説明

有機圧電材料、超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置

【課題】圧電特性及び取扱性に優れた有機圧電材料、および、それらを用いた超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供する。
【解決手段】一般式(UR1)で表される部分構造を有する樹脂組成物を含有する有機圧電材料であって、樹脂組成物のガラス転移温度が100〜180℃である。


R1及びR2は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、nは1〜3の整数を表し、R3、R4、R7及びR8は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。有機圧電材料の電気機械結合定数は、0.20以上であり、電極を形成して受信用超音波振動子に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電特性および取扱性に優れた有機圧電材料、それを用いた超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探触子は、非破壊検査装置の他、医療用の超音波診断装置として急速に利用が高まっている。例えば超音波内視鏡等の探触子は、超音波トランスデューサから高周波の音響振動を被検体内に放射し、反射して戻ってきた超音波を超音波トランスデューサで受信し、わずかな界面特性の違いによって異なる情報を処理することにより、生体内部の断面像を得るものである。
【0003】
近年では、この超音波探触子から被検体内へ送信された超音波の周波数(基本周波数)成分ではなく、その高調波周波数成分によって被検体内の内部状態の画像を形成するハーモニックイメージング(Harmonic Imaging)技術が研究、開発されている。このハーモニックイメージング技術は、(1)基本周波数成分のレベルに比較してサイドローブレベルが小さく、S/N比(signal to noise ratio)が良くなってコントラスト分解能が向上すること、(2)周波数が高くなることによってビーム幅が細くなって横方向分解能が向上すること、(3)近距離では音圧が小さくて音圧の変動が少ないために多重反射が抑制されること、および、(4)焦点以遠の減衰が基本波並みであり高周波を基本波とする場合に較べて深速度を大きく取れることなどの様々な利点を有しており、高精度な診断を可能としている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
このような超音波探触子には、超音波を発生させる圧電体が使われている。従来、圧電体としては、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbOなどの単結晶、ZnO、AlNなどの薄膜、Pb(Zr,Ti)O系などの焼結体を分極処理した、いわゆる無機材質の圧電セラミックスが広く利用されている。
【0005】
これに対して、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリ尿素のような有機系高分子物質を利用した有機圧電体(「圧電高分子材料」、「ポリマー圧電物質」ともいう。)も開発されている(例えば特許文献2参照)。この有機圧電体は、セラミックス圧電体と比較して、可撓性が大きく、薄膜化、大面積化、長尺化が容易で任意の形状、形態のものを作ることができる、誘電率εが小さく、静水圧電圧出力係数(g定数)は極めて大となるので感度特性に優れる、さらに低密度、低弾性であるため、効率のよいエネルギー伝播が可能である、等の特性を有する。
【0006】
しかしながら、ポリ尿素の場合、ウレア基の水素結合が強固であるため、溶解性は非常に悪く、また剛直性が高いため、取り扱い性が極端に悪く、有機圧電膜を製造するにはその製造方法が、蒸着重合法に限られる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−276478号公報
【特許文献2】特開平6−216422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、圧電特性及び取扱性に優れた有機圧電材料を提供することである。更に、それらを用いた超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0010】
1.下記一般式(UR1)で表される部分構造を有する樹脂組成物を含有する有機圧電材料であって、当該樹脂組成物のガラス転移温度が100〜180℃であることを特徴とする有機圧電材料。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R及びRは各々独立に水素原子又は置換基を表し、nは1〜3の整数を表す。R、R、R及びRは各々独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。R及びRは各々独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Lはアルキレン基又はアリーレン基を表す。Lは単なる結合種、アルキレンオキシ基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Xは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、窒素原子は置換基を有していても良い。Yは、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
2.前記有機圧電材料の電気機械結合定数が、0.20以上であることを特徴とする前記1に記載の有機圧電材料。
【0013】
3.前記有機圧電材料が、電場、又は電場と磁場の併用により分極処理が施されていることを特徴とする前記1又は前記2に記載の有機圧電材料。
【0014】
4.前記1から前記3のいずれか一項に記載の有機圧電材料と電極とを有することを特徴とする超音波振動子。
【0015】
5.前記4に記載の超音波振動子を具備することを特徴とする超音波探触子。
【0016】
6.前記超音波振動子が、受信用超音波振動子であることを特徴とする前記5に記載の超音波探触子。
【0017】
7.前記5又は前記6に記載の超音波探触子を具備することを特徴とする超音波医用画像診断装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記手段により、圧電特性および取扱性に優れた有機圧電材料を提供することができる。更に、それらを用いた超音波振動子、超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供することができる。
【0019】
すなわち、作用機構的観点から説明するならば、有機圧電材料は、双極子配向が精密になされていることが重要であるが、それは分極処理により達成される。また、超音波振動子という観点では、経時安定性、熱安定性が重要であり、有機圧電材料の熱物性が重要となる。振動子は駆動させることにより60〜80℃まで発熱するため、当該材料自身はその温度で使用され続けても品質を保証する必要がある。圧電材料のガラス転移温度(Tg)を規定することにより、より安定性の高い圧電材料の提供が可能となる。
【0020】
Tgが低い材料ほど、分極処理効果が高いが、Tgが低いために分極(配向)を維持することが難しい。材料のTgが100〜180℃になるように設計する(若しくは、この範囲にある材料を選択する。)と、高い分極効果が得られ、熱安定性と両立可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】超音波医用画像診断装置の主要部の構成を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の有機圧電材料は、前記一般式(UR1)で表される部分構造を有する樹脂組成物を含有する有機圧電材料であって、当該樹脂組成物のガラス転移温度が100〜180℃であることを特徴とする。この特徴は請求項1から請求項7に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0023】
本発明の実施態様としては、本発明の効果の観点から、前記有機圧電材料の電気機械結合定数が、0.20以上であることが好ましい。また、当該有機圧電材料が、電場、又は電場と磁場の併用により分極処理が施されていることが好ましい。
【0024】
本発明の有機圧電材料は、超音波振動子に好適に用いることができる。また、当該超音波振動子は、超音波探触子に好適に用いることができる。この場合、当該超音波振動子は、受信用超音波振動子であることが好ましい。
【0025】
上記超音波探触子は、超音波医用画像診断装置に好適に用いることができる。
【0026】
以下、本発明とその構成要素、及び発明を実施するための最良の形態・態様等について詳細な説明をする。
【0027】
(有機圧電材料を構成する樹脂組成物)
本発明の有機圧電材料は、前記一般式(UR1)で表される部分構造を有する樹脂組成物を含有する有機圧電材料であって、当該樹脂組成物のガラス転移温度が100〜180℃であることを特徴とする。
【0028】
以下において、当該有機圧電材料を構成する樹脂組成物について説明する。
【0029】
(一般式(UR1)で表される部分構造)
本発明の有機圧電材料は、前記一般式(UR1)で表される部分構造を有する樹脂含有組成物であることを特徴とする。
【0030】
本発明の実施態様としては、前記一般式(UR1)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、置換基としては、例えば炭素数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリール基(フェニル基等)、シアノ基、ヒドロキシル基等を挙げることができる。好ましくは、水素原子、又はアルキル基であり、更に好ましくは水素原子である。
【0031】
nは1〜3の整数を表し、好ましくはnが1の場合である。
【0032】
、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等を挙げることが出来る。又、R及びR4は、互いに結合して環構造を形成していても良い。好ましくは、水素原子又はアルキル基であり、更に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基又はプロピル基であり、最も好ましくは、水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0033】
及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等を挙げることが出来る。好ましくは、水素原子又はアルキル基であり、更に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はプロピル基であり、最も好ましくは、水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0034】
は、アルキレン基又はアリーレン基を表す。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等を挙げることができる。
【0035】
は、単なる結合種、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。ここで、「単なる結合種」とは、当該一般式(UR1)におけるLの左右の結合が直接的に連結していることをいう。
【0036】
アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等を挙げることができる。アラルキレン基としては、例えば、ベンジレン基、フェネチレン基等を挙げることができる。
【0037】
及びLは、各々独立に、置換基を有していても良く、置換基としては、前記R及びRで挙げた置換基を挙げることが出来る。
【0038】
好ましくは、Lがアルキレン基、Lが単なる結合種又はアリーレン基の場合であり、更に好ましくは、Lがアルキレン基及びLが単なる結合種の場合である。
【0039】
Xは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、窒素原子は置換基を有していても良い。置換基としては、前記R及びRで挙げた置換基を挙げることができ、好ましくは、水素原子又はアルキル基である。Yは、酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0040】
前記一般式(UR1)で表される部分構造は、下記一般式(UR2)で表される化合物と下記一般式(UR3)で表される化合物を反応させた後、活性水素を有する化合物又はイソシアナート基を有する化合物を反応させることにより形成することが出来る。
【0041】
【化2】

