説明

有機廃棄物処理装置及び有機廃棄物処理装置における空気供給方法

【課題】処理槽内に収容した有機廃棄物の内部に空気を供給する際に、給気口が目詰まりすることなく確実に所定の空気を供給することが可能な有機廃棄物処理装置を提供する。
【解決手段】処理槽内に収容した有機廃棄物を攪拌しながら微生物で分解処理する際に、有機廃棄物内部に給気口を有する中空筒形状の空気給送パイプを設け、このパイプ内部又は外部に有機廃棄物を吐出方向に移送又は拡散する回転羽根部材と、この羽根部材を回転駆動する駆動手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ゴミなどの有機廃棄物を分解処理する有機廃棄物処理装置及びこれに用いる堆積物内に気体を混入する方法に係わり、流動状態の有機廃棄物内部に空気を混入する空気供給機構の改良に関する。
【0002】
一般に、この種の処理装置は家庭用ゴミ処理、レストランなどの施設用ゴミ処理装置として広く知られている。そしてその処理方法は、処理槽内に収容した廃棄物を粉砕乾燥する方法と、廃棄物を微生物で発酵させて堆肥(土壌改善剤)に変換する方法と、廃棄物を微生物で発酵分解させる方法が採られている。
【0003】
このような処理方法の中でも、有機廃棄物を微生物で発酵分解して炭酸ガス(CO)と水(HO)に分解する方法が残留物を処理する必要が無く、悪臭を発する恐れのないことから広く使用されるに至っている。
【0004】
例えば特許文献1(特開2001−170605号)には、有機廃棄物を収容する処理槽と、この処理槽内に設けられた攪拌羽根とを備え、処理槽内に有機廃棄物と好気性微生物を混入して攪拌しながら分解処理する装置が開示されている。そして処理槽の底部には羽根先端と少許の間隙を形成して対向する底壁面に多数の通気孔を形成し、この通気孔から圧搾空気を供給する送気機構が開示されている。
【0005】
同公報には処理槽の底壁面から空気を供給するため処理物の体積が減少しても空気を供給することが出来る旨、記述されている。
【0006】
特許文献2(特開2004−315259号公報)には有機廃棄物を収容する処理槽と、この処理槽内の廃棄物を攪拌する攪拌羽根とが開示され、処理槽内に収容した有機廃棄物に好気性微生物を混入して攪拌しながら空気を供給する装置構造が開示されている。そして攪拌羽根は槽内に左右一対配置された回転軸にそれぞれ複数の攪拌羽根が設けられ、この左右の攪拌羽根を反対方向に回転させて廃棄物と微生物とを攪拌しながら分解処理している。この好気性微生物の分解作用を促進するため、回転軸には通気孔(噴出口)が設けられ外部から中空回転軸を介して圧搾空気が供給されるようになっている。特に同公報には圧搾空気を供給する通孔(噴出口)の目詰まりを防止するため、攪拌羽根を取付けるブラケットの内部に配置することが提案されている。
【0007】
特許文献3には有機廃棄物を収容する収容槽からコンベア手段で処理槽に移送した廃棄物に好気性微生物を混入し、この処理槽に設けた攪拌回転羽根で攪拌しながら分解を促進する装置が開示されている。そして攪拌回転羽根は中空形状に構成され外壁に設けられた多数の通孔から空気を供給する送気構造が開示されている。特に同公報にはこの通気孔を羽根の回転方向後方側に配置することによって目詰まりを防止することが提案されている。
【特許文献1】特開2001−170605号公報(図1)
【特許文献2】特開2004−315259号公報(図1)
【特許文献3】特開2005−144293号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、有機廃棄物を好気性微生物で分解処理する装置では、微生物に空気を供給する必要がある。これと同様に好気性微生物を使用することなく廃棄物処理する装置にあっても、例えば処理物が過剰の水分を含有するときには高温空気を供給して乾燥する必要がある。
【0009】
このように処理槽内に収納した有機廃棄物に(分解促進若しくは乾燥のために)空気を供給する場合には、堆積した有機廃棄物の内部に空気を導入することが効果的である。そこで従来は前掲特許文献1のように処理底部に給気孔を設けることが提案されている。この場合には給気孔が目詰まりしやすいことは説明するまでもない。
【0010】
このような給気孔の目詰まりを防止するため前掲特許文献2には攪拌羽根を取付けるブラケット内部に給気孔を設けることが提案されているが、空気はブラケットと羽根基端部との間の隙間から吐出されるため、この隙間に廃棄物の微粉末が進入して目詰まりを起こすことは容易に推測される。
