説明

有機性廃棄物の処理装置及び処理方法

【課題】有機性のSS濃度の高い排水や固形廃棄物を高効率に処理し、且つランニングコストを低減する。
【解決手段】有機性廃棄物の処理装置10は、有機性廃棄物を分解する前段分解装置12と、前段分解装置12での処理物を固液分離する固液分離装置16と、固液分離装置16で分離した分離液をメタン発酵処理する高負荷型メタン発酵装置22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物の処理装置及び処理方法に関し、特に有機性のSS(Suspended Solid)濃度の高い排水や固形廃棄物を処理する処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン発酵処理法は、省エネルギーでエネルギー回収型の生物処理法であり、下水処理場の余剰汚泥の消化をはじめ、各種産業排水処理に広く採用されている。処理形式としては、メタン生成菌などを含むメタン発酵汚泥を浮遊状態で使用するいわゆる標準型や効率型(併せて従来型という)と、グラニュールと呼ばれる粒状の汚泥を用いるUASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)法及びEGSB(Expanded Granular SludgeBlanket)法などがある。
【0003】
UASB法やEGSB法はグラニュール汚泥を反応槽内に高濃度に維持することができ、従来型と比べて10倍以上の有機物負荷を得ることができる。しかしながら、SSが高濃度の排水では、反応槽内にSSが蓄積してしまい、グラニュールの成長が妨げられるため、産業排水のように溶解性の有機物がほとんどである場合の処理には好適であっても、SS濃度が高い排水や、ましてや固形廃棄物の消化には不向きである。
【0004】
一方、従来型のメタン発酵法は、増殖速度が極めて遅いメタン生成菌を高濃度に維持することが困難で、高負荷運転が困難で付加変動などの外乱に弱く、維持管理も煩雑である反面、固形物濃度の高い排水や固形廃棄物の処理に好適である。この性質を生かして、下水処理場の余剰汚泥の消化や、近年では生ごみなどの食品廃棄物、及び畜産廃棄物といった固形廃棄物を処理する、いわゆる高密度メタン発酵法が開発されている。これらの廃棄物は固形物濃度が数十%と高濃度であり、発酵槽内の汚泥濃度を高く維持できるという利点があるため、発酵槽を小型化することが可能であると言われている。
【0005】
しかしながら、固形物濃度の高い廃棄物を消化する際、槽内のTS(Total Solid)濃度が高く維持できても、そのうちメタン発酵に関与する微生物群の濃度が高いとは限らず、一概に高負荷がとれ装置が小型化できるとは言い難い。これは、メタン生成菌など処理に有効に働く微生物の増殖量が廃棄物の生物分解性に依存することに起因する。
【0006】
例えば、分解性の悪い廃棄物を処理する場合、次第に槽内汚泥濃度が高くなるが、分解性が悪いためメタン生成菌などの微生物群の増殖量は低くなる。逆に、分解性の良い廃棄物を処理する場合、微生物群の増殖量は高くなるが、最終的にメタンガスを生成するメタン生成菌の増殖速度が極めて遅いため、ある程度の滞留時間を下回ると増殖速度よりも排出速度が勝ってしまい、いわゆるウォッシュアウト現象が起こってしまう。また、廃棄物の水分含有量にも関係し、分解性が良い場合でも水分量が高い(廃棄物の固形物濃度が低い)と相対的に滞留時間が短くなり、メタン発酵のための微生物群の濃度を高く維持することが困難になる。
【0007】
これらの事情に鑑みて、例えば特許文献1には、発酵槽から排出される汚泥を膜分離し、その一部を発酵槽に返送することで、発酵槽内の汚泥濃度を高く維持することが行われる。
【特許文献1】特開2001−314839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のように分離した汚泥を発酵槽に戻す場合であっても、メタン生成菌などの微生物群と未分解の固形物とを分離して返送することは不可能である。従って、反応槽内における固形分中のメタン生成菌他有効微生物の濃度のみを選択的に上げることができず、結局のところ有機性のSS濃度の高い排水や固形廃棄物を高効率に処理することができなかった。
