説明

有機発光素子及びその製造方法

【課題】有機発光素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に配設された第1画素電極と、前記第1画素電極のエッジを覆うように形成され、前記第1画素電極の一部領域を露出させる第1開口部を有する第1バンクと、前記第1画素電極及び前記第1バンクの少なくとも一部領域を覆うように形成された第2画素電極と、前記第2画素電極を覆うように配設された有機発光層と、前記有機発光層を覆うように配設され、前記第1画素電極及び前記第2画素電極と対向するように形成される対向電極と、を備えることを特徴とする有機発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子及びその製造方法に係り、さらに詳細には、発光効率が改善された有機発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置は、低電圧で駆動可能であり、軽量薄型であり、視野角が広くコントラストが優秀であるだけでなく、応答速度が速いという長所によって、次世代ディスプレイ装置として注目されている。
【0003】
しかし、有機発光表示装置は、広い発光波長を有するために、発光効率及び色純度が低下するという問題がある。また、有機発光層から放出される光は、特定の方向性を有しないため、任意の方向に放出される光子のうち、相当数が有機発光素子内部の全反射によって実際の観測者に到達できず、有機発光素子の光抽出効率が低下するという問題もある。これらの問題を解決するために、有機発光層の厚さを調節して共振構造を形成し、光抽出効率を高める方法が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0153468号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、プリンティング法によって有機発光層を形成する有機発光表示装置では、有機発光層の膜厚を制御することが難しく、このような共振構造は適用し難いという問題があった。また、プリンティング法を利用した有機発光表示装置では、塗布された液状発光材料を乾燥させる過程で、発光部のエッジ領域で有機発光層の厚さが不均一に形成されてしまい、発光が不均一になるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、より容易に共振構造を形成することで、発光効率が更に改善された有機発光素子及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の目的とするところは、発光部のエッジ領域の発光を抑制することで、取り出される光の品質を向上させた有機発光素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するために、本発明の一観点によれば、基板上に配設された第1画素電極と、前記第1画素電極のエッジを覆うように形成され、前記第1画素電極の一部領域を露出させる第1開口部を有する第1バンクと、前記第1画素電極及び前記第1バンクの少なくとも一部領域を覆うように形成された第2画素電極と、前記第2画素電極を覆うように配設された有機発光層と、前記有機発光層を覆うように配設され、前記第1画素電極及び前記第2画素電極と対向するように形成される対向電極と、を備えることを特徴とする有機発光素子が提供される。
【0009】
また、前記第1画素電極と前記第2画素電極とは、屈折率が互いに異なる物質で形成されてもよい。
【0010】
また、前記有機発光素子は、前記第1バンク上に形成され、前記第1画素電極を露出させ、前記第1開口部より広く形成された第2開口部を備える第2バンクをさらに備えてもよい。
【0011】
また、前記第1バンクと前記第2バンクとは、同一の有機物質で形成されてもよい。
【0012】
また、前記第2画素電極は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnO、In、IGO(Indium Galium Oxide)、及びAZO(Aluminium Zinc Oxide)からなる群より選択された少なくとも一つ以上の物質を含んでもよい。
【0013】
また、前記第2画素電極の厚さは、100nm以下であってもよい。
【0014】
また、前記第2画素電極は、金属物質を含んでもよい。
【0015】
また、前記第2画素電極の厚さは、10nm以下であってもよい。
【0016】
また、前記第1バンクの高さは、1μm以下であってもよい。
【0017】
また、本発明の他の観点によれば、基板上に第1画素電極を形成する工程と、前記第1画素電極上に前記第1画素電極のエッジを覆うように形成され、前記第1画素電極の少なくとも一部領域を露出させる第1開口部を備える第1バンクと、前記第1バンク上に前記第1開口部よりも広く形成された第2開口部を備える第2バンクと、を形成する工程と、前記第1画素電極及び前記第1バンクの少なくとも一部領域を覆う第2画素電極を形成する工程と、前記第2画素電極を覆うように前記第2開口部によって定義された領域内に有機発光層を形成する工程と、前記有機発光層上に、前記第1画素電極及び前記第2画素電極と対向する対向電極を形成する工程と、を含む有機発光素子の製造方法が提供される。