【0011】
また、前掲特許文献3のように回転する羽根の後方側に給気孔を配置する場合にも、処理する廃棄物が乾燥しているときには良いが、水分を含んで汚泥状態のときには同様に目詰まりを起こす問題が発生し、また装置の不使用時或いは攪拌羽根を停止したときには残留する堆積物が給気孔内に進入して目詰まりを起こす問題がある。
【0012】
このように堆積した有機廃棄物の内部に給気孔から空気を供給する場合に、従来は給気孔に堆積物が詰まるのを防止するため種々の方法が試みられている。しかしその方法はいずれも給気孔に堆積物が進入しない構造に止まり、給気孔(口)に進入した廃棄物を外部に吐出する構造は提案されていない。
【0013】
そこで本発明者は、有機廃棄物に空気を供給する給気口に進入した堆積物を吐出する回転羽根部材を設けることによって有機物が汚泥状態に含水していても目詰まりすることなく確実に給気することが可能との着想に至った。
【0014】
本発明は、処理槽内に収容した有機廃棄物の内部に空気を供給する際に、給気口が目詰まりすることなく確実に所定の空気を供給することが可能な有機廃棄物処理装置の提供をその主な課題としている。
更に本発明は、処理槽内に収容した有機廃棄物を好気性微生物で分解処理する際に、その分解作用を促進する十分な空気を混入することによって効率的に分解処理することが可能な有機廃棄物処理装置の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
尚、本発明にあって「給気口」とは空気を吐出する開口、通孔、間隙など空気を外部に吐出する噴出口を云う。上記課題を達成するため本発明は、処理槽内に収容した有機廃棄物を攪拌しながら微生物で分解処理する際に、有機廃棄物内部に給気口を有する中空筒形状の空気給送パイプを設け、このパイプ内部又は外部に有機廃棄物を吐出方向に移送又は拡散する回転羽根部材と、この羽根部材を回転駆動する駆動手段を設けることを特徴としている。以下その構成を詳述する。
【0016】
有機廃棄物を微生物で分解処理する有機廃棄物処理装置であって、上記有機廃棄物を収容する処理槽と、上記処理槽内で上記有機廃棄物を攪拌する攪拌手段と、上記処理槽内の有機廃棄物を乾燥及び/又は上記微生物の分解作用を促進する空気を供給する空気供給機構とを備える。上記空気供給機構は、上記有機廃棄物の内部に配置された給気口を有する空気供給パイプと、上記空気供給パイプに上記処理槽内の空気若しくは外気を供給する供給ポンプと、上記給気口に配置され上記有機廃棄物を吐出方向に移送又は拡散する回転羽根部材と、上記回転羽根部材を回転駆動する駆動手段とから構成し、上記回転羽根部材は上記有機廃棄物が上記給気口に進入するのを阻止する方向に上記有機廃棄物を移動する。
【0017】
上記回転羽根部材は上記攪拌手段で所定方向に移動する有機廃棄物を異なる方向に移送又は拡散するように回転動する。
【0018】
上記空気供給パイプは、先端に給気口を有する中空スリーブ部材で構成し、上記回転羽根部材は、上記中空スリーブ部材の内部に配置された螺旋形状のスパイラル羽根で構成する。上記スパイラル羽根は中空スリーブ内に進入する上記有機廃棄物を給気口外部に吐出するように回転駆動する。
【0019】
上記回転羽根部材は、上記給気口の周囲に位置する有機廃棄物に対して上記攪拌手段が及ぼす搬送力より大きい搬送力を付与するように回転トルク及び/又は回転速度が設定される。
【0020】
上記空気供給パイプは、外周に給気口を有する中空スリーブ部材で構成し、上記回転羽根部材は、上記中空スリーブ部材の外周に巻装されたスパイラル羽根で構成する。上記スパイラル羽根は上記給気口に進入する上記有機廃棄物を外周方向に拡散するように回転駆動する。
【0021】
上記処理槽には内部に堆積された有機廃棄物の水分量を検出する水分量検出手段を設け、上記供給ポンプは、上記水分量検出手段で検出された水分量に応じて上記給気口から供給する空気量を増減調整するように構成する。
【0022】
上記処理槽には、外気を導入する外気導入パイプと、上記外気導入パイプからの空気を加熱する加熱手段とを備え、上記空気供給パイプは上記処理槽内の加熱空気を給送する循環パイプで構成される。
【0023】
