説明

有機性廃液処理装置

【課題】オゾンガスによる汚泥改質手段を備える有機性廃液処理装置において、オゾン発生器を冷却するための熱交換器を設け、その冷却媒体として、廃液処理水を用いるに当たり、廃液処理水の貯留槽内に生息する巻貝類や、砂等の固形物が熱交換器に流入することによる熱交換器の閉塞、破損等の問題を防止する装置を提供する。
【解決手段】有機性廃液を生物処理し、生物処理処理液を固液分離し、分離液の少なくとも一部を系外へ排出し、固液分離手段2で分離された濃縮汚泥および/または生物処理槽1から引き抜かれた汚泥を、オゾンガスと接触させて改質する有機性廃液処理装置に、オゾン発生器32を冷却するための熱交換器34A、34Bを設け、固液分離手段2で分離された分離液を冷却媒体としてオゾン発生器32を熱交換器34A、34Bで冷却する。熱交換器34A、34Bに送液される分離液中の固形物を、ストレーナ等の固形物捕捉手段5で除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンガスによる汚泥改質手段を備える有機性廃液処理装置に係り、特に、この汚泥改質手段の動力コストを低減した有機性廃液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性汚泥、し尿、食品排水等のスラリー状の高濃度有機性廃液を、嫌気性微生物の存在下にメタン発酵によって処理する嫌気性消化方法は、廃液の処理と同時に廃液から有効利用可能なメタンガスを回収できる方法として、古くから行われている方法である。
【0003】
このような嫌気性消化処理においては、未分解物質および嫌気性微生物を主体とする汚泥(消化汚泥)が生成する。従来、生成した汚泥は機械脱水した後、焼却、埋立等により処理されている。
【0004】
嫌気性消化処理により生成する汚泥を減容化し、有機性廃液からメタンガスをより多く回収することができる装置として、特開平9−206785号公報には、消化汚泥をオゾンガスで処理することにより改質した後、この改質汚泥を消化槽に返送する嫌気性消化装置が記載されている。この装置は消化汚泥をオゾン処理して易生物分解性に改質した後、曝気槽に戻して嫌気性微生物の基質としてさらに分解するものであり、有機性廃液からより多くのメタンガスを回収するのに有効な装置である。
【0005】
また、特開2001−269697号公報には、有機性廃液を生物学的に硝化・脱窒処理する方法において、処理系統から引き抜いた汚泥をオゾンガスにより易生物分解性に改質した後脱窒槽に返送する方法が提案されている。
【0006】
しかし、オゾンガスによる汚泥改質処理はオゾン発生器での必要電力量が多く、このために処理コストが高くつくという欠点があった。これは、次のような理由による。
【0007】
即ち、通常のオゾン発生器では、投入電力の約10%がオゾン生成に使われるに過ぎず、残りの90%は熱として失われている。そして、オゾン発生器の運転で放電管などの発熱部分が高温になるに従い、オゾン発生効率が低下し、電力がさらに消費される。このため、オゾン発生器の運転中は常時専用のチラーにてオゾン発生器の放熱部分を冷却する必要があり、このチラー運転のみでオゾン発生器全体で必要な電力の約30%を消費している。
【0008】
また、汚泥と接触した後の排オゾンガスは、気液分離された後、熱分解装置、触媒、活性炭などにより排オゾン処理されるのみで、有益な用途が無く、この排オゾンガスの処理費用も、有機性廃液の処理コストを増加させる要因となっている。
【0009】
上記従来の問題点を解決し、オゾンガスによる汚泥改質手段を備える有機性廃液処理装置において、オゾン発生器全体で必要な電力量を削減し、これにより汚泥改質コストの低減を図る有機性廃液処理装置として、本出願人は先に、有機性廃液を生物処理する生物処理槽と、該生物処理槽の処理液を固液分離し、分離液の少なくとも一部を系外へ排出する固液分離手段と、該固液分離手段で分離された濃縮汚泥および/または前記生物処理槽から引き抜かれた汚泥を、オゾン発生器で発生させたオゾンガスと接触させて改質する汚泥改質手段とを有する有機性廃液処理装置において、前記オゾン発生器を冷却するための熱交換器と、該熱交換器に、前記固液分離手段で分離された分離液を含む液体を冷却媒体として送液するための送液手段とを設けた有機性廃液処理装置を提案した(特願2004−271825。以下「先願」という。)。
【0010】
