有機発光ディスプレイ及びその製造方法
【課題】有機発光ディスプレイ(OLED)のエージング処理において、温度上昇による特性劣化を生じさせることなく短時間にてエージング処理を可能とすること。
【解決手段】基板1面上に、駆動回路3、陽極5、有機発光層8、陰極11を積層してなるOLEDのエージング処理において、OLEDの昇温を抑制する昇温抑制手段(ヒートシンク40や低温槽46)を設け、陽極と陰極の間に電流を印加し、通常動作時の輝度より大きな輝度にて有機発光層を発光させてエージング処理を行う。昇温抑制手段は、エージング中の昇温をOLEDを構成する有機化合物のガラス転移温度未満に抑制する。
【解決手段】基板1面上に、駆動回路3、陽極5、有機発光層8、陰極11を積層してなるOLEDのエージング処理において、OLEDの昇温を抑制する昇温抑制手段(ヒートシンク40や低温槽46)を設け、陽極と陰極の間に電流を印加し、通常動作時の輝度より大きな輝度にて有機発光層を発光させてエージング処理を行う。昇温抑制手段は、エージング中の昇温をOLEDを構成する有機化合物のガラス転移温度未満に抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物からなる発光層に電界を印加し光を放出させる有機発光ディスプレイ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ディスプレイ(以下、OLED(Organic Light Emitting Diode)と呼ぶ)は、ガラス、プラスチック、有機フィルム及び金属等の基板上に、陽極、有機発光層及び陰極等を順次形成し、これに直流電流を印加して発光させ、マルチカラー表示またはフルカラー表示を可能にする素子である。光を取り出す構造として、基板側から光を取り出すボトムエミッション型と、基板と反対側から光を取り出すトップエミッション型がある。トップエミッション型は、基板内にTFT(Thin Film Transistor)等を含む駆動回路及び演算回路等を形成できるので多機能な素子を実現でき、また、OLED素子から発光する光がTFT等を含む駆動回路等により遮られることがないため、ボトムエミッション型より開口率を高めることができるという利点がある。
【0003】
OLEDには駆動時間とともに発光輝度が低下するという性質を有するため、いわゆるエージング処理が必要である。エージング処理は、OLEDの輝度・色度の初期劣化を行い、その後の使用時の経時変化を安定化させ、しいては輝度半減寿命の向上及び焼き付きの低減を図るものである。また、OLEDを形成する多層膜の欠陥を早期に発見して不良品を選別したり、短絡箇所に対してはこれを破壊して絶縁状態に変化させて無駄な電流が流れないように改質したりする作用もある。
【0004】
OLEDに対するエージング方法が多々提案されている。例えば特許文献1には、駆動時の電流密度の5〜1000倍の電流密度でエージングすることとし、0.01〜1A/cm2の電流密度でエージングすることを提案している。また、特許文献2には、封止層形成前に有機EL素子に電界を印加するとともにガラス転移点Tg以下の温度で加熱処理を施し、発光時間が12hrから100hrであるエージングを行うことを提案している。
【0005】
【特許文献1】特開平8−185979号公報
【特許文献2】特開2003−264073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
OELDはエージング処理を行わないで点灯すると、輝度の経過変化は初期点灯時の輝度低下が大きく、その後緩やかになる傾向を示す。初期輝度低下のメカニズムは、次の3要因が考えられる。
(1)発光領域の抵抗不均一(密度や膜厚の不均一)により低抵抗領域に多くの電流が流れ、その領域にてTg以上の発熱が生じ有機化合物が不可逆物理化学変化を起こし劣化する。
(2)点灯により積層界面において電子・正孔に対するポテンシャルが変化し、電荷輸送効率が低下する。
(3)点灯により有機化合物内の分子分極が変化し、再結合確率が低下する。
【0007】
要因(1)は製造不良の初期故障に相当するものでアニール処理が有効の場合がある。しかし(2),(3)は、要因が電子・正孔の伝導による有機化合物の変化であるから、単にアニール処理することでは解決できるものではなく、電流を過剰に流し込み、早期に初期変化を終了させることが有効と考える。
【0008】
早期にエージングを終了させることは生産技術の面からも重要である。すなわち、初期故障を早期に発生させて選別でき、また製造時間の短縮を図ることができるからである。
【0009】
しかしOLEDを構成する有機化合物の中には、ガラス転移温度Tgが80℃〜100℃と低温であるものが多い。もしこれらの材料が電流の印加によりTg以上に昇温された場合には、有機化合物層内に微結晶が形成され、その結果特性劣化を生じさせることになる。つまりOLEDの初期安定化を図るエージングにおいて、短時間で大電流を印加させることと、有機化合物の発熱をTg未満に抑えることは互いに相反し、両立させることが困難であった。
【0010】
前記特許文献1,2においては、この要請については何ら考慮されていない。特許文献1では、大電流(駆動時の電流密度の5〜1000倍)でエージングを行うものであるが、その上限値は、素子の局所的な融解等により致命的な損傷が起こる場合を限界としたもので、Tgを超える発熱を許容するものである。また特許文献2では、短時間で大電流を印加することについては触れていない。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、特性劣化を生じさせることなく短時間のエージング処理が可能な有機発光ディスプレイ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、基板面上に、駆動回路、陽極、有機発光層、陰極を積層してなる有機発光ディスプレイにおいて、陽極と陰極の間にエージングのための電流を印加する際、有機発光ディスプレイの昇温を抑制するヒートシンク部材を取り付けるために、有機発光ディスプレイの少なくとも1つの外周面を平坦形状とした。
【0013】
また本発明は、基板面上に、駆動回路、陽極、有機発光層、陰極を積層してなる有機発光ディスプレイの製造方法において、有機発光ディスプレイにはその昇温を抑制する昇温抑制手段を設け、陽極と陰極の間に電流を印加し、通常動作時の輝度より大きな輝度に設定して有機発光層を発光させてエージング処理を行う。
【0014】
昇温抑制手段として、有機発光ディスプレイの少なくとも1つの外周面に熱抵抗の小さいヒートシンク部材を取り付ける。または、昇温抑制手段として、有機発光ディスプレイを低温槽内に設置する。そして、昇温抑制手段により、エージング処理時の有機発光ディスプレイの昇温を有機発光ディスプレイを構成する部材のガラス転移温度未満に抑制する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特性劣化を生じさせることなく短時間で効果的なエージング処理が可能な有機発光ディスプレイ及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明による有機発光ディスプレイ(OLED)の一実施形態を示す概略断面図である。ここでは、トップエミッション型OLEDの1画素の概略構造を示す。全体の構成は、アルミニウム基板1上に絶縁膜2を形成し、その上にTFT駆動回路3を形成し、平坦化層4にて平坦化を図り、平坦化層4の上にOLED素子13を形成する。OLED素子13は、基板側から順に、陽極(反射電極)5、正孔注入層6、正孔輸送層7、有機発光層8、電子輸送層9、電子注入層10及び陰極(透明電極)11を積層する。TFT駆動回路3により陽極5と陰極11に直流電圧15を印加し、電流を注入して発光層8より発光させる。発光された光16は、透明電極である陰極11を透過して外部へ放射する。陽極5は反射電極であり、発光層8から到来した光を反射して陰極側へ戻す。
【0018】
