説明

有機水溶液を脱水するためのプロセス及びシステム

有機水溶液を脱水するためのエネルギー効率の良いプロセスには、自由に利用できる太陽エネルギーを用いて貯蔵器内のドロー溶液を濃縮することが含まれている。ドロー溶液を、正浸透プロセスにおいて有機溶液から水を取り出す膜とともに用いる。ドロー溶液を、浸透プロセスによって希釈し、貯蔵器に戻して、再濃縮し浸透プロセスで再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許出願第12/317163号明細書(2008年12月18日出願)の継続出願である。
【0002】
本発明は、有機水溶液を脱水するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
代替燃料の製造において有用な高濃度有機溶液(例えばアルコール)を生成するための処理が知られている。例えば、ガソリンとのブレンドに適したエタノールは一般的に、濃度が、エタノールについては約95重量%〜約100重量%で、水については約1体積%未満である。エタノール溶液を脱水して好適な濃度を実現するための既知の処理として、発酵ブロスを従来通りに蒸留して、ブロスの濃度を、共沸溶液が形成されるまで上げることが挙げられる。例えば、ブロス中のエタノールの濃度を、共沸混合物が形成されるまで、従来の蒸留を用いて上げる場合がある。蒸留プロセスの後にさらなる処理を行って、溶液からさらに水を取り出すことができる。このようなさらなる処理としては、大気圧未満で蒸留して、よりエタノールリッチな溶液を得ること、抽出蒸留(エタノール溶液に、沸点が高くてエタノール溶液と混和性である分離溶液又は抽出剤をさらに含めて、共沸混合物の形成を回避する)、及び共沸剤添加(エタノール/水共沸混合物を、少量のベンゼン又はシクロヘキサンを添加した後に分留プロセスを行うことによって、壊すことができる)が挙げられる。残念なことに、これらの処理は、非常にエネルギー集約的である。溶液を脱水するためのそれほどエネルギー集約的ではない代替プロセスでは、水選択性の高い浸透気化膜を用いているが、入熱が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機溶液を脱水するための商業的に実行可能でエネルギー効率のより良いプロセスを得ることは望ましいことであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、本発明は、有機水溶液を脱水するためのプロセスに指向し、前記プロセスは、
a)水/有機物選択性が1を超え、浸透剤拒否率が95%を超えている膜であって、ドロー溶液側及び供給溶液側を有する膜を用意する工程と、
b)有機液体及び水を含み水分活性を有する供給溶液を前記膜の前記供給溶液側へ送出する工程と、
c)水分活性が前記供給溶液の水分活性よりも低くて所望の濃度を有する浸透剤を含んでいるドロー溶液を、貯蔵器から前記膜の前記ドロー溶液側へ送出し、送出するとすぐに、前記供給溶液からの水が前記膜の前記供給溶液側から前記膜の前記ドロー溶液側へ移動することによって、前記供給溶液を脱水して前記ドロー溶液を希釈する工程と、
d)前記希釈ドロー溶液を前記膜から前記貯蔵器へ送出する工程と、
e)前記貯蔵器内の前記ドロー溶液を、太陽エネルギーを用いることによって、前記所望の濃度まで濃縮する工程と、
f)前記膜から前記脱水された有機溶液を取り出す工程と、
を含んでいる。
【0006】
別の実施形態によれば、本発明は、有機水溶液を脱水するためのシステムに指向し、前記システムは、
a)有機液体及び水を含んでいる供給溶液の供給源であって、前記供給溶液は水分活性を有する、供給源と、
b)浸透剤及び水を含んでいるドロー溶液を収容する貯蔵器であって、前記ドロー溶液の水分活性は前記供給溶液の水分活性よりも低く、太陽エネルギーによって前記貯蔵器内の前記ドロー溶液は所望の濃度まで濃縮される、貯蔵器と、
c)水/有機物選択性が1を超え、浸透剤拒否率が95%を超えている膜であって、ドロー溶液側及び供給溶液側を有する前記膜と、
d)前記供給溶液を前記膜の前記供給溶液側へ送出する手段であって、送出するとすぐに前記供給溶液が脱水される手段と、