次に本発明に係わる有機廃棄物処理装置における空気供給方法は、有機廃棄物を微生物で分解処理する処理槽内に乾燥若しくは分解作用を促進する空気を供給する方法であって、上記処理槽内に堆積する有機廃棄物に空気給送パイプの給気口から処理槽内の空気又は外気を供給する際に、この給気口に配置した回転羽根部材で給気口に進入する有機廃棄物を吐出しながら空気を給送する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、処理槽内に収容した有機廃棄物を攪拌しながら微生物で分解処理する際に、有機廃棄物内部に給気口を有する中空筒形状の空気給送パイプを設け、このパイプ内部又は外部に給気口に進入した有機廃棄物を吐出方向に移送又は拡散する回転羽根部材を設けて回転させるようにしたものであるから次の効果を奏する。
【0025】
処理槽内の有機廃棄物内部に配置された給気口には、有機廃棄物が自重或いは攪拌作用で内部に進入しても、この廃棄物は回転羽根部材で吐出方向に移送されるから給気口に目詰まりが発生することがない。これと共に装置停止時に残留廃棄物が給気口内に進入して固化しても、再起動時に回転羽根部材を回転することによって給気口外部に除去される。従って装置を長期間、稼働させても常に適量の空気を供給し続けることが出来る。この為処理槽内の有機廃棄物を乾燥するときには短時間で乾燥することができ、また有機廃棄物に好気性微生物を混入して分解処理するときには、その分解作用を促進することができる。
【0026】
更に、本発明は処理槽内で有機廃棄物を攪拌する攪拌手段と、上記回転羽根部材を異なる駆動手段に連結することによって攪拌速度に対して羽根部材の回転速度を高速に回転することが出来る。従って給気口の周囲を対流する有機廃棄物を加速除去することによって給気口からの空気を遠方に給送することが可能となる。
【0027】
このように本発明は、給気口を有する空気供給パイプの内部又は外部に回転羽根部材を設け、この羽根部材を給気口内部に進入した廃棄物を外部に吐出するように回転するものであるから、その構造は簡単で故障も少なく安価に提供することが出来るなど顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下図示の好適な実施の態様に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明に係わる有機廃棄物処理装置の全体構成を示す説明図であり、図2は図1の中央縦断面を示す説明図である。図3は図1の装置における空気供給機構の説明図であり、(a)は正面状態を、(b)は側面状態を、(c)(d)は回転羽根部材の形状を示す説明図である。図4は処理槽内を流動する廃棄物と空気供給機構の動作状態を示す説明図である。
【0029】
図1に示す有機廃棄物処理装置Aは、内部に有機廃棄物(以下「処理物」という)を収容する処理槽10と、攪拌手段20と、空気供給機構40とから構成されている。以下「処理槽」「空気供給機構」の順に説明する。
【0030】
[処理槽の構成]
処理槽10は装置外筐(ハウジング)11に覆われ、内部に処理物Mを収容する形状に形成されている。この処理槽10は用途に応じた容積で堅牢に構成される。ハウジング11は適宜の金属材料、合成樹脂などで処理槽10を覆い、機密性と耐水性と、耐熱性を備えている。図示のハウジング11はフレーム枠組に金属板を溶接して外壁を形成し、適度の機密性を備えている。この機密性は内部の処理槽10に収納した処理物Mが外部に飛散しないことと、異臭が外部に及ばない程度に構成されている。また耐水性は処理物Mに含まれている水分が外部に漏れ出さない程度に構成されている。更にハウジング11は処理槽10を適温(後述する処理物の分解温度)に保持するように外壁は断熱壁で構成されている。
【0031】
このように形成された処理槽10には処理物Mを投入する投入扉12と、残留物を取り出すドレン扉13が備えられている。従って処理槽内10は、投入扉12から処理物Mを投入、或いはこの扉に連結したコンベア(不図示)で搬入し、内部で分解処理した後、分解出来ない残留物(例えば金属片など)をドレン扉13から取り出すように構成され、図示しないドレンパイプにより処理槽内に残留した水を外部に排出するように構成されている。尚、図示12aは投入扉12に設けられたハンドルである。
【0032】
上述の処理槽10には、温度検知センサTSと、水分量検出センサHSが備えられている。この温度検知センサTSは処理槽内の処理物Mの温度を検出し、水分量検出センサHSは処理物Mに含まれる水分量を検出する。この温度検知センサTSは、例えばサーモセンサ(熱電対)などで構成する。また水分量検出センサHSとしては、例えばセンサ板に付着した水滴の物理量を検出して含水率を検出する(特開2006−281167号参照)ように構成する。この温度検知センサTSと水分量検出センサHSは図1及び図2に示すように処理槽10内の側壁に取付けられ、処理物Mの温度と水分を直接検出するように配置されている。この温度検知センサTSと水分量検出センサHSとは後述するコントローラに検出信号を転送するように結線されている。
