説明

有機発光装置及びこれを用いた光源装置

【課題】流密度の増大に伴う色度変化を低減できる有機発光装置及びこれを用いた光源装置を提供すること。
【解決手段】第一の発光層には第一のエミッタが添加され、第二の発光層には第二のエミッタが添加され、第三の発光層には第三一のエミッタおよび第三二のエミッタが添加され、第四の発光層には第四のエミッタが添加され、第一のエミッタの発光中心波長は、第二のエミッタの発光中心波長より大きく、第三一のエミッタの発光中心波長は、第三二のエミッタの発光中心波長より大きく、第三一のエミッタの発光中心波長は、第四のエミッタの発光中心波長より大きく、第一のエミッタの発光中心波長および第三一のエミッタの発光中心波長は、同じ波長領域に存在し、第二のエミッタの発光中心波長,第三二のエミッタの発光中心波長および第四のエミッタの発光中心波長は、同じ波長領域に存在する有機発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光装置及びこれを用いた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として、特許文献1には次のような技術が開示されている。なお、この技術は、電極に印加する電圧の変化に対して、色味の変化の少なく、かつ高効率で発光する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とするものである。
【0003】
特許文献1における有機EL素子は、基板と、陽極と、正孔注入層と、赤色発光層と、緑色発光層と、青色発光層と、陰極とがこの順で積層されて構成される。発光部は、赤色を発光する赤色発光層と、緑色発光層と、青色発光層とがこの順で積層されて構成され、発光する光のピーク波長が長い発光層ほど陽極側に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−181774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第一の発光層および第二の発光層の2層積層発光層の組合せにおいて、第一の発光層に第一のエミッタが添加され、第二の発光層に第二のエミッタが添加されている場合、電流密度の増大に伴い、第一のエミッタの発光色に近い色から第二のエミッタの発光色に近い色に変化する。
【0006】
本発明は、電流密度の増大に伴う色度変化を低減できる有機発光装置及びこれを用いた光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)基板と、基板の上に形成された第一の発光層,第二の発光層,第三の発光層および第四の発光層と、を有し、第一の発光層には第一のエミッタが添加され、第二の発光層には第二のエミッタが添加され、第三の発光層には第三一のエミッタおよび第三二のエミッタが添加され、第四の発光層には第四のエミッタが添加され、第一の発光層は第二の発光層に接し、第三の発光層は第四の発光層に接し、第一のエミッタの発光中心波長は、第二のエミッタの発光中心波長より大きく、第三一のエミッタの発光中心波長は、第三二のエミッタの発光中心波長より大きく、第三一のエミッタの発光中心波長は、第四のエミッタの発光中心波長より大きく、第一のエミッタの発光中心波長および第三一のエミッタの発光中心波長は、同じ波長領域に存在し、第二のエミッタの発光中心波長,第三二のエミッタの発光中心波長および第四のエミッタの発光中心波長は、同じ波長領域に存在する有機発光装置。
(2)上記(1)において、第二のエミッタの発光中心波長,第三二のエミッタの発光中心波長および第四のエミッタの発光中心波長は、青色領域に存在する有機発光装置。
(3)上記(1)において、第一のエミッタの発光中心波長および第三一のエミッタの発光中心波長は、赤色領域に存在し、第二のエミッタの発光中心波長,第三二のエミッタの発光中心波長および第四のエミッタの発光中心波長は、緑色領域に存在する有機発光装置。
(4)上記(1)において、第一のエミッタおよび第三一のエミッタは、同じ材料で構成され、第二のエミッタ,第三二のエミッタおよび第四のエミッタは同じ材料で構成される有機発光装置。
(5)上記(1)において、第三の発光層における第三一のエミッタの濃度(wt%)は、第三の発光層における第三二のエミッタの濃度(wt%)より小さい有機発光装置。
(6)上記(1)において、第三の発光層における第三二のエミッタの濃度(wt%)は、第一の発光層における第一のエミッタの濃度(wt%)および第二の発光層における第二のエミッタの濃度(wt%)より大きい有機発光装置。
(7)上記(1)において、第四の発光層には、エミッタとして第四のエミッタのみが添加される有機発光装置。
(8)上記(1)において、基板上に形成された第一の電極と、第一の電極上に形成された第二の電極と、を有し、第一の発光層,第二の発光層,第三の発光層および第四の発光層は第一の電極および第二の電極で挟持され、第一の電極から第二の電極に向かって、第一の発光層,第二の発光層,第三の発光層および第四の発光層の順に配置される有機発光装置。
(9)上記(8)において、第四の発光層および第二の電極の間に第五の発光層が形成され、第五の発光層に含まれるエミッタの発光領域は、第一のエミッタの発光領域および第二のエミッタの発光領域と異なる有機発光装置。
(10)上記(1)において、基板上に形成された第一の電極と、第一の電極上に形成された第二の電極と、を有し、第一の発光層,第二の発光層,第三の発光層および第四の発光層は第一の電極および第二の電極で挟持され、第一の電極から第二の電極に向かって、第二の発光層,第一の発光層,第四の発光層および第三の発光層の順に配置される有機発光装置。
(11)上記(1)において、第一の発光ユニットおよび第二の発光ユニットを有し、第一の発光ユニットは、第一の下部電極,第一の発光層,第二の発光層および第一の上部電極を有し、第二の発光ユニットは、第二の下部電極,第三の発光層,第四の発光層および第二の上部電極を有し、第一の上部電極および第一の下部電極の間に第一の発光層および第二の発光層が形成され、第二の上部電極および第二の下部電極の間に第三の発光層および第四の発光層が形成され、第一の上部電極および第二の下部電極が電気的に接続されることで、第一の発光ユニットおよび第二の発光ユニットは直列に接続される有機発光装置。
(12)上記(1)において、第一の発光層および第三の発光層は同層に形成され、第二の発光層および第四の発光層は同層に形成される有機発光装置。
(13)上記(1)において、第一の発光層の正孔移動度が第二の発光層の電子移動度より小さく、第三の発光層の正孔移動度が第四の発光層の電子移動度より大きい有機発光装置。
(14)上記(1)において、第一の発光層の電子移動度が第二の発光層の正孔移動度より小さく、第三の発光層の電子移動度が第四の発光層の正孔移動度より大きい有機発光装置。
(15)上記(1)において、第一のエミッタのHOMOと第二のエミッタのHOMOのエネルギー差が0.0から0.3eVの範囲となる有機発光装置。
(16)第一の電極と、第二の電極と、第一の電極及び第二の電極の間に形成された第一の発光層,第二の発光層,第三の発光層と、を有し、第一の発光層には第一のエミッタが添加され、第二の発光層には第二のエミッタが添加され、第三の発光層には第一のエミッタおよび第二のエミッタが添加され、第一の発光層と第二の発光層とが接し、第二の発光層と第三の発光層とが接し、第一のエミッタの発光中心波長が第二のエミッタの発光中心波長より大きい有機発光装置。
