパネル50を乾燥させ、残留溶媒の除去を行う。なお、真空中でシーズヒータによる乾燥を行っても良い。
【0074】
次に、気相成長法により対向電極20cをべた一面に成膜する。具体的には、真空蒸着法によってCa又はBaの薄膜をべた一面に成膜し、その上にAlをべた一面に成膜する。
【0075】
次に、封止基板(例えば、メタルキャップ、ガラス基板)に紫外線硬化性又は熱硬化性の接着剤を塗布し、その接着剤によって封止基板を対向電極20cに接着する。これにより、ELディスプレイパネルが完成する。
【0076】
以上のように、本実施形態によれば、各サブピクセルPの間において凸設された金属隔壁Wがトランジスタ21〜23の電極とにメッキ法により成長したものであるから、金属隔壁Wを厚膜にすることができ、金属隔壁Wを低抵抗化することができる。そして、金属隔壁Wが対向電極20cに導通しているから、対向電極20c自体が薄膜化してより高抵抗になっても対向電極20cの電圧を面内で一様にすることができる。従って、サブピクセルPごとの発光強度のバラツキを防止することができ、面内の発光強度を一様することができる。例えば、全てのサブピクセル電極20aに同じ電位を印加した場合でも、どのサブピクセルPにおいても有機EL層20bの発光強度もほぼ等しくなる。
【0077】
また、正孔輸送層20d、発光層20eのそれぞれの形成前に、トリアジンチオール溶液によって金属隔壁Wの表面を撥液性にしたため、正孔輸送層20d、発光層20eの塗り分けを容易に行うことができる。特に、正孔輸送層20dの形成後に、トルエンを溶媒としたトリアジンチオール溶液を用いたので、正孔輸送層20dを溶解することなく、金属隔壁Wの撥液処理が可能となる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
【0079】
例えば、正孔輸送層20dと発光層20eとの間に疎水性の溶剤に対して溶解性を示し且つ親水性の溶剤に対して難溶性又は不溶性である材料で構成されるインタレイヤ層を形成する場合には、有機EL層20bの形成方法は次のような順序になる。上述の場合と同様に、金属隔壁Wの表面に撥液性導通層36を形成してから正孔輸送層20dを形成した後、トルエンを溶媒としたトリアジンチオール溶液にトランジスタアレイパネル50を浸漬する。その後、湿式塗布法(例えば、インクジェット法、スピンコート法、ディップコート法、印刷法)によって正孔輸送層20dの上にインタレイヤ層を形成する。その後、トランジスタアレイパネル50を熱処理するが、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素ガス雰囲気)において熱処理を行えば、金属隔壁Wの表面の撥液性が低下しない。その後、上述した場合と同様に、発光層20eを形成する。
【0080】
また上記実施形態では、第一層となる電荷輸送層として、親水性の溶剤に対して溶解性があり且つ疎水性の溶剤に対して溶解性が低い材料を用い、第二層となる電荷輸送層として、親水性の溶剤に対して溶解性が低く且つ疎水性の溶剤に対して溶解性がある材料を用いたが、第一層となる電荷輸送層として、親水性の溶剤に対して溶解性が低く且つ疎水性の溶剤に対して溶解性がある材料を用い、第二層となる電荷輸送層として、親水性の溶剤に対して溶解性があり且つ疎水性の溶剤に対して溶解性が低い材料を用いてもよい。
そして、金属隔壁Wの表面にトリアジンチオール化合物またはトリアジンチオール誘導体による第一撥液処理を行ってから、第一層となる電荷輸送層の疎水性溶液をサブピクセル電極20a上に付して乾燥させて第一層を成膜後、第一層に対して溶解性の低い親水性溶剤でトリアジンチオール化合物またはトリアジンチオール誘導体を溶解したトリアジンチオール溶液を金属隔壁Wの表面に付して第二撥液処理を行えば、このトリアジンチオール溶液によって第一層が溶解されることがほとんどない。さらに第一層上に成膜される第二層は、親水性溶剤に第二層となる材料が溶解された溶液によって成膜されれば、この第二層溶液によって第一層が溶解されることはない。
【実施例1】
【0081】
以下、実施例を挙げることにより本発明について更に具体的に説明する。
銅を成膜した基板をトリアジンチオール水溶液に浸漬した。トリアジンチオール水溶液としては、化学式(2)に示したフッ素系トリアジンジチオール誘導体(mは2、nは3)とNaOHをそれぞれ2.0×10-3mol/Lの濃度にて一緒に純水に溶解させたものを用いた。トリアジンチオール水溶液の温度を23℃とし、浸漬時間を3分とした。その後、その基板をエタノールにて洗浄し、更に純水で洗浄し、その基板に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。その後、銅の膜に対する純水やメシチレンの接触角を測定した。その結果を図4に示す。図4において、「純水接触角初期値」は、上述の通り、基板を一度トリアジンチオール水溶液に浸漬して撥液性導通層を被膜してから常温で測定した純水の接触角であり、「メシチレン接触角初期値」は、基板を一度トリアジンチオール水溶液に浸漬して撥液性導通層を被膜してから常温で測定したメシチレンの接触角である。
【0082】
その後、その基板を熱処理したが、その加熱時間を15分とした。その後、常温での銅の膜に対する水やメシチレンの接触角を測定した。その結果を図4及び表1に示す。図4、表1の「純水接触角」及び「メシチレン接触角」から明らかなように、熱処理をした後、基板における純水やメシチレンの接触角が低下することがわかる。特に、熱処理温度が高くなるにつれて、接触率が低下しやすくなる。
【0083】
