説明

有機物肥料化処理装置

【課題】従来の有機物肥料化処理装置は、送風機を用いて空気を有機物に吹き込んでいるため、有機物に含まれる水分が著しく蒸散する結果、その発酵が阻害されてしまう。
【解決手段】本発明による有機物肥料化処理装置10は、生物分解される有機物Wが投入され、かつ生物分解された有機物Wを取り出すための開口11aが形成された容器本体11と、この容器本体11の開口11aを開閉し得る蓋12と、この蓋12により容器本体11の開口11aを塞いだ状態において蓋12と容器本体11との間の隙間をシールするシール手段14と、容器本体11および蓋12の少なくとも一方に形成された第2の開口16と、この第2の開口16を塞ぐように配され、固体および液体の通過を遮断するのに対し空気中の酸素分子の通過を許容すると共に水蒸気の通過を抑制する気体透過膜17とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を微生物などによる好気発酵分解によって肥料化させるための有機物肥料化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミなどの有機廃棄物を発酵(熟成)させて有機肥料などに使用するための有機物肥料化処理装置が知られている。このような有機物肥料化処理装置において、酵母や菌などの微生物の働きを利用して有機廃棄物を分解処理するものも知られている。
【0003】
肥料化の原料となる生ゴミなどには、分解されやすい有機物(易分解性有機物)と、比較的ゆっくり分解される有機物(難分解性有機物)とが含まれている。易分解性有機物の割合が多い肥料化処理物を土壌に施用すると、土壌中で易分解性有機物の急激な分解が起こり、土壌中の酸素の欠乏や大量の発酵熱および二酸化炭素の発生により、植物に害を及ぼすことがある。これを防ぐため、肥料化処理において廃棄物中の易分解性有機物を速やかに発酵分解させることが必要となる。有機廃棄物の肥料化処理において好気性微生物の活動を主体とした有機物の発酵分解では、肥料化処理物中の水分や酸素を吸収しながら微生物が増殖して発酵分解が進む。有機廃棄物を好気性微生物によって肥料化する場合、これらの有機廃棄物を屋外に野晒しで積み上げ、時々切り返しによって表面側と内部を入れ替え、3ヶ月から6ヶ月程度の長い期間をかけて熟成させていた。
【0004】
このような堆肥の熟成期間を短縮して効率よく有機廃棄物の肥料化を促進し得る様々な有機物肥料化処理装置が提案されている。例えば、特許文献1においては、有機物の肥料化処理を行うための処理槽と、外気を処理槽内に供給するための空気供給手段と、処理槽内の空気や二酸化炭素を排出するための排気流路と、この排気流路に配設された熱交換器とを具えている。この装置では、空気供給手段によって処理層内に供給される空気を排気流路に配設された熱交換器に通し、肥料化処理物から発生した発酵熱を利用して空気を加熱するようにしている。これにより、好気性微生物にとって必要な量の空気の確保と、処理槽内の加熱保温とを簡単に行うことができ、肥料化処理物の熟成にとって好ましい雰囲気を確保することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−213682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された従来の有機物肥料化処理装置においては、肥料化を良好な好気性雰囲気にて進行させるため、空気供給手段として送風機を用い、処理槽外から処理槽内に空気を供給している。しかしながら、送風機の運転条件によっては、肥料化処理物が空気と過剰に接触して肥料化処理物に含まれる水分が著しく蒸散し、これが水蒸気となって排気流路から処理槽の外へと排出されてしまう。この結果、肥料化処理物の乾燥が過渡に進んでしまい、その発酵が阻害されてしまうことがあった。
【0007】
また、特許文献1に開示された有機物肥料化処理装置においては、外部から処理槽に供給される空気が処理層から排気流路へと排出される空気や二酸化炭素によって熱交換器を介して加熱されるようになっている。しかしながら、夏場のように処理槽内の雰囲気温度と外気温との温度差が少ない場合、熱を伝達するために必要な熱勾配を確保することが困難となり、外部からの空気と処理槽内からの排気との間での熱交換効率が低下してしまう。結果として、処理槽内で発生した好気性微生物の発酵熱の一部が肥料化処理物の保温または加温することなく排出されることになってしまい、その分、肥料化処理物の温度が低下してその分解速度が鈍化してしまう。
【0008】
