説明

有機薄膜太陽電池およびその製造方法

【課題】本発明は、水分、酸素、脱ガス成分による発電特性の劣化を抑制し、耐熱性に優れる有機薄膜太陽電池を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成された第2電極層と、上記第2電極層上に上記光電変換層を覆うように形成され、硬化性化合物の硬化物を含有する被覆層と、少なくとも上記基板の外周部に配置された接着剤層と、上記被覆層上に配置され、上記接着剤層を介して上記基板に貼り合わされた封止基材とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜太陽電池の封止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池は、2つの異種電極間に、電子供与性および電子受容性の機能を有する有機薄膜を配置してなる太陽電池であり、シリコンなどに代表される無機太陽電池に比べて製造工程が容易であり、かつ低コストで大面積化が可能であるという利点を持つ。
【0003】
従来、有機薄膜太陽電池において、発電特性の長期信頼性が課題となっている。有機薄膜が直接大気と接触した場合、有機薄膜中の有機物の分解反応が進行し、経時的に発電特性が劣化する。この問題を解決する手法として、素子が形成された基板上に接着剤を塗布し、この基板と対向するように封止基板を配し、有機薄膜太陽電池を封止する構造が知られている。
【0004】
また、有機薄膜は、水分や酸素だけでなく、有機薄膜太陽電池の構成部材から発生するガスにも弱く、劣化する。この問題を解決する手法として、素子が形成された基板と封止基板との間に、水分補足剤およびワックスを含有し、減圧乾燥後の重量減少が0.1%以下であるホットメルト部材を充填することが提案されている(特許文献1参照)。この手法によれば、ホットメルト部材が素子に直接密着して配置されていることで、水分、酸素、脱ガス成分と素子との接触を防ぐことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−99805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、脱ガス成分による発電特性の劣化を抑制するために鋭意検討を重ねた結果、有機薄膜太陽電池を封止する際に接着剤から発生するガスが有機薄膜の劣化に大きく影響を及ぼすことを確認した。すなわち、有機薄膜太陽電池の封止に最も一般的に用いられている接着剤は光もしくは熱硬化型樹脂であり、素子が密閉された空間の中で接着剤の硬化反応を行い有機薄膜太陽電池を封止すると、接着剤の硬化反応時の脱ガス成分により有機薄膜が劣化することを確認した。これにより、発電特性の劣化を抑制するためには、接着剤からの脱ガス成分による劣化を抑制することが重要であることがわかった。
【0007】
脱ガス成分による発電特性の劣化を抑制するためには、脱ガス成分が極めて少ない接着剤を用いることが考えられる。しかしながら、素子が形成された基板と封止基板との接着力が弱いと水分や酸素が浸入するおそれがあることから、接着剤は接着力を優先して選択されるべきである。
また、素子が形成された基板と封止基板との接着力を考慮すると、素子が形成された基板と封止基板とに直接接着剤が接触していることが好ましい。
さらに、太陽電池においては、太陽光に対する耐熱性に優れていることも重要である。
【0008】
特許文献1に記載のホットメルト部材を用いた場合、ホットメルト部材が素子に直接密着して配置されていることで、接着剤からの脱ガス成分と素子との接触を防ぐことはできると考えられる。しかしながら、ホットメルト部材は、太陽電池の用途において耐熱性が不十分である。また、ホットメルト部材はワックスを含有しており、加熱により軟化もしくは溶融させて使用するため、パターニングが困難である。そのため、素子が形成された基板と封止基板とを接着剤を介して直接接着することが困難となる。さらに、ホットメルト部材が太陽光照射時に液体状になるものである場合には、製品の形状を維持できないという問題もある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、水分、酸素、脱ガス成分による発電特性の劣化を抑制し、耐熱性に優れる有機薄膜太陽電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成された第2電極層と、上記第2電極層上に上記光電変換層を覆うように形成され、硬化性化合物の硬化物を含有する被覆層と、少なくとも上記基板の外周部に配置された接着剤層と、上記被覆層上に配置され、上記接着剤層を介して上記基板に貼り合わされた封止基材とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池を提供する。
【0011】
本発明によれば、第2電極層上に光電変換層を覆うように被覆層が形成されているので、素子を封止する際に接着剤などから発生する脱ガス成分から光電変換層を保護することができ、硬化反応時の接着剤からの脱ガス成分による光電変換層の著しい劣化を防ぐことが可能である。また本発明によれば、被覆層が硬化性化合物の硬化物を含有するので、耐熱性を確保することができ、有機薄膜太陽電池の耐久性を向上させることが可能である。さらに本発明によれば、被覆層が硬化性化合物の硬化物を含有する、すなわち硬化性化合物を用いて被覆層を形成するので、所望の形状の被覆層を形成することができる。例えば基板の外周部には被覆層が位置しないように所望の形状の被覆層を形成することができるので、基板および封止基材を接着剤層を介して直接貼り合わせることができ、水分や酸素の浸入を効果的に抑制することが可能である。
【0012】
上記発明においては、上記被覆層上にゲッター層が形成されていることが好ましい。酸素、水分、脱ガス成分などがゲッター層に吸収され、酸素、水分、脱ガス成分などによる発電特性の低下をさらに抑制することができるからである。
【0013】
また本発明においては、上記接着剤層が上記被覆層を覆うように形成されていることが好ましい。被覆層と封止基材との間の間隙をなくすことができ、また基板と封止基材との接着力を向上させることができ、水分や酸素の浸入をより効果的に抑制することができるからである。
【0014】
さらに本発明においては、上記硬化性化合物が電離放射線硬化性化合物であることが好ましい。高精度のパターニングが可能となるからである。
【0015】
また本発明においては、上記被覆層に上記硬化性化合物を含有するドライフィルムを用いてもよい。基板が可撓性を有する場合には、硬化性化合物を含有するドライフィルムをラミネートすることで、ロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)方式で被覆層を形成することができる。
【0016】
また本発明は、上述の記載の有機薄膜太陽電池が複数個直列または並列に接続されていることを特徴とする有機薄膜太陽電池モジュールを提供する。
【0017】
さらに本発明は、硬化性化合物を用いて、第1電極層、光電変換層および第2電極層が順次積層された基板上に上記光電変換層を覆うように被覆層を形成する被覆層形成工程と、上記第1電極層、上記光電変換層、上記第2電極層および上記被覆層が順次積層された上記基板上または封止基材上に少なくとも上記基板の外周部に位置するように接着剤を配置する接着剤配置工程と、上記第1電極層、上記光電変換層、上記第2電極層および上記被覆層が順次積層された上記基板ならびに上記封止基材を上記接着剤を介して対向させ貼り合わせる封止工程とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池の製造方法を提供する。
【0018】
