説明

有機発光層材料,有機発光層材料を用いた有機発光層形成用塗布液,有機発光層形成用塗布液を用いた有機発光素子および有機発光素子を用いた光源装置

【課題】ドーパント量の制御を容易に行いながら白色発光が得られる有機発光素子を提供する。
【解決手段】第一の電極(12)と、第二の電極(11)と、第一の電極と第二の電極との間に配置された発光層(3)とを有する有機発光素子であって発光層はホスト材料(4),赤色ドーパント材料(5),緑色ドーパント材料(6)及び青色ドーパント材料(7)を含み、赤色ドーパントは第一の電極側へ移動するための第一の機能性基を有し、緑色ドーパントは第二の電極へ引き寄せられるための第二の機能性基を有する有機発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光層材料,有機発光層材料を用いた有機発光層形成用塗布液,有機発光層形成用塗布液を用いた有機発光素子および有機発光素子を用いた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機LEDの製造方法は真空蒸着法と塗布法に大別される。そのうち、塗布法は大面積の成膜が容易、材料の利用効率が高いなどの利点がある。塗布法を用いるためには有機LEDの層数を少なくする必要があり、発光層を単層にすることが求められている。
【0003】
これまでに単層の発光層を有する有機白色発光素子としては、電極間に、少なくとも(a)ポリマーと(b)発光中心形成化合物とを含有する組成物よりなる単層発光層を挿入した有機EL素子であって、前記組成物中には電子輸送性のものとホール輸送性のものがバランスよく包含されており、前記ポリマーはそれ自体の発光色が青色またはそれよりも短波長を示すものであり、前記発光中心形成化合物はその2種以上が前記ポリマー中に分子分散した状態で存在しており、それぞれの発光中心形成化合物はそれぞれ単独で発光し、有機EL素子全体としての発色光は白色光に見えるように前記発光中心形成化合物を2種以上組合せて使用していることを特徴とする単層型白色発光有機EL素子が特許文献1にて報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−63770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の有機発光素子では赤色ドーパント,緑色ドーパント及び青色ドーパントが相分離せず、ドーパント量の制御を容易に行いつつ、白色発光することが難しいという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、ドーパント量の制御を容易に行える有機発光層材料,有機発光層材料を用いた有機発光層形成用塗布液,有機発光層形成用塗布液を用いた有機発光素子および有機発光素子を用いた光源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の特徴は、第一の電極と、第二の電極と、第一の電極と第二の電極との間に配置された発光層とを有する有機発光素子であって、発光層はホスト材料,赤色ドーパント及び青色ドーパントを含み、赤色ドーパントは前記第一の電極側へ移動するための第一の機能性基を有する有機発光素子である。
【0008】
また、本発明の特徴は、上記有機発光素子に用いられる発光層形成用塗液であって、発光層形成用塗液は、溶媒,ホスト材料,赤色ドーパント及び青色ドーパントを含む発光層形成用塗液である。
【0009】
また、本発明の特徴は、上記有機発光素子に用いられる発光層形成用材料であって、発光層形成用材料は、ホスト材料,赤色ドーパント,青色ドーパント及び緑色ドーパントを含む発光層形成用材料である。
【0010】
また、本発明の特徴は、上記有機発光素子を備える光源装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ドーパント量の制御を容易に行いながら、白色発光が得られる有機発光層材料,有機発光層材料を用いた有機発光層形成用塗布液,有機発光層形成用塗布液を用いた有機発光素子および有機発光素子を用いた光源装置を提供できる。上記した以外の課題,構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】白色発光素子中の各材料のエネルギーダイアグラムである。
【図2】本発明における有機発光素子の一実施の形態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面等により本発明を詳細に説明する。
【0014】
