説明

有機廃棄物処理装置

【課題】有機廃棄物を発酵分解する過程で処理槽内の乾燥状態を簡単な構造で検出することが可能な有機廃棄物処理装置を提供する。
【解決手段】有機廃棄物を収容する処理槽と、この有機廃棄物を分解する処理物質とを攪拌する攪拌手段と、処理槽内に水分を供給する給水手段とこれを制御する制御手段とを備える。そして攪拌手段で飛散する粉塵を検出する塵埃量検出手段を設け、この検出手段からの塵埃量に応じて給水量を制御することを特徴としている。このため上記塵埃量検出手段は、処理槽内部若しくは処理槽と連通する排気ダクト又は循環ダクトに設置する。また上記給水手段の制御手段には槽内に水分を供給するか否かの判別手段及び/又は槽内に供給する水分量を加減する判別手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ゴミなどの有機廃棄物を分解処理する有機廃棄物処理装置に係わり、流動状態の有機廃棄物とその処理物質の乾燥状態を検出して水分供給する給水機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の処理装置は家庭用ゴミ処理、レストランなどの施設用ゴミ処理装置として広く知られている。そしてその処理方法は、処理槽内に収容した廃棄物を粉砕乾燥する方法と、廃棄物を微生物で発酵させて分解する方法が採用されている。
【0003】
このような処理方法の中でも、有機廃棄物を微生物で発酵分解して炭酸ガス(CO)と水(HO)に分解する方法が残留物を処理する必要が無く、悪臭を発する恐れのないことから広く使用されるに至っている。
【0004】
例えば特許文献1(特開2001−170605号公報)には、有機廃棄物を収容する処理槽と、この処理槽内に設けられた攪拌羽根とを備え、処理槽内に有機廃棄物と好気性微生物を混入して攪拌しながら分解処理する装置が開示されている。そして処理槽の底部には羽根先端と少許の間隙を形成して対向する底壁面に多数の通気孔を形成し、この通気孔から圧搾空気を供給する送気機構が開示されている。同公報には処理槽の底壁面から空気を供給するため処理物の体積が減少しても空気を供給することが出来る旨、記述されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2001−113254号公報)には有機廃棄物を収容する処理槽と、この処理槽内の廃棄物を攪拌する攪拌羽根と、処理物に給水するシャワーとを備えた処理装置が開示されている。そして処理槽内に収容した有機廃棄物に好気性微生物を混入して攪拌しながら空気を供給し、同時に処理物に水を散水する装置が開示されている。尚、同文献には、処理物の分解処理中に散水を継続して行うのか、処理物の含水量に応じて過乾燥のとき散水するのかいずれの説明もなされていない。
【0006】
しかし、有機廃棄物を好気性微生物で分解処理する場合に、この好気性微生物とその培養物質(木材チップなど)に適度な空気を供給するため攪拌すること、また適度な水分状態に維持するため過乾燥のときには水分を供給することは容易に理解できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−170605号公報(図1)
【特許文献2】特開2001−113254号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、有機廃棄物を好気性微生物で分解処理する装置では、微生物に空気と水分を供給する必要がある。この空気と水分の必要量は有機廃棄物の投入量と、その成分及び分解処理の状況によって異なる。そこで処理槽にはその都度要求される空気を供給する給気装置と給水装置、及び槽内温度を検出する温度センサと菌床の含水量を検出する水分センサが備えられ、これらのセンサの検出結果に基づいて送風量を加減、吸水量を加減することは既に知られている。
【0009】
ところが、投入された有機廃棄物の性状、投入量及び処理装置の環境温湿度によって槽内の温度、湿度(菌床の含水量)がその都度異なる。また例えば温度センサ或いは水分センサに処理中の有機廃棄物等がセンサの検出部に付着すると、この付着塊の温度或いは水分を検出することとなる。また処理槽内が過乾燥状態となると、菌床内の微生物が休眠状態となり処理槽内の有機廃棄物の分解作用を果たさなくなる。
【0010】
そこで本発明者は、過乾燥状態の槽内を観察した処、槽内には粉塵が飛散していることを発見した。これは分解途上の廃棄物と好気性微生物及びその培養物質が高温低湿となり、これら内の微細物が槽内を飛散し、この状態を継続すると微生物による処理物の分解が促進されなくなるのと同時に、塵埃が槽外に排出され、排気ダクトの詰まり等の問題を引き起こす。