【0018】
前記第2画素電極を形成する工程では、前記第2画素電極は、前記第1画素電極と屈折率が互いに異なる物質で形成されてもよい。
【0019】
また、前記第1バンク及び前記第2バンクを形成する工程は、前記第1バンク及び前記第2バンクを同一の有機物質で形成する工程を含んでもよい。
【0020】
また、前記第1バンク及び前記第2バンクを形成する工程は、前記第1バンク及び前記第2バンクをハーフトーンマスクによって同時に形成する工程を含んでもよい。
【0021】
また、前記有機発光層を形成する工程は、前記第2画素電極上に液状の有機物質を塗布し、前記液状の有機物質を乾燥させる工程を含んでもよい。
【0022】
また、前記第2画素電極を形成する工程では、前記第2画素電極は、ITO、IZO、ZnO、In、IGO、及びAZOからなる群より選択された少なくとも一つ以上の物質を含んでもよい。
【0023】
また、前記第2画素電極を形成する工程では、前記第2画素電極の厚さは、100nm以下で形成されてもよい。
【0024】
また、前記第2画素電極を形成する工程では、前記第2画素電極は、金属物質を含むように形成されてもよい。
【0025】
また、前記第2画素電極を形成する工程では、前記第2画素電極の厚さは、10nm以下で形成されてもよい。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明によれば、二重に備えられた画素電極を適用し、より容易に共振構造を形成することで、有機発光素子の発光効率を更に改善することができる。
【0027】
また、発光部のエッジ領域の発光を抑制することで、有機発光素子から取り出される光の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機発光素子を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の有機発光素子の共振原理を示す概念図である。
【図3】図1の有機発光素子のエッジ領域からの光の取り出しが抑制される原理を示す概念図である。
【図4】図1の有機発光素子の製造方法を順次に示す断面図である。
【図5】図1の有機発光素子の製造方法を順次に示す断面図である。
【図6】図1の有機発光素子の製造方法を順次に示す断面図である。
【図7】図1の有機発光素子の製造方法を順次に示す断面図である。
【図8】図1の有機発光素子の製造方法を順次に示す断面図である。
【図9】図1の有機発光素子の製造方法を順次に示す断面図である。
【図10】本発明の他の一実施形態に係る有機発光素子を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態にかかる有機発光素子100の断面図である。
【0031】
図1を参照すれば、基板110上に第1画素電極120が配設される。
【0032】
基板110は、SiOを主成分とする透明材質のガラス材で形成される。しかし、基板110は、必ずしもこれに限定されず、透明なプラスチック材や金属材など、多様な材質の基板を利用してもよい。
【0033】
前記基板110は、図示していないが、各画素当たりに配置された複数の画素回路部を備えてもよい。各画素回路部は、少なくとも一つの薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を備える。前記画素回路部のTFTに備えられたソース電極及びドレイン電極のうち一つは、前記第1画素電極120の少なくとも一部と接続される。また、前記TFTは、基板110上の第1画素電極120と重なり合う領域に配置されうるが、それ以外にも第1画素電極120が配設された領域以外の領域に配置されることもある。
【0034】
基板110上に形成される第1画素電極120は、透明又は半透明電極であってもよく、反射電極であってもよい。
【0035】
第1画素電極120が透明又は半透明電極である場合には、第1画素電極120は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)、In(Indium Oxide)、IGO(Indium Galium Oxide)、及びAZO(Aluminium Zinc Oxide)からなる群より選択された少なくとも一つ以上の物質を含むように形成されてもよい。
【0036】
第1画素電極120が反射電極である場合には、第1画素電極120は、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr及びこれらの化合物からなる群より選択された少なくとも一つ以上の物質を含むように形成された反射膜と、反射膜上に形成された前記透明又は半透明電極層と、を備えてもよい。