先願の有機性廃液処理装置によれば、オゾン発生器を冷却するための熱交換器を設け、この熱交換器で生物処理液を固液分離して得られた分離液、即ち、比較的水温の低い放流水との熱交換でオゾン発生器を冷却することにより、チラーを不要とし、オゾン発生器全体で必要な電力を従来に比べて25%も削減することが可能となる。このため、生物処理における汚泥改質コストを低減することができる。
【特許文献1】特開平9−206785号公報
【特許文献2】特開2001−269697号公報
【特許文献3】特願2004−271825
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般に、有機性廃液の生物処理、及び固液分離処理で得られる処理水(分離液)は、一旦、貯留槽(消毒槽)に貯留され、この槽内で薬剤添加等により消毒された後放流される。
【0012】
従って、先願の有機性廃液処理装置では、この消毒槽を経て、処理水を熱交換器の冷却媒体として送給するために、消毒槽内に生息する巻貝類や砂等の固形物も熱交換器に送られる可能性がある。これらの固形物が熱交換器に送られると、熱交換器の閉塞によって送水が出来なくなり、冷却が停止することにより、オゾン発生器の運転に障害が発生しうる。さらに、熱交換器が閉塞した場合には、熱交換器を開缶し、洗浄作業を行わなければならず、そのための作業に手間を要する上に、そのために運転が停止することによる処理効率の低下の問題もある。
【0013】
また、固形物により熱交換器が破損した場合は、オゾン発生器の循環冷却水配管中に固形物が流出し、オゾン発生器本体やこの循環冷却水配管を傷つける可能性がある。
【0014】
従って、本発明は上記先願の問題点を解決し、熱交換器に冷却部として送水される処理水中から、熱交換器の閉塞等の原因となる固形物を除去するようにした有機性廃液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明(請求項1)の有機性廃液処理装置は、有機性廃液を生物処理する生物処理槽と、該生物処理槽の処理液を固液分離し、分離液の少なくとも一部を系外へ排出する固液分離手段と、該固液分離手段で分離された濃縮汚泥および/または前記生物処理槽から引き抜かれた汚泥を、オゾン発生器で発生させたオゾンガスと接触させて改質する汚泥改質手段とを有する有機性廃液処理装置において、前記オゾン発生器を冷却するための熱交換器と、該熱交換器に、前記固液分離手段で分離された分離液を含む液体を冷却媒体として送液するための送液手段と、前記熱交換器の前段に設けられた固形物捕捉手段とを備えてなることを特徴とする。
【0016】
請求項2の有機性廃液処理装置は、請求項1において、前記固液分離手段で分離された分離液を貯留するための貯留槽を有し、前記送液手段として水中ポンプが前記貯留槽内に設置され、前記固形物補足手段は該水中ポンプを覆うことができる形状を有し、該水中ポンプが該固形物捕捉手段で覆われていることを特徴とする。
【0017】
請求項3の有機性廃液処理装置は、請求項2において、前記水中ポンプが前記貯留槽内の底面から離れた状態で支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有機性廃液処理装置では、先願と同様に、オゾン発生器を冷却するための熱交換器を設け、この熱交換器で比較的水温の低い廃液処理水との熱交換でオゾン発生器を冷却することにより、チラーを不要とし、オゾン発生器全体で必要な電力を低減して、生物処理における汚泥改質コストを低減することができる。しかして、熱交換器の前段に固形物捕捉手段が設けられているため、熱交換器の冷却媒体として熱交換器に流入する廃液処理水中の固形物(砂利、貝類、藻類など)を熱交換器前段で除去することが可能となる。その結果、熱交換器の閉塞、破損に由来する事故や熱交換障害を防止することができる。
【0019】
請求項2の有機性廃液処理装置によれば、固形物補足手段が水中ポンプを覆っているため、固形物補足手段が部分的に目詰まりを起こしても、濾過面積を大きくすることにより他の部分により通水性が確保されるため、冷却機能が確保される。
【0020】
請求項3の有機性廃液処理装置によれば、水中ポンプが貯留槽内の底面から浮いた状態で支持されているため、貯留槽の底部に堆積する砂利等の固形物を水中ポンプが吸い上げることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照して本発明の有機性廃液処理装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