【0042】
(式中、R及びRは、前記一般式(UR1)のR及びRと同義である。nは、前記一般式(UR1)のnと同義である。R及びRは、前記一般式(UR1)のR及びRと同義である。Aは、イソシアナート基又はイソチオシアナート基又はアミノ基を表す。mは0又は1を表し、Aがイソシアナート基又はイソチオシアナート基の場合、mは0を表す。)
前記一般式(UR2)で表される化合物の炭素原子に結合したAは、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であった得も良い。前記一般式(UR2)で表される化合物としては、Aがイソシアナート基の場合、例えば、イソシアナトベンジルイソシアナート、イソシアナトフェネチルイソシアナート、α−(イソシアナトフェニル)−エチルイソシアナート等が挙げられる。A1がアミノ基の場合、例えば、アミノベンジルアミン、2−(4−アミノフェニル)エチルアミン等が挙げられるが、好ましくは、イソシアナトベンジルイソシアナート又はイソシアナトフェネチルイソシアナートであり、更に好ましくは、イソシアナトベンジルイソシアナートである。Aがイソチオシアナート基の場合、例えば、イソチオシアナトベンジルイソシアナート、イソチオシアナトフェネチルイソシアナート、α−(イソチオシアナトフェニル)−エチルイソチオシアナート等が挙げられる。A1がアミノ基の場合、例えば、アミノベンジルアミン、2−(4−アミノフェニル)エチルアミン等が挙げられるが、好ましくは、イソチオシアナトベンジルイソチオシアナート又はイソチオシアナトフェネチルイソチオシアナートであり、更に好ましくは、イソチオシアナトベンジルイソチオシアナートである。
【0043】
【化3】

【0044】
(式中、R及びRは、前記一般式(UR1)のR及びRと同義である。L及びLは、前記一般式(UR1)のL及びLと同義である。R及びRは、前記一般式(UR1)のR及びRと同義である。Bは、イソシアナート基又はイソチオシアナート基又はアミノ基を表す。rは0又は1を表し、B1がイソシアナート基又はイソチオシアナート基の場合、rは0を表す。)
前記一般式(UR3)で表される化合物としては、Bがアミノ基の場合、例えば、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1,7−ジアミノヘプタン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、ジエチレングリコール−ビス(3−アミノプロピル)エーテル、m−キシリレンジアミン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ピペラジン等が挙げられる。
【0045】
がイソシアナート基の場合、例えば、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート等が挙げられる。Bがイソチオシアナート基の場合、例えば、1,3−ビス(イソチオシアナトメチル)シクロヘキサン、ジイソチオシアン酸イソホロン、トリメチレンジイソチオシアネート、テトラメチレンジイソチオシアネート、ペンタメチレンジイソチオシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、1,3−シクロペンタンジイソチオシアネート等が挙げられる。
【0046】
前記一般式(UR2)で表される化合物と前記一般式(UR3)で表される化合物を反応させた後、更に反応させる活性水素を有する化合物としては、分子内にアミノ基を2つ以上有するポリアミン、分子内に水酸基を2つ以上有するポリオール又はアミノアルコールが挙げられる。
【0047】
ポリアミンとして、例えば、前記一般式(UR2)及び(UR3)で挙げたジアミンの他に、2,7−ジアミノ−9H−フルオレン、3,6−ジアミノアクリジン、アクリフラビン、アクリジンイエロー、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、4−(フェニルジアゼニル)ベンゼン−1,3−ジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、1,8−ジアミノナフタレン等を挙げることが出来る。
【0048】
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられるが、圧電特性を低下させないために、総炭素数10以下のポリオールが好ましい。
【0049】
アミノアルコールとしては、例えば、アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ジアミノ−2−プロパノール等を挙げることができる。
【0050】
前記一般式(UR2)で表される化合物と前記一般式(UR3)で表される化合物を反応させた後、更に反応させるイソシアナート基を有する化合物としては、分子内にイソシアナート基を2つ以上有するポリイソシアナートが挙げられる。
【0051】
ポリイソシアナートとして、例えば、前記一般式(UR2)及び(UR3)で挙げたジイソシアナートの他に、9H−フルオレン−2,7−ジイソシアネート、9H−フルオレン−9−オン−2,7−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート、1,3−フェニレン−ジイソシアナート、トリレン−2,4−ジイソシアナート、トリレン−2,6−ジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−イソシアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5−ジイソシアナトナフタレン等が挙げられる。
【0052】
以下、前記一般式(UR1)で表される部分構造の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されない。
【0053】
【化4】

