説明

有機性廃棄物の処理方法

【課題】 アルカリを用いる簡単な処理方法で、効率よく有機性廃棄物を処理することができる有機性廃棄物の処理方法を提供すること。
【解決手段】 有機性廃棄物の破砕スラリーに、アルカリおよびアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩を添加し、50℃以上の温度において撹拌処理を行うことにより該破砕スラリー中の有機性固形分の可溶化させることを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品廃棄物、厨芥、有機性汚泥等の固体状または固形分を含むスラリー状有機性廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品廃棄物、厨芥、下水処理場から発生する有機性汚泥などの有機性廃棄物は、従来は焼却処分や飼料化、堆肥化(コンポスト化)等により主にその処理・処分が行われていた。しかしながら、近年、処理・処分として、発酵によりメタンガスに変換して燃料として使用する方法、あるいは有機酸に変換したのち生分解性プラスチックの原料としての使用する方法など、処理・処分による環境負荷を最小限に抑えながら、より価値の高い燃料や中間製品、再生製品に転換活用する実用的な工業化技術が多く開発されてきている。
【0003】
このような有機性廃棄物を処理するために、有機性廃棄物の可溶化処理が広く行われている。この可溶化の方法としては、有機性廃棄物にアルカリを添加して処理する方法が簡単で、コストのかからない有力な方法として注目されている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2002−273397号公報)には、有機性廃棄物スラリーにアルカリを添加して湿式粉砕機で破砕し、貯留槽で貯留する間に可溶化・酸発酵させ、ついで消化槽でメタン発酵させる有機性廃棄物の嫌気性消化方法が提案されている。また、特許文献2(特公平7−83878号公報)には、下水汚泥をアルカリ性にして、管型熱アルカリ処理槽の管内に通し、50〜100℃に維持して熱アルカリ処理する嫌気性消化処理方法が提案されている。さらに、特許文献3(特開2001−58172号公報)では、固形有機性廃棄物を粉砕するとともにアルカリを加えて、昇圧し、加熱して粉砕物を水熱反応により液状化し、その後減圧し、減圧化された液状化物に酸化ガスを供給して酸化する方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−273397号公報
【特許文献2】特公平7−83878号公報
【特許文献3】特開2001−58172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の方法では、アルカリを添加して粉砕したものを、常温で貯留しているが、貯留が常温であるため十分な可溶化がなされにくく、また可溶化に長期間要するとの問題がある。これは、有機性廃棄物に多く含まれる多糖類や繊維質等の固形分の分解速度が遅く、このような有機性成分を多く含む有機性溶液の固形分を、常温で単一の処理工程で効率よく可溶化するのは非常に難しいためと考えられる。またアルカリを添加した上で熱を付与したとしても、可溶化を促進するために撹拌処理した場合は、有機物中の成分の緩衝作用によりpHが速やかに中性付近に下降し、アルカリ添加による分解促進の効果が十分見られないとの問題がある。特許文献2の場合も加熱しているが、同様の理由でpHが速やかに下降し、アルカリ添加による分解促進の効果が十分見られない。また特許文献3の場合も、アルカリ添加された粉砕物が加熱器内で、加熱撹拌されているが、上記と同様の理由でアルカリ添加による分解促進の効果が十分見られない。
【0007】
さらに、本発明者の検討によれば、上述のアルカリ添加法では、アルカリ添加にともなって繊維質、即ち増粘性の多糖類が抽出され、有機性廃棄物スラリーの粘度が著しく増し、流動性が損なわれて撹拌混合処理が困難となる場合が多いことが明らかとなった。この際、無理に撹拌を行っても、撹拌に要するエネルギーコストが増加するだけで、撹拌状態は改善されず、このためスラリー中の固形分と粘性液体を十分に均一混合化すること自体が極めて難しくなる。従って、アルカリ添加に続く可溶化処理においてpH制御を安定して行うことができず、場合によっては、処理システムの配管中で有機物スラリーが閉塞する場合もある。
【0008】
さらに、従来の有機廃棄物の有効利用技術の課題として、有機性廃棄物の可溶化及び分解の課程で、中鎖〜低分子脂肪酸および揮発性硫化化合物などの悪臭を示す揮発性化合物が発生しやすいとの問題もある。上記特許文献1〜3に記載された方法では、このような問題にも十分に応えることができない。
【0009】
