説明

有機蒸気噴流沈着用の方法

【課題】有機フィルムの作成方法を提供する。
【解決手段】有機蒸気を運ぶために非反応性同伴ガスを使用する。該有機蒸気をノズルブロック930を通して冷却された基体950上に噴出してパターン化有機フィルム960を形成する。該方法を遂行するための装置も提供されている。該装置は、有機蒸気源、同伴ガス源、及び真空室を含む。該有機蒸気源と該同伴ガス源に取り付けられた加熱ノズルブロック930は、該真空室内に配置された冷却基体950上に同伴ガスと有機蒸気を噴出するように適応させた少なくとも1個のノズルを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の説明)
本特許出願は、以下の米国特許出願、即ち、60/317215(2001年9月4日出願)、60/316264(2001年9月4日出願)、60/316968(2001年9月5日出願)、及び60/332090(2001年11月21日出願)に対する優先権の利益を主張するものである。これらの特許出願は参考のため全体を加入する。本特許出願は、同時出願特許出願no. ,代理人事件整理no.10020/21904と関連があり、この特許出願全体を参考のため加入する。
【0002】
(政府の権利に関する記載)
本発明は、米国空軍科学研究事務所により裁定された契約No.F49620−92−J−05 24(プリンストン大学)の下、政府の支持でなされた。政府は本発明において或る権利を有する。
【0003】
本発明は、有機蒸気相沈着の蒸気移送機構を利用した、有機物質の基体上へのパターン化沈着方法に関する。
【背景技術】
【0004】
分子状有機化合物は、有機発光ダイオード(OLED)、光電池、および薄膜などの種々の応用において活性物質として使用されている。典型的に、これらの薄膜(〜100nm)装置は、信頼性のある効率的な操作に必要な高度の純度および構造調整を可能にしながら、高真空で熱蒸着させることにより成長する(S.R.Forrest,Chem.Rev.97,1793(1997)参照)。しかしながら、製品の製造に必要な大面積にわたる膜厚均一性と添加物濃度の調整は、真空蒸着を使用する際には難しいことがあり得る(S.WolfおよびR.N.Tauber,Silicon Processing for the VLSI Era(Lattice,1986)参照)。更に、蒸発物のかなりの部分が蒸着室の冷たい壁を覆う。長期にわたると、非効率的な材料の使用は、薄片になってはげる可能性のある厚い塗膜を生じ、該系及び基体の粒子状汚染につながる。真空蒸着有機薄膜装置の潜在的処理能力は低く、高い製造費用を生ずる。低圧有機蒸気相沈着(LP−OVPD)は、沈着フィルムの添加物濃度に対する調整を改良し、大面積基体上への有機物の急速で粒子のない均一な沈着に適応できるという点で、真空熱蒸着(VTE)よりも優る代わりの技術として最近示されている(M.A.Baldo,M.Deutsch,P.E.Burrows,H.Gossenberger,M.Gerstenberg,V.S.Ban,およびS.R.Forrest,Adv.Mater.10,1505(1998)参照)。
【0005】
有機蒸気相沈着は、該分子が境界層を横切って拡散し基体上に物理収着される沈着室の中に有機蒸気を運ぶための同伴ガスを使用するという点で、広く使用されている真空熱蒸着とは本来相違している。このフィルム沈着法は、III−V半導体の成長で用いられている水素化物蒸気相成長法に最も類似している(G.B.Stringfellow,Organometallic Vapor Phase Epitaxy(Academic,London,1989);T.P.Pearsall編集G.H.Olsen,in GaInAsP(Wiley,New York,1982)参照)。低圧有機蒸気相沈着においては、有機化合物は熱的に蒸発してから不活性同伴ガスにより熱壁反応器の中に運ばれ冷却基体に向かいそこで凝縮が生ずる。流れ方式は、非常に均一な塗膜厚と材料の最小浪費を生ずるような、基体を選択できる有機蒸気の均一な分配を達成するように設計することが出来る。
【0006】
大気圧有機蒸気相沈着を用いて、Burrows等(P.E.Burrows,S.R.Forrest,L.S.Sapochak,J.Schwartz,P.Fenter,T.Buma,V.S.Ban,およびJ.L.Forrest,J.Cryst.Growth 156,91(1995)参照)は、非線形光学有機塩、4'−ジメチルアミノ−N−メチル−4−スチルバゾリウムトシレイトを最初に合成した。この方法の変形法において、VaethおよびJensen(K.M.VaethおよびK.Jensen,Appl.Phys.Lett.71,2091(1997)参照)は、窒素を用いて芳香族前駆体の蒸気を運び、該芳香族前駆体を基体上で重合させて発光ポリマー、ポリ(s−フェニレンビニレン)のフィルムを生成した。最近、Baldoと共働者(M.A.Baldo,V.G.Kozlov,P.E.Burrows,S.R.Forrest,V.S.Ban,B.KoeneおよびM.E.Thompson,Appl.Phys.Lett.71,3033(1997)参照)は、N,N−ジ−(3−メチルフェニル)−N,Nジフェニル−4,4−ジアミノビフェニルおよびアルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノリン)(Alq)から成るヘテロ構造有機発光ダイオードの明らかに最初の低圧有機蒸気相沈着成長、並びにAlq中にドープされたローダミン6Gから成る光学的に汲み上げられた有機レーザーを示している。更に最近、Shtein等は、低圧有機蒸気相沈着法による無定形有機薄膜の成長を支配する物理的機構を判断している(M.Shtein,H.F.Gossenberger,J.B.Benziger,およびS.R.Forrest,J.Appl.Phys.89:2,1470(2001)参照)。
【0007】
薄膜装置に用いられている有機材料のほとんどすべては、充分に高い蒸気圧を有しており、400℃よりも低い温度で蒸発してからアルゴンや窒素のような同伴ガスにより蒸気相に運ばれる。これは、有機金属化学気相蒸着の場合のような、反応管の外側にある蒸発源の位置決めを可能にしており(S.WolfおよびR.N.Tauber,Silicon Processing for the VLSI Era(Lattice,1986);G.B.Stringfellow,Organometallic Vapor−Phase Epitaxy(Academic,London,1989)、蒸発と移送の機能を空間的に区別し、かくして蒸着法に対する正確な調整を達成している。
【0008】
これらの例は有機蒸気相沈着が特に大基体面積に亘る有機フィルムの沈着において真空熱蒸着に優る或る利点を有することを示しているけれども、該先行技術は配列状の有機物質を沈着する際に生ずる特殊な問題に対処していない。有機発光ダイオードの作成における最近の成功は、有機発光ダイオードディスプレイの発展を促進している(S.R.Forrest,Chem.Rev.97,1793(1997)参照)。有機発光ダイオードは、該装置に電圧をかけると光を発する有機薄膜を利用している。有機発光ダイオードは、フラットパネルディスプレイ、照明および背面照明のような用途に対して次第に人気の高くなる技術になりつつある。有機発光ダイオードの構造には二重ヘテロ構造、単一ヘテロ構造、および単一層が含まれ、有機発光ダイオードを作成するために多種多様の有機材料を使用することが出来る。有機発光ダイオードのいくつかの材料および構造は米国特許第5707745号明細書(特許文献1)に説明されているが、該特許の全体を参考のために本明細書に加入する。
【0009】
真空熱蒸着を用いて配列を作成する場合のように、有機発光ダイオード技術に有機蒸気相沈着を適応させるために、所望の画素格子の形状を描写するシャドウマスクを基体に近づけて置き基体上への沈着のパターンを画定する。シャドーマスクデザインの調整は、例えば、フルカラー有機発光ダイオード系ディスプレイの作成において重要な工程である(Burrows等の米国特許第6048630号明細書(特許文献2)参照)。理想的には、基体上に得られるパターンはシャドウマスクに刻み込まれたパターンと同一であり、沈着物質の横分散は最小で厚さ均一性は最善である。しかしながら、有機層を沈着させる際の有機蒸気相沈着の相対的利点にも拘わらず、有機蒸気相沈着におけるシャドウマスクの使用には、真空熱蒸着と比べて顕著な横分散、材料の浪費、マスクからフィルム上への塵汚染の可能性、および大面積処理のためマスクと基体との分離を調整する際の困難性などの或る不利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5707745号明細書
【特許文献2】米国特許第6048630号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、有機蒸気相沈着の蒸気移送機構を利用した、有機物質の基体上へのパターン化沈着方法を提供することである。本発明の目的は、又、有機物質を基体上へパターン化沈着するこの方法を、シャドウマスクの必要なしに行うための装置を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
有機フィルムの作成方法を提供する。有機蒸気を運ぶために非反応性同伴ガスを使用する。該有機蒸気をノズルブロックを通して冷却された基体上に噴出してパターン化有機フィルムを形成する。該方法を遂行するための装置も提供する。該装置は、有機蒸気源、同伴ガス源、及び真空室を含む。該有機蒸気源と該同伴ガス源に取り付けられた加熱ノズルブロックは、該真空室内に配置された冷却基体上に同伴ガスと有機蒸気を噴出するように適応させた少なくとも1個のノズルを有する。
【0013】
