説明

有機物の乾燥方法、その方法による生産物及びその乾燥装置

【課題】有機廃棄物について、微生物の特性を最大限に応用し、短時間で且つ低コストで発酵乾燥させる技術を提供することにある。また、その発酵乾燥によって得られた資材を利用することによって、環境破壊を防止することができる技術を提供することにある。
【解決手段】有機廃棄物の乾燥方法において、有機廃棄物にコーンコブミール又はその発酵物を混入し、水分30〜80%に調整して原料20とし、下側に中空15空間が床面積の30%以上を占めるように設けられた中空床を備える発酵槽を作り、その中空床の上側に原料20を20cm〜120cmの高さに積み上げ、上側と下側へ同時に空気を取り入れるように環境条件を作り、切り返し発酵乾燥を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ゴミ等の有機廃棄物を代表的なものとする有機物を、低コストで処理する方法や、処理後の生産物の利用に関し、さらに地球温暖化防止の対策を始めとして環境汚染を解決することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生ゴミや有機物質の乾燥方法では、一部で太陽熱の利用もあるが、大量の処理ができないことから、大部分は火力によって高いコストをかけて乾燥処理がなされている。また、有機廃棄物等の有機物処理の技術では、生ゴミ等を、発酵槽で発酵させて堆肥化して土壌へ還元するか、焼却等によって高いコストをかけて処理していた。
しかし、経済の行き詰まりや、環境汚染等により、生ゴミ等の焼却は出来なくなってきた。また、堆肥化にしても、塩分や有害物質を含有するために肥料としての消費が困難な場合がある。
また、今までの堆肥の発酵方法は、アンモニア化成菌や硫酸還元菌による腐敗発酵か枯草菌等の高熱菌による分解発酵であるため、それを土壌に還元してもそれらの菌では農地の表土の環境条件に適さない。そのため、それらを農地に入れることによって、環境汚染による悪玉菌による腐敗発酵が先行し、土壌障害となって急速に病虫害が発生することになり、農地を蝕んでいる。
また、水分の多い生ゴミを無理に乾燥又は焼却処理してきたことにより、大気を汚染するだけでなく、炭酸ガスの温室効果により地球規模での環境破壊を招いている。
【0003】
なお、本願出願人は、キノコ菌を培養してキノコを収穫した後に廃棄されるキノコ廃培地を原料とする土壌改質肥料及びその製造法について提案をしている(特許文献1参照)。また、コーンコブを生ゴミの処理に利用する方法も提案してある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平1−270584号公報(第1頁)
【特許文献2】特開平7−214034号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食品工場から大量に排出する有機廃棄物や、家庭から排出する生ゴミ又は上下水道の汚泥の多くは、焼却処理するか又は火力乾燥によって乾燥して処理してきた。しかし、これでは、コストがかかるだけではなく、無駄なエネルギーを消費することになり、地球環境の破壊をもたらし、国際問題にもなっている。
本発明の目的は、上記の既知技術の欠点を克服しようとするもので、微生物の特性を最大限に応用し、短時間で且つ低コストで発酵乾燥させる技術を提供することにある。また、その発酵乾燥によって得られた資材を利用することによって、環境破壊を防止することができる技術を提供することにある。また、無駄な炭酸ガスの発生を抑え、地球環境の温暖化を防止することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかる有機物の乾燥方法の一形態によれば、有機廃棄物等の有機物を発酵槽内で発酵させて乾燥させる方法において、前記発酵槽の床部を、木材、炭化物、セラミック又はプラスチックのいずれか一又は組合せによる床材で設け、該床材と床材の隙間を接着剤等で埋めないで空気の通路を作り、ロータリー型回転刃を備える装置等で前記床部上の前記有機物の切り返しと移動を同時に行い、該有機物を発酵させて乾燥処理することを特徴とする。