【0011】
本発明は有機廃棄物を発酵分解する過程で処理槽内の乾燥状態を簡単な構造で検出することが可能な有機廃棄物処理装置の提供をその主な課題としている。
更に、本発明は有機廃棄物の分解過程で処理槽内の過乾燥状態を正確に検出して菌床の過乾燥状態を解消する有機廃棄物処理装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するため本発明は、有機廃棄物を収容する処理槽と、この有機廃棄物を分解する処理物質とを攪拌する攪拌手段と、処理槽内に水分を供給する給水手段とこれを制御する制御手段とを備える。そして攪拌手段で飛散する粉塵を検出する塵埃量検出手段を設け、この検出手段からの塵埃量に応じて給水量を制御することを特徴としている。このため上記塵埃量検出手段は、処理槽内部若しくは処理槽と連通する排気ダクト又は循環ダクトに設置する。また上記給水手段の制御手段には槽内に水分を供給するか否かの判別手段及び/又は槽内に供給する水分量を加減する判別手段を設ける。
【0013】
その具体的な構成を詳述すると、有機廃棄物を収容する処理槽と、処理槽内に配置され有機廃棄物とこの有機廃棄物を分解する処理物質とを攪拌する攪拌手段と、処理槽内に水分を供給する給水手段と、この給水手段を制御する制御手段とを備える。そして上記制御手段には、攪拌手段で飛散する粉塵を検出する塵埃量検出手段を設ける。そこでこの制御手段を上記塵埃量検出手段の検出結果に基づいて給水手段の給水量を制御するように構成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、処理槽内に収容した有機廃棄物とこれを分解する処理物質とを攪拌する攪拌手段で飛散する塵埃量を検出して槽内に水分を供給する給水手段を制御するようにしたものであるから次の効果を奏する。
【0015】
処理槽内で攪拌される有機廃棄物とこれを分解する処理物質(例えば好気性微生物とその培養物質)が過乾燥状態となって飛散するとき、この飛散した塵埃量を処理槽内又はこれと連通するダクト内で検出する。そして塵埃量に応じて給水手段から給水するか、或いは給水量を加減調整することによって微生物の分解作用の最適条件を維持することができる。
【0016】
また、塵検量検出手段は、処理槽内かこれと連通するダクト内に光(可視光、紫外光、赤外光、レーザ光)を照射して光の減衰量から検出することによって簡単な構造で安価に提供することが出来る。
【0017】
更に、本発明は処理槽内に水分センサ或いは温度センサを設け、給水手段の制御手段を塵検量検出手段と水分センサと温度センサからの検出情報で給水要否、給水量加減を行うことによって更に正確で好適な菌床条件を維持することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係わる有機廃棄物処理装置の全体構成を示す説明図。
【図2】(a)は図1装置の側面状態の説明図であり、(b)は(a)と異なる装置の側面図を示す。
【図3】図1の装置における処理物の空気量、含水量及び温度などの槽内環境を調整する機構の説明図であり、散水機構と、給気機構と、槽内空気の循環機構を備えた槽内環境システムを示す全体説明図。
【図4】処理槽内の排気機構を示す説明図であり、(a)は塵埃量検出センサを処理槽内に設けた場合を示し、(b)は排気ダクトに設けた場合を示す。
【図5】攪拌手段を構成する攪拌羽根の構造を示す説明図であり、(a)は攪拌動作の説明図を示し、(b)は(a)x−x方向の断面図。
【図6】図1の装置のコントローラを示す概念説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に示す有機廃棄物処理装置Aは、内部に有機廃棄物(以下「処理物」という)を収容する処理槽10と、攪拌手段20と、槽内環境制御機構60と、制御コントローラ65とから構成されている。以下「処理槽」「攪拌手段「槽内環境制御機構」「制御コントローラ」の順に説明する。
【0020】
[処理槽の構成]