図1(a)は本発明の有機性廃液処理装置の実施の形態を示す系統図であり、図1(b)は図1(a)の汚泥改質装置の詳細を示す系統図である。図2,3は、本発明の有機性廃液処理装置の他の実施の形態の要部を示す系統図である。図1〜3において、同一機能を奏する部材には、同一符号を付してある。
【0023】
図1(a)において、1は曝気槽であり散気管1Aを備えている。2は固液分離装置、3は汚泥改質装置である。4は消毒槽(処理水槽)であり、水中ポンプ4Aを備えている。5は固形物捕捉手段としてのストレーナである。
【0024】
この有機性廃液処理装置では、曝気槽1に原水路11から有機性廃液(原水)を導入し、返送汚泥路12を通して固液分離装置2から返送される返送汚泥、汚泥改質装置3から改質汚泥返送路13を通して返送される改質汚泥および曝気槽1内の好気性微生物を含む汚泥と混合して活性汚泥処理を行う。
【0025】
曝気槽1の消化汚泥処理液は移送路15から固液分離装置2に導入されて固形分と分離液とに固液分離され、分離液は処理水として処理水路16から消毒槽4を経て放流路17より系外に排出される。固形分(分離汚泥)は必要に応じて一部が余剰汚泥取出路18から系外へ排出され、残部は返送汚泥として返送汚泥路12より曝気槽1に返送される。
【0026】
曝気槽1の活性汚泥の一部は汚泥取出路19を通して取り出され、図1(b)に示す汚泥改質装置3でオゾンガスとの接触で改質され、改質汚泥は改質汚泥返送路13から曝気槽1に送給される。
【0027】
図1の有機性廃液処理装置では、消毒槽4内の処理水が、水中ポンプ4Aにより汲み上げられ、処理水取出路20より、後述の汚泥改質装置3の熱交換器34A,34Bの冷却水として汚泥改質装置3に送給され、戻り水が返送路21より消毒槽4に戻され、放流される。なお、処理水取出路20にはストレーナ5が設けられており、消毒槽4からの処理水中の固形物を捕捉して除去するように構成されている。
【0028】
汚泥改質装置3は、図1(b)に示す如く、汚泥が導入されるオゾン反応槽31と、このオゾン反応槽31にオゾンを供給するためのオゾン発生器32と、オゾン反応槽31からの気液混合液を排オゾンガスと改質汚泥とに分離する気液分離ユニット33を備える。オゾン発生器32には、これを冷却するための熱交換器34(34A,34B)が付設されており、この熱交換器34A,34Bに洗浄水としてのオゾン水を供給するためのオゾン水生成ユニット35と熱交換器34A,34Bの自動洗浄のための制御ユニット40が設けられている。
【0029】
図1(b)の汚泥改質装置3では、配管(汚泥取出路)19からの活性汚泥がオゾン反応槽31に導入され、オゾン発生器32から配管22より導入されるオゾンガスにより改質処理される。オゾン反応槽31からのオゾンを含む改質処理液は配管23より気液分離ユニット33に送給され、分離された改質汚泥は配管(改質汚泥返送路)13より曝気槽1に送給される。一方、気液分離ユニット33で分離された排オゾンガスは、配管よりオゾン水生成ユニット35に送給される。このオゾン水生成ユニット35には、工水、市水等の清浄な水が貯留されており、排オゾンガスを吸収してオゾン水が調製される。
【0030】
オゾン発生器32には、これを冷却するための熱交換器34A,34Bが設けられている。即ち、従来の一般的なオゾン発生器にはチラーが設けられているが、本発明においては、このチラーを熱交換器と代替し、水中ポンプ36Aを有する冷却水循環槽36を経て、配管25,26,27により、オゾン発生器32の冷却用循環水をこの熱交換器34A,34Bに循環させてオゾン発生器32を冷却させる構成とされている。熱交換器34A,34Bには、消毒槽4内の処理水が配管(処理水取出路)20より導入され、戻り水が配管(戻り水返送路)21より消毒槽4に戻されるように構成されている。また、この配管20には、オゾン水生成ユニット35からのオゾン水が配管28より導入され、洗浄排水が配管21から配管29を経てオゾン水生成ユニット35に返送されるように構成されている。
【0031】