有機蒸気噴流沈着(OVJD)による本発明の一態様においては、有機蒸気は、不活性ガスにより該源セルから時限弁を通してノズルブロック中に運ばれ、そこから基体上に噴出される。好ましくは、基体は冷却され、ノズルブロックは加熱される。好ましくは、所望の沈着パターンを達成するために弁のタイミングと同調して速度νで基体を平行移動させる。ガス流速V、ノズル幅z、基体までの距離d、基体の平行移動速度ν、源の温度T、および弁のタイミングτを調整することにより、所望幅の複数画素に対して均一厚さの側面、tを達成することが出来る。該方法は、横分散を最小にするために、好ましくは減圧で行われる。sの減少およびVの増加は、又、大気圧でも該分散を最小にすることが出来る。
【0014】
有機蒸気噴流沈着用の典型的な沈着圧力は、0.01〜10Torrの範囲である。無定形フィルムも結晶性フィルムも有機蒸気噴流沈着により成長させることが出来る。
【0015】
本発明の一態様において、同伴ガス流速Vは、見掛け流速(bulk flow velocity)が少なくとも該分子の熱運動速度、略100〜1000m/sのオーダーに乗るように増加させ、一方向性の「噴流」物質を造り出す。数学的用語を使えば、この条件は、ノズルの軸方向の平均流速(見掛け流速)が少なくともノズル軸に直角方向の平均絶対流速(熱運動速度)のオーダーに乗る場合に、満たされる。好ましくは、ノズルの軸方向の平均流速はノズル軸に直角方向の平均絶対流速と少なくとも同じ大きさである。用語、「絶対」流速はノズル軸に直角方向の平均流速に関して使用しているが、その理由は、或る特定の流速で左に移動する各分子に対して同じ速度で右に移動する他の分子があるかもしれず、この様な方向の平均流速が略零になるかも知れないからである。
【0016】
更に、本発明の一実施態様によれば、基体温度、反応器圧力、およびノズル構成の適当な条件下で、もしもノズルと基体の離隔距離sが同伴ガスの分子平均自由行路λ内にあれば、解像度が略1μmの縁の鋭い画素の配列を噴流沈着で達成出来る。更に、一方向性流の故に、より重い同伴ガスを使用すると、より良い沈着方向性が得られ、その後より鋭い画素が得られる。
【0017】
本発明の或る態様の一利点は、ノズルと方向流の加熱により材料の浪費が最小となっていることである。例えば、ノズル表面上への有機物質の物理収着(凝縮)を避けるのに充分な温度までノズルを加熱することが出来、それにより浪費を減少させ、又ノズルを掃除する必要をも減少させるのである。基体を冷却して、沈着特性を促進し、有機物質が沈着しなくなる点まで同伴ガスが基体を加熱するような事態を避けることが出来る。他の利点はマスキング工程がないことであり、その結果、製造速度が増加し、沈着装置のデザインがより小型となり、シャドウマスクからの汚れがなくなるのである。典型的に1mm未満の離隔距離sを必要とする高解像度沈着において、有機蒸気相沈着を用いたシャドウマスクからの汚れは特に問題である。その小さなマスクと基体との離隔距離を大きな基体面積に亘って維持する際には、特に該マスクが通常は薄く可撓性であろうから、更に問題が生ずる。
【0018】
本発明の或る態様の他の利点は、別個のシャドウマスクを使う必要なしに同じ基体上に複数のカラー画素をパターン化することにより、フルカラー有機発光ダイオードディスプレイの製造に本方法を使用することが出来るということである。該装置は、インク噴射式印字装置の印刷ヘッドに酷似して配置され同調して操作される或る配列のノズルを組み込んでいる。各ノズルは赤、緑および青発色団用の3個の源セルを組み入れ、シャドウマスクを移動させる必要なく、それらの物質を順次に層状にするための弁調整を行うことが出来る。例えば、各ノズルを異なる弁を通して複数の源セルに連結させ、各ノズルからの沈着を基体上の異なる場所で異なる色に変えることが出来る。あるいは、各ノズルを複数の源セルの一つだけに連結させ、各ノズルにそれ自体の弁を持たせるか、又は、異なるグループのノズルを異なる源に連結させ、各グループにそれ自体の弁を持たせて、ノズルブロックが予め定めたパターンの異なる有機物質を沈着するようにすることが出来る。
【0019】
本発明の態様によれば、源セルから流速Vで移動する不活性同伴ガスを介して、有機蒸気を時限弁を通してノズルブロック中に移送し、その際該移送を圧力Pで行い、不活性同伴ガスの流速Vを見掛け流速が少なくとも該分子の熱運動速度のオーダーに乗るように増加させ、次に流速Vで移動する不活性同伴ガスを介して該有機蒸気をノズルブロックから冷却基体上に噴出し、その際冷却基体を温度Tとノズルブロックからの距離sに維持することを含む、有機物質の基体上へのパターン化沈着方法が提供される。
【0020】
更に、本発明の態様によれば、冷却基体またはノズルブロックの一方を速度νで横に平行移動させながら冷却基体をノズルブロックからの距離sに維持し、その際速度νを時限弁と同調させて有機物質のパターン化沈着を作り出すことを含む方法も提供される。
【0021】
更に、本発明の態様によれば、0.01〜10Torrの圧力Pにおけるこのパターン化沈着方法も提供される。
【0022】
更に、本発明の態様によれば、基体とノズルブロックとの間の距離sが同伴ガスの分子平均自由行路内であるこのパターン化沈着方法も提供される。
【0023】
更に、本発明の態様によれば、ノズル噴流の各々が1個以上の源セルを含む少なくとも1個のノズル噴流、1個以上の源セルの各々に連結された1個の時限弁、および1個の時限弁に連結された加熱ノズルブロックを含む、有機物質の基体上へのパターン化沈着用の装置も提供される。
【0024】
更に、本発明の態様によれば、パターン化沈着がフルカラー有機発光ダイオードディスプレイであり、少なくとも1個のノズル噴流が長方形の配列をしたn×m個のノズル噴流であり、1個以上の源セルが赤、緑、および青発色団用の3個の源セルである、有機物質の基体上へのパターン化沈着用の装置も提供される。
【0025】
更に、本発明の態様によれば、加熱ノズルブロックの出力で変化し得る口径を含む、有機物質の基体上へのパターン化沈着用の装置も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】真空熱蒸着システムを示した図である。
【図2】真空熱蒸着システムを示した図である。
【図3】有機蒸気相沈着システムを示した図である。
【図4】有機蒸気相沈着システムを示した図である。
【図5】シャドウマスクを通しての沈着に対する模擬実験結果を示した図であり、変化する沈着圧力の影響を示している。
【図6】シャドウマスクを通しての沈着に対する模擬実験結果を示した図であり、マスクと基体との離隔距離を変化させた場合の影響を示している。
【図7】シャドウマスクを通しての沈着に対する模擬実験結果を示した図であり、変化するマスク厚みの影響を示している。
【図8】シャドウマスクを通しての沈着に対する模擬実験結果を示した図であり、変化する有効境界層厚みの影響を示している。
【図9】有機蒸気噴流沈着装置の一態様を示した図である。
【図10】シャドウマスクを通しての沈着後に銀被覆ガラス基体上に形成されたいくつかの代表的Alqパターンの走査電子顕微鏡写真を示した図である。
【図11】無次元分散変数R=d/s対沈着圧力Pdepのプロットを示した図である。
【図12】物質の濃度図を示した図である。
【図13】有機蒸気噴流沈着により沈着した物質の模擬輪郭を示した図である。
【図14】同伴ガスが見掛け流速を有する有機蒸気相沈着の模擬実験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の態様は、有機蒸気相沈着の蒸気移送機構を利用した、有機物質の基体上へのパターン化沈着方法、およびこのパターン化沈着方法を行うための装置に関する。本方法の一態様には、源セルから流速Vで移動する不活性同伴ガスを介して、有機蒸気を時限弁を通してノズルブロック中に移送し、その際該移送を低い圧力Pで行い、流速Vで移動する不活性同伴ガスを介して該有機蒸気をノズルブロックから冷却基体上に噴出し、そしてノズルブロックの噴出端からの距離sに維持されている冷却基体を速度νで横に平行移動させることが含まれる。該平行移動速度は時限弁と同調させて有機物質の望ましいパターン化沈着を作り出す。
【0028】
図1は真空熱蒸着システム100を示す。源110は物質が真空室120の中に蒸発するように加熱される。該物質は真空を通して基体130に拡散し、そこで沈着することが出来る。
【0029】
図2はマスク220を有する真空熱蒸着システム200のより詳細な図を示す。源210は、10−6〜10−7Torrの程度の真空中に拡散する有機物質を提供する。該有機物質は該真空を通して且つシャドウマスク220を通して拡散する。開口222を有するシャドウマスク220は基体230から距離s離れて配置されている。有機物質はシャドウマスクを通過してから基体230上に沈着してパターン化有機層240を形成する。
【0030】
真空熱蒸着に典型的に使用されている圧力は低いので、分子平均自由行路λ(mfpとも云われる)は全く大きいであろう。例えば、10−7Torrでλは略1mである。結果として、例えば、該室内の源と基体との距離が10〜100cmの程度である場合、50μm未満のマスクと基体との離隔距離は、縁が良く画定された100μmまでの画素を生ずることが出来る。好ましくは、基体230と源210との距離は、真空中の分子同士の衝突が最小となるように分子平均自由行路λよりも小さく、マスク220により遮られない基体230から源210への明瞭な線の視界が存在する所にパターン化層240が沈着する。真空熱蒸着を用いて、良く画定された限定ベースと台形をなす画素側面が得られる。10−3〜10−13Paが真空熱蒸着には好ましい圧力範囲である。
【0031】
源210は単一の点ではないので、パターン化層240は開口222よりわずかに大きくなるであろう。図2に関して、パターン化層240のベースの長さlは次の式によって表される:
【数1】