本発明によれば、第1電極層、光電変換層および第2電極層が順次積層された基板上に光電変換層を覆うように被覆層を形成するので、素子を封止する際に接着剤などから発生する脱ガス成分から光電変換層を保護することができ、硬化反応時の接着剤からの脱ガス成分による光電変換層の著しい劣化を防ぐことが可能である。また本発明によれば、硬化性化合物を用いて被覆層を形成するので、耐熱性を確保することができ、有機薄膜太陽電池の耐久性を向上させることが可能である。さらに本発明によれば、硬化性化合物を用いて被覆層を形成するので、例えば被覆層が基板の外周部に位置しないようにするなど、所望の形状に被覆層を形成することができる。
【0019】
上記発明においては、上記接着剤配置工程にて、上記被覆層を覆うように上記接着剤を配置することが好ましい。被覆層と封止基材との間の間隙をなくすことができ、また基板と封止基材との接着力を向上させることができ、水分や酸素の浸入をより効果的に抑制することができるからである。
【0020】
また本発明においては、上記被覆層形成工程にて、上記基板上に上記硬化性化合物を含有する被覆層形成用塗工液を塗布してもよい。
【0021】
さらに本発明においては、上記被覆層形成工程にて、上記基板上に上記硬化性化合物を含有するドライフィルムをラミネートしてもよい。基板が可撓性を有する場合には、硬化性化合物を含有するドライフィルムをラミネートすることで、ロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)方式で被覆層を形成することができる。
【0022】
また本発明においては、上記硬化性化合物が紫外線硬化性化合物であり、上記被覆層形成工程にて、上記硬化性化合物を含有する被覆層形成用層に紫外線を照射後、現像して、所望の形状の上記被覆層を形成することが好ましい。硬化性化合物が紫外線硬化性化合物であることにより、高精度のパターニングが可能となる。また、被覆層形成工程では、例えば基板の外周部には被覆層が位置しないような所望の形状の被覆層を形成することができるので、その後の封止工程にて、基板および封止基材を接着剤層を介して直接貼り合わせることができ、水分や酸素の浸入を効果的に抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、第2電極層上に光電変換層を覆うように被覆層が形成されているので、水分、酸素、脱ガス成分から光電変換層を保護することができ、光電変換層の劣化を防ぐことが可能であるという効果を奏する。また本発明においては、被覆層が硬化性化合物の硬化物を含有するので、耐熱性を確保することができ、有機薄膜太陽電池の耐久性を向上させることが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の有機薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機薄膜太陽電池の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の有機薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池モジュール、および有機薄膜太陽電池の製造方法について詳細に説明する。
【0026】
A.有機薄膜太陽電池
本発明の有機薄膜太陽電池は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された光電変換層と、上記光電変換層上に形成された第2電極層と、上記第2電極層上に上記光電変換層を覆うように形成され、硬化性化合物の硬化物を含有する被覆層と、少なくとも上記基板の外周部に配置された接着剤層と、上記被覆層上に配置され、上記接着剤層を介して上記基板に貼り合わされた封止基材とを有することを特徴とするものである。
【0027】
本発明の有機薄膜太陽電池について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の有機薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。図1に示す例において、有機薄膜太陽電池1は、基板2と、基板2上に形成された第1電極層3と、第1電極層3上に形成された光電変換層4と、光電変換層4上に形成された第2電極層5と、第2電極層5上に第1電極層3、光電変換層4および第2電極層5を覆うように形成された被覆層6と、基板2の外周部に配置された接着剤層7と、接着剤層7を介して基板2に貼り合わされた封止基材10とを有している。そして、被覆層6は、硬化性化合物の硬化物を含有している。
【0028】
図2(a)〜(e)は、本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の一例を示す工程図である。まず、基板2上に第1電極層3と光電変換層4と第2電極層5とを順次積層する(図2(a))。次いで、第1電極層3、光電変換層4および第2電極層5を覆うように、硬化性化合物を含有する被覆層形成用塗工液6aを塗布する(図2(b))。続いて、硬化性化合物を含有する被覆層形成用層(被覆層形成用塗工液6aの塗膜)にマスクを介して紫外線を照射して所望の形状に硬化性化合物を硬化させ、現像して、硬化性化合物の硬化物を含有する被覆層6を所望の形状に形成する(図2(c))。次に、基板2の外周部に接着剤7aを塗布し、封止基材10を対向させる(図2(d))。続いて、基板2に封止基材10を重ね合せ、接着剤7aを硬化させて接着剤層7を介して基板2および封止基材10を貼り合わせ、素子を封止する(図2(e))。
【0029】
本発明によれば、第2電極層上に光電変換層を覆うように被覆層が形成されているので、素子を封止する際に接着剤などから発生する脱ガス成分から光電変換層を保護することができる。したがって、硬化反応時の接着剤からの脱ガス成分による光電変換層の著しい劣化を防ぐことが可能である。
なお、硬化性化合物を用いて被覆層を形成するので、接着剤と同様に硬化反応時にガスが発生することが懸念されるが、被覆層の形成では接着剤と異なり密閉空間で硬化反応が行われるのではなく開放空間で硬化反応が行われるため、被覆層に用いられる硬化性化合物の硬化反応時の脱ガス成分による光電変換層への影響はほとんどないと考えられる。
【0030】
また本発明によれば、被覆層が硬化性化合物の硬化物を含有するので、耐熱性を確保することができる。これにより、有機薄膜太陽電池の耐久性を向上させることが可能である。
さらに本発明によれば、被覆層が硬化性化合物の硬化物を含有する、すなわち硬化性化合物を用いて被覆層を形成するので、所望の形状に被覆層を形成することができる。例えば、図1に示すように、被覆層6が基板2の外周部に位置しないように所望の形状の被覆層6を得ることができる。この場合、基板2と封止基材10とを接着剤層7を介して直接貼り合わせることができ、水分や酸素の浸入を効果的に抑制することが可能である。
【0031】
以下、本発明の有機薄膜太陽電池における各構成について説明する。
【0032】
1.被覆層
本発明における被覆層は、第2電極層上に光電変換層を覆うように形成され、硬化性化合物の硬化物を含有するものであり、素子を封止する際に接着剤などから発生する脱ガス成分から光電変換層を保護する機能を有する。
【0033】
被覆層に用いられる硬化性化合物としては、その硬化物が、素子を封止する際に接着剤などから発生する脱ガス成分から光電変換層を保護することができるものであり、被覆層の形成時に光電変換層にダメージを与えるものでなければ特に限定されるものではない。
【0034】
中でも、硬化性化合物は、柔軟性、追従性に優れるものであることが好ましい。所望の形状に被覆層が形成されている場合、被覆層が形成されている領域では被覆層が形成されていない領域に比較して残留応力が大きなものとなる。したがって、被覆層の残留応力による基板の反りや電極のクラックの発生を抑制するためには、柔軟性、追従性に優れる硬化性化合物を用いることが好ましいのである。