熱交換器34A,34Bへの処理水導入配管20および戻り水返送配管21には、それぞれ圧力・温度センサ37A,37Bが設けられており、配管内を流通する水の圧力と温度が測定される。この圧力・温度センサ37A,37Bの測定値は制御ユニット40に入力され、その演算結果に基いて、オゾン水生成ユニット35からのオゾン水の循環による熱交換器34A,34Bの洗浄が行われる。
【0032】
このような有機性廃液処理装置であれば、消毒槽4から熱交換器34A,34Bに導入される処理水は、配管20に設けられたストレーナ5により、固形物(砂利、貝類、藻類など)が捕捉除去されるため、これらの固形物が熱交換器34A,34Bに流入して熱交換器34A,34Bの閉塞、破損、その他の障害をひき起こすことがない。なお、このストレーナとしては特に制限はなく、Y型ストレーナ、バケット型ストレーナ等を用いることができる。
【0033】
なお、図1(b)においては、系統図の簡略化のために、熱交換器34Bについて配管類の図示を省略してあるが、熱交換器34Bも熱交換器34Aと同様の配管接続構成とされており、制御ユニット40による制御とバルブの切り換えで熱交換器34A,34Bとで、オゾン発生器32の冷却と洗浄とが交互に行われるように構成されている。
【0034】
オゾン発生器32の循環水は配管25,26、冷却水循環槽36、配管27により熱交換器34Aとオゾン発生器32とを循環し、熱交換器34Aで生物処理水との熱交換で冷却される。通常、消毒槽4からの生物処理水は5〜30℃程度の比較的低温の処理水であるため、このような処理水との熱交換でオゾン発生器32を効率的に冷却することができる。この熱交換器34Aからの戻り水は、オゾン発生器32の循環水との熱交換で10〜35℃程度に温度が上昇しているが、一般的な有機性廃液処理装置では、汚泥改質装置のオゾン発生器の冷却のために必要な水は、系外へ排出される処理水の1/10〜1/100程度で良く、従って、全体の処理水の温度上昇は0.05〜0.5℃程度であり、放流水の温度には大差はなく、本発明を採用することによる不利益は発生しない。
【0035】
前述の如く、生物処理水は比較的水質の高いものであるが、経時により熱交換器34Aの生物処理水流通路においてバイオファウリングが起こる可能性がある。この場合には、熱交換器34Aの生物処理水流通路が狭くなる結果、熱交換器34Aの冷却水の入口配管20と出口配管21との差圧が上昇する。また、熱交換効率が悪くなる結果、温度差の下降が起こる。従って、図1(b)の装置では、入口配管20および出口配管21に圧力・温度センサ37A,37Bを設け、これらの測定値から温度差の下降および差圧の上昇を検出し、温度差が所定値以下になったとき、または差圧が所定値以上になったときに、制御ユニット40よりオゾン水生成ユニット35に洗浄信号を出力する。
【0036】
制御ユニット40からの洗浄信号を受けて、図示しないバルブ切り替えによりオゾン発生器32の循環水を熱交換器34Bに循環させてオゾン発生器32を熱交換器34Bで冷却するようにすると共に、熱交換器34Aにオゾン水生成ユニット35からのオゾン水を循環させて熱交換器34Aの冷却水流通路を洗浄する。
【0037】
この洗浄に用いるオゾン水のオゾン濃度は、洗浄効果、腐食抑制、排オゾン量等の面から0.5〜3mg−O/L程度であることが好ましい。このオゾン水は、洗浄を繰り返し行うことにより汚染が進行した場合は、廃棄して新しい水に排オゾンガスを吹き込んでオゾン水を調製すれば良い。
【0038】
このように、制御ユニット40による洗浄時期の検出と自動洗浄を行って、2機の熱交換器34A,34Bでオゾン発生器32の冷却と洗浄とを交互に行うことにより、オゾン発生器32を生物処理水により連続的に冷却することができると共に、熱交換器34A,34Bのバイオファウリングを防止することができる。
【0039】
図1に示す有機性廃液処理装置では、消毒槽4から処理水を熱交換器34A,34Bに送給する処理水取出路20にストレーナ5を設けて処理水中の固形物を捕捉除去するようにしているが、消毒槽4内の水中ポンプ4Aを覆うように設けたストレーナで、この固形物を捕捉除去するようにしてもよい。また、水中ポンプ4Aを覆うストレーナと処理水取出路20に設けたストレーナとの両方で固形物を捕捉除去するようにしてもよい。
【0040】
図2は、このように水中ポンプ4Aを覆うストレーナ4Bと処理水取出路20に設けたストレーナ5とで処理水中の固形物を捕捉除去するようにしたものである。この図2の実施形態であれば、ストレーナ(かご型ストレーナ)4Bが水中ポンプ4Aを覆っているため、このストレーナ4Bが部分的に目詰まりを起こしても他の部分により通水性を確保することができ、また、ストレーナ5の目詰まりも防止される。