【0054】
【化5】

【0055】
【化6】

【0056】
【化7】

【0057】
【化8】

【0058】
【化9】

【0059】
【化10】

【0060】
【化11】

【0061】
【化12】

【0062】
【化13】

【0063】
【化14】

【0064】
(前記一般式(UR1)で表される部分構造を有する樹脂含有組成物の製造方法)
本発明に係る樹脂含有組成物は、前記一般式(UR1)で表される部分構造を有する樹脂であることを特徴とするが、当該組成物には、当該樹脂のほかに、原料物質や、特別な機能を付与するための添加剤等を含有していてもよい。
【0065】
以下、特別な添加剤を含有していない組成物の製造方法について説明する。
【0066】
前記一般式(UR1)で表される部分構造を有する樹脂含有組成物は、前記一般式(UR2)で表される化合物と前記一般式(UR3)で表される化合物を反応させた後、活性水素を有する化合物を反応させることによって得られる。
【0067】
前記一般式(UR3)で表される化合物と活性水素を有する化合物が同一の場合、原料となるモノマーの添加順に制限は無く、前記一般式(UR2)で表される化合物に対して前記一般式(UR3)で表される化合物を添加しても良く、添加順が逆の場合でも良い。前記一般式(UR2)に対する前記一般式(UR3)の使用量は、0.8〜1.2倍モルが好ましく、更に好ましくは0.9〜1.1倍モルであり、特に好ましくは1.0倍モルである。
【0068】
前記一般式(UR3)で表される化合物と活性水素を有する化合物が異なる場合、前記一般式(UR2)で表される化合物に対して前記一般式(UR3)で表される化合物を添加した後、活性水素を有する化合物を添加しても良く、前記一般式(UR3)で表される化合物と活性水素を有する化合物を混合して、前記一般式(UR2)で表される化合物に添加しても良い。前記一般式(UR2)に対する前記一般式(UR3)の使用量は、0.4〜0.6倍モルが好ましく、更に好ましくは0.45〜0.55倍モルであり、特に好ましくは0.49〜0.51倍モルである。前記一般式(UR2)に対する活性水素を有する化合物の使用量は、0.4〜0.6倍モルが好ましく、更に好ましくは0.45〜0.55倍モルであり、特に好ましくは0.49〜0.51倍モルである。
【0069】
前記一般式(UR3)で表される化合物と活性水素を有する化合物が同一の場合、反応温度に制限は無いが、0℃〜100℃が好ましく、更に好ましくは10℃〜80℃である。更に好ましくは、20℃〜70℃である。
【0070】
前記一般式(UR3)で表される化合物と活性水素を有する化合物が異なる場合、反応温度は、−40〜60℃が好ましく、更に好ましくは−20〜30℃であり、特に好ましくは−10〜10℃である。又、活性水素を有する化合物の添加を終了した後、一定の温度で反応を継続しても良く、昇温させて反応を完結させても良い。
【0071】
反応に用いる溶媒は、目的の樹脂組成物が高極性であることと、重合を効率的に進行させるため、高極性溶媒を用いる必要がある。例えば、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチルピロリドン)等の高極性非プロトン溶媒を選択することが好ましいが、反応基質及び目的物が良好に溶解しさえすればシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、THF(テトラヒドロフラン)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの溶媒であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
【0072】
活性水素を有する化合物の末端基が水酸基の場合、ウレタン結合生成を効率よく進行させるため、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アルキルアミン類、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−エンなどの縮環アミン類、DBTL、テトラブチルスズ、トリブチルスズ酢酸エステルなどのアルキルスズ類等、公知のウレタン結合生成触媒を用いることができる。
【0073】
触媒の使用量は、効率のよい反応及び反応操作を考慮して、モノマー基質に対して0.1〜30mol%用いるのが好ましい。
【0074】
重合を行った樹脂組成物は再沈で精製を行うことが好ましい。
【0075】
樹脂組成物の再沈の方法は、特に限定されないが、樹脂組成物を良溶媒に溶解した後、貧溶媒に滴下して析出させる方法が好ましい。
【0076】
ここで言う「良溶媒」とは、樹脂組成物が溶解する溶媒であれば、如何なる溶媒でも構わないが、好ましくは極性溶媒であり、具体的には、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチルピロリドン)等の高極性非プロトン溶媒を挙げることができる。
【0077】
又、「貧溶媒」とは、樹脂組成物が溶解しない溶媒であれば、如何なる溶媒でも構わないが、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類を挙げることができる。
【0078】
(ガラス転移温度の制御)
ガラス転移温度(Tg)は、高分子の単位構造を変化させることである程度制御可能である。Tgが180℃以上の場合、ウレタン結合を追加する、ウレア結合中の水素を他の基で置換する(例えばアルキル基)、主鎖を構成する分子鎖にオキシアルキレン基を導入する、などでTgを下げることができる。一方、100℃以下の場合、ウレア結合を追加する、ウレア結合中の置換基をなくす、芳香族構造の割合を多くする、などでTgを上げることができる。
【0079】
(有機圧電材料)
本発明の有機圧電材料は、形成された樹脂を含有する樹脂組成物を用いて膜を形成することにより、或いは、樹脂組成物の膜に対して更に分極処理を施すことにより、有機圧電体膜を形成することができる。
【0080】
有機圧電体膜は、当該圧電体膜に応力が加わると、それに比例して当該圧電体膜の両端面に反対符号の電荷が現れる、すなわち電気分極という現象を生じ、逆に当該圧電材料を伝場に入れる(電界を加える)ことで、それに比例した歪みを生じるという性質(圧電性能)を有する。特に本発明の有機圧電材料よりなる有機圧電体膜にあっては、高分子の主鎖や側鎖の双極子モーメントの配向凍結による分極により大きな圧電効果が生じる。
【0081】
一方、当該圧電体膜にエネルギー(熱)が加わると、それに対応して当該圧電体膜内部の自発分極の大きさが変化する。このとき、当該圧電体膜表面に自発分極を中和するように存在する表面電荷は、上記自発分極ほどにすばやくエネルギー変化に対応できないことから、短時間の間ではあるが、圧電体膜表面には自発分極の変化分だけ電荷が存在することになる。このエネルギー変化に伴う電気の発生を焦電性というが、特に本発明の有機圧電材料よりなる有機圧電体膜にあっては、高分子の主鎖や側鎖の双極子モーメントの配向凍結による分極により大きな焦電性能が生じる。
【0082】
(有機圧電膜の形成方法)
有機圧電膜の形成は、塗布によって膜を形成する方法が好ましい。塗布方法として、例えば、スピンコート法、ソルベントキャスト法、メルトキャスト法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、バーコート法等が挙げられる。
【0083】
