説明

有機固体レーザ用発光材料および有機固体レーザ

【課題】ASE発振閾値が低く、かつASEゲインが高い上に、青色のレーザ光を発生させることができる有機固体レーザ用発光材料を提供する。
【解決手段】本発明の有機固体レーザ用発光材料は一般式(1)で表されるフルオレン化合物からなる。(式中、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖状,分岐状若しくは環状のアルキル基、または炭素数6〜40のアリール基を表し、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。Q,Qは各々独立して置換基を有してもよい炭素数6〜40のアリール基または炭素数4〜40のヘテロアリール基を表す。)
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機固体レーザ用の発光材料に関するものである。また、発光層にフルオレン化合物を含有することを特徴とする有機固体レーザに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速、大容量の光情報通信技術のキィーデバイスの一つとしてレーザがある。例えば、光情報通信用レーザとして、現在は無機半導体レーザが使用されているが、レーザ波長が限られていること及び複雑な製造プロセスによる高価格が課題とされている。近年、レーザの活性層、光導波路及び光共振器等の材料に有機固体化合物を用いることにより、無機半導体レーザに比較して、多くの波長のレーザを発光できること、並びに、単純でかつ少ない工程で製造できること等により有機固体レーザが注目されている。有機固体レーザは、電圧印加により、陽極から発光層へ正孔が注入され、また陰極から電子が注入されることによって、発光層内で正孔及び電子が再結合して発光すると共に、この光がレーザ装置内を導波することによって増幅され、レーザ光として放出されるものである。近年、有機固体レーザの開発が進んでいるが、高電流密度の達成(数kA/cm)、低閾値を有する有機レーザ発光材料の探索、電流励起可能な構造の構築等、今尚克服すべき課題も多い。
【0003】
これまでに、有機レーザ発光材料として多数の化合物が提案されている。例えば、特許文献1には、有機レーザ発光材料として、パラフェニレン化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン化合物、芳香族ジメチリディン化合物、スチリルアミン化合物、フェノラート配位子と置換キノリラート配位子が結合したアルミニウム錯体等が記載されている。
また、特許文献2には、ホウ素含有スチルベン誘導体が記載され、特許文献3には、チオフェンとフェニレンまたはフェニル基とが直接結合した構造を有するコオリゴマー化合物が例示されている。
非特許文献1には、ASE(増幅自然放出光=mplified pontaneous mission)発振閾値が1μJ/cm以下のBSBCz(4,4’−ビス[(N−カルバゾール)スチリル]ビフェニル、下記化学式(a))やBSB1(1,4−ジメトキシ−2,5−ビス[p−{N−フェニル−N−(m−トリル)アミノ}スチリル]ベンゼン、下記化学式(b))が開示されている。これらの材料では、各々青色と緑色の発光を示し、低いASE発振閾値と高いASEゲイン(ASE発光強度と励起強度の比)を示すと報告されている。
【0004】
【化1】

【0005】
しかしながら、これらの発光材料を用いても、ASE発振閾値が充分に低く、かつASEゲインが高い上に、青色のレーザ光を発生させることができる有機固体レーザを得ることができなかった。
【特許文献1】特開2000−156536号公報
【特許文献2】特開2005−281185号公報
【特許文献3】特開2002−275459号公報
【非特許文献1】Applied Physics Letters 86,071110−1(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ASE発振閾値が充分に低く、かつASEゲインが高い上に、青色のレーザ光を発生させることができる有機固体レーザ用発光材料および有機固体レーザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するために、4,4’−ビス(N−カルバゾ−ル)ビフェニル(CBP)にレーザ色素をドープした薄膜を用い、光励起下でのASE特性を鋭意検討した結果、一般式(1)で表されるフルオレン化合物をレーザ色素に用いることで、低いASE発振閾値を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の有機固体レーザ用発光材料は、一般式(1)で表されるフルオレン化合物からなることを特徴とする。
本発明の有機固体レーザは、基板上に順次、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極を有する有機固体レーザにおいて、発光層が一般式(1)で表される上記フルオレン化合物を含むことを特徴とする。
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖状,分岐状若しくは環状のアルキル基、または炭素数6〜40のアリール基を表し、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。Q,Qは各々独立して置換基を有してもよい炭素数6〜40のアリール基または炭素数4〜40のヘテロアリール基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の有機固体レーザ用発光材料は、上記一般式(1)で表されるフルオレン化合物からなり、これを発光層に含むものであり、従来の青色レーザを発振するスチルベン誘導体を用いたものより、低いASE発振閾値かつ高いASEゲインを示す。