従来の塗布法で作製した有機発光素子では、緑色ドーパント濃度が0.02モル%、赤色ドーパント濃度が0.02モル%および0.015モル%と非常に低く、ドーパントの濃度制御が難しくなる。また、各ドーパント間のエネルギー移動、発光領域でのキャリア閉じ込めが不十分であることなどのため、十分な発光効率を得られていない。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係る有機白色発光素子の断面図である。この有機白色発光素子は、第一の電極としての上部電極12と、第二の電極としての下部電極11と、有機層13とを有する。図2の下側から下部電極11,有機層13,上部電極12の順に配置されており、図2の有機白色発光素子は下部電極11側から発光層3の発光を取り出すボトムエミッション型である。ここで、下部電極11は陽極となる透明電極、上部電極12は陰極となる反射電極である。有機層13は発光層3のみの単層構造、あるいは電子注入層9,電子輸送層8,正孔輸送層2及び正孔注入層1のいずれか一層以上を含む多層構造でも構わない。図1における有機発光素子に駆動回路,筐体などが備えられることで光源装置となる。
【0016】
発光層3はホスト分子及びドーパント分子を含む。ドーパント分子は、赤色ドーパント,緑色ドーパント及び青色ドーパントを含む。発光層3の形成用材料は、ホスト分子,赤色ドーパント,緑色ドーパント及び青色ドーパントを含む。ただし、白色光となるのであれば、発光層3の形成用材料として、ホスト分子,赤色ドーパント及び青色ドーパントを含んだものであっても構わない。発光層3内では各ドーパント材料が各領域に偏って存在しており、擬似的な積層構造を形成している。まず、発光層の構成について説明する。
【0017】
<相分離>
単層の発光層で白色発光させるために赤色ドーパント,緑色ドーパント及び青色ドーパントを混合した場合、周囲に異なる色のドーパントが存在する。励起エネルギーはある確率で隣接する分子へと移動する。例えば、青色ドーパントに隣接して緑色ドーパントまたは赤色ドーパントが存在する場合には、励起エネルギーが青色ドーパントから緑色ドーパントまたは赤色ドーパントの低エネルギー側へと移動してしまい、白色発光が困難となる。そのため、発光層内で自発的に各ドーパントを相分離させ、低エネルギーのドーパントが隣接しないようにすることで、塗布型の白色発光素子においても高効率な白色発光が可能となる。この場合、高いドーパント濃度においても白色発光を得ることができる。自発的に相分離させる方法として、本発明では、適切な機能性基を各発光ドーパントに付加することで実現した。
【0018】
<ホスト材料>
ホスト材料として、カルバゾール誘導体,フルオレン誘導体またはアリールシラン誘導体などを用いることが好ましい。効率の良い発光を得るためには青色ドーパントの励起エネルギーよりも、ホスト材料の励起エネルギーが十分大きいことが好ましい。なお、励起エネルギーは発光スペクトルを用いて測定される。
【0019】
<赤色ドーパント>
赤色ドーパント材料5の主骨格としては、例えばルブレン,(E)−2−(2−(4−(dimethylamino)styryl)−6−methyl−4H−pyran−4−ylidene)malononitrile(DCM)およびその誘導体,イリジウム錯体(Bis(1−phenylisoquinoline)(acetylacetonate)iridium(III)など),オスミウム錯体,ユーロピウム錯体があげられる。中でも発光特性の面で(化1)で示されるイリジウム錯体がより好ましく、さらにアセ
チルアセトナート部位を有するものがより好ましい。式中X1はNを含む芳香族ヘテロ環を表し、X2は芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を表す。
【0020】
【化1】

【0021】
X1で表わされる芳香族ヘテロ環としては、キノリン環,イソキノリン環,ピリジン環,キノキサリン環,チアゾール環,ピリミジン環,ベンゾチアゾール環,オキサゾール環,ベンゾオキサゾール環,インドール環,イソインドール環などがあげられる。X2で表わされる芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環としては、ベンゼン環,ナフタレン環,アントラセン環,チオフェン環,ベンゾチオフェン環,フラン環,ベンゾフラン環,フルオレン環などがあげられる。上部電極が陰極、下部電極が陽極である場合には、赤色ドーパントは発光層上部(表面側)にあることが好ましい。ここで、赤色ドーパントは上部電極側へ移動するための第一の機能性基を有する。これにより、赤色ドーパントは発光層3における上部電極側に偏在,局在化することになる。成膜時に膜表面に移動させるためにアセチルアセトナート部位に付加する第一の機能性基Y1またはY2としては、例えばフルオロアルキル基,パーフルオロアルキル基,アルキル基(ただし、Cの数は10以上とする。),パーフルオロポリエーテル基,シロキシ基(−Si−O−Si−)があげられる。赤色ドーパント材料5はこれらの機能性基を一つでも有していれば良いが、複数種類有していても構わない。これらの基は(化2)および(化3)のように主骨格に直接導入してもよいが、(化4)のようにアミド結合やエステル結合などを介して導入してもかまわない。
