説明

有機溶媒の脱臭方法

【課題】植物抽出物の精製に使用した有機溶媒を脱臭する方法を提供すること。
【解決手段】植物抽出物を有機溶媒で精製した後に回収した有機溶媒を脱臭する方法であって、回収有機溶媒をHLBが2以上の非イオン界面活性剤と接触させ、蒸留する工程を含む、有機溶媒の脱臭方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機溶媒の脱臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能成分を含有する植物抽出物が多数見出されており、このような植物抽出物としてコーヒー豆抽出物、茶抽出物等が知られている。例えば、茶抽出物をそのまま配合して製造して茶飲料を製造することができるが、長期間保存したときに澱が生じて外観を大きく損ねるため、精製した茶抽出物を配合することが多い。
【0003】
茶抽出物の精製方法としては、例えば、カテキン類を含有する茶抽出物を特定の有機溶媒と混合し生じた沈殿を除去した後、有機溶媒を留去する方法が採用されているが(特許文献1)、多量の有機溶媒を使用するため、環境保全やコストの観点から茶抽出物の精製に使用した有機溶媒を回収して再利用することが望まれる。
【0004】
しかしながら、蒸留により回収された有機溶媒は茶由来の異臭や着色が強く、茶抽出物の精製に再利用できるものではなかった。このことは、その他の植物抽出物についても同様であった。そこで、回収した有機溶媒を、例えば、活性炭処理すると異臭や着色を容易に除去することができるが、活性炭処理は高コストであるため、有機溶媒を回収することの意義が希薄となる。
【0005】
一方、プロトン性極性溶媒の存在下に、1,1,1−トリフルオロ−2−クロロエタンと有機カルボン酸カリウム塩を反応させて、2,2,2−トリフルオロエタノール及び/又は有機カルボン酸2,2,2−トリフルオロエチルエステルを得、次いで副生した塩化カリウムを有機溶媒で洗浄した後、洗浄液から有機溶媒を蒸留回収する際に、蒸留釜液中にアニオン界面活性剤を添加することが提案されている(特許文献2)。この方法は、アニオン界面活性剤の添加により粘稠で付着性の強い高沸点有機物を流動化させ、その状態に維持することで、蒸留釜内での付着、固体同士の再凝集による粘稠な固形物の析出を防止して蒸留回収が不能となることを回避するものであるが、有機溶媒の脱臭に関する記載はなく、また示唆もされてない。
【0006】
【特許文献1】特開2007−104967号公報
【特許文献2】特開2002−105009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、その課題は臭気を含む有機溶媒の脱臭又は回収方法を提供すること、並びに、当該方法により脱臭又は回収された有機溶媒の再利用方法及びその方法により得られた精製植物抽出物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、臭気を含む有機溶媒を、特定の界面活性剤と接触させ、次いで蒸留することで、有機溶媒の脱臭が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、臭気を含む有機溶媒の脱臭又は回収方法であって、
有機溶媒をHLBが2以上の非イオン界面活性剤と接触させ、次いで蒸留する工程を含む、方法を提供するものである。
本発明は更に、上記方法により脱臭又は回収された有機溶媒を植物抽出物の精製に再利用する、植物抽出物の精製方法、及び当該方法により得られた精製植物抽出物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、植物抽出物の精製などに使用した有機溶媒など、植物由来の臭気成分により汚染されている有機溶媒を簡便な方法で脱臭し回収することができる。回収された有機溶媒は、ほぼ無臭かつ純度も高いことから、植物抽出物の精製に再利用することができる。
したがって、本発明によれば、植物抽出物の精製費用を軽減でき、しかも環境保全に資することができるため、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る有機溶媒の脱臭又は回収方法は、有機溶媒をHLBが2以上の非イオン界面活性剤と接触させ、次いで蒸留する工程を含むことを特徴とするものである。
本発明で使用される有機溶媒としては、臭気を含むものであれば特に限定されないが、植物抽出物の精製に使用したものが好適である。具体的には、植物抽出物が茶抽出物である場合、茶抽出物を精製した後に茶抽出物及び有機溶媒を含む混合液からストリッピングにより留去された有機溶媒が挙げられ、またコーヒー豆抽出物の場合、コーヒー豆抽出物を精製した後、精製コーヒー豆抽出物を含む固形部を除去した残部が挙げられる。なお、ストリッピング条件は、使用する有機溶媒の種類により適宜選択することができ、1気圧又は減圧条件であってもよい。また、固形部の除去方法としては、濾過、膜濾過、遠心分離などの公知の固液分離手段を採用することができる。
【0012】
植物抽出物としては、通常の植物抽出条件で製造されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、植物から水又は熱水を用いて抽出された植物抽出液が挙げられる。その抽出方法としては、ニーダー抽出、ドリップ抽出、攪拌抽出、カラム抽出等の公知の方法を採用することができる。また、植物抽出物は、植物抽出液の水分の一部を除去した濃縮物であってもよく、この濃縮物と植物抽出液とを併用してもよい。濃縮物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状等が挙げられる。