【0033】
[攪拌手段の構成]
上記処理槽10内には、処理物Mを攪拌する攪拌手段20が備えられている。この攪拌手段20は、(1)処理槽10内に収容した処理物Mと微生物とその培養物(パルプチップなど)とを混合する目的と、(2)微生物(多くは好気性)に空気を供給する目的と、(3)処理物Mに含まれている水分を蒸発させる目的を達するように構成される。このため、攪拌手段20は回転軸21と、この回転軸21に装備した攪拌羽根22とで構成され、回転軸21には攪拌モータKMが連結されている。
【0034】
このように処理槽10内に収容された処理物Mを攪拌する攪拌羽根22は、回転軸21から略々直交する方向に複数のブレード羽根を突設する構造(例えば特開2004−315259号参照)と、回転軸21に螺旋状にスパイラル羽根を巻装する構造(例えば特開2001−170605号参照)が知られている。本発明はそのいずれを採用しても良いが、以下図示のスパイラル羽根構造について説明する。
【0035】
図示の装置は処理槽10内に左右一対の第1回転軸21aと第2回転軸21bを設け、それぞれの回転軸に第1,第2スパイラル羽根22a、22bを巻装してある。図示22xは支持ステムであり、基端部を回転軸21に嵌合支持し、先端部でスポーク状に羽根板を支持している。図示21vは回転軸21をハウジング11の側壁に支持する軸受である。
【0036】
このように処理槽10内に左右一対に配置された第1,第2回転軸21a、21bは、攪拌モータKMに減速ギア、カップリング(不図示)を介して連結され、第1,第2回転軸21a、21bは互いに反対方向に回転するように連結されている。従って処理物Mは例えば図1前面側に位置する第1スパイラル羽根22aで同図左から右側に移動し、図1後方側に位置する第2スパイラル羽根22bで同図右から左に移動するように周遊する過程で攪拌されることとなる。
【0037】
[スパイラル羽根の破砕機構]
上述のように1つ或いは複数のスパイラル羽根22で処理物Mを攪拌しながらこれに混入した微生物で分解処理する。このとき攪拌羽根(スパイラル羽根;以下同様)22で処理物Mを破砕して微生物による分解を促進することが好ましい。この場合、処理物Mに木片など容易に破砕出来ないものが含まれていることがある。そこで図示の装置は攪拌羽根22と処理槽10の内壁(底壁)10aとを次のように構成している。円筒軌跡で回転する攪拌羽根22に対して処理槽10の底壁10aは半裁円形状(図2参照)に形成され、羽根の運動軌跡に倣う形状になっている。そこで図5に拡大した状態を示すように攪拌羽根22には所定間隔で複数の突起22yが一体に形成されている。図5は1つの突起22yを示しているが羽根全長に亘って所定間隔で複数形成されている。そしてこの突起22yと相互に嵌合する破砕突起10xが処理槽10の底壁10aに一体形成されている(図5参照)。この破砕突起10xも底壁10aに上記スパイラル羽根22の外周に沿って複数配置されている。
【0038】
従って木片など分解処理に時間を要する処理物は、攪拌羽根22で攪拌される際に処理槽底部に集積される。そこでこの底壁10aに所定間隔で破砕突起10xを設け、この破砕突起10xと凹凸嵌合する突起22yを羽根板側に設けることによってこれらの木片を破砕することとなる。尚、この破砕突起10xと突起22yで破砕出来ない処理物(例えば金属片など)は攪拌羽根22の回転で槽内を旋回し、残留することとなる。
【0039】
[吸排機構の構成]
上述の処理槽10には次の「吸排機構」が備えられている。処理槽10には外気を導入する外気導入パイプ31と排気パイプ32が連結されている。この外気導入パイプ31には加熱ヒータ(不図示)が内蔵され、外気を所定温度に昇温して処理槽10内に供給する。排気パイプ32は処理槽内で発生したガス(例えば炭素ガス、メタンガスなど)を外部に放出する。この場合排気パイプ32には外気放出の際には内部の塵埃を除去し、異臭を緩和するフィルタリング手段33が設けられている。
【0040】