(式中、s=マスクと基体との離隔距離、t=マスクの厚み、l=源の幅、l=開口の幅、そしてh=源とマスクとの距離)。この式により、実験的に観察される値に非常に近いd値が得られる。
【0032】
図3は有機蒸気相沈着システム300を示す。同伴ガスは源セル310の上を通過し、該源セルから有機物質が同伴ガス中に蒸発する。複数の源セル(示されていない)を用いて、有機物質の混合物を提供し、そして(または)異なる時刻に異なる有機物質を提供することが出来る。それから同伴ガスは基体330からδの距離に位置するマスク320を通過する。それから同伴ガスは基体330上に衝突し、そこで有機物質が基体表面上に物理収着される。基体330は冷却することが出来る。システム300の壁340を加熱して、有機物質が壁340上に沈着するのを減少させるか防止することが出来る。有機物質は小分子物質であっても良いし、又は重合体物質であっても良い。
【0033】
図4は、有機蒸気相沈着システム400を示す。源(図4には示されていない、例えば、図3参照)から有機分子を運ぶために同伴ガスを使用する。該分子は平均自由行路λを有する。マスク410は基体420の上sの距離に配置されている。有機層430はマスク410中の開口412を通して基体420上に沈着する。同伴ガス中の分子同士の衝突の故に、直接開口412の上ではない領域で、マスクの下dの距離まで有機物質の沈着が著しく生ずるであろう。該沈着は好ましくは圧力範囲の下限で行われるので、平均自由行路はより高い圧力におけるよりも大きくなり、それに対応してdは小さくなり、従ってフルカラーディスプレイ用途に好ましいミクロン尺度の解像度が達成出来る。
【0034】
図5はシャドウマスクを通しての拡散方式沈着に対する模擬実験結果を示す。公称s=10μmおよび18μmのマスク厚さに対して、λ=8.25、82.5および825μm
【数2】