電気機械結合定数が0.2以上である用にするための調整方法は、前記樹脂組成物を含有する有機圧電材料からフィルムを作製し、そのフィルムに対し、延伸処理、アニール処理、分極処理などを施すことで得られる。アニール処理と分極処理を併用してもよい。
【0084】
延伸処理の場合、2〜5倍に延伸することが望ましい。延伸時の温度は、有機圧電材料の物性にもよるが、20〜150℃で延伸することが好ましく、40〜120℃がより好ましい。
【0085】
アニール処理の場合、有機圧電材料が強誘電性を示す材料であれば、キュリー温度以下で行う必要がある。一方、強誘電性を示さない材料であれば、融点以下で行う必要がある。
【0086】
(有機圧電膜)
本発明に係る有機圧電膜は、上記圧電材料を用いて、溶融法、流延法など従来公知の種々の方法で作製することができる。
【0087】
本発明においては、有機圧電膜の作製方法として、基本的には、上記高分子材料等の溶液を基板上に塗布し、乾燥して得る方法、又は上記高分子材料の原料化合物を用いて従来公知の溶液重合塗布法などにより高分子膜を形成する方法を採用することができる。
【0088】
溶液重合塗布法の具体的方法・条件については、従来公知の種々の方法等に従って行うことができる。例えば、原料の混合溶液を基板上に塗布し、減圧条件下である程度乾燥後(溶媒を除去した後)、加熱し、熱重合し、その後又は同時に分極処理をして有機圧電膜を形成する方法が好ましい。
【0089】
なお、圧電特性を上げるには、分子配列を揃える処理を加えることが有用である。手段としては、延伸製膜、分極処理などが挙げられる。
【0090】
延伸製膜の方法については、種々の公知の方法を採用することができる。例えば、上記有機高分子材料をエチルメチルケトン(MEK)などの有機溶媒に溶解した液をガラス板などの基板上に流延し、常温にて溶媒を乾燥させ、所望の厚さのフィルムを得て、このフィルムを室温で所定の倍率の長さに延伸する。当該延伸は、所定形状の有機圧電膜が破壊されない程度に一軸・二軸方向に延伸することができる。延伸倍率は2〜10倍、好ましくは2〜6倍である。
【0091】
(分極処理)
本発明に係る分極処理における分極処理方法としては、従来公知の直流電圧印加処理、交流電圧印加処理又はコロナ放電処理等の方法が適用され得る。
【0092】
例えば、コロナ放電処理法による場合には、コロナ放電処理は、市販の高電圧電源と電極からなる装置を使用して処理することができる。
【0093】
放電条件は、機器や処理環境により異なるので適宜条件を選択することが好ましい。高電圧電源の電圧としては−1〜−20kV、電流としては1〜80mA、電極間距離としては、1〜10cmが好ましく、印加電圧は、0.5〜2.0MV/mであることが好ましい。
【0094】
電極としては、従来から用いられている針状電極、線状電極(ワイヤー電極)、網状電極が好ましいが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0095】
本発明の有機圧電材料は、コロナ放電により分極処理を施す場合においては、当該有機圧電材料の第1の面上に接するように平面電極を設置し、かつ前記第1の面に対向する第2の面側に円柱状のコロナ放電用電極を設置して、コロナ放電による分極処理が施されることが好ましい。
【0096】
当該分極処理は、水・酸素に起因する材料表面の酸化を防ぎ、圧電性を損なわないため等の理由から、窒素もしくは希ガス(ヘリウム、アルゴン等)気流下、質量絶対湿度が0.004以下の環境中で施される態様が好ましい。特に窒素気流下が好ましい。
【0097】
また、前記第1面上に接するように設置された平面電極を含む有機圧電材料、もしくは第2の面側に設けられた円柱状のコロナ放電用電極の少なくとも一方が、一定の速度で移動しながらコロナ放電が施されることが好ましい。
【0098】
なお、本願において、「質量絶対湿度」とは、乾き空気の質量mDA[kg]に対して湿り空気中に含まれる水蒸気(water vapor)の質量がm[kg]であるとき、下記式で定義される比SH(Specific humidity)をいい、単位は[kg/kg(DA)]で表される(DAはdry air の略)。但し、本願においては、当該単位を省略して表現する。
【0099】
(式):SH=m/mDA[kg/kg(DA)]
ここで、水蒸気を含む空気を「湿り空気」といい、湿り空気から水蒸気を除いた空気を「乾き空気(dry air)」という。
【0100】
なお、窒素もしくは希ガス(ヘリウム、アルゴン等)気流下での質量絶対湿度の定義は、上記の空気の場合に準じ、乾き気体の質量mDG[kg]に対して湿り気体に含まれる水蒸気の質量がm[kg]であるとき、上記式に準じて定義される比SHをいい、単位は[kg/kg(DG)]で表される(DGはdry gasの略)。但し、本願においては、当該単位を省略して表現する。
【0101】
また、「設置」とは、予め別途作製された既存の電極を有機圧電材料面上に接するように設け置くこと、又は電極構成材料を有機圧電材料面上に蒸着法等により付着させ、当該面上において電極を形成することをいう。
【0102】
なお、本発明の有機圧電材料により形成される有機圧電膜は、その形成過程において電場中で形成されること、すなわち、当該形成過程において分極処理を施すことが好ましい。このとき磁場を併用しても良い。
【0103】
本発明に係るコロナ放電処理法では、市販の高電圧電源と電極からなる装置を使用して処理することができる。
【0104】
放電条件は、機器や処理環境により異なるので適宜条件を選択することが好ましいが、高電圧電源の電圧としては正電圧・負電圧ともに1〜20kV、電流としては1〜80mA、電極間距離としては、0.5〜10cmが好ましく、印加電界は、0.5〜2.0MV/mであることが好ましい。分極処理中の有機圧電材料もしくは有機圧電膜は、50〜250℃が好ましく、70〜180℃がより好ましい。
【0105】
コロナ放電に使用する電極としては、分極処理を均一に施すために、上記のように円柱状の電極を用いることを要する。
【0106】
なお、本願において、円柱状の電極の円の直径は、0.1mm〜2cmであることが好ましい。当該円柱の長さは、分極処理を施す有機圧電材料の大きさに応じて適切な長さにすることが好ましい。例えば、一般的には、分極処理を均一に施す観点から、5cm以下であることが好ましい。
【0107】
これらの電極は、コロナ放電を行う部分では張っていることが好ましく、それらの両端に一定の加重をかける、もしくは一定の加重をかけた状態で固定するなどの方法で実現できる。また、これらの電極の構成材料としては、一般的な金属材料が使用可能だが、特に金、銀、銅が好ましい。
【0108】
前記第1の面上に接するように設置する平面電極は、均一な分極処理を行うためには有機圧電材料に均一に密着していることが好ましい。すなわち平面電極が施された基板上に有機高分子膜または有機圧電膜を形成した後にコロナ放電を行うことが好ましい。
【0109】
なお、本発明に係る超音波振動子の製造方法としては、有機圧電(体)膜の両面に設置される電極の形成前、片側のみ電極形成後又は両側に電極形成後のいずれかで分極処理する態様の製造方法であることが好ましい。また、当該分極処理が、電圧印加処理であることが好ましい。
【0110】
なお、本発明においては、前記有機圧電材料が、上記のように、電場又は電場と磁場の併用により分極処理が施されていることが好ましい。
【0111】
(基板)