【0035】
また、硬化性化合物は、硬化温度が比較的低いことが好ましい。硬化温度が高いと、硬化性化合物の硬化時に光電変換層や基板が劣化するおそれがあるからである。硬化性化合物の硬化温度は、基板の耐熱温度よりも低いことが好ましく、具体的には、150℃以下であることが好ましく、特に130℃以下であることが好ましい。一方、硬化温度が低すぎる硬化性化合物は、取り扱い難く、所望の形状に被覆層を形成することが困難となる場合がある。
なお、硬化温度は、基板上に硬化性化合物を含有する被覆層形成用層を形成し、所望の温度に設定されたホットプレート上に上記基板を設置し、赤外線放射温度計(FLUKE社製、Fluke561)にて被覆層形成用層表面の温度を非接触にて計測することで測定可能である。
【0036】
さらに、被覆層を硬化性化合物を含有する被覆層形成用塗工液を塗布して形成し、かつ光電変換層を光電変換層形成用塗工液を塗布して形成する場合には、被覆層形成用塗工液に含まれる溶媒と光電変換層形成用塗工液に含まれる溶媒とが相溶性を有さないように、硬化性化合物を選択することが好ましい。被覆層形成用塗工液に含まれる溶媒と光電変換層形成用塗工液に含まれる溶媒とが相溶性を有すると、光電変換層の材料が溶出し、発電特性が低下するおそれがあるからである。
【0037】
このような硬化性化合物としては、熱硬化性化合物および電離放射線硬化性化合物のいずれも用いることができる。
熱硬化性化合物としては、上述の特性を満たすものであればよく、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
電離放射線硬化性化合物としては、紫外線硬化性化合物、電子線硬化性化合物等が挙げられる。中でも、紫外線硬化性化合物が好ましく用いられる。紫外線硬化性化合物としては、上述の特性を満たすものであればよく、例えば、カルド樹脂、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレート、アクリレート、エポキシ、ビニルエーテル、オキセタン等を挙げることができる。電子線硬化性化合物としては、例えば、不飽和ポリエステル、不飽和アクリル、ポリエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエン、ポリチオール等を挙げることができる。
また、硬化性化合物としては、ソルダーレジストを用いることもできる。
【0038】
硬化性化合物の中でも、紫外線硬化性化合物が好ましく用いられる。例えば被覆層が接点用開口部を有するようにパターニングするなど、高精度のパターニングが可能となるからである。
【0039】
被覆層は、上記硬化性化合物の硬化物の他に、必要に応じて、重合開始剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0040】
被覆層の厚みとしては、素子を封止する際に接着剤などから発生する脱ガス成分から光電変換層を保護することができれば特に限定されるものではないが、0.1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1μm〜50μmの範囲内、さらに好ましくは5μm〜20μmの範囲内である。被覆層の厚みが薄いと被覆層を水分、酸素、ガスが透過するおそれがあり、被覆層の厚みが厚いと残留応力により光電変換層に張力がかかり、光電変換層が電極表面から剥離する可能性があるからである。なお、被覆層の厚みとは、第1電極層、光電変換層および第2電極層が積層されている部分の上に位置する被覆層の厚みをいう。
【0041】
被覆層の形成位置としては、被覆層が第2電極層上に光電変換層を覆うように形成されていれば、すなわち光電変換層が露出しないように第2電極層上に被覆層が形成されていれば特に限定されるものではない。後述する正孔取出し層や電子取出し層が形成されている場合には、被覆層は、光電変換層だけでなく正孔取出し層および電子取出し層も露出しないように第2電極層上に形成されていることが好ましい。
中でも、図1に例示するように、被覆層6は基板2の外周部を除いて形成されていることが好ましい。これにより、基板2および封止基材10を接着剤層7を介して直接貼り合わせることができ、水分や酸素の浸入を効果的に抑制することが可能である。
【0042】
なお、被覆層の形成方法については、後述の「C.有機薄膜太陽電池の製造方法」の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
【0043】
2.接着剤層
本発明における接着剤層は、少なくとも基板の外周部に配置されるものである。本発明においては、上述したように第2電極層上に光電変換層を覆うように被覆層が形成されているので、接着剤層は光電変換層に接触しない。
【0044】
接着剤層の形成位置としては、接着剤層が少なくとも基板の外周部に配置されていれば特に限定されるものではなく、例えば、図1に示すように接着剤層7が基板2の外周部のみに形成されていてもよく、図3に示すように接着剤層7が被覆層6を覆うように基板2の全面に形成されていてもよい。中でも、接着剤層が被覆層を覆うように基板の全面に形成されていることが好ましい。被覆層と封止基材との間の間隙をなくすことができ、また基板と封止基材との接着力を向上させることができ、水分や酸素の浸入をより効果的に抑制することができるからである。
【0045】
接着剤層に用いられる接着剤としては、基板および封止基材を貼り合わせることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂を用いることができる。
【0046】
なお、接着剤層の形成方法については、後述の「C.有機薄膜太陽電池の製造方法」の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
【0047】
3.光電変換層
本発明に用いられる光電変換層は、第1電極層と第2電極層との間に形成されるものである。なお、「光電変換層」とは、有機薄膜太陽電池の電荷分離に寄与し、生じた電子および正孔を各々反対方向の電極に向かって輸送する機能を有する部材をいう。
【0048】
光電変換層は、電子受容性および電子供与性の両機能を有する単一の層であってもよく(第1態様)、また電子受容性の機能を有する電子受容性層と電子供与性の機能を有する電子供与性層とが積層されたものであってもよい(第2態様)。以下、各態様について説明する。
【0049】
(1)第1態様
本発明における光電変換層の第1態様は、電子受容性および電子供与性の両機能を有する単一の層であり、電子供与性材料および電子受容性材料を含有するものである。この光電変換層では、光電変換層内で形成されるpn接合を利用して電荷分離が生じるため、単独で光電変換層として機能する。
【0050】
電子供与性材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。
導電性高分子はいわゆるπ共役高分子であり、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系から成り立っており、半導体的性質を示すものである。導電性高分子材料は、高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利である。また、導電性高分子の電子伝達機構は、主にπスタッキングによる分子間のホッピング伝導であるため、高分子の主鎖方向のみならず、光電変換層の膜厚方向への電荷輸送も有利である。さらに、導電性高分子材料は、導電性高分子材料を溶媒に溶解もしくは分散させた塗工液を用いることで湿式塗工法により容易に成膜可能であることから、大面積の有機薄膜太陽電池を高価な設備を必要とせず低コストで製造できるという利点がある。
