説明

有機発光素子封止用組成物および有機発光装置

【課題】有機発光素子の劣化を防止することができる有機発光素子封止用組成物、および長期に亘って良好な発光特性を有する有機発光装置を提供する。
【解決手段】有機発光素子封止用組成物は、常温で液状で100℃以下の硬化温度を有し、かつ水分含有量が600ppm以下の付加反応硬化型シリコーン組成物を含む。付加反応硬化型シリコーン組成物は、(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均0.2〜5個有するポリオルガノシロキサンと、(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(C)白金系触媒をそれぞれ含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)のような有機発光素子の封止用組成物と、有機発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、少なくともどちらか一方が透光性を有する2枚の電極層の間に、有機発光媒体層が挟持された構造を有し、両電極間に電圧を印加することにより有機発光媒体層に発光が生じる自発光型の発光素子である。この有機EL素子は、広視野角、応答速度が速い、低消費電力などの利点を有することから、ブラウン管や液晶ディスプレイに代わるフラットパネルディスプレイとして期待されている。
【0003】
しかし、有機EL素子の発光媒体層は有機物で構成されているため、大気中の水分や酸素あるいは熱等の影響によって劣化しやすい。この劣化は有機EL素子の発光性能を減衰させるため、表示特性の低下が生じやすい。したがって、有機EL素子の劣化を防止するため、ガラス基板上に形成された有機EL素子の上をガラス基板(ガラスカバー)で覆い、内部を中空構造にするとともに、中空の内部に水分等の吸着乾燥剤を配置した構造が採られている。また、2枚のガラス基板の間の中空部に透湿性の少ないエポキシ樹脂を充填し、有機EL素子全体を封止した構造も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ガラスカバー内の中空部に吸着乾燥剤を配置した構造では、乾燥剤の吸水能力が不十分であるため、有機EL素子の劣化を十分に抑えることができなかった。また、エポキシ樹脂を中空部に充填して封止する方法では、エポキシ樹脂中の含有水分の管理が不十分であるため、有機EL素子の劣化が生じるおそれがあるばかりでなく、エポキシ樹脂の硬化温度が高いため、硬化の際に加えられる熱で有機EL素子が劣化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−28386公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、有機発光素子の劣化を防止することができる有機発光素子封止用組成物、および長期に亘って良好な発光特性を有する有機発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の有機発光素子封止用組成物は、有機発光素子を封止するための組成物であり、常温で液状で100℃以下の硬化温度を有し、かつ水分含有量が600ppm以下の付加反応硬化型シリコーン組成物を含むことを特徴としている。
【0008】
本発明の有機発光装置は、第1の基板と、該第1の基板上に形成された有機発光素子と、前記第1の基板の前記有機発光素子形成面に対向して配置された第2の基板と、前記有機発光素子を封止するように前記第1の基板と第2の基板との間に充填された封止層を備えており、前記封止層が、前記した本発明の有機発光素子封止用組成物の硬化物であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の有機発光素子封止用組成物によれば、100℃以下の低温で硬化することが可能な付加反応硬化型のシリコーン組成物が使用され、かつ組成物中の水分含有量(割合)が600ppm以下と低く調製されているので、封止材料自体が含有する水分による、あるいは封止層の硬化時の加熱による有機発光素子の劣化を防止することができる。したがって、この封止用組成物を用いることで、剥離を生じることがなく、また温度変化によるクラックを生じない優れた封止層を形成することができ、長期に亘って発光不良のない発光特性に優れた有機発光素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の封止用組成物が封止材として使用された有機EL装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の有機発光素子封止用組成物は、600ppm以下の水分含有量(割合)を有しかつ100℃以下の硬化温度を有する常温で液状の付加反応硬化型シリコーン組成物から構成される。この付加反応硬化型シリコーン組成物は、(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均0.5個以上有するポリオルガノシロキサンと、(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(C)白金系触媒をそれぞれ含有するものである。以下、実施形態の有機発光素子封止用組成物、および有機発光装置について詳細に説明する。
【0012】
[(A)成分]
(A)成分は、付加反応硬化型シリコーン組成物のベースポリマーであり、得られる組成物を十分に硬化させるために、1分子中に平均0.5個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する。好ましくは1分子中に平均0.6個以上、より好ましくは1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する。
【0013】