本発明の目的は、有機物の生物分解により発生した発酵熱の外部漏洩や水分の蒸散を最小限に抑え、しかも有機物の生物分解に必要な空気を適切に供給し得る簡便な有機物肥料化処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、生物分解される有機物が投入され、かつ生物分解された前記有機物を取り出すための開口が形成された容器本体と、この容器本体の前記開口を開閉し得る蓋と、この蓋により前記容器本体の開口を塞いだ状態において、当該蓋と前記容器本体との間の隙間をシールするシール手段と、前記容器本体および蓋の少なくとも一方に形成された第2の開口と、この第2の開口を塞ぐように配され、固体および液体の通過を遮断するのに対し空気中の酸素分子の通過を許容すると共に水蒸気の通過を抑制する気体透過膜とを具えたことを特徴とする有機物肥料化処理装置を用いることによって解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の有機物肥料化処理装置によると、容器本体内の通気性を気体透過膜により保持して容器本体内に収容された有機物からの水分の蒸散を最小限に抑えつつ、好気性環境を維持するのに必要な酸素を有機物に対して供給することができる。この結果、容器本体内に収容された有機物の分解を促進させてこれを効率よく肥料化させることができる。
【0011】
気体透過膜が撥水性を有する場合、結露水の影響による容器本体と外部との通気性の低下を抑制することができる。
【0012】
気体透過膜に、その表面積を増大させるための凹凸が形成されている場合、容器本体内の通気性をさらに向上させることができ、容器本体内の好気性環境をさらに良好に維持することが可能となる。
【0013】
容器本体および蓋がそれぞれ断熱壁を有する場合、有機物を分解する微生物の活性が良好となるような温度領域に容器本体内を保温することができる。
【0014】
容器本体に投入された有機物を蓋が装着された状態にて撹拌するための撹拌手段をさらに具えた場合、有機物を分解する好気性微生物と容器本体内の空気中の酸素との接触の機会を増大させ、有機物の分解をさらに促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による有機物肥料化処理装置の一実施形態の外観を表す立体投影図である。
【図2】図1に示した実施形態において、蓋を取り外した状態の外観を表す立体投影図である。
【図3】図1に示した実施形態の内部構造を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による有機物肥料化処理装置の一実施形態について、図1〜図3を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
本実施形態による有機物肥料化処理装置の外観を図1に示し、その分解状態を図2に示し、その断面構造を図3に示す。すなわち、本実施形態における有機物肥料化処理装置10は、容器本体11と、蓋12と、これら蓋12と容器本体11とを連結するための締結手段13と、蓋12と容器本体11との間の隙間をシールするシール手段14と、撹拌手段15とを具えている。この有機物肥料化処理装置10はまた、蓋12に形成された第2の開口16と、この第2の開口16を塞ぐように配される気体透過膜17と、この気体透過膜17の防護ネット18とを具え、防護ネット18は蓋12の外周面に貼り付けられている。
【0018】
本実施形態における容器本体11は円筒状をなし、好気性微生物を含む有機物、つまり生物分解される有機物Wが投入される開口11aがその上端に形成されている。この開口11aは、生物分解されて肥料化した有機物Wを取り出すための取り出し口としても機能する。
【0019】
本実施形態における蓋12は、容器本体11の形状に対応した円筒状をなし、容器本体11に対して着脱自在に装着されて容器本体11の開口11aを開閉し得る。本実施形態では容器本体11に対して蓋12を完全に取り外すことができるようになっているが、蝶番を介して容器本体11に蓋12を取り付け、容器本体11の開口11aに対して蓋12が蝶番を介して開閉されるように構成することも可能である。
【0020】
蓋12と容器本体11とを連結するための本実施形態における締結手段13は、蓋12の外周面に固定されるキャッチ13aと、このキャッチ13aに対して係合し得るように容器本体11に固定されたラッチレバー13bとを具えている。このような締結手段13を用いることにより、容器本体11の開口11aを確実にシール状態で塞ぐことができ、容器本体11を誤って倒した場合であっても、蓋12が容器本体11から外れてしまうような不具合を未然に防止することができる。
【0021】