また、本発明にかかる有機物の乾燥方法の一形態によれば、前記有機物は、コーンコブミール又はその発酵物が混合されていることを特徴とすることができる。
【0006】
また、本発明にかかる有機物の乾燥方法の一形態によれば、有機廃棄物にコーンコブミール又はその発酵物を混入し、水分30〜80%に調整して有機物原料とし、下側に中空空間が床面積の30%以上を占めるように設けられた中空床を備える発酵槽を作り、該中空床の上側に前記原料を20cm〜120cmの高さに積み上げ、上側と下側へ同時に空気を取り入れるように環境条件を作り、切り返し発酵乾燥を行うことを特徴とする。
また、本発明にかかる有機物の乾燥方法の一形態によれば、前記有機廃棄物に重量比で5〜60%のコーンコブミールを混合して有機物原料とすることを特徴とすることができる。
【0007】
また、本発明にかかる発酵飼料の一形態によれば、上記の有機物の乾燥方法によって製造したこと、又は前記有機物に栄養素を加えた上で上記の有機物の乾燥方法によって製造したことを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる有機質肥料の一形態によれば、上記の有機物の乾燥方法によって製造したこと、又は前記有機物に栄養素やミネラルを加えた上で上記の有機物の乾燥方法によって製造したことを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる他の形態としては、上記の有機物の乾燥方法によって製造したことを特徴とする畜産用の敷料若しくは病害対策資材、農作物の病虫害対策資材、さらにまた、ダイオキシン、残留農薬、若しくは亜硝酸態窒素等の土壌中に含まれる有害物質の分解剤がある。
また、本発明にかかる他の形態としては、以上に記載された発酵飼料又は有機質肥料等の発酵物で発酵されたことを特徴とする肥料又は飼料がある。
【0008】
また、本発明にかかる有機物の乾燥装置の一形態によれば、有機廃棄物等の有機物を発酵槽内で発酵させて乾燥させる有機物の乾燥装置において、前記発酵槽内に、木材、炭化物、セラミック又はプラスチックのいずれか一又は組合せによる床材で設けられた床部と、該床部の前記床材と床材の隙間を接着剤等で埋めないことで形成された空気の通路と、前記床部上の前記有機物の切り返しと移動を同時に行うようにロータリー型回転刃を備える有機物の撹拌移動装置が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる有機物の乾燥方法、その方法による生産物及びその乾燥装置によれば、今まで焼却処分していた有機廃棄物等の有機物を極低コストで発酵乾燥させ、同時に微生物資源として、人畜の健康食品若しくは飼料、敷料、発酵剤、土壌改良剤、作物の病気治療薬等各方面に活用でき、地域環境を浄化させ、地球温暖化防止にも役立つ。
石油エネルギーを使用せず、乾燥が短時間で大量にできるため、コストの削減になり、しかも簡単な施設で製造できる。発酵乾燥した有機質はそのまま発酵飼料、肥料、畜産の敷料、各種発酵材等の高級な材料となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の有機物の乾燥方法、その方法による生産物及びその乾燥装置に係る最良の一形態を以下に詳細に説明する。
先ず、本発明の構成について概要を説明する。
食品工場から発生する生ゴミを必要に応じた微生物の適温に調整して微生物のエネルギーを最大限に活用し、原料を発酵乾燥させる。
このため、最適の発酵環境を作るため、原料の厚さを40cm〜80cm位とし、山脈形のように盛る。また、床等の原料が直接触れる部分は、コンクリートにせずに、木材、木炭、プラスチック、粘土(セラミック)等の材料を用い、多面から空気の吸入が可能な環境にする。好ましくは、床下は中空にして適度な圧の空気を挿入する。
さらに、施設はビニールハウスで太陽熱も利用できる。また、発酵を促進し、より多くの水分を微生物に吸収させ、発散させるため、コーンコブミールを添加する。
【0011】
