説明

有機繊維強化ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂組成物

【課題】 強度・剛性、荷重たわみ温度、耐衝撃性などの物性が高く、サーマルリサイクルの場合でも、焼却残渣がなく環境にやさしいポリスチレンアクリロニトリル系共重合体組成物を提供することにある。
【解決手段】 ポリスチレンアクリロニトリル系共重合(A)100質量部対して、融点が200℃以上の有機繊維(B)5〜150質量部を含有することを特徴とする有機繊維強化ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂組成物である。さらに、ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体(A)が、ブタジエンおよび/又はアクリル酸エステルにグラフトされたものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートを芯に、ポリスチレンアクリルニトリル系共重合体を鞘とした複合繊維を使用することにより本発明はより効果的に達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機繊維強化されたポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、ポリエステル繊維と母相のポリスチレンアクリロニトリル系共重合体との接着性が高く強度・剛性や荷重たわみ温度を保持して耐衝撃性に優れた有機繊維強化ポリスチレンアクリロニトリル系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂は、いわゆるAS樹脂として、またゴム成分を重合やポリマーアロイしたいわゆるABS樹脂としてよく知られている。ABS樹脂は高い耐衝撃性を有することから日用品や自動車部品や電気部品として広く使用されてきた。しかし、ABS樹脂はゴム成分により耐衝撃性が付与されているため、ゴム成分の量が少ないと耐衝撃性は不十分であり、ゴム成分が多いと剛性や強度が低下して、強度や剛性と耐衝撃性の両立が困難であった。また、省資源のためにリサイクル成形するとゴム成分の劣化がおこりリサイクル品では耐衝撃性が損なわれリサイクル使用が困難であった。剛性と耐衝撃性を両立させるためにABS樹脂をガラス繊維により強化することもなされている(特許文献1)が、ガラス繊維はコンパウンド時や成形時に短く折損するので補強性が低く、高い性能が要求される部品への使用には制限があった。一方、ケナフや竹繊維による補強も検討されているが、自然の繊維であるため、品質の安定性が低く、工業用途には問題があり、一般化していないのが実情である。
この課題を解決するために、これまで、合成繊維強化も検討されたが、ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体中で繊維の開繊性や分散性が悪く補強効果が低く、実用に至らなかった。
強度・剛性や荷重たわみ温度が高く、かつ高い耐衝撃性を有し、特にリサイクル後も品質が高くリサイクル使用に優れたポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂組成物の開発が望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−216188号公報
【非特許文献1】Kunststoffe,Bd,Heft 1,S.9(1968)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、強度・剛性、荷重たわみ温度、耐衝撃性などの物性が高く、リサイクルしてもこれらの物性の低下が少なく、かつサーマルリサイクルによる焼却残渣がない環境にやさしいポリスチレンアクリロニトリル共重合体樹脂組成物を提供することにある。更に詳しくは、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維が均一分散し、かつポリスチレンアクリロニトリル系共重合体との接着性に優れて補強効果が高く、成形性と機械的性質と耐熱性において優れたポリスチレンアクリロニトリル系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。即ち本発明は、ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体(A)100質量部に対して、融点が200℃以上の有機繊維(B)5〜150質量部を含有することを特徴とする有機繊維強化ポリスチレンアクリロニトリル共重合体樹脂組成物である。好ましい態様は、ポリスチレンアクリロニトリル系共重合(A)が、ブタジエンおよび/又はアクリル酸エステルへのグラフト共重合体であることや、有機繊維(B)がポリエステル繊維であり、特に、ポリエチレンテレフタレート繊維を芯に、ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体を鞘とする複合繊維が、特に本発明の効果を発揮するために有効である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂組成物によれば、マトリックス樹脂であるポリスチレンアクリロニトリル系共重合体と強化繊維であるポリエステル繊維などの有機繊維との接着性がよく、かつ強化繊維の分散性が優れるため、繊維補強効果が高いポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂組成物を提供することができる。
このため、本発明の樹脂組成物で成形した成形品は、機械的性質、耐熱性、耐衝撃性が高く、かつ軽量なポリスチレンアクリロニトリル系樹脂成形品とすることができる。