【0051】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリシラン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポルフィリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらの共重合体、あるいは、フタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等を挙げることができる。
【0052】
上記の中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フェニレンエチニレン−チオフェン共重合体、フェニレンエチニレン−フルオレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好ましく用いられる。これらは、多くの電子受容性材料に対して、エネルギー準位差が適当であるからである。
なお、例えばフェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体(Poly[1,4-phenyleneethynylene-1,4-(2,5-dioctadodecyloxyphenylene)-1,4-phenyleneethene-1,2-diyl-1,4-(2,5-dioctadodecyloxyphenylene)ethene-1,2-diyl])の合成方法については、Macromolecules, 35, 3825 (2002) や、Mcromol. Chem. Phys., 202, 2712 (2001) に詳しい。
【0053】
また、電子受容性材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子受容性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。
【0054】
電子受容性の導電性高分子材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらの共重合体、あるいは、カーボンナノチューブ、フラーレン誘導体、CN基またはCF基含有ポリマーおよびそれらの−CF置換ポリマー等を挙げることができる。ポリフェニレンビニレン誘導体の具体例としては、CN−PPV(Poly[2-Methoxy-5-(2´-ethylhexyloxy)-1,4-(1-cyanovinylene)phenylene])、MEH−CN−PPV(Poly[2-Methoxy-5-(2´-ethylhexyloxy)-1,4-(1-cyanovinylene)phenylene])等が挙げられる。
【0055】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性材料等を用いることもできる。中でも、電子供与性化合物もしくは電子受容性化合物がドープされた導電性高分子材料が好ましく用いられる。導電性高分子材料は、高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利であり、また、電子供与性化合物や電子受容性化合物をドープすることによりπ共役主鎖中に電荷が発生し、電気伝導度を大きく増大させることが可能であるからである。
【0056】
電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述した電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。
また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl(III)、AlCl、AlBr、AsFやハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0057】
光電変換層の膜厚としては、一般的にバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.2nm〜3000nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜600nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、光電変換層における体積抵抗が高くなる場合があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
【0058】
電子供与性材料および電子受容性材料の混合比は、使用する材料の種類により最適な混合比に適宜調整される。
【0059】
光電変換層を形成する方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法が好ましく用いられる。湿式塗工法であれば、大気中で光電変換層を形成することができ、コストの削減が図れるとともに、大面積化が容易だからである。
【0060】
光電変換層形成用塗工液の塗布方法としては、光電変換層形成用塗工液を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。
中でも、光電変換層形成用塗工液の塗布方法は、主に塗布量に応じて厚みを調整することが可能な方法であることが好ましい。主に塗布量に応じて厚みを調整することが可能な方法としては、例えば、ダイコート法、ビードコート法、バーコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの印刷法を挙げることができる。印刷法は有機薄膜太陽電池の大面積化に好適である。
【0061】
光電変換層形成用塗工液の塗布後は、形成された塗膜を乾燥する乾燥処理を施してもよい。光電変換層形成用塗工液に含まれる溶媒等を早期に除去することにより、生産性を向上させることができるからである。
乾燥処理の方法として、例えば、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥、赤外線加熱乾燥等、一般的な方法を用いることができる。
【0062】
(2)第2態様
本発明における光電変換層の第2態様は、電子受容性の機能を有する電子受容性層と電子供与性の機能を有する電子供与性層とが積層されたものである。以下、電子受容性層および電子供与性層について説明する。
【0063】
(電子受容性層)
本態様に用いられる電子受容性層は、電子受容性の機能を有するものであり、電子受容性材料を含有するものである。
【0064】
電子受容性材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子受容性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。具体的には、上記第1態様の光電変換層に用いられる電子受容性の導電性高分子材料と同様のものを挙げることができる。
【0065】
電子受容性層の膜厚としては、一般的にバイレイヤー型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.1nm〜1500nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、電子受容性層における体積抵抗が高くなる可能性があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
【0066】
電子受容性層の形成方法としては、上記第1態様の光電変換層の形成方法と同様とすることができる。