処理槽10は装置外筐(ハウジング)11に覆われ、内部に処理物Mを収容する形状に形成されている。この処理槽10は用途に応じた容積で堅牢に構成される。ハウジング11は適宜の金属材料、合成樹脂などで処理槽10を覆い、機密性と耐水性と、耐熱性を備えている。図示のハウジング11はフレーム枠組に金属板を溶接して外壁を形成し、適度の機密性を備えている。この機密性は内部の処理槽10に収納した処理物Mが外部に飛散しないことと、異臭が外部に及ばない程度に構成されている。また耐水性は処理物Mに含まれている水分が外部に漏れ出さない程度に構成されている。更にハウジング11は処理槽10を適温(後述する処理物の分解温度)に保持するように外壁は断熱壁で構成され、処理槽内壁の結露を防止している。
【0021】
このように形成された処理槽10には図2に示すように処理物Mを投入する投入扉12と、残留物を取り出すドレン扉13が備えられている。従って処理槽内10は、投入扉12から処理物Mを投入、或いはこの扉に連結したコンベア(不図示)で搬入し、内部で分解処理した後、分解出来ない残留物(例えば金属片など)をドレン扉13から取り出すように構成されている。また、図示しないドレンパイプが設けられ処理槽内に残留した水分を外部に排水するように構成されている。尚、図示12aは投入扉12に設けられたハンドルである。
【0022】
上記制御コントローラ65は、制御ボックス62と、この制御ボックス62に内蔵した電気回路から構成されている。電気回路は後述する駆動モータのドライバ回路と、後述するセンサの検出回路などで構成される。電気回路の構成は後述するが、図示の制御ボックス62は外壁を断熱材で構成し、ボックス内壁に結露するのを防止している。
【0023】
[攪拌手段の構成]
上記処理槽10内には、処理物Mを攪拌する攪拌手段20が備えられている。この攪拌手段20は、(1)処理槽10内に収容した処理物Mと微生物とその培養物(パルプチップなど)とを混合する目的と、(2)微生物(例えば好気性微生物)に空気を供給する目的と、(3)処理物Mに含まれている水分を蒸発させる目的を達するように構成される。
【0024】
このため、処理槽10内には攪拌手段20は1つ又は複数の攪拌羽根22を装備する。この攪拌羽根22は図2(a)に示すように平行する2つの回転軸21a、21bとこの回転軸の周囲に取付けた攪拌羽根22a、22bで構成しても、或いは図2(b)に示すように1つの回転軸21cの周囲に攪拌羽根22cを配置してもいずれの構成も可能である。攪拌羽根22(22a〜22c;以下同様)の形状は、図示しないが回転軸21の周囲に螺旋状のスパイラル形状に構成するか、回転軸21の周囲に数枚の羽根板を配置した回転羽根で構成するか、図1及び図5に示すようにリング形状に構成する。
【0025】
図示のものは処理槽10内の略々中央部に回転軸21をハウジング11に軸受け支持し、この回転軸21に複数(図1のものは2つ)のリング形状(図5(b)参照)の攪拌羽根22A,22Bを支持ステム22xに一体的に取り付ける。そして攪拌羽根22A,22Bは回転軸21に対して軸方向に90度(直交)以外の所定角度θ(例えば45度)に傾斜させてある。これにより回転軸21の回転で攪拌羽根22A,22Bは処理物Mをその環状内壁で掻き回しながら傾斜方向に移送する。この傾斜角度がゼロ(回転軸と直交する方向)のときには処理物Mを軸方向に移動する推力は生じないが角度θを45度に近く傾斜させると処理物Mを図5(a)に示すa,b,c,d方向に流動させることが可能となる。
【0026】
この攪拌羽根22A,22Bは好気性微生物の培養物質(木片チップなどの菌床)を粉砕しない形状で、且つ処理物全体が槽内を流動することが好ましい。図5(b)に示すリング形状の攪拌羽根22A(22B)はリング形状であるため培養物質を粉砕する程度が低く、且つこのリングを所定角度(図5(a)に示す角度θを[0<θ<45度]に設定することにより流動性(回転軸方向の推進力)を増大することが可能である。このように構成された回転軸21には攪拌モータKMが連結されている。図示21vは回転軸21をハウジング11の側壁に支持する軸受である。
【0027】
尚、攪拌羽根の異なる形状として回転軸21に略々直交する方向に複数のブレード羽根を突設する構造(例えば特開2004−315259号公報参照)と、回転軸21に螺旋状にスパイラル羽根を巻装する構造(例えば特開2001−170605号公報参照)なども知られている。本発明はそのいずれを採用しても良い。
【0028】
このように処理槽10内に配置された回転軸21は、攪拌モータKMに減速ギア、カップリング(不図示)を介して連結されている。従って処理物Mは攪拌羽根22Aの上面側では図5(a)に示すa方向に移動し、攪拌羽根22Aの下面側ではb方向に移動する。また攪拌羽根22Bの上面側で処理物Mはc方向に移動し、下面側ではd方向に移動する。この攪拌羽根22A、22Bの回転によって処理物Mは、上下方向の攪拌だけでなく、横方向の攪拌も行われるので処理物全体が万遍なく攪拌されることとなる。