また、本発明の樹脂組成物は、リサイクル成形しても強化繊維がほとんど損傷しないため、高い耐衝撃性を保持するからリサイクル性に優れ、循環社会における省資源性に優れる成形材料であり、さらに、サーマルリサイクルのために焼却した場合であっても、ガラス繊維強化などの場合と異なり、焼却残渣が残らないので、最終埋め立て廃棄物の発生がなく、サーマルリサイクルの点でも優れ、環境負荷が小さい成形材料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体(A)100質量部に対して、融点が200℃以上の有機繊維(B)5〜100質量部を含有することを特徴とする有機繊維強化ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂組成物である。
【0008】
本発明に使用されるポリスチレンアクリロニトリル系共重合体(A)としては、スチレン、アクリロニトリルの合計が60モル%以上、好ましくは70〜100モル%を含有する。スチレンとアクリロニトリルのモル比は、95:5〜60:40、好ましくは90:10〜70:30である。この他の共重合モノマーとしは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、ブテン、ブタジエン、イソプレンなどが上げられる。また、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、ブテン、ブタジェン、イソプレンなどの重合体にスチレンやアクリロニトリルのモノマーをグラフト共重合した共重合体や、ポリスチレンアクリロニトリル共重合体とポリブタジエンやポリイソプレンのブレンド体が使用される。ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体としては、190℃、21.2Nにおけるメルトフローレート(JIS K7210)が1〜100g/10分の樹脂が好ましく、特に、10〜95g/10分が好ましい。1g/10分以下では、成形時の流動性が低く大型の成形品が成形できないので好ましくない。また、100g/10分を越えると機械的強度が低く、脆いので本発明には好ましくない。
また共重合成分としては、アクリル酸エステル重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリマーやアクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニルなどが挙げられるが、これらの中では、アクリル酸エステル共重合体やポリブタジエンが特に好ましい。
ポリスチレンアクリルニトリル系共重合体100質量%中のアクリル酸エステル重合体やポリブタジエンの割合は0〜40質量%が好ましく、特に5〜25質量%が好ましい。
本発明の有機繊維による耐衝撃性改善効果は、ポリスチレンアクリルニトリル系共重合体のゴム補強効果とは相反するものではなく相乗効果を有する。この有機繊維との相乗効果により、ゴム補強単独では達成できなかった高い剛性や荷重たわみ温度と高い耐衝撃性との両立が可能になった。
【0009】
本発明の樹脂組成物には、有機繊維(B)が強化繊維として使用される。有機繊維(B)としては、綿、麻、絹、羊毛、竹繊維、ケナフなどの天然繊維やレーヨンのような化学繊維、ポリエステル、ポリアミド、アクリルなどの汎用の合成繊維、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、パラヒドロキシベンゾエート繊維などのスーパー耐熱繊維などが使用可能である。
しかしながら、工業用部品として使用される樹脂組成物としては、品質の安定性が重要であることを考慮すると、天然繊維はあまり好ましいものではない。また、汎用のポリスチレンアクリロニトリル樹脂には、スーパー繊維はコスト/性能のバランスの点ではあまり好ましいものではない。
したがって、本発明の好ましい有機繊維(B)としては、合成繊維が挙げられ、特にポリエステル繊維が好ましい。ポリエステル繊維の中でも、特に、融点が245℃以上のポリエステル繊維(C)が好ましい。融点が245℃を下回ると、母相(マトリックス相)の溶融温度との差が小さくなり、成形温度の条件幅が狭くなることになる。
【0010】
融点が245℃以上のポリエステル繊維(C)としては、エチレンテレフタレート単位を80モル%以上、特に95モル%以上を含むポリエチレンテレフタレート系繊維が好ましい。ポリエチレンテレフタレートに、少量のイソフタル酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが共重合されてもよい。
ポリエステル繊維は、高倍延伸された高弾性率の繊維であり、23℃における引張弾性率が、15g/dtex以上の繊維がより好ましい。
【0011】
本発明をより効果的に発揮するには、予め有機繊維(B)とポリスチレンアクリロニトリル系共重合体(A)を複合化しておく事が好ましい。
複合化の方法としては、有機繊維(B)の表面をポリスチレンアクリロニトリル系共重合体(A)やこれらのポリスチレンアクリロニトリル系重合体に近似する重合体で前処理又は被覆をしておく方法や高融点の有機繊維(B)とポリスチレンアクリロニトリル系共重合体(A)やこれらのポリスチレンアクリロニトリル系重合体に近似する重合体を複合紡糸する方法、あるいは、高融点の有機繊維と低軟化点のポリスチレンアクリロニトリル共重合体を別個に紡糸と延伸し、これらのフィラメントを所定の混合比になるように混繊複合して、撚りをかけて加熱後希望の長さに切断して複合繊維とする方法などがある。
【0012】
複合紡糸の場合の複合繊維としては、芯鞘型、サイドバイサイド型などが挙げられるが、この複合繊維の製造方法としては、例えば、高融点ポリエステルとポリスチレンアクリロニトリル共重合体をそれぞれ並列した押出機にて溶融押出しし、溶融状態で接合しノズルから紡糸し、クエンチして得た未延伸糸を延伸し、撚りをかけた後、鞘部を加熱溶融させ集束させた後、好ましい長さにカットする方法が、集束性がよくコンパウンドなどの作業時の取り扱い性に優れた複合繊維が得られる点で好適である。