に対する沈着パターンが図5に示されている。分子を、平均分子熱運動速度を有する任意の角度でマスクから2000μm離れた点から発射し、模擬空間体積にわたり拡散させた。基体の付近の濃度分布は線状であることが分ったが、それは移送が純粋に拡散性であることを示している。これが、図5において異なる値のλに対してdの相違が観察されない理由である。又連続体モデルと一致して、基体とマスクに沈着する分子の割合、即ち、沈着効率は、小さなDorgに対応する小さなλの方が、より低い。この模擬実験は、30μmのマスク開口幅、18μmのマスク厚み、およびマスク離隔距離、s=10μmで、行った。プロット510,520および530は、Pdep = 1.0, 0.1, 0.01 Torrでλ= 8.25, 82.5, 825に対して、マスク(高部)および基体(底部)上への沈着厚さ分布を示している。プロット510,520および530の間で画素形状に顕著な相違は無く、これは純粋に拡散性の方式では圧力が縁の分散に殆ど影響を有さないことを示すものであり、沈着効率は予想通りλの値が低くなると低下する。
【0035】
図6はシャドウマスクを通しての拡散方式沈着に対する模擬実験結果を示す。t=18μmかつλ=82.5μmで、マスクの開口幅は30μmのままであるが、プロット610,620および630に対して夫々 s=3,10,20μmである。sの値が小さくなると、画素は鋭くなる。s〜λである限り、真空沈着と同様に、台形状の画素形状が得られる。s〜tであると、画素の重複が生じ始める。この模擬実験に対して純粋に拡散性の構成を維持すれば、図6はsの変化が画素の縁分散に如何に影響するかを示す。この方式でλはdに影響しないので、我々はλ=82.5μmを使用する。t=18μmに対しs=20μmの場合に、画素のぶつかり合いが生じ始める、即ち、sがtに近づくと、隣接する画素同士の重複が生ずる。
【0036】
図7はシャドウマスクを通しての拡散方式沈着に対する模擬実験結果を示す。λ=82.5μmかつs=10μmで、マスクの開口幅は30μmのままである。ここで、プロット710,720および730に対して夫々マスク厚さ、tは18, 36, および54μmに変えられている。マスクが厚くなると、低いマスク対基体沈着比に見られるように、基体への物質流動を切除し沈着効率を減少させるという犠牲にもかかわらず、画素は鋭くなる。tがλに近づくに従って、真空蒸着と同様に、平行分子流束は台形状の画素群を生ずる。tがλに近づくに従って、ドーム形状の輪郭は次第に真空熱蒸着台形のようになる。
【0037】
図8はシャドウマスクを通しての拡散方式沈着に対する模擬実験結果を示す。λ=82.5μmかつs=10μmで、マスクの開口幅は30μmである。プロット810および820は、夫々δ=410μmおよびδ=2060μmに対する結果を示す。ここでは、噴射点を基体に近づけるように調節することにより、有効境界層厚さを2060μmから410μmに減少させる。基体への拡散限定移送用の連続体モデルと一致して、δがλに近づくに従って、沈着効率は増加する。ここでは、分子を基体に近づけて噴射することにより有効δを変えた。
【0038】
純粋に拡散性の沈着方式における同伴ガスの質量の変化は、前の節の議論から予想されるように、沈着分布に一次の効果を有さないことが分った。
【0039】
図9は有機蒸気噴流沈着装置の一態様を示す。本発明の態様に従う基体上への有機物質のパターン化沈着方法を、図9を参照しながらこれから説明する。
【0040】
一態様において、有機蒸気は不活性同伴ガスにより源セル910から時限弁920の中へと運ばれる。源セル910は好ましくは温度Tに維持され、不活性同伴ガスは流速Vで移動している。時限弁920の開閉(即ち、該弁の時間的調節、τ)は、好ましくはパターン化沈着方法を通して調節される。時限弁920が開いている時、有機蒸気を運ぶ不活性ガスは時限弁920を通してノズルブロック930の中へ移動する。ノズルブロック930は、有機蒸気をノズルブロック930を通して運ぶ不活性ガスの温度を調整するのに用いられる加熱(冷却)装置940を含むのが好ましい。有機蒸気噴流沈着と有機蒸気相沈着との一相違は、加熱壁340のような加熱壁の利点が有機蒸気相沈着では顕著であるかもしれないが、有機蒸気噴流沈着ではそれ程顕著ではないということである。特に、ノズルブロック930が加熱装置940を含む場合、真空室(図9には示されていない)の壁を加熱する別個の追加加熱装置の利点は必要ないかもしれない。しかしながら、それにもかかわらず、有機蒸気噴流沈着用真空室の壁を加熱する加熱装置は使用することが出来る。ノズルブロック930は好ましくは幅zのノズルを有する。ノズルブロック930から、不活性同伴ガス中の有機蒸気はノズルを通して基体950、好ましくは冷却基体上に噴出され、そこで有機蒸気が凝縮してパターン化層960を形成する。好ましくは、有機蒸気はノズルブロック930から基体950までの距離sを移動しなければならない。基体950は、物質の沈着と沈着の間、物質の沈着中、または両者において、平行移動速度νで移動させることが出来る。基体は好ましくはモーター駆動ステージを用いて平行移動させ、該ステージと弁の時間的調節はコンピューターの調節により操作し同調させる。多層沈着及び多色ディスプレイ沈着のためには該装置を直列で繰り返すことが出来る。
【0041】
前述の工程変数を調整することにより、所望のパターン化沈着を達成することが出来る。具体的には、所望の幅lのパターン化層960に対して均一な厚さ分布、tを達成することが出来る。該方法を減圧で行うことにより、幅lにおける分散を最小にすることが出来る。更に、大気圧でも、ノズルブロック930から基体950までの距離sを減少させること、及び(又は)同伴ガス流速Vを増加させることにより、幅lにおける分散は最小となるであろう。
【0042】
もし図9におけるノズルブロック930から基体950までの距離sが基体をシャドウマスクから分離する数ミクロンに匹敵する大きさであり、ガス流速Vが充分に高ければ、その時はlにおける分散は最小となり、解像度は1ミクロンの程度で予想されるであろう。
【0043】
10−6より低い圧力で真空熱蒸着を用いて鋭く画定された画素を達成することは、分子平均自由行路λが典型的に30 cmより大きいので、比較的容易であるが(図1および2参照)、有機蒸気相沈着では状況はもっと複雑である。有機蒸気相沈着は0.1μm<λ<1cmで且つ0.01Torrより高い圧力で典型的に進行するので、マスク面の付近における分子間衝突の頻度が増加し、縁が比較的より拡散した画素が生ずる(図4参照)。それにも拘わらず、我々はミクロンの程度でパターンを画定させたシャドウマスクを通しての有機フィルム沈着を示した(図10参照)。
【0044】
図10は、2×10−6〜2Torrの範囲のPdepにおけるシャドウマスクを通しての有機蒸気相沈着から得られるパターンの走査電子顕微鏡写真を示す。沈着圧力が増加するに従って、模擬データも実験データも縁の鋭さが失われることを示している。イメージ1010,1020および1030は、夫々、Pdep=2×10−6, Pdep=0.2TorrおよびPdep=2Torrに対する結果を示す。左カラムおよび右カラムに対して、夫々、離隔距離sは5μmおよび2.5μmである。モデルにより予測されるように、圧力およびマスクと基体との離隔距離が増加するに従って、画素はより拡散する。0.2Torrの圧力および15μmまでの離隔距離で、フルカラーディスプレイ用途に充分な数ミクロンの程度の画素解像度を達成することが可能であることが判明した。
【0045】
同時係属特許出願代理人事件整理番号10010/37は、有機蒸気相沈着の基礎を説明しており、参考の為本明細書に加入する。同時係属仮出願代理人事件整理番号10020/21901(本明細書では「'901出願」という)も参考の為本明細書に加入する。'901出願は、有機蒸気相沈着を用いて有機物質をシャドウマスクを通して沈着させ、連続して金属を真空蒸着により同じシャドウマスクを通して沈着させる、有機装置作成用の複合技術に関する。'901出願では、有機蒸気相沈着の背後にある理論が充分に発展されており、模擬実験に使用されるモデルが説明されている。蒸気相移送用に開発されたこれらの同じモデルを用いて、我々は、もし見掛け流速を増加させてガス噴流を作り出し、基体からノズルまでの距離が分子平均自由行路内であるならば、1ミクロンの解像度が達成出来ることを、更に判断した。該モデルを以下に説明する。
【0046】
有機蒸気相沈着の概念は図3及び4に例示されている。該方法は以下に概説する三工程から成る。スピシーズAの蒸気は、該源物質を不活性同伴ガス流中で加熱することにより発生する。その後、気体状のAは同伴ガスにより沈着室の中に運ばれ、そこで該流れは基体の付近で流体力学的境界層を形成する。最終工程で、有機分子(0.01%未満の典型的濃度で存在する)は境界層を横切って拡散し基体上に物理収着または吸着される。これらの三段階の移送は、以下の一連の反応として表すことが出来る:
【数3】