【0029】
[リング羽根の破砕機構]
上述のように1つ或いは複数のリング羽根22で処理物Mを攪拌しながらこれに混入した微生物で分解処理する。このとき攪拌羽根(リング羽根;以下同様)22で処理物Mを破砕して微生物による分解を促進することが好ましい。この場合、処理物Mに花木の茎など容易に破砕出来ないものが含まれていることがある。そこで図示の装置は攪拌羽根22と処理槽10の槽壁11aとを次のように構成している。
【0030】
図5(b)に拡大した状態を示すように攪拌羽根22には所定間隔で複数の突起22yが一体に形成されている。図5に示すように突起22yは羽根全長に亘って所定間隔で複数形成されている。そしてこの突起22yと相互に嵌合する破砕突起11xが処理槽10の槽壁11aに一体形成されている。この破砕突起11xも槽壁11aに上記リング羽根22の外周に沿って複数配置されている。
【0031】
従って花木片など分解処理に時間を要する処理物は、攪拌羽根22で攪拌される際に処理槽内に集積される。そこでこの槽壁11aに所定間隔で破砕突起11xを設け、この破砕突起11xと凹凸嵌合する突起22yを羽根板側に設けることによってこれらの木片を破砕することとなる。
【0032】
[槽内環境制御機構の構成]
上述の処理槽10には以下の槽内環境制御機構が備えられている。処理槽10は前述したように気密性に富んだハウジングで構成されている。この処理槽10には「温風給送機構31」と「排気機構32」と「給水機構14」と「菌床給気機構40」が設けられている。
【0033】
温風給送機構31は、図1に示すように外気導入孔を有する送風管31Sと、この送風管31Sに配置された送風ファン31fと加温ヒータ31hが設けられ、送風ファン31fにはファンモータ31Mが連結されている。また加温ヒータ31hには後述するコントローラ65に内蔵された給電回路に電気的に接続されている。これによって処理槽10内には所定温度に加温された空気が導入され、この加温温度は使用する好気性微生物の性状に応じて設定されている。
【0034】
排気機構32は図4(b)に示すように処理槽10に連通する排気ダクト33と、この排気ダクト33に設けられた吸引ファン(バキュームファン)34と、処理槽内の塵埃(廃棄物と菌床培養物質の一部)を濾過するフィルタ装置35と、脱臭装置36がそれぞれ排気ダクト33に設けられている。吸引ファン34にはバキュームモータ34Mが連結され、後述するコントローラ65に内蔵されたドライバ回路73に電気的に接続されている。また、フィルタ装置35は排気ダクト33に流入した塵埃が外部に放出しないように、例えば遠心分離構造の塵埃除去機構(不図示)が内蔵されている。
【0035】
また、脱臭装置36は排気ダクト内を通過する気体に脱臭剤を滴下するように構成されている。処理槽10に投入された有機廃棄物は槽内で好気性微生物の作用で発酵分解される過程で炭酸ガス、メタンガスなど異臭ガスを発生することがある。また有機廃棄物の一部が槽内で腐敗した場合も同様である。このため排気ダクト33にはオゾンなどの脱臭剤を混入する脱臭装置36が必要となる。図示のものはタンクに収納したオゾンを排気ダクト中に滴下する構造を採用している。
【0036】
給水機構14は図1に示すように給水タンク15と加圧ポンプ16と給水パイプ17で構成されている。給水パイプ17は処理槽10の天部に配置され、複数の散水ノズル18が設けられている。そして給水タンク15には外部水道管などの給水パイプに連結され、濾過フィルタ(不図示)或いはPH(水素イオン濃度指数)調整剤などの外部水質改善剤混入機構(不図示)が設けられている。尚給水パイプ17には電磁弁が内蔵されて、後述するコントローラ65で電磁弁を開閉するようになっている。従ってコントローラ65で電磁弁を開放し、加圧ポンプ16を駆動することによって処理槽10内に散水ノズル18から撒水補給することが可能となる。
【0037】
菌床給気機構40は、処理槽内で攪拌羽根22によって攪拌される処理物Mと好気性微生物を含む培養物質に空気を供給する。これは好気性微生物に適した空気を供給するためであり、処理槽10内に温風給送機構31で導入された空気を処理物Mに環流させる。このため循環パイプ48が設けられ、この循環パイプ48は処理槽底部に配置された給気ノズル41に連結されている。図示45は加圧ポンプである。
【0038】
[センサ構造]