本発明の有機固体レーザは、従来の青色レーザを発振するスチルベン誘導体を用いたものより、低いASE発振閾値かつ高いASEゲインを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の有機固体レーザ用発光材料について説明する。
本発明の有機固体レーザ用発光材料は、レーザ色素である上記一般式(1)で表されるフルオレン化合物からなる。
【0012】
一般式(1)で表されるフルオレン化合物において、Q,Qは各々独立して置換基を有してもよい炭素数6〜40のアリール基または炭素数4〜40のヘテロアリール基を表す。
置換基を有してもよい炭素数6〜40のアリール基としては、具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−アントリル基、9−アントリル基、2−フルオレニル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ピセニル基、またはこれらアリール基に、ハロゲン原子、直鎖状,分岐状若しくは環状のアルキル基、直鎖状,分岐状若しくは環状のアルコキシ基、アミノ基、アリール基、ヘテロアリール基が置換されたものが挙げられる。
また、置換基を有してもよい炭素数4〜40のヘテロアリール基としては、具体的には、4−キノリル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、3−フリル基、2−フリル基、3−チエニル基、2−チエニル基、2,2’−ビチオフェン−5−イル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基、またはこれらヘテロアリール基に、ハロゲン原子、直鎖状,分岐状若しくは環状のアルキル基、直鎖状,分岐状若しくは環状のアルコキシ基、アミノ基、アリール基、ヘテロアリール基が置換されたものが挙げられる。
【0013】
ハロゲン原子としては、弗素、塩素、臭素またはヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜18の直鎖状,分岐状若しくは環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフロロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、2−シクロペンテン−1−イル基等を例示することができる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜18の直鎖状,分岐状若しくは環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフロロメトキシ基等を例示することができる。
アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、(ナフチル)フェニルアミノ基、ジ(p−トリル)アミノ基、カルバゾイル基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基、アントリル基、9,9−ジアルキル−フルオレン−2−イル基等が挙げられる。
ヘテロアリール基としては、4−キノリル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、3−フリル基、2−フリル基、3−チエニル基、2−チエニル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基等が挙げられる。
【0014】
一般式(1)において、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖状,分岐状若しくは環状のアルキル基、または炭素数6〜40のアリール基を表し、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。
ハロゲン原子としては、弗素、塩素、臭素またはヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜18の直鎖状,分岐状若しくは環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の前記したアルキル基を例示することができる。
アリール基としては、置換基を有してもよい炭素数6〜40のアリール基であり、具体的には、フェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、1−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基、9,9−ジアルキル−フルオレン−2−イル基等の前記したアリール基を例示することができる。
また、RとRは互いに結合して、1,4−テトラメチレン基、1,5−ペンタメチレン基、1,6−ヘキサメチレン基、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル基等の2価の置換基であってもよい。
【0015】
一般式(1)において、好ましい具体例としては、Q,Qが各々独立して下記一般式(2)で表される基であるフルオレン化合物である。
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、X,Xは一価または二価のベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ターフェニルまたはフルオレンから選ばれるいずれかの基であり、pは0〜2の整数である。)
【0018】