(17)上記(16)において、第一の発光層の正孔移動度が第二の発光層の電子移動度より小さく、第二の発光層の電子移動度が第三の発光層の正孔移動度より小さく、第一の発光層の電子移動度が第二の発光層の正孔移動度より小さく、第二の発光層の正孔移動度が第三の発光層の電子移動度より小さい有機発光装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、電流密度の増大に伴う色度変化を低減できる。上記した以外の課題,構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態におけるOLED断面図。
【図2】(a)本発明の一実施形態におけるエネルギー準位概念図、(b)本発明の一実施形態におけるエネルギー準位概念図。
【図3】本発明の一実施形態におけるOLED断面図。
【図4】本発明の一実施形態におけるOLED断面図。
【図5】本発明の一実施形態におけるOLED断面図。
【図6】本発明の一実施形態におけるOLED断面図。
【図7】本発明の一実施形態におけるOLED断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本願発明の内容の具体例を示すものであり、本願発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。実施例を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
図1は有機発光素子の一実施形態におけるOLED断面図である。OLED112は、基板101,第一の電極102,正孔輸送層103,第一の発光層104,第二の発光層105,電子輸送層108,電荷発生層113,正孔輸送層103,第三の発光層107,第四の発光層141,電子輸送層108,電荷発生層113,正孔輸送層103,第五の発光層118,電子輸送層108,第二の電極109で構成されており、この順に下から配置されている。第一の発光層104,第二の発光層105,第三の発光層107および第四の発光層141は第一の電極102および第二の電極109で挟持される。第五の発光層118が配置されている必要はない。ここで、第一の電極102を陰極となる反射電極、第二の電極109を陽極となる透明電極とすると、図1の有機発光素子は第二の電極109側から発光を取り出すトップエミッション型となる。また、第一の電極102を陽極となる透明電極、第二の電極109を陰極となる反射電極とすると、図1の有機発光素子は第一の電極102側から発光を取り出すボトムエミッション型となる。第一の基板101および第一の電極102、第一の電極102および正孔輸送層103、電子輸送層108および第二の電極109はそれぞれ接していても構わない。
【0012】
<基板>
基板101として、ガラス基板が挙げられる。この他にも、基板101として用いられるものとしては金属基板、SiO2,SiNx,Al23等の無機材料を形成したプラスチック基板等が挙げられる。金属基板材料としては、ステンレス,アロイなどの合金が挙げられる。プラスチック基板材料としては、ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリメチルメタクリレート,ポリサルフォン,ポリカーボネート,ポリイミド等が挙げられる。
【0013】
<陽極>
陽極材料としては、透明性と高い仕事関数を有する材料であれば用いることができる。具体的には、ITO,IZOなどの導電性酸化物や、薄いAgなどの仕事関数の大きい金属が挙げられる。電極のパターン形成は、一般的にはガラス等の基板上にホトリソグラフィーなどを用いて行うことができる。
【0014】
<陰極>
陰極材料は、発光層からの光を反射するための反射電極である。具体的には、LiFとAlの積層体やMg:Ag合金などが好適に用いられる。また、これらの材料に限定されるものではなく、例えばLiFの代わりとして、Cs化合物,Ba化合物,Ca化合物などを用いることができる。電極のパターン形成は、一般的にはマスクを使用して、蒸着装置などを用いて行うことができる。
【0015】
<正孔輸送層>
正孔輸送層103とは、正孔136を輸送する機能を有する層である。正孔輸送材料として、下記〔化8〕のNPBや下記〔化9〕のTAPCが望ましいが、これらの材料に限定されるものではない。また、上記のうち併用できる材料が1種または2種以上正孔輸送層103に含まれていてもよい。
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
正孔輸送層103を電子ブロッキング層、すなわち、発光層からの電子をブロッキングする機能を有する層、として使用してもよいし、電子ブロッキング層として使用した正孔輸送層103と本来正孔輸送層103として用いているものを併用してもよい。また、正孔輸送層103は正孔注入層と併用してもよい。
【0019】
<正孔注入層>
正孔注入層とは発光効率や寿命を改善する目的で使用される。また、特に必須ではないが、陽極の凹凸を緩和する目的で使用される。正孔注入層を単層もしくは複数層設けてもよい。正孔注入層としては、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)):PSS(ポリスチレンスルホネート)等の導電性高分子が好ましい。その他にも、ポリピロール系やトリフェニルアミン系のポリマー材料を用いることができる。また、低分子(重量平均分子量10000以下)材料系と組合せてよく用いられる、フタロシアニン類化合物やスターバーストアミン系化合物も適用可能である。
【0020】
<電子輸送層>
電子輸送層108とは、電子135を輸送する機能を有する層である。電子輸送材料として、HOMO準位が深いという点で下記〔化10〕の3TPYMBや下記〔化11〕のAlq3が望ましいが、これらの材料に限定されるものではない。また、上記のうち併用できる材料が1種または2種以上電子輸送層108に含まれていてもよい。
【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

【0023】
電子輸送層108を正孔ブロッキング層、すなわち、発光層からの正孔をブロッキングする機能を有する層、として使用してもよいし、正孔ブロッキング層として使用した電子輸送層108と本来電子輸送層108として用いているものを併用してもよい。また、電子輸送層108は電子注入層と併用してもよい。
【0024】
<電子注入層>
電子注入層は陰極から電子輸送層108への電子注入効率を向上させる。具体的には、弗化リチウム,弗化マグネシウム,弗化カルシウム,弗化ストロンチウム,弗化バリウム,酸化マグネシウム,酸化アルミニウムが望ましい。また、もちろんこれらの材料に限られるわけではなく、また、これらの材料を2種以上併用しても差し支えない。
【0025】
<電荷発生層>
電荷発生層113とは、電荷発生層113内部を等電位に保つ層である。自由キャリアを有するという点でITO等の透明導電膜、V25,MoO3,WO3等の無機酸化物、膜厚が10nm以下の金属膜が望ましいが、これらの材料に限定されるものではない。