【0041】
また、図1に示す消毒槽4内の水中ポンプ4Aは、消毒槽4の底面に直置きされているが、消毒槽4内の水中ポンプ4Aを消毒槽4の底面から離れた状態で支持するようにしてもよい。
【0042】
図2はこのような実施形態を示すものであって、水中ポンプ4Aは消毒槽4の底面より上方に懸架されたかご型ストレーナ4C内に配置されている。このように、水中ポンプ4Bを消毒槽4の底面よりも上方に設けることにより、水中ポンプ4Aが消毒槽4の底部に堆積した砂利等の固形物を吸い上げることによる水中ポンプ4Aの故障等を防止することができる。
【0043】
なお、図2において、図1と同一機能を奏する部材には同一符号を付してあるが、図2において、図1に示される生物処理部やオゾン反応槽等の記載は図示を省略してある。
【0044】
図1,2においては、消毒槽(単なる貯留槽であってもよい)4を設け、この消毒槽4内に水中ポンプ4Aを浸漬して処理水を汲み上げて熱交換器に送給する実施形態を示したが、熱交換器への処理水の送給は、水中ポンプに限らず、消毒槽外の配管に設けた通常のポンプで行うこともできる。
【0045】
また、本発明は、消毒槽のような処理水の貯留槽を設けず、固液分離装置の分離水排出配管から分岐する配管により、直接処理水を熱交換器に送給するものであってもよい。しかしながら、処理水を貯留することによる固形物(砂利、貝類、藻類など)の混入を防止する観点から、処理水の貯留槽を有する場合に、本発明の効果が有効に発揮される。また、このように貯留槽を設けた場合は、貯留槽における放熱効果で熱交換器へ送給する処理水の水温を下げ、熱交換器での冷却効率を高めることもできる。
【0046】
いずれの場合も、ストレーナ等を熱交換器の処理水導入口よりも前段側に設けることにより、処理水中の固形物を捕捉除去して、安定な熱交換を行える。
【0047】
なお、プレート型熱交換器を用いる場合、固形物捕捉手段としてのストレーナの目幅としては、熱交換器内の熱交換プレート間距離よりも小さいものが好ましく、一般的には、この熱交換器内の熱交換プレート間距離の60〜90%程度の目幅のものを用いるのが好ましい。この目幅が大き過ぎるとストレーナを設けたことによる固形物の捕捉除去効果が十分に得られず、小さ過ぎるとかえってストレーナが頻繁に目詰まりするようになり、好ましくない。
【0048】
なお、下水処理施設のように、時間や曜日により処理水量が変化する施設に本発明を適用し、図2のようにストレーナ4Aを消毒槽4の底面よりも上方に設ける場合、処理水の一時的な減少時にもストレーナ4Aが水面上に表出してポンプの空引きが起こることがないような位置に設けることが重要である。
【0049】
また、図2のように、水中ポンプ4Aを覆うようにかご型ストレーナ5Aを設けた場合、処理水量の増加時に、消毒槽4のかご型ストレーナ5Aの上部から処理水が流入し、ストレーナ5Aによる固形物の捕捉除去効果が得られない場合があるので、図示の如く、配管20に更にストレーナ5Bを設けることが好ましい。
【0050】
図1,2は本発明の有機性廃液処理装置の実施の形態の一例を示すものであって、本発明はその要旨を超えない限り、何ら図示のものに限定されるものではない。
【0051】
例えば、固液分離装置2からの生物処理水に他系統からの低温の生物処理水等の水を加えて熱交換器34A,34Bに循環させても良い。この場合において、系外からの処理水の流入配管にもストレーナを設けても良い。また、図1において、汚泥の改質は、図1に示す如く、曝気槽1からの活性汚泥に対して行う他、固液分離装置2で分離された分離汚泥に対して行っても良い。
【0052】
本発明の有機性廃液処理装置はまた、オゾンによる汚泥の改質を行う有機性廃液処理装置であれば、生物処理槽の種類には特に制限はなく、好気性消化槽を有するものであっても良く、また、脱窒槽を備えるものであっても良い。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0054】
実施例1
図1に示す構成で下水処理施設の二次処理水を冷却水として熱交換器(プレート間隔3mm)に通水した。ストレーナ5としては市販のY型ストレーナ(目幅2.5mm)を設けた。
【0055】