【0009】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、有機性のSS濃度の高い排水や固形廃棄物を高効率で処理し、且つランニングコストを低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る有機性廃棄物の処理装置は、有機性廃棄物を分解する前段分解装置と、前段分解装置での処理物を固液分離する固液分離装置と、固液分離装置で分離した分離液をメタン発酵処理する高負荷型メタン発酵装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この装置では、廃棄物中の分子量の大きな有機物を加水分解する微生物群の増殖速度が、メタン生成菌の増殖速度よりも遥かに高いことを利用して、前段分解装置で分子量の大きな有機物を可溶性の低分子量の有機物に高効率で分解することができる。そして、後段の高負荷型メタン発酵装置における処理の阻害要因に成り得る未分解の固形分を、固液分離装置により予め除去することができる。そして、固液分離装置で分離した分離液を、高負荷型メタン発酵装置において高効率で処理することができる。このようにして、有機性のSS濃度の高い排水や固形廃棄物を高効率に処理することができる。また、トータルの処理水槽容積を低減することができ、大型の水槽を攪拌する必要もないため、ランニングコストを低減することができる。
【0012】
本発明に係る有機性廃棄物の処理装置は、高負荷型メタン発酵装置の前段に設けられ、メタン発酵阻害物質を除去する除去装置を備えることを特徴としてもよい。このようにすれば、高負荷型メタン発酵装置においてより効率良くメタン発酵処理を行うことができる。
【0013】
本発明に係る有機性廃棄物の処理装置では、高負荷型メタン発酵装置は、メタン発酵汚泥を自己造粒させたグラニュール汚泥を含み、高負荷型メタン発酵装置からグラニュール汚泥の一部を前段分解装置に返送する返送装置を備えることを特徴としてもよい。グラニュール汚泥には、加水分解や酸発酵などを行う通性嫌気性菌が高濃度に集塊を作っているため、その一部を返送装置により前段分解装置に返送することで、汚泥の有効利用が図られる。
【0014】
本発明に係る有機性廃棄物の処理装置は、固液分離装置で分離した固形分を堆肥化する堆肥化設備を備えることを特徴としてもよい。このようにすれば、分離した固形分を堆肥化することができるため、臭気を減らし、含水率を低減して減容化すると共に、廃棄物の有効利用が図られる。
【0015】
本発明に係る有機性廃棄物の処理方法は、有機性廃棄物を分解する前段分解工程と、前段分解工程での処理物を固液分離する固液分離工程と、固液分離工程で分離した分離液をメタン発酵処理するメタン発酵工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この方法では、廃棄物中の分子量の大きな有機物を加水分解する微生物群の増殖速度が、メタン生成菌の増殖速度よりも遥かに高いことを利用して、前段分解工程で分子量の大きな有機物を可溶性の低分子量の有機物に高効率で分解することができる。そして、後段のメタン発酵工程における処理の阻害要因に成り得る未分解の固形分を、固液分離工程により予め除去することができる。そして、固液分離工程で分離した分離液を、メタン発酵工程において高効率で処理することができる。このようにして、有機性のSS濃度の高い排水や固形廃棄物を高効率に処理することができる。また、トータルの処理水槽容積を低減することができ、大型の水槽を攪拌する必要もないため、ランニングコストを低減することができる。
【0017】
本発明に係る有機性廃棄物の処理方法では、固液分離工程の前段で加水する加水工程を備えることを特徴としてもよい。このようにすれば、固形物濃度を下げることで固液分離工程での脱水が容易になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、有機性のSS濃度の高い排水や固形廃棄物を高効率に処理し、且つランニングコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、同一の要素には同一の符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る有機性廃棄物の処理装置10の構成を模式的に示す図である。なお本実施形態において、有機性廃棄物には、有機性の排水や固形廃棄物が含まれる。特に、本実施形態に係る処理装置10は、下水処理場の余剰汚泥の消化や、生ごみなどの食品廃棄物、及び畜産廃棄物といった固形廃棄物の処理に好適である。
【0021】
図1に示すように、処理装置10は、前段分解装置12、バイオリアクター14、固液分離装置16、堆肥化設備18、阻害物質除去装置20、高負荷型メタン発酵装置22、及び返送装置24を備えている。
【0022】
前段分解装置12は、ラインL1を通して投入された分子量の大きな有機性廃棄物(分子量が数万以上)を微生物により分解する。この前段分解装置12は、加水分解を行う通性嫌気性菌を含む微生物群を処理槽内に有している。微生物源としては、後述する高負荷型メタン発酵装置22において利用するグラニュール汚泥を用いることができる。グラニュール汚泥は、メタン発酵に関連する微生物群からなるメタン発酵汚泥を自己造粒させたものであり、メタン生成菌の他、加水分解、酸発酵などを行う通性嫌気性菌が高濃度に集塊を作っているため好適である。