式中、Aは固体状または液体状の有機分子のスピシーズを表す。スピシーズAおよびAは、源セルの内側で、特性速度kevapおよびkcondで夫々蒸発し再び凝結する。蒸発は、所謂「動的」状態(kevap > kcond)にあるか、又は平衡状態(kevap = kcond)にある場合に起こる。同伴ガスによる同伴の結果、Acgは特性見掛け移送速度kで基体の付近まで移送され、そこで100%の全効率でAcgsとなり、残りは沈着室から排出される。境界層を横切るAの拡散および特性速度kadsでの吸着により、沈着が起こる。全沈着速度は、rdep = kdep − kdes(kdesは基体からの脱着速度である)である。
【0047】
以下で議論する有機蒸気相沈着の高度の分子特性に関する資質を以って、我々は、典型的には、同伴ガス速度対平均分子速度の比、ν/uは略0.01〜1である、即ち、低圧有機蒸気相沈着における流れは音波状態よりも低いか又はそれに接する。使用される低圧のために、レイノルズ数、Reは充分層流状態内にある(Re≪2000)。基体の付近におけるグラスホフ数、Grはやはり1よりも小さく、これは基体の近くのガス混合において自然対流が顕著でないことを暗示するものである。当面の沈着力学の議論に対しては、工程2,3aおよび3bのみが関連している。無定形薄膜の効率的な沈着は最小の表面拡散と脱着を要するので、我々は最も低い実用的な基体温度を使用する。この場合、結晶化速度、kは非常に高いが、二つの事が起こる、即ちkads≫kdesとなり、これは表面を拡散する有機分子が基体に拡散するよりもずっと速く固定されることを意味する。従って、「反応」3bは非常に速く、無定形フィルムの沈着に対しては考慮する必要がない。かくして、速度を限定する工程は2と3aである。
【0048】
以前の著書に示されているように(M.Shtein,et al.,J.of Appl.Phys.,89:1470(2001)参照)、工程2と3aの組合せに対する全沈着速度、rdepは以下のように表すことが出来る:
【数4】

式中、Porg/RTは有機スピシーズの濃度であり、
【数5】

は同伴ガス流速であり、本明細書を通じて同伴ガス流速を示すために同様に使用されている変数Vと等しく、δは境界層の厚みであり、Dorgは同伴ガス中における有機分子の拡散係数である。運動学的粘性自体はν=μ/ρ(式中、ρ=P/RT)によって圧力に依存している。背景ガス圧力、Pdepを増加させると、二つの反する因子、即ち、rdepを低下させる拡散係数Dorgの減少および移送速度を改良するδの減少のため、沈着速度、rdepはほとんど直線的減少を示すであろう。この式は、与えられたプロセス条件に対して全沈着速度を予想し、又、表面分子拡散モデルを加味して、多結晶性薄膜の結晶化速度と粒径を予測するのに使用することが出来る。
【0049】
基体の付近においては、このシステムは、平板に垂直にぶつかるガス噴流、平板の近くで停滞する均一な流れ、又は(塗布均一性を改良する)回転円板上にぶつかる流れとして設計することが出来、すべての場合、δは以下の式で表される:
【数6】

式中、νはガスの運動学的粘性であり、aは
【数7】

および(又は)回転速度と共に直線的に減少する量であり、この式は、νがcm/sで表されaに対してcm/sで表した見掛け軸速度を使用する場合、δをcmの単位で直接予測するのに使用することが出来る。有機蒸気相沈着およびこの研究で使用されている典型的な条件、例えば、窒素のT=275℃, Pdep=0.2Torrおよび
【数8】

に対して、δは略1〜10cmである。しかしながら、は典型的な沈着室の軸の寸法の程度であるから、境界層の数式項は注意して有機蒸気相沈着に適用しなければならない。
【0050】
(有機蒸気相沈着を用いたパターン化フィルム沈着)
先の議論は、均一な見掛け拡散係数Dorgと境界層厚みδの使用のため、連続体仮定の妥当性に依存している。この部分は、有機蒸気相沈着におけるシャドウマスキングに適用した場合の連続体仮定の妥当性を検討する。
【0051】
シャドウマスクを通しての有機蒸気相沈着を分析する際の主要な疑問は、有機分子がマスク面に到達する時最初の見掛け流速をどの程度維持するかである。最初に、我々は境界層、「BL」の存在を仮定するが、そこではその名のとおり分子が見掛け移送の記憶を失い、速度分布が充分に熱運動化される。この場合、より高いPdepによるDorgの減少はパターンの鋭さを少なくしないことが定性的に見られる。Dorgは等方性であるから、分子が基体に直角に拡散するのが長くかかればかかる程、分子が横に拡散するのが(同じ量だけ)ますます長くかかるであろう。これらの速度の相互取消は異なる圧力における同一のパターンを生ずると思われるが、これは観察される実験傾向ではない。Dorgに対するわずかにより現実的なモデル(例えば、下の式(8)参照)は、減少する温度勾配に沿ってそれが基体の方向に減少する所にある。しかしながらもう一度、減少が等方性であるから、パターンは影響されないままであるべきである。
【0052】
境界層内の等方性速度分布に対する要件を緩め、分子にそれらの初期速度のz成分を維持させると、dmaxが大体次式により表されることを示すことが出来る:
【数9】

式中、dmaxは図4に示されるような画素縁分散であり、uは沈着室における同伴ガス速度である。ここで我々は、λはマスク開口に沿って位置する一連の源点からの拡散として該プロセスをモデル化するのに充分小さいと仮定した。画素縁分散は、Dorgを介した圧力並びにマスクと基体との離隔距離sの平方根と共に増加する。見掛け流速を増加させると、当然このモデルの場合、鋭さが改善される。しかしながら、この式は穏やかな圧力(例えば0.1Torr)に対して画素縁分散を少なくとも一桁の大きさだけ過大評価しているが、それはこの議論に関する寸法と圧力には拡散移送仮定が厳格には適用できないからである。実験的に得られた沈着パターンは、該機構が二つの拡散様式間のどこかにあることを暗示している。
【0053】
ここで、連続体、それ故に拡散仮定が有機蒸気相沈着条件の大部分に対して正しくないことに注意すべきである。シャドウマスクの寸法に基づくクヌーセン数(λ/L, Lは特性長)は大きく、質量およびエネルギーの保存方程式はもはや閉集合を形成しない。真空熱蒸着と有機蒸気相沈着の機構はそれぞれ図2と4に概略的に示されている。基体の近くで有機分子が直面する乱雑な衝突は、画素が横に拡がる原因になる。その名のとおり分子速度の完全な乱雑化は境界層の内部で起こるので、δの大きさはパターンの鋭さに影響すると予想される。更に、後者は以下の因子、即ち、分子平均自由行路λ、マスクと基体との離隔距離s、およびマスク開口形状により限定されるであろう。プロセス要因の観点から、これらの因子は沈着圧力、同伴ガス流速、使用する同伴ガスの種類、およびシャドウマスクの設計により調整される。Dorgとλとは緊密に関連しているので、我々は次にλがどのようにPdepと共に変化するかを、そしてそのパターン鋭さへの影響を検討する。
【0054】
モンテ−カルロ式模擬実験は、シャドウマスクを通しての沈着をモデル化するのに使用することができる。我々は今や、更なる分析を遂行するのに必要な方程式を提示する。図4における論理から、明らかに、λが大きくなると、境界層内の分子間衝突が少なくなり、シャドウマスク上の横に均一な濃度分布と相まって基体上のパターンの横分散が少なくなる。単一成分低圧非極性ガスに対して、λは次の式を有する。
【数10】