従って、本発明の目的は、アルカリを用いる簡単な処理方法で、効率よく有機性廃棄物を処理することができる有機性廃棄物の処理方法を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の目的は、アルカリを用いる簡単な処理方法で、効率よく有機性廃棄物を処理することができ、且つ処理中における悪臭揮発性化合物の発生が抑制された有機性廃棄物の処理方法を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、有機性廃棄物の破砕スラリーに、アルカリおよびアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩を添加し、50℃以上の温度において撹拌処理を行うことにより該破砕スラリー中の有機性固形分の可溶化させることを特徴とする有機性廃棄物の処理方法により達成することができる。
【0012】
本発明の有機性廃棄物の処理方法において、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩は、一般に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムから選択される少なくとも1種であり、特に炭酸カルシウムが好ましい。可溶化効果が大きい。アルカリおよびアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩の添加は、同時に行っても良いし、いずれかを先に行っても良いが、アルカリを添加した後にアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩を添加することが好ましい。作業効率が向上する。またアルカリおよびアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩の添加を、アルカリを添加してpHを9以上(好ましくは10〜12程度)に調整した後、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩を添加することが好ましい。可溶化時間を短縮できる。
【0013】
また、撹拌処理は、好気性条件下で行うことが好ましい。可溶化時間を短縮できる。撹拌処理を50〜100℃の温度において行うこと、撹拌処理を24〜100時間行うことが好ましい。可溶化効率が向上する。
【0014】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩の添加量が、有機性廃棄物の破砕スラリーに対して0.01〜1.0質量%であることが好ましい。炭酸塩を効率よく使用できる。有機性廃棄物の破砕スラリーの固形分が10〜50質量%であることが好ましい。作業効率が向上する。アルカリが、アルカリ金属の水酸化物(特に苛性ソーダ)であることが好ましい。少量で有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法では、有機性廃棄物の破砕スラリーにアルカリの添加とともに炭酸カルシウム等の炭酸塩を添加している。このため、炭酸塩の自動pH調整作用によりスラリーのpHを比較的長くアルカリ性に維持することができるので、スラリーに含まれる高濃度の有機性成分の可溶化・分解を効率よく行うことができる。すなわち、スラリーは長い期間強アルカリ性を維持して撹拌されるので、スラリーは高い流動性を保ちつつ、酸化分解が行われて、徐々にpHが低下することから、効率よく有機性成分の可溶化・分解を行うことができる。特に、好気性条件下での撹拌処理により、より効率は向上し、また悪臭揮発性物質の発生を抑制する。
【0016】
特に、好気撹拌分解を高温で行うことにより、悪臭揮発性物質の発生、蓄積をともなうことなく、繊維質等を含む有機性破砕スラリーを高い分解率で処理することができ、効率よく可溶化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の有機性廃棄物の処理方法は、有機性廃棄物の破砕スラリーに、アルカリの添加、およびアルカリ(土類)金属の炭酸塩の添加を行い、50℃以上の温度において撹拌処理することを特徴とする。これにより、破砕スラリー中の有機性固形分の可溶化を促進させることができる。
【0018】
即ち、有機性廃棄物破砕スラリーの可溶化処理(好ましくは好気性分解)において、アルカリを添加して50℃以上の高温で撹拌処理して固形有機成分を効率的に可溶化するために、対象のスラリーにアルカリを添加し、かつアルカリ性で微溶性の炭酸カルシウム等の炭酸塩を少量添加している。これにより、スラリーの自動pH制御が可能となり、スラリー中の有機性固形分の可溶化と低分子有機成分の分解を効率よく行うことができる。
【0019】
また、好気性条件で50℃以上の高温において有機性成分の分解を行った場合、悪臭物質の生成を抑えることが容易になり、また少量生成する酪酸等の低分子で強い臭気を有する有機酸についても気中に速やかに揮散させることができることから、分解過程および処理後の分解懸濁液の悪臭の発生、蓄積を大幅に抑制することができる。
【0020】