また、より好ましい具体例としては、上記一般式(2)におけるXがアミノ基を有する置換基である下記一般式(3)で表されるフルオレン化合物である。
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖状,分岐状若しくは環状のアルキル基、または炭素数6〜40のアリール基を表し、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。Ar〜Arは各々独立して置換若しくは無置換の炭素数6〜40のアリール基または炭素数4〜40のヘテロアリール基を表し、ArとAr、またはArとArは結合している窒素原子と共に含窒素複素環を形成してもよい。Mは置換基を有してもよい炭素数6〜40のアリーレン基を表す。)
【0021】
置換若しくは無置換の炭素数6〜40のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−アントリル基、9−アントリル基、2−フルオレニル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ピセニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−sec−ブチルフェニル基、2−sec−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−イソペンチルフェニル基、2−ネオペンチルフェニル基、4−tert−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−(2’−エチルブチル)フェニル基、4−n−ヘプチルフェニル基、4−n−オクチルフェニル基、4−(2’−エチルヘキシル)フェニル基、4−tert−オクチルフェニル基、4−n−デシルフェニル基、4−n−ドデシルフェニル基、4−n−テトラデシルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−(4’−メチルシクロヘキシル)フェニル基、4−(4’−tert−ブチルシクロヘキシル)フェニル基、3−シクロヘキシルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、4−エチル−1−ナフチル基、6−n−ブチル−2−ナフチル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,5−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジイソブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4,6−ジ−tert−ブチル−2−メチルフェニル基、5−tert−ブチル−2−メチルフェニル基、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル基、9−メチル−2−フルオレニル基、9−エチル−2−フルオレニル基、9−n−ヘキシル−2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、9,9−ジエチル−2−フルオレニル基、9,9−ジ−n−プロピル−2−フルオレニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、3−n−プロポキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、4−イソブトキシフェニル基、2−sec−ブトキシフェニル基、4−n−ペンチルオキシフェニル基、4−イソペンチルオキシフェニル基、2−イソペンチルオキシフェニル基、4−ネオペンチルオキシフェニル基、2−ネオペンチルオキシフェニル基、4−n−ヘキシルオキシフェニル基、2−(2’−エチルブチル)オキシフェニル基、4−n−オクチルオキシフェニル基、4−n−デシルオキシフェニル基、4−n−ドデシルオキシフェニル基、4−n−テトラデシルオキシフェニル基、4−シクロヘキシルオキシフェニル基、2−シクロヘキシルオキシフェニル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、4−n−ブトキシ−1−ナフチル基、5−エトキシ−1−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、6−エトキシ−2−ナフチル基、6−n−ブトキシ−2−ナフチル基、6−n−ヘキシルオキシ−2−ナフチル基、7−メトキシ−2−ナフチル基、7−n−ブトキシ−2−ナフチル基、2−メチル−4−メトキシフェニル基、2−メチル−5−メトキシフェニル基、3−メチル−4−メトキシフェニル基、3−メチル−5−メトキシフェニル基、3−エチル−5−メトキシフェニル基、2−メトキシ−4−メチルフェニル基、3−メトキシ−4−メチルフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3,5−ジエトキシフェニル基、3,5−ジ−n−ブトキシフェニル基、2−メトキシ−4−エトキシフェニル基、2−メトキシ−6−エトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、4−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、2−ビフェニリル基、4−(4’−メチルフェニル)フェニル基、4−(3’−メチルフェニル)フェニル基、4−(4’−メトキシフェニル)フェニル基、4−(4’−n−ブトキシフェニル)フェニル基、2−(2’−メトキシフェニル)フェニル基、4−(4’−クロロフェニル)フェニル基、3−メチル−4−フェニルフェニル基、3−メトキシ−4−フェニルフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