その後、溶媒であるトルエンにフッ素系トリアジンジチオール誘導体を溶かし、濃度2.0×10-3mol/Lのフッ素系トリアジンジチオール誘導体溶液を調製した。熱処理後の基板をフッ素系トリアジンジチオール誘導体溶液に浸漬した。ここで、フッ素系トリアジンジチオール誘導体溶液の温度を23℃とし、浸漬時間を30秒とした。その後、銅の膜に対するメシチレンの接触角を測定した。その結果を図4及び表1に示す。図4及び表1において、「再処理後」が、上述のような熱処理の後、再びフッ素系トリアジンジチオール誘導体溶液に浸漬して乾燥した基板の常温でのメシチレンの接触角である。なお、図4及び表1中の温度は、一度目のトリアジンチオール誘導体水溶液に浸漬した後の乾燥温度であって、二度目の浸漬後は高温乾燥していない。図4、表1から明らかなように、再び、フッ素系トリアジンジチオール誘導体溶液に浸漬して撥液性導通層を被膜した基板の常温での接触角が向上し、撥液性が向上したことがわかる。
【0084】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】ディスプレイパネルの概略平面図である。
【図2】サブピクセルの等価回路図である。
【図3】図1の切断線III−IIIに沿った面の矢視断面図である。
【図4】純水及びメシチレンの接触角と乾燥温度との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0086】
20a サブピクセル電極(電極)
20d 正孔輸送層(有機化合物層)
20e 発光層(有機化合物層)
36 撥液性導通層
50 トランジスタアレイパネル(基板)
W 金属隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル上に配列された電極上に有機化合物層を積層する積層方法において、
前記電極の間に配置された金属層に第一撥液性溶液を塗布することによって前記金属層の表面処理を行い、
前記電極に第一有機化合物含有液を塗布することによって第一有機化合物層を成膜してから熱処理し、
第二撥液性溶液を前記金属層に塗布することによって前記金属層の表面処理を再び行い、
前記第一有機化合物層上にさらに第二有機化合物含有液を塗布することによって第二有機化合物層を成膜することを特徴とする有機化合物層の積層方法。
【請求項2】
前記第一撥液性溶液が、トリアジンチオール化合物またはトリアジンチオール誘導体をアルカリ金属の水酸化物とともに溶かした水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物層の積層方法。
【請求項3】
前記第一有機化合物含有液が、前記第一有機化合物層となる材料を含む水溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機化合物層の積層方法。
【請求項4】
前記第二撥液性溶液が、トリアジンチオール化合物またはトリアジンチオール誘導体を疎水性の溶剤に溶解した溶液であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の有機化合物層の積層方法。
【請求項5】
前記第二撥液性溶液が、前記第一有機化合物層に対し溶解性の低い溶剤にトリアジンチオール化合物またはトリアジンチオール誘導体を溶解した溶液であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の有機化合物層の積層方法。
【請求項6】
前記第二有機化合物含有液が、前記第一有機化合物層に対し溶解性の低い溶剤に第二有機化合物層となる材料を溶解した溶液であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の有機化合物層の積層方法。
【請求項7】
前記第一有機化合物層は、親水性の溶剤に対して溶解性があり、疎水性の溶剤に対して溶解性が低いことを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の有機化合物層の積層方法。
【請求項8】
前記第一撥液性溶液及び前記第二撥液性溶液の少なくとも一方は、フッ素を含んだ置換基を有するトリアジンジチオール誘導体を含むことを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の有機化合物層の積層方法。
【請求項9】
前記金属層の金属として銅、銀、アルミ又はそれらを主成分とする合金を用いることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の有機化合物層の積層方法。
【請求項10】
前記電極が金属酸化物であることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の有機化合物層の積層方法。
【請求項11】
前記金属層の表面処理を再び行った後、前記第一有機化合物層上にインタレイヤ層を湿式塗布法により成膜し、そのインタレイヤ層を不活性ガス雰囲気下において熱処理し、そのインタレイヤ層上に前記第二有機化合物含有液を塗布することを特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載の有機化合物層の積層方法。
【請求項12】
パネル上に配列された電極の間に配置された金属層に第一撥液性溶液を塗布することによって前記金属層の表面処理を行い、
前記電極に第一有機化合物含有液を塗布することによって第一有機化合物層を成膜してから熱処理し、
第二撥液性溶液を前記金属層に塗布することによって前記金属層の表面処理を再び行い、
前記第一有機化合物層上にさらに第二有機化合物含有液を塗布して第二有機化合物層を成膜した後、
前記第二有機化合物層上に対向電極を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−252876(P2006−252876A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65761(P2005−65761)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】