正孔輸送層7は、陽極5からの正孔を輸送し、陰極11から輸送されてきた電子をブロックする。電子輸送層9は、陰極11からの電子を輸送し、陽極5から輸送されてきた正孔をブロックする。いわゆる、ダブルヘテロ構造となっている。陰極11から注入された電子と陽極5から注入された正孔は、発光層8にて再結合して励起子を形成し、この励起子が放射失活する過程で光を発生する。
【0019】
以下、各部分の構成を詳細に説明する。
【0020】
厚さ約1mmのアルミニウム基板1を基材とし、陽極酸化により厚さ約100nmのAl2O3絶縁層2を形成する。アルミニウム基板1と絶縁層2をもって基板12とする。アルミニウム基板1の下面には、OLEDの放熱を行うために、深さが約0.3mmの櫛歯状の溝14を形成している。そして下面全体は、後述するエージング工程にてヒートシンク部材を取り付け可能とするため突部のない平坦面とした。絶縁層2を形成後、TFT駆動回路3及び平坦化膜4を形成する。
【0021】
平坦化膜4の上にはOLED素子13として、順次、陽極(反射電極)5としてアルミニウムを100nm厚、正孔注入層6としてアリールアミンを50nm厚、正孔輸送層7としてα―ナフチルフェニルジアミンを50nm厚、発光層8としてトリスアルミニウムを80nm厚、電子輸送層9としてアルミニウムキノリノール錯体を50nm厚、電子注入層10としてLiFを10nm厚、陰極(透明電極)11としてITO(Indium Tin Oxide)を120nm厚、を形成した。ITOはレーザーアブレーション法にて形成し、その他は真空蒸着法にて形成した。その後は、図1では省略しているが、紫外線硬化性エポキシ樹脂にて封止した。
【0022】
基板1としては、アルミニウムの他、ソーダガラス、石英、サファイア、アルミニウム合金等の無機材料や、プラスチックとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンー2、6―ナフタレート、ポリカーボネイト、ポリサリフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂を用いてもよい。
【0023】
陽極5には、仕事関数の小さいMg,In,Agの単層金属、またはAl−Mg,Ag−Mg,Al−Li,Mg−Ag等の合金を用いてもよい。
【0024】
正孔輸送層7は、芳香族三級アミン誘導体、フタロシアニン誘導体等がある。また、上記材料の単層構造でもよいし、複層構造であってもよい。
【0025】
発光層8は、発光材料及び必要により添加するドーピング材料からなる。ドーピング材料は、発光層8からの発光効率を向上させ、発光色を変化させる場合に発光層中に添加する材料である。発光材料及びドーピング材料としては、アルミニウムキノリノール錯体、ルブレン、キナクリドン、希土類錯体、イリジウム錯体、アントラセン類、各種蛍光色素等を用いることができる。
【0026】
電子輸送層9は、陰極22から効率良く電子が注入された電子を輸送する能力をもち、発光層に対して優れた電子注入効果を有する。材料としては、アルミニウムキノリノール錯体、トリアゾール錯体等がある。
【0027】
電子注入層10は、陰極22から効率良く電子を注入しやすくする能力をもち、また電子輸送層9への電子の注入を効率的に行う。材料としては、リチウムなどのアルカリ金属、フッ化リチウム、酸化リチウム、リチウム錯体等がある。
【0028】
陰極11には、ITOやSnO2等の透明導電性材料を用いるが、電気抵抗値は素子の消費電力や発熱を低減するため低抵抗にする。
【0029】
図2は、本発明による有機発光ディスプレイ(OLED)の他の実施形態を示す概略断面図である。ここでは、ボトムエミッション型OLEDの1画素の概略構造を示す。全体構成は、ガラス基板20上に、OLED素子13として、透明電極である陽極21、有機化合物からなる正孔輸送層7、有機化合物からなる発光層8、有機化合物からなる電子輸送層9、電子注入層10及び金属電極である陰極22とを順次積層している。更には発光効率を向上させるため、陽極21と正孔輸送層7との間に正孔注入層を設けてもよい。ガラス基板20上には、発光領域とは別にOLEDを駆動するTFT駆動回路3を形成している。TFT駆動回路3により陽極21と陰極22に直流電圧15を印加し、電流を注入して発光層8より発光させる。発光層8からの光16は、陽極21とガラス基板20を透過し外部に放射される。発光層8から陰極側へ放射された光は、金属陰極22より反射されて、外部へ効率良く放射される。
【0030】
図3は、本実施例の有機発光ディスプレイを用いた有機発光ディスプレイパネルの概要を示す図である。ここでは、複数画素(9個)分のトップエミッション型OLED素子を配列し、アクティブマトリックス方式で駆動する場合を示す。図3には明示していないが、OLEDパネル30の最背面全体にアルミニウム基板1と絶縁膜2を配置し、その前面に向かって順に、各TFT駆動回路3、陽極(反射電極)5、有機発光層8、陰極(透明電極)11を配置する。各素子において、駆動回路3は発光層8の発光領域と重なる位置に配置することができるので、パネル表面の発光領域を有効に利用できる。
【0031】
パネル30には、水平方向の複数の走査線31と、垂直方向の複数のデータ線32を配置し、これらによりOLED素子(画素領域)を選択する。すなわち、走査線31に供給する走査線信号と、データ線32に供給するデータ線信号により、交差する駆動回路3を選択する。選択された駆動回路3は、素子内の陽極5と陰極11との間に直流電圧を印加し、電流を注入して発光層8より発光させる。また、必要に応じて、電源回路及び電源供給線や制御信号を供給する制御線を付加する。
【0032】
有機発光層8から発した光は、発光層8より背面側に配置された陽極5により反射され、発光層8より前面側に配置された陰極11を透過して外部に放射される。
【0033】
図4は、本実施例の有機発光ディスプレイを用いた有機発光ディスプレイ装置の全体構成を示す図である。有機発光ディスプレイ装置は、アクティブマトリックス駆動のOLEDパネル30と、走査線駆動回路33と、データ線駆動回路34とを備えている。走査線駆動回路33は、パネル30上の水平方向の走査線31に走査線選択信号を供給する。またデータ線駆動回路34は、垂直方向のデータ線32にデータ線選択信号を供給する。更にカラーフィルタを用いて、マルチカラー表示またはフルカラー表示とすることも可能である。
【0034】
また、図示していないが、必要に応じて、電源回路及び電源供給線や制御信号を供給する制御線、電源制御回路、電源電圧供給回路、制御信号駆動回路等を付加する。
【0035】
次に、上記のような有機発光ディスプレイ(OLED)の製造方法について説明する。本発明の有機発光ディスプレイの製造方法では、OLEDのエージング処理において、大電流を短時間に印加するものである。その際、印加電流による昇温をOLEDを構成する有機化合物のガラス転移点Tg未満に抑えるため、以下に示すような昇温抑制手段を採用している。
【0036】
OLEDの構成は、基板の上に、駆動回路、陽極、発光層、陰極を積層してなり、前記陽極と前記陰極の間に電流を印加するエージングにおいて、強制的にOLEDの昇温を抑制する手段を設けるようにした。OLEDを構成する有機化合物は非晶質構造の有機半導体であり、抵抗率が108Ωcm〜1016Ωcmと高抵抗であるが、その温度特性はSi等の無機半導体より急峻である。すなわち、OLED内の発熱により発熱部の抵抗が急激に下がる。強制的にOLEDの昇温を抑制する手段を設けるエージングでは、OLEDの一部領域に短絡部がある場合に、短絡部へ集中的に電流が流れ局所的に発熱することにより更に抵抗が下がり電流が増加し破壊により絶縁化する。短絡部のない通常の領域では、温度の上昇が少ないために抵抗の低下は少ない。したがって、短時間に短絡部の有無の選別が可能であり、エージング電流として大電流を流すことが可能となる。
【実施例1】
【0037】