【0067】
(電子供与性層)
本態様に用いられる電子供与性層は、電子供与性の機能を有するものであり、電子供与性材料を含有するものである。
【0068】
電子供与性材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。具体的には、上記第1態様の光電変換層に用いられる電子供与性の導電性高分子材料と同様のものを挙げることができる。
【0069】
電子供与性層の膜厚としては、一般的にバイレイヤー型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.1nm〜1500nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、電子供与性層における体積抵抗が高くなる可能性があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
【0070】
電子供与性層の形成方法としては、上記第1態様の光電変換層の形成方法と同様とすることができる。
【0071】
4.第1電極層
本発明における第1電極層は、基板上に形成されるものであり、通常、光電変換層で発生した正孔を取り出すための電極(正孔取出し電極)とされる。
【0072】
第1電極層は、透明性を有していてもよく有さなくてもよく、受光面に応じて適宜選択される。第1電極層側が受光面となる場合、第1電極層は透明性を有するものとなる。一方、第2電極層側が受光面となる場合、第1電極層は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。
【0073】
第2電極層側が受光面となる場合、第1電極層の形成材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0074】
一方、第1電極層側が受光面となる場合、第1電極層は、受光面側の電極となるものであれば特に限定されるものではなく、透明電極であってもよく、また透明電極とパターン状の補助電極とが積層されたものであってもよい。
図4に例示するように第1電極層3がパターン状の補助電極3aと透明電極3bとが積層されたものである場合には、透明電極のシート抵抗が比較的高い場合であっても、補助電極のシート抵抗を十分に低くすることで、第1電極層全体としての抵抗を低減することができる。したがって、発生した電力を効率良く集電することができる。
以下、透明電極および補助電極について説明する。
【0075】
(1)透明電極
本発明に用いられる透明電極は、基板上に形成されるものである。
【0076】
透明電極の構成材料としては、導電性および透明性を有するものであれば特に限定されなく、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O等を挙げることができる。中でも、後述する第2電極層の構成材料の仕事関数等を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば第2電極層の構成材料を仕事関数の低い材料とした場合には、透明電極の構成材料は仕事関数の高い材料であることが好ましい。導電性および透明性を有し、かつ仕事関数の高い材料としては、ITOが好ましく用いられる。
【0077】
透明電極の全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。透明電極の全光線透過率が上記範囲であることにより、透明電極にて光を十分に透過することができ、光電変換層にて光を効率的に吸収することができるからである。
なお、上記全光線透過率は、可視光領域において、スガ試験機株式会社製 SMカラーコンピュータ(型番:SM−C)を用いて測定した値である。
【0078】
透明電極のシート抵抗は、20Ω/□以下であることが好ましく、中でも10Ω/□以下、特に5Ω/□以下であることが好ましい。シート抵抗が上記範囲より大きいと、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があるからである。
なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の抵抗率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
【0079】
透明電極は、単層であってもよく、また異なる仕事関数の材料を用いて積層されたものであってもよい。
この透明電極の膜厚としては、単層である場合はその膜厚が、複数層からなる場合は総膜厚が、0.1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、中でも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄いと、透明電極のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があり、一方、膜厚が上記範囲より厚いと、全光線透過率が低下し、光電変換効率を低下させる可能性があるからである。
【0080】
透明電極は、基板上に全面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
透明電極の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができる。
【0081】
(2)補助電極
本発明に用いられる補助電極は、基板上にパターン状に形成されるものである。補助電極は、通常、透明電極よりも抵抗値が低い。
【0082】
補助電極の形成材料としては、通常、金属が用いられる。補助電極に用いられる金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ステンレス系金属、アルミニウム合金、銅合金、チタン合金、鉄−ニッケル合金およびニッケル−クロム合金(Ni−Cr)等の導電性金属を挙げることができる。上述の導電性金属の中でも、電気抵抗値が比較的低いものが好ましい。このような導電性金属としては、Al、Au、Ag、Cu等が挙げられる。
【0083】
また、補助電極は、上述のような導電性金属からなる単層であってもよく、また基板や透明電極との密着性向上のために、導電性金属層とコンタクト層とを適宜積層したものであってもよい。コンタクト層の形成材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ニッケルクロム(Ni−Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)等が挙げられる。コンタクト層は所望の補助電極と基板や透明電極との密着性を得るために導電性金属層に積層されるものであり、導電性金属層の片側にのみ積層してもよく、導電性金属層の両側に積層してもよい。
【0084】
また、第2電極層の形成材料の仕事関数等に応じて、好ましい金属を選択してもよい。例えば、第2電極層の形成材料の仕事関数等を考慮する場合には、第1電極層は正孔取出し電極であるので、補助電極に用いられる金属は仕事関数の高いものであることが好ましい。具体的には、Alが好ましく用いられる。
【0085】
補助電極の形状としては、パターン状であれば特に限定されるものではなく、所望の導電性、透過性、強度等により適宜選択される。例えば、補助電極は、メッシュ状のメッシュ部と、このメッシュ部の周囲に配置されたフレーム部とを有するものであってもよく、メッシュ状のメッシュ部からなるものであってもよい。
【0086】