従って、ガスの圧力を減少させることによって、平均自由行路は増加し、より鋭い画素が得られるであろう。しかしながら、圧力を無制限に減少させることは出来ない、というのは有機蒸気を運ぶために使用する同伴ガスの流入が必然的に背景ガス圧力を生ずるからである。非常に低い沈着圧力Pdepの限界は、λが大きく同伴ガス流速
【数11】

が物質移送を制限する自由分子移送方式を表す。
【数12】

が増加するとPdepが大きくなり、λが減少するに従って移送は拡散が制限されてくる。充分な同伴ガス流速の使用と有機物質のガス相拡散の最大化との妥協が、有機蒸気相沈着で好ましく使用される最適圧力範囲、0.01〜10Torrを生ずる。
【0055】
方程式(6)はヘリウム及びアルゴンのような希薄非極性ガスに関して正確に使用することが出来るが、有機蒸気相沈着はAlqのような錯体分子と窒素またはアルゴンのような同伴ガスとの混合物を扱っている。有効な名目上の平均自由行路および衝突断面、即ち、λおよびσは、方程式6および下記の関係式により拡散係数に対する変形表現を通して決めることが出来る。
【数13】

ここで、双極子または誘導双極子を有する分子の拡散係数に対する下記のチャップマン−エンスコグ式を用いることが出来る:
【数14】

式中、Mは拡散スピシーズiの質量であり、Tはガス温度であり、σABは平均衝突断面であって、σAB = [1/2(σ+σ1/2。量ΩD,ABはレナード−ジョーンズ分子間電位および温度の無次元関数である。残念なことに、有機発光ダイオードで普通に使用されている物質に対しては、信頼できるレナード−ジョーンズ変数が利用できず、下記のフラーの相関関係を置換えることが出来る:
【数15】

式中、Σνは拡散分子の個々の構造成分の有効体積寄与率の合計である。種々の分子特定定数が他の場所に記載された標準基寄与方法を用いて計算されている(R.B.Bird, W.E.S.,及びE.N.Lightfoot著Momentum,Heat and Mass Transfer,1996年,John Wiley & Sons社発行)。表1から明らかなように、DABの値は異なる理論間で1/2桁の大きさだけ異なり、2成分の拡散係数をより正確に決めるためには、より詳細な実験および(又は)分子動力学模擬実験を行うことが必要であろう。しかしながら、λおよびσの近似値は圧力に対する傾向を決めるには充分であるはずである。
【表1】

【0056】
上記分析を加入したモンテ−カルロ模擬実験が以下の通り進行する。計算空間をセルの大きさが可変の3次元格子に分割する。有機分子を表す粒子は、境界層の内側でマスクの上に無作為な最初の位置を割り当てられ、マックスウェル−ボルツマン分布を満たす速度を与えられる。或る時間間隔経過後で平均自由行路の1/10以下の短い移動距離の後に、該分子はマックスウェル−ボルツマン分布からの任意の速度を有する局所的に発生した同伴分子と衝突させられる。衝突の受入れは次の関数を用いて計算される:
【数16】

式中、Fは1個の模擬分子により代表される現実の分子数であり、σは衝突分子の全断面であり、uはそれらの相対速度であり、Δtは衝突を生じさせる時間間隔であり、一方Vは衝突が起るセルの容積である。σの値は、粒子相対速度νに次の式で対応する有効衝突直径deffから計算することが出来る。
【数17】

空間で巨大分子を追跡している間に、全プロセスを繰返す。基体平面またはマスク側面に衝突すると、有機粒子はそこに固定される。境界の条件を周期的に横に与え、一方有機物質と同伴ガスの一定濃度を境界層の縁で固定する。所望の膜厚が基体上に形成されるまで模擬実験が行われる。いくつかの個々の分子から成る巨大分子の追跡は計算費用を節約するために行われる。模擬実験を適用して図5乃至8に示される結果を生じた。
【0057】
図11は、実験結果および模擬実験結果の両方に対して、無次元分散変数、R=d/s対沈着圧力、Pdep(底部軸)および平均自由行路、λ(頂部軸)のプロットを示している。星印1110、正方形印1120、三角印1130および円形印1140は、夫々2,5,15および115ミクロンのマスクと基体との離隔距離に関する実験結果を示している。プロット1150,1160,1170および1180は、夫々2,5,15および115ミクロンのマスクと基体との離隔距離に対する模擬実験結果を示している。圧力が減少するに従って、Rはゼロまで減少せず、むしろ真空熱蒸着における源の限定された大きさ、および源−マスクとマスク−基体の間隔に特有の一定値で飽和する。10−6Torrと0.2Torrとの間の点は、現行の実験準備では容易に入手できず、モンテ−カルロ模擬実験を用いて充填した。
【0058】
分子が境界層に入りそこを通って拡がる時最初の見掛け流速を維持させれば、沈着輪郭はより鋭くなる。見掛け流速Ubulk
【数18】

に近づく時、沈着輪郭は真空蒸着に特有の台形に近づく。これは、インク噴流印刷のような同伴ガスの超速噴流を用いて有機物質が基体上に「噴射」される沈着方式を示唆する。
【0059】
蒸気噴流沈着方式の例が図12に示され、該模擬実験結果が図13に示されている。図12は、100m/sの垂直初速度で100mm厚のマスクを通り過ぎて流れる模擬のAlq用の超速同伴流を用いた沈着の噴流状特性を示す物質濃度図である。垂直寸法は200μmであり、水平寸法は60μmである。画素は方向を持ったガス噴流によりパターン化され物質はシャドウマスクを塗布するのに全く浪費されないので、この方法の全沈着効率は100%に近づくことがで出来る。各色画素用の個々のノズルを有する沈着システムは、効率的で、正確で、より運搬可能な沈着システムを提供することが出来る。
【0060】
図13は、有機蒸気噴流沈着により沈着した(模擬の)物質の厚みのプロットを示す。垂直寸法は9μmであり、水平寸法は60μmである。
【0061】
ガス噴流が平板に直角に衝突する本発明を表す方式では、上記で発展させたモデル(本明細書における方程式5)を適用して有機蒸気噴流沈着装置に対するプロセス変数を確定している。マスクと基体との離隔距離を分子平均自由行路λの程度まで減少させればシャドウマスクを用いた有機蒸気相沈着により鋭い画素が得られるであろうという、本明細書で提供された模擬実験および実験的根拠の両方による観察によって、この方式における操作が最初に示唆された。更に、マスク厚みを増加させることにより、基体に到達する分子は効率的に平行となり、沈着効率を犠牲にするにもかかわらず、より鋭いパターンを生ずる。しかしながら、厚いマスクも加熱すれば、物質の損失は最小となる。マスク開口の縦横比を10より上に増加させ、基体と直角の同伴ガス速度を増加させると、ガス噴流はマスクの出口で形成されるようになる。従って、噴流沈着方式では、厚いマスクの設計は本発明の加熱されたノズルに収束する。有機蒸気噴流沈着に対するプロセス変数を今度は以下に議論する。
【0062】
一態様において、噴流沈着のための同伴ガス流速Vは、該名により示唆されるように、物質の「噴流」を造り出すのに充分でなければならない。ガス流を一方向噴流に見えるようにするためには、見掛け速度は分子の熱運動速度(〜(8kT/πm)1/2)以上の程度でなければならない。例えば、室温で窒素Nの熱運動速度は略450m/sである。従って、全ガス体積流量の概略の大きさは450m/s×Acs,tot(Acs,totはノズルの全断面積である)である。ノズルの構成は特定の応用により選択される。
【0063】
源の温度およびガス流速は一緒にガス相における有機蒸気の濃度を支配する(M.Shtein,H.F.Gossenberger,J.B.BenzigerおよびS.R.Forrest,J.Appl.Phys.89:2,1470(2001)参照)。従って、Tは必要な濃度により確定され、濃度は今度、どれ程多くの物質を供給する必要があるか、Mにより確定される。
【0064】
適当な時間区分Dt内に特定装置の特定層に対して沈着すべき物質Aの量、Mが与えられると、物質Aの濃度、Cは下記の式により確定される:
【数19】