図5は、本発明による有機発光ディスプレイのエージング方法の一実施例を示す図である。図1に示したトップエミッション型構造のOLEDパネル42を、その基板面をヒートシンク40に密着するように配置し、ヒートシンク40によりOLEDのエージング時の昇温を抑制する方式である。エージングは、パネル42の端子をFPC43にてコネクタ44に接続し、エージング駆動回路及び電源45からコネクタ44を通してOLEDに電流を印加し、常温(例えば周囲温度25℃)環境で点灯させる。印加する電流は、所定の輝度が得られる値に設定する。
【0038】
ヒートシンク40の材料は、熱抵抗の値が小さいほど放熱効果は高く、例えばアルミニウム材(熱抵抗0.2(deg/W))が適する。またヒートシンク40はOLEDとの密着を良好とするため、接触面は突起のない平坦面とする。密着方法としては、機械的にパネルの一部をヒートシンクに押さえ込む方法、真空吸引にて、パネルをヒートシンクに密着させる方法等がある。また、接触面にサーマルグリースを薄く塗ることで、熱伝導が良好になる。
【実施例2】
【0039】
図6は、本発明による有機発光ディスプレイのエージング方法の他の実施例を示す図である。本実施例では、前記図5のヒートシンク40を取り付けるとともに、強制空冷ファン41との併用によりOLEDの昇温を更に抑制する方式である。
【実施例3】
【0040】
図7は、本発明による有機発光ディスプレイのエージング方法の更に他の実施例を示す図である。本実施例においては、前記図5のヒートシンク40を取り付けるとともに、周囲温度を低温環境とするため冷蔵庫46内に設置した。パネル端子とコネクタ44とをFPC43にて接続し、エージング駆動回路及び電源45からコネクタ44を通してOLEDに所定の電流を印加し、点灯させた。冷蔵庫46内の温度は、3℃と−10℃の2種類にて行った。本実施例では、周囲温度を下げることで更にOLEDの昇温を抑制する。
【0041】
図8と図9は、上記実施例におけるパネル温度の上昇を測定した結果を示す図である。横軸は、エージング時の輝度の値(初期値)を示す。縦軸は各輝度に対するパネル温度を示す。パネル温度は電流印加後暫くの間上昇するので、これが安定した時点(約1〜2hr経過後)での値である。TgはOLEDを構成する有機化合物のガラス転移点で、本実施例の場合は約100℃である。
【0042】
図8において、(a)はヒートシンクを取り付けない従来の場合、(b)は、実施例1(図5)のようにヒートシンクを取り付けた場合、(c)は、実施例2(図6)のようにヒートシンクとともに強制空冷を併用した場合である。
【0043】
(a)のヒートシンクを取り付けない従来の場合は、輝度の増加に伴いパネル温度が上昇し、高輝度領域(輝度>600cd/m2)では100℃以上となる。この温度はOLEDのガラス転移点Tgを超える温度であり、有機化合物の結晶化及び凝集により特性劣化を引き起こす。その結果、設定した輝度(>600cd/m2)を維持できずに、点灯中に輝度が低下していく。
【0044】
これに対し(b)のヒートシンクを取り付けた場合は、輝度を1000cd/m2に上げてもパネル温度は約70℃である。これはOLEDのTg未満の温度であり、特性劣化なしで充分に点灯可能である。更に(c)のヒートシンク取り付けと強制空冷を併用した場合には、輝度1000cd/m2におけるパネル温度は約60℃まで下がる。この場合もTg未満の温度であり、特性劣化なしで充分に点灯可能である。
【0045】
なお(a)のヒートシンクがない場合には、パネル温度がTg(100℃)未満となる条件で、エージングすることも考えられる。例えば、輝度400cd/m2の条件に印加電流を抑える。しかしその場合には、輝度を下げた分長いエージング時間を必要とする。これに対し本実施例では、(b)ヒートシンクや(c)強制空冷の併用による冷却作用の結果、高輝度1000cd/m2となる大電流を印加することが可能となる。その分、エージングに必要な時間が短くなり効率的である。エージングの効果は輝度と時間の積で決まるとすれば、(a)のヒートシンクなしで輝度400cd/m2でエージングする場合に対し、(b)のヒートシンクの取り付けや、(c)のヒートシンクと強制空冷を併用して、輝度1000cd/m2でエージングする場合は、処理時間は約1/2.5に低減できる。
【0046】
また図9は、(a)は冷却なしの従来の場合、(d)は、実施例3(図7)のようにヒートシンクを取り付け冷蔵庫(3℃)内に設置した場合、(e)は、ヒートシンクを取り付け更に低温の冷蔵庫(−10℃)内に設置した場合である。
【0047】
(d)のヒートシンク取り付け及び冷蔵庫(3℃)内に設置の場合には、輝度1400cd/m2におけるパネル温度は約40℃であり、(e)の冷蔵庫(−10℃)内に設置の場合には、輝度2000cd/m2においてもパネル温度は約35℃である。いずれもOLEDのTg未満の温度であり、特性劣化なしで充分に点灯可能である。そして、(d)では輝度1400cd/m2になる電流を、また(e)では輝度2000cd/m2以上になる電流を印加することが可能となる。その結果、(a)の冷却なしで輝度400cd/m2でエージングする場合に対し、(d)の場合は処理時間が約1/3.5に、(e)の場合は処理時間が約1/5に低減でき、大幅な時間短縮を図ることができる。
【0048】
図10は、各実施例のエージング方法を適用した際の、エージング時間に対する相対輝度の変化を示す図である。また図11は、そのエージング条件と輝度変化の結果を表にまとめたものである。ここでは輝度の初期値を一定600cd/m2に揃えて(すなわち同一駆動電流にて)比較している。
【0049】
条件(1)は従来方法で、ヒートシンクなし、周囲温度25℃、パネル温度100℃である。(2)は実施例2の場合で、ヒートシンク有り、周囲温度25℃、強制空冷あり、パネル温度40℃である。(3)は実施例3の場合で、ヒートシンク有り、周囲温度3℃(冷蔵庫内に設置)、パネル温度20℃である。(4)は実施例3の場合で、ヒートシンク有り、周囲温度−10℃(冷蔵庫内に設置)、パネル温度0℃である。
【0050】
条件(1)ではパネル温度が約100℃であるため、OLEDのガラス転移点Tgに到達し、エージング時間とともに輝度低下が著しい。これは、OLED内の有機化合物の結晶化が生じたためと推定される。一方、条件(2)(3)(4)では、パネル温度は0℃〜40℃の間で相違するが、輝度変化は緩やかでほぼ一致している。すなわち、輝度の初期値が一定で、パネル温度がTg未満であれば、輝度変化はパネル温度にほとんど依存しない。
【0051】
エージング時間とともに輝度が緩やかに低下することは、エージング作用の発生を意味する。そして、輝度が初期値から所定量減少する時点を、エージング処理終了点とする。輝度の減少量を大きくとれば特性はより安定となるが、エージング処理時間が長くなる。輝度減少量は適宜決定すればよいが、本実施例では、輝度が5%減少する点をエージング終了点とする。条件(1)ではOLEDの特性劣化を生じているのでエージング効果は期待できない。条件(2)(3)(4)では約40hrにて輝度が5%減少しエージング処理の終了点とする。
【0052】
図12は、各実施例の輝度の初期値を変えてエージング方法を適用した際の、エージング時間に対する相対輝度の変化を示す図である。ここでは各実施例のパネル温度差が少なくなるよう輝度の初期値を設定した。また図13は、そのエージング条件と輝度変化の結果を表にまとめたものである。
【0053】
条件(5)は従来方法で、ヒートシンクなし、周囲温度25℃、初期輝度400cd/m2とし、パネル温度70℃である。(6)は実施例2の場合で、ヒートシンク有り、周囲温度25℃、強制空冷あり、初期輝度1000cd/m2とし、パネル温度60℃である。(7)は実施例3の場合で、ヒートシンク有り、周囲温度3℃(冷蔵庫内に設置)、初期輝度1400cd/m2とし、パネル温度40℃である。(8)は実施例3の場合で、ヒートシンク有り、周囲温度−10℃(冷蔵庫内に設置)、初期輝度2500cd/m2とし、パネル温度45℃である。
【0054】