【0013】
本発明で使用する植物抽出物としては、ポリフェノールを含有する植物抽出物が好ましく、例えば、茶抽出物、コーヒー豆抽出物が挙げられる。
茶抽出物の製造に使用される茶としては、その発酵度合いにより、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。不発酵茶としては、Camellia属、例えばC.sinensis及びC.assamica、やぶきた種、又はそれらの雑種から得られる茶から製茶された、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜入り茶等の緑茶類が挙げられる。また、半発酵茶又は発酵茶としては、Camellia属、例えばC.sinensis及びC.assamica、やぶきた種、又はそれらの雑種から得られる茶から半発酵又は発酵工程を経て製茶された、紅茶、烏龍茶、黒茶等が挙げられる。中でも、非重合体カテキン類の含有割合の高い不発酵茶が好適に使用される。ここで、非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類をあわせての総称であり、非重合体カテキン類の濃度は、上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0014】
また、本発明においては、茶葉だけなく、茎茶、棒茶、芽茶を用いて抽出した茶抽出物も使用することができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。茎茶としては茶の茎の部分であって通常茎茶として用いられているものが挙げられ、棒茶としては茶葉の軸や茎の部分であって通常棒茶として用いられているものが挙げられる。芽茶としては未だ葉にならない柔らかい芽の部分であって通常芽茶として用いられているものが挙げられる。
【0015】
植物抽出物の精製方法としては、植物抽出物の異臭、着色又は濁りの要因となり得る植物由来の水不溶成分(例えば、多糖類、タンパク質、ポリフェノール類、カフェイン、又はこれらの凝集物等)を除去できれば特に限定されるものではないが、例えば、植物抽出液又はその濃縮物を有機溶媒に添加して懸濁させ、生じた沈殿を濾過等で除去する方法等が採用される。
【0016】
また、植物抽出物の精製において、生じた沈殿を濾過する前に、植物抽出物中のカフェイン量の低減を目的として、活性炭、酸性白土及び活性白土から選ばれる少なくとも1種を添加し処理してもよい。活性炭、酸性白土及び活性白土の添加順序は、適宜選択することができる。活性炭は、有機溶媒100質量部に対して、0.5〜10質量部、特に0.5〜7質量部添加することが好ましい。また、活性炭と、酸性白土又は活性白土とを併用する場合には、活性炭と、酸性白土又は活性白土との割合は、質量比で活性炭1に対して1〜10、特に1〜6であることが好ましい。
【0017】
植物抽出物の精製に使用する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトン等のケトン、酢酸エチル等のエステル、クロロホルム等の塩素系溶媒が挙げられる。これらのうち、アルコール、ケトンが好ましく、食品への使用を考慮すると、特にエタノール等の低級アルコールが好ましい。なお、植物抽出物の精製に使用する有機溶媒は、含水アルコール等の有機溶媒の含水物の形態としてもよい。例えば、植物抽出物として茶抽出物を用いる場合、含水アルコール中の水(c)とアルコール(b)との含有質量比(c/b)を、好ましくは50/50〜1/99、更に好ましくは30/70〜1/99、特に好ましくは9/91〜3/97とすれば、効率よく植物抽出物を精製することができる。
植物抽出物(a)と有機溶媒(b)との混合質量比(a/b)は、植物抽出物の分散性及び精製効率の点から、好ましくは1/99〜40/60、特に好ましくは5/95〜30/70である。
【0018】
また、植物抽出物としてコーヒー豆抽出物を用いる場合、その精製方法としては、例えば、コーヒー豆抽出物(A)に対して、有機溶媒(B)と水(C)の混合物を、混合後の(B)/(C)の質量比が70/30〜99.5/0.5となる条件で接触させた後、固形部を回収する方法が採用される。この場合、固形部を回収した残部が、本発明で使用する有機溶媒となる。
【0019】
コーヒー豆抽出物(A)に対して、有機溶媒(B)と水(C)の混合物を接触させる際、異味・異臭成分の除去効率向上の観点から、分散剤として粉末固形物を用いることが、コーヒー豆抽出物の固形部同士が凝集(アメ状化)せず、固液界面が増大して分散性が良い点から好ましい。分散剤は、コーヒー豆抽出物(A)に対して有機溶媒(B)と水(C)の混合物を接触させる初期に添加することが好ましく、更に、予め有機溶媒(B)と水(C)の混合物に分散剤を混合し、その後コーヒー豆抽出物(A)を添加して接触させることが、分散性の効果が高く、異味・異臭を効果的に除去できる点から好ましい。有機溶媒(B)と水(C)の混合物に添加する際のコーヒ豆抽出物(A)は、ペースト状の濃縮物でも粉末化したものでも良い。また、コーヒ豆抽出物(A)が粉末化したものであれば、予め分散剤と混合した後に有機溶媒(B)と水(C)の混合物に分散しても良い。本発明において用いることのできる分散剤とは粉末状の物質を指し、例えば、珪藻土、白土等を用いることができる。具体的には、珪藻土であるシリカ100F−A(中央シリカ株式会社)等が挙げられる。