容器本体11に対して蓋12を装着した状態において、容器本体11の内部は、ここに投入される有機物Wを発酵分解するための空間Sを画成する。
【0022】
シール手段14は、蓋12によって容器本体11の開口11aを塞いだ状態において、蓋12と容器本体11との間の隙間をシールするためのものである。本実施形態では、シール手段14としてシリコーン樹脂などのシールリングを蓋12の下端面に装着しているが、容器本体11の開口11aに取り付けるか、あるいはこれらの両方に取り付けるようにしてもよい。このように、蓋12によって開口11aを塞いだ容器本体11の密閉性をシール手段14により確保しているため、有機物W、つまり肥料化処理物の発酵分解を促進するための散水手段などが不要であり、簡便で低コストな装置にすることができる。
【0023】
第2の開口16は、容器本体11内の水分および熱の放出を最小限に抑制しつつ、外気を効率よく容器本体11内に導入することができるような位置および開口面積にすることが望ましく、本実施形態では蓋12の外周部分に形成している。この第2の開口16は、ここを塞ぐ気体透過膜17と共に容器本体11内部に対して好気的な環境を維持できる条件を考慮した上で適宜設定する必要がある。特に、微生物の活動を促進するために必要となる酸素供給量および微生物の活動により発生した発酵熱の放散を最小限に抑え、肥料化処理物Wの温度を適切に維持するための保温性が好適に維持されるように設定することが望ましい。従って、蓋12に形成された第2の開口16に代えてこれを容器本体11の開口11aに近接して容器本体11の周壁11bに形成することができる。あるいは、蓋12に形成された第2の開口16と共に同様な第2の開口を容器本体11の開口11aに近接して容器本体11の周壁11bにさらに形成することも可能である。つまり、第2の開口16を蓋12および容器本体11の少なくとも一方に設けることが可能である。
【0024】
本実施形態における気体透過膜17は、固体および液体の通過を遮断するのに対し空気中の酸素分子の通過を許容すると共に水蒸気の通過を抑制する機能を持ち、蓋12の内周面に接合された状態となっている。この気体透過膜17は撥水性を有し、その表面積を増大させるための凹凸(図示せず)がエンボス加工や蛇腹構造などによって形成されている。気体透過膜17をこのような形態とすることにより、第2の開口16の面積に対する気体透過膜17の表面積を実質的に増大することができ、肥料化処理物Wの発酵分解に必要な酸素を効率的に供給することが可能となる。
【0025】
ここで、気体透過膜17を介した容器本体11内への空気(酸素)の供給は、容器本体11の内部と外部との間で生じる酸素の濃度勾配を利用した拡散現象によって行われる。つまり、容器本体11内では肥料化処理物Wが発酵分解する際に、これらの有機物Wに含まれる好気性微生物が肥料化処理物W内の酸素を吸収しながら増殖する。このため、発酵分解が進行するに従って肥料化処理物Wに含まれる酸素が消費されて次第に減少する。この結果、容器本体11内部では空気中の酸素が不足した状態となり、酸素濃度が減少するため、気体透過膜17を介して容器本体11内部と外気との間で酸素濃度勾配が生じることになる。加えて、容器本体11内では好気性細菌により好気発酵が行われているために発熱し、通常、30℃から60℃に維持される。季節によって外気温は変化するけれども、好気発酵による発熱により、容器本体11内は外気温よりも一般的に温度が高い状態にある。この結果、外気との温度差が生じた状態となるため、容器本体11内の空気を含むガスの分子運動が活発となり、ガスが容器本体11内から外部に押し出されやすい状況となる。
【0026】
しかしながら、気体透過膜17の存在により、容器本体11内と外部とでの空気の完全な入れ替えが制限される。気体透過膜17の近傍は、前述のように酸素濃度勾配が形成され、容器本体11内と外部との温度差が酸素濃度勾配を平滑化する原動力となり、外気が気体透過膜17を介して容器本体11内に供給されることになる。このため、従来の装置のような送風機などを用いることなく、容器本体11内に効率的かつ経済的に酸素を供給することができ、容器本体11内部を好気的な環境に維持することが可能である。
【0027】
この気体透過膜17の材質としては、特に酸素透過性が良好かつ防湿性を有するものが好ましく、例えばポリエチレン,ポリプロピレンなどを基材として使用することが可能である。
【0028】