上述の処理槽10には水分センサHSと温度センサTSが配置され、特に本発明は前述の排気ダクト33に塵埃量検出センサDSを配置したことを特徴としている。各センサ構造について説明する。
【0039】
「水分センサ」
上述の処理槽10には、処理物Mの含水量を検出する必要がある。これは前述の乾燥処理の場合には処理物Mの含水量を検出して乾燥空気の供給量を調節する。また前述の混合処理の場合には処理物Mの含水量を検出して吸水量を調節する。また前述の分解処理の場合には処理物Mの含水量を検出して給気量或いは調温用温風の供給量を調整する。
【0040】
このため処理槽10内に水分センサHSを配置する。この水分センサHSは処理槽10の槽壁11aに配置する。この水分センサHSは処理槽10内に堆積した処理物Mの含水量を検出する個所(検出部10x)に配置する。図示の検出部10xは、処理槽内の処理物Mの最小収納量位置HL(図1参照)より下方に設定さている。これにより少量の処理物Mが収納されている場合にもその含水量を検出することが可能となる。また検出部10xは後述する攪拌手段20によって処理槽内を流動する処理物Mの含水量を検出するように攪拌手段20の近傍の槽壁11aに配置されている。
【0041】
「温度センサ」
温度センサTSは処理槽10内の処理物Mの温度を検出する。この温度センサTSは例えばサーミスタで構成し、そのプローブを処理槽内壁に埋設してある。そして処理槽内の温度をこのプローブで検出し、その検出値を電流値としてコントローラ65に電気的に伝達するようになっている。
【0042】
[塵埃量検出センサ]
本発明は上述の処理槽10の内部、若しくはこれと連通する排気ダクト33に次の塵埃量検出センサDSを配置することを特徴としている。図4(a)に処理槽10の内部に塵埃量検出センサDSを配置する場合を示す。処理槽10には処理物Mを収容する上部空間に塵埃量検出センサDSを配置する。図示の塵埃量検出センサDSは反射式センサで、レーザ発信素子5aとレーザ受信素子5bをセンサボックス5x内に内蔵してある。そしてこのセンサボックス5xはガラス製の透明カバー(検出面;以下同様)5yで覆われている。レーザ発信素子5aからはレーザ光線が、レーザ受信素子5bはその反射光線を感知して光電変換する通常のレーザ検知器で構成されている。
【0043】
特に図示の装置はセンサボックス5xの透明カバー5yに冷却風を照射している。このため処理槽外部から送風ファン38fで送風し、冷却素子(例えばペルチェ素子)で所定温度に冷却して送風管38pからセンサボックス5xに導きノズル38nで透明カバー(検出面)5yに冷却風を吹き付けている。図示38Mは送風用モータである。このようにレーザ検知器の検出面(透明カバー)5yに冷却風を吹き付けているのは、レーザ発信素子5aとレーザ受信素子5bの特性が処理槽10内の温度変動によって変化しないように冷却するためである。これと同時に検出面5yに付着した塵埃によって検出誤差が生じないように付着埃を除去するためである。
【0044】
次に図4(b)には塵埃量検出センサDSを排気ダクト33に内蔵する場合を示す。同図に示すように排気ダクト33にはバキュームファン34と脱臭装置36との間に排気ダクト内を通過する気体に混入されている塵埃を検出するように塵埃量検出センサDSが設けられている。
【0045】
図示の塵埃量検出センサDSは排気ダクト内を通過する気体を一対の検出プローブPa,Pbで検出する。この一対のプローブPa,Pbは発光素子と受光素子で構成するか、発振素子と受振素子で構成するか、或いは互いに対向する電極で構成する。図示の検出プローブPa,Pbは発光素子7aと受光素子7bで構成され、発光素子7aから可視光、赤外光、紫外光、レーザ光を受光側に投光する。そして受光素子7b側で照射された光を光電変換し、その検出値を後述するコントローラ65に転送するように構成されている。これによって発光素子7aから照射された光量と受光素子7bで受光した光量差から排気ダクト中の気体に含まれる塵埃量を検出することが可能となる。
【0046】
この他、一対のプローブPa,Pbを発振素子7aと受振素子7bで構成し、発振素子7aから超音波を投射して、受振素子7bで受信する超音波センサ構造部構成することも可能である。更に一対のプローブPa,Pbを互いに対向する電極で構成し、この電極間の静電容量、電気抵抗値を検出することによって排気ダクト中の気体に含まれる塵埃量を検出することも可能である。
【0047】