基板としては、本発明に係る有機圧電体膜の用途・使用方法等により基板の選択は異なる。本発明においては、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマーのようなプラスチック板又はフィルムを用いることができる。また、これらの素材の表面をアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素等で覆ったものでもよい。またアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素単体、希土類のハロゲン化物の単結晶の板又はフィルムでもかまわない。また基板自体使用しないこともある。
【0112】
(超音波振動子)
本発明に係る超音波振動子は、本発明の有機圧電材料を用いて形成した有機圧電膜を用いたことを特徴とする。当該超音波振動子は、超音波送信用振動子と超音波送信用振動子を具備する超音波医用画像診断装置用探触子(プローブ)に用いられる超音波受信用振動子とすることが好ましい。
【0113】
なお、一般に、超音波振動子は膜状の圧電材料からなる層(又は膜)(「圧電膜」、「圧電体膜」、又は「圧電体層」ともいう。)を挟んで一対の電極を配設して構成され、複数の振動子を例えば1次元配列して超音波探触子が構成される。
【0114】
そして、複数の振動子が配列された長軸方向の所定数の振動子を口径として設定し、その口径に属する複数の振動子を駆動して被検体内の計測部位に超音波ビームを収束させて照射すると共に、その口径に属する複数の振動子により被検体から発する超音波の反射エコー等を受信して電気信号に変換する機能を有している。
【0115】
以下、本発明に係る超音波受信用振動子と超音波送信用振動子それぞれについて詳細に説明する。
【0116】
〈超音波受信用振動子〉
本発明に係る超音波受信用振動子は、超音波医用画像診断装置用探触子に用いられる超音波受信用圧電材料を有する振動子であって、それを構成する圧電材料が、本発明の有機圧電材料を用いて形成した有機圧電膜を用いた態様であることが好ましい。
【0117】
なお、超音波受信用振動子に用いる有機圧電材料ないし有機圧電膜は、厚み共振周波数における比誘電率が10〜50であることが好ましい。比誘電率の調整は、当該有機圧電材料を構成する化合物が有する前記置換基R、CF基、CN基のような極性官能基の数量、組成、重合度等の調整、及び上記の分極処理によって行うことができる。
【0118】
なお、本発明の受信用振動子を構成する有機圧電体膜は、複数の高分子材料を積層させた構成とすることもできる。この場合、積層する高分子材料としては、上記の高分子材料の他に下記の比誘電率の比較的低い高分子材料を併用することができる。
【0119】
なお、下記の例示において、括弧内の数値は、高分子材料(樹脂)の比誘電率を示す。
【0120】
例えば、メタクリル酸メチル樹脂(3.0)、アクリルニトリル樹脂(4.0)、アセテート樹脂(3.4)、アニリン樹脂(3.5)、アニリンホルムアルデヒド樹脂(4.0)、アミノアルキル樹脂(4.0)、アルキッド樹脂(5.0)、ナイロン−6−6(3.4)、エチレン樹脂(2.2)、エポキシ樹脂(2.5)、塩化ビニル樹脂(3.3)、塩化ビニリデン樹脂(3.0)、尿素ホルムアルデヒド樹脂(7.0)、ポリアセタール樹脂(3.6)、ポリウレタン(5.0)、ポリエステル樹脂(2.8)、ポリエチレン(低圧)(2.3)、ポリエチレンテレフタレート(2.9)、ポリカーポネート樹脂(2.9)、メラミン樹脂(5.1)、メラミンホルムアルデヒド樹脂(8.0)、酢酸セルロース(3.2)、酢酸ビニル樹脂(2.7)、スチレン樹脂(2.3)、スチレンブタジエンゴム(3.0)、スチロール樹脂(2.4)、フッ化エチレン樹脂(2.0)等を用いることができる。
【0121】
なお、上記比誘電率の低い高分子材料は、圧電特性を調整するため、或いは有機圧電体膜の物理的強度を付与するため等の種々の目的に応じて適切なものを選択することが好ましい。
【0122】
〈超音波送信用振動子〉
本発明に係る超音波送信用振動子は、上記受信用圧電材料を有する振動子との関係で適切な比誘電率を有する圧電体材料により構成されることが好ましい。また、耐熱性・耐電圧性に優れた圧電材料を用いることが好ましい。
【0123】
超音波送信用振動子構成用材料としては、公知の種々の有機圧電材料及び無機圧電材料を用いることができる。
【0124】
有機圧電材料としては、上記超音波受信用振動子構成用有機圧電材料と同様の高分子材料を用いることできる。
【0125】
無機材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸タンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O]、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、又はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)等を用いることができる。尚、PZTはPb(Zr1−nTi)O(0.47≦n≦1)が好ましい。
【0126】
〈電極〉
本発明に係る圧電(体)振動子は、圧電体膜(層)の両面上又は片面上に電極を形成し、その圧電体膜を分極処理することによって作製されるものである。有機圧電材料を使用した超音波受信用振動子を作製する際には、分極処理を行う際に使用した前記第1面の電極をそのまま使用してもよい。当該電極は、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)などを主体とした電極材料を用いて形成する。
【0127】
電極の形成に際しては、まず、チタン(Ti)やクロム(Cr)などの下地金属をスパッタ法により0.02〜1.0μmの厚さに形成した後、上記金属元素を主体とする金属及びそれらの合金からなる金属材料、さらには必要に応じ一部絶縁材料をスパッタ法、蒸着法その他の適当な方法で1〜10μmの厚さに形成する。これらの電極形成はスパッタ法以外でも微粉末の金属粉末と低融点ガラスを混合した導電ペーストをスクリーン印刷やディッピング法、溶射法で形成することもできる。
【0128】
さらに、圧電体膜の両面に形成した電極間に、所定の電圧を供給し、圧電体膜を分極することで圧電素子が得られる。
【0129】
(超音波探触子)
本発明に係る超音波探触子は、超音波画像診断装置の主要構成部品であって、超音波を発生するとともに、超音波ビームを送受信する機能を有するものである。当該超音波探触子の内部の構成は、種々の態様を採り得るが、一般的構成としては、先端(被検体である生体に接する面)部分から「音響レンズ」、「音響整合層」、「超音波振動子(素子)」、「バッキング」という順に並置された態様の構成を採り得る。
【0130】
本発明に係る超音波探触子は、超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波医用画像診断装置用探触子(プローブ)であり、受信用振動子として、本発明に係る上記超音波受信用振動子を用いることを特徴とする。
【0131】
本発明においては、超音波の送受信の両方をひとつの振動子で担ってもよいが、より好ましくは、送信用と受信用で振動子は分けて探触子内に構成される。
【0132】
送信用振動子を構成する圧電材料としては、従来公知のセラミックス無機圧電材料でも、有機圧電材料でもよい。
【0133】
本発明に係る超音波探触子においては、送信用振動子の上もしくは並列に本発明の超音波受信用振動子を配置することができる。