【0026】
図1の構成では、各発光ユニットが電荷発生層113を介して接続された構造を有するが、本発明は電荷発生層113を使用しない、通常の白色OLEDにも適用可能である。例えば、第一の発光層104及び第二の発光層105の2層積層発光層と、第三の発光層107及び第四の発光層141の2層積層発光層を、バイポーラ輸送材料を介して接続する方法などがある。
【0027】
<発光層>
発光層(第一の発光層104,第二の発光層105,第三の発光層107,第四の発光層141,第五の発光層118)とは、電極などから注入されてくる電子135及び正孔136が再結合して発光する層である。発光する部分は発光層の層内であっても発光層と発光層に隣接する層との界面であってもよい。
【0028】
第一の発光層104は発光層のホスト材料および第一のエミッタで構成される。第二の発光層105は発光層のホスト材料および第二のエミッタで構成される。第三の発光層107は発光層のホスト材料、第三一のエミッタ及び第三二のエミッタで構成される。第四の発光層141は発光層のホスト材料および第四のエミッタで構成される。第五の発光層118は発光層のホスト材料および第五のエミッタで構成される。
【0029】
第一のエミッタの発光における中心波長は、第二のエミッタの発光における中心波長より大きいことが望ましい。第三一のエミッタの発光中心波長は、第三二のエミッタの発光中心波長より大きいことが望ましい。第三一のエミッタの発光中心波長は、第四のエミッタの発光中心波長より大きいことが望ましい。発光中心波長とは、エミッタの発光スペクトルの強度が最大となる波長のことである。エミッタの発光中心波長は、そのエミッタのみを含む発光層単膜のPLスペクトルを取得することにより、その強度が最大となる波長から測定できる。
【0030】
第一のエミッタの発光中心波長および前記第三一のエミッタの発光中心波長は、同じ波長領域に存在することが望ましい。第二のエミッタの発光中心波長,第三二のエミッタの発光中心波長および第四のエミッタの発光中心波長は、同じ波長領域に存在することが望ましい。
【0031】
第三一のエミッタは、第一のエミッタと同じ材料であることが望ましい。第三二のエミッタおよび第四のエミッタは、第二のエミッタと同じ材料であることが望ましい。以下の説明では、第三一のエミッタが第一のエミッタと同じ材料、第三二のエミッタおよび第四のエミッタが第二のエミッタと同じ材料であるとする。
【0032】
第一のエミッタの発光領域および第二のエミッタの発光領域の形態として以下に記載するが、これに限られない。
(1)第一のエミッタ=赤色領域、第二のエミッタ=緑色領域
(2)第一のエミッタ=緑色領域、第二のエミッタ=青色領域
(3)第一のエミッタ=赤色領域、第二のエミッタ=青色領域
(4)第一のエミッタ=黄色領域、第二のエミッタ=青色領域
(5)第一のエミッタ=水色領域、第二のエミッタ=青色領域
上記の発光領域のパターンとして、色度変化を低減でき、実用性の高いエミッタの組合せであるという理由により(1)が望ましい。(1)より色度変化を低減できるという理由により(3)がさらに望ましい。実用的なエミッタの組合せの中で最も色度変化を低減できるという理由により(2)が最も望ましい。
【0033】
発光層のホスト材料とは、エミッタを固定化するために用いられる材料である。発光層のホスト材料として、下記〔化1〕のmCPや下記〔化12〕のCBPが望ましいが、この材料に限定されるものではない。また、上記のうち併用できる材料が1種または2種以上が発光層に含まれていてもよい。
【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
第五の発光層118に含まれるエミッタの発光領域は、第一のエミッタの発光領域および第二のエミッタの発光領域と異なることが望ましい。例えば、第一のエミッタの発光領域を赤色領域、第二のエミッタの発光領域を緑色領域、とした場合、第五の発光層118に含まれるエミッタの発光領域を青色領域とすることにより、OLED112から白色光が出射される。
【0037】
エミッタとは、発光層のホスト材料にドープされる材料である。赤色燐光材料として、量子収率が高いという点で下記〔化2〕のIr(2−phq)2acac,下記〔化3〕のIr(piq)3,Ir(piq)2(acac)などが望ましいが、これらの材料に限定されるものではない。緑色燐光材料として、量子収率が高いという点で下記〔化4〕のIr(ppy)2acac)、下記〔化5〕のIr(ppy)3などが望ましいが、これらの材料に限定されるものではない。青色燐光材料として、量子収率が高いという点で下記〔化6〕のFIr6、下記〔化7〕のFIrpicなどが望ましいが、これらの材料に限定されるものではない。また、上記のうち併用できる材料が1種または2種が発光層に含まれていてもよい。
【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
赤色燐光材料とは、620nm以上750nm以下(赤色領域)の領域に発光極大波長を持つ赤色光成分を有する材料をいう。緑色燐光材料とは、495nm以上570nm以下(緑色領域)の領域に発光極大波長を持つ緑色光成分を有する材料をいう。青色燐光材料とは、495nm以下(青色領域)の領域に発光極大波長を持つ青色光成分を有する材料をいう。黄色燐光材料とは、570nm以上590nm以下(黄色領域)の領域に発光極大波長を持つ黄色光成分を有する材料をいう。
【0045】
上記に記載された発光層のホスト材料およびエミッタを、例えば、スピンコート法,キャスト法,LB法,スプレー法,インクジェット法,ペイント法等の公知の方法により発光層は成膜される。
【0046】
図1において、第一の発光層104と第二の発光層105の2層積層発光層、第三の発光層107と第四の発光層141の2層積層発光層、及び第五の発光層118からのトータルの光が、OLED114からの光となる。そのため、OLED114から色度の電流密度依存性のない白色光を得るためには、下記の条件が考えられる。
【0047】
(1)二つの2層積層発光層を合わせた発光部の電流効率が電流密度に依存しないこと。
(2)第五の発光層118の電流効率が電流密度に依存しないこと。
(3)二つの2層積層発光層を合わせた発光部の電流効率の低下傾向と、第五の発光層118の電流効率の低下傾向とが、ある電流密度におけるトータルの光が常に一定色度の白色光を保つようなものであること。
【0048】
上記(2)を満たすには、下記の条件が考えられる。
(2−1)高電流密度領域においても発光層に使用した材料が分解・劣化しないこと。
(2−2)キャリアが発光層内に閉じ込められること。
(2−3)発光層内に励起子が閉じ込められること。
(2−4)再結合領域が発光層内に平均的に分布すること。
【0049】
現実的には、上記の条件を完全に満たすケースは存在しないため、電流密度の増大に対し、色度変化が生じる。したがって、有機発光装置の使用用途に応じて、その色度変化を許容範囲内に抑える必要がある。本実施例は主に照明での使用を想定しており、色度変化は(x,y≦Δ0.01)であることが望ましい。図1において第五の発光層118が存在しない場合は、必ずしも上記の(2)および(3)を考慮する必要はない。