本発明は上述の塵埃量検出センサDSの検出値に基づいて槽内の菌床が過乾燥と判断したとき、給水機構14で散水することによって水分を補給することを特徴としている。このため、給水機構14の制御手段(コントローラ)65(図6参照)について説明する。(1)塵埃量検出センサDSの検出値のみから「菌床の過乾燥状態」を判別するか、又は(2)水分センサHSの検出値と塵埃量検出センサDSの両検出値から「菌床の過乾燥状態」を判別するか、いずれかの検出値から「菌床の過乾燥状態」を判別する構成を採用する。
【0048】
(1)塵埃量検出センサDSの検出値のみから「菌床の過乾燥状態」を判別する場合。
この場合は、塵埃量検出センサDSの検出値を予め設定した基準値と比較し、その比較結果に応じて給水機構14を制御する。つまり処理槽10内に発生する塵埃を予め仕様とする有機廃棄物の性状と菌床(好気性微生物とその培養物質)から発生する塵埃状態を実験などで設定する。この正常に作用する好適な菌床状態で発生する塵埃量として設定された基準値と塵埃量検出センサDSで検出した検出値をコンパレータ、ブリッジ回路などで比較する。そしてこの比較結果で検出値が基準値より大きいときには前記給水機構14を作動する。その作動は例えば電磁弁を開き給水パイプ17に給水タンク15の水を供給し、同時に加圧ポンプ16を回転駆動する。これによって給水パイプ17から水が処理槽内に散水され、処理槽内の菌床に供給される。また、上述の比較結果で検出値が基準値より小さいときは、前記給水機構14の作動を停止する。
【0049】
(2)水分センサHSの検出値と塵埃量検出センサDSの両検出値から「菌床の過乾燥状態」を判別する場合。
この場合は、塵埃量検出センサDSの検出値と水分センサHSの検出値をそれぞれ予め設定した基準値と比較する。つまり微生物が正常に作用する好適な菌床状態のときの塵埃量と含水量をそれぞれ実験値として求め、これによって設定される基準値と水分センサHSの検出値を比較し、同様に塵埃量の基準値と塵埃量検出センサDSの検出値を比較する。そして両比較値が共に基準値より大きいとき(and条件)、或いは両比較値の一方が基準値より大きいとき(or条件)のとき前記給水機構14を作動する。また両比較値が共に基準値より小さいとき(and条件)、或いは両比較値の一方が基準値より小さいとき(or条件)のとき前記給水機構14の作動を停止する。
【0050】
次に上述の水分センサHSの作用と、図1の装置におけるコントローラ65について説明する。このコントローラ65はマイクロコンピュータ(マイコン)で構成するか、または電子回路で構成する。図6には電子制御の概念図を示す。コントローラ65には前述の温度センサTS、水分センサHSの出力端子が接続される。そして温度センサTSは例えばサーミスタで構成し、処理槽内の温度を検出し、その検出値を電流値としてコントローラ65に電気的に伝達する。そこでコントローラ(制御手段)65は入力された各検出値を予め設定された基準値と比較手段66で比較する。この比較手段66はコンパレータ或いは抵抗値のブリッジ回路で構成する。
【0051】
そこで制御手段(コントローラ)65は温度センサTSからの検出値と予め設定された基準値を比較して、基準温度より槽内温度が高いときは前述の温風給送機構31の送風を停止するか、或いは温風給送機構内部の加熱ヒータ31hの給電を停止する。また槽内温度が基準温度より低いときは温風給送機構31の送風を開始するか、或いは温風給送機構内部の加熱ヒータ31hに給電する。この温度制御は処理槽内温度制御回路67で行う。また、制御手段(コントローラ)65は水分センサHSの検出値を基準値と比較して含水量が多いときは前述の温風給送機構31の送風を開始するか、或いは温風給送機構内部の加熱ヒータ31hに給電する。
【0052】
また含水量が基準値より少ないときは給水パイプ17に配置した散水ノズル18から給水する。この水分量制御は給水要否判別回路68で行う。上記制御手段(コントローラ)65は水分センサHS及び温度センサTSの検出値に係わらず予め設定されている空気を菌床給気機構40から処理槽内に供給する。このため給気モータを所定回転で回転する。また同様に水分センサHS及び温度センサTSの検出値に係わらず予め設定されている回転数で攪拌モータKMを所定回転で回転する。この制御は攪拌給気制御回路69で行う。
【符号の説明】
【0053】
A 有機廃棄物処理装置
M 処理物
5a レーザ発信素子
5b レーザ受信素子
5x センサボックス
5y 透明カバー(検出面)
7a 発光素子(Pa)
7b 受光素子(Pb)
10 処理槽
11 装置外筺(ハウジング)
11a 槽壁
14 給水機構
15 給水タンク
16 加圧ポンプ
17 給水パイプ
