説明

有機発光ダイオード要素

【課題】光干渉を利用して外部光線の反射光を消去する有機発光ダイオード要素を提供する。
【解決手段】有機発光ダイオード要素2は、透明基板21上に、カラーフィルタ27、透明導電層22、半透明導電層23、透明陽極電極層24、有機層25、陰極電極層26が順に形成される。外部光線M0は、半透明導電層23において、一部が第1反射光M1として反射するとともに、一部が半透明導電層23を透過し、陰極電極層26において第2反射光M2として反射する。第1反射光及び第2反射光は以下の式を満足する。
2L/λmax+φ/(2π)=m+1/2
(なお、Lは、透明導電層22、透明陽極電極層24、有機層25の光学的膜厚の和である。φは第1反射光M1及び第2反射光M2の位相差、mは整数、λmaxはカラーフィルタ27の透過率が最大になる波長である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード要素に関し、特に光干渉を利用して外部光線の光反射を消去する有機発光ダイオード要素に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード要素は、高い発光効率で赤、緑及び青色の光が得られ、低い駆動電圧(例えば数ボルト程度)で駆動可能で、かつ視野角が大きく画像を観察することができるため、フラットディスプレイにおける有機発光ダイオード要素の応用が重要になりつつある。
【0003】
図1は、従来の有機発光ダイオード要素の断面図である。有機発光ダイオード要素には、主にガラス基板10、陽極電極層12、有機層14及び陰極電極層16が含まれる。有機層14には、図中下方から上方へ、ホール注入層(図示せず)、ホール輸送層(図示せず)、発光層(図示せず)、電子輸送層(図示せず)及び電子注入層が順に含まれる。陽極電極層12は、通常透明で、かつ導電可能なインジウム・スズ酸化物(Indium Tin Oxide, ITO)から形成される。陰極電極層16は、通常低仕事関数(low-work function)を有し、高い反射性金属から形成される。
【0004】
有機層14の両端に電圧が印加されると、有機層14が発光し、有機発光ダイオード要素から各方向へ光が発せられる。陰極電極層16は、高い反射性金属から成るため、有機層14で生じた光は、陰極電極層16で反射され、この反射光は、有機層14、透明陽極電極層12、及びガラス基板10を介して外部に取り出され、これにより有機発光ダイオード要素の発光輝度は増加させられる。
【0005】
しかし、外部から有機発光ダイオード要素に入射される光線(以下、外部光線という)も、透明基板10を透過した後、大部分の光線が陰極電極16で反射され、反射された外部光線は、ディスプレイパネルのコントラストを低下させるため、ディスプレイの表示を不明確にする。
【0006】
特許文献1には、有機EL材料から成る第2半透過層を、アルミ薄膜から成る第1半透過層と高反射層で挟んだ構造を有する無反射積層構造を、陰極電極として用いた有機発光ダイオード要素が開示されている。この有機発光ダイオード要素では、陰極電極における反射が低減されるので、外部光線によるディスプレイパネルのコントラスト低下が防止される。
【特許文献1】特開2004−127725号公報(図4〜7、及び段落[0033]〜[0045]参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の構成によれば、陰極電極16は、外部光線のみならず、有機層14で発光した光の反射も防止してしまうので、有機発光ダイオード要素の発光輝度も低下させてしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて成されたものであり、有機層と透明基板の間に配置される電極層(例えば陽極)の構成を改良し、ディスプレイパネルのコントラスト低下を防止することができる有機発光ダイオード要素を提供することを目的とする。
【0009】
詳述すると、本発明は、有機発光ダイオード要素が膜層構造で、かつ各層の厚さを精緻に設計可能であることに着目し、光干渉を利用して外部光線の反射光を消去し、ディスプレイパネルのコントラストを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る有機発光ダイオード要素は、光干渉を利用して外部光線の反射光を消去する有機発光ダイオード要素において、透明基板と、透明基板上に形成された透明導電層と、透明導電層上に形成された半透明導電層と、半透明導電層上に形成された透明第1電極層と、透明第1電極層上に形成された有機層と、有機層上に形成された反射性第2電極層とを含む。そして、透明基板側から入射された外部光線は、その一部が半透明導電層において、第1反射光として反射されると共に、他の一部が半透明導電層を透過し、反射性第2電極層において第2反射光として反射され、第1反射光及び第2反射光は互いに光干渉され、少なくとも一部が打ち消されることを特徴とする。