【0050】
図2(a)および図2(b)に、本実施例におけるエネルギー準位概念図を示す。なお、本実施例は、図2(a)に示す2層積層発光層と図2(b)に示す2層積層発光層とを合わせて使用することにより、色度の電流密度依存性を相殺するものである。
【0051】
ここで、各発光層の移動度の関係において以下の条件のうちいずれかを満たすことが望ましい。図2は、下記(1)の内容に対応している。
【0052】
(1)第一の発光層104の正孔移動度が第二の発光層105の電子移動度より小さく、第三の発光層107の正孔移動度が前記第四の発光層141の電子移動度より大きいこと。
(2)第一の発光層104の電子移動度が第二の発光層105の正孔移動度より小さく、第三の発光層107の電子移動度が第四の発光層141の正孔移動度より大きいこと。
【0053】
ここで、電子/正孔移動度とは、固体の物質中での電子/正孔の移動のしやすさを示す量であり、単位は一般的にはcm2/Vsで表わされる。電子/正孔移動度は、TOF法やIS法で計測される。TOF法とは、一方の電極側でシート状の電荷を光パルスで発生させ、電界によって反対側に掃引させて、過渡電流波形から走行時間を測定し、平均電界を利用して移動度を求める方法である。IS法とは、微小正弦波電圧信号を素子に印加し、その応答電流信号の振幅と位相から、印加電圧信号の周波数の関数としてインピーダンススペクトルを取得することにより、走行時間、すなわち移動度を算出する方法である。
【0054】
図2(a)は正孔輸送層103,第一の発光層104,第二の発光層105,電子輸送層108で構成される。図2(a)において、正孔輸送層103のLUMO123,第一の発光層104のホスト材料のLUMO124,第二の発光層105のホスト材料のLUMO125,電子輸送層108のLUMO126,正孔輸送層103のHOMO127,第一の発光層104におけるホスト材料のHOMO128,第二の発光層105におけるホスト材料のHOMO129,電子輸送層108のHOMO130,第一の発光層104における第一のエミッタのLUMO131,第二の発光層105における第二のエミッタのLUMO132,第一の発光層104における第一のエミッタのHOMO133,第二の発光層105における第二のエミッタのHOMO134が図示されている。
【0055】
有機発光素子への電圧の印加により、正孔136は正孔輸送層103から第一の発光層104へ注入され、電子135は電子輸送層108から第二の発光層105へ注入される。電流密度の増大に伴い、第一のエミッタの発光色に近い色から第二のエミッタの発光色に近い色に変化することになる。電子135に対する第二の発光層105における第二のエミッタのLUMO132より、正孔136に対する第一の発光層における第一のエミッタのHOMO133の方が準位的に深い位置に存在するため、正孔136に対し強いトラップ性を有することになる。そのため、第一の発光層104における正孔136の移動度は、第二の発光層105における電子135の移動度より小さくなる。この結果、両キャリアは第一の発光層104と第二の発光層105の間の界面より第一の発光層104側においてより強く再結合が起こり、発光する。
【0056】
ところが、電流密度の増大に伴い、第一の発光層104における正孔136の移動度が上昇するため、再結合中心は第二の発光層105側に移動する。そのため、上記色度変化が生じる。
【0057】
図2(b)は正孔輸送層103,第三の発光層107,第四の発光層141,電子輸送層108で構成される。図2(b)において、第三の発光層107における第二のエミッタのLUMO137,第三の発光層107における第二のエミッタのHOMO138,第三の発光層107における第一のエミッタのLUMO139,第三の発光層107における第一のエミッタのHOMO140,第四の発光層141における第二のエミッタのLUMO142,第四の発光層141における第二のエミッタのHOMO143が図示されている。
【0058】
ここで、第三の発光層107には、第一のエミッタのみならず、アシストドーパントとして第二のエミッタが添加されているため、第三の発光層107における正孔136の移動度は、第四の発光層141における電子135の移動度より大きくなる。第四の発光層141にはアシストドーパントが含まれない、つまり、第四の発光層141にはエミッタとして第二のエミッタのみが添加されていることが望ましい。第四の発光層141にアシストドーパントをドープしても、第三の発光層107と第四の発光層141の移動度が異なり、移動度の上昇割合が第三の発光層107と第四の発光層141で異なるからである。
【0059】
電流密度の増大に伴い、第四の発光層141における電子135の移動度が上昇し、発光色は第二のエミッタに比較的近い色から第一のエミッタに比較的近い色に変化することになる。
【0060】
以上のように、図2(a)に示すような2層積層発光層と図2(b)に示すような2層積層発光層を組合せて使用することにより、電流密度の変化に伴う色度変化が相殺され、色度変化を低減できる。
【0061】
発光する光のピーク波長が長い発光層ほど陽極側に配置する構成において、発光層に含まれるエミッタの要求特性は、発光する光のピーク波長が長い発光層に含まれるエミッタほどLUMO準位及びHOMO準位が低いことである。しかし、上記要求特性を満たす材料の組合せは、現実的にはかなり限定される。そのため、上記構成では、必ずしも発光効率の高いエミッタを使用した発光層の組合せが使用できるわけではないことが問題であった。それに対して、本実施例では、各発光層において使用可能なエミッタの組合せに普遍性をもたせることができる。
【0062】
図3は、本発明の一実施形態におけるOLED断面図である。図3に示した構成のように、第二の発光層105と第一の発光層104の2層積層発光層と、第四の発光層141と第三の発光層107の2層積層発光層の組合せによっても電流密度の変化に伴う色度変化を低減できる。
【0063】
第二の発光層105と第一の発光層104の2層積層発光層の組合せでは、電流密度の増大に伴い、第一のエミッタの発光色に近い色から第二のエミッタの発光色に近い色に変化することになる。正孔136に対する第二の発光層105における第二のエミッタのHOMO134より、電子135に対する第一の発光層104における第一のエミッタのLUMO131の方が準位的に深い位置に存在するため、電子135に対し強いトラップ性を有することになる。そのため、第二の発光層105における電子135の移動度は、第一の発光層104における正孔136の移動度より小さくなる。この結果、両キャリアは第二の発光層105と第一の発光層104の間の界面より第一の発光層104側においてより強く再結合が起こり、発光する。
【0064】
ところが、電流密度の増大に伴い、第一の発光層104における電子135の移動度が上昇するため、再結合中心は第二の発光層105側に移動する。そのため、上記色度変化が生じる。第四の発光層141と第三の発光層107の2層積層発光層の組合せでは、電流密度の増大に伴い、第二のエミッタの発光色に近い色から第一のエミッタの発光色に近い色に変化することになる。したがって、これらの2層積層発光層を組合せて使用することにより、電流密度の変化に伴う色度変化が相殺され、色度変化を低減できる。