【0037】
前記第1画素電極120のエッジを覆うように、バンク140が前記基板110上に形成される。前記バンク140は、第1バンク140aと第2バンク140bとを備える。
【0038】
前記第1バンク140aは、第1画素電極120のエッジを覆うように形成され、第1画素電極120の少なくとも一部領域を露出させる第1開口部Cを備える。第2バンク140bは、第1バンク140a上に位置し、第1画素電極120及び第1バンク140aの一部領域を露出させる第2開口部Cを備える。従って、第2開口部Cは、第1開口部Cよりも広く形成され、第1バンク140a及び第2バンク140bは、階段状に段差が形成された構造を有する。前記第1開口部C及び第2開口部Cは、テーパ形状を有する。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記第1バンク140a及び第2バンク140bは、同一の物質によって一体に形成されてもよい。その場合、第1バンク140a及び第2バンク140bは、ポリイミド樹脂やアクリル樹脂のような親水性有機物質で形成されてもよい。前記第2バンク140bの表面には、有機発光層160の形成時にインクの氾濫(隣接画素への流入)を防ぐために、疎水性処理を施すことができる。前記第1バンク140aと第2バンク140bとを相異なる物質で形成する場合には、第1バンク140aは、第2バンク140bよりも親水性の高い物質で形成されてもよい。しかし、必ずしもこれに限定されず、第1バンク140aと第2バンク140bとを同一の物質で形成し、第2バンク140bにフッ素などを含有して使用してもよい。すなわち、第2バンク140bを疎水化して使用してもよい。このとき、第1バンク140aと第2バンク140bとを同一の物質で形成する場合には、ポリイミド樹脂やアクリル樹脂にフッ素を含有し、バンク140の高さに応じて親水性の程度を異ならせることができる。
【0040】
前記第1バンク140aは、第1画素電極120の端部から約1μm以下のエッジ領域を覆うように形成される。
【0041】
前記第1バンク140a及び第2バンク140b、特に第1バンク140aを有機物質で形成する場合には、第1バンク140aのパターニング工程によって生じうる第1画素電極120表面の損傷を防止しうる。すなわち、無機物質を第1画素電極120の表面にスパッタリング法によって形成する必要がないので、第1画素電極120の表面の損傷を抑えることができる。
【0042】
前記第2バンク140bは、有機発光層160がプリンティングされる際に、インクが塗布される領域を定義する役割を果たす。このとき、第2バンク140bは、高さが過度に低ければ、塗布された液状の有機物質が第2バンク140bの外部に漏れる恐れがある。一方、高さが過度に高ければ、後述する対向電極170が第2バンク140bによって分離される恐れがある。従って、第2バンク140bは、適切な高さを有するように形成され、第2バンク140bの高さは、0.5μm〜3μm程度であることが好ましい。
【0043】
第1バンク140a上には、第2画素電極150と有機発光層160とが形成されるので、第1バンク140aの高さは、低く形成されることが望ましい。しかし、第1バンク140aによって、第1画素電極120と第2画素電極150とが絶縁されるためには、第1バンク140aは、所定の高さを有することがより好ましい。このとき、第1バンク140aの高さは、0.1μm〜0.5μm程度であることが好ましい。
【0044】
前記第1画素電極120及び第1バンク140aの少なくとも一部の領域の上には、第2画素電極150が形成される。第2画素電極150は、第1画素電極120と屈折率が異なる材料で形成されてもよい。第2画素電極150は、第1画素電極120を構成する物質と関係なく、透明/半透明電極として形成されうる。
【0045】
第2画素電極150が透明電極である場合には、第2画素電極150は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)、In(Indium Oxide)、IGO(Indium Galium Oxide)、及びAZO(Aluminium Zinc Oxide)からなる群より選択された少なくとも一つ以上の物質を含むように形成されてもよい。このように、第2画素電極150を透明な金属酸化物で形成する場合、前述した第1画素電極120と同一の物質とならないように選択することが望ましい。これは、後述するように、第2画素電極150を共振電極として作用させるためである。
【0046】
第2画素電極150が前述した透明電極である場合、第2画素電極150は、100nm以下、すなわち、数nm〜数十nmの厚さを有するように形成されてもよい。
【0047】