【0011】
有機発光ダイオード要素が波長に応じた選択的な透過性を有し、透明導電層より透明基板側に配置されたカラーフィルタ層をさらに含む場合、カラーフィルタ層を透過した上記外部光線は、光干渉により少なくとも一部が打ち消される。
【0012】
上記カラーフィルタ層は、可視光領域における所定波長の透過率が最大になり、透明第1電極層の厚さは、所定波長の第1反射光及び第2反射光が互いに光干渉され、少なくとも一部が打ち消されるように設定されている。
【0013】
上記有機発光ダイオード要素は、式(1)を満足することを特徴とする。
2L/λmax+φ/(2π)=m+1/2 …(1)
(なお、Lは半透明導電層、透明第1電極層、及び有機層の光学的膜厚の和、λmaxはカラーフィルタ層の透過率が最大になる波長、φは同一の外部光線についての第1反射光及び第2反射光の位相差、mは整数である。)
【0014】
カラーフィルタ層は、それぞれ異なる色の光を透過させる第1及び第2フィルタ層を含む場合、第1フィルタ層に上に形成される透明第1電極層の厚さは、第2フィルタ層の上に形成される透明第1電極層の厚さと異なることが好ましい。そして第1及び第2フィルタ層それぞれを透過した外部光線は、光干渉により少なくとも一部が打ち消される。
【0015】
第1フィルタ層は、第1所定波長の透過率が最大になると共に、第2フィルタ層は第1所定波長とは異なる波長である第2所定波長の透過率が最大になるとき、第1フィルタ層に上に形成される透明第1電極層の厚さは、第1所定波長の第1反射光及び第2反射光が互いに光干渉され、少なくとも一部が打ち消されるように設定されていると共に、第2フィルタ層に上に形成される透明第1電極層の厚さは、第2所定波長の光の第1反射光及び第2反射光が互いに光干渉され、少なくとも一部が打ち消されるように設定されていることが好ましい。
【0016】
また、半透明導電層は、金属材料、または導電性光反射性材料であっても良く、金属材料としては、例えば銀、金、アルミニウム、及びニッケルの何れかが用いられる。また、例えば、導電性光反射性材料としてはセラミックス構造物、チタン酸カルシウム、金属材料を添加した非導電材料の何れかが用いられる。また、半透明導電層の物理的厚さは、例えば1nm乃至50nmである。そして、半透明導電層は、真空蒸着、またはスパッタリングにより形成されることが好ましい。
【0017】
透明導電層は、例えばインジウム・スズ酸化物を含み、反射性第2電極層は、反射性及び非透過性を有し、例えば金属が含まれる。また、透明第1電極層は、例えばインジウム・スズ酸化物を含む。なお、透明第1電極層は例えば陽極、反射性第2電極層は、例えば陰極である。また、透明導電層及び透明第1電極層の物理的厚さの合計は、170nm乃至300nmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の有機発光ダイオード要素は、第1電極層側に半透明導電層及び透明第1電極層が設けられると共に、各層の厚さが調整されることにより、外部光線の反射光が外部に出射されることが防止される。また、第1電極層側においては、半透明導電層の透明基板側に透明導電層が形成されるので、透明第1電極層の導電性が補償される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について添付図面を参照して説明する。
図2は、本発明の有機発光ダイオード要素の第1の実施形態に係る断面図である。第1の実施形態において、有機発光ダイオード要素2は、透明基板21、透明導電層22、半透明導電層(semi-transparent conductive layer)23、透明陽極電極層24(透明第1電極層)、有機層25、陰極電極層26(反射性第2電極層)、カラーフィルタ層27、及び電源40を含む。透明基板21は、例えばその材質がガラス、セラミック、またはプラスチック材質である。カラーフィルタ層27は、透明基板21上に形成され、その材質がガラス、プラスチック材質等であって、所定の色の光を透過するカラーフィルタであり、例えば青、赤、及び緑色の光のいずれかを透過する。すなわち、カラーフィルタ層27は、波長に応じて選択的な透過性を有し、可視光領域の所定の波長の透過率が最大になる。なお、カラーフィルタ層27は、図1において、透明基板21の下側に形成されていても良い。