【0023】
バイオリアクター14は、油脂などを高濃度に含む廃棄物の処理において任意的に付加できる設備であって、油分解性のある汚泥を種汚泥として生成し、ラインL2を通して前段分解装置12に添加する。例えば、動植物性の油脂は一般にグリセロールと脂肪酸のエステル化物であるため、リパーゼ(エステル分解酵素)活性の高いバクテリアをこのバイオリアクター14で培養し、前段分解装置12に添加することで、分解率を上げることができる。なお、バイオリアクター14としては、小型で高密度培養が可能な膜ろ過型バイオリアクターが好適である。
【0024】
固液分離装置16は、前段分解装置12で比較的小さな分子量(分子量が数十〜数百程度)まで分解され、ラインL3を通して送られてきた処理物のうち、未分解の固形分を分離する。固液分離装置16としては、遠心脱水機、ベルトプレス、フィルタープレスなどの各種脱水機を用いることができる。
【0025】
堆肥化設備18は、固液分離装置16で分離されラインL4を通して送られてきた固形分を堆肥化する。阻害物質除去装置20は、固液分離装置16で分離されラインL5を通して送られてきた分離液から、後段のメタン発酵処理を阻害する物質を除去する。メタン発酵阻害物質としては、アンモニアや硫化水素などが含まれる。アンモニアは、通性嫌気性発酵でタンパク質などを分解することで発生する。また硫化水素は、通性嫌気性発酵で硫黄化合物を還元することで発生する。メタン発酵阻害物質としてアンモニアが含まれる場合は、阻害物質除去装置20として、例えば、MAP(リン酸アンモニウムマグネシウム)やHAP(ヒドロキシアパタイト)反応装置が好適である。また、メタン発酵阻害物質として硫化水素が含まれる場合は、阻害物質除去装置20として、例えば、硫化水素放散搭や吸着塔が好適である。
【0026】
高負荷型メタン発酵装置22は、固液分離装置16で分離されメタン発酵阻害物質が除去されて、ラインL6を通して送られてきた分離液をメタン発酵処理する。高負荷型メタン発酵装置22は、酸生成槽26とメタン発酵槽28を有している。酸生成槽26は、酸生成菌により分離液を処理して低級有機酸を生成する。この酸生成槽26は、メタン発酵槽28における水位やpH、循環流速などを調整する調整槽としても機能している。メタン発酵槽28は、ラインL7を通して送られてきた有機酸を含む処理液をメタン生成菌によりメタン発酵し、ラインL8を通して処理液を排出する。
【0027】
メタン発酵槽28としては、UASBやEGSBといった上向流式メタン発酵槽や、固定床型メタン発酵槽を用いることができる。特に、メタン発酵汚泥を自己造粒させたグラニュール汚泥を利用してメタン発酵処理するUASBやEGSBは、高効率な処理が可能であるため好ましい。なお、本実施形態では、上向流式のメタン発酵槽28での処理液の一部をラインL9を通して酸生成槽26に返送している。
【0028】
返送装置24は、メタン発酵槽28に含まれるグラニュール汚泥の一部を前段分解装置12に返送する。
【0029】
次に、上記した処理装置10を利用した有機性廃棄物の処理方法について説明する。
【0030】
まず、有機性のSS濃度の高い排水や固形廃棄物といった有機性廃棄物を、ラインL1を通して前段分解装置12に投入する。そして、前段分解装置12において、有機性廃棄物を加水分解する。この処理においては、後段のメタン発酵槽28に含まれ、返送装置24を介して返送されるグラニュール汚泥を用いて処理すると好ましい。なお、グラニュール汚泥には、加水分解の他に酸発酵などを行う通性嫌気性菌が含まれるため、実際には前段分解装置12で酸発酵まで行われることが多い。このとき、条件によっては水素発酵により水素と炭酸ガスが発生する場合があるため、水素はエネルギー源として回収することができる。
【0031】
前段分解装置12では、処理温度、滞留時間、溶存酸素濃度、酸化還元電位などを最適に設定することで、高速な処理が可能となる。なお、有機性廃棄物に油脂が高濃度で含まれる場合は、バイオリアクター14で培養した油分解性のある種汚泥を前段分解装置12に添加すると好ましい。
【0032】
次に、固液分離装置16において、ラインL3を通して送られてくる処理物を固液分離する。ここで、固液分離装置16における脱水が困難な場合は、前段分解装置12に加水して固形物濃度を下げてもよい。このようにしても、加水分解反応がメタン生成反応よりも高速であるため、前段分解装置12の処理槽の大型化を招くおそれは小さい。或いは、加水は固液分離装置16の前で行ってもよい。このようにして水量が増えても、UASBやEGSBといった高負荷型のメタン発酵槽28では安定したメタン発酵が可能である。
【0033】