e)前記ドロー溶液を前記貯蔵器から前記膜の前記ドロー溶液側へ送出する手段であって、送出するとすぐに前記ドロー溶液が希釈される手段と、
f)前記希釈ドロー溶液を前記膜の前記ドロー溶液側から前記貯蔵器へ送出する手段と、
g)前記脱水された有機溶液を前記膜の前記供給溶液側から取り出す手段と、
を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】は本発明のプロセスの概略図である。
【図2】貯蔵器表面温度を変化させたときのドロー溶液からの水の蒸発速度を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
水溶性浸透剤を含んでいる濃縮溶液(本明細書においてドロー溶液と言う)には混合ポテンシャルエネルギーが蓄えられているために、このような溶液を高選択性の水/有機物膜とともに用いて、正浸透(直接浸透とも言う)によって低濃度有機水溶液を脱水することができる。膜の選択性とは、特定の成分が膜を透過することができる一方で、他の成分が膜を透過することができない程度のことである。高選択性の水/有機物膜は、選択的に、水に対して透過性であり、溶液の有機成分に対して不透過性である。有機水溶液は、ドロー溶液よりも水分活性が高い。水分活性は、同じ温度における、水を含んでいる試料上方の水の蒸気圧と、純粋な水の飽和蒸気圧との比率として定義される。水分活性は、溶液中で非結合水が利用可能な程度を示すものである。水は、水分活性が高い領域から水分活性が低い領域へ移動する。したがって、有機水溶液からの水は膜を横断してドロー溶液まで移動し、その結果、有機溶液が脱水されてドロー溶液が希釈される。ドロー溶液を、貯蔵器内に、正浸透によって有機水溶液の所望の濃度を達成するのに適した所望の濃度で保存することができる。希釈されたドロー溶液(正浸透プロセスによって得られる)を、貯蔵器に戻すことができる。貯蔵器内では、太陽エネルギーを用いてドロー溶液から水を蒸発させて、所望の濃度までの再濃縮を図る。
【0009】
図1に、本発明のプロセスを例示する。有機溶液の供給物を、供給溶液源2から膜6の供給溶液側へ送出する。供給溶液源2は、有機溶液がアルコールのときは、貯蔵タンク又は発酵タンクとすることができる。供給溶液よりも水分活性が低いドロー溶液が、貯蔵器8から送出される。前記貯蔵器で、ドロー溶液は、膜6のドロー溶液側に供給される前に、所望の濃度に濃縮される。膜越しに水分活性勾配が生じる結果、水は供給溶液からドロー溶液へ移動し、その結果、有機溶液が脱水されてドロー溶液が希釈される。結果として生じる脱水された溶液を次に、所望する利用のために取り出すことができる。例えば、燃料中に取り入れる、さらなる処理へ運ぶ、保存するなどである。希釈ドロー溶液を貯蔵器8に戻して、太陽エネルギーを用いて再濃縮し、膜6まで再循環させる。供給及びドロー溶液を、既知の手段(例えば配管及びポンプ)によって送出することができる。供給溶液を、発酵タンク2から膜6へ、重力供給又はポンプ3によって送出することができる。同様に、ドロー溶液を貯蔵器8から膜6へ、重力供給又はポンプ5によって送出することができる。また希釈ドロー溶液を貯蔵器へ、任意的な重力供給又はポンプ(図示せず)によって戻すことができる。
【0010】
有機供給物水溶液は、アルコール水溶液とすることができる。例えば、2〜14の炭素原子を有するアルコール、又はそれらの混合物若しくは異性体である。有機水溶液はエタノール水溶液とすることができる。有機供給物水溶液の濃度は、約0.1体積%〜約50体積%とすることができ、約0.1体積%〜約15体積%とすることさえできる。脱水プロセスの結果として生じる有機溶液の濃度は、約1体積%〜約99体積%とすることができ、約20体積%〜約99体積%とすることさえできる。
【0011】
好ましくは、固形物を供給溶液から固形物除去手段4を用いて取り出すことを、膜に接触する前に行う。このような手段は、任意の適切な手段とすることができる。例えば、フィルタ、遠心分離機、重力沈降タンク、膜(例えば微多孔膜又は緻密膜)などである。プロセスの効率は、有機溶液がエタノール溶液の場合にはエタノール選択膜を用いて固形物除去を図ることによって、向上させることができる。任意的に、エタノール選択膜を発酵タンク2内に配置することができる。
【0012】