このフィルタリング手段33は例えば、送風管にコンプレッサで大量の空気を送風し、その風圧で処理槽10内のガス(水分及び内部発生ガスを含んだ空気)を吸引するように排気パイプ32を連結する。これによって処理槽内から吸引されたガスは緩和され異臭を放つことなく大気中に放出される。これと同時に送風管を遠心分離構造に形成することによって排出ガスに含まれた塵埃を分離除去することができる。
【0041】
上述の加熱ヒータと、吸排気量をコントロールすることによって処理槽10内の温度と空気量と水分量が制御されるようになっている。尚加熱ヒータは外気導入パイプ31に内蔵する場合を説明したが、これは処理槽10内に配置しても良く、また、フィルタリング手段としてスポンジ、不織布などのフィルタを用いても良いことは勿論である。
【0042】
[空気供給機構の構成]
本発明は上述の処理槽10内に処理物Mと好気性微生物W(微生物と培養チップ;図4に示す)を混合して攪拌しながら分解処理することを特徴としている。この好気性微生物Wは糸状菌、細菌、放線菌など既に種々のものが知られ、有機物を水(HO)と炭酸ガス(CO)に分解することが知られている。そこでこの好気性微生物Wによる分解を促進するためには空気と温度及び湿度を所定の証券にする必要がある。
【0043】
上述の有機廃棄物処理装置Aでは、温度検知センサTSからの検知信号で外気導入パイプ31に内蔵した加熱ヒータで槽内温度をコントロールする。また、水分量検出センサHSからの検知信号で槽内温度を上昇させて乾燥することによって好気性微生物Wの活性化を図ることができる。ところが好気性微生物Wに供給する空気は、前述の外気導入パイプ31から大気を導入しても内部に堆積されている処理物中の微生物にまで供給することは難しい。そこで本発明は処理物内部に空気を供給する方法を採用している。この場合、空気供給口に処理物が詰まる問題が生ずる。本発明は次の構成によってこれを解決している。
【0044】
[空気供給機構の第1実施形態]
図3に示す空気供給機構40は、空気供給パイプ41と、このパイプに処理槽10内の空気(加熱空気)若しくは外気を供給する供給ポンプ45(図1参照)と、給気口42に進入する処理物を吐出方向に移送する回転羽根部材46とから構成されている。そこで空気供給パイプ41は円筒形状の中空スリーブ41aで構成され、先端部(図3(a)左端)には給気口42が形成されている。基端部(図3(a)右端)には空気導入口43が設けられている。
【0045】
上記中空スリーブ41aの内部にはスリーブ内径と少許の間隙を形成して旋回動する回転羽根部材46が内蔵されている。回転羽根部材46は回転軸46xと、その周囲に螺旋状に巻回されたスパイラル羽根46yで構成され、スリーブ部材41aを取付けているブラケット47に支持されている。つまり回転軸46xがブラケット47に軸受を介して回転自在に片持ち支持され、この回転軸46xには駆動モータM2がカップリングで連結されている。
【0046】
従って、処理槽10の外部に配置されたブラケット47に中空スリーブ41aと回転軸46xと、駆動モータM2が取付けられ、スパイラル羽根46yは回転軸46xに巻装されている。図示48は中空スリーブ41aと処理槽10の側壁とをシールドする軸承カラーである。そして中空スリーブ41aの給気口(ノズル口;以下同様)42は処理槽内に堆積される処理物Mの内部に配置されている。つまり有機廃棄物処理装置Aの許容最小堆積高さ(図1に示すHL)より低い位置に給気口42が臨むように配置されている。またこの給気口42は図2に示すように前述の第1回転軸21aと第2回転軸21bの中間点に配置されている。これは給気口42から第1スパイラル羽根22aと第2スパイラル羽根22bで旋回される処理物Mの中央に空気を供給するためである。
【0047】
上記スパイラル羽根46yは回転軸46xを図3(c)矢視X方向に回転するときには中空スリーブ内に進入した処理物を矢視Y方向に吐出するように形成されている。これと共にスパイラル羽根46yには空気通路46zを形成するように回転軸方向にスリーブ内壁との間でV溝を形成するようになっている。従って中空スリーブ41a内に挿入されているスパイラル羽根46yは回転軸46xの回転でスリーブ内の処理物を外部に吐出し、これと同時に空気導入口43からの空気を給気口(ノズル口)42に空気通路46zで供給することとなる。
【0048】
上記中空スリーブ41aの空気導入口43には供給ポンプ45を介して処理槽10内の空気を循環させる循環パイプ48が連結されている。尚、図示の実施形態に於いて空気供給パイプ41に外気を導入する場合には加熱ヒータを設けて所定温度に昇温して導入する。
【0049】
[空気供給機構の作用の説明]