【0065】
第一のエミッタのHOMOと第二のエミッタのHOMOのエネルギー差は0.0から0.3eVの範囲が望ましい。これにより、第一のエミッタのHOMO準位から第二のエミッタのHOMO準位への正孔注入特性が良くなる。ここで、HOMOとは、Highest Occupied Molecular Orbitalのことであり、最高被占軌道のことである。すなわち、電子が存在している軌道のうち、最もエネルギーが高い軌道のことを示す。HOMO準位は光分子分光法によって測定される。
【0066】
プロセス工程の削減による低コスト化の観点から、第一の発光層104及び第二の発光層105と第三の発光層107及び第四の発光層141とが同一平面上に直列構造で構成されることが望ましい。また、第一の発光層104及び第二の発光層105と第三の発光層107及び第四の発光層141とが並列構造で構成されてもよい。
【0067】
図4は本発明の一実施形態におけるOLED断面図である。図4の三層積層発光層構造においては、第一の発光層104と第二の発光層105と第三の発光層107からのトータルの光が、有機発光素子116からの光となる。ここで、各発光層の移動度の関係は、第一の発光層104の正孔移動度が第二の発光層105の電子移動度より小さく、第二の発光層105の電子移動度が第三の発光層107の正孔移動度より小さいこと、および、第一の発光層104の電子移動度が第二の発光層の正孔移動度より小さく、第二の発光層105の正孔移動度が第三の発光層107の電子移動度より小さいこと、が望ましい。図4の三層積層構造においても、第一の発光層104と第二の発光層105の組合せから一方の発光色(色度)の電流密度依存性が決定され、第二の発光層105と第三の発光層107の組合せからもう一方の発光色(色度)の電流密度依存性が決定される。両者の電流密度依存性が相反する場合には、発光色(色度)の電流密度依存性を相殺できる。
【0068】
以下に具体的な実施例を示して、本願発明の内容をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0069】
実施例として、図1に示すOLED112を以下のようにして作製した。
【0070】
ガラス基板101上に第一の電極102であるITO(110nm)がパターニングされたものを、アセトンに浸して10分間超音波洗浄を行った。次に、純水を用いた超音波スピン洗浄機を用いて、純水洗浄及び回転乾燥を行った。その後、ホットプレートを用いて、大気雰囲気で基板を200℃10分間加熱した。加熱後、10分間冷却し、UV/O3処理を照射強度8mW/cm2にて30分間行った。
【0071】
これらの処理を施した基板101のITO上に、真空蒸着装置にて、正孔輸送層103としてTAPCを形成した。正孔輸送層103の膜厚は59nmであった。
【0072】
次に、正孔輸送層103上に第一の発光層104としてmCPに第一のエミッタであるIr(piq)2(acac)(10wt%)をドープした層を形成した。Ir(piq)2(acac)からの発光における中心波長は620nmである。第一の発光層104の膜厚は20nmであった。
【0073】
次に、前記第一の発光層104上に第二の発光層105としてmCPに第二のエミッタであるIr(ppy)3(10wt%)をドープした層を形成した。Ir(ppy)3からの発光における中心波長は510nmである。また、第一のエミッタのHOMOが5.1eVであるのに対し、第二のエミッタのHOMOは5.6eVである。第二の発光層105の膜厚は20nmであった。
【0074】
次に、第二の発光層105上に電子輸送層108としてAlq3を形成した。電子輸送層108の膜厚は40nmであった。
【0075】
次に、電子輸送層108上に電荷発生層113としてAlq3とLiの共蒸着膜、及びV25を形成した。両者とも膜厚は5nmであった。
【0076】
次に、電荷発生層113上に正孔輸送層103としてTAPCを形成した。正孔輸送層103の膜厚は23nmであった。
【0077】
次に、正孔輸送層103上に第三の発光層107としてmCPに第一のエミッタであるIr(piq)2(acac)(3wt%)及び第二のエミッタであるIr(ppy)3(20wt%)をドープした層を形成した。第三の発光層107の膜厚は20nmであった。上記のように第三の発光層107における第三一のエミッタの濃度(wt%)を第三の発光層107における第三二のエミッタの濃度(wt%)より小さくすることで、第三の発光層107におけるホストからアシストドーパントへのエネルギー移動、アシストドーパントから第一のエミッタおよび第二のエミッタへのエネルギー移動の効率が良くなる。また、第三の発光層107における第三二のエミッタの濃度(wt%)を、第一の発光層104における第一のエミッタの濃度(wt%)および第二の発光層105における第二のエミッタの濃度(wt%)より大きくすることで、発光効率を向上できる。
【0078】
次に、第三の発光層107上に第四の発光層141としてmCPに第二のエミッタであるIr(ppy)3(10wt%)をドープした層を形成した。第四の発光層141の膜厚は20nmであった。ここで、第一の発光層104の正孔移動度は第二の発光層105の電子移動度より小さく、第三の発光層107の正孔移動度は第四の発光層141の電子移動度より大きい。
【0079】
次に、前記第四の発光層141上に電子輸送層108としてAlq3を形成した。電子輸送層108の膜厚は40nmであった。
【0080】
次に、電子輸送層108上に電荷発生層113としてAlq3とLiの共蒸着膜、及びV25を形成した。両者とも膜厚は5nmであった。
【0081】
次に、電荷発生層113上に正孔輸送層103としてTAPCを形成した。正孔輸送層103の膜厚は95nmであった。
【0082】
次に、正孔輸送層103上に第五の発光層118としてUGH2にFIr6(20wt%)をドープした層を形成した。FIr6からの発光における中心波長は460nmである。第五の発光層118の膜厚は20nmであった。
【0083】
次に、第五の発光層118上に電子輸送層108として3TPYMBを形成した。電子輸送層108の膜厚は30nmであった。
【0084】
次に、電子輸送層108上に第二の電極109としてLiF/Alを蒸着した。第二の電極109の膜厚は0.5/150nmであった。
【0085】
最後に、封止剤の付いた封止缶を用いて封止を行い、有機発光素子のOLED112を作製した。
【0086】
(比較例1)
比較例1として、発光層が単一のエミッタのみを含む場合の有機発光素子を作製した。なお、ITO付き基板の洗浄プロセスは、実施例1と同様である。
【0087】
有機層及び電極の蒸着工程で、実施例1と異なる部分は、発光層の積層順である。実施例1では、第一の発光層104/第二の発光層105/第三の発光層107/第四の発光層141の順に積層したが、比較例1では、第一の発光層104/第二の発光層105/第一の発光層104/第二の発光層105の順に積層した。最後に、封止剤の付いた封止缶を用いて封止を行い、有機発光素子の比較例1を作製した。
【0088】
<有機発光装置の評価>