式中、Vは同伴ガス(プラス物質、これは通常は重要でないが必ずしもそうではない)の体積流量である。一画素に対して供給すべき物質の全量Mは(画素面積)×(層厚)により与えられる。典型的な有機発光ダイオードディスプレイの画素の大きさは数ミクロン乃至数十ミクロンの程度であり、個々の層の厚みは典型的に0.1ミクロンの程度である。好ましくは、プロセス圧力は、操作圧力および温度で使用されるガス中における有機(または他の)化合物の溶解度、即ち、壁上またはガス相中に凝縮することなく同伴ガス中に存在し得るAの最大モル分率、χにより究極的に決定される。特定の同伴ガスに溶質蒸気分子のすべてを同伴するのに充分な該流れに存在する同伴ガス分子数を次に計算することが出来る。これ及び、全ガス流速および、全ポンプ能力および、有機蒸気噴流沈着システムの速度が操作圧力を決定する。すべての変数が相互依存しているので、特定の沈着および応用に対して妥当な操作変数を開発するためには、反復プロセスを使用する。
【0065】
好ましくは、有機蒸気噴流沈着装置における離隔距離または作業距離sは、噴流および操作圧力の流体力学により支配される。典型的に、しかし厳密に必ずそうではないが、画素の最小縁分散のためには、sは目前のガスシステムの分子平均自由行路λの程度またはそれより短いであろう。ここで(本明細書における方程式6も参照)、
【数20】

式中、Tgas=ガス温度、σ=平均分子直径、Pdep=沈着圧力。例えば、Alq/Nシステムに対しては、T=275℃において、Pdep=0.01, 0.1, 1, および10Torrに対して、夫々、λ≫1500, 150, 15, 1.5μmである。これらの条件下で、蒸気分子をノズルから基体までの距離移送する時、該噴流が横分散する時間は最小となる。しかしながら、作業距離が短くなればなるほど、装置の構築はますます難しくなるであろうし、又凝縮を防ぐためにノズルを熱く保ちながら基体を冷たく保つことはますます難しくなるであろう。従って、必要な画素解像度を達成するのに必要な限界よりずっと下まで作業距離を減少させることは望ましくない。
【0066】
好ましくは、個々のノズルの断面積Acsおよびその形状は、得る予定のパターンの形状により決定される。操作圧力は多分分子の平均自由行路が短くなるようにすべきであるから、作業距離もミクロンの程度で短い。流速、作業距離、およびノズルを横切る圧力降下が与えられると、その形状は望ましい横分散に適するように設計され、理想的にはノズル幅は沈着画素の幅に対応する。
【0067】
シャドウマスキングを用いた有機蒸気相沈着において、拡散の前に来る工程は同伴ガスによる基体の付近への蒸気の運搬である。ここにおける見掛け流速は略1〜10m/sである。沈着における最終工程は境界層を横切る分子の拡散であり、そこにおける分子速度は等方性なので画素縁分散を生ずる。好ましくは、或る一定のマスク−基体構成と物質のシステムに対して、この分散はλのみにより決定される。同伴ガスをNから例えばArに変えると、小さな影響が現れるかもしれないが、これはσAVE =σN2 + σAlq3であり、σAlq3 >σN2,Arであるからである。同伴ガス分子の質量の差は何ら相違を生じず、より重い分子はより遅く移動するだけであり、従って、熱運動化された等方性速度分布でのAlq−N又はArの衝突で移動する運動量は同じである。
【0068】
しかしながら、有機蒸気噴流沈着において、我々は画素形状に対して他の調整ノブを得ている。同伴分子は熱運動速度、〜100−1000m/sの程度の速度で大きな圧力降下により導管を通して押されるので、衝突における運動量移動はもはや等方性でなく、又熱運動速度分布により支配されない。むしろ、それは一方向性で基体の方に向いており、同伴ガス分子の質量に比例している(その速度はガス温度よりもむしろ、今度は圧力低下により支配される。従って、より重い同伴ガスを使用することにより、我々はより良い沈着方向性、それ故により鋭い縁輪郭そして蒸着された有機発光ダイオードディスプレイの場合にはより鋭い画素を達成することが出来る。
【0069】
有機蒸気噴流沈着は多くの点でシャドウ−マスキングとは異なりそれを改良するものであるが、それらの点には、薄く脆いシャドウマスクの除去、マスク上に凝縮した有機物からの粉塵汚染物の除去、大面積用途用にマスクと基体との離隔距離を調整するという問題の除去、物質沈着効率の改良、画素形状を調整するという利点の提供、空間的に特定の沈着の提供が含まれ(しかしそれらに限定されない)、最後に有機蒸気噴流沈着装置は携帯性と私的用途の可能性を有している。
【0070】
アルミニウム(Alq)の有機薄膜の沈着は、その場で温度と厚みを測定出来る複数バレルガラス反応器システムを用いて行われたが、それは他のどこかに詳細に記載されている(M.A.Baldo等、Phys.Lett.,71:3033(1997)の全体を参考として加入する)。Alqは多数の有機発光ダイオードに好ましい小分子有機物質の一例である。簡単に言えば、該反応容器は11cm直径×150cm長さのPyrex(登録商標)円筒である。管内の温度勾配に沿った各セルの配置を通して源温度の調整が出来る三帯域炉により該容器を加熱する。各源を2.5cm直径×75cm長さのガラスバレルに別々に入れる。同伴ガス流は質量流量調整器により調節し、一方沈着圧力はポンプ絞り弁を調節し全同伴流速を10〜50sccmに調節することにより0.1〜10Torrに維持する。液体窒素冷却トラップを有する40lpm真空ポンプを用いて未凝縮の同伴ガスおよび有機物を排出する。有機蒸気は、機械的に操作されるシャッターの後に位置する回転水で冷却された基体上に凝縮する。膜の厚みと成長速度は、偏光的に測定された有機膜厚を用いて目盛りをつけた水晶振動子微量天秤により監視する。
【0071】
有機蒸気相沈着を用いた有機薄膜の沈着に加えて、従来の真空熱蒸着器を用いた。源と基体との距離は略30cmであり、沈着圧力は10−6Torrに維持した。
【0072】
シャドウマスクに関して我々は、絡み合って15μm平方の開口を形成している10μmの線から成る5μm厚のニッケルメッシュを用いた。このメッシュを、1mm厚の銀で被覆したスライドガラスの頂上に直接に置き、直径が1mmと0.3mmの丸い穴を含む50μm厚のニッケルマスクで覆った。この配置は二つのs値に対する沈着の同時測定を可能にする。ニッケルメッシュの輪郭のため、sの最小値は〜2μmである。ここで、s=2μmに対する分散値dは一辺が7〜10μmの正方形状の画素の不明瞭さを云う。s=5μmに対応するdの値は、メッシュの頂上にある50μm厚のマスクの1mmと0.3mmの穴で形成された円形沈着縁の不明瞭さを云う。
【0073】
最も正確なマスクと基体との離隔距離を提供するために、フォトレジスト/クロム/フォトレジスト(PR1/Cr/PR2)サンドウィッチ構造と写真平板を用いて、基体に不可欠な更なるシャドウマスクを作成した。Alqの沈着に続いて、走査電子顕微鏡検査を用いて、得られた画素パターンを調べた。
【0074】
一態様として有機発光ダイオードディスプレイ「蒸気噴流印刷装置」がある。この例では、我々は高解像度カラーディスプレイ用に1000×2000の画素配列を沈着する(〜30×50cmの外側寸法)。「印字ヘッド」は赤発光団用の1000ノズル、緑発光団用の1000ノズル、および青発光団用の1000ノズルから成る。基体および(又は)ノズルの平行移動速度は、沈着速度および沈着すべき物質量により決められる。
【0075】
各画素は100×100μmであり、500オングストロームの染料塗布層を必要とする。現在の有機蒸気相沈着システムにおける典型的な沈着速度は10Å/sであり、一方該システムは5〜10%の効率を有する。蒸気噴流沈着を用いると、物質使用効率は100%であると思われるが、50%効率(100Å/s)を以って、画素セット当り5秒で全スクリーンを沈着するには〜3時間プラス平行移動時間を要するであろう。しかしながら、2つの線状配列のノズルを使用すれば、この時間は半分が削減される。従来のシャドウマスキング技術を用いて各発色団を順に沈着させると、3乃至10分かかり得るし、シャドウマスクをきれいにするのに更に費用と時間が必要となるが、これらはかなりのものである。しかしながら、源を飽和状態に保ちながら、有機蒸気濃度および(または)同伴ガス流速の増加を暗示する適当な大きさのノズル配列と沈着速度の組合せを用いると、特に頻繁な清掃が必要でなく物質損失が減少するであろうから、有機発光ダイオードディスプレイ「蒸気噴流印刷装置」は製造時間および費用においてシャドウマスクを用いた有機蒸気相沈着に少なくとも匹敵し得る。
【0076】
(更なる模擬実験)
冷却された基体上に小直径毛細管を通して移送される同伴ガスの噴流を考えて頂きたい。モンテ−カルロ模擬実験において、同伴ガスのz方向の速度Uは、この流場の上に重ねられた等方性のでたらめな分子速度によってのみ拡がる噴流をまねるために、増加され得る。図14は、mfp=10μm, t=50μm, U=100m/s,および、
【数21】