ケイ素原子結合アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、ペテニル基、ヘキセニル基等が例示され、好ましくはビニル基である。アルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両者に結合していてもよいが、得られる組成物の硬化速度、硬化後の物性の点から、少なくとも分子鎖末端のケイ素原子、特に分子鎖両末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0014】
(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子結合有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、あるいはこれらの水素原子が部分的に塩素原子、フッ素原子等で置換されたハロゲン化炭化水素基等の通常炭素原子数1〜12個、好ましくは炭素原子数1〜8個程度のものが挙げられる。ケイ素原子結合有機基は、好ましくはアルキル基あるいはアリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0015】
(A)成分の分子構造は、特に限定されず、例えば直鎖状、環状、分岐鎖状等が挙げられる。硬化物の機械的強度などの点から、直鎖状が好ましい。また、(A)成分として、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0016】
(A)成分の23℃における粘度は、10〜1000,000mPa・sであり、好ましくは100〜1000,000mPa・sである。10mPa・s未満であると、硬化後の機械的強度が低下しやすい。一方、1000,000mPa・sを超えると、得られる組成物の作業性が低下しやすい。
【0017】
[(B)成分]
(B)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、(A)成分の架橋剤であり、1分子中に2個以上好ましくは3個以上の、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有している。このSiH基は分子鎖末端でも分子鎖中間部でも、あるいは両者に位置していてもよい。
【0018】
(B)成分は、例えば、平均組成式:RSiO[4−(s+t)]/2………(1)
で示される。式(1)中、Rは、脂肪族不飽和結合を除く、同一または異なる置換または非置換の一価の炭化水素基である。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;およびこれらの基の水素原子の一部または全部がフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子やシアノ基で置換されているもの、例えばクロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素数1〜12のものが挙げられる。これらのなかでも、合成のし易さ、コストの点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0019】
式(1)中、s、tは、0.5≦s≦2.2、0≦t≦2、0.5<s+t≦3を満足する正数であり、好ましくは、0.6≦s≦2.0、0.01≦t≦1.8、0.6≦s+t≦2.8を満足する正数である。
【0020】
(B)成分の分子構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状または三次元網目状のいずれでもよい。(B)成分の23℃における粘度は、5000mPa・s以下、好ましくは1〜1000mPa・sである。
【0021】
(B)成分としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジハイドロジェンシロキサン、メチルハイドロジェン環状ポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0022】
(B)成分の配合量は、(A)成分のアルケニル基1個に対して、(B)成分のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)が0.2〜5.0個となる量、好ましくは0.5〜3.0となる量である。(B)成分のSiH基が0.2個未満では、十分な架橋が得られない。一方、5.0個を越えると、未反応のSiH基が残存し、硬化物の物性が不安定になりやすい。
【0023】
[(C)成分]
(C)成分である白金系触媒としては、ヒドロシリル化反応に用いられる周知の白金系触媒を使用することができる。例えば、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類またはビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテートなどが挙げられる。
【0024】
(C)成分の配合量は、所望の硬化速度などに応じて適宜調整することができる。通常、組成物の合計量に対し、白金元素に換算して0.1〜1000ppm、好ましくは0.5〜500ppmである。
【0025】
[その他任意成分]
実施形態の封止用組成物である常温で液状の付加反応硬化型シリコーン組成物は、前記(A)〜(C)の各成分を基本成分とし、必要に応じて任意成分として、充填剤、反応抑制剤、難燃性付与剤、耐熱性向上剤、接着性付与剤、チキソ性付与剤、顔料、可塑剤などを、本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0026】
充填剤としては、例えばシリカ、酸化チタン等が挙げられる。充填剤の配合量は、作業性を良好に保ち、硬化物の特性を損なわない範囲であればよく、好ましくは(A)成分100重量部に対して1〜50重量部である。