補助電極がメッシュ部とフレーム部とを有する場合、メッシュ部およびフレーム部の配置としては、例えば補助電極が矩形である場合、フレーム部が、メッシュ部の四方を囲むように配置されていてもよく、メッシュ部の三方を囲むように配置されていてもよく、メッシュ部の二方を囲むように配置されていてもよく、メッシュ部の一方に配置されていてもよい。中でも、フレーム部は、メッシュ部の四方または三方を囲むように配置されていることが好ましい。効率良く集電することができるからである。
【0087】
メッシュ部の形状としては、メッシュ状であれば特に限定されるものではなく、所望の導電性、透過性、強度等により適宜選択される。例えば、三角形、四角形、六角形等の多角形や円形の格子状等が挙げられる。なお、多角形や円形の「格子状」とは、多角形や円形が周期的に配列されている形状をいう。多角形や円形の格子状としては、例えば多角形の開口部がストレートに配列されていてもよく、ジグザグに配列されていてもよい。
【0088】
中でも、メッシュ部の形状は、六角形の格子状または平行四辺形の格子状であることが好ましい。メッシュ部を流れる電流が局所的に集中するのを防止することができるからである。六角形の格子状の場合、特に、六角形の開口部がジグザグに(いわゆるハニカム状に)配列されていることが好ましい。一方、平行四辺形の格子状の場合、平行四辺形の鋭角が40°〜80°の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50°〜70°の範囲内、さらに好ましくは55°〜65°の範囲内である。
【0089】
補助電極自体は基本的に光を透過しないので、補助電極のメッシュ部の開口部から光電変換層に光が入射する。そのため、補助電極のメッシュ部の開口部は比較的大きいことが好ましい。具体的には、補助電極のメッシュ部の開口部の比率は、50%〜98%程度であることが好ましく、より好ましくは70%〜98%の範囲内、さらに好ましくは80%〜98%の範囲内である。
【0090】
補助電極のメッシュ部の開口部のピッチおよびメッシュ部の線幅は、補助電極全体の面積等に応じて適宜選択される。
また、フレーム部の線幅は、補助電極全体の面積等に応じて適宜選択される。
【0091】
補助電極の厚みは、第1電極層と第2電極層との間で短絡が生じない厚みであれば限定されるものではなく、光電変換層、正孔取出し層、電子取出し層等の厚みに応じて適宜選択される。具体的には、第1電極層と第2電極層との間に形成される層(光電変換層、正孔取出し層、電子取出し層)の総膜厚を1とすると、補助電極の厚みは、5以下であることが好ましく、中でも3以下、さらには2以下、特に1.5以下であることが好ましく、1以下であることが最も好ましい。補助電極の厚みが上記範囲より厚いと、電極間で短絡が生じるおそれがあるからである。より具体的には、補助電極の厚みは、100nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、中でも200nm〜800nmの範囲内、さらには200nm〜500nmの範囲内、特に200nm〜400nmの範囲内であることが好ましい。補助電極の厚みが上記範囲より薄いと、補助電極のシート抵抗が大きくなりすぎる場合があるからである。また、補助電極の厚みが上記範囲より厚いと、電極間で短絡が生じるおそれがあるからである。
【0092】
中でも、第1電極層上に、主に塗布量に応じて厚みを調整することが可能な方法により光電変換層を形成する場合、補助電極の厚みは200nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。第1電極層上に、主に塗布量に応じて厚みを調整することが可能な方法により光電変換層を形成する場合、補助電極の厚みが上記範囲よりも厚いと、補助電極のメッシュ部やフレーム部のエッジを覆うことが困難となり、電極間で短絡が生じやすくなる。また、補助電極の厚みが上記範囲よりも厚いと、表面張力によって所望の厚みよりも厚く光電変換層が形成されてしまうおそれがある。光電変換層の厚みが厚すぎると、電子拡散長および正孔拡散長を超えてしまい変換効率が低下する。表面張力によって所望の厚みよりも厚く光電変換層が形成されないように、補助電極の厚みを調整することが好ましい。特に、光電変換層内を正孔および電子が移動できる距離は100nm程度であることが知られていることからも、表面張力によって所望の厚みよりも厚く光電変換層が形成されないように、補助電極の厚みを調整することが好ましいのである。
一方、例えばスピンコート法により光電変換層を形成する場合、遠心力により均質な膜とするので、補助電極の厚みが比較的厚くても、補助電極のエッジを覆うことができる。また、スピンコート法の場合、回転数によって厚みを調整することができるので、補助電極の厚みが比較的厚くても、均質な膜を得ることができる。
よって、主に塗布量に応じて厚みを調整することが可能な方法により光電変換層を形成する場合には、上記範囲が特に好ましいのである。
【0093】
補助電極のシート抵抗としては、透明電極のシート抵抗よりも低ければよい。具体的に、補助電極のシート抵抗は、5Ω/□以下であることが好ましく、中でも3Ω/□以下、さらには1Ω/□以下、特に0.5Ω/□以下であることが好ましく、0.1Ω/□以下であることが最も好ましい。補助電極のシート抵抗が上記範囲より大きいと、所望の発電効率が得られない場合があるからである。
なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の抵抗率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
【0094】
補助電極の形成位置としては、基板上に補助電極および透明電極の順に積層されていてもよく、基板上に透明電極および補助電極の順に積層されていてもよい。中でも、基板上に補助電極および透明電極の順に積層されていることが好ましい。透明電極と光電変換層や正孔取出し層等との接触面積が大きい方が、界面の接合性が良く、正孔の移動効率を高くすることができるからである。
【0095】
補助電極の形成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属薄膜を全面に成膜した後に網目状にパターニングする方法、網目状の導電体を直接形成する方法等が挙げられる。これらの方法は、補助電極の形成材料や構成等に応じて適宜選択される。
【0096】
金属薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜法であることが好ましい。すなわち、補助電極は真空成膜法にて形成された金属薄膜であることが好ましい。真空成膜法により成膜した金属種は、めっき膜に比べ介在物が少なく比抵抗を小さくでき、またAgペースト等を用いて成膜したものと比較しても比抵抗を小さくできる。また、厚み1μm以下、好ましくは500nm以下の金属薄膜を、膜厚を精密に制御し、均一な厚みに成膜する方法としても、真空成膜法が好適である。
金属薄膜のパターニング方法としては、所望のパターンに精度良く形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えばフォトエッチング法等を挙げることができる。
【0097】
5.第2電極層
本発明に用いられる第2電極層は、上記第1電極層と対向する電極である。通常、第2電極層は、光電変換層で発生した電子を取り出すための電極(電子取出し電極)とされる。
【0098】
第2電極層は、透明性を有していてもよく有さなくてもよく、受光面に応じて適宜選択される。第2電極層側が受光面となる場合、第2電極層は透明性を有するものとなる。一方、第1電極層側が受光面となる場合、第2電極層は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。
【0099】
第2電極層側が受光面となる場合、第2電極層は、受光面側の電極となるものであれば特に限定されるものではなく、透明電極であってもよく、また透明電極とパターン状の補助電極とが積層されたものであってもよい。