つまり、本発明は、前述した既知技術の欠点を克服しようとするもので、微生物の特性を最大限に応用し、床材にはコンクリートを使用せず、できる限り、床上げ中空式の発酵装置を使用し、下部からも自然的な給気を行い、短時間低コストで発酵乾燥させる技術である。また、その発酵乾燥によって得られた資材を利用することによって、環境破壊を防止することができる技術である。
先ず、本発明は、生ゴミ等の有機物の石油を使用しない微生物エネルギーの効率的な活用及びロータリー型の撹拌による低コストでの乾燥方法、及び床材や原料の堆積高さ等、腐敗発酵や高温発酵を起こさない善玉微生物群の環境条件の発見という2つの技術から成り立っている。
【0012】
微生物は、増殖の過程で熱エネルギーを発生し、菌糸を張りめぐらせて行く。その過程において、水分を分離し、乾燥を促進させる。それを最も効率的に行う方法として空気を上面と下面の両面から自然的に供給する。
従来の方法も下面から空気を入れていた。しかし、それは強制的に又は集中的に送り込むため、高温菌である枯草菌が増殖し、ブザリウム菌等の悪玉菌と戦う力がない。よって病気を治す力が弱い。従って、床部は床下から床上への空気の流れが自然的になるように制限される材質又は構造とすればよい。
中空床は、自然的に空気を供給する方法で木質材等の内部を浸透する空気を利用する。そのために多少の圧力を必要とする。
また、空気を浸透しない材料を使用する場合は、無数の小さな孔や隙間を作る。なお、下面側からの空気を入り易くするため、床材の下面の角について面を大きく取るとよい。材料と材料の間は単に突き合わせても隙間はできるが、0.5mm〜2mm位の隙間を作ることが好ましい。
これによって、最も自然的に表土に順応した酵母菌、麹菌、納豆菌等が、コーンコブミールに多く含有する糖分とリグニンを餌及び住家とし、善玉菌の微生物群が増殖する。
【0013】
しかも、一気に四方八方から菌糸が増殖することによって、また、数回の切り返しによって全体が菌糸に占領されて菌が水分を吸収することによって短時間で乾燥物ができる。
発酵乾燥ラインにおける後の1/3は乾燥工程のみとする。床材には空気孔を開け、急速に乾燥させる。但し、空気は50℃以下の空気を利用する。それ以上になると微生物が死滅する。切り返しの発酵作業は1〜3日に一回、乾燥作業は1日に二回を基本とする。
【0014】
床材はコンパネの利用か又は薄い木質板を利用する。できれば、表面を炭化した物を利用する。病気の防除の目的から雑菌が増すコンクリートの床や壁を作らない。アルカリ性が強いため、別の悪玉菌が増殖する。なお、床板が木材でも腐敗発酵でないため、腐ることはない。
セラミック板、又はプラスチック板を利用する場合は空気の吸入を図るため、例えば20〜50cm角の平板を利用するとよい。並べる段階で板と板の隙間が自然にできるため、空気の流通が可能である。
【0015】
側壁は基本的に必要がない。発酵原料(材料)をかまぼこ型に盛り上げて堆積させれば、材料の両側が側壁に触れることによる雑菌の侵入を最小限にできる。撹拌機はトラクターに用いられるロータリー型のかき混ぜ装置を用いる。それによって、中高のかまぼこ型の撹拌と、材料の移動が自動的に行われる。なお、側壁に材料が触れた場合、その接触面は水分を周囲から吸収し、発散を防止するため、水分過多となる。そのため、悪玉微生物が多数発生してしまう。
以上が、病虫害の対策資材の製造に必要な善玉菌増殖の最適な環境条件である。
【0016】
有機廃棄物とは、農産、畜産、食品産業、家庭から出るゴミ、ホテル・レストラン等から出る植物質及び動物質の廃棄物であって、例えば、もみ殻、麦皮、コーンコブミール、汚泥、バガス、そば殻、豆ガラ、米ぬか、オカラ、果実ジュースの搾りかす、調理で生ずる生ゴミ、牛、羊、豚、鶏、その他の飼養動物の糞等を包含する。
【0017】
上記は、発酵熱を利用する操作を述べたが、所望により発酵を外部からの加熱及びより多い給気下で行って促進させることもでき、加温空気を用いて加熱と給気を同時に行うこともできる。
処理される有機物は必要に応じて水分調整をする。調整材は乾燥物の利用用途によって異なるが、乾燥物の草質材(もみ殻、コーンコブ、わら、そば殻、麦皮等)、米ヌカ、フスマ、乾燥オカラ等で水分調整を行う。水分率は50%を最適として最高で60%以下にする。また、戻し堆肥ができる2度目以降は、微生物の発酵基材として、その戻し堆肥を利用してコストを抑える。