本発明で使用される有機性廃棄物としては、さまざまな食品廃棄物、例えば食堂調理残渣や果実の搾りかす、おから、焼酎粕などの食品加工残渣又は野菜や果実などの農産廃棄物、或いは家庭の生ゴミ、さらには下水の有機性汚泥等を挙げることができる。本発明の有機性廃棄物は、少なくとも繊維質を含有していることが必要である。本発明の方法は、このような繊維質、さらには多糖類を効率よく可溶化するので、このような有機性廃棄物に効果的に適用することができる。なかでも、本発明の方法に特に適した有機性廃棄物は、糖質等の可溶性成分を多く含む果汁製造残さである。
【0021】
本発明の方法は、例えば以下のようにして実施することができる。
【0022】
本発明で使用される有機性廃棄物の破砕スラリーは、一般に、例えば有機性廃棄物をディスポーザ等の破砕機で粗破砕した後、この破砕された有機性廃棄物と適量の水をスラリー混合再破砕機(例、循環式破砕機、湿式粉砕機)に投入し、破砕しながら混合する。こうして有機性廃棄物の破砕スラリーを得る。ディスポーザ等の破砕機による粗破砕は、有機性廃棄物の状態により省略しても良い。破砕スラリーの固形分は一般に10〜50質量%、好ましくは10〜40質量%であり、このような固形分となるように前記水が添加される。
【0023】
このスラリーを、小型又は大型の剪断撹拌分解機、高速撹拌分解機等の撹拌装置あるいは撹拌分解装置に投入する。このスラリーに対して、アルカリを加える。アルカリは一般に苛性ソーダ等のアルカリ金属の水酸化物である。アルカリは、一般に、例えば苛性ソーダ等の水溶液の形で添加される。
【0024】
アルカリを添加することにより、スラリーのpHを9以上(好ましくは10〜12、特に11程度)に調整される。このアルカリの添加は、一般に常温で行われる。次いで、本発明のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩を添加される。炭酸塩の添加はアルカリと共に、あるいはアルカリの添加の前に行っても良いが、上記のようにアルカリの添加の後に行うことが好ましい。後添加の方が、pHの調整が容易である。
【0025】
上記アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩としては、一般に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムをあげることができ、単独または組み合わせて使用することができる。これらの中で、炭酸カルシウム、炭酸カリウムが好ましく、特に炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムは一般に粉末で添加される。炭酸カルシウムは特に可溶化効果が大きいので好適である。炭酸塩の添加も一般に常温で行われる。
【0026】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩の添加量は、有機性廃棄物の破砕スラリーに対して0.01〜1.0質量%であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量%が好ましい。有機性廃棄物の固形分に対しては、0.03〜3.0質量%であることが好ましく、特に0.1〜1.5質量%が好ましい。
【0027】
上記アルカリおよび炭酸塩が添加されたスラリーを、撹拌しながら発酵させ、分解等により可溶化させる。この撹拌処理は、好気性下(酸素雰囲気下)に行うことが好ましい。即ち、空気あるいは酸素をスラリーに供給しながら行われる。これにより、悪臭揮発性化合物の発生を抑制することができ、また可溶化の処理時間を短縮することができる。撹拌処理を60〜100℃、特に60〜80℃の温度において行うこと、撹拌処理を1〜100時間、特に20〜80時間行うことが好ましい。可溶化を効率的に行うことができる。
【0028】
前記空気等の供給は、1〜5vvm(通気量1分当たり分解槽内容積の1〜5倍供給)の通気速度で行うことが好ましい。また、撹拌には1段又は2段の撹拌翼等を使用することが好ましい。
【0029】
上記撹拌処理における発酵を促進するために、好気性細菌等の菌を特に添加する必要はないが、好熱菌等を添加しても良い。有機性廃棄物の種類により可溶化が促進される場合がある。
【0030】
上記撹拌処理により、有機性廃棄物の粉砕スラリーは、有機性廃棄物に多く含まれる多糖類、繊維質が分解等により可溶化される。本発明の方法では、発酵が起こってもアルカリ性が維持されるため、可溶化が連続的に進み、増粘もほとんど起こらない。また増粘が起こらないため、揮発性物質が発生しても容易に除去することができる。従って、最終的に得られる可溶化されたスラリーの粘度も低く取り扱いが容易である。
【0031】
上記撹拌処理により可溶化された有機性廃棄物の粉砕スラリーは、一般にろ過等により固液分離がなされ、液体の有機分解液と残さに分離される。ろ過はフィルタープレス、多重管加圧ろ過装置等の適当なろ過装置を用いて行われる。分離された有機分解液は、例えば有機融雪剤、微生物によりメタン発酵等に使用することができる。一方、残さは堆肥化等の手段により有効利用又は焼却処分される。
【0032】
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳述する。
【実施例】
【0033】