【0020】
本発明の脱臭又は回収方法においては、有機溶媒にHLBが2以上の非イオン界面活性剤を接触させるが、これにより、植物由来の臭気成分により汚染されている有機溶媒を簡便に脱臭することができる。このような効果が得られる要因は必ずしも明らかではないが、回収有機溶媒中の茶由来の着色及び臭気成分といった水不溶成分が界面活性剤とミセルを形成し捕捉されることによるものと考えられる。
【0021】
非イオン界面活性剤としては、例えば、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型、アミド型が挙げられる。エステル型としては、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。また、エーテル型としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。更に、エステルエーテル型としては、脂肪酸ポリアルキレングリコール、脂肪酸ポリオキシアルキレンソルビタン等が挙げられる。更にまた、アミド型としては、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。これらの中で、脱臭効率の点から、エステル型非イオン界面活性剤が好ましく、特にショ糖脂肪酸エステルが好ましい。
本発明で使用する非イオン界面活性剤のHLBは2以上であるが、可溶化力の点から、5以上が好ましく、10以上が更に好ましい。なお、脱臭効率の観点から、HLBの上限は20とするのが望ましい。
また、非イオン界面活性剤がエステル型又はエステルエーテル型である場合、構成脂肪酸の炭素数は8〜24、特に12〜18が好ましい。
【0022】
非イオン界面活性剤の使用量は、有機溶媒の全質量に対して0.1〜20質量%、特に1〜10質量%とするのが、脱臭しやすくなる点で好ましい。この場合、有機溶媒をそのまま使用してもよいが、必要により有機溶媒の純度を46〜99.5%、特に50〜80%に濃縮等により調整することができる。
【0023】
有機溶媒と非イオン界面活性剤との接触方法は特に限定されるものではなく、各原料を順次又は同時に攪拌槽に添加し攪拌すればよい。接触時間は、脱臭効率の観点から、通常0.1〜60分、特に0.5〜10分が好ましい。また、接触温度は、脱臭効率の観点から、通常5〜70℃、特に15〜60℃が好ましい。
【0024】
接触処理終了後、蒸留操作により有機溶媒を回収することができるが、蒸留操作は1気圧又は減圧下で行ってもよい。
有機溶媒に含有している臭気成分は、非イオン界面活性剤の添加により捕捉されるため、蒸留時の臭気成分の揮発が抑制される。その結果、蒸留留分中に臭気成分が混入することなく有機溶媒を回収することができる。回収された有機溶媒の純度は、90〜96%、好ましくは92〜96%である。このように、回収された有機溶媒は、高純度であることから、上記した植物抽出物の精製に再利用することが可能であり、これにより風味のよい精製植物抽出物を得ることができる。
【実施例】
【0025】
(製造例1)
40℃、250r/minの攪拌条件下の54質量%エタノール水溶液1000g中に緑茶抽出物(ポリフェノンHG、三井農林社製)400gを投入し、更に酸性白土(水澤化学社製)を70g添加して、40℃のまま約1時間の攪拌を続けた。その後、40℃に保持したまま92質量%エタノール水溶液600gを15分かけて滴下した。40℃のまま更に30分攪拌を続けた後、室温まで冷却し、生成している沈殿及び酸性白土を2号ろ紙でろ過した。分離した溶液を活性炭(クラレコールGLC、クラレケミカル社製)60gと接触させ、続けて0.2μmメンブランフィルターによってろ過を行った。最後にイオン交換水400gを添加し、40℃、2.7kPaで溶剤を留去し、有機溶媒中の水分量を調整した後、「精製緑茶抽出物」と、有機溶媒(エタノール純度72%)を得た。
【0026】
(実施例1)
製造例1で得られたエタノール1000gに、ショ糖脂肪酸エステル(HLB;16、構成脂肪酸の炭素数;18、商品名;S1670、三菱化学フーズ社製)10gを添加し、25℃で5分間攪拌接触させた後、30℃で、減圧蒸留により回収エタノール(純度90%)を880g得た。
【0027】
(実施例2)
ソルビタン脂肪酸エステル(HLB;4、構成脂肪酸の炭素数;18、商品名;エマゾールO−10V、花王社製)100g(10質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により回収エタノールを得た。
【0028】
(実施例3)
モノグリセリン脂肪酸エステル(HLB;3、構成脂肪酸の炭素数;18、商品名;エキセルO−95R、花王社製)100g(10質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により回収エタノールを得た。
【0029】
(比較例1)
製造例1で得られたエタノールを、1気圧下、蒸留し回収エタノール(純度88%)を得た。
【0030】
(比較例2)
ショ糖脂肪酸エステル(HLB;0、構成脂肪酸の炭素数;18、商品名;S070、三菱化学フーズ社製)100g(10質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により回収エタノールを得た。
【0031】
(比較例3)