【0013】
芯鞘型複合繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維を芯に、母相となるポリスチレンポリアクリロニトリルと親和性の高いポリスチレンアクリロニトリル系共重合体を鞘とした複合繊維が分散性がよく、かつ繊維と母相との界面接着性が向上するので好ましい。
芯と鞘の比率としては、質量比で20:80〜90:10が好ましく、より好ましくは、30:70〜80:20である。
【0014】
複合繊維の単糸繊度は0.1〜20dtexが好ましく、より好ましくは1〜10dtexであり、集束品の繊度は2000〜700000dtexが好ましい。単糸繊度が0.1未満では引張り強力が低く、20dtexを越えると、接触面積が小さく補強効果が低くなる傾向がある。また集束品の繊度は2000未満や700000を越えると、ポリスチレンアクリロニトリル系樹脂への分配が悪くなる傾向がある。
また、繊維の長さは、0.5〜10mmが好ましい。特に好ましくは2〜8mmである。0.5mm未満では容易に破壊面で引き抜かれて補強効果が低く、また10mmを越えると、成形品の成形時、繊維が絡み合って、流動性低下や細いゲート部での繊維詰まりなどが発生しやすくなる傾向がある。
複合繊維の断面形状は特に限定されず、円形、楕円断面や三角、四角などの多角断面、異型断面などが使用できる。
【0015】
ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体(A)と有機繊維(B)の組み合わせのうち、ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体(A)が、ブタジエンおよび/又はアクリル酸エステルがブロック共重合されたポリスチレンアクリロニトリル系共重合体であり、有機繊維(B)が、ポリエステル繊維であることが好ましく、特に、ポリエステル繊維が、融点が245℃以上のポリエチレンテレフタレートを芯に、ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体を鞘とした複合繊維であることが、繊維の分散性と接着性が高く、繊維強化の効果が高いため特に好ましい。
【0016】
また本発明の樹脂組成物を得る方法は特に限定されない。例えば、上記の高融点ポリエステルと低軟化点のポリスチレンアクリロニトリル系共重合体の芯鞘複合繊維とポリスチレンアクリロニトリル共重合体とをドライブレンドする方法、左記のドライブレンド物を溶融混練する方法、高融点ポリエステル繊維と低軟化点ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体繊維からなる複合繊維とポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂を溶融混練する方法、高融点ポリエステル繊維と低軟化点ポリスチレンアクリロニトリル共重合体樹脂を溶融混練する方法などがある。
高融点ポリエステルと低軟化点ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体の芯鞘複合繊維とポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂を溶融混練する方法は繊維の分散性がよいので、コンパウンドペレットを製造しないで、例えば、ドライブレンドして射出成形機内で溶融混練して射出成形しても高品質の成形品が得られるので特に好ましい。
【0017】
本発明に使用される熱可塑性樹脂組成物には、いろいろな改質樹脂や安定剤や着色剤、流動性改良材、離型材、結晶核剤が配合される。これらは、重合前後に混合することもできるが、単軸押出機、2軸押出機やニーダーなどの装置を用いて、混練することにより製造することができる。配合剤をより高濃度に含む組成物を予め溶融混練して、成形時にこれをマスターバッチとして混合することもできる。
【0018】
本発明の有機繊維強化ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂組成物の用途は特に限定されない。成形品をリサイクル成形してもガラス繊維の場合のような繊維の折損は殆ど起こらないため、耐衝撃性などの機械的性質は保持されるので、特にリサイクル使用を考え設計される部品の成形に最適である。使用後にサーマルリサイクルなどのために焼却した場合、残渣が殆ど発生しない。このため、本発明の樹脂組成物は、耐熱性や耐衝撃性・強度剛性が要求される自動車、電機・電子機器、OA機器部品、家庭用具の部品などの工業用途にエコロジー的に優れた成形材料として使用される。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により説明するが、これらに限定されるものではない。なお明細書中の物性評価は以下の方法により測定した。
(1)シャルピー衝撃値
23℃、50%RHにて48時間調湿した幅4mmの試験片について、東洋精機(株)製ユニバーサルインパクトテスター(60Kg−cmハンマー)を使用して、ISO 179に準じて試験した。
(2)引張強さ・引張弾性率
23℃、50%RHにて48時間調湿したISO 294 タイプA試験片について、島津製作所社製オートグラフ AG−IS型を使用して、ISO 527に準じて試験して、引張強さと引張弾性率を測定した。
(3)荷重たわみ温度
23℃、50%RHにて48時間調湿した10mm×4mm×80mmの試験片について、東洋精機(株)製ヒートデストーションテスター(TYPE H8302)を使用して、ISO 75に準じて、フラットワイズモードにて0.46MPa下での荷重たわみ温度(HDT)を測定した。
【0020】
(実施例1〜7、比較例1〜5)
実施例、比較例に使用した材料は以下のとおりである。
<ポリスチレンアクリロニトリル共重合体(A)>
・ABS−1:ABS樹脂[ダイセル(株)製、セビアン−V 高剛性グレード120 ]