[実施例1および比較例1〜3]
小型撹拌分解装置を用いた室内試験により、有機廃棄物破砕スラリーの分解可溶化条件検討を行った。
【0034】
有機性廃棄物としてりんご搾りかすを130g用い、これに水道水260gを加えてりんご搾りかすスラリー(以下、りんごスラリーと記す)を得た。これに表1に示す5種類の添加物とその添加条件で有機固形分可溶化・分解試験を行った。
【0035】
各添加物およびその条件で調製したりんごスラリーを小型発酵装置に投入し、65℃で48時間好気性条件下で撹拌処理を実施した。好気性条件とするために、装置内に空気を供給した。その通気速度は2vvm(通気量1分当たり分解槽内容積の2倍供給)であった。また撹拌は1段の撹拌翼を使用して速度200rpmで行った。
【0036】
【表1】

【0037】
<得られた処理済みりんごスラリーの評価>
(1)分解特性(固形残さ分解率)および(2)ろ過特性(含水率)
こうして分解処理して得られたりんごスラリーの分解特性とろ過特性を、ろ紙をろ過素材に用いた固液分離試験により判定した。
【0038】
分解処理後のスラリーに二水石膏粉末2%水溶液を分離助剤として添加し、ブフナーロートをろ過器具として用い、減圧吸引によりろ過した。ろ過により固形分として回収した固形残さの湿質量(乾燥前質量)を測定した。さらにこれを110℃の恒温乾燥機に24時間おいて乾燥質量を測定し、固形残さ分解率と含水率を測定した。その値を表3に示す。
【0039】
(3)スラリーの撹拌処理時のpHの推移
スラリーの撹拌処理時のpHを、所定時間毎に測定した。その推移を図1に示す。
【0040】
(4)スラリーの粘度低下効果
りんごスラリーの撹拌処理日数により粘度変化を表2に示す。
【0041】
流動性は、スラリーの一部をガラスビーカに採り、目視で判定した。
【0042】
また、B型粘度計を用いて試料の動粘度を測定した。
【0043】
(5)固形分の分解特性
得られたりんごスラリーの原料湿重(乾重)、残さ湿重(乾重)、残さ含水率(含水比)を測定し、固形分減少量を求めた。その値を表3に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
実施例1および比較例1〜3で調製したスラリーの図1に示されたpHの推移、および表2、表3に示すスラリーの粘度低下効果と固形分の分解特性から、実施例1の条件、すなわちアルカリを加えてpH11とし、さらに炭酸カルシウム粉末を0.1%添加した条件で、最も効率よく有機固形分の可溶化と有機分の酸化分解がなされたことが推測される。
【0047】
また実施例1の高pHが長時間保たれる条件で、分解懸濁液の流動性が良好に保たれ、また最も緩やかに酸化分解が進み、固形分分解率が高いことが推測される(表2および表3)。
【0048】
[実施例2および3]
実施例1において、アルカリによるpHの調整を、pH10とし、炭酸カルシウムの量を0.1質量%(実施例2)、および0.05質量%(実施例3)とした以外は同様にしてりんごスラリーを処理した。
(1)スラリーの撹拌処理時のpHの推移
スラリーの撹拌処理時のpHを測定した。その推移を図2に示す。
【0049】
図2より、アルカリによる初期pHを10にしても実施例2に示すようにpHの急激な低下は抑えられ、さらに炭酸カルシウムの量を0.05質量%に下げた場合(実施例3)もpHの急激な低下は抑えられ有効であることが分かった。
[実施例4および5]
有効容量1,000リットルの大型好気撹拌分解装置を使用して、有機廃棄物破砕スラリーの分解促進試験を行った。
【0050】
大型分解試験の有機性廃棄物として、りんご搾りかす(実施例4)と食堂調理残さ(実施例5)を用いた。
【0051】
りんご搾りかすスラリーは、420kgのりんご残さに500Lの水道水を加えたのち循環式破砕機で破砕混合して調製した。
【0052】
食堂調理残さスラリーは、500kgの食堂調理残さを業務用ディスポーザを用いて破砕したものに450Lの水道水を加えて、循環式破砕機で循環破砕・混合して調製した。食堂調理残さの組成は、野菜屑約35%、米飯屑約35%、肉類を含む総菜類約25%、魚屑約5%であった。
【0053】
両方のスラリーとも、破砕スラリーに水酸化ナトリウムを添加してpH11に調整の後、炭酸カルシウム0.1質量%を添加して、十分に混合して分解試験に供した。
【0054】
大型分解装置は分解槽容量が内容積1200L、有効容量1000Lのものを用いた。通気速度は約2vvm(1分当たり通気量が分解槽内容積の2倍)とし、撹拌は1段の撹拌翼を用い、速度540rpmに設定した。加温は一切行わなかったが、高速撹拌による摩擦熱と微生物生育による発酵熱により、原料スラリーの温度は速やかに70℃以上に上昇した。
【0055】
(1)スラリーの撹拌処理時のpHの推移
スラリーの撹拌処理時のpHを、所定時間毎に測定した。その推移を図3および図4に示す。
【0056】
なお、大型分解機での撹拌速度が高く分解槽内の酸素移動速度が、室内試験の時に比べ高めであるため、室内試験でのpHの低下傾向に比べ、いずれの原料を用いたときもpH低下速度は若干速めであった。