プロセスは、連続的に、半連続的に、又はバッチ処理として実行しても良い。プロセスを連続的に実行させる場合、貯蔵器8のサイズは、貯蔵器内に保存するドロー溶液の濃度を本質的に一定に維持するのに最適なサイズにしなければならない。「本質的に一定の濃度」の意味は、貯蔵器内のドロー溶液の濃度はある程度変化するが、非連続的な操作が必要となるほど大きくはないということである。貯蔵器8の最適なサイズは、温度、湿度、及び気流速度の大気条件におけるドロー溶液の蒸発速度を知って、決めることができる。蒸発速度は、前述した種々の要因を考慮しながら、方程式(1)を用いて近似することができる。
【0013】
【数1】


ここで、
E=水の蒸発速度(mg/min/cm
C=実験定数
atm=大気温度(K)
ws=表面水温(K)
ν=空気の速度(m/秒)
sat=ドロー溶液の飽和蒸気圧力(kPa)
RH=相対湿度(割合)
【0014】
プロセスは半連続的に実行することができる。すなわち、当該プロセスにより、供給溶液を膜へ送出すること、ドロー溶液を膜へ送出すること、及び/又は希釈ドロー溶液を貯蔵器へ送出することを、断続的に実行して、所望の濃度の有機水溶液を得ることができる。
【0015】
貯蔵器内のドロー溶液を屋外の大気条件に対して開放することを、例えば池又は開放タンクにおいて行うことができる。開放貯蔵器を、大気条件が高蒸発速度に貢献する領域(例えば、温暖、低湿度、及び高気流速度)に配置することが優位である。貯蔵器は日中に直射日光に露出させることができる。太陽エネルギーは、貯蔵器内のドロー溶液の表面に吸収されて、ドロー溶液中の水の蒸発を推進する。
【0016】
あるいは、貯蔵器を、密閉タンクの場合のように、閉じることができる。太陽エネルギーを、ミラー及び/又はレンズを用いて集中させて、ドロー溶液を加熱し、ドロー溶液中の水の蒸発を推進することができる。
【0017】
貯蔵器内の所望の濃度において、ドロー溶液は、膜を通して有機溶液から水を抽出するのに十分な浸透圧を有している。所望のドロー溶液濃度は、プロセスパラメータ(例えば、供給溶液濃度、所望の生成物濃度、流量、浸透剤など)に応じて変化する。ドロー溶液の浸透圧が高いほど、有機水溶液から水を抽出する能力が高い。ドロー溶液は有機溶液よりも水分活性が低い。水は、水分活性が高い領域から水分活性が低い領域へ流れる。有機供給物水溶液とドロー溶液との間の水分活性勾配が大きいほど、膜を横断して水を動かすために利用できる推進力が大きい。表1に、室温で90%エタノール/水溶液を脱水するときの、種々の浸透剤を含んでいる多くのドロー溶液に対する飽和濃度及び浸透圧勾配を示す。ドロー溶液中で用いるのに好適な浸透剤は、高い浸透圧か又は膜越しに高い水分活性勾配が得られる浸透剤である。
【0018】
好適な浸透剤としては、ハロゲン化物、ニトレート、サルフェート、アセタート、及び糖が挙げられる。決して限定ではない例として、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、及び酢酸カリウムの塩を浸透剤として用いても良い。多価塩は一価塩と比較して好ましい場合がある。なぜならば、より大きな推進力が得られるからである。また尿素を浸透剤として用いても良い。
【0019】
【表1】

【0020】
ドロー溶液の温度を上げると、浸透剤溶解度が増加し、その結果、ドロー溶液の浸透圧を上げて浸透剤の沈殿電位を小さくすることができるため優位である。例えば、飽和塩化ナトリウム溶液の浸透圧は、25°Cにおいて約400atm、40°Cにおいて約420atm、及び55°Cにおいて約440atmである。またドロー溶液の温度を上げるとドロー溶液の粘度が下がり、その結果、ドロー溶液をポンプで汲み上げるのに必要なエネルギーが小さくなるため優位である。
【0021】
選択したドロー溶液に応じて、非常に腐食耐性のあるパイプを用いることが望ましい場合がある。非腐食のプラスチックパイプ(例えばPVCパイプ)が、60°Cの温度以下において腐食性の塩溶液を取り扱うのに適している。塩素化したPVCパイプが、より高い温度においてこのような溶液を取り扱うのに適している。
【0022】