第2画素電極150が金属物質である場合には、第2画素電極150は、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr及びこれらの化合物からなる群より選択された少なくとも一つ以上の物質を含むように形成されてもよい。この場合、第2画素電極は、10nm以下、すなわち、数nmの厚さを有するように形成されてもよく、半透明電極として作用する。光が第2画素電極150を透過するために、第2画素電極150が金属物質である場合には、透明電極である場合よりも、当該厚さはさらに薄く形成されることがより好ましい。
【0048】
前記第2画素電極150のエッジは、第1バンク140a上に形成され、前記第2画素電極150の中心領域は、第1画素電極120と接触するように形成される。従って、前記第1画素電極120と第2画素電極150とは、エッジ領域で第1バンク140aが前記第1画素電極120と第2画素電極150との間に介在するように形成される。
【0049】
有機発光層160は、第2画素電極150上に、前記第2開口部Cによって定義される領域内に形成される。
【0050】
前記有機発光層160は、インクジェットプリンティング方式又はノズルプリンティング方式によって形成されてもよい。このとき、前記有機発光層160は、高分子有機物でありうる。有機発光層160が高分子有機物である場合、有機発光層160以外にホール輸送層(HTL:Hole Transport Layer)が備えられる。HTLには、ポリエチレンジヒドロキシチオフェン(PEDOT:Poly−(2,4)−Ethylene−Dihydroxythiophene)やポリアニリン(PANI:Polyaniline)が使用されてもよい。このとき、使用可能な有機材料は、PPV(Poly−Phenylenevinylene)系及びポリフルオレン系の高分子有機物であってもよい。
【0051】
前記有機発光層160の形成は、必ずしもこれに限定されず、蒸着方法を用いて低分子有機物によって形成されることもある。有機発光層160が低分子有機物である場合、有機発光層160を中心にホール輸送層(HTL)、ホール注入層(HIL:Hole Injection Layer)、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)、及び電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)が積層される。それ以外にも、必要によって多様な層が積層されうる。このとき、使用可能な有機材料としては、銅フタロシアニン(CuPc)、N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N、N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)をはじめとする多様な材料が適用可能である。
【0052】
有機発光層160及び第2バンク140bの上には、第1画素電極120及び第2画素電極150と対向する対向電極170が形成される。対向電極170は、Al、Mg、Li、Ca、LiF/Ca、及びLiF/Alからなる群より選択された一つ以上の物質を含んでもよい。対向電極170は、ITO、IZO、ZnO、又はInなどの透明電極形成用物質から構成される、補助電極層やバス電極をさらに備えてもよい。対向電極170は、有機発光層160上に蒸着法やスパッタリング法を利用して形成されてもよい。
【0053】
本実施形態では、第1画素電極120が正極として用いられ、対向電極170が負極として用いられる場合について説明したが、電極の極性は、逆向きであっても適用されうる。
【0054】
図2は、図1の有機発光素子100の共振原理を示す概念図である。図2は、図1のA領域を拡大して示した図である。
【0055】
図2を参照すれば、第1画素電極120は、屈折率nを有し、第2画素電極150は、屈折率nを有する。nとnとは、相異なる値を有しうる。前記構成によって、有機発光層160で発光して第2画素電極150に入射する光の一部は透過(L)し、一部は有機発光層160と第2画素電極150との界面で反射(L)する。透過した光は、第1画素電極120と第2画素電極150との界面で再び一部は透過し、一部は反射(L)する。透過した光の一部は、第1画素電極120と基板110との界面で再び反射(L)する。前記反射した光(L、L、L)は、ブラッグの法則(Bragg’s Law)を満足させる条件で互いに補強干渉する。すなわち、第1画素電極120と第2画素電極150とは、共振構造を形成するので、有機発光素子100の光効率及び色再現率が向上する。
【0056】
このような共振構造は、有機発光層160をプリンティング法によって形成する場合に、さらに有用である。何故ならば、有機発光層160をプリンティング法で形成する従来の有機発光素子の場合、共振構造を適用し難かった。これは、溶液を利用するプリンティング法の特性上、有機発光層の各厚さを厳密にコントロールし難く、さらには、各画素の色相別に厚さが異なりプリンティングし難いためである。このように、プリンティング条件を異ならせる場合、量産タクトタイム(Tact−Time)が悪化する。
【0057】