【0134】
より好ましい実施形態としては、超音波送信用振動子の上に本発明の超音波受信用振動子を積層する構造が良く、その際には、本発明の超音波受信用振動子は他の高分子材料(支持体として上記の比誘電率が比較的低い高分子(樹脂)フィルム、例えば、ポリエステルフィルム)の上に添合した形で送信用振動子の上に積層してもよい。その際の受信用振動子と他の高分子材料と合わせた膜厚は、探触子の設計上好ましい受信周波数帯域に合わせることが好ましい。実用的な超音波医用画像診断装置および生体情報収集に現実的な周波数帯から鑑みると、その膜厚は、40〜150μmであることが好ましい。
【0135】
なお、当該探触子には、バッキング層、音響整合層、音響レンズなどを設けても良い。また、多数の圧電材料を有する振動子を2次元に並べた探触子とすることもできる。複数の2次元配列した探触子を順次走査して、画像化するスキャナーとして構成させることもできる。
【0136】
(音響レンズ)
本発明に係る音響レンズは、屈折を利用して超音波ビームを集束し分解能を向上するために配置されている。本発明にいては、当該音響レンズの被検体表面に近い領域に、励起光を照射することにより発光する物質すなわち発光物質が添加されていることを特徴とする。
【0137】
当該音響レンズは、超音波を収束するとともに、生体とよく密着して生体の音響インピーダンス(密度×音速;(1.4〜1.6)×10kg/m・sec)と整合させ、超音波の反射を少なくしうること、レンズ自体の超音波減衰量が小さいことが必要条件とされている。
【0138】
すなわち、超音波ビームを集束するため人体と接触する部分に、従来ゴム等の高分子材料をベースにして作られた音響レンズが設けられている。ここに用いられるレンズ材料としては、その音速が人体のそれより十分小さくて、減衰が少なく、又、音響インピーダンスが人体の皮膚の値に近いものが望まれる。レンズ材が、音速が人体のそれより十分小さければ、レンズ形状を凸状となすことができ、診断を行う際に滑りが良くなり、安全に行えるし、また、減衰が少なくなれば、感度良く超音波の送受信が行え、さらに、音響インピーダンスが人体の皮膚の値に近いものであれば、反射が小さくなり、換言すれば、透過率が大きくなるので、同様に超音波の送受信感度が良くなるからである。
【0139】
本発明において、音響レンズを構成する素材としては、従来公知のシリコンゴム、フッ素シリコンゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のホモポリマー、エチレンとプロピレンとを共重合させてなるエチレン−プロピレン共重合体ゴム等の共重合体ゴム等を用いることができる。これらのうち、シリコン系ゴムを用いることが好ましい。
【0140】
本発明に使用されるシリコン系ゴムとしては、シリコンゴム、フッ素シリコンゴム等が挙げられる。就中、レンズ材の特性上、シリコンゴムを使用することが好ましい。シリコンゴムとは、Si−O結合からなる分子骨格を有し、そのSi原子に複数の有機基が主結合したオルガノポリシロキサンをいい、通常は、その主成分はメチルポリシロキサンで、全体の有機基のうち90%以上はメチル基である。メチル基に代えて水素原子、フェニル基、ビニル基、アリル基等を導入したものも使用することができる。当該シリコンゴムは、例えば、高重合度のオルガノポリシロキサンに過酸化ベンゾイルなどの硬化剤(加硫剤)を混練し、加熱加硫し硬化させることにより得ることができる。必要に応じてシリカ、ナイロン粉末等の有機又は無機充填剤、硫黄、酸化亜鉛等の加硫助剤等を添加してもよい。
【0141】
本発明に使用されるブタジエン系ゴムとしては、ブタジエン単独またはブタジエンを主体としこれに少量のスチロールまたはアクリロニトリルが共重合した共重合ゴム等が挙げられる。就中、レンズ材の特性上、ブタジエンゴムを使用することが好ましい。ブタジエンゴムとは、共役二重結合を有するブタジエンの重合により得られる合成ゴムをいう。ブタジエンゴムは、共役二重結合を有するブタジエン単独が1,4又は1.2重合することにより得ることができる。ブタジエンゴムは、硫黄等により加硫させたものが使用できる。
【0142】
本発明に係る音響レンズにおいては、シリコン系ゴムとブタジエン系ゴムとを混合し加硫硬化させることにより得ることができる。例えば、シリコンゴムとブタジエンゴムとを適宜割合で、混練ロールにより、混合し、過酸化ベンゾイルなどの加硫剤を添加し、加熱加硫し架橋(硬化)させることにより得ることができる。その際に、加硫助剤として、酸化亜鉛を添加することが好ましい。酸化亜鉛は、レンズ特性を落とさずに、加硫促進を促し、加硫時間を短縮できる。他に、着色剤や音響レンズの特性を損なわない範囲内で他の添加剤を添加してもよい。シリコン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合割合は、その音響インピーダンスが人体に近似しているとともに、その音速が人体より小さく、減衰が少ないものを得るには、通常、1:1が好ましいが、当該混合割合は適宜変更可能である。
【0143】
なお、本発明においては、上記シリコン系ゴム等のゴム素材をベース(主成分)として、音速調整、密度調整等の目的に応じ、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの無機充填剤や、ナイロンなどの有機樹脂等を配合することもできる。
【0144】
(バッキング層)
本発明においては、超音波振動子の背面に配置し、後方への超音波の伝搬を抑制することを目的としてバッキング層を備えることも好ましい。これにより、パルス幅を短くすることができる。
【0145】
(音響整合層)
音響整合層(「λ/4層」ともいう。)は、振動子と生体間の音響インピーダンス差を少なくし、超音波を効率よく送受信するために多層配置される。
【0146】
(超音波医用画像診断装置)
本発明に係る上記超音波探触子は、種々の態様の超音波診断装置に用いることができる。図1に、本発明の実施形態の超音波医用画像診断装置の主要部の構成の概念図を示す。
【0147】
この超音波医用画像診断装置は、患者などの被検体に対して超音波を送信し、被検体で反射した超音波をエコー信号として受信する圧電体振動子が配列されている超音波探触子(プローブ)を備えている。また当該超音波探触子に電気信号を供給して超音波を発生させるとともに、当該超音波探触子の各圧電体振動子が受信したエコー信号を受信する送受信回路と、送受信回路の送受信制御を行う送受信制御回路を備えている。
【0148】
更に、送受信回路が受信したエコー信号を被検体の超音波画像データに変換する画像データ変換回路を備えている。また当該画像データ変換回路によって変換された超音波画像データでモニタを制御して表示する表示制御回路と、超音波医用画像診断装置全体の制御を行う制御回路を備えている。
【0149】
制御回路には、送受信制御回路、画像データ変換回路、表示制御回路が接続されており、制御回路はこれら各部の動作を制御している。そして、超音波探触子の各圧電体振動子に電気信号を印加して被検体に対して超音波を送信し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる反射波を超音波探触子で受信する。
【0150】
なお、上記送受信回路が「電気信号を発生する手段」に相当し、画像データ変換回路が「画像処理手段」に相当する。
【0151】