本発明で用いる膜の選択は、正浸透プロセスにおける安定性、流束、及び分離効率に対する要求を考慮した後に行う。膜は水/有機物選択性が少なくとも1である。実際の水選択性は、使用している供給及びドロー溶液の組み合わせに応じて、変化し得る。アルコール水溶液を脱水している場合、水/アルコール選択性は少なくとも約50であることが好ましい。また膜は、浸透剤拒否率が95%を超えている。すなわち膜は、ドロー溶液中で用いる浸透剤の少なくとも95%に対して、膜を横断して供給溶液側へ移動することを阻んでいる。例えば、欠陥がほとんどない連続的な緻密膜であれば、高レベルの拒否が得られる。
【0023】
好ましくは、膜は、高濃度環境において長時間安定性を示すとともに、有機溶媒による可塑化に対する耐性を示す。膜のガラス状ポリマー中でのエタノールの吸着が高くなると、可塑化の結果として膜の分離選択性が急激に失われる。ガラス転移がより高い芳香族ポリマーに物理的(例えば、水素結合)又は化学的(共有結合)架橋を伴うか又は伴わないものからなる膜を用いることが、可塑化抵抗にとって好都合な場合がある。
【0024】
膜は、高い水流束が可能であることが好ましい。膜の水流束は、少なくとも約1リットル/平方メートル/時間であることが好ましい。水流束は、膜材料の固有の水透過性と膜表面層厚さとの関数である。透過性を高めるためには、親水性ポリマーが望ましく、付加的な優位性として、膜汚染を受ける傾向が小さくなる。正浸透における膜間差圧は無視できるので、選択した膜に対して必要な支持構造は最小限で済む。最小限の支持構造を伴う膜を開発して、最大流束を図ることができる。
【0025】
正浸透に対する可能性を示す別のタイプの膜は、親水性ポリマー及びゼオライトを用いて作られるハイブリッド有機/無機膜である。水流束を増加させるために、ゼオライトナノ粒子をポリアミドのマトリックス中で用いている。この膜デザインでは、ゼオライトを、多孔性支持体上に形成した緻密薄フィルムポリアミド層中に分散させる。あるいは、ゼオライト粒子を多孔性支持体中に分散させて、その親水性を増加させることができる。さらに加えて、このようなデザインによって、ゼオライトの高弾性率に由来する付加的な強度も得ることができる。さらに、ゼオライトナノ粒子を緻密層中で用いて、溶媒安定性(可塑化抵抗)を得ることができる。膜の他の可能な例としては架橋された親水性ポリマーがある。
【0026】
膜の形態及び形状は、特定の分離用途に対して最適化することが好ましく、これは、膜を用いることに通じている者の技術レベルの範囲内であろう。好適な膜としては、中空糸膜、平坦な非対称膜、多成分膜、及び緻密フィルム膜が挙げられる。これらの膜タイプに対して知られている膜モジュール構成を用いることができる。膜材料を、高分子材料、金属有機錯体、無機材料、及びこれらの組み合わせから選ぶことができる。
【0027】
膜のドロー溶液側で膜に隣接する境界層内の溶質の濃度は、希釈濃度分極として知られている効果に起因して、膜の供給溶液側の境界層内のエタノールの濃度よりも低くなり得る。この効果は、膜の分離層越しの浸透圧推進力を小さくするように働く。この効果を最小限にするために、両側の膜表面を再生する必要がある。これは、高流量を伴う非対称膜の分離層(表面層)の滑らかな外側では容易に行われるが、表面層の多孔質側での再生はより難しい。こうして、薄いか又は高多孔性の支持体層が、境界層厚さを最小限にするのに好ましく、その結果、膜越しの推進力が最大になる。さらに、供給溶液が非対称膜の多孔質側に接触して、より粘性のあるドロー溶液が膜の滑らかな表面層表面に接触するときに、より薄い境界層が実現されることが考えられる。この構成は、プレートフレーム内の非対称な平坦フィルムか若しくはらせん状に巻かれた膜モジュールを用いて、又は自立した中空糸膜モジュールとして、実施することができる。
【0028】
本発明によるプロセスによって、エネルギー変換が最小限になり、その結果、変換の非効率さに起因する浪費が減る。本プロセスは、自由に利用できる太陽エネルギーを利用して、不毛であるか又は生物燃料作物の栽培には不適切な土地に構築された蒸発池でドロー溶液を濃縮する。化学ポテンシャルとしてドロー溶液中に太陽エネルギーを取り込み保存する。蒸発池又はタンクの形での保存が安価である。
【実施例】
【0029】
本発明のエネルギー節約を推定するために、仮定の貯蔵器を、多量の太陽光及び以下の平均的な気候条件を伴う領域内に配置された開放蒸発池であると想定する。