【0018】
病気を治す善玉菌群は、食用菌群であるが、これは高温菌ではない。そのため、発酵温度が57℃以下になるように、切り返し回数等の作業によって調整する。水分が多過ぎる場合は、アンモニア化成菌が増殖した後に、枯草菌が発生して温度が上昇する。それは堆肥としての効果はあるが、病気を治すことができない。
かつて、作物の病気は農薬等の化学薬品によって処理されてきた。しかし、現在の農地はその多用によって土壌環境が破壊され、病気を抑えることができなくなった。化学農薬の対症療法による農業の限界が見えてきた。そのような現実に直面し、本発明者は、病気における根本的問題解決のため、微生物群による病気の対応に取り組み、ようやくその菌群の培養とその菌群の最も好む環境条件の発見に成功したのである。
【0019】
好ましい水分は40〜55%、温度は35〜57℃、接地材は木材、セラミック材又は炭化物等が好ましく、原料の堆積高さ50〜70cmのかまぼこ型等の菌の好む条件を与えることにより、善玉菌群が活性化する。
それが土壌に還元されたときには、急激に活動を起こし、悪玉菌群を攻撃するのである。そのため、適度な栄養源が必要である。なお、完全発酵物は病気を治す力が弱い。以上の最適条件の基に培養した善玉菌は、今までの常識を打ち破る病気に対する治癒効果がある。そのことが、多くの栽培試験で実証された。
【0020】
更に得られた発酵物は、土壌障害を解決するだけでなく、土壌中に残留するダイオキシンを分解して無害とし、また、残留農薬や化学肥料の有害物も微生物の作用によって浄化する。今、大きな問題となってきた未分解の亜硝酸態窒素が土壌中に残留し、それを吸収した作物等を食べた人畜が健康を大きく損なうことになる。これに対して、本発明に係る資材は、その亜硝酸態窒素を安定した硝酸態窒素に転換して人畜の健康を守るものであり、地球環境を浄化する最も優れた今までになかった資材である。
【0021】
更に、その善玉菌による発酵物は、飼料又は食料として使用できる。その効果は、善玉菌の酵素の作用により健康に育ち、肉質が良くなり、産卵率が向上する。
また、その発酵乾燥物は、畜産の敷料として使用できる。栄養源が少なく、リグニンの多い生ゴミの乾燥物は、特殊な微生物で発酵乾燥させることにより、それ自身も敷料と同時に発酵剤としても機能し、悪臭問題を解決させる。そして、その畜糞も、病気を治す土壌改良資材に転換できる。また、その地域全体もその発酵物を使用することにより、地域全体に善玉菌群が繁殖増大して、今問題化している悪い伝染病から人畜を守ることができる。但し、栄養源の多い生ゴミを利用した場合は、発酵温度が急速に上がり、夏場においては飼育環境に合わない。
【0022】
有機質肥料としての使用においては言うまでもなく、作物の増収と品質の向上に大いに役立つ。特に化学肥料の使い過ぎによって残留するリン酸分が、微生物の作用で分解吸収されて同化作用が促進され、丈夫でしっかりした作物が育ち、糖度が上がる。そのため、病気にならないし、病気を治すこともできる。従って、害虫にも犯されにくい。当然、農薬の散布回数も激減する。
【0023】
種菌は、戻し堆肥のみの使用では菌が退化するため、純粋培養した種菌を必要量毎回添加して菌群を常に活性化させる。
空気(温風)の送入は、ブロアによって行うが、加温は良質の可燃ゴミの活用が理想的である。発酵する際の発熱を利用すればよい。これによれば、地球温暖化防止の意味も含め、資源の有効活用を図ることができる。
【実施例1】
【0024】
次に、実施例1について、実験結果を添付図面及び表と共に詳細に説明する。
実験区:A1区、A2区、対照区:B1区、B2区の4つの分類に分け、発酵乾燥の速度の比較試験をした。施設はパイプによるビニールハウスである。これが発酵槽となっている。
図1はA1区、A2区の施設を説明する斜視図であり、図2はA1区、A2区の施設を説明する側面図である。また、図3はB1区、B2区の施設を説明する斜視図であり、図4はB1区、B2区の施設を説明する側面図である。