上記のような超音波診断装置によれば、本発明の圧電特性及び耐熱性に優れかつ高周波・広帯域に適した超音波受信用振動子の特徴を生かして、従来技術と比較して画質とその再現・安定性が向上した超音波像を得ることができる。
【実施例】
【0152】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0153】
(実施例1)樹脂組成物及び樹脂組成物膜の作製
<重合方法A>
一般式(UR2)で表される化合物(表1及び表2に記載)をDMFに溶解し、0℃に冷却した。一般式(UR2)で表される化合物と当モルの一般式(UR3)で表される化合物(表1及び表2に記載)をDMFに溶解して添加した。0℃で1時間攪拌を行った後、活性水素を有する化合物(表1及び表2に記載)をDMFに溶解して添加し、30℃に昇温して24時間攪拌を行った。更に、反応溶液を80℃まで昇温して8時間攪拌を行い、減圧条件下で、反応溶液の液量が半分になるまで濃縮し、メタノールで再沈後、70℃で減圧乾燥を行うことにより目的とする樹脂組成物を得た。
【0154】
<重合方法B>
一般式(UR2)で表される化合物(表1及び表2に記載)をDMFに溶解し、0℃に冷却した。一般式(UR2)で表される化合物と当モルの一般式(UR3)で表される化合物(表1及び表2に記載)をDMFに溶解して添加した。0℃で1時間攪拌を行った後、活性水素を有する化合物(表1及び表2に記載)をDMFに溶解して添加し、続いてDBTL0.1gを添加した。反応溶液を30℃に昇温して24時間攪拌を行った後、減圧条件下で、反応溶液の液量が半分になるまで濃縮し、メタノールで再沈を行った。ろ過後、70℃で減圧乾燥を行うことにより目的とする樹脂組成物を得た。
【0155】
<重合方法C>
一般式(UR2)で表される化合物(表1及び表2に記載)をDMFに溶解し、0℃に冷却した。一般式(UR2)で表される化合物に対して2倍モルの一般式(UR3)で表される化合物(表1及び表2に記載)をDMFに溶解して添加した。0℃で1時間攪拌を行った後、30℃に昇温して24時間攪拌を行った。減圧条件下で、反応溶液の液量が半分になるまで濃縮し、メタノールで再沈後、70℃で減圧乾燥を行うことにより目的とする樹脂組成物を得た。
【0156】
樹脂組成物の重量平均分子量及び分子量分布は、GPCの測定を行い、ポリスチレン換算で求めた。
【0157】
本実施例において、重量平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は下記の要領で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出した。測定条件は以下の通りである。
【0158】
溶媒 :30mMLiBr in N−メチルピロリドン
装置 :HLC−8220GPC(東ソー(株)製)
カラム :TSKgel SuperAWM−H×2本(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
試料濃度 :1.0g/L
注入量 :40μl
流量 :0.5ml/min
校正曲線 :標準ポリスチレン:PS−1(Polymer Laboratories社製)Mw=580〜2,560,000までの9サンプルによる校正曲線を使用した。
【0159】
<樹脂組成物膜の作製>
これらの得られた樹脂組成物を、あらかじめ表面にアルミ蒸着済みの25μmのポリイミドフィルムに、1%の重合度500のポリビニルアルコールのメタノール溶液を乾燥膜圧が0.1μmに成るように塗布乾燥を行った基板上に、乾燥膜圧が7μmになるように塗布乾燥を行った。次に、このようにして樹脂組成物の膜が形成された基板の表面にアルミ電極を蒸着で取り付けたあとで、高圧電源装置HARB−20R60(松定プレシジョン(株)製)を用いて、100MV/mの電場を印加した状態で、下で評価したTg+20℃の温度まで5℃/minの割合で上昇し、15分間保持したあとで電圧は印加したままで室温まで徐冷し、ポーリング処理を施し樹脂組成物膜−1〜15を作製した。なお、当該樹脂組成物膜は電極を具備しているので超音波振動子と使用可能のものである。
【0160】
(比較例1)比較樹脂組成物及び比較樹脂組成物膜の作製
p−イソシアナトベンジルイソシアネート0.87gをDMF10mlに溶解し、0℃に冷却した。2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン1.30g及びエチレングリコール0.16gをDMF10mlに溶解した溶液をワンポットで添加し、1時間攪拌を行った。反応液にDBTL0.1gを添加し、30℃に昇温して24時間攪拌を行った。減圧条件下で、反応溶液の液量が半分になるまで濃縮し、メタノールで再沈後、70℃で減圧乾燥を行うことにより比較樹脂組成物(1)2.2gを得た。
【0161】
得られた樹脂組成物を、あらかじめ表面にアルミ蒸着済みの25μmのポリイミドフィルムに、1%の重合度500のポリビニルアルコールのメタノール溶液を乾燥膜圧が0.1μmに成るように塗布乾燥を行った基板上に、乾燥膜圧が7μmになるように塗布乾燥を行った。次に、このようにして樹脂組成物の膜が形成された基板の表面にアルミ電極を蒸着で取り付けたあとで、高圧電源装置HARB−20R60(松定プレシジョン(株)製)を用いて、100MV/mの電場を印加した状態で、下で評価したTg+20℃の温度まで5℃/minの割合で上昇し、15分間保持したあとで電圧は印加したままで室温まで徐冷し、ポーリング処理を施し比較樹脂組成物膜−1を作製した。
【0162】
(比較例2)比較樹脂組成物膜の作製
真空処理室内に前述のポリイミド基板を取り付け、蒸発用容器の一方に4,4′−ジアミノジフェニルメタンと、他方に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを夫々充填し、シャッターを閉じた状態で処理室内の全圧を真空排気系で1.33×10−1Pa(1×10−3Torr)に設定した。4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを温度70±2℃に、また、4,4′−ジアミノジフェニルメタンを温度110±2℃に加熱し、ポリイミド基板上に蒸着重合を行い、7μmまで蒸着を行った。このようにしてポリウレア膜の形成された基板を取り出し、高圧電源装置HARB−20R60(松定プレシジョン(株)製)と針状電極を用いて0.2MV/mになるように電圧を加えながら、下で評価した180℃の温度まで5℃/minの割合で上昇し、15分間保持したあとで電圧は印加したままで室温まで徐冷し、比較樹脂組成物膜−2を作製した。
【0163】
(実施例2)
得られた上記各種樹脂組成物膜を超音波振動子として、共振法にて圧電性の評価を室温と、100℃まで加熱した状態で行った。なお圧電特性は、PVDF膜の室温で測定した時の値を100%とした相対値として示す。
【0164】
(実施例3)
得られた上記各種樹脂組成物膜のうちの一部樹脂組成物膜について、2cm平方に切り出し、焦電性を、摂氏−100度から150度まで温度が可変の温度槽にセットし温度上昇率を変えて発生する電荷を微小電流計により観測し焦電率を測定した。なお焦電率は、PVDF膜の値を100%として相対値で示した。
【0165】
なお、得られた上記各種樹脂組成物膜のうちの一部樹脂組成物膜について、2mg取り出し、DSC(示差走査熱量測定)にて、Tg(ガラス転移温度)を測定した。
【0166】
上記測定結果等をまとめて表1〜表3に示す。
【0167】
【表1】