【0027】
反応抑制剤としては、例えば3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−メチル−3−ヘキシン−2−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のアセチレンアルコールや3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等、あるいはメチルビニルシロキサン環状化合物、有機チッソ化合物、有機リン化合物などが挙げられる。反応抑制剤の配合量は、硬化反応性と保存安定性を良好に保ち、硬化物の特性を損なわない範囲であればよく、好ましくは(A)成分100重量部に対して0.001〜1重量部である。
【0028】
[封止用組成物およびその製造方法]
実施形態の封止用組成物を製造するには、(A)成分であるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンに、(B)成分(架橋剤)であるポリオルガノハイドロジェンシロキサンとその他の任意成分を加え、さらに(C)白金系触媒を加えて、周知の混練機で常温または必要に応じて加熱(例えば80〜200℃)しながら混練する。混練機としては、加熱手段や冷却手段を備えた周知の装置を使用することができる。例えば、プラネタリーミキサー、3本ロール、ニーダー、品川ミキサー、トリミックス、ツインミックスなどを、単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0029】
こうして得られる実施形態の封止用組成物は、常温(通常23℃)以上100℃以下の硬化温度を有している。また、組成物中の水分含有量(割合)は600ppm以下の範囲に調製されている。組成物の硬化温度が常温より低い場合には、硬化までに時間がかかるため作業性が悪くなる。また、硬化温度が100℃を超える場合には、加熱硬化時の熱で有機発光素子が劣化しやすく、有機発光装置の有効画素面積が低下するおそれが高い。さらに、水分含有量(割合)が600ppmを超える場合には、封止材として使用された組成物から発生する水分によって有機発光素子が劣化するおそれが高くなり、好ましくない。
【0030】
組成物中の水分含有量を前記範囲に調整するには、配合・混練前に、(A)成分と(B)成分の少なくとも一方を、温度と時間をコントロールしながら加熱する方法を採ることができる。特に、(A)成分を減圧下に加熱する方法を採ることが好ましい。すなわち、必要に応じて減圧しながら(A)成分を加熱し、(A)成分中の水分を蒸発・揮散させることにより、組成物中の水分含有量を600ppm以下に調製することが好ましい。また、最終的に得られる組成物中の水分含有量を600ppm以下に抑えられるのであれば、加熱処理を行った(A)成分を他の成分と混練した後、得られる組成物に水を添加することも可能である。
【0031】
さらに、実施形態の封止用組成物は、23℃における粘度が10〜1000,000mPa・sであることが好ましい。
【0032】
[封止用組成物の硬化物]
本発明の実施形態の封止用組成物は、100℃以下の温度で5〜120分間(例えば80℃で60分間)加熱することによって硬化する。有機発光素子(有機EL素子)の許容温度範囲内(100℃以下)で硬化するので、有機EL素子を封止するための封止材として好適に使用することができる。組成物の成形・硬化方法、硬化条件などは、公知の方法、条件を適用することができる。
【0033】
[有機発光装置]
実施形態の封止用組成物が封止材として使用された有機EL装置は、例えば図1に示すように、ガラス等の第1の基板1上に、第1電極(アノード)層2、有機発光媒体である有機EL層3および第2電極(カソード)層4からなる有機EL素子が設けられ、この有機EL素子に対向するようにガラスカバーのような第2の基板5が設けられた構造を有する。そして、第2の基板5の内側(第2の基板5と有機EL素子との間)に、実施形態の封止用組成物の硬化物層6が封止層として充填・形成されている。
【0034】
このような有機EL装置においては、封止用組成物の硬化物層6と有機EL素子との間に、酸素および水分を遮断するバリア層(保護層)を設けることができる。バリア層を構成する材料としては、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素などが挙げられる。バリア層の形成方法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法などを用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の具体的実施例について記載するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1,2、比較例1,2
まず、(A)23℃における粘度が3000mPa・sであり、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100重量部を、10mmHgに減圧しながら150℃の温度で2時間加熱処理した。次いで、加熱処理後のポリジメチルシロキサン100重量部に、(B)側鎖に50モル%の割合で水素基を有する(1分子中の水酸基の数は約20個)ポリメチルハイドロジェンシロキサン1.5重量部((B)成分の水素基と(A)成分のビニル基とのモル比(H/Vi比)が1.5)と、(C)塩化白金酸のビニルシロキサン錯体化合物10ppm(白金量)と、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.05重量部を添加し、室温で均一に混練した。こうして、実施例1のシリコーン組成物を得た。
【0037】