相対湿度(%) 52.6
平均温度(°C) 18.6
平均風速(m/秒) 2.84
【0030】
ドロー溶液は塩化マグネシウムの20重量%水溶液である。吸収された太陽エネルギーによって、ドロー溶液の温度が上昇する。図2に、水面温度の変化に伴う蒸発速度の変化を示す。図2に示すように、太陽熱加熱によって水面の温度を50°Cまで上げることによって、ほぼ540mL/hr/cmの水を除去できる。池面積は、5MのMgClの濃度に達するのに十分な量の水を蒸発させるのに必要な表面積によって決定した。
【0031】
三酢酸セルロース膜を浸透プロセスにおいて用いる。膜はエタノールに対して不透過性であると想定する。99%エタノール回収を達成するのに、水/エタノール分離係数としてほぼ95を想定した。
【0032】
効果的な膜透過流束を、修正流束方程式(2)を用いて推定する。方程式(2)では、浸透圧に対する対数平均の推進力を用いている。
【0033】
【数2】


ここで、
=膜の水流束
=膜の水透過性定数
Δπ=膜の入口での浸透圧差
Δπ=膜の出口での浸透圧差
【0034】
ドロー溶液から膜を横断する塩の透過も、並流もないことを想定する。
【0035】
修正流束方程式を用いて、想定の水透過性として3.07E−12/m/Pa/秒を基にして、流束を算出した。添え字は、膜の位置1及び2における浸透推進力を示す。表2に、それぞれの浸透推進力を示す。
【0036】
【表2】

【0037】
修正流束方程式及び表2の情報に基づいて、三酢酸セルロース膜に対して計算した流束は、553リットル/m/hrの水が膜を透過するということであり、結果的に、要求される膜面積は、ほぼ650m(6,982ft)になる。なお、94.7%の水回収が、拒否流れ中のエタノールが50重量%に達するのに必要であると想定している。この組成は、典型的なエタノール脱水プロセスにおいてビールカラムから精留塔に入るエタノール流れのそれと同様である。
【0038】
表3に、エタノール脱水プロセスにおける主要機器によるエネルギー使用量の推定値を示す。ドロー溶液ポンプによる消費電力を、アスペンプラス(Aspen Plus)プロセスシミュレーションソフトウェア(アスペンテクノロジー社(Aspen Technology Inc.)、マサチューセッツ州、バーリントンから市販される)においてシミュレートした。
【0039】
5重量%エタノール水溶液を50重量%エタノールまで脱水するのに必要なエネルギーは、従来の蒸留プロセスにおいてビールカラムが必要とするそれよりも著しく低い。相対的に、ビールカラムは、生成エタノールの約12,000BTU/ガロンを消費する。5重量%のエタノール水溶液を脱水するために蒸留にとって通常必要なエネルギーを、「The Alcohol Textbook、第4版、K.A.Jacquesら編集」に開示されるように、21,505BTU/ガロンと推定することができる。通常、ビールカラムは、エタノール脱水における全エネルギー消費量の約55%、又はほぼ12,000BTU/ガロンを消費する。
【0040】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機水溶液を脱水するためのシステムであって、
a)有機液体及び水を含んでいる供給溶液の供給源であって、前記供給溶液は水分活性を有する、供給源と、
b)浸透剤及び水を含んでいるドロー溶液を収容する貯蔵器であって、前記ドロー溶液の水分活性は前記供給溶液の水分活性よりも低く、太陽エネルギーによって前記貯蔵器内の前記ドロー溶液は所望の濃度まで濃縮される、貯蔵器と、
c)水/有機物選択性が1を超え、浸透剤拒否率が95%を超えている膜であって、ドロー溶液側及び供給溶液側を有する前記膜と、
d)前記供給溶液を前記膜の前記供給溶液側へ送出する手段であって、送出するとすぐに前記供給溶液が脱水される手段と、
e)前記ドロー溶液を前記貯蔵器から前記膜の前記ドロー溶液側へ送出する手段であって、送出するとすぐに前記ドロー溶液が希釈される手段と、
f)前記希釈ドロー溶液を前記膜の前記ドロー溶液側から前記貯蔵器へ送出する手段と、
g)前記脱水された有機溶液を前記膜の前記供給溶液側から取り出す手段と、
を備えているシステム。
【請求項2】