条件(5)においては、パネル温度をTg未満にするためには、初期輝度を400cd/m2程度まで下げなければならない。条件(6)(7)(8)では、初期輝度1000〜2500cd/m2においてもパネル温度は40℃〜60℃であり、Tg未満とすることが可能である。輝度が初期値から5%減少するまでのエージング時間は、従来の(5)では50hrであるが、昇温抑制手段を用いる(6)では20hr、(7)では14hr、(8)では8hr、と短時間でエージングを終了することが可能となる。その結果、(8)でのエージング時間は、(5)のエージング時間の約1/6.3まで短縮可能である。
【0055】
すなわち、強制的にOLEDの昇温を抑制する手段にてパネル温度をTg未満を維持し、高輝度(大電流)にて点灯すれば、エージング処理を短時間に終了することが可能となる。
【0056】
図14は、エージング処理後の各OLEDについて、点灯時間に対する輝度の変化を測定した結果を示す図である。ここでは、前記した図12、図13の条件(5)〜(8)で輝度が5%減少するまでエージングを行った各OLEDについて、初期輝度200cd/m2にて、常温で(強制的な昇温抑制手段なし)点灯させた。点灯時間に対する輝度変化は小さく、エージングの効果(輝度特性の安定化)が認められる。そして、各OLEDの差はわずか(1%程度)であり、エージング方法による効果の差は少ないと認められる。
【0057】
これより、強制的にOLEDの昇温を抑制する手段を用いて、パネル温度をTg未満としながら高輝度(大電流)にてエージング処理を行えば、短時間でエージング処理を行うことができ、製造工程の時間短縮に有効である。
【0058】
以上OLEDの構造やエージング方法について具体的に述べたが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。すなわちOLEDの構造は、トップエミッション型でもボトムエミッション型でもよい。基板材料は、ガラス基板、プラスチック基板、アルミニウム以外の他の金属基板でもよい。有機化合物は、低分子系有機化合物でも高分子系有機化合物でもよい。OLEDの積層構造は、陽極、発光層、陰極の順番でも、陰極、発光層、陽極の順番でもよい。またカラー表示のために、R,G,Bの個別の発光層を用いる方法、白色発光層を形成し、R,G,Bのカラーフィルタにより画素を区別する方法、発光層を形成し、色変換層にて色を変換してその後カラーフィルタにより画素を区別する方法が適用できる。駆動回路はTFT駆動回路だけでなく、MIM(Metal Insulator Metal)駆動回路、MIS(Metal Insulator Semiconductor)駆動回路、SIT(Static Induction Transistor)駆動回路等でもよい。駆動回路はSi等を使用する無機半導体だけでなく、有機半導体にて構成してもよい。
【0059】
エージング方法は、RGB(又はRBGW)毎に適した条件にて行っても良く、RGB(又はRGBW)を共通の条件にて行ってもよい。RGB(又はRGBW)の画素毎に個別にエージングを行ってもよい。
【0060】
昇温抑制手段として、パネルのヒートシンクへの保持方法は、パネルを垂直に立てるだけでなく、水平でも傾斜して保持しても構わない。パネルのヒートシンクへの密着方法は、パネルの端部を機械的に押さえる方法、真空吸引にて密着させる方法、パネルの両面からヒートシンクにて押さえ込む方法(両面から放熱可能)等が可能である。ヒートシンクの熱抵抗及び形状は、本実施例に限定することなく、強制的にOLEDの昇温を抑制する放熱特性があればよい。周囲温度を低温にするには、OLED全体を冷蔵庫、冷凍庫、水冷庫などの低温槽内に設置すればよい。また強制空冷ファンは、単独で用いてもよいが、上記ヒートシンクや低温槽と併用することで効果が上がる。
【0061】
エージングを行う際の輝度(輝度に対応する電流)は、本実施例の400〜2500cd/m2に限定する必要はない。パネル温度がOLEDを構成する有機化合物のTg未満であれば、2500cd/m2以上でも、更に10000cd/m2以上とすることもできる。エージングを終了する目安は、本実施例の輝度5%減に限定するものではなく、所望の値までの輝度減少や所望の値までの色度変化等の、他の特性の変化も含めて総合的に判断して決定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による有機発光ディスプレイ(OLED)の一実施形態を示す概略断面図。
【図2】本発明による有機発光ディスプレイの他の実施形態を示す概略断面図。
【図3】本実施例の有機発光ディスプレイを用いた有機発光ディスプレイパネルの概要を示す図。
【図4】本実施例の有機発光ディスプレイを用いた有機発光ディスプレイ装置の全体構成を示す図。
【図5】本発明による有機発光ディスプレイのエージング方法の一実施例を示す図。
【図6】本発明による有機発光ディスプレイのエージング方法の他の実施例を示す図。
【図7】本発明による有機発光ディスプレイのエージング方法の更に他の実施例を示す図。
【図8】各実施例におけるパネル温度の上昇を測定した結果を示す図。
【図9】各実施例におけるパネル温度の上昇を測定した結果を示す図。
【図10】各実施例においてエージング時間に対する相対輝度の変化を示す図。
【図11】各実施例においてエージング条件と輝度変化の結果を示す図。
【図12】各実施例においてエージング時間に対する相対輝度の変化を示す図。
【図13】各実施例においてエージング条件と輝度変化の結果を示す図。
【図14】エージング処理後の各OLEDについて、点灯時間に対する輝度の変化を示す図。
【符号の説明】
【0063】
1…アルミニウム基板、3…TFT駆動回路、5…陽極(反射電極)、6…正孔注入層、8…有機発光層、9…電子輸送層、10…電子注入層、11…陰極(透明電極)、13…OLED素子、14…溝、15…直流電圧、20…ガラス基板、21…陽極(透明電極)、22…陰極(反射電極)、30…OLEDパネル、31…走査線、32…データ線、40…ヒートシンク、41…強制空冷ファン、42…OLEDパネル、43…FPC、44…コネクタ、45…エージング駆動回路及び電源、46…冷蔵庫。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物からなる発光層に電界を印加し光を放出させる有機発光ディスプレイ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ディスプレイ(以下、OLED(Organic Light Emitting Diode)と呼ぶ)は、ガラス、プラスチック、有機フィルム及び金属等の基板上に、陽極、有機発光層及び陰極等を順次形成し、これに直流電流を印加して発光させ、マルチカラー表示またはフルカラー表示を可能にする素子である。光を取り出す構造として、基板側から光を取り出すボトムエミッション型と、基板と反対側から光を取り出すトップエミッション型がある。トップエミッション型は、基板内にTFT(Thin Film Transistor)等を含む駆動回路及び演算回路等を形成できるので多機能な素子を実現でき、また、OLED素子から発光する光がTFT等を含む駆動回路等により遮られることがないため、ボトムエミッション型より開口率を高めることができるという利点がある。
【0003】
OLEDには駆動時間とともに発光輝度が低下するという性質を有するため、いわゆるエージング処理が必要である。エージング処理は、OLEDの輝度・色度の初期劣化を行い、その後の使用時の経時変化を安定化させ、しいては輝度半減寿命の向上及び焼き付きの低減を図るものである。また、OLEDを形成する多層膜の欠陥を早期に発見して不良品を選別したり、短絡箇所に対してはこれを破壊して絶縁状態に変化させて無駄な電流が流れないように改質したりする作用もある。
【0004】
OLEDに対するエージング方法が多々提案されている。例えば特許文献1には、駆動時の電流密度の5〜1000倍の電流密度でエージングすることとし、0.01〜1A/cm2の電流密度でエージングすることを提案している。また、特許文献2には、封止層形成前に有機EL素子に電界を印加するとともにガラス転移点Tg以下の温度で加熱処理を施し、発光時間が12hrから100hrであるエージングを行うことを提案している。
【0005】
【特許文献1】特開平8−185979号公報