【0020】
透明導電層22は、カラーフィルタ層27上に形成され、透明導電層22の材質としては、例えばインジウム・スズ酸化物(Indium Tin Oxide, ITO)等が用いられる。なお、カラーフィルタ層27と透明電極層22の間には、適宜カラーフィルタ層27を保護し、カラーフィルタ層27の上面を平滑化する透明保護膜等が形成されていても良い。
【0021】
半透明導電層23は透明導電層22上に積層されると共に、その物理的厚さは、透明性や反射性の観点から限定され、例えば1nm乃至50nmに設定される。半透明導電層23の材料としては、銀、金、アルミニウム、若しくはニッケル等の金属材料、セラミック、若しくはチタン酸カルシウム構造物の非金属導電材料の光反射性導電材料、または非導電性材料に金属材料が添加されて構成されたもの等が使用されても良い。
【0022】
半透明導電層23は、真空蒸着、またはスパッタリング(sputtering)により透明導電層22上に積層される。透明陽極電極層24は、半透明導電層23上に積層され、例えばインジウム・スズ酸化物材質である。透明導電層22及び透明陽極電極層24の物理的厚さの合計は、陽極の導電性を確保するために、少なくとも170nm以上必要とされ、好ましくは220nm乃至300nmである。
【0023】
有機層25は透明陽極電極層24の上に積層され、例えば陽極側から順に、ホール注入層(図示せず)、ホール輸送層(図示せず)、発光層(図示せず)、電子輸送層(図示せず)及び電子注入層が積層されて形成される。
【0024】
発光層は、例えば低分子電気励起発光薄膜であって、この場合真空蒸着(vacuum vapor deposition)により形成される。また発光層は、例えば高分子電気励起発光薄膜であって、この場合、スピンコーティング、インク噴射またはスクリーン印刷(screen printing)等の方法を利用して形成される。陰極電極層26は、一般の金属陰極電極層であって、有機層25上に積層される。すなわち、陰極電極層26は、非透過性で、かつ反射性を有する材料で形成される。
【0025】
電源40は、陰極電極層26及び透明導電層22に接続され、有機層25に電流を入力する。有機層25は、電流が入力されたことにより例えば白色光を発し、有機層25から発せられた白色光は、一部が陰極電極層26で反射された上で、カラーフィルタ層27で所定の色の光に変換されて外部に照射される。
【0026】
以下、本実施形態に係る有機発光ダイオード要素2の作用を説明する。なお、以下の説明においては、外部光線M0が白色光であるとともに、カラーフィルタ層27が青色フィルタ層であって、カラーフィルタ層27の透過率が最大になる波長(以下、λmaxという)が450nmである場合について説明する。
【0027】
外部光線M0が透明基板21を介してカラーフィルタ層27に入射されると、外部光線M0のうち赤、緑色の光がカラーフィルタ層27に吸収され、カラーフィルタ層27を透過する光は、強度が最大になる波長がλmax(450nm)である青色光となる。
【0028】
カラーフィルタ層27を透過した光は、その一部が、反射率R1で半透明導電層23において反射し、第1反射光M1として外部に出射するとともに、その他の一部が、半透明導電層23を透過し、陰極電極層26において反射率R2で反射し、第2反射光M2として外部に出射する。なお、反射率R1は、反射率R2より低く設定される。
【0029】
本実施形態においては、半透明導電層23、透明陽極電極層24、及び有機層25が膜層であり所定厚さを有するため、有機発光ダイオード要素2内部において、第1反射光M1の光路と第2反射光の光路M2との間に光路差が生じる。そしてこの光路差により、第1及び第2反射光M1、M2の波には破壊性干渉(destructive interference)が生じ、第1反射光M1及び第2反射光M2は互いに打ち消される。本例においては、λmax(450nm)の波長を有する光が、他の波長の光に比べてより多くの割合で破壊性干渉により消去されるように、半透明導電層23、透明陽極電極層24、及び有機層25の膜厚が下式(1)を満足するように設計される。
【0030】
2L/λmax+φ/(2π)=m+1/2 …(1)