上述の図3に示す空気供給機構40の作用について説明する。まず装置起動時には処理槽10内に処理物Mを投入すると、図示しないコントローラは予め設定されている槽内温度及び湿度に制御する。このとき空気供給パイプ41内の回転羽根部材46を図3矢視X方向に回転する。すると中空スリーブ41a内に進入している残留処理物は給気口(ノズル口)42から吐出される。
【0050】
そこで処理槽10内の処理物Mは図4に示すように、攪拌手段20の攪拌羽根22で同図矢視Z方向に移動する。この処理物Mは第1スパイラル羽根22aのスパイラル運動で上下に旋回動しながら矢視Z実線方向に移動し、第2スパイラル羽根22bの運動で矢視Z′破線方向に移動し槽内を周遊する。このとき空気供給パイプ41には給気口42から処理物Mが内部に進入しようとする。ところが空気供給パイプ内の回転羽根部材46(上述のスパイラル羽根46y)は図4矢視X方向に回転しているため処理物Mが給気口42から内部に進入するのを阻止する。
【0051】
尚、上記給気口42の周辺の処理物Mに前述の攪拌羽根22から作用する搬送力F1に比して、回転羽根部材46が及ぼす搬送力F2が大きくなるよう(F2>F1)に設定されている。この搬送力F1(F2)は処理物Mに及ぼす運動量であり回転羽根部材46を攪拌羽根22に比べて高速回転することによって搬送力F2を増大させることが出来る。
【0052】
そこで給気口42の周囲に位置する処理物Mには給気口内部に進入する力と吐出する力が作用し、両者のバランスで処理物Mには上下攪拌方向の力のみが作用するため給気口42近辺に滞留することなく加速して攪拌方向上下に移動する。このとき処理物Mには給気口42から空気が供給される。この空気を含有した処理物Mは第1,第2スパイラル羽根22a、22bによって上方に浮動し、その後下方に拡散して落下する。このとき給気口42からの空気が処理物M全体に拡散される。
【0053】
[空気供給機構の第2実施形態]
上述の回転羽根部材46は空気供給パイプ内部にスパイラル羽根46yを内蔵する場合を示したが。この回転羽根部材46は空気供給パイプの外周に回転自在に配置しても良い。図6にその形態を示し、同(a)は処理槽内に空気を導入する空気供給部の構成を、(b)はその駆動機構の説明図である。図6において、図3と同一の構成につては同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
図6の機構は中空スリーブ41aの外周に多数の給気口(孔)51a、51b、51cが配置してある。そしてこの中空スリーブ41aの外周には前述と同様のスパイラル羽根52が旋回動自在に嵌合支持してある。そしてこのスパイラル羽根52には駆動モータM3が減速ギア(不図示)を介して連結してある。図6(b)に示すようにスパイラル形状に形成されたスパイラル羽根52は、その内径d1が中空スリーブ41aの外径より若干大きく形成されている。そして中空スリーブ41aはハウジング11の外壁に固定したブラケット54に固定されている。この中空スリーブ41aには基端部に循環パイプ55が連結され、処理槽内の空気(加熱空気)を供給ポンプ(図示せず)で循環するようになっている。また中空スリーブ41aの先端部外周には多数の給気口(孔)51a、51b、51cが穿設されている。
【0055】
上述のように構成された空気供給パイプ41の外周にはスパイラル羽根52が回転自在に遊嵌され、このスパイラル羽根52の基端部には軸受スリーブ52aが一体に設けられ、この軸受スリーブ52aはハウジング11の外壁にベアリングを介して回転自在に支持されている。また上記ブラケット54には駆動モータM3が搭載され、そのモータ回転軸は減速ギァを介して図示伝動歯車56に連結されている。この伝動歯車56は上記軸受スリーブ52aに固定した受動歯車57に歯合されている。このような構成によって静止固定された中空スリーブ41aの外周でスパイラル羽根52が駆動モータM3によって旋回動することとなる。
【0056】
上記駆動モータM3の回転軸には図示しないエンコーダが取付けられ、スパイラル羽根52の回転位置を制御するようになっている。これは、装置不使用時に中空スリーブ41aの給気口51a〜51bをスパイラル羽根52で遮蔽する為である。つまり所定角度(ピッチ)で傾斜したスパイラル羽根52は給気口51a〜51cを覆う回転角度位置が設定してあり、装置の不使用時には羽根内壁が給気口51a〜51cを覆い、装置作動時に空気を供給しないときには同様に給気口を覆うように制御する。
【0057】