・ABS−2:ABS樹脂[ダイセル(株)製、セビアン−V 超高衝撃グレード300 ]
・AS−1:AS樹脂[旭化成(株)製、ザイロン AS789 ]
<有機繊維(B)>
・PET:ポリエチレンテレフタレート繊維[東洋紡績(株)製、単繊維径2dtex、集束繊度20000dtex、繊維長5mm]
・PET/AS−1:ポリエチレンテレフタレート(東洋紡績(株)製)/AS(旭化成(株)製、ザイロン AS789)=60/40の芯/鞘複合繊維[東洋紡績(株)製、単繊維径2.2dtex、集束繊度 50000dtex、繊維長7.5mm]
・PA66/AS−1:ナイロン66(旭化成ケミカルズ(株)製)/AS(旭化成(株)製、ザイロン AS789)=50/50の芯/鞘複合繊維[東洋紡績(株)製、単繊維径4dtex、集束繊度 50000dtex、繊維長7.5mm]
上記材料を表1に示す配合比にドライ状態で予備混合し、これを熱風乾燥機で80℃、3時間乾燥した後、その状態で東芝機械(株)製、IS100射出成形機のホッパーに投入して、190℃のシリンダーで可塑化時に溶融混練して、金型温度50℃にて、ISO 294の多目的試験片のファミリモールドを使用して射出成形によりテストピースを成形した。
【0021】
得られた試験片を23℃、50%RHにて48時間調整して、それぞれ荷重たわみ温度(0.46MPa)、引張強さ・引張弾性率、シャルピー衝撃値を評価した。その結果を表1に示す。
表1からも明らかなように、ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体をポリエステル繊維の鞘とした複合繊維を配合したポリエステル繊維強化ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体の組成物は、非強化の場合に比べて高い強度・剛性、耐衝撃性および高い荷重たわみ温度を有している。
【0022】
【表1】

【0023】
(実施例8)
実施例1により得られた射出成形品を、孔径5mmの篩をセットした朋来製作所製粉砕機で粉砕して、リサイクルペレットを得た。これを実施例1と同様に乾燥と射出成形して、実施例8のテストピースを得た。このシャルピー衝撃値は、26kJ/m2であり、リサイクル後93%の保持率であった。
(比較例6)
実施例8のPET/AS−1複合繊維を、旭ファイバーグラス社製カット長3mmのガラス繊維(03JA429)に変えた以外は全く同様にコンパウンドと射出成形をして、テストピースを得た。このシャルピー衝撃値は、21kJ/m2であった。これを、実施例8と同様に粉砕して、射出成形された比較例6のリサイクル成形品のシャルピー衝撃値は、7.2kJ/m2とリサイクル後の保持率は34%であった。
ガラス繊維は成形や粉砕により折損するため補強効果が急減するが、本発明のような有機繊維を使用した場合は、成形や粉砕時に殆ど折損しないので、リサイクルによる補強効果の低下はほとんど認められない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の有機繊維強化ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体組成物は、強度・剛性と荷重たわみ温度が高く、非強化ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂では設計できなかった耐熱性と耐衝撃強度が要求される大型の文房具、日用品、電気製品のケース、ハウジングなど、さらには、耐熱性や耐衝撃性・強度剛性が特に要求される自動車、電機・電子機器、OA機器部品、家庭用具などの各種部品用成形材料として利用可能である。
また、リサイクル成形品も物性を保持することからリサイクル使用が可能であり、サーマルリサイクルの場合でも、燃焼残渣の発生が殆どなく、最終廃棄物を発生することがないため、エコロジー的に優れた成形材料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体(A)100質量部対して、融点が200℃以上の有機繊維(B)5〜150質量部を含有することを特徴とする有機繊維強化ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体脂組成物。
【請求項2】
ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体(A)が、ブタジエンおよび/又はアクリル酸エステルにグラフト共重合されたポリスチレンアクリロニトリル系共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の有機繊維強化ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂組成物。
【請求項3】
有機繊維(B)が、ポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1に記載の有機繊維強化ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂組成物。
【請求項4】
ポリエステル繊維が、融点245℃以上のポリエチレンテレフタレートを芯に、ポリスチレンアクリロニトリル系共重合体を鞘とする複合繊維であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のポリスチレンアクリロニトリル系共重合体樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−91793(P2007−91793A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279612(P2005−279612)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】