【特許文献2】特開2003−264073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
OELDはエージング処理を行わないで点灯すると、輝度の経過変化は初期点灯時の輝度低下が大きく、その後緩やかになる傾向を示す。初期輝度低下のメカニズムは、次の3要因が考えられる。
(1)発光領域の抵抗不均一(密度や膜厚の不均一)により低抵抗領域に多くの電流が流れ、その領域にてTg以上の発熱が生じ有機化合物が不可逆物理化学変化を起こし劣化する。
(2)点灯により積層界面において電子・正孔に対するポテンシャルが変化し、電荷輸送効率が低下する。
(3)点灯により有機化合物内の分子分極が変化し、再結合確率が低下する。
【0007】
要因(1)は製造不良の初期故障に相当するものでアニール処理が有効の場合がある。しかし(2),(3)は、要因が電子・正孔の伝導による有機化合物の変化であるから、単にアニール処理することでは解決できるものではなく、電流を過剰に流し込み、早期に初期変化を終了させることが有効と考える。
【0008】
早期にエージングを終了させることは生産技術の面からも重要である。すなわち、初期故障を早期に発生させて選別でき、また製造時間の短縮を図ることができるからである。
【0009】
しかしOLEDを構成する有機化合物の中には、ガラス転移温度Tgが80℃〜100℃と低温であるものが多い。もしこれらの材料が電流の印加によりTg以上に昇温された場合には、有機化合物層内に微結晶が形成され、その結果特性劣化を生じさせることになる。つまりOLEDの初期安定化を図るエージングにおいて、短時間で大電流を印加させることと、有機化合物の発熱をTg未満に抑えることは互いに相反し、両立させることが困難であった。
【0010】
前記特許文献1,2においては、この要請については何ら考慮されていない。特許文献1では、大電流(駆動時の電流密度の5〜1000倍)でエージングを行うものであるが、その上限値は、素子の局所的な融解等により致命的な損傷が起こる場合を限界としたもので、Tgを超える発熱を許容するものである。また特許文献2では、短時間で大電流を印加することについては触れていない。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、特性劣化を生じさせることなく短時間のエージング処理が可能な有機発光ディスプレイ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、基板面上に、駆動回路、陽極、有機発光層、陰極を積層してなる有機発光ディスプレイにおいて、陽極と陰極の間にエージングのための電流を印加する際、有機発光ディスプレイの昇温を抑制するヒートシンク部材を取り付けるために、有機発光ディスプレイの少なくとも1つの外周面を平坦形状とした。
【0013】
また本発明は、基板面上に、駆動回路、陽極、有機発光層、陰極を積層してなる有機発光ディスプレイの製造方法において、有機発光ディスプレイにはその昇温を抑制する昇温抑制手段を設け、陽極と陰極の間に電流を印加し、通常動作時の輝度より大きな輝度に設定して有機発光層を発光させてエージング処理を行う。
【0014】
昇温抑制手段として、有機発光ディスプレイの少なくとも1つの外周面に熱抵抗の小さいヒートシンク部材を取り付ける。または、昇温抑制手段として、有機発光ディスプレイを低温槽内に設置する。そして、昇温抑制手段により、エージング処理時の有機発光ディスプレイの昇温を有機発光ディスプレイを構成する部材のガラス転移温度未満に抑制する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特性劣化を生じさせることなく短時間で効果的なエージング処理が可能な有機発光ディスプレイ及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明による有機発光ディスプレイ(OLED)の一実施形態を示す概略断面図である。ここでは、トップエミッション型OLEDの1画素の概略構造を示す。全体の構成は、アルミニウム基板1上に絶縁膜2を形成し、その上にTFT駆動回路3を形成し、平坦化層4にて平坦化を図り、平坦化層4の上にOLED素子13を形成する。OLED素子13は、基板側から順に、陽極(反射電極)5、正孔注入層6、正孔輸送層7、有機発光層8、電子輸送層9、電子注入層10及び陰極(透明電極)11を積層する。TFT駆動回路3により陽極5と陰極11に直流電圧15を印加し、電流を注入して発光層8より発光させる。発光された光16は、透明電極である陰極11を透過して外部へ放射する。陽極5は反射電極であり、発光層8から到来した光を反射して陰極側へ戻す。
【0018】
正孔輸送層7は、陽極5からの正孔を輸送し、陰極11から輸送されてきた電子をブロックする。電子輸送層9は、陰極11からの電子を輸送し、陽極5から輸送されてきた正孔をブロックする。いわゆる、ダブルヘテロ構造となっている。陰極11から注入された電子と陽極5から注入された正孔は、発光層8にて再結合して励起子を形成し、この励起子が放射失活する過程で光を発生する。
【0019】
以下、各部分の構成を詳細に説明する。
【0020】
厚さ約1mmのアルミニウム基板1を基材とし、陽極酸化により厚さ約100nmのAl2O3絶縁層2を形成する。アルミニウム基板1と絶縁層2をもって基板12とする。アルミニウム基板1の下面には、OLEDの放熱を行うために、深さが約0.3mmの櫛歯状の溝14を形成している。そして下面全体は、後述するエージング工程にてヒートシンク部材を取り付け可能とするため突部のない平坦面とした。絶縁層2を形成後、TFT駆動回路3及び平坦化膜4を形成する。
【0021】
平坦化膜4の上にはOLED素子13として、順次、陽極(反射電極)5としてアルミニウムを100nm厚、正孔注入層6としてアリールアミンを50nm厚、正孔輸送層7としてα―ナフチルフェニルジアミンを50nm厚、発光層8としてトリスアルミニウムを80nm厚、電子輸送層9としてアルミニウムキノリノール錯体を50nm厚、電子注入層10としてLiFを10nm厚、陰極(透明電極)11としてITO(Indium Tin Oxide)を120nm厚、を形成した。ITOはレーザーアブレーション法にて形成し、その他は真空蒸着法にて形成した。その後は、図1では省略しているが、紫外線硬化性エポキシ樹脂にて封止した。
【0022】
基板1としては、アルミニウムの他、ソーダガラス、石英、サファイア、アルミニウム合金等の無機材料や、プラスチックとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンー2、6―ナフタレート、ポリカーボネイト、ポリサリフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂を用いてもよい。
【0023】
陽極5には、仕事関数の小さいMg,In,Agの単層金属、またはAl−Mg,Ag−Mg,Al−Li,Mg−Ag等の合金を用いてもよい。
【0024】
正孔輸送層7は、芳香族三級アミン誘導体、フタロシアニン誘導体等がある。また、上記材料の単層構造でもよいし、複層構造であってもよい。
【0025】
発光層8は、発光材料及び必要により添加するドーピング材料からなる。ドーピング材料は、発光層8からの発光効率を向上させ、発光色を変化させる場合に発光層中に添加する材料である。発光材料及びドーピング材料としては、アルミニウムキノリノール錯体、ルブレン、キナクリドン、希土類錯体、イリジウム錯体、アントラセン類、各種蛍光色素等を用いることができる。
【0026】
電子輸送層9は、陰極22から効率良く電子が注入された電子を輸送する能力をもち、発光層に対して優れた電子注入効果を有する。材料としては、アルミニウムキノリノール錯体、トリアゾール錯体等がある。
【0027】
電子注入層10は、陰極22から効率良く電子を注入しやすくする能力をもち、また電子輸送層9への電子の注入を効率的に行う。材料としては、リチウムなどのアルカリ金属、フッ化リチウム、酸化リチウム、リチウム錯体等がある。
【0028】