図1及び図2に示すように、A1区、A2区の施設は、ビニールハウス10を用いたロータリー式発酵乾燥施設であり、床板部12の下側(床下)に中空15が設けられている。この施設では、床板部12にコンパネを用いてある。20は原料であり、かまぼこ状に堆積されている。本実施例では、中空15の高さ間隔を20cm、原料20の堆積高さを約50cmに設定した。また、かまぼこ状の原料の幅は約5m、その送り方向の長さは全体で30mとなっている。図2に示すように、前区間aの20mは発酵工程となっており、後区間bの10mが乾燥工程となっている。なお、後区間bの床板部12には、直径が5mmの孔16を多数開けてあり、通気性を高めてある。
30はロータリー型のかき混ぜ装置であり、閉ループ状の軌跡31のように移動すると共に、図2に示す矢印32のように回転刃が回転する。これにより、原料20を切り返すと共に、その原料20を白抜き矢印の方向へ順次送ることができる。このかき混ぜ装置30が、有機物の撹拌移動装置の一例となっている。また、50は製品であり、発酵乾燥の終了した資材である。
また、図3及び図4に示すように、B1区、B2区の施設も、ビニールハウス11を用いている。図1に示した施設のような床下の中空はないが、比較的高い圧力の空気を床面から吐出できるように、直径3mmの孔18が複数開いた直径50mmの樹脂パイプ17が2本敷設されている。ロータリー型のかき混ぜ装置30が、図1に示した施設と同様に設けられ、同じく作動する。また、かまぼこ状に堆積された原料の高さは、図1に示したものと同様に約50cmに設定してある。また、51は製品であり、この施設による発酵乾燥工程の終了したものである。
【0025】
A1区とB1区は給気をせずに自然発酵によって発酵乾燥を行い、A2区とB2区は0.5kwのブロアによって給気を行うと共に上部は開放して発酵させる。
原料は、各区共に、エノキの廃培地(水分49%)、お茶ガラ(水分70%)、コーヒーカス(水分80%)を、毎日各3立方メートル、0.5立方メートル、0.5立方メートルずつ投入し、また、0.5立方メートルの戻し堆肥(水分25%)と、種菌となるキノコーソ(商品名:池田農興(長野県埴科郡坂城町大字上平305番地44−17号)の製造品)20kgを投入して水分を50%に調整したものを発酵させた。1日1回の撹拌で原料を60cm/日ずつ移動させ、水分25%まで乾燥させるためにかかる日数の実験を行った。結果は下記のとおりである。
【表1】

なお、B1区では、下面から水分を吸収するため、最長50日間行っても30%以下にならなかった。
【0026】
以上の実験から明らかなように対照区と実験区の間には大きな時間差が生じている。A1区とB1区との間は無限大の差となり、A2区とB2区との間においても4倍の時間的差が生じた。これが即コスト差と成り、微生物のエネルギー利用が生ゴミの乾燥技術に結びつかず、実用化ができなかった要因となっている。
B1区においては、土中の水分を、コンクリート床を通じて吸い上げ、常に原料と床の接地面は水分によって腐敗臭をもよおし、乾燥状態になることはない。そのため、土中の悪玉菌が上昇し、コンクリートの成分的特性と重なり、悪玉菌による腐敗発酵へと移行する。そのため、糸状菌やコロニーによる菌糸の発生は抑えられ、水分が分離せずに中にこもってしまう。以上の理由によって、中空床式発酵乾燥方法は最も理にかなった今までにない省エネ低コストの発酵乾燥方式と言える。
低温発酵で短期間に乾燥物製品となるため、有機廃棄物のリグニンや物質が分解消滅することなく、原形を残した発酵物となる。このため、家畜の敷料等としての発酵基材としても最適である。
【実施例2】
【0027】
次に、実施例2について、実験結果を表と共に詳細に説明する。
実施例1で生産されたA1区、A2区、B1区、B2区の各発酵物を肥料として用い、野沢菜の栽培試験を行った。試験圃場は、野沢菜の根こぶ病の特にひどい圃場で、1坪ずつに4区画に分けた。周りからは外部の水が流れ込まないよう、深さ50cmの溝を掘り分離した。それによって、周りからの病原菌の新たな進入を防いだ。各区に10kgの発酵物を散布し、土中で混合した。10日後に再度撹拌のため耕起し、散布後20日後に播種した。参考区としてC区を設け、根こぶ病対策の土壌消毒剤「フロンサイド」(商品名:全農の販売品)を10アール当たり20kg散布して一般農家の慣行法で栽培を行った。いずれも播種後40日で収穫した結果は下記の通りである。