18 散水ノズル
20 攪拌手段
21 回転軸
22 攪拌羽根(22a〜22c)
22A,22B リング羽根
22x 支持ステム
22y 突起
31 温風給送機構
31f 送風ファン
31S 送風管
31h 加熱ヒータ
31M ファンモータ
32 排気機構
33 排気ダクト
34 吸引ファン(バキュームファン)
34M バキュームモータ
35 フィルタ装置
36 脱臭装置
38f 送風ファン
38n ノズル
38p 送風管
38M 送風用モータ
40 菌床給気機構
41 給気ノズル
42 給気口(ノズル口)
45 加圧ポンプ
48 循環パイプ
52 リング羽根(第2実施形態)
60 槽内環境制御機構
62 制御ボックス
65 コントローラ(制御手段)
66 比較手段
67 処理槽内温度制御回路
68 給水要否判別回路
69 攪拌給気制御回路
73 ドライバ回路(バキュームモータ)
TS 温度センサ
HS 水分センサ
DS 塵埃量検出センサ
KM 攪拌モータ
M2 駆動モータ
Pa,Pb プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄物を微生物で分解処理する有機廃棄物処理装置であって、
前記有機廃棄物を収容する処理槽と、
前記処理槽内に配置され前記有機廃棄物とこの有機廃棄物を分解する処理物質とを攪拌する攪拌手段と、
前記処理槽内に水分を供給する給水手段と、
前記処理槽内に空気を給排気する空気調整手段と、
前記給水手段及び給気手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記攪拌手段で飛散する粉塵を検出する塵埃量検出手段を有し、
この制御手段は前記塵埃量検出手段の検出結果に基づいて前記給水手段の給水量及び/又は前記空気調整手段の給気量を制御することを特徴とする有機廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は前記塵埃量検出手段からの検出結果に基づいて前記処理槽内に水分を供給するか否かの判別手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記処理槽内の水分量を検出する水分センサと、
前記塵埃量検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記塵埃量検出手段及び前記水分センサの検知結果に基づいて前記処理槽内に供給する水分量を制御することを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項4】
前記処理槽には、
内部に所定温度の外気を導入する給気ダクトと、
この処理槽内の空気を外部に導出する排気ダクトと、
が備えられ、
前記塵埃量検出手段は、前記処理槽又は前記排気ダクトに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項5】
前記塵埃量検出手段は、発光部と受光部を備え、
この発光部は可視光、赤外光、紫外光、レーザ光のいずれかの光を照射し、
前記受光部は、発光部からの受光量を電気的信号として変換する光電変換手段を有していることを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項6】
前記処理槽には、内部の処理物質の含水量を検出する水分センサが設けられ、
前記制御手段はこの水分センサと前記塵埃量検出手段からの検出結果に基づいて前記給水手段の吸水量を制御することを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理装置。
【請求項7】
前記攪拌手段は、
回転軸と、
この回転軸に取付けられた攪拌羽根と、
で構成され、
この攪拌羽根は、1つ又は複数の円環形状の板部材で構成され、
この板部材は前記回転軸に対して軸方向に所定角度傾斜した状態で前記回転軸に取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の有機廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−253368(P2010−253368A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105330(P2009−105330)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(507395739)
【Fターム(参考)】