陰極11には、ITOやSnO2等の透明導電性材料を用いるが、電気抵抗値は素子の消費電力や発熱を低減するため低抵抗にする。
【0029】
図2は、本発明による有機発光ディスプレイ(OLED)の他の実施形態を示す概略断面図である。ここでは、ボトムエミッション型OLEDの1画素の概略構造を示す。全体構成は、ガラス基板20上に、OLED素子13として、透明電極である陽極21、有機化合物からなる正孔輸送層7、有機化合物からなる発光層8、有機化合物からなる電子輸送層9、電子注入層10及び金属電極である陰極22とを順次積層している。更には発光効率を向上させるため、陽極21と正孔輸送層7との間に正孔注入層を設けてもよい。ガラス基板20上には、発光領域とは別にOLEDを駆動するTFT駆動回路3を形成している。TFT駆動回路3により陽極21と陰極22に直流電圧15を印加し、電流を注入して発光層8より発光させる。発光層8からの光16は、陽極21とガラス基板20を透過し外部に放射される。発光層8から陰極側へ放射された光は、金属陰極22より反射されて、外部へ効率良く放射される。
【0030】
図3は、本実施例の有機発光ディスプレイを用いた有機発光ディスプレイパネルの概要を示す図である。ここでは、複数画素(9個)分のトップエミッション型OLED素子を配列し、アクティブマトリックス方式で駆動する場合を示す。図3には明示していないが、OLEDパネル30の最背面全体にアルミニウム基板1と絶縁膜2を配置し、その前面に向かって順に、各TFT駆動回路3、陽極(反射電極)5、有機発光層8、陰極(透明電極)11を配置する。各素子において、駆動回路3は発光層8の発光領域と重なる位置に配置することができるので、パネル表面の発光領域を有効に利用できる。
【0031】
パネル30には、水平方向の複数の走査線31と、垂直方向の複数のデータ線32を配置し、これらによりOLED素子(画素領域)を選択する。すなわち、走査線31に供給する走査線信号と、データ線32に供給するデータ線信号により、交差する駆動回路3を選択する。選択された駆動回路3は、素子内の陽極5と陰極11との間に直流電圧を印加し、電流を注入して発光層8より発光させる。また、必要に応じて、電源回路及び電源供給線や制御信号を供給する制御線を付加する。
【0032】
有機発光層8から発した光は、発光層8より背面側に配置された陽極5により反射され、発光層8より前面側に配置された陰極11を透過して外部に放射される。
【0033】
図4は、本実施例の有機発光ディスプレイを用いた有機発光ディスプレイ装置の全体構成を示す図である。有機発光ディスプレイ装置は、アクティブマトリックス駆動のOLEDパネル30と、走査線駆動回路33と、データ線駆動回路34とを備えている。走査線駆動回路33は、パネル30上の水平方向の走査線31に走査線選択信号を供給する。またデータ線駆動回路34は、垂直方向のデータ線32にデータ線選択信号を供給する。更にカラーフィルタを用いて、マルチカラー表示またはフルカラー表示とすることも可能である。
【0034】
また、図示していないが、必要に応じて、電源回路及び電源供給線や制御信号を供給する制御線、電源制御回路、電源電圧供給回路、制御信号駆動回路等を付加する。
【0035】
次に、上記のような有機発光ディスプレイ(OLED)の製造方法について説明する。本発明の有機発光ディスプレイの製造方法では、OLEDのエージング処理において、大電流を短時間に印加するものである。その際、印加電流による昇温をOLEDを構成する有機化合物のガラス転移点Tg未満に抑えるため、以下に示すような昇温抑制手段を採用している。
【0036】
OLEDの構成は、基板の上に、駆動回路、陽極、発光層、陰極を積層してなり、前記陽極と前記陰極の間に電流を印加するエージングにおいて、強制的にOLEDの昇温を抑制する手段を設けるようにした。OLEDを構成する有機化合物は非晶質構造の有機半導体であり、抵抗率が108Ωcm〜1016Ωcmと高抵抗であるが、その温度特性はSi等の無機半導体より急峻である。すなわち、OLED内の発熱により発熱部の抵抗が急激に下がる。強制的にOLEDの昇温を抑制する手段を設けるエージングでは、OLEDの一部領域に短絡部がある場合に、短絡部へ集中的に電流が流れ局所的に発熱することにより更に抵抗が下がり電流が増加し破壊により絶縁化する。短絡部のない通常の領域では、温度の上昇が少ないために抵抗の低下は少ない。したがって、短時間に短絡部の有無の選別が可能であり、エージング電流として大電流を流すことが可能となる。
【実施例1】
【0037】
図5は、本発明による有機発光ディスプレイのエージング方法の一実施例を示す図である。図1に示したトップエミッション型構造のOLEDパネル42を、その基板面をヒートシンク40に密着するように配置し、ヒートシンク40によりOLEDのエージング時の昇温を抑制する方式である。エージングは、パネル42の端子をFPC43にてコネクタ44に接続し、エージング駆動回路及び電源45からコネクタ44を通してOLEDに電流を印加し、常温(例えば周囲温度25℃)環境で点灯させる。印加する電流は、所定の輝度が得られる値に設定する。
【0038】
ヒートシンク40の材料は、熱抵抗の値が小さいほど放熱効果は高く、例えばアルミニウム材(熱抵抗0.2(deg/W))が適する。またヒートシンク40はOLEDとの密着を良好とするため、接触面は突起のない平坦面とする。密着方法としては、機械的にパネルの一部をヒートシンクに押さえ込む方法、真空吸引にて、パネルをヒートシンクに密着させる方法等がある。また、接触面にサーマルグリースを薄く塗ることで、熱伝導が良好になる。
【実施例2】
【0039】
図6は、本発明による有機発光ディスプレイのエージング方法の他の実施例を示す図である。本実施例では、前記図5のヒートシンク40を取り付けるとともに、強制空冷ファン41との併用によりOLEDの昇温を更に抑制する方式である。
【実施例3】
【0040】
図7は、本発明による有機発光ディスプレイのエージング方法の更に他の実施例を示す図である。本実施例においては、前記図5のヒートシンク40を取り付けるとともに、周囲温度を低温環境とするため冷蔵庫46内に設置した。パネル端子とコネクタ44とをFPC43にて接続し、エージング駆動回路及び電源45からコネクタ44を通してOLEDに所定の電流を印加し、点灯させた。冷蔵庫46内の温度は、3℃と−10℃の2種類にて行った。本実施例では、周囲温度を下げることで更にOLEDの昇温を抑制する。
【0041】
図8と図9は、上記実施例におけるパネル温度の上昇を測定した結果を示す図である。横軸は、エージング時の輝度の値(初期値)を示す。縦軸は各輝度に対するパネル温度を示す。パネル温度は電流印加後暫くの間上昇するので、これが安定した時点(約1〜2hr経過後)での値である。TgはOLEDを構成する有機化合物のガラス転移点で、本実施例の場合は約100℃である。
【0042】
図8において、(a)はヒートシンクを取り付けない従来の場合、(b)は、実施例1(図5)のようにヒートシンクを取り付けた場合、(c)は、実施例2(図6)のようにヒートシンクとともに強制空冷を併用した場合である。
【0043】
(a)のヒートシンクを取り付けない従来の場合は、輝度の増加に伴いパネル温度が上昇し、高輝度領域(輝度>600cd/m2)では100℃以上となる。この温度はOLEDのガラス転移点Tgを超える温度であり、有機化合物の結晶化及び凝集により特性劣化を引き起こす。その結果、設定した輝度(>600cd/m2)を維持できずに、点灯中に輝度が低下していく。
【0044】
これに対し(b)のヒートシンクを取り付けた場合は、輝度を1000cd/m2に上げてもパネル温度は約70℃である。これはOLEDのTg未満の温度であり、特性劣化なしで充分に点灯可能である。更に(c)のヒートシンク取り付けと強制空冷を併用した場合には、輝度1000cd/m2におけるパネル温度は約60℃まで下がる。この場合もTg未満の温度であり、特性劣化なしで充分に点灯可能である。
【0045】