上述の図6に示す空気供給機構の作用について説明する。まず装置起動時には空気導入パイプ41の給気口51a〜51cはスパイラル羽根(回転羽根部材;以下同様)52の内壁で覆われている。従って処理槽内に残留物が存在しても給気口に詰まることがない。またこの給気口51a〜51cに処理物Mが詰まっていても次のように除去される。
【0058】
そこで処理槽10内に処理物Mを投入すると、図示しないコントローラは予め設定されている槽内温度及び湿度に制御する。これと前後してコントローラは空気供給パイプ41の外周に装備した回転羽根部材52を図6(a)矢視X方向に回転する。すると中空スリーブ41aの外周に巻装されているスパイラル羽根52が反時計方向に回転する際に、給気口51a、51b、51cの周囲に滞留している処理物を矢視方向に移動する。この処理物の移動で給気口51a〜51cに詰まっている処理物も取り除かれる。これと同時にコントローラは図示しない供給ポンプを起動して中空スリーブ内に高圧空気を供給する。すると給気口51a〜51cに詰まっている処理物は外部に吐出される。
【0059】
そこで処理槽10内の処理物Mは図4に基づいて前述したように攪拌手段20の攪拌羽根22で槽内を周遊する。このとき空気供給パイプ41には給気口51a〜51cから処理物Mが内部に進入しようとする。ところが空気供給パイプ41の外周には回転羽根部材(スパイラル羽根)52は図6矢視(a)X方向に回転しているため外周の処理物は処理槽内側に送り出される。つまり給気口内に進入する方向と直交する方向に送り出される。従ってスパイラル羽根52を所定速度で回転すると給気口内に進入しようと処理物Mは羽根のワイパ運動で内部への進入を阻止されることとなる。
【0060】
そこで給気口51a〜51cの周囲に位置する処理物Mには前述の攪拌羽根22による上下攪拌方向の力が作用するため給気口近辺に滞留することなく加速して攪拌方向上下に移動する。このとき処理物Mには空気が給気口51a〜51cから供給される。この空気を含有した処理物Mは第1,第2スパイラル羽根22a、22bによって上方に浮動し、その後下方に拡散して落下する。このとき給気口51a〜51cからの空気が処理物M全体に拡散される。
【0061】
[堆積物内に気体を混入する方法]
次に本発明に係わる空気供給方法について説明する。有機廃棄物を微生物で分解処理する処理槽内に乾燥若しくは分解作用を促進する空気を供給する方法であって、処理槽(10)内に有機廃棄物とこれを分解処理する微生物Wを混入し、攪拌手段(20)で攪拌する。
【0062】
この攪拌と同時に処理槽内に堆積している有機廃棄物に空気給送パイプ(41)の給気口(42)から処理槽内の空気又は外気を供給する。この給気口(42)には前述のようにパイプ内部又は外部に給気口内に処理物が進入するのを阻止する回転羽根部材(22)を備える。そこでこの回転羽根部材(22)で給気口(42)に進入する有機廃棄物を吐出しながら空気を給送する。
【0063】
尚、本発明にあって回転羽根部材(22)としてスパイラル羽根を示したが、これに限定されることなく例えばフィン状羽根で給気口(42)に進入しようとする処理物を吐出方向に送出或いは飛散させる構造であれば種々の羽根形状を採用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係わる有機廃棄物処理装置の全体構成を示す説明図。
【図2】図1装置の側面状態の説明図であり、(a)は図1左側面図を、(b)は右側面図を示す。
【図3】図1の装置における空気供給機構の説明図であり、(a)は上面状態、(b)は左側面状態を示し、(c)(d)はスパイラル羽根の形状を示す説明図。
【図4】図1の装置における空気供給機構の動作状態の説明図である。
【図5】図1の装置おける攪拌羽根の構造説明図である。
【図6】図3の空気供給機構と異なる実施形態を示し、(a)は空気供給部の構造を、(b)は羽根駆動部の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
A 有機廃棄物処理装置
M 処理物
W 好気性微生物
10 処理槽
10a 底壁
10x 破砕突起
11 装置外筺(ハウジング)
12 投入扉
12a ハンドル
13 ドレン扉
14 ドレンパイプ
20 攪拌手段
21 回転軸
21a 第1回転軸
21b 第2回転軸
21v 軸受
22 スパイラル羽根(攪拌羽根)
22a 第1スパイラル羽根
22b 第2スパイラル羽根
22x 支持ステム
22y 突起
31 外気導入パイプ