【0057】
りんご搾りかす(実施例4)と食堂調理残さ(実施例5)のいずれを原料としたときも、分解は72時間に亘って行ったが、図3および図4に示すように、りんご搾りかすを分解したときは最高温度は80℃以上に達し、食堂調理残さを原料としたときは最高温度75℃以上に達した。いずれの場合も、大型分解機での高速撹拌好気分解処理により、原料スラリー中の固形分の可溶化と有機分の分解が速やかになされること、悪臭の発生はほとんど認められないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の有機性廃棄物の処理方法(実施例1)における、室内試験における有機性破砕スラリーのpHの推移を示すグラフである。
【図2】本発明の有機性廃棄物の処理方法(実施例2および3)における、室内試験における有機性破砕スラリーのpHの推移を示すグラフである。
【図3】本発明の有機性廃棄物の処理方法(実施例4)における、大型分解機を用いたりんご搾りかすスラリーの高温好気可溶化(分解)過程における温度とpHの推移を示すグラフである。
【図4】本発明の有機性廃棄物の処理方法(実施例5)における、大型分解機を用いた調理残さスラリーの高温好気可溶化(分解)過程における温度とpHの推移を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物の破砕スラリーに、アルカリおよびアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩を添加し、50℃以上の温度において撹拌処理を行うことにより該破砕スラリー中の有機性固形分を可溶化させることを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。
【請求項2】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項3】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩が、炭酸カルシウムである請求項1又は2に記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項4】
アルカリおよびアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩の添加が、アルカリを添加した後にアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩を添加することにより行われる請求項1〜3のいずれかに記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項5】
アルカリおよびアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩の添加が、アルカリを添加してpHを9以上に調整した後、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩を添加することにより行われる請求項1〜4のいずれかに記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項6】
撹拌処理を好気性下に行う請求項1〜5のいずれかに記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項7】
撹拌処理を50〜100℃の温度において行う請求項1〜6のいずれかに記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項8】
撹拌処理を24〜100時間行う請求項1〜7のいずれかに記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項9】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩の添加量が、有機性廃棄物の破砕スラリーに対して0.01〜1.0質量%である請求項1〜8のいずれかに記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項10】
有機性廃棄物の破砕スラリーの固形分が10〜50質量%である請求項1〜9のいずれかに記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項11】
アルカリが、アルカリ金属の水酸化物である請求項1〜10のいずれかに記載の有機性廃棄物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−61807(P2006−61807A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246439(P2004−246439)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【出願人】(591052239)財団法人エンジニアリング振興協会 (8)
【Fターム(参考)】