【表2】

A1区とA2区の実験区は完全に根こぶ病害が完治した。なお、C区の参考区は、病気にはなったが収穫ができた。農薬効果と思われる。
【実施例3】
【0028】
次に、実施例3について、実験結果を添付図面及び表と共に詳細に説明する。
実施例1のA1区及びA2区のロータリー式発酵乾燥機を、実験区A3区の施設とし、一般堆肥製造機であるスクープ式発酵機を対照区B3の施設とする。図5はB3区の施設を説明する斜視図である。図5に示すように、対照区B3の原料20の堆積高さは150cmとなっている。また、対照区B3の壁はコンクリートで形成されている。
一日の投入量4立方メートルに統一して発酵乾燥速度の比較試験を行った。なお、対照区B3区は下面から空気を挿入した。
原料は両区とも、家庭の生ゴミ1立方メートル(水分80%)、エノキ廃培地2立方メートル(水分50%)、豚糞1立方メートル(水分68%)、戻し堆肥0.5立方メートル(水分30%)、キノコーソ(商品名:池田農興(長野県埴科郡坂城町大字上平305番地44−17号)の製造品)20kg(水分25%)を混合したところ、水分が61%になった。それを施設の違いを除いて同じ条件の下で同時に試験を開始した。
ちなみに、A3区の施設費は350万円、B3区の施設費は1050万円である。結果は下記の通りである。
【表3】

【0029】
以上の実験結果から見ると、A3区は水分が60%以上の物でもわずか5日間の延長で水分を25%まで低下させることが可能である。堆積層を150cmとしたB3区においては、下からの水分の吸い上げは少ない。よって、80日で水分30%まで乾燥させることは可能であるが、それ以下に乾燥することは困難である。これは、発酵温度が下がって、堆積層が厚いことも重なって、水分の放散が激減するためであり、80日以上における水分の下降は困難であることが理解できる。また、コスト面からも施設費は3倍の差があり、水分30%以下にすることができないことは、別工程で乾燥工程が必要となり、更にコストと時間を必要とする。A3区の実験結果は問題化している生ゴミの資源化における無限の可能性を引き出す新技術である。
【実施例4】
【0030】
次に、実施例4について、実験結果を表と共に詳細に説明する。
実施例3で生産された実験区A3及びB3の各発酵物を肥料として用い、野沢菜の栽培試験を行った。試験圃場は、実施例2と同じ圃場で、特に根こぶ病の障害の出ている畑である。1坪ずつの2区画:A4区、B4区に分け、参考区としてC区を設け、慣行栽培での試験を行った。
周りからは外部の水が流れ込まないよう、深さ50cmの溝を掘った。A4区とB4区は各区の発酵物をそれぞれ10kg散布撹拌して10日後に再度耕起し、散布20日後に播種した。参考区C区は根こぶ病の土壌障害対策として「フロンサンド(商品名:全農の販売品)」を10アール当たり20kg散布して慣行法でおこなった。収穫は播種後40日であった。結果は下記の通りである。
【表4】

A区は18%の根こぶ病が発生した。実施例2で完治したものと比較すると、水分の多い場合は良い発酵ができないと考えられる。
B区及びC区も病気には勝てない。同じ種菌を入れても環境条件を変えるとその菌が働かないことがわかる。
【実施例5】
【0031】
次に、実施例5について、実験結果を詳細に説明する。
実験区A5:鶏糞(水分72%)100kgに対し、コーンコブミール(水分14%)30kgの割合で水分59%に調整した。
対照区B5:鶏糞(水分72%)100kgに対し、松のオガ粉(水分14%)30kgの割合で水分59%に調整した。
上記のように実験区A5、対照区B5を設け、どちらも実施例1のA区のハウス型乾燥機で、30mの距離を1日二回の撹拌によって原料を120cm/日移動させ、22日目における乾燥状態について試験を行った。結果は下記の通りである。
A5区:22日目の水分が24%、B5区:22日目の水分が32%。