なお(a)のヒートシンクがない場合には、パネル温度がTg(100℃)未満となる条件で、エージングすることも考えられる。例えば、輝度400cd/m2の条件に印加電流を抑える。しかしその場合には、輝度を下げた分長いエージング時間を必要とする。これに対し本実施例では、(b)ヒートシンクや(c)強制空冷の併用による冷却作用の結果、高輝度1000cd/m2となる大電流を印加することが可能となる。その分、エージングに必要な時間が短くなり効率的である。エージングの効果は輝度と時間の積で決まるとすれば、(a)のヒートシンクなしで輝度400cd/m2でエージングする場合に対し、(b)のヒートシンクの取り付けや、(c)のヒートシンクと強制空冷を併用して、輝度1000cd/m2でエージングする場合は、処理時間は約1/2.5に低減できる。
【0046】
また図9は、(a)は冷却なしの従来の場合、(d)は、実施例3(図7)のようにヒートシンクを取り付け冷蔵庫(3℃)内に設置した場合、(e)は、ヒートシンクを取り付け更に低温の冷蔵庫(−10℃)内に設置した場合である。
【0047】
(d)のヒートシンク取り付け及び冷蔵庫(3℃)内に設置の場合には、輝度1400cd/m2におけるパネル温度は約40℃であり、(e)の冷蔵庫(−10℃)内に設置の場合には、輝度2000cd/m2においてもパネル温度は約35℃である。いずれもOLEDのTg未満の温度であり、特性劣化なしで充分に点灯可能である。そして、(d)では輝度1400cd/m2になる電流を、また(e)では輝度2000cd/m2以上になる電流を印加することが可能となる。その結果、(a)の冷却なしで輝度400cd/m2でエージングする場合に対し、(d)の場合は処理時間が約1/3.5に、(e)の場合は処理時間が約1/5に低減でき、大幅な時間短縮を図ることができる。
【0048】
図10は、各実施例のエージング方法を適用した際の、エージング時間に対する相対輝度の変化を示す図である。また図11は、そのエージング条件と輝度変化の結果を表にまとめたものである。ここでは輝度の初期値を一定600cd/m2に揃えて(すなわち同一駆動電流にて)比較している。
【0049】
条件(1)は従来方法で、ヒートシンクなし、周囲温度25℃、パネル温度100℃である。(2)は実施例2の場合で、ヒートシンク有り、周囲温度25℃、強制空冷あり、パネル温度40℃である。(3)は実施例3の場合で、ヒートシンク有り、周囲温度3℃(冷蔵庫内に設置)、パネル温度20℃である。(4)は実施例3の場合で、ヒートシンク有り、周囲温度−10℃(冷蔵庫内に設置)、パネル温度0℃である。
【0050】
条件(1)ではパネル温度が約100℃であるため、OLEDのガラス転移点Tgに到達し、エージング時間とともに輝度低下が著しい。これは、OLED内の有機化合物の結晶化が生じたためと推定される。一方、条件(2)(3)(4)では、パネル温度は0℃〜40℃の間で相違するが、輝度変化は緩やかでほぼ一致している。すなわち、輝度の初期値が一定で、パネル温度がTg未満であれば、輝度変化はパネル温度にほとんど依存しない。
【0051】
エージング時間とともに輝度が緩やかに低下することは、エージング作用の発生を意味する。そして、輝度が初期値から所定量減少する時点を、エージング処理終了点とする。輝度の減少量を大きくとれば特性はより安定となるが、エージング処理時間が長くなる。輝度減少量は適宜決定すればよいが、本実施例では、輝度が5%減少する点をエージング終了点とする。条件(1)ではOLEDの特性劣化を生じているのでエージング効果は期待できない。条件(2)(3)(4)では約40hrにて輝度が5%減少しエージング処理の終了点とする。
【0052】
図12は、各実施例の輝度の初期値を変えてエージング方法を適用した際の、エージング時間に対する相対輝度の変化を示す図である。ここでは各実施例のパネル温度差が少なくなるよう輝度の初期値を設定した。また図13は、そのエージング条件と輝度変化の結果を表にまとめたものである。
【0053】
条件(5)は従来方法で、ヒートシンクなし、周囲温度25℃、初期輝度400cd/m2とし、パネル温度70℃である。(6)は実施例2の場合で、ヒートシンク有り、周囲温度25℃、強制空冷あり、初期輝度1000cd/m2とし、パネル温度60℃である。(7)は実施例3の場合で、ヒートシンク有り、周囲温度3℃(冷蔵庫内に設置)、初期輝度1400cd/m2とし、パネル温度40℃である。(8)は実施例3の場合で、ヒートシンク有り、周囲温度−10℃(冷蔵庫内に設置)、初期輝度2500cd/m2とし、パネル温度45℃である。
【0054】
条件(5)においては、パネル温度をTg未満にするためには、初期輝度を400cd/m2程度まで下げなければならない。条件(6)(7)(8)では、初期輝度1000〜2500cd/m2においてもパネル温度は40℃〜60℃であり、Tg未満とすることが可能である。輝度が初期値から5%減少するまでのエージング時間は、従来の(5)では50hrであるが、昇温抑制手段を用いる(6)では20hr、(7)では14hr、(8)では8hr、と短時間でエージングを終了することが可能となる。その結果、(8)でのエージング時間は、(5)のエージング時間の約1/6.3まで短縮可能である。
【0055】
すなわち、強制的にOLEDの昇温を抑制する手段にてパネル温度をTg未満を維持し、高輝度(大電流)にて点灯すれば、エージング処理を短時間に終了することが可能となる。
【0056】
図14は、エージング処理後の各OLEDについて、点灯時間に対する輝度の変化を測定した結果を示す図である。ここでは、前記した図12、図13の条件(5)〜(8)で輝度が5%減少するまでエージングを行った各OLEDについて、初期輝度200cd/m2にて、常温で(強制的な昇温抑制手段なし)点灯させた。点灯時間に対する輝度変化は小さく、エージングの効果(輝度特性の安定化)が認められる。そして、各OLEDの差はわずか(1%程度)であり、エージング方法による効果の差は少ないと認められる。
【0057】
これより、強制的にOLEDの昇温を抑制する手段を用いて、パネル温度をTg未満としながら高輝度(大電流)にてエージング処理を行えば、短時間でエージング処理を行うことができ、製造工程の時間短縮に有効である。
【0058】
以上OLEDの構造やエージング方法について具体的に述べたが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。すなわちOLEDの構造は、トップエミッション型でもボトムエミッション型でもよい。基板材料は、ガラス基板、プラスチック基板、アルミニウム以外の他の金属基板でもよい。有機化合物は、低分子系有機化合物でも高分子系有機化合物でもよい。OLEDの積層構造は、陽極、発光層、陰極の順番でも、陰極、発光層、陽極の順番でもよい。またカラー表示のために、R,G,Bの個別の発光層を用いる方法、白色発光層を形成し、R,G,Bのカラーフィルタにより画素を区別する方法、発光層を形成し、色変換層にて色を変換してその後カラーフィルタにより画素を区別する方法が適用できる。駆動回路はTFT駆動回路だけでなく、MIM(Metal Insulator Metal)駆動回路、MIS(Metal Insulator Semiconductor)駆動回路、SIT(Static Induction Transistor)駆動回路等でもよい。駆動回路はSi等を使用する無機半導体だけでなく、有機半導体にて構成してもよい。
【0059】
エージング方法は、RGB(又はRBGW)毎に適した条件にて行っても良く、RGB(又はRGBW)を共通の条件にて行ってもよい。RGB(又はRGBW)の画素毎に個別にエージングを行ってもよい。
【0060】
昇温抑制手段として、パネルのヒートシンクへの保持方法は、パネルを垂直に立てるだけでなく、水平でも傾斜して保持しても構わない。パネルのヒートシンクへの密着方法は、パネルの端部を機械的に押さえる方法、真空吸引にて密着させる方法、パネルの両面からヒートシンクにて押さえ込む方法(両面から放熱可能)等が可能である。ヒートシンクの熱抵抗及び形状は、本実施例に限定することなく、強制的にOLEDの昇温を抑制する放熱特性があればよい。周囲温度を低温にするには、OLED全体を冷蔵庫、冷凍庫、水冷庫などの低温槽内に設置すればよい。また強制空冷ファンは、単独で用いてもよいが、上記ヒートシンクや低温槽と併用することで効果が上がる。