【0168】
【表2】

【0169】
【表3】

【0170】
表3に示した結果から明らかなように、本発明の樹脂組成物より形成された有機圧電体膜の圧電特性及び焦電性は、比較例に比べ優れていることが分かる。
【0171】
(実施例4)
(超音波探触子の作製と評価)
〈送信用圧電材料の作製〉
成分原料であるCaCO、La、BiとTiO、及び副成分原料であるMnOを準備し、成分原料については、成分の最終組成が(Ca0.97La0.03)Bi4.01Ti15となるように秤量した。次に、純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて8時間混合し、十分に乾燥を行い、混合粉体を得た。得られた混合粉体を、仮成形し、空気中、800℃で2時間仮焼を行い仮焼物を作製した。次に、得られた仮焼物に純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて微粉砕を行い、乾燥することにより圧電セラミックス原料粉末を作製した。微粉砕においては、微粉砕を行う時間および粉砕条件を変えることにより、それぞれ粒子径100nmの圧電セラミックス原料粉末を得た。それぞれ粒子径の異なる各圧電セラミックス原料粉末にバインダーとして純水を6質量%添加し、プレス成形して、厚み100μmの板状仮成形体とし、この板状仮成形体を真空パックした後、235MPaの圧力でプレスにより成形した。次に、上記の成形体を焼成した。最終焼結体の厚さは20μmの焼結体を得た。なお、焼成温度は、それぞれ1100℃であった。1.5×Ec(MV/m)以上の電界を1分間印加して分極処理を施した。
【0172】
〈受信用積層振動子の作製〉
前記実施例1において作製した有機圧電体膜と厚さ50μmのポリエステルフィルムをエポキシ系接着剤にて貼り合わせた積層振動子を作製した。その後、上記と同様に分極処理をした。
【0173】
次に、常法に従って、上記の送信用圧電材料の上に受信用積層振動子を積層し、かつバッキング層と音響整合層を設置し超音波探触子を試作した。
【0174】
なお、比較例として、上記受信用積層振動子の代わりに、比較樹脂組成物膜−1を用い、上記超音波探触子と同様の探触子を作製した。
【0175】
次いで、上記2種の超音波探触子について受信感度と絶縁破壊強度の測定をして評価した。
【0176】
なお、受信感度については、5MHzの基本周波数fを発信させ、受信2次高調波fとして10MHz、3次高調波として15MHz、4次高調波として20MHzの受信相対感度を求めた。受信相対感度は、ソノーラメディカルシステム社(Sonora Medical System,Inc:2021Miller Drive Longmont,Colorado(0501 USA))の音響強度測定システムModel805(1〜50MHz)を使用した。
【0177】
絶縁破壊強度の測定は、負荷電力Pを5倍にして、10時間試験した後、負荷電力を基準に戻して、相対受信感度を評価した。感度の低下が負荷試験前の1%以内のときを良、1%を超え10%未満を可、10%以上を不良として評価した。
【0178】
上記評価において、本発明に係る受信用圧電(体)積層振動子を具備した超音波探触子は、比較例に対して約2.0倍の相対受信感度を有しており、かつ絶縁破壊強度は良好であることを確認した。すなわち、本発明の超音波受信用振動子は、図1に示したような超音波医用画像診断装置に用いる探触子にも好適に使用できることが確認された。
【符号の説明】
【0179】
1 受信用圧電材料(膜)
2 支持体
3 送信用圧電材料(膜)
4 バッキング層
5 電極
6 音響レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(UR1)で表される部分構造を有する樹脂組成物を含有する有機圧電材料であって、当該樹脂組成物のガラス転移温度が100〜180℃であることを特徴とする有機圧電材料。
【化1】

(式中、R及びRは各々独立に水素原子又は置換基を表し、nは1〜3の整数を表す。R、R、R及びRは各々独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。R及びRは各々独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Lはアルキレン基又はアリーレン基を表す。Lは単なる結合種、アルキレンオキシ基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Xは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、窒素原子は置換基を有していても良い。Yは、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【請求項2】
前記有機圧電材料の電気機械結合定数が、0.20以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機圧電材料。
【請求項3】
前記有機圧電材料が、電場、又は電場と磁場の併用により分極処理が施されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機圧電材料。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の有機圧電材料と電極とを有することを特徴とする超音波振動子。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波振動子を具備することを特徴とする超音波探触子。
【請求項6】
前記超音波振動子が、受信用超音波振動子であることを特徴とする請求項5に記載の超音波探触子。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の超音波探触子を具備することを特徴とする超音波医用画像診断装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−219484(P2010−219484A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67682(P2009−67682)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】