Y型ストレーナにより消毒槽に生息する巻貝類、砂利、藻類等の固形物が捕捉除去されており、熱交換器の閉塞を防止することができた。
【0056】
実施例2
図2に示す構成で下水処理施設の二次処理水を冷却水として熱交換器(プレート間隔3mm)に通水した。ストレーナ5Bとしては、目幅2mmのバケット型ストレーナを用いた。水中ポンプ4Aを覆うストレーナ5Aとしては、目幅2.5mmのかご型ストレーナを用いた。水中ポンプ4Aは消毒槽(水深30〜150cm)(日変動による)4の底面から20cm上方の位置に設けた。
【0057】
その結果、ストレーナ5Aとストレーナ5Bとで固形物を確実に捕捉除去すると共に、水中ポンプ4Aによる消毒槽4底部の砂利等の吸い上げを防止して、熱交換器に安定な処理水供給を行って、高い熱交換効率で熱交換を行うことができた。
【0058】
この構成では、熱交換器の閉塞等の問題はなく、落雷などの停電時以外には連続運転が可能であった。
【0059】
なお、バケット型ストレーナ5Bには、若干の固形物(砂利、貝類、藻類など)が捕捉されていたため、月に1回程度清掃した。
【0060】
数ヵ月以上に及ぶ運転の結果から得られた冷却効果は、オゾン発生器の運転に支障のない範囲であった。
【0061】
このときのオゾン発生器の循環冷却水の水温の経時変化を図3に示した。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1(a)は本発明の有機性廃液処理装置の実施の形態を示す系統図であり、図1(b)は図1(a)の汚泥改質装置の詳細を示す系統図である。
【図2】本発明の有機性廃液処理装置のオゾン発生器冷却部の構成の他の実施の形態を示す系統図である。
【図3】本発明を採用した有機性廃液処理装置におけるオゾン発生器の循環冷却水の水温の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0063】
1 曝気槽
2 固液分離装置
3 汚泥改質装置
4 消毒槽
4A 水中ポンプ
5,5A,5B ストレーナ
31 オゾン反応槽
32 オゾン発生器
33 気液分離ユニット
34A,34B,34 熱交換器
35 オゾン水生成ユニット
36 冷却水循環槽
36A 水中ポンプ
37A,37B 圧力・温度センサ
40 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃液を生物処理する生物処理槽と、
該生物処理槽の処理液を固液分離し、分離液の少なくとも一部を系外へ排出する固液分離手段と、
該固液分離手段で分離された濃縮汚泥および/または前記生物処理槽から引き抜かれた汚泥を、オゾン発生器で発生させたオゾンガスと接触させて改質する汚泥改質手段と
を有する有機性廃液処理装置において、
前記オゾン発生器を冷却するための熱交換器と、
該熱交換器に、前記固液分離手段で分離された分離液を含む液体を冷却媒体として送液するための送液手段と、
前記熱交換器の前段に設けられた固形物捕捉手段と
を備えてなることを特徴とする有機性廃液処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記固液分離手段で分離された分離液を貯留するための貯留槽を有し、
前記送液手段として水中ポンプが前記貯留槽内に設置され、
前記固形物補足手段は該水中ポンプを覆うことができる形状を有し、
該水中ポンプが該固形物捕捉手段で覆われていることを特徴とする有機性廃液処理装置。
【請求項3】
請求項2において、前記水中ポンプが前記貯留槽内の底面から離れた状態で支持されていることを特徴とする有機性廃液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−253042(P2007−253042A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79360(P2006−79360)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成14〜17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発/有機物の分解促進による下水汚泥高効率嫌気性消化システムの開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】