式(1)中、Lは、半透明導電層23の光学的膜厚と、透明陽極電極層24の光学的膜厚と、有機層25の光学的膜厚の和である。φは第1反射光M1及び第2反射光M2の位相差、mは整数である。なお、式(1)において、外部光線の入射角は、0°と仮定されているが、ディスプレイパネルでは入射角0°近傍の光を消去させることが最も重要だからである。
【0031】
式(1)が満足されると、波長λmax(450nm)及びλmax付近の波長を有する光線が、破壊性干渉により消去され、青色の外部光線は、破壊性干渉によって効果的に消去されることとなる。また、赤、緑色の外部光線は、上述したようにカラーフィルタ層27で吸収されるので、本実施形態では、カラーフィルタ層27と破壊性干渉の組み合わせにより外部光線を効果的に消去されることとなる。
【0032】
本実施形態においては、例えば、φ=0、m=1である場合、式(1)は、以下のように表すことができる。
2L/λmax=3/2 …(1)’
【0033】
そして、上記式(1)’より、λmax=450nmである場合、L=337.5nmとなるが、有機層25の光学的膜厚はその層構成から限定され例えば150nmとなる。また、半透明導電層23の光学的膜厚は、上述したように透明性や反射性の観点から限定され、例えば20nmに設定される。一方、透明陽極電極層24の光学的膜厚は比較的自由に設定され、L=337.5nmとなるように、167.5nmに設定され、これにより青色の外部光線は、破壊性干渉によって効果的に消去される。
【0034】
また、透明陽極電極層24がITOで構成される場合、その屈折率は2.1であり、透明陽極電極層24の物理的厚さは式(2)より80nmになると共に、透明電極層22の物理的厚さは、特に制限なく設定され、例えば140nmである。したがって、本実施形態では、透明導電層22及び透明陽極電極層24の物理的厚さの合計は、220nmとなり、陽極の導電性は充分に補償されることとなる。
n×d=l …(2)
(なお、nは屈折率、dは物理的厚さ、lは光学的膜厚である。)
【0035】
以上のように、本実施形態では、カラーフィルタ層27と破壊干渉の組み合わせにより、有機発光ダイオード要素2に入射された外部光線を効果的に消去させることができるので、外部光線の反射が防止され、有機発光ダイオード要素2のコントラストの低下が防止される。また、透明陽極電極層24の厚さは薄く、この層単独では陽極の導電性を充分に確保できないが、本実施形態では透明導電層22が設けられたことにより、陽極の導電性が補償される。また、有機発光ダイオード要素2の構成は従来と同様に簡易な構成を有するので、製造プロセスを複雑にすることなく、パネルのコントラストを向上させることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、カラーフィルタ層27が青色フィルタ層であって、λmax=450nmである場合について説明したが、λmaxが可視光の範囲であれば特に限定されるわけではなく、カラーフィルタ層27は緑色フィルタ層、赤色フィルタ層等の他のカラーフィルタ層であっても良い。また、上記式(1)においては、mは1以外の整数でも良いが、m=2,3等に設定すると、透明陽極電極層24の厚さが大きくなりすぎるので、m=1が好ましい。さらには、有機層25の厚さは、その層構成によって適宜変更され、有機層25の厚さが変更されたときは、透明陽極電極層24、透明電極層22の厚さは、その厚さにあわせて変更される。また、半透明導電層23も所定の範囲内において変更可能であり、その場合も同様に層22、24の厚さが適宜変更される。
【0037】
本発明の有機発光ダイオード要素は、フルカラーディスプレイを実現するために、3色のカラーフィルタを備えていても良い。図3は、本発明の第2の実施形態の断面図を示し、有機発光ダイオード要素2’が3色のカラーフィルタを備える例である。
【0038】
図3に示すように、本実施形態においては、透明基板21の上には、赤色フィルタ層27R、緑色フィルタ層27G及び青色フィルタ層27Bが形成されている。そして、各フィルタ層27R、27G、27Bの上には、それぞれ独立に透明導電層22R、22G、22B、半透明導電層(semi-transparent conductive layer)23R、23G、23B、透明陽極電極層24R、24G、24B(透明第1電極層)、有機層25R、25G、25B、陰極電極層26R、26G、26B(反射性第2電極層)が形成されている。なお、これら各層について、第1の実施形態と同様の構成を備える点についてはその説明を省略する。また、以下の説明において有機発光ダイオード要素2’に入射される外部光線は、白色光であることを前提とする。