で、Alqを運ぶNの模擬噴流に対する空間濃度分布を示す。該流場はこの流動方式では知られていなかったので、該模擬試験は簡単のためdU/dz=0を維持した。この数字は、平行噴射がs≫mfpに対しても縁の良く確定した沈着を生じ得ることを示している。かくして、U, Pdep, αおよびsを注意深く選択することにより、液体溶媒を非常に揮発性の不活性同伴ガスで置換える以外はポリマーに対するインク噴射式印刷に類似する分子状有機薄膜に対する印刷方法が可能となり得る。図14において、有機分子を有する同伴ガスは、マスク1410中の開口1415から噴出され、基体1420上にぶつかる。プロット1430,1440および1450は、噴流ノズルが基体から異なる距離に位置している相違する模擬沈着結果を図解しており、基体がノズルから更に移動するに従って蒸気噴流が広くなることを示している。
【0077】
本発明は特定の例および好ましい態様に関して説明されているけれども、本発明はこれらの例および態様に限定されないものと理解される。従って、当業者に明らかなように、特許を請求した本発明は本明細書に説明された特定の例および好ましい態様からの変形物を含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)有機蒸気を運ぶ加熱された非反応性同伴ガスを用意するステップと、
b)前記有機蒸気を運ぶ加熱された非反応性同伴ガスを、ノズルブロックを通して、冷却された基体上に噴出してパターン化有機フィルムを形成するステップとを備えた有機フィルムを作成する方法であって、
前記基体と前記ノズルブロックとの間の距離が、前記非反応性同伴ガスの平均自由行路内である、方法。
【請求項2】
前記有機蒸気を運ぶ加熱された非反応性同伴ガスが、分子の熱運動速度と少なくとも同じ大きさの見掛け流速で、前記ノズルブロックを通して噴出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パターン化有機フィルムが複数の画素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パターンを形成する前記ノズルブロックのノズルの幅が、前記画素の幅に対応する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱された非反応性同伴ガスが、ノズル軸と直角の方向の平均絶対流速と少なくとも同じ大きさの該ノズル軸の方向の平均流速を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
全同伴ガス流速が略10〜50sccmである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ノズルブロックが、前記有機蒸気の物理収着がノズル表面上に生ずる温度よりも高い温度まで加熱される、請求項1の方法。
【請求項8】
前記基体が、前記ノズルブロックよりも低い温度まで冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有機フィルムが無定形である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有機フィルムが結晶質である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記有機蒸気が小分子有機物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記見掛け流速が、前記ノズルブロックにおいて略1000m/秒よりも遅い、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記見掛け流速が、実質的に一方向性の噴流物質を与えるのに充分速い、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記パターン化有機フィルムが、略1μm以下の解像度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
パターンが、前記ノズルブロックと前記基体との間隔、前記ノズルブロックのノズルの大きさ、及びガス流速により調整される、請求項2の方法。
【請求項16】
前記基体と前記ノズルブロックとの間の距離が略2.5μm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ノズルブロックが複数のノズルを含み、第一ノズルが第一有機蒸気を噴出し、第二ノズルが、前記第一有機蒸気とは異なる第二有機蒸気を噴出する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ノズルブロック及び前記基体が、噴出中に互いに横方向に移動する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記基体が、略10−4〜1333.22Pa(10−6〜10Torr)の真空下にある、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記非反応性同伴ガスが窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
マスクを用いずにパターン化有機フィルムを作成するために使用される請求項1に記載の方法。
【請求項22】
ディスプレイ装置を作成するために使用される請求項1に記載の方法。
【請求項23】
有機発光装置を作成するために使用される請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ノズルブロックが単一ノズルから成る、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記ノズルブロックが線形配列のノズルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記ノズルブロックが二次元配列のノズルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記ノズルブロックが口径の変化するノズルを含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図10】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−43799(P2012−43799A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−185784(P2011−185784)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【分割の表示】特願2003−525696(P2003−525696)の分割
【原出願日】平成14年9月4日(2002.9.4)
【出願人】(591003552)ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (68)
【Fターム(参考)】