OLED112及び比較例1の色度の電流密度依存性評価を行った。デジタルソースメータ(HP社製4140B)を用いて、有機発光装置OLED112に電圧を印加し、電流を同装置で、輝度,色度を輝度計(コニカミノルタ社製,LS−110)で測定した。その結果、OLED112の色度は、0.1mA/cm2の時(0.358,0.407)、1mA/cm2の時(0.350,0.411)であり、色度変化は(Δ0.008,Δ0.004)であった。比較例1の色度は、0.1mA/cm2の時(0.360,0.405)、1mA/cm2の時(0.340,0.420)であり、色度変化は(Δ0.02,Δ0.015)であった。
【0089】
このことから、実施例1は比較例1に比べ、色度変化が低減されていることがわかる。また、実施例1の色度変化は目標値(x,y≦0.01)を満足するものである。
【0090】
前述した移動度の関係から、第一の発光層104と第二の発光層105の2層積層発光層は、電流密度の増大に対し、第二の発光層105の発光色、すなわち緑色が強くなる傾向を有する。一方、第三の発光層107と第四の発光層141の2層積層発光層は、電流密度の増大に対し、第三の発光層107の発光色、すなわち赤色が強くなる傾向を有する。したがって、これらの2層積層発光層を組み合わせたことにより、色度の電流密度依存性が相殺され、色度変化が大幅に抑制されたと考えられる。
【0091】
また、前述したHOMOの関係、つまり第一のエミッタのHOMOと第二のエミッタのHOMOがほぼ同レベルであることは、実施例1において、第一の発光層104と第二の発光層105の2層積層発光層が、電流密度の増大に対し、緑色が強くなる傾向を有することをより確実なものとする。なぜなら、第一のエミッタのHOMOと第二のエミッタのHOMOがほぼ同レベルであることは、電流密度の増大に伴い、第一のエミッタのHOMO準位に蓄積した正孔が、第二のエミッタのHOMO準位に伝搬する可能性を高める条件だからである。
【実施例2】
【0092】
実施例2として、図3に示すOLED114を以下のようにして作製した。なお、ITO付き基板の洗浄プロセスは、実施例1と同様である。
【0093】
有機層及び電極の蒸着工程で、実施例1と異なる部分は、発光層の積層順である。実施例2では、第二の発光層105/第一の発光層104/第四の発光層141/第三の発光層107の順に積層した。最後に、封止剤の付いた封止缶を用いて封止を行い、有機発光素子のOLED114を作製した。
【0094】
<有機発光装置の評価>
評価方法は実施例1と同様である。その結果、色度は、0.1mA/cm2の時(0.353,0.408)、1mA/cm2の時(0.347,0.411)であり、色度変化は(Δ0.006,Δ0.003)であった。
【実施例3】
【0095】
実施例3として、図4に示すOLED116を以下のようにして作製した。なお、ITO付き基板の洗浄プロセスは、実施例1と同様である。
【0096】
基板101のITO上に、真空蒸着装置にて、正孔輸送層103としてTAPCを形成した。正孔輸送層103の膜厚は59nmであった。
【0097】
次に、正孔輸送層103上に第一の発光層104としてmCPに第一のエミッタであるRubrene(10wt%)をドープした層を形成した。Rubreneからの発光における中心波長は560nmである。第一の発光層104の膜厚は20nmであった。
【0098】
次に、前記第一の発光層104上に第二の発光層105としてUGH2に第二のエミッタであるFIr6(10wt%)をドープした層を形成した。第二の発光層105の膜厚は20nmであった。
【0099】
次に、前記第二の発光層105上に第三の発光層107としてUGH2に第一のエミッタであるRubrene(3wt%)及び第二のエミッタFIr6(20wt%)をドープした層を形成した。第三の発光層107の膜厚は20nmであった。
【0100】
次に、第三の発光層107上に電子輸送層108として3TPYMBを形成した。電子輸送層108の膜厚は30nmであった。
【0101】
次に、電子輸送層108上に第二の電極109としてLiF/Alを蒸着した。第二の電極109の膜厚は0.5/150nmであった。
【0102】
最後に、封止剤の付いた封止缶を用いて封止を行い、有機発光素子のOLED116を作製した。
【0103】
<有機発光装置の評価>
評価方法は実施例1と同様である。その結果、色度は、0.1mA/cm2の時(0.367,0.389)、1mA/cm2の時(0.360,0.393)であり、色度変化は(Δ0.007,Δ0.004)であった。本実施例では電荷輸送層などの共通の層を一度で成膜可能なので、積層数を少なくできる。
【実施例4】
【0104】
実施例4として、図5に示すOLED117を以下のようにして作製した。なお、ITO付き基板の洗浄プロセスは、実施例1と同様である。
【0105】
有機層及び電極の蒸着工程で、実施例3と異なる部分は、発光層の積層順である。実施例4では、第三の発光層107/第二の発光層105/第一の発光層104の順に積層した。最後に、封止剤の付いた封止缶を用いて封止を行い、有機発光素子のOLED117を作製した。
【0106】
<有機発光装置の評価>
評価方法は実施例1と同様である。その結果、色度は、0.1mA/cm2の時(0.366,0.389)、1mA/cm2の時(0.359,0.392)であり、色度変化は(Δ0.007,Δ0.003)であった。
【実施例5】
【0107】
<有機発光装置の作製>
実施例として、図6に示すOLED218を以下のようにして作製した。なお、ITO付き基板の洗浄プロセスは、実施例1と同様である。
【0108】
洗浄処理を施した基板101上に第一の下部電極115−1,第二の下部電極115−2,第三の下部電極115−3を形成した。第一の下部電極115−1,第二の下部電極115−2,第三の下部電極115−3はITOで形成した。
【0109】
第一の下部電極115−1上に、真空蒸着装置にて、正孔輸送層103としてTAPCを形成した。正孔輸送層103の膜厚は40nmであった。
【0110】
次に、正孔輸送層103上に第一の発光層104としてmCPに第一のエミッタであるIr(piq)2(acac)(10wt%)をドープした層を形成した。第一の発光層104の膜厚は20nmであった。
【0111】
第一の発光層104上に第二の発光層105としてmCPに第二のエミッタであるIr(ppy)3(10wt%)をドープした層を形成した。第二の発光層105の膜厚は20nmであった。
【0112】
第二の発光層105上に電子輸送層108としてAlq3を形成した。電子輸送層108の膜厚は55nmであった。
【0113】
電子輸送層108上に第一の上部電極215−1としてLiF/Alを蒸着した。第一の上部電極215−1の膜厚は0.5/150nmであった。第一の下部電極115−1,第一の発光層104,第二の発光層105および第一の上部電極215−1で第一の発光ユニットとなる。図6において、正孔輸送層103上に第二の発光層105が形成され、第二の発光層105上に第一の発光層104が形成されていてもよい。
【0114】
第二の下部電極115−2上に、真空蒸着装置にて、正孔輸送層103としてTAPCを形成した。正孔輸送層103の膜厚は40nmであった。
【0115】