しかし、本発明の前述した構造によれば、プリンティング法を適用した有機発光素子であっても、共振構造が容易に実現しうる。
【0058】
図3は、図1の有機発光素子100のエッジ領域での光の取り出しが抑制される原理を示す概念図である。図3は、図1のA領域を拡大して示した図である。
【0059】
図3を参照すれば、第1画素電極120と第2画素電極150とのエッジが第1バンク140aによって分離されている。第1バンク140aは、エッチング工程での露光量の差によってエッジ領域がテーパ状に形成され、第2画素電極150は、第1バンク140aのテーパ面に沿って形成される。このとき、第1画素電極120の厚さは、約200nm以上であることが好ましく、第2画素電極150の厚さは、数nm〜数十nm程度であることが好ましい。
【0060】
この場合、第2画素電極150は、数nm〜数十nm程度の厚さを有するので、高い抵抗値R、R、Rを有する高抵抗体として作用しうる。これに比べて、第1画素電極120は、相対的に低い抵抗値Rを有する。また、第1画素電極120と第2画素電極150とを分離する第1バンク140aは、第1画素電極120のエッジ領域を覆うように形成され、テーパ形状に沿って第1画素電極120のエッジ領域に行くほど、次第に厚さが厚くなる。第1バンク140aの最も厚い領域の高さは、約0.1〜約0.5μmでありうる。従って、第1バンク140aも高い抵抗値Rを有する。
【0061】
第1バンク140aが形成されていない領域では、第1画素電極120が第2画素電極150と接触している。この場合、第2画素電極150が高抵抗体であっても、トンネリング(トンネル効果)が発生するため(L)、正孔が効果的に有機発光層160まで移動する。これにより、有機発光層160での発光が円滑に行われる。
【0062】
しかし、第1バンク140aが形成された領域では、第1画素電極120から供給される正孔が、第1バンク140a及び第2画素電極150をいずれも通過しなければならないため、有機発光層160へのトンネリングがほとんど発生しない。従って、この領域では、正孔が有機発光層160にほぼ到達できず、発光がほとんど行われない。本実施形態は、第1画素電極120が正極として作用する場合に関するものであるが、第1画素電極120は、負極として作用してもよく、この場合は、第1画素電極120は、正孔ではなく、電子を提供する。
【0063】
前記有機発光層160をプリンティング法によって形成する場合、液状有機物質の乾燥過程で、有機発光層160の両側のエッジ付近の厚さが不均一に形成される。これは、画素が不均一に発光して、リング状の帯を備えているように見える現象(Coffee Ring Effect)の原因となる。これは、有機発光素子100の品質を低下させる。
【0064】
本発明の場合、第1バンク140aが形成された領域では発光がほぼ起こらず、第1画素電極120と第2画素電極150とが接触している領域でだけ発光が起きる。従って、前述した画素がリング状の帯を備えているように見える現象を防止し、これにより、有機発光素子100の画素品質及び発光品質を向上させうる。
【0065】
ここで、本発明は、インクジェットプリンティング方式やノズルプリンティング方式によって有機発光層160を形成する場合に制限されず、スパッタリング法や蒸着法など他の方法によって有機発光層160を形成する場合にも適用されうる。
【0066】
図4〜図9は、図1の有機発光素子の製造方法を順次に示した断面図である。以下、図1及び図4〜図9を参照して、図1の実施形態に係る有機発光素子100の製造方法を説明する。
【0067】
図4を参照すれば、基板110上に第1画素電極120が形成される。基板110及び第1画素電極120については、前述した通りである。
【0068】
図5を参照すれば、第1画素電極120上に絶縁物質140’を形成した後、ハーフトーンマスクMによって、図6に示すように第1バンク140aと第2バンク140bとを形成する。前記絶縁物質140’は、有機物質であってもよく、その場合、スピンコーティング法などの方法によって第1画素電極120を覆うように、基板110上の全面に形成されうる。第1バンク140aと第2バンク140bとは、ハーフトーンマスクMを利用したフォトリソグラフィ工程によって形成されうるが、前記絶縁物質140’は、感光有機物質であるので、別途のフォトレジストを塗布する必要はない。ハーフトーンマスクMは、領域によって透過率を調節できるマスクであって、第2バンク140bに対応して配置された遮断部M1と、第1バンク140aに対応して配置された半透過部M2と、第1画素電極120が露出される領域に対応して配置された透過部M3と、を備える。
【0069】
前記ハーフトーンマスクMを用いて露光装置(図示せず)で露光した後、現像、エッチングを行うことによって、異なる高さの第1バンク140aと第2バンク140bとが形成されうる。しかし、第1バンク140aと第2バンク140bとを形成する方法は、ハーフトーンマスクMを利用した方法に限定されない。また、第1バンク140aと第2バンク140bとは、必ずしも同一の有機物質である必要はなく、異なる有機物質であってもよい。しかし、前述したように、ハーフトーンマスクMやスリットマスクを利用する場合には、1マスク工程によって第1バンク140aと第2バンク140bとを同時に形成しうるので、工程を単純化しうる。