固液分離装置16において分離した固形分は、ラインL4を通して堆肥化設備18に送り、堆肥化してから農地還元する。なお、堆肥化設備18において堆肥化することなく、分離した固形分をそのまま廃棄処理してもよく、その一部を前段分解装置12に返送してもよい。
【0034】
次に、固液分離装置16で分離されラインL5を通して送られてきた分離液から、阻害物質除去装置20においてメタン発酵阻害物質を除去する。
【0035】
次に、ラインL6を通して送られてきたメタン発酵阻害物質が除去された分離液を、酸生成槽26において処理する。そして、ラインL7を通して送られてきた低級有機酸を含む処理液を、メタン発酵槽28においてグラニュール汚泥を用いてメタン発酵処理する。そして、ラインL8を通して排出される処理水に必要に応じて高度処理を施した後、公共下水道などへ放流する。一方、メタン発酵槽28において生成されたメタンガスを、エネルギー源として回収する。
【0036】
次に、本実施形態に係る有機性廃棄物の処理装置10及び処理方法の作用及び効果について説明する。
【0037】
本実施形態では、廃棄物中の分子量の大きな有機物を加水分解する微生物群の増殖速度が、メタン生成菌の増殖速度よりも遥かに高いことを利用して、前段分解装置12で分子量の大きな有機物を可溶性の低分子量の有機物に高効率で分解することができる。そして、後段の高負荷型メタン発酵装置22における処理の阻害要因に成り得る未分解の固形分を、固液分離装置16により予め除去することができる。そして、固液分離装置16で分離した分離液を、メタン生成菌を高濃度に維持できる高負荷型メタン発酵装置22において高効率で処理することができる。このようにして、最終的に廃棄される廃棄物の量を減らし、エネルギー回収量を増やして、有機性のSS濃度の高い排水や固形廃棄物を高効率に処理することができる。また、一度メタン発酵すると脱水が困難な汚泥をメタン発酵前に固液分離装置16で脱水するため、脱水が容易である。また、トータルの処理水槽容積を低減することができ、大型の水槽を攪拌する必要もないため、ランニングコストを低減することができる。
【0038】
また、一度メタン発酵槽28内に混入すると除去が困難で、特に発酵槽内の汚泥濃度が高い場合は極めて扱い難いメタン発酵阻害物質を阻害物質除去装置20において予め除去することで、高負荷型メタン発酵装置22において効率良くメタン発酵処理を行うことができる。
【0039】
また、高負荷型メタン発酵装置22からグラニュール汚泥の一部を返送装置24により前段分解装置12に返送することで、汚泥の有効利用が図られる。
【0040】
また、固液分離装置16で分離した固形分を堆肥化設備18で堆肥化することで、臭気を減らし、含水率を低減して減容化すると共に、廃棄物の有効利用が図られる。
【0041】
また、固液分離装置16の前段で加水することで、固形物濃度を下げて固液分離装置16での脱水が容易になる。なお、このように加水しても、前段分解装置12の処理槽の大型化を招いたり、高負荷型メタン発酵装置22においてSS濃度調整のため余計な廃棄物を投入したりする必要もなく、安定した処理が可能である。
【0042】
また、油分を高濃度に含む有機性廃棄物を処理する場合は、バイオリアクター14で培養した油分解性のある種汚泥を前段分解装置12に添加することで、予め油分を除去することができる。従って、油分がグラニュール汚泥の表面に付着して処理を妨げたり、グラニュール汚泥の浮上・流出したりといったトラブルの発生を低減することができる。
【0043】
次に、図2及び図3を参照して、有機性廃棄物の処理の実施例について、比較例と共に説明する。ここでは、食品製造工場から排出される食品残渣を処理対象とした。処理対象物の成分分析結果を表1に示す。
【表1】

【0044】
図2に示す比較例では、高濃度メタン発酵(いわゆる乾式メタン発酵)により、表1に示すような食品残渣を処理した。元々、この処理対象物は生物分解性が高いものであったため、CODCr容積負荷として、約7kg/m/dまで高負荷運転することができた。この状態では、滞留時間が40日であり、メタン生成菌がウォッシュアウトすることなく運転できたため、特に汚泥を濃縮返送することは不要であった。
【0045】
しかしながら、メタン発酵処理した汚泥を脱水しようとすると、例えばベルトプレス法では脱水ポリマーが均一に分散せずフロックが形成されないため、加水して2倍以上に希釈しなければならなかった。また、10t/dの廃棄物処理にメタン発酵槽の容積が約400m必要であり、機械攪拌などの手段が非常に困難であって初期投資費用やランニングコストも嵩み、処理対象物をそのまま産業廃棄物として処理するのと比べてメリットが見出し難かった。
【0046】