【0061】
エージングを行う際の輝度(輝度に対応する電流)は、本実施例の400〜2500cd/m2に限定する必要はない。パネル温度がOLEDを構成する有機化合物のTg未満であれば、2500cd/m2以上でも、更に10000cd/m2以上とすることもできる。エージングを終了する目安は、本実施例の輝度5%減に限定するものではなく、所望の値までの輝度減少や所望の値までの色度変化等の、他の特性の変化も含めて総合的に判断して決定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による有機発光ディスプレイ(OLED)の一実施形態を示す概略断面図。
【図2】本発明による有機発光ディスプレイの他の実施形態を示す概略断面図。
【図3】本実施例の有機発光ディスプレイを用いた有機発光ディスプレイパネルの概要を示す図。
【図4】本実施例の有機発光ディスプレイを用いた有機発光ディスプレイ装置の全体構成を示す図。
【図5】本発明による有機発光ディスプレイのエージング方法の一実施例を示す図。
【図6】本発明による有機発光ディスプレイのエージング方法の他の実施例を示す図。
【図7】本発明による有機発光ディスプレイのエージング方法の更に他の実施例を示す図。
【図8】各実施例におけるパネル温度の上昇を測定した結果を示す図。
【図9】各実施例におけるパネル温度の上昇を測定した結果を示す図。
【図10】各実施例においてエージング時間に対する相対輝度の変化を示す図。
【図11】各実施例においてエージング条件と輝度変化の結果を示す図。
【図12】各実施例においてエージング時間に対する相対輝度の変化を示す図。
【図13】各実施例においてエージング条件と輝度変化の結果を示す図。
【図14】エージング処理後の各OLEDについて、点灯時間に対する輝度の変化を示す図。
【符号の説明】
【0063】
1…アルミニウム基板、3…TFT駆動回路、5…陽極(反射電極)、6…正孔注入層、8…有機発光層、9…電子輸送層、10…電子注入層、11…陰極(透明電極)、13…OLED素子、14…溝、15…直流電圧、20…ガラス基板、21…陽極(透明電極)、22…陰極(反射電極)、30…OLEDパネル、31…走査線、32…データ線、40…ヒートシンク、41…強制空冷ファン、42…OLEDパネル、43…FPC、44…コネクタ、45…エージング駆動回路及び電源、46…冷蔵庫。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板面上に、駆動回路、陽極、有機発光層、陰極を積層してなる有機発光ディスプレイにおいて、
上記陽極と上記陰極の間にエージングのための電流を印加する際、当該有機発光ディスプレイの昇温を抑制するヒートシンク部材を取り付けるために、上記有機発光ディスプレイの少なくとも1つの外周面を平坦形状としたことを特徴とする有機発光ディスプレイ。
【請求項2】
基板面上に、駆動回路、陽極、有機発光層、陰極を積層してなる有機発光ディスプレイの製造方法において、
上記有機発光ディスプレイにはその昇温を抑制する昇温抑制手段を設け、
上記陽極と上記陰極の間に電流を印加し、通常動作時の輝度より大きな輝度に設定して上記有機発光層を発光させてエージング処理を行うことを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の有機発光ディスプレイの製造方法において、
前記昇温抑制手段として、当該有機発光ディスプレイの少なくとも1つの外周面に熱抵抗の小さいヒートシンク部材を取り付けて、エージング処理時の昇温を抑制することを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項4】
請求項2記載の有機発光ディスプレイの製造方法において、
前記昇温抑制手段として、当該有機発光ディスプレイを低温槽内に設置し、エージング処理時の昇温を抑制することを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の有機発光ディスプレイの製造方法において、
前記昇温抑制手段として更に強制空冷ファンを設け、空冷によりエージング処理時の昇温を抑制することを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれか1項記載の有機発光ディスプレイの製造方法において、
前記昇温抑制手段により、エージング処理時の当該有機発光ディスプレイの昇温を、有機発光ディスプレイを構成する部材のガラス転移温度未満に抑制することを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれか1項記載の有機発光ディスプレイの製造方法において、
前記エージング処理により上記有機発光層の発光する輝度が初期設定値よりも所定量だけ低下した時点で該エージング処理を終了することを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項1】
基板面上に、駆動回路、陽極、有機発光層、陰極を積層してなる有機発光ディスプレイにおいて、
上記陽極と上記陰極の間にエージングのための電流を印加する際、当該有機発光ディスプレイの昇温を抑制するヒートシンク部材を取り付けるために、上記有機発光ディスプレイの少なくとも1つの外周面を平坦形状としたことを特徴とする有機発光ディスプレイ。
【請求項2】
基板面上に、駆動回路、陽極、有機発光層、陰極を積層してなる有機発光ディスプレイの製造方法において、
上記有機発光ディスプレイにはその昇温を抑制する昇温抑制手段を設け、
上記陽極と上記陰極の間に電流を印加し、通常動作時の輝度より大きな輝度に設定して上記有機発光層を発光させてエージング処理を行うことを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の有機発光ディスプレイの製造方法において、
前記昇温抑制手段として、当該有機発光ディスプレイの少なくとも1つの外周面に熱抵抗の小さいヒートシンク部材を取り付けて、エージング処理時の昇温を抑制することを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項4】
請求項2記載の有機発光ディスプレイの製造方法において、
前記昇温抑制手段として、当該有機発光ディスプレイを低温槽内に設置し、エージング処理時の昇温を抑制することを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の有機発光ディスプレイの製造方法において、
前記昇温抑制手段として更に強制空冷ファンを設け、空冷によりエージング処理時の昇温を抑制することを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれか1項記載の有機発光ディスプレイの製造方法において、
前記昇温抑制手段により、エージング処理時の当該有機発光ディスプレイの昇温を、有機発光ディスプレイを構成する部材のガラス転移温度未満に抑制することを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれか1項記載の有機発光ディスプレイの製造方法において、
前記エージング処理により上記有機発光層の発光する輝度が初期設定値よりも所定量だけ低下した時点で該エージング処理を終了することを特徴とする有機発光ディスプレイの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−128663(P2007−128663A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317989(P2005−317989)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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