【0070】
図7〜図9を参照すれば、第1画素電極120及び第1バンク140aの露出された部分の上に第2画素電極150を形成し、インクジェットプリンティング、ノズルプリンティングなどのプリンティング法で、第2バンク140bの第2開口部Cによって限定された領域内にインク160’を塗布し、乾燥及び/又は硬化させて有機発光層160を形成する。
【0071】
前記有機発光層160を覆うように、第2バンク140b上に対向電極170を形成して、図1の有機発光素子100を構成することができる。前記対向電極170は、蒸着法やスパッタリング法によって形成されてもよい。
【0072】
以上の説明は、第1バンク140a及び第2バンク140bを有機物質によって形成するものであったが、本発明は、必ずしもこれに限定されず、無機物質が含まれるように形成してもよい。
【0073】
図10は、本発明の他の一実施形態にかかる有機発光素子200を概略的に示した断面図である。以下、前述した実施形態との相違点を中心に説明する。
【0074】
図10を参照すれば、第1画素電極220のエッジを覆うように形成された第1バンク230は、第1バンク230上に形成された第2バンク240とは異なる物質で形成されている。このとき、第1バンク230は、窒化シリコン(SiN)及び/又は酸化シリコン(SiO)のような無機物質であってもよく、第2バンク240は、有機物質であってもよい。
【0075】
第1バンク230を無機物質で形成する場合、親水性が高いので、有機発光層260との密着性を高めうる。第1バンク230は、無機物質をスピンコーティング法で第1画素電極220上に形成した後、フォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ工程によってパターニングして形成されうる。前記第1バンク230を形成した後、有機物質を用いて第2バンク240を形成する。
【0076】
しかし、本発明は、これに限定されず、前記第1バンク230が前記第2バンク240と異なる有機物質であってもよい。この場合には、第1バンク230を形成する過程で、第1画素電極220の表面の損傷を防止しうる。また、本実施形態は、第1バンク230と第2バンク240とを形成した後に、第2画素電極250を形成する場合を例示しているが、第1バンク230を形成した後、第2画素電極250を形成し、第2画素電極250を形成した後、第2バンク240を形成してもよい。この場合、第2バンク240は、第2画素電極250を完全に露出させてもよいし、第2画素電極250の一部を覆うように形成されてもよい。
【0077】
また、図10は、対向電極270が第2バンク240によって定義された領域だけに形成されている場合を例示している。対向電極270は、能動型マトリックス方式の場合には、共通電極であって、全面に形成されることもあるが、受動型マトリックス方式の場合には、図10に示したように、有機発光層260上だけに形成されることもある。この場合には、第2バンク240が発光領域を定義する役割以外に、画素間のセパレータとして機能しうる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、表示装置関連の技術分野に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
100 有機発光素子
110 基板
120 第1画素電極
140 バンク
140a 第1バンク
140b 第2バンク
150 第2画素電極
160 有機発光層
170 対向電極
第1開口部
第2開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配設された第1画素電極と、
前記第1画素電極のエッジを覆うように形成され、前記第1画素電極の一部領域を露出させる第1開口部を有する第1バンクと、
前記第1画素電極及び前記第1バンクの少なくとも一部領域を覆うように形成された第2画素電極と、
前記第2画素電極を覆うように配設された有機発光層と、
前記有機発光層を覆うように配設され、前記第1画素電極及び前記第2画素電極と対向するように形成される対向電極と、を備えることを特徴とする有機発光素子。
【請求項2】