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
<緑色ドーパント>
緑色ドーパント材料6の主骨格としては、例えばクマリンおよびその誘導体,イリジウム錯体(Tris(2−phenylpyridine)iridium(III):以下Ir(ppy)3、など)があげられる。上部電極が陰極、下部電極が陽極である場合には、緑色ドーパントは発光層下部にあることが好ましい。ここで、緑色ドーパントは下部電極または正孔輸送層へ引き寄せられるための第二の機能性基を有する。成膜時に下地層に引き寄せるための第二の機能性基は、下地層の種類によって異なる。下地層が正孔輸送層である場合には、正孔輸送層と同様の構造を導入する、例えばフェニルアミノ基,オキサゾール基,カルバゾール基,ヒドラゾン部位があげられる。緑色ドーパント材料6はこれらの機能性基を一つでも有していれば良いが、複数種類有していても構わない。また、下地層がITOや金属といった電極である場合には、例えばヒドロキシ基(−OH),チオール基(−SH),カルボキシル基(−COOH),スルホ基(−SO3H),I,Br,Cl,F,SCN,CN,NH2,NO2,ビピリジル基があげられる。緑色ドーパント材料6はこれらの機能性基を一つでも有していれば良いが、複数種類有していても構わない。これらの基は、(化5)のように主骨格に直接導入してもよいが、分子の大きさを考慮しアルキル鎖などを介して導入してもかまわない。
【0026】
【化5】

【0027】
<青色ドーパント>
青色ドーパント材料7の主骨格としては例えばペリレン,イリジウム錯体(Bis(3,5−difluoro−2−(2−pyridyl)phenyl−(2−carboxypyridyl)iridium(III)):FIrpicなど)があげられる。青色ドーパントには特に機能性基を付加しなくてもよいが、より積極的に相分離をさせるために、下地層と親和性の悪い構造を導入してもよい。
【0028】
<キャリアの閉じ込め>
赤色ドーパント材料5,緑色ドーパント材料6及び青色ドーパント材料7が自発的に相分離し、図1に示す擬似的な積層構造を形成した場合を考える。各ドーパントの配置は各ドーパントの最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)エネルギーから、キャリア伝導を考慮して陽極側から緑/青/赤とした。HOMOエネルギーは光電子分光法よって測定される。また、LUMOエネルギーは、吸収スペクトルからHOMO−LUMOのエネルギー差を求め算出する方法や、逆光電子分光法によって直接測定する方法によって測定される。ホスト材料のHOMOとLUMOとのエネルギー差が大きく、各ドーパントのHOMOおよびLUMOがその間に位置し適当なドーパント濃度である場合、各ドーパントの準位をホッピングすることでキャリア伝導が行われる。青色ドーパント材料7のLUMOエネルギーの絶対値が緑色ドーパント材料6のLUMOエネルギーの絶対値よりも十分大きい場合、青色ドーパント材料7のLUMO上を伝搬してきた電子は、緑色ドーパント材料6のLUMOへのホッピング確率が低くなるため、青色ドーパントへと閉じ込められる。また、青色ドーパント材料7と緑色ドーパント材料6とのHOMOエネルギー差が比較的小さい場合、緑色ドーパント材料6のHOMO上を伝搬してきた正孔は、青色ドーパント材料7のHOMOへのホッピングによって伝搬できる。その結果、伝搬してきたキャリア(電子・正孔)は青色ドーパント材料7上で再結合し、そのまま青色発光するか、励起エネルギーが緑色ドーパント材料6へ移動し緑色発光する。一方、赤色ドーパント材料5と電子注入層9との間で正孔の閉じ込めが可能であり、電子が注入され、再結合することで赤色発光が得られる。そして、青色ドーパント材料7または緑色ドーパント材料6から励起エネルギーが移動した場合でも赤色発光が得られる。
【0029】
このように、本発明では、各ドーパントの近傍にキャリアを閉じ込めることができるため、各色の発光効率が高くなり、その結果高効率の白色発光素子が実現できる。
【0030】
以下、そのほかの要件について説明する。ただし、前述したように正孔注入層1,正孔輸送層2,電子輸送層8,電子注入層9に関しては、無い構成でも構わない。
【0031】
正孔注入層1としてはPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)):PSS(ポリスチレンスルホネート)等の導電性高分子が好ましい。その他にも、ポリピロール系やトリフェニルアミン系のポリマー材料を用いることができる。また、低分子材料系と組合せてよく用いられる、フタロシアニン類化合物やスターバーストアミン系化合物も適用可能である。