、10−フェニルアントリル基、10−(3,5−ジフェニルフェニル)−9−アントリル基、9−フェニル−2−フルオレニル基、4−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−クロロ−1−ナフチル基、4−クロロ−2−ナフチル基、6−ブロモ−2−ナフチル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2,5−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4−ジクロロ−1−ナフチル基、1,6−ジクロロ−2−ナフチル基、2−フルオロ−4−メチルフェニル基、2−フルオロ−5−メチルフェニル基、3−フルオロ−2−メチルフェニル基、3−フルオロ−4−メチルフェニル基、2−メチル−4−フルオロフェニル基、2−メチル−5−フルオロフェニル基、3−メチル−4−フルオロフェニル基、2−クロロ−4−メチルフェニル基、2−クロロ−5−メチルフェニル基、2−クロロ−6−メチルフェニル基、2−メチル−3−クロロフェニル基、2−メチル−4−クロロフェニル基、3−クロロ−4−メチルフェニル基、3−メチル−4−クロロフェニル基、2−クロロ−4,6−ジメチルフェニル基、2−メトキシ−4−フルオロフェニル基、2−フルオロ−4−メトキシフェニル基、2−フルオロ−4−エトキシフェニル基、2−フルオロ−6−メトキシフェニル基、3−フルオロ−4−エトキシフェニル基、3−クロロ−4−メトキシフェニル基、2−メトキシ−5−クロロフェニル基、3−メトキシ−6−クロロフェニル基、5−クロロ−2,4−ジメトキシフェニル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
置換若しくは無置換の炭素数4〜40のヘテロアリール基としては、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のうち少なくとも一つのヘテロ原子を含有する芳香族基であり、例えば、4−キノリル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、3−フリル基、2−フリル基、3−チエニル基、2−チエニル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
一般式(3)で表されるフルオレン化合物において、ArとAr、またはArとArは結合している窒素原子と共に含窒素複素環を形成してもよく、置換若しくは無置換の−N−カルバゾリイル基、−N−フェノキサジニイル基、または−N−フェノチアジニイル基を形成していてもよい。
含窒素複素環は、置換基として例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基若しくはアルコキシ基、または炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、単置換または多置換されていてもよい。これらの中で、好ましくは、無置換の、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基若しくはアルコキシ基、または炭素数6〜10のアリール基で単置換若しくは多置換された−N−カルバゾリイル基、−N−フェノキサジニイル基、または−N−フェノチアジニイル基であり、より好ましくは、無置換の−N−カルバゾリイル基、−N−フェノキサジニイル基、または−N−フェノチアジニイル基である。
【0023】
置換された−N−カルバゾリイル基、−N−フェノキサジニイル基、または−N−フェノチアジニイル基の具体例としては、例えば、2−メチル−N−カルバゾリイル基、3−メチル−N−カルバゾリイル基、4−メチル−N−カルバゾリイル基、3−n−ブチル−N−カルバゾリイル基、3−n−ヘキシル−N−カルバゾリイル基、3−n−オクチル−N−カルバゾリイル基、3−n−デシル−N−カルバゾリイル基、3,6−ジメチル−N−カルバゾリイル基、2−メトキシ−N−カルバゾリイル基、3−メトキシ−N−カルバゾリイル基、3−エトキシ−N−カルバゾリイル基、3−イソプロポキシ−N−カルバゾリイル基、3−n−ブトキシ−N−カルバゾリイル基、3−n−オクチルオキシ−N−カルバゾリイル基、3−n−デシルオキシ−N−カルバゾリイル基、3−フェニル−N−カルバゾリイル基、3−(4’−メチルフェニル)−N−カルバゾリイル基、3−(4’−tert−ブチルフェニル)−N−カルバゾリイル基、3−クロロ−N−カルバゾリイル基、2−メチル−N−フェノチアジニイル基等を挙げることができる。
【0024】
一般式(3)で示されるフルオレン化合物において、Mは置換基を有してもよい炭素数6〜40のアリーレン基を表す。アリーレン基としては、置換基を有してもよいフェニレン基、1,4−ナフタレン−ジイル基、4,4’−ビフェニル−ジイル基、4,4’−ターフェニル−ジイル基、2,6−ナフタレン−ジイル基、9,10−アントラセン−ジイル基、2,7−9,9’−ジメチルフルオレン−ジイル基、2,7−9,9’−ジフェニルフルオレン−ジイル基、またはこれらの基が単結合で連結した基等が挙げられる。置換基としては、上記R,Rにおいて例示された置換基を挙げることができる。
【0025】
特に好ましい具体例としては、下記一般式(4)で表されるフルオレン化合物である。
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖状,分岐状若しくは環状のアルキル基、または炭素数6〜40のアリール基を表し、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。Mは各々独立して置換基を有してもよい炭素数6〜40のアリーレン基を表す。)