前記第1画素電極と前記第2画素電極とは、屈折率が互いに異なる物質で形成されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記第1バンク上に形成され、前記第1画素電極を露出させ、前記第1開口部より広く形成された第2開口部を備える第2バンクをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記第1バンクと前記第2バンクとは、同一の有機物質で形成されることを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記第2画素電極は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnO、In、IGO(Indium Galium Oxide)、及びAZO(Aluminium Zinc Oxide)からなる群より選択された少なくとも一つ以上の物質を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記第2画素電極の厚さは、100nm以下であることを特徴とする請求項5に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記第2画素電極は、金属物質を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記第2画素電極の厚さは、10nm以下であることを特徴とする請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記第1バンクの高さは、1μm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項10】
基板上に第1画素電極を形成する工程と、
前記第1画素電極上に前記第1画素電極のエッジを覆うように形成され、前記第1画素電極の少なくとも一部領域を露出させる第1開口部を備える第1バンクと、前記第1バンク上に前記第1開口部よりも広く形成された第2開口部を備える第2バンクと、を形成する工程と、
前記第1画素電極及び前記第1バンクの少なくとも一部領域を覆う第2画素電極を形成する工程と、
前記第2画素電極を覆うように前記第2開口部によって定義された領域内に有機発光層を形成する工程と、
前記有機発光層上に、前記第1画素電極及び前記第2画素電極と対向する対向電極を形成する工程と、を含む有機発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記第2画素電極を形成する工程では、前記第2画素電極は、前記第1画素電極と屈折率が互いに異なる物質で形成されることを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記第1バンク及び前記第2バンクを形成する工程は、前記第1バンク及び前記第2バンクを同一の有機物質で形成する工程を含むことを特徴とする請求項10又は11に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記第1バンク及び前記第2バンクを形成する工程は、前記第1バンク及び前記第2バンクをハーフトーンマスクによって同時に形成する工程を含むことを特徴とする請求項12に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記有機発光層を形成する工程は、前記第2画素電極上に液状の有機物質を塗布し、前記液状の有機物質を乾燥させる工程を含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記第2画素電極を形成する工程では、前記第2画素電極は、ITO、IZO、ZnO、In、IGO、及びAZOからなる群より選択された少なくとも一つ以上の物質を含むことを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項16】
前記第2画素電極を形成する工程では、前記第2画素電極の厚さは、100nm以下で形成されることを特徴とする請求項15に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項17】
前記第2画素電極を形成する工程では、前記第2画素電極は、金属物質を含むように形成されることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項18】
前記第2画素電極を形成する工程では、前記第2画素電極の厚さは、10nm以下で形成されることを特徴とする請求項17に記載の有機発光素子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−41828(P2013−41828A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−177271(P2012−177271)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【出願人】(512187343)三星ディスプレイ株式會社 (73)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】95,Samsung 2 Ro,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do,Korea
【Fターム(参考)】