【0032】
正孔輸送層2としては、スターバーストアミン系化合物やスチルベン誘導体,ヒドラゾン誘導体,チオフェン誘導体などを用いることができる。また、これらの材料に限られるものではなく、これらの材料を2種以上併用しても差し支えない。
【0033】
電子輸送層8は発光層3に電子を供給する層である。この電子輸送層8の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム(以下、BAlq)や、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、Alq3),オキサジアゾール誘導体,トリアゾール誘導体,フラーレン誘導体,フェナントロリン誘導体,キノリン誘導体などを用いることができる。
【0034】
また、電子注入層9は、陰極から電子輸送層への電子注入効率を向上させるために用いる。具体的には、弗化リチウム,弗化マグネシウム,弗化カルシウム,弗化ストロンチウム,弗化バリウム,酸化マグネシウム,酸化アルミニウムが望ましい。また、もちろんこれらの材料に限られるわけではなく、また、これらの材料を2種以上併用しても差し支えない。
【0035】
下部電極11に用いる陽極材料としては、透明性と高い仕事関数を有する材料であれば用いることができ、ITO,IZOなどの導電性酸化物や、薄いAgなどの仕事関数の大きい金属が適用可能である。電極のパターン形成は、一般的にはガラス等の基板上にホトリソグラフィーなどを用いて行うことができる。
【0036】
上部電極12に用いる陰極材料は、発光層3からの光を反射するための反射電極であり、具体的にはLiFとAlの積層体やMg:Ag合金などが好適に用いられる。また、これらの材料に限定されるものではなく、例えばLiFの代わりとして、Cs化合物,Ba化合物,Ca化合物などを用いることができる。
【0037】
塗液はホスト材料,赤色ドーパント,緑色ドーパント及び青色ドーパントを適切な溶媒に溶解させたものである。緑色ドーパントが存在しない場合、塗液は、溶媒,ホスト材料,赤色ドーパント及び青色ドーパントを有する。ここで用いる溶媒は、例えばトルエンなど芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アルコール類,フッ素系溶媒など各材料が溶解するものであればよい。また、各材料の溶解度や、乾燥速度の調整のために前述の溶媒を複数混合した混合溶媒でもかまわない。例えば、沸点の異なる溶媒を2種類(第一の溶媒及び第二の溶媒)用意し、そのうち高沸点である第二の溶媒を赤色ドーパントに対し貧溶媒とすることで赤色ドーパントの膜表面への移動を促進できる。溶媒の溶解度は液体クロマトグラム法によって測定される。
【0038】
発光層を成膜するための塗布法としては、スピンコート法,キャスト法,ディップコート法,スプレーコート法,スクリーン印刷法,インクジェット印刷法などを挙げることができる。これらの方法のうち一つを用いて、発光層を形成する。
【0039】
ここまでボトムエミッション型の素子構造を例示して説明してきたが、上部電極が陰極、下部電極が陽極であれば、上部電極を透明電極としたトップエミッション型の素子構造でも構わない。
【0040】
以下に具体的な実施例を示して、本願発明の内容をさらに詳細に説明する。以下の実施例は本願発明の内容の具体例を示すものであり、本願発明がこれらの実施例に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。
【0041】
(実施例1)
<例示化合物1の合成>
本発明にかかる第一の実施例である白色発光素子を作るため、始めに本発明の主要な構成部材である構造式(1)に示す赤色ドーパント材料の合成を行った。
【0042】
((化6)の合成)
(化2)および(化3)の合成に必要な中間体である(化6)は下記手順に従って合成した。
【0043】
【化6】

200mlの3口フラスコにフェニルイソキノリン0.718gのエトキシエタノール30ml溶液と塩化イリジウム0.418gの水10ml溶液を入れ混合した。その後窒素雰囲気下、120℃で10h還流し、その後室温まで冷却した。溶液を蒸発乾固し、得られた固形分をアルコールにて洗浄し、(化6)を得た。
【0044】
((化2)の合成)
(化2)は以下の手順に従って合成した。
【0045】
200mlの3口フラスコに中間体A0.959g,2,2−ジメチル−6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−3,5−オクタンジオン0.512g,炭酸ナトリウム0.25g,エトキシエタノール30mlを加え、窒素雰囲気下、115℃で10h還流し、その後室温まで冷却した。溶液を蒸発乾固し、得られた固形分を、水およびヘキサンにて洗浄した。酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒を移動相として、シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、(化2)を得た。(化2)の分子量は質量分析装置によって計測すると897であった。