【0028】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれら化合物に限定されるものではない。
【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
上記一般式(1)で表されるフルオレン化合物は、例えば、(ヘテロ)アリールハライド若しくは(ヘテロ)アリールスルホネートと(ヘテロ)アリールボロン酸を用いたSuzuki−Miyaura反応、あるいは(ヘテロ)アリールハライドと(ヘテロ)アリールアミンを用いたBuchwald−Hartwig反応等の公知の方法により製造可能である。
【0032】
次に、本発明の有機固体レーザについて説明する。
本発明の有機固体レーザは、基板上に順次、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極を有するものである。
【0033】
本発明の有機固体レーザにおける発光層は、上記フルオレン化合物を含む。また、発光層は、カルバゾール誘導体等のホスト材料を含むことが好ましい。ホスト材料となるカルバゾール誘導体としては、例えば、CBP(4,4’−ビス(N−カルバゾ−ル)ビフェニル)、mCP(m−ビス(N−カルバゾール)ベンゼン)または特開2005−239703号公報、特開2006−69964号公報に記載の化合物を例示することができるが、これら以外の材料であってもよい。
【0034】
発光層の膜厚は特に制限はなく、適宜選択できるが、通常は5〜500nmの範囲内とすることが好ましい。
【0035】
本発明において、陽極は、仕事関数の大きい(4eV以上)金属またはその合金、導電性化合物およびこれらの混合物等の陽極用電極材料により形成することが好ましい。陽極用電極材料の具体例としては、Au等の金属、CuI、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO、ZnO等の導電性材料が挙げられる。
陽極の厚さは、通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
陽極の製膜方法としては、蒸着、スパッタリングなど従来公知の方法を用いることができる。
【0036】
本発明において、陰極は、発光層または電子輸送層に電子を注入する作用を有する。陰極は、仕事関数の小さい(4eV以下)金属またはその合金、導電性化合物およびこれらの混合物等の陰極用電極材料により形成することが好ましい。陰極用電極材料の具体例としては、Na、Na・K合金、Mg、Li、Mg/Cu混合物、Mg・Ag合金、Al・Li合金、Al/Al混合物、In、希土類金属等が挙げられる。
陰極の厚さは、通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
陰極の製膜方法としては、蒸着、スパッタリングなど従来公知の方法を用いることができる。
【0037】
上記正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料の例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリビニルカルバゾール誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマーなどが挙げられる。
【0038】
前記電子輸送層に用いる電子輸送材料の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。また、特開昭59−194393号公報に記載されている一連の電子伝達性化合物も電子輸送材料として用いることができる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛等、およびこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他にメタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも電子輸送材料として用いることができる。また、ジスチリルピラジン誘導体も電子輸送材料として用いることができ、さらにn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。上記の電子輸送材料からなる電子輸送層には、アルカリ金属あるいはアルカリ土金属、およびアルカリ金属あるいはアルカリ土金属の弗化物、塩化物、ヨウ化物などの化合物からなる電子供与性ドナーを0.1〜30モル%ドーピングすることが好ましい。
【0039】
上記正孔輸送層の厚みは、100〜2000nmであることが好ましく、200〜500nmであることがより好ましい。また、上記電子輸送層の厚みは、100〜2000nmであることが好ましく、200〜500nmであることがより好ましい。正孔輸送層の厚み、電子輸送層の厚みがかかる範囲内であれば、正孔輸送層と発光層との接触面において、発光層で発光した光を全反射させレーザ光を得ることができる。
【0040】
本発明の有機固体レーザにおいては、より効率的に増幅されたレーザ光を得るため、陽極の一方の面に共振器が設けられていることが好ましい。
【実施例】
【0041】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
なお、有機固体レーザ用発光材料の評価に当たっては、光励起による方法を用いた。有機固体レーザ用発光材料は、電流励起のみならず、光励起によってもレーザ発振を生じさせることができる。即ち、透明基板側または陰極側から、ポンピングレーザー光を入射することにより、発光層内で光が増幅され、端面からレーザ光を取出すことができる。
【0042】
実施例1