【0039】
本実施形態においては、各有機層25R、25G、25Bは透明導電層と陰極電極層に接続された不図示の電源から電流が入力されることにより、白色光を発する。その白色光は、赤色フィルタ層27R、緑色フィルタ層27G、及び青色フィルタ層27Bで赤、緑、青色の光に変換されて外部に照射される。また、外部光線M0は、赤色フィルタ層27R、緑色フィルタ層27G、及び青色フィルタ層27Bによってそれぞれ赤、緑、青色の光に変換されて有機発光ダイオード要素2’内部に入射される。例えば、赤色フィルタ層27Rを透過して有機発光ダイオード要素2’に入射された外部光線M0は、その一部が、反射率R1で半透明導電層23Rにおいて反射し、第1反射光M1として外部に出射するとともに、その他の一部が、半透明導電層23Rを透過し、陰極電極層26Rにおいて反射率R2で反射し、第2反射光M2として外部に出射する。
【0040】
赤色フィルタ層27Rは、透過率が最大になる波長λmaxが例えば650nmであって、赤色フィルタ層27Rで透過された外部光線M0は、強度が最大になる波長がλmax(650nm)となる赤色光である。したがって、λmaxの波長を有する光が最も効果的に消去されるように、赤色フィルタ層27Rの上に形成される半透明導電層23R、透明陽極電極層24R、及び有機層25Rの膜厚は上述した式(1)を満足するように設計される。
【0041】
各層の光学的膜厚が式(1)を満足するように設計されると、赤色フィルタ層27Rを透過した外部光線の反射光M1、M2は、互いに破壊干渉され、効果的に消去されることとなる。さらに、緑、青色の外部光線は、赤フィルタ層27Rで吸収されるので、本実施形態では、赤色フィルタ層27Rに入射される外部光線は、赤色フィルタ層27Rと破壊性干渉の組み合わせにより効果的に消去される。
【0042】
上記式(1)’より、λmax=650nmである場合、例えばL=487.5nmとなるが、上述したように有機層25R及び半透明導電層23Rの光学的膜厚は限定され、それぞれ例えば150nm、20nmとなる。したがって、透明陽極電極層24Rの光学的膜厚は317.5nmに設定されることとなる。
【0043】
透明陽極電極層24RがITOで構成される場合、透明陽極電極層24Rの物理的厚さは、上記式(2)より151nmになると共に、透明電極層22Rの物理的厚さは、特に制限なく設定することができ、例えば69nmに設定される。したがって、本実施形態では、透明導電層22R及び透明陽極電極層24Rの物理的厚さの合計は、例えば220nmとなり、陽極の導電性は充分に補償されることとなる。
【0044】
緑色フィルタ層27Gは、透過率が最大になる波長λmaxが例えば550nmであって、緑色フィルタ層27Gで透過された外部光線M0は、強度が最大になる波長がλmax(550nm)となる緑色光である。したがって、λmaxの波長を有する光が最も効果的に消去されるように、半透明導電層23G、透明陽極電極層24G、及び有機層25Gの膜厚が上述した式(1)を満足するように設定される。
【0045】
各層の光学的膜厚が式(1)を満足するように設計されると、緑色フィルタ層27Gを透過した外部光線の反射光M1、M2は、破壊性干渉によって効果的に消去されることとなる。また、青、赤色の外部光線は、緑色フィルタ層27Gで吸収されるので、緑色フィルタ層27Gから有機発光ダイオード2’に入射される外部光線は、緑色フィルタ層27Gと破壊性干渉の組み合わせによって効果的に消去される。
【0046】
すなわち、上記式(1)’において、λmax=550nmの場合、例えばL=412.5nmとなるが、上述したように有機層25G及び半透明導電層23Gの光学的膜厚は限定され、それぞれ例えば150nm、20nmとなる。したがって、透明陽極電極層24Gの光学的膜厚は242.5nmに設定されることとなる。
【0047】
透明陽極電極層24GがITOで構成される場合、透明陽極電極層24Gの物理的厚さは、上記式(2)より115nmになると共に、透明電極層22Gの物理的厚さは、特に制限なく設定することができ、例えば105nmに設定される。したがって、本実施形態では、緑色フィルタ層27G上に積層される透明導電層22G及び透明陽極電極層24Gの物理的厚さの合計は220nmとなり、陽極の導電性は充分に補償されることとなる。
【0048】