【0046】
(化2)をジクロロメタンに溶解させ、蛍光スペクトルの評価を行ったところ、ピーク波長が617nmの赤色発光を示した。
【0047】
(化2)とホスト分子としてmCPを用いて、スピンコート法によって混合膜を石英基板上に形成した。溶媒はTHFを用い、固形分の濃度を1wt.%、mCPに対し例示化合物1を10wt.%とした。得られた塗布膜の水に対する接触角測定を行ったところ、92.1°となった。接触角測定はθ/2法,接線法またはカーブフィッティング法によって行われる。参照試料として同時に作製した、mCPおよび(化2)の単独膜の接触角はそれぞれ80.6°,96.7°となった。混合比に対し接触角の変化量が大きいことから、(化2)はmCP中に均一分散しているのではなく、表面により多く分布していると考えられる。
【0048】
((化3)の合成)
(化3)は以下の手順に従って合成した。
【0049】
200mlの3口フラスコに(化6)0.959g,1,1,1,2,2,3,3,7,7,8,8,9,9,9−テトラデカフルオロ−4,6−ノナンジオン0.706g,炭酸ナトリウム0.25g,ブトキシエタノール30mlを加え、窒素雰囲気下、150℃で20h還流し、その後室温まで冷却した。溶液を蒸発乾固し、得られた固形分を、ジクロロメタンに溶解させ濾過したのち、ろ液をジクロロメタン/水で分液,洗浄し、ジクロロメタン溶液を取り出し、蒸発乾固させる。得られた固形分をヘキサンにて洗浄したのち、ジクロロメタンを移動相として、アルミナカラムクロマトグラフィを行い、(化3)を得た。
【0050】
<有機発光素子の作製>
本発明の第一の実施例として図2に示す構造の白色発光素子を作製した。下部電極にはITO電極、正孔注入層にはPEDOTをスピンコート法にて形成した。正孔輸送層にはポリマー系の材料を用いた。有機発光層はホスト材料としてmCP(1,3−ビス(カルバゾル−9−イル)ベンゼン)、青色ドーパントにはイリジウム錯体(Bis(3,5−difluoro−2−(2−pyridyl)phenyl−(2−carboxypyridyl)iridium(III)))、赤色ドーパントには前記合成した(化2)を用いた。それぞれの材料の重量比は100:5:1とした。これらのホスト材料,青色ドーパント材料及び赤色ドーパント材料をTHFに溶解させて塗液を作製した。塗液の固形成分濃度は1wt.%に設定した。塗液における固形成分に対する赤色ドーパントの濃度は0.46モル%であった。赤色ドーパントの濃度は液体クロマトグラフによって計測される。この塗液を用いて、スピンコート法により有機発光層を形成した。続いて電子輸送層としてBAlqおよびAlq3の層を真空蒸着法で形成した。次にLiFとAlの積層体を上部電極として形成し、目的の有機発光素子を作製した。
【0051】
作製した有機発光素子に電圧を印加したところ、赤色ドーパントおよび青色ドーパント双方からの発光がELスペクトルから確認され、白色発光が確認できた。一方、赤色ドーパントにフルオロアルキル基を含まない材料を用い同一条件で有機発光素子を作製したところ、青色発光の強度が低下し、赤色発光の強度が増加することを確認した。
【0052】
(実施例2)
第2の実施例について述べる。発光層を形成するための塗液として、ホスト材料としてmCP、青色ドーパントとしてBis(3,5−difluoro−2−(2−pyridyl)phenyl−(2−carboxypyridyl)iridium(III))、赤色ドーパントとして(化2)、緑色ドーパントとして(化5)またはIr(ppy)3をTHFに溶解させたものを用いた。それ以外は、実施例1と同様である。
【0053】
【化7】

緑色ドーパントとして(化5)を用いて作製した有機白色発光素子に電圧を印加したところ、赤色ドーパント、緑色ドーパント及び青ドーパントからの発光が確認できた。一方、緑色ドーパントにIr(ppy)3を用いた場合には、青色ドーパント及び緑色ドーパントの赤色ドーパントに対する発光強度が低くなった。
【符号の説明】
【0054】
1 正孔注入層
2 正孔輸送層
3 発光層
4 ホスト材料
5 赤色ドーパント材料
6 緑色ドーパント材料
7 青色ドーパント材料
8 電子輸送層
9 電子注入層
10 基板
11 下部電極
12 上部電極
13 有機層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極と、
第二の電極と、
前記第一の電極と前記第二の電極との間に配置された発光層とを有する有機発光素子であって、