前記化合物3をレーザ色素としてCBPホスト中に6wt%の濃度で共蒸着法によってガラス基板上に100nm成膜した。発光スペクトル及びASE特性の測定は、窒素雰囲気下において、窒素ガスレーザ(337nm,500ps,20Hz)を励起光源として用いて行った。図1に6%−化合物3:CBP共蒸着薄膜の発光強度の励起光強度依存性と発光スペクトルの分子構造を示す。励起光強度の増加に伴い、スペクトルの狭帯域化と発光強度の急激な増加が観測され、ASE発振波長と閾値は、λ=451nm、Eth=0.18±0.05μJ/cmであった。このASE発振閾値は低分子系有機固体薄膜におけるASE発振閾値としてこれまで報告されている値としては、最も低い値である。これは6%−化合物3:CBP共蒸着薄膜がkr=1.29(±0.1)×10−1と非常に大きな放射速度定数を有していること、そして誘導放出断面積が発振波長においてσ=3.2×10−16cmと大きいためである。さらに、この共蒸着薄膜におけるネットゲインと損失係数の測定を行った結果、それぞれg=20±3cm−1,α=5.8cm−1であり、この薄膜が高いゲインと優れた導波路を形成していることが分かった。
【0043】
比較例1
BSBCzをレーザ色素として、実施例1と同様な実験を行った。その結果、ASE発振閾値は、0.32μJ/cmであった。
【0044】
比較例2
化合物Aをレーザ色素として、実施例1と同様な実験を行った。その結果、ASE発振閾値は、1.5±0.1μJ/cmであった。
【0045】
【化8】

【0046】
実施例2
化合物3を前記化合物16に代えて、実施例1に準じて行ったところ、ASE発振波長と閾値は、λ=420nm、Eth=0.14±0.05μJ/cmであった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】6%−化合物3:CBP共蒸着薄膜の発光強度の励起光強度依存性と発光スペクトルの分子構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるフルオレン化合物からなることを特徴とする有機固体レーザ用発光材料。
【化1】

(式中、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖状,分岐状若しくは環状のアルキル基、または炭素数6〜40のアリール基を表し、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。Q,Qは各々独立して置換基を有してもよい炭素数6〜40のアリール基または炭素数4〜40のヘテロアリール基を表す。)
【請求項2】
一般式(1)において、Q,Qが各々独立して下記一般式(2)で表される基であることを特徴とする請求項1に記載の有機固体レーザ用発光材料。
【化2】

(式中、X,Xは一価または二価のベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ターフェニルまたはフルオレンから選ばれるいずれかの基であり、pは0〜2の整数である。)
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物は、Xがアミノ基を有する置換基である下記一般式(3)で表されるフルオレン化合物であることを特徴とする請求項2に記載の有機固体レーザ用発光材料。
【化3】

(式中、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、または炭素数6〜40のアリール基を表し、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。Ar〜Arは各々独立して置換若しくは無置換の炭素数6〜40のアリール基または炭素数4〜40のヘテロアリール基を表し、ArとAr、またはArとArは結合している窒素原子と共に含窒素複素環を形成してもよい。Mは置換基を有してもよい炭素数6〜40のアリーレン基を表す。)
【請求項4】
一般式(1)で表されるフルオレン化合物は、下記一般式(4)で表されるフルオレン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機固体レーザ用発光材料。
【化4】

(式中、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖状,分岐状若しくは環状のアルキル基、または炭素数6〜40のアリール基を表し、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。Mは各々独立して置換基を有してもよい炭素数6〜40のアリーレン基を表す。)
【請求項5】
,Rが各々独立して炭素数1〜6の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、アントリル基またはフルオレニル基から選ばれる置換基であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機固体レーザ用発光材料。
【請求項6】
基板上に順次、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極を有する有機固体レーザにおいて、
発光層が、請求項1乃至5のいずれかに記載の有機固体レーザ用発光材料を含むことを特徴とする有機固体レーザ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−50531(P2008−50531A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231040(P2006−231040)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】