前記有機水溶液はアルコール水溶液であり、前記膜は水/有機物選択性が50を超えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記貯蔵器は、池、開放タンク、又は密閉タンクである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記膜へ送出する前に前記供給溶液から固形物を取り出すための手段をさらに備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記供給溶液を前記膜へ送出するための前記手段及び前記ドロー溶液を前記膜へ送出するための前記手段は、ポンプ又は重力を含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
有機水溶液を脱水するためのプロセスであって、
a)水/有機物選択性が1を超え、浸透剤拒否率が95%を超えている膜であって、ドロー溶液側及び供給溶液側を有する膜、を用意する工程と、
b)有機液体及び水を含み水分活性を有する供給溶液を前記膜の前記供給溶液側へ送出する工程と、
c)水分活性が前記供給溶液の水分活性よりも低くて所望の濃度を有する浸透剤を含んでいるドロー溶液を、貯蔵器から前記膜の前記ドロー溶液側へ送出し、送出するとすぐに、前記供給溶液からの水が前記膜の前記供給溶液側から前記膜の前記ドロー溶液側へ移動することによって、前記供給溶液を脱水して前記ドロー溶液を希釈する工程と、
d)前記希釈ドロー溶液を前記膜から前記貯蔵器へ送出する工程と、
e)前記貯蔵器内の前記ドロー溶液を、太陽エネルギーを用いることによって、前記所望の濃度まで濃縮する工程と、
f)前記膜から前記脱水された有機溶液を取り出す工程と、
を含んでいるプロセス。
【請求項7】
前記有機水溶液は、2〜14の炭素原子を有するアルコール及びその異性体からなる群から選択される少なくとも1種のアルコールを含んでいる、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記供給溶液は濃度が約0.1体積%〜約50体積%である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記脱水された有機溶液は濃度が約1体積%〜約99体積%である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ドロー溶液は、ハロゲン化物、ニトレート、ホスフェート、サルフェート、アセタート、糖、及び尿素からなる群から選択される水溶性成分を含んでいる、請求項6に記載のプロセス。
【請求項11】
前記膜は、水/有機物選択性が少なくとも約50であり、流束が少なくとも約1L/m/hrである請求項6に記載のプロセス。
【請求項12】
前記供給及びドロー溶液を前記膜の前記供給及びドロー溶液側にそれぞれ連続的に送出し、前記貯蔵器のサイズを、前記貯蔵器内の前記ドロー溶液の濃度が本質的に一定になるように設けている、請求項6に記載のプロセス。
【請求項13】
前記膜は、中空糸膜、平坦な非対称膜、多成分膜、及び緻密膜からなる群から選択され、前記膜は、高分子材料、金属有機錯体、無機材料、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含んでいる、請求項6に記載のプロセス。
【請求項14】
前記供給溶液を前記膜へ送出する前に前記供給溶液から固形物を取り出す工程をさらに含んでいる、請求項6に記載のプロセス。
【請求項15】
前記貯蔵器を大気に対して開放し、太陽エネルギーによって前記ドロー溶液中の水の蒸発を推進する、請求項6に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−512740(P2012−512740A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542178(P2011−542178)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/064415
【国際公開番号】WO2010/080208
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】