前記発光層はホスト材料,赤色ドーパント及び青色ドーパントを含み、
前記赤色ドーパントは前記第一の電極側へ移動するための第一の機能性基を有する有機発光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の有機発光素子において、
前記第一の機能性基は、フルオロアルキル基,パーフルオロアルキル基,アルキル基(Cの数は10以上),パーフルオロポリエーテル基及びシロキシ基のうちから選ばれる1つ以上の機能性基である有機発光素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機発光素子において、
前記赤色ドーパントは下記(化1)で表されるイリジウム錯体である有機発光素子。
【化1】

(式中X1はNを含む芳香族ヘテロ環を表し、X2は芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を表す。Y1及びY2はフルオロアルキル基,パーフルオロアルキル基,アルキル基,パーフルオロポリエーテル基またはシロキシ基を表す。)
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機発光素子において、
前記発光層は緑色ドーパントを含み、
前記緑色ドーパントは前記第二の電極へ引き寄せられるための第二の機能性基を有する有機発光素子。
【請求項5】
請求項4に記載の有機発光素子において、
前記第二の機能性基はヒドロキシ基(−OH),チオール基(−SH),カルボキシル基(−COOH),スルホ基(−SO3H),I,Br,Cl,F,SCN,CN,NH2,NO2及びビピリジル基のうちから選ばれる1つ以上の機能性基である有機発光素子。
【請求項6】
請求項4に記載の有機発光素子において、
前記第二の電極と前記発光層との間に正孔輸送層が配置され、
前記第二の機能性基はフェニルアミノ基,オキサゾール基,カルバゾール基及びヒドラゾン部位のうちから選ばれる1つ以上の機能性基である有機発光素子。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の有機発光素子において、
前記青色ドーパントの最低空軌道エネルギーの絶対値は前記緑色ドーパントの最低空軌道エネルギーの絶対値よりも大きい有機発光素子。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機発光素子において、
前記発光層は塗布法により作製される有機発光素子。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機発光素子に用いられる発光層形成用塗液であって、
発光層形成用塗液は、溶媒,ホスト材料,赤色ドーパント及び青色ドーパントを含む発光層形成用塗液。
【請求項10】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の有機発光素子に用いられる発光層形成用塗液であって、
発光層形成用塗液は、溶媒,ホスト材料,赤色ドーパント,青色ドーパント及び緑色ドーパントを含む発光層形成用塗液。
【請求項11】
請求項9または10に記載の発光層形成用塗液において、
前記発光層形成用塗液に用いられる溶媒は第一の溶媒及び第二の溶媒を含み、
前記第一の溶媒の沸点は第二の溶媒の沸点より高く、
前記第一の溶媒は前記赤色ドーパントに対し貧溶媒である有機発光層形成用塗液。
【請求項12】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機発光素子に用いられる発光層形成用材料であって、
発光層形成用材料は、ホスト材料,赤色ドーパント及び青色ドーパントを含む発光層形成用材料。
【請求項13】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の有機発光素子に用いられる発光層形成用材料であって、
発光層形成用材料は、ホスト材料,赤色ドーパント,青色ドーパント及び緑色ドーパントを含む発光層形成用材料。
【請求項14】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の有機発光素子を備える光源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−142591(P2012−142591A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−46059(P2012−46059)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【分割の表示】特願2010−9610(P2010−9610)の分割
【原出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】