グリセリン(商品名;食添用グリセリン、花王社製)100g(10質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により回収エタノールを得た。
【0032】
(比較例4)
ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製)40g(4質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によりエタノールを回収しようとしたが、発泡が激しく回収エタノールを得ることができなかった。
【0033】
(参考例)
製造例1で得られたエタノールに活性炭(商品名;クラレコールGLC10/32、クラレケミカル社製)100g(10質量%)を接触させて濾別回収する方法により回収エタノール(純度72%)を得た。
【0034】
(臭気の評価)
各実施例、比較例及び参考例で得られた回収エタノールについて、5名の専門パネラーにより、緑茶抽出物由来の残香が強い場合を「1」とし、残香がない場合を「5」として5段階で臭気を評価した。その結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1から、HLBが2以上の非イオン界面活性剤と接触させ、蒸留することで、臭気が改善できることが確認された。臭気の改善は、HLBが大きいほど良好であった。
【0037】
(実施例4)
実施例1で得られた回収エタノール(回収1回目エタノール)を用いて、製造例1と同様の方法により緑茶抽出物を精製して精製緑茶抽出物を得た。得られた精製緑茶抽出物の風味は良好なものであった。さらに、上記緑茶抽出物の精製に使用したエタノールを実施例1と同様の方法により回収し(回収2回目エタノール)、回収されたエタノールを用いて緑茶抽出物を精製したが、得られた精製緑茶抽出物の風味が損なわれることはなかった。
【0038】
(製造例2)
95質量%エタノール1440gに分散剤(シリカ100F−A、中央シリカ社製)180gを混合し、その後コーヒー豆抽出物(小川香料社製)360gを添加して接触させるた。その後ヌッチェ濾過(2号濾紙使用)を行い、固形部として「精製コーヒー豆抽出物と分散剤の混合物」と、濾液として有機溶媒(エタノール純度95%)を得た。
【0039】
(実施例5)
製造例2で得られたエタノール1000gに、ショ糖脂肪酸エステル(HLB;16、構成脂肪酸の炭素数;18、商品名;S1670、三菱化学フーズ社製)10gを添加し、25℃で5分間接触させた後、30℃で、減圧蒸留により回収エタノール(純度95%)750mLを得た。
【0040】
(比較例5)
製造例2で得られたエタノールを、1気圧下、蒸留し回収エタノール(純度95質量%)を得た。
【0041】
(臭気の評価)
各実施例及び比較例で得られたエタノールについて、5名の専門パネラーにより、コーヒー豆抽出物由来の残香が強い場合を「1」とし、残香がない場合を「5」として、5段階で臭気を評価した。その結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
表2から、実施例5及び比較例5で得られた回収エタノールは純度が同じであったが、比較例5の回収エタノールはコーヒー豆抽出物由来の残香が強いものであった。これに対し、実施例5では、HLBが2以上の非イオン界面活性剤と接触させ、蒸留することで、臭気のない回収エタノールが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気を含む有機溶媒の脱臭又は回収方法であって、
有機溶媒をHLBが2以上の非イオン界面活性剤と接触させ、次いで蒸留する工程を含む、方法。
【請求項2】
臭気を含む有機溶媒が植物抽出物の精製に使用したものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
非イオン界面活性剤がショ糖脂肪酸エステルである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
非イオン界面活性剤の使用量が有機溶媒の全質量に対して0.1〜20質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
非イオン界面活性剤と接触させる有機溶媒の純度が46〜99.5%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
有機溶媒がエタノールである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
植物抽出物が不発酵茶、半発酵茶又は発酵茶を由来とする茶抽出物である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
植物抽出物がコーヒー豆抽出物である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の方法により脱臭又は回収された有機溶媒を植物抽出物の精製に再利用する、植物抽出物の精製方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法により得られた精製植物抽出物。

【公開番号】特開2009−167176(P2009−167176A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320363(P2008−320363)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】