これに対し、実施例では、図3に示す処理装置において同じ食品残渣について処理を行った。なお、この実施例では前段分解装置12に食品残渣を投入する前に、水道水もしくは工水を添加して、2倍に希釈した。前段分解装置12における処理では、滞留時間が0.5日〜2日で十分処理が可能であるため、処理槽として30〜40mの容積で済んだ。
【0047】
前段分解装置12において処理された処理物を、固液分離装置16としてのベルトプレスで脱水処理した。この実施例では、食品残渣を事前に2倍に希釈しているため、脱水ポリマーとの混合性に問題なく、含水率約80%まで容易に脱水することができた。
【0048】
固液分離装置16で分離した分離液を、後段の高負荷型メタン発酵装置22においてメタン発酵処理した。なお、分離液には、CODCr濃度として79000mg/lの有機物が溶解していた。
【0049】
その結果、処理装置全体の設備としては、30〜40mの容積の処理槽を含む前段分解装置12、ベルトプレスなどの固液分離装置16、70m程度の容積のUASB(若しくはEGSB)で済み、トータルの水槽容積が比較例の約1/4(酸生成槽26の容積を5m程度とした)で済み、大型の水槽を攪拌する必要もなかった。
【0050】
また、比較例の高濃度メタン発酵単独での処理の場合、処理汚泥の脱水性を上げるために処理対象物を希釈すると滞留時間の関係から更に大型のメタン発酵槽となってしまうが、実施例では前段分解槽12の反応が速い上、固液分離装置16で脱水したSSをあまり含まない分離液を高負荷型メタン発酵装置22で高負荷処理するため、全体プロセスとして非常に効率を上げることができた。
【0051】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、高負荷型メタン発酵装置22としては、酸生成槽26を有する2槽式のものに限られず、メタン発酵槽28単独の単槽のものであってもよい。
【0052】
また、前段分解装置12に有機性廃棄物を投入する前に、必要に応じて裁断や破砕、薬品処理(アルカリ分解)などの前処理を施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態に係る有機性廃棄物の処理装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】食品残渣を高濃度メタン発酵により処理したときの比較例を説明するための図である。
【図3】食品残渣を処理したときの実施例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0054】
10…有機性廃棄物の処理装置、12…前段分解装置、14…バイオリアクター、16…固液分離装置、18…堆肥化設備、20…阻害物質除去装置、22…高負荷型メタン発酵装置、24…返送装置、26…酸生成槽、28…メタン発酵槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を分解する前段分解装置と、
前記前段分解装置での処理物を固液分離する固液分離装置と、
前記固液分離装置で分離した分離液をメタン発酵処理する高負荷型メタン発酵装置と、
を備えることを特徴とする有機性廃棄物の処理装置。
【請求項2】
前記高負荷型メタン発酵装置の前段に設けられ、メタン発酵阻害物質を除去する除去装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項3】
前記高負荷型メタン発酵装置は、メタン発酵汚泥を自己造粒させたグラニュール汚泥を含み、
前記高負荷型メタン発酵装置から前記グラニュール汚泥の一部を前記前段分解装置に返送する返送装置を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項4】
前記固液分離装置で分離した固形分を堆肥化する堆肥化設備を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項5】
有機性廃棄物を分解する前段分解工程と、
前記前段分解工程での処理物を固液分離する固液分離工程と、
前記固液分離工程で分離した分離液をメタン発酵処理するメタン発酵工程と、
を備えることを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。
【請求項6】
前記固液分離工程の前段で加水する加水工程を備えることを特徴とする請求項5に記載の有機性廃棄物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−281035(P2006−281035A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101830(P2005−101830)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】