次に、正孔輸送層103上に第三の発光層107としてmCPに第一のエミッタであるIr(piq)2(acac)(3wt%)及び第二のエミッタであるIr(ppy)3(20wt%)をドープした層を形成した。第三の発光層107の膜厚は20nmであった。
【0116】
第三の発光層107上に第四の発光層141としてmCPに第二のエミッタであるIr(ppy)3(10wt%)をドープした層を形成した。第四の発光層141の膜厚は20nmであった。
【0117】
第四の発光層141上に電子輸送層108としてAlq3を形成した。電子輸送層108の膜厚は55nmであった。
【0118】
電子輸送層108上に第二の上部電極215−2としてLiF/Alを蒸着した。第二の上部電極215−2は0.5/150nmであった。第二の下部電極115−2,第三の発光層107,第四の発光層141および第二の上部電極215−2で第二の発光ユニットとなる。図6において、正孔輸送層103上に第四の発光層141が形成され、第四の発光層141上に第三の発光層107が形成されていてもよい。
【0119】
第三の下部電極115−3上に、真空蒸着装置にて、正孔輸送層103としてTAPCを形成した。正孔輸送層103の膜厚は40nmであった。
【0120】
次に、正孔輸送層103上に第五の発光層118としてUGH2にFIr6(20wt%)をドープした層を形成した。第五の発光層118の膜厚は20nmであった。
【0121】
第五の発光層118上に電子輸送層108としてAlq3を形成した。電子輸送層108の膜厚は55nmであった。
【0122】
電子輸送層108上に第三の上部電極215−3としてLiF/Alを蒸着した。第三の上部電極215−3の膜厚は0.5/150nmであった。第三の下部電極115−3、第五の発光層11および第三の上部電極215−3で第三の発光ユニットとなる。本実施例において、第三の発光ユニットはなくてもよい。
【0123】
最後に、封止剤の付いた封止缶を用いて封止を行い、有機発光素子のOLED218を作製した。第一の上部電極215−1および第二の下部電極115−2は電気的に接続されている。第二の上部電極215−2および第三の下部電極115−3は電気的に接続されている。これにより、第一の発光ユニット,第二の発光ユニットおよび第三の発光ユニットは直列に接続されることになる。
【0124】
このように、直列構造とすることのメリットは、工程プロセス数の削減による低コスト化などが挙げられる。
【0125】
<有機発光装置の評価>
評価方法は実施例1と同様である。その結果、色度は、0.1mA/cm2の時(0.347,0.396)、1mA/cm2の時(0.340,0.400)であり、色度変化は(Δ0.007,Δ0.004)であった。
【実施例6】
【0126】
<有機発光装置の作製>
実施例として、図7に示すOLED119作製は、OLED116の作製方法において、第一の発光層104及び第三の発光層107、第二の発光層105及び第四の発光層141が並列構造となるように製作した。
【0127】
洗浄処理を施した基板101上に第三の下部電極115−3および第四の下部電極115−4を形成した。第三の発光ユニットの形成方法は実施例5と同様である。本実施例において、第三の発光ユニットはなくてもよい。
【0128】
第四の下部電極115−4上に、真空蒸着装置にて、正孔輸送層103としてTAPCを形成した。正孔輸送層103の膜厚は40nmであった。
【0129】
次に、正孔輸送層103上に第一の発光層104および第三の発光層107を形成した。第一の発光層104および第三の発光層107は同層に形成されることになる。第一の発光層104は、mCPに第一のエミッタであるIr(piq)2(acac)(10wt%)をドープした層であり、第一の発光層104の膜厚は20nmであった。第三の発光層107は、mCPに第一のエミッタであるIr(piq)2(acac)(3wt%)及び第二のエミッタであるIr(ppy)3(20wt%)をドープした層であり、第三の発光層107の膜厚は20nmであった。
【0130】
第一の発光層104および第三の発光層107上に第二の発光層105および第四の発光層141を形成した。第二の発光層105および第四の発光層141は同層に形成されることになる。第二の発光層105は、mCPに第二のエミッタであるIr(ppy)3(10wt%)をドープした層であり、第二の発光層105の膜厚は20nmであった。第四の発光層141は、mCPに第二のエミッタであるIr(ppy)3(10wt%)をドープした層であり、第四の発光層141の膜厚は20nmであった。正孔輸送層103上に第二の発光層105および第四の発光層141を形成し、第二の発光層105および第四の発光層141上に第一の発光層104および第三の発光層107を形成してもよい。
【0131】
第二の発光層105および第四の発光層141上に電子輸送層108としてAlq3を形成した。電子輸送層108の膜厚は55nmであった。
【0132】
電子輸送層108上に第四の上部電極215−4としてLiF/Alを蒸着した。第四の上部電極215−4の膜厚は0.5/150nmであった。第四の下部電極115−4,第一の発光層104,第二の発光層105,第三の発光層107,第四の発光層141および第四の上部電極215−4で第四の発光ユニットとなる。
【0133】
第四の上部電極215−4および第三の下部電極115−3は電気的に接続されている。これにより、第三の発光ユニットおよび第四の発光ユニットは直列に接続されることになる。
【0134】
このように、並列構造とすることのメリットは、工程プロセス数の削減による低コスト化などが挙げられる。
<有機発光装置の評価>
評価方法は実施例1と同様である。その結果、色度は、0.1mA/cm2の時(0.345,0.395)、1mA/cm2の時(0.340,0.399)であり、色度変化は(Δ0.005,Δ0.004)であった。
【符号の説明】
【0135】
101 基板
102 第一の電極
103 正孔輸送層
104 第一の発光層
105 第二の発光層
107 第三の発光層
108 電子輸送層
109 第二の電極
112,114,116,117 OLED
113 電荷発生層
115−1,115−2,115−3,115−4 下部電極
118 第五の発光層
123 正孔輸送層のLUMO
124 第一の発光層のホスト材料のLUMO
125 第二の発光層のホスト材料のLUMO
126 電子輸送層のLUMO
127 正孔輸送層のHOMO
128 第一の発光層におけるホスト材料のHOMO
129 第二の発光層におけるホスト材料のHOMO
130 電子輸送層のHOMO
131 第一の発光層における第一のエミッタのLUMO
132 第二の発光層における第二のエミッタのLUMO
133 第一の発光層における第一のエミッタのHOMO
134 第二の発光層における第二のエミッタのHOMO
135 電子
136 正孔
137 第三の発光層における第二のエミッタのLUMO
138 第三の発光層における第二のエミッタのHOMO
139 第三の発光層における第一のエミッタのLUMO
140 第三の発光層における第一のエミッタのHOMO
141 第四の発光層
142 第四の発光層における第二のエミッタのLUMO