次いで、実施例2および比較例2において、実施例1で得られたシリコーン組成物に対して水を添加することにより、水分含有量を増加させた。また、比較例1では、(A)成分に対して加熱処理を行わず、通常保管されている(A)成分をそのまま使用してシリコーン組成物を得た。
【0038】
次に、これら実施例1,2および比較例1,2のシリコーン組成物の水分含有量を、カールフィッシャー水分測定装置(三菱化成社のKF−06型)を用いて測定した。測定結果を、後述する硬化の際の温度とともに表1に示す。
【0039】
さらに、これら実施例1,2および比較例1,2で得られたシリコーン組成物を用いて有機EL素子の封止を行なった。まず、有機EL素子を作製した。すなわち、ガラス基板上にスパッタリングにより第1電極層であるITO膜(厚さ150nm)のパターンを形成した後、正孔輸送層にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物(厚さ20nm)、発光層にポリ[2−メトキシ−5−(2´−エチル−ヘキシロキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEHPPV)(厚さ100nm)をそれぞれスピンコートにより成膜し、正孔輸送層はメタノール、発光層はトルエンを用いて不要部を除去し、有機発光媒体層のパターンを形成した。次に、第2電極層として、Ca膜(厚さ5nm)とAl膜(厚さ150nm)を蒸着法により積層・形成した。さらに、バリア層(保護層)として窒化珪素膜(500nm)をプラズマCVD法で成膜した。
【0040】
次に、こうして得られた有機EL素子の上に、実施例1,2および比較例1,2で得られたシリコーン組成物を塗布し、その上にガラスカバーを貼り合わせた。そして、シリコーン組成物の塗布層を80℃に加熱して硬化させた。こうして作製された有機ELパネルにおいて、有機EL素子の有効画素面積を調べた。また、85℃で500時間保管する長期試験を行い、長期試験後の有効画素面積を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0041】
比較例3
シリコーン組成物に代わり、エポキシ樹脂(稲畑産業社のEH1600−G2)を使用し、実施例1と同様にして有機EL素子の封止を行なった。なお、使用したエポキシ樹脂の水分含有量(割合)を測定したところ、表1に示すように、100ppmであった。また、封止層の形成においては、エポキシ樹脂を120℃に加熱して硬化させた。次いで、作製された有機ELパネルにおける有機EL素子の有効画素面積を測定した。また、長期試験(85℃で500時間保管)後の有効画素面積を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1からわかるように、実施例1および実施例2で得られたシリコーン組成物を使用して形成された封止層を有する有機ELパネルでは、長期試験後も有機EL素子の有効画素面積の減少は生じなかった。これに対して、比較例1および比較例2で得られたシリコーン組成物を使用して形成された封止層を有する有機ELパネルでは、組成物に含有された水分の影響で、長期試験後の有効画素面積に低下が生じた。また、比較例2のシリコーン組成物により形成された封止層を有する有機ELパネルでは、長期試験前の初期においても有効画素面積の低下が生じていた。さらに、比較例3のエポキシ樹脂を使用して形成された封止層を有する有機ELパネルでは、封止層を形成する際の加熱により、有機EL素子の有効画素面積が大きく低下したばかりでなく、長期試験後に部分的にクラックを生じるものがあり、さらに有効画素面積が低下した。
【符号の説明】
【0044】
1…第1の基板、2…第1電極層、3…有機EL層、4…第2電極層、5…第2の基板、6…封止用組成物の硬化物層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光素子を封止するための組成物であり、
常温で液状で100℃以下の硬化温度を有し、かつ水分含有量が600ppm以下の付加反応硬化型シリコーン組成物を含むことを特徴とする有機発光素子封止用組成物。
【請求項2】
前記付加反応硬化型シリコーン組成物は、
(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均0.5個以上有するポリオルガノシロキサンと、(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(C)白金系触媒をそれぞれ含有することを特徴とする請求項1記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項3】
前記(B)成分の配合量が、前記(A)成分のアルケニル基1個に対して、(B)成分のケイ素原子に結合した水素原子が0.2〜5.0個となる量であることを特徴とする請求項2記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項4】
第1の基板と、該第1の基板上に形成された有機発光素子と、前記第1の基板の前記有機発光素子形成面に対向して配置された第2の基板と、前記有機発光素子を封止するように前記第1の基板と第2の基板との間に充填された封止層を備えており、
前記封止層が、請求項1ないし3のいずれか1項記載の有機発光素子封止用組成物の硬化物であることを特徴とする有機発光装置。
【請求項5】
前記封止層と前記有機発光素子との間に、酸素および水分を遮断するバリア層が設けられることを特徴とする請求項4記載の有機発光装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−16965(P2011−16965A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164069(P2009−164069)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】