また、気体透過膜17に撥水性を付与することにより、結露水などをはじく効果を持たせ、気体透過膜17に対する水滴の付着力を低減させることができるため、気体の透過性を良好に維持することが可能になる。気体透過膜17に撥水性を付与する方法として特に制限はない。例えば、撥水性を有する粒子を気体透過膜17に対して加熱処理などによって融着させたり、あるいは撥水性を有する粒子をシリコーン系樹脂などのバインダーを用いて気体透過膜17に結合させる方法などを挙げることができる。撥水性を有する粒子として、具体的にはフッ素系化合物やシリコーン系化合物など、特に限定なく用いることが可能であり、フッ素系化合物としてはポリテトラフルオロエチレン,ポリフッ化ビニル,ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。
【0029】
撹拌手段15は、容器本体11に投入された有機物Wを蓋12が装着された状態にて撹拌するためのものである。本実施形態による撹拌手段15は、モーター15aと、このモーター15aから突出する回転軸15bと、この回転軸15bに一体的に取り付けられた撹拌羽根15cとを具えている。モーター15aは、容器本体11の底壁11cの裏面に固定され、回転軸15bは、このモーター15aから容器本体11の底壁11cを貫通して容器本体11内に上端が突出状態となっている。モーター15aの回転軸15bと容器本体11の底壁11cとの間には図示しないシール部材が組み込まれている。モーター15aは図示しない電源から供給される電力により駆動して撹拌羽根15cを旋回させ、これによって容器本体11内に投入された肥料化処理物Wが所定の頻度で撹拌され、肥料化処理物Wに対する曝気を促進する。
【0030】
容器本体11および蓋12は、内部を保温するための断熱壁11d,12aをそれぞれ有する。本実施形態における断熱壁11d,12aは、容器本体11および蓋12の外周面を覆うように配される断熱材にて構成されている。このような断熱材としては、微生物の活動により発生した発酵熱の放散を最小限に抑え、肥料化処理物Wの温度を適切に維持することが可能であれば特に制限はなく、既知の断熱材を使用することができる。例えば、グラスウール,ロックウール,セラミックシート,発泡スチロール,ポリエチレンフォームなどを使用することが可能である。
【0031】
本実施形態では、容器本体11の底から下方に突出して床面Fに当接する複数本の脚部19が設けられており、これら脚部19によって先のモーター15aが床面Fに直接接触しないように配慮している。
【0032】
このような有機物肥料化処理装置10を用いて有機物Wの肥料化を行う場合、まず図2および図3に示すように容器本体11から蓋12を取り外し、肥料化処理物Wを容器本体11の開口11aから容器本体11内に投入する。また、好気性微生物が増殖しやすいように水分の含有量を併せて適切に調整し、必要に応じて少量の種菌などの補材を混合させる。しかる後、蓋12を容器本体11の開口11aに重ね、図1に示すように締結手段13によって蓋12を容器本体11に対して一体的に連結し、容器本体11内を密封状態に保持する。これにより、肥料化処理物Wからの水分が外部に過剰に蒸散することなく適切な水分状態に保たれ、微生物による発酵分解が円滑に進行することとなる。
【0033】
また、容器本体11内の肥料化処理物Wは、撹拌手段15により所定周期で間欠的に撹拌処理がなされる。撹拌羽根15cの回転による肥料化処理物Wの撹拌の頻度は、肥料化処理物Wの発酵により変化する容器本体11内の処理物温度や酸素濃度,二酸化炭素濃度などのデータを基に総合的に判断して決定することが好ましい。一般的に、例えば2時間毎に撹拌手段15を作動させることが有効であろう。このように、肥料化処理物Wの撹拌を行うことで、肥料化処理物W中の微生物と密閉された容器本体11内の空間Sに介在する空気中の酸素との接触確率を高めることができる。同時に、容器本体11に収容された肥料化処理物Wの上方の空間Sにある空気を容器本体11の底壁11cに近い位置にある肥料化処理物Wに供給することが可能となる。この結果、肥料化処理物W全体の好気性環境を改善してその肥料化をより促進することができるようになる。
【0034】
容器本体11内では上記の条件の下、好気性微生物が自然に増殖してこれらの微生物から分泌される加水分解酵素により肥料化処理物Wが発酵分解され、肥料化が進行する。また、肥料化処理物W中に含まれる有機物Wの発酵分解に伴って酸素が消費され、同時に二酸化炭素などのガスが発生する。この結果、容器本体11内の酸素濃度は、有機物Wの肥料化が進行するに連れて減少し、容器本体11内と外部との酸素濃度勾配が駆動力となって気体透過膜17を介し酸素を含む外気が容器本体11内に供給される。つまり、肥料化処理物Wの発酵分解過程で酸素が消費されるに従い、容器本体11内の酸素濃度が次第に減少する。この結果、相対的に酸素濃度が高い外気から気体透過膜17を介して酸素濃度の低くなった容器本体11内へと酸素の拡散が起こり、容器本体11内に酸素が供給される。