なお、透明電極および補助電極については、上記第1電極層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0100】
一方、第1電極層側が受光面となる場合、第2電極層の形成材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、第2電極層は電子取出し電極であるので、仕事関数の低いものであることが好ましい。具体的に仕事関数の低い材料としては、Li、In、Al、Ag、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr、LiF等を挙げることができる。第2電極層は、単層であってもよく、また異なる仕事関数の材料を用いて積層されたものであってもよい。異なる材料が積層されている第2電極層としては、例えば、Ca、LiF、LiCa、MoOまたはVOのいずれかと、AlまたはAgのいずれかとが積層されたものが挙げられる。
【0101】
第2電極層の膜厚は、単層である場合にはその膜厚が、複数層からなる場合には各層を合わせた総膜厚が、0.1nm〜500nmの範囲内、中でも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄い場合は、第2電極層のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性がある。
【0102】
第2電極層は、光電変換層上に全面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
第2電極層の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができ、例えば真空蒸着法、メタルマスクによるパターン蒸着法を使用することができる。
【0103】
6.基板
本発明に用いられる基板は、上記の第1電極層、光電変換層、第2電極層、被覆層などを支持するものである。
【0104】
基板は、透明性を有していてもよく有さなくてもよく、受光面に応じて適宜選択される。基板側が受光面となる場合、基板は透明性を有するものとなる。一方、封止基材側が受光面となる場合、基板は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。
【0105】
基板が透明性を有する場合、基板としては特に限定されるものではなく、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を挙げることができる。
中でも、基板が透明樹脂フィルム等のフレキシブル材であることが好ましい。透明樹脂フィルムは、加工性に優れており、製造コスト低減や軽量化、割れにくい有機薄膜太陽電池の実現において有用であり、曲面への適用等、種々のアプリケーションへの適用可能性が広がるからである。フレキシブル材を使用する場合は、基板表面からの水蒸気透過の懸念があるため、透明樹脂フィルム表面にガスバリア層を形成する必要がある。ガスバリア層としては、SiO,SiON,SiN等の無機薄膜を真空成膜法等により形成することが一般的である。
【0106】
7.封止基材
本発明に用いられる封止基材は、上記被覆層上に配置され、上記接着剤層を介して上記基板に貼り合わされるものである。
【0107】
封止基材は、素子を封止することができ、かつ所定の強度を有するものであれば特に限定されるものではない。封止基材は、透明性を有していてもよく有さなくてもよく、受光面に応じて適宜選択される。封止基材側が受光面となる場合、封止基材は透明性を有するものとなる。一方、基板側が受光面となる場合、封止基材は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。
【0108】
封止基材に用いられる材料としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、アルカリガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラス等のガラス板等の無機材料、またはフィルム状に成形が可能な樹脂基板等を用いることができる。
【0109】
樹脂基板に用いられる樹脂としては、有機薄膜太陽電池に影響を与える揮発成分を含まない耐溶媒性、耐熱性の比較的高い高分子材料が好ましく、具体的には、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリミクロイキシレンジメチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。これらを1種、または2種以上の共重合体として用いてもよい。
また、封止基材は、樹脂基板上にガスバリア層が形成されたものであってもよい。
【0110】
8.ゲッター層
本発明においては、図5に例示するように、上記被覆層6上にゲッター層8が形成されていることが好ましい。ゲッター層はゲッター剤を含有するものであり、ゲッター剤は酸素、水分、脱ガス成分などを吸着するものである。ゲッター層が形成されていることにより、酸素、水分、脱ガス成分などがゲッター剤に吸収され、酸素、水分、脱ガス成分などによる発電特性の低下をさらに抑制することができる。
【0111】
ゲッター剤の吸着機構は、物理吸着、化学吸着、および吸蔵、収着等のいずれであってもよい。
物理吸着剤としては、例えば、合成ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ドーソナイト、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
化学吸着剤としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。具体的には、酸化リチウム、水酸化リチウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化バリウム、水酸化バリウムが挙げられる。また、化学吸着剤として、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、塩化カルシウム、炭酸リチウム、不飽和脂肪酸、鉄化合物等も用いることができる。さらに、化学吸着剤としては、バリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム等の物質を単独、もしくは合金化したものも用いることができる。
これらのゲッター剤は、種々混合して用いてもよい。
【0112】
ゲッター層は、ゲッター剤を含有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ゲッター剤が成形されたものであってもよく、ゲッター剤が樹脂等に分散されたものであってもよい。
【0113】
ゲッター層の形成位置としては、ゲッター層が被覆層上に配置されていれば特に限定されるものではなく、被覆層上に形成されていてもよく、封止基材上に形成されていてもよい。上記接着剤層が被覆層を覆うように基板の全面に形成されている場合には、ゲッター層は被覆層と接着剤層との間に形成される。
また、ゲッター層は、一面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
【0114】
ゲッター層の形成方法としては、ゲッター層を被覆層上に配置することができれば特に限定されるものではなく、例えば、ペースト状のゲッター剤組成物を塗布する方法、ゲッターシートを貼付する方法などが挙げられる。
【0115】
9.正孔取出し層