143 第四の発光層における第二のエミッタのHOMO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に形成された第一の発光層,第二の発光層,第三の発光層および第四の発光層と、を有し、
前記第一の発光層には第一のエミッタが添加され、
前記第二の発光層には第二のエミッタが添加され、
前記第三の発光層には第三一のエミッタおよび第三二のエミッタが添加され、
前記第四の発光層には第四のエミッタが添加され、
前記第一の発光層は前記第二の発光層に接し、
前記第三の発光層は前記第四の発光層に接し、
前記第一のエミッタの発光中心波長は、前記第二のエミッタの発光中心波長より大きく、
前記第三一のエミッタの発光中心波長は、前記第三二のエミッタの発光中心波長より大きく、
前記第三一のエミッタの発光中心波長は、前記第四のエミッタの発光中心波長より大きく、
前記第一のエミッタの発光中心波長および前記第三一のエミッタの発光中心波長は、同じ波長領域に存在し、
前記第二のエミッタの発光中心波長、前記第三二のエミッタの発光中心波長および前記第四のエミッタの発光中心波長は、同じ波長領域に存在する有機発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第二のエミッタの発光中心波長、前記第三二のエミッタの発光中心波長および前記第四のエミッタの発光中心波長は、青色領域に存在する有機発光装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第一のエミッタの発光中心波長および前記第三一のエミッタの発光中心波長は、赤色領域に存在し、
前記第二のエミッタの発光中心波長、前記第三二のエミッタの発光中心波長および前記第四のエミッタの発光中心波長は、緑色領域に存在する有機発光装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記第一のエミッタおよび前記第三一のエミッタは、同じ材料で構成され、
前記第二のエミッタ、前記第三二のエミッタおよび前記第四のエミッタは同じ材料で構成される有機発光装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記第三の発光層における前記第三一のエミッタの濃度(wt%)は、前記第三の発光層における前記第三二のエミッタの濃度(wt%)より小さい有機発光装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記第三の発光層における前記第三二のエミッタの濃度(wt%)は、前記第一の発光層における前記第一のエミッタの濃度(wt%)および前記第二の発光層における前記第二のエミッタの濃度(wt%)より大きい有機発光装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記第四の発光層には、エミッタとして前記第四のエミッタのみが添加される有機発光装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記基板上に形成された第一の電極と、
前記第一の電極上に形成された第二の電極と、を有し、
前記第一の発光層、前記第二の発光層、前記第三の発光層および前記第四の発光層は前記第一の電極および前記第二の電極で挟持され、
前記第一の電極から前記第二の電極に向かって、前記第一の発光層、前記第二の発光層、前記第三の発光層および前記第四の発光層の順に配置される有機発光装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記第四の発光層および前記第二の電極の間に第五の発光層が形成され、
前記第五の発光層に含まれるエミッタの発光領域は、前記第一のエミッタの発光領域および前記第二のエミッタの発光領域と異なる有機発光装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記基板上に形成された第一の電極と、
前記第一の電極上に形成された第二の電極と、を有し
前記第一の発光層、前記第二の発光層、前記第三の発光層および前記第四の発光層は前記第一の電極および前記第二の電極で挟持され、
前記第一の電極から前記第二の電極に向かって、前記第二の発光層、前記第一の発光層、前記第四の発光層および前記第三の発光層の順に配置される有機発光装置。
【請求項11】
請求項1において、
第一の発光ユニットおよび第二の発光ユニットを有し、
前記第一の発光ユニットは、第一の下部電極、前記第一の発光層、前記第二の発光層および第一の上部電極を有し、
前記第二の発光ユニットは、第二の下部電極、前記第三の発光層、前記第四の発光層および第二の上部電極を有し、
前記第一の上部電極および前記第一の下部電極の間に前記第一の発光層および前記第二の発光層が形成され、
前記第二の上部電極および前記第二の下部電極の間に前記第三の発光層および前記第四の発光層が形成され、
前記第一の上部電極および前記第二の下部電極が電気的に接続されることで、前記第一の発光ユニットおよび前記第二の発光ユニットは直列に接続される有機発光装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記第一の発光層および前記第三の発光層は同層に形成され、
前記第二の発光層および前記第四の発光層は同層に形成される有機発光装置。
【請求項13】
請求項1において、
前記第一の発光層の正孔移動度が前記第二の発光層の電子移動度より小さく、
前記第三の発光層の正孔移動度が前記第四の発光層の電子移動度より大きい有機発光装置。
【請求項14】
請求項1において、
前記第一の発光層の電子移動度が前記第二の発光層の正孔移動度より小さく、
前記第三の発光層の電子移動度が前記第四の発光層の正孔移動度より大きい有機発光装置。
【請求項15】
請求項1において、
前記第一のエミッタのHOMOと前記第二のエミッタのHOMOのエネルギー差が0.0から0.3eVの範囲となる有機発光装置。
【請求項16】
第一の電極と、
第二の電極と、
前記第一の電極及び前記第二の電極の間に形成された第一の発光層,第二の発光層,第三の発光層と、を有し、
前記第一の発光層には第一のエミッタが添加され、
前記第二の発光層には第二のエミッタが添加され、
前記第三の発光層には前記第一のエミッタおよび前記第二のエミッタが添加され、
前記第一の発光層と前記第二の発光層とが接し、
前記第二の発光層と前記第三の発光層とが接し、
前記第一のエミッタの発光中心波長が前記第二のエミッタの発光中心波長より大きい有機発光装置。
【請求項17】
請求項16において、
前記第一の発光層の正孔移動度が前記第二の発光層の電子移動度より小さく、
前記第二の発光層の電子移動度が前記第三の発光層の正孔移動度より小さく、
前記第一の発光層の電子移動度が前記第二の発光層の正孔移動度より小さく、
前記第二の発光層の正孔移動度が前記第三の発光層の電子移動度より小さい有機発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−221902(P2012−221902A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89706(P2011−89706)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】