以上の結果から水分の乾燥度はコーンコブミールを水分調整材として使用した場合、今までの水分調整材のオガ粉よりも効率的に乾燥できることがわかった。
【0032】
以上、本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかる有機廃棄物の発酵乾燥施設を示す斜視図である。
【図2】図1の発酵乾燥施設の側面図である。
【図3】図1の発酵乾燥施設の対照試験に用いた施設を示す斜視図である。
【図4】図3の発酵乾燥施設の側面図である。
【図5】一般堆肥製造機であるスクープ式発酵機の施設を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
10 ビニールハウス
12 床板部
15 中空
20 原料
30 ロータリー型のかき混ぜ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄物等の有機物を発酵槽内で発酵させて乾燥させる方法において、
前記発酵槽の床部を、木材、炭化物、セラミック又はプラスチックのいずれか一又は組合せによる床材で設け、該床材と床材の隙間を接着剤等で埋めないで空気の通路を作り、ロータリー型回転刃を備える装置等で前記床部上の前記有機物の切り返しと移動を同時に行い、該有機物を発酵させて乾燥処理することを特徴とする有機物の乾燥方法。
【請求項2】
前記有機物は、コーンコブミール又はその発酵物が混合されていることを特徴とする請求項1記載の有機物の乾燥方法。
【請求項3】
有機廃棄物にコーンコブミール又はその発酵物を混入し、水分30〜80%に調整して有機物原料とし、下側に中空空間が床面積の30%以上を占めるように設けられた中空床を備える発酵槽を作り、該中空床の上側に前記原料を20cm〜120cmの高さに積み上げ、上側と下側へ同時に空気を取り入れるように環境条件を作り、切り返し発酵乾燥を行うことを特徴とする有機物の乾燥方法。
【請求項4】
有機廃棄物に重量比で5〜60%のコーンコブミールを混合して前記有機物原料とすることを特徴とする請求項3記載の有機物の乾燥方法。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の有機物の乾燥方法によって製造したことを特徴とする発酵飼料又は有機質肥料。
【請求項6】
前記有機物に栄養素を加え、請求項1、2、3又は4記載の有機物の乾燥方法によって製造したことを特徴とする発酵飼料。
【請求項7】
前記有機物に栄養素やミネラルを加え、請求項1、2、3又は4記載の有機物の乾燥方法によって製造したことを特徴とする有機質肥料。
【請求項8】
請求項1、2、3又は4記載の有機物の乾燥方法によって製造したことを特徴とする畜産用の敷料又は病害対策資材。
【請求項9】
請求項1、2、3又は4記載の有機物の乾燥方法によって製造したことを特徴とする農作物の病虫害対策資材。
【請求項10】
請求項1、2、3又は4記載の有機物の乾燥方法によって製造したことを特徴とするダイオキシン、残留農薬、又は亜硝酸態窒素等の土壌中に含まれる有害物質の分解剤。
【請求項11】
請求項5、6、7、8、9、10に記載された発酵飼料又は有機質肥料等の発酵物で発酵されたことを特徴とする肥料又は飼料。
【請求項12】
有機廃棄物等の有機物を発酵槽内で発酵させて乾燥させる有機物の乾燥装置において、
前記発酵槽内に、木材、炭化物、セラミック又はプラスチックのいずれか一又は組合せによる床材で設けられた床部と、該床部の前記床材と床材の隙間を接着剤等で埋めないことで形成された空気の通路と、前記床部上の前記有機物の切り返しと移動を同時に行うようにロータリー型回転刃を備える有機物の撹拌移動装置が設けられたことを特徴とする有機物の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−116529(P2006−116529A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271748(P2005−271748)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000209832)
【Fターム(参考)】