32 排気パイプ
33 フィルタリング手段
40 空気供給機構
41 空気供給パイプ
41a 中空スリーブ
42 給気口(ノズル口)
43 空気導入口
45 供給ポンプ
46 回転羽根部材
46x 回転軸
46y スパイラル羽根
46z 空気通路
47 ブラケット
48 軸承カラー
51a〜51c 給気口(第2実施形態)
52 スパイラル羽根(第2実施形態)
TS 温度検知センサ
HS 水分量検出センサ
KM 攪拌モータ
M2 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄物を微生物で分解処理する有機廃棄物処理装置であって、
上記有機廃棄物を収容する処理槽と、
上記処理槽内で上記有機廃棄物を攪拌する攪拌手段と、
上記処理槽内の有機廃棄物を乾燥及び/又は上記微生物の分解作用を促進する空気を供給する空気供給機構と、
を備え、
上記空気供給機構は、
上記有機廃棄物の内部に配置された給気口を有する空気供給パイプと、
上記空気供給パイプに上記処理槽内の空気若しくは外気を供給する供給ポンプと、
上記給気口に配置され上記有機廃棄物を吐出方向に移送又は拡散する回転羽根部材と、
上記回転羽根部材を回転駆動する駆動手段と、
から構成され、
上記回転羽根部材は上記有機廃棄物が上記給気口に進入するのを阻止する方向に上記有機廃棄物を移動することを特徴とする有機廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記回転羽根部材は前記攪拌手段で所定方向に移動する有機廃棄物を異なる方向に移送又は拡散するように回転動することを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項3】
前記空気供給パイプは、先端に給気口を有する中空スリーブ部材で構成され、
前記回転羽根部材は、上記中空スリーブ部材の内部に配置された螺旋形状のスパイラル羽根で構成され、
上記スパイラル羽根は中空スリーブ内に進入する前記有機廃棄物を給気口外部に吐出するように回転駆動されることを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項4】
前記回転羽根部材は、前記給気口の周囲に位置する有機廃棄物に対して前記攪拌手段が及ぼす搬送力より大きい搬送力を付与するように回転トルク及び/又は回転速度が設定されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項5】
前記空気供給パイプは、外周に給気口を有する中空スリーブ部材で構成され、
前記回転羽根部材は、上記中空スリーブ部材の外周に巻装されたスパイラル羽根で構成され、
上記スパイラル羽根は上記給気口に進入する前記有機廃棄物を外周方向に拡散するように回転駆動されることを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項6】
前記処理槽には内部に堆積された有機廃棄物の水分量を検出する水分量検出手段が設けられ、
前記供給ポンプは、上記水分量検出手段で検出された水分量に応じて前記給気口から供給する空気量を増減調整するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項7】
前記処理槽には、外気を導入する外気導入パイプと、
上記外気導入パイプからの空気を加熱する加熱手段とが備えられ、
前記空気供給パイプは上記処理槽内の加熱空気を給送する循環パイプで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項8】
有機廃棄物を微生物で分解処理する処理槽内に乾燥若しくは分解作用を促進する空気を供給する方法であって、
上記処理槽内に堆積する有機廃棄物に空気給送パイプの給気口から処理槽内の空気又は外気を供給する際に、
この給気口に配置した回転羽根部材で給気口に進入する有機廃棄物を吐出しながら空気を給送することを特徴とする有機廃棄物処理装置における空気供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−131787(P2009−131787A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310294(P2007−310294)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(507395739)
【Fターム(参考)】