【0035】
この酸素濃度勾配の発生と酸素の拡散が繰り返し連続して起こることにより、酸素は外気から容器本体11内へ連続的に供給され、結果として容器本体11内の酸素濃度が好適な状態に保たれ、好気的な環境が維持される。なお、肥料化処理物Wの発酵分解過程によって容器本体11内で二酸化炭素などの濃度が増大し、気体透過膜17を介して外気と容器本体11内で二酸化炭素などの濃度勾配も生じる。しかしながら、酸素の場合と同様に、気体透過膜17を介して二酸化炭素の拡散が容器本体11の内外で起こり、容器本体11内にて発生した二酸化炭素などのガスが排出されることになる。
【0036】
また、肥料化処理物Wから蒸発した水蒸気は、気体透過膜17に付着して凝縮し水滴化するが、気体透過膜17は撥水性を有するため、この水滴は滴下して容器本体11内に流下する。このため、容器本体11内の水蒸気が気体透過膜17を透過して外部に過剰に放散するような不具合が発生せず、容器本体11の湿度が良好に維持される。また、肥料化処理物Wの水分の不足が生じないので、最初に容器本体11内に導入した水分を有効に利用して有機物Wの発酵分解を進めることができ、肥料化処理過程において肥料化処理物Wに対して新たに水分を追加するような手間を省くことができる。しかも、気体透過膜17は結露水などの付着に対して撥水性を有するため、その通気性を保持することができる。
【0037】
このように、容器本体11の内部と外部とが気体透過膜17を介して連通した状態の断熱構造を有する密閉された容器本体11内で系内の熱を閉じ込めた状態で効率のよい肥料化が実施される。この場合、効率的かつ経済的に微生物の活動に必要な酸素の供給が行われ、微生物の活動に必要な水分の過剰な蒸散を防止し、かつ処理対象物中に蓄積された発酵熱の放散を最小限に抑え、肥料化処理物Wの温度を適切に維持することができる。従って、簡素な設備と最小のエネルギーの投入で、系内を肥料化処理中に生存する好気性微生物の活動に適した環境に保つことが可能となるため、好気性微生物の活性度が好適に維持される。結果として、有機廃棄物の肥料化を効率よく短期問で完了させることが可能となる。
【0038】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0039】
10 有機物肥料化処理装置
11 容器本体
11a 開口
11b 周壁
11c 底壁
11d 断熱壁
12 蓋
12a 断熱壁
13 締結手段
13a キャッチ
13b ラッチレバー
14 シール手段
15 撹拌手段
15a モーター
15b 回転軸
15c 撹拌羽根
16 第2の開口
17 気体透過膜
18 防護ネット
19 脚部
W 有機物(肥料化処理物)
S 空間
F 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物分解される有機物が投入され、かつ生物分解された前記有機物を取り出すための開口が形成された容器本体と、
この容器本体の前記開口を開閉し得る蓋と、
この蓋により前記容器本体の開口を塞いだ状態において、当該蓋と前記容器本体との間の隙間をシールするシール手段と、
前記容器本体および蓋の少なくとも一方に形成された第2の開口と、
この第2の開口を塞ぐように配され、固体および液体の通過を遮断するのに対し空気中の酸素分子の通過を許容すると共に水蒸気の通過を抑制する気体透過膜と
を具えたことを特徴とする有機物肥料化処理装置。
【請求項2】
前記気体透過膜が撥水性を有することを特徴とする請求項1に記載の有機物肥料化処理装置。
【請求項3】
前記気体透過膜は、その表面積を増大させるための凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機物肥料化処理装置。
【請求項4】
前記容器本体および前記蓋がそれぞれ断熱壁を有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の有機物肥料化処理装置。
【請求項5】
前記容器本体に投入された有機物を撹拌するための撹拌手段をさらに具えたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の有機物肥料化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−140271(P2012−140271A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293494(P2010−293494)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】