青色フィルタ層27Bの上に形成される各層の厚さについても、上記式(1)を満足するように第1の実施形態と同様に設定され、青色フィルタ層27Bに入射される外部光線も、青色フィルタ層27Bと破壊干渉の組み合わせにより、効果的に消去される。なお、有機層25B、半透明導電層23B、透明陽極電極層24Bそれぞれの光学的膜厚は例えば150nm、20nm、167.5nmに設定され、青色フィルタ層27Bを透過する外部光線は破壊干渉により効果的に消去される。一方、透明電極層22Bの物理的厚さは例えば140nmに設定され、陽極側の導電性は充分に補償される。
【0049】
以上のように、本実施形態では、各フィルタ層27R、27G、27Bのそれぞれの上に形成される透明陽極電極層24R、24G、24Bの光学的膜厚がそれぞれ異なり、波長λmaxに応じて設定される。したがって有機発光ダイオード2’に入射される外部光線は、各フィルタ層と破壊性干渉の組み合わせによって効果的に消去される。また、本実施形態でも、透明導電層22が設けられることにより、透明陽極電極層24の導電性は補償される。
【0050】
また、本実施形態では、透明導電層22R、22G、22Bの物理的厚さがそれぞれ互いに異なるように設定され、透明導電層、半透明導電層、及び透明陽極電極層の物理的厚さの合計厚さが等しくなる。したがって、透明陽極電極層24R、24G、24Bの上面の高さ位置は等しくなり、これにより有機層及び陰極電極層が積層しやすくなる。
【0051】
図4は、第2の実施形態の変形例を示す図である。第2の実施形態では、各透明陽極電極層24R、24G、24Bの上に積層された有機層25R、25G、25Bはそれぞれ独立に積層されたが、本変形例においては、図4に示すように透明陽極電極層24R、24G、25Bの上に積層される有機層は、同一の有機層25から構成される。また、有機層25を、透明陽極電極層24R、24G、25Bと共に挟持する陰極層26も、透明陽極電極層24R、24G、25B間に跨って積層される。このような構成により、例えば、単一の有機層25を、同一方向に並ぶ複数の陽極と、第1電極とは垂直方向に並ぶ複数の陰極により挟持させることができる。その他の構成は、第2の実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0052】
なお、第1及び第2の実施形態においては、透明第1電極層は陽極であって、反射性第2電極層は陰極であったが、透明第1電極層は透明陰極であって、反射性第2電極層が反射性陽極であっても良い。また、以上の説明は、本発明の実施形態の説明にすぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】従来の有機発光ダイオード要素の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る有機発光ダイオード要素の断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る有機発光ダイオード要素の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の変形例に係る有機発光ダイオード要素の断面図である。
【符号の説明】
【0054】
2、2’ 有機発光ダイオード要素
21、21R、21G、21B 透明基板
22、22R、22G、22B 透明導電層
23、23R、23G、23B 半透明導電層
24、24R、24G、24B 透明陽極電極層(透明第1電極層)
25、25R、25G、25B 有機層
26、26R、26G、26B 陰極電極層(反射性第2電極層)
27 カラーフィルタ
27R 赤色フィルタ層
28G 緑色フィルタガラス
29B 青色フィルタガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉を利用して外部光線の反射光を消去する有機発光ダイオード要素において、
透明基板と、
前記透明基板上に形成された透明導電層と、
前記透明導電層上に形成された半透明導電層と、
前記半透明導電層上に形成された透明第1電極層と、
前記透明第1電極層上に形成された有機層と、
前記有機層上に形成された反射性第2電極層とを含み、
前記透明基板側から入射された外部光線は、その一部が前記半透明導電層において、第1反射光として反射されると共に、他の一部が前記半透明導電層を透過し、前記反射性第2電極層において第2反射光として反射され、
前記第1反射光及び第2反射光は互いに光干渉され、少なくとも一部が打ち消されることを特徴とする有機発光ダイオード要素。
【請求項2】
波長に応じた選択的な透過性を有し、前記透明導電層より前記透明基板側に配置されたカラーフィルタ層をさらに含み、
前記カラーフィルタ層を透過した外部光線が、前記光干渉により少なくとも一部が打ち消されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ダイオード要素。
【請求項3】
前記カラーフィルタ層は、可視光領域における所定波長の透過率が最大になり、
前記透明第1電極層の厚さは、前記所定波長の第1反射光及び第2反射光が互いに光干渉され、少なくとも一部が打ち消されるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の有機発光ダイオード要素。
【請求項4】
式(1)を満足することを特徴とする請求項2に記載の有機発光ダイオード要素。
2L/λmax+φ/(2π)=m+1/2 …(1)
(なお、Lは半透明導電層、透明第1電極層、及び有機層の光学的膜厚の和、λmaxはカラーフィルタ層の透過率が最大になる波長、φは同一の外部光線についての前記第1反射光及び第2反射光の位相差、mは整数である。)
【請求項5】
前記カラーフィルタ層は、それぞれ異なる色の光を透過させる第1及び第2フィルタ層を含み、
前記第1フィルタ層に上に形成される前記透明第1電極層の厚さは、前記第2フィルタ層の上に形成される前記透明第1電極層の厚さと異なり、
前記第1及び第2フィルタ層それぞれを透過した外部光線は、前記光干渉により少なくとも一部が打ち消されることを特徴とする請求項2に記載の有機発光ダイオード要素。
【請求項6】
前記第1フィルタ層は、第1所定波長の透過率が最大になると共に、前記第2フィルタ層は前記第1所定波長とは異なる波長である第2所定波長の透過率が最大になり、
前記第1フィルタ層に上に形成される前記透明第1電極層の厚さは、前記第1所定波長の第1反射光及び第2反射光が互いに光干渉され、少なくとも一部が打ち消されるように設定されていると共に、
前記第2フィルタ層に上に形成される前記透明第1電極層の厚さは、前記第2所定波長の光の第1反射光及び第2反射光が互いに光干渉され、少なくとも一部が打ち消されるように設定されていることを特徴とする請求項5に記載の有機発光ダイオード要素。
【請求項7】
前記半透明導電層の物理的厚さは、1nm乃至50nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ダイオード要素。
【請求項8】
前記半透明導電層は、金属材料、または導電性光反射性材料であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ダイオード要素。
【請求項9】
前記半透明導電層は、銀、金、アルミニウム、及びニッケルの何れかを含むことを特徴とする請求項8に記載の有機発光ダイオード要素。
【請求項10】
前記半透明導電層は、セラミックス構造物、チタン酸カルシウム、金属材料を添加した非導電材料の何れかを含むことを特徴とする請求項8に記載の有機発光ダイオード要素。
【請求項11】
前記透明導電層は、インジウム・スズ酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光ダイオード要素。
【請求項12】
前記半透明導電層は、真空蒸着、またはスパッタリングにより形成されることを特徴とする請求項1記載の有機発光ダイオード要素。
【請求項13】
前記反射性第2電極層は、金属が含まれることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ダイオード要素。
【請求項14】
前記透明第1電極層は、インジウム・スズ酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光ダイオード要素。
【請求項15】
前記透明導電層及び透明第1電極層の物理的厚さの合計は、170nm乃至300nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ダイオード要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−77880(P2008−77880A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253255(P2006−253255)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】