本発明においては、図6に例示するように、光電変換層4と第1電極層3との間に正孔取出し層11が形成されていてもよい。正孔取出し層は、光電変換層から正孔取出し電極への正孔の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、光電変換層から正孔取出し電極への正孔取出し効率が高められるため、光電変換効率を向上させることが可能となる。
【0116】
正孔取出し層に用いられる材料としては、光電変換層から正孔取出し電極への正孔の取出しを安定化させる材料であれば特に限定されるものではない。具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。また、Au、In、Ag、Pd等の金属等の薄膜も使用することができる。さらに、金属等の薄膜は、単独で形成してもよく、上記の有機材料と組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、特にポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、トリフェニルジアミン(TPD)が好ましく用いられる。
【0117】
正孔取出し層の膜厚としては、上記有機材料を用いた場合は、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、上記金属薄膜である場合は、0.1nm〜5nmの範囲内であることが好ましい。
【0118】
10.電子取出し層
本発明においては、図6に例示するように、光電変換層4と第2電極層5との間に電子取出し層12が形成されていてもよい。電子取出し層は、光電変換層から電子取出し電極への電子の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、光電変換層から電子取出し電極への電子取出し効率が高められるため、光電変換効率を向上させることが可能となる。
【0119】
電子取出し層に用いられる材料としては、光電変換層から電子取出し電極への電子の取出しを安定化させる材料であれば特に限定されない。具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。また、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属との金属ドープ層が挙げられる。好適な材料としては、バソキュプロイン(BCP)または、バソフェナントロン(Bphen)と、Li、Cs、Ba、Srなどの金属ドープ層が挙げられる。
【0120】
11.その他の構成
本発明の有機薄膜太陽電池は、上述した構成部材の他にも、必要に応じて後述する構成部材を有していてもよい。例えば、本発明の有機薄膜太陽電池は、保護シート、充填材層、バリア層、保護ハードコート層、強度支持層、防汚層、高光反射層、光封じ込め層、封止材層等の機能層を有していてもよい。また、層構成に応じて、各機能層間に接着層が形成されていてもよい。
なお、これらの機能層については、特開2007−73717号公報等に記載のものと同様とすることができる。
【0121】
B.有機薄膜太陽電池モジュール
本発明の有機薄膜太陽電池モジュールは、上述の記載の有機薄膜太陽電池が複数個直列または並列に接続されていることを特徴とするものである。
【0122】
複数個の有機薄膜太陽電池の接続としては、所望の起電力を得ることができればよく、直列のみであってもよく、並列のみであってもよく、直列および並列を組み合わせてもよい。
なお、有機太陽電池については、「A.有機太陽電池」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0123】
C.有機薄膜太陽電池の製造方法
本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法は、硬化性化合物を用いて、第1電極層、光電変換層および第2電極層が順次積層された基板上に上記光電変換層を覆うように被覆層を形成する被覆層形成工程と、第1電極層、光電変換層、第2電極層および被覆層が順次積層された上記基板上または封止基材上に少なくとも上記基板の外周部に位置するように接着剤を配置する接着剤配置工程と、第1電極層、光電変換層、第2電極層および被覆層が順次積層された上記基板ならびに上記封止基材を上記接着剤を介して対向させ貼り合わせる封止工程とを有することを特徴とするものである。
【0124】
本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図2(a)〜(e)は、本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、基板2上に第1電極層3と光電変換層4と第2電極層5とを順次積層する。次いで、図2(b)に示すように、第2電極層5上に第1電極層3、光電変換層4および第2電極層5を覆うように、硬化性化合物を含有する被覆層形成用塗工液6aを塗布し、その後、硬化性化合物を含有する被覆層形成用層(被覆層形成用塗工液6aの塗膜)にマスクを介して紫外線を照射して硬化性化合物を硬化させ、現像して、図2(c)に示すように、被覆層6を所望の形状に形成する(被覆層形成工程)。次に、図2(d)に示すように、基板2の外周部に接着剤7aを塗布し(接着剤配置工程)、封止基材10を対向させる。続いて、図2(e)に示すように、基板2に封止基材10を重ね合せ、接着剤7aを硬化させて接着剤層7を介して基板2および封止基材10を貼り合わせ、素子を封止する(封止工程)。
【0125】
本発明によれば、第1電極層、光電変換層および第2電極層が順次積層された基板上に光電変換層を覆うように被覆層を形成するので、素子を封止する際に接着剤などから発生する脱ガス成分から光電変換層を保護することができる。したがって、硬化反応時の接着剤からの脱ガス成分による光電変換層の著しい劣化を防ぐことが可能である。
なお、被覆層形成工程では硬化性化合物を用いて被覆層を形成するので、封止工程での接着剤と同様に硬化反応時にガスが発生することが懸念されるが、被覆層形成工程では封止工程と異なり密閉空間で硬化反応が行われるのではなく開放空間で硬化反応が行われるため、被覆層に用いられる硬化性化合物の硬化反応時の脱ガス成分による光電変換層への影響はほとんどないと考えられる。
【0126】
また本発明によれば、硬化性化合物を用いて被覆層を形成するので、耐熱性を確保することができる。これにより、有機薄膜太陽電池の耐久性を向上させることが可能である。
さらに本発明によれば、硬化性化合物を用いて被覆層を形成するので、所望の形状に被覆層を形成することができる。例えば、図2(c)に示すように、被覆層6が基板2の外周部に位置しないように被覆層6を所望の形状に形成することができる。この場合、基板2と封止基材10とを接着剤層7を介して直接貼り合わせることができ、水分や酸素の浸入を効果的に抑制することが可能である。
【0127】
以下、本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法における各工程について説明する。
【0128】
1.被覆層形成工程
本発明における被覆層形成工程は、硬化性化合物を用いて、第1電極層、光電変換層および第2電極層が順次積層された基板上に上記光電変換層を覆うように被覆層を形成する工程である。
【0129】
被覆層の形成方法としては、硬化性化合物を用いて、第2電極層上に光電変換層を覆うように被覆層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、硬化性化合物を含有する被覆層形成用塗工液を塗布した後、硬化性化合物を硬化させる方法、硬化性化合物を含有するドライフィルムをラミネートした後、硬化性化合物を硬化させる方法、硬化性化合物を含有するドライフィルムを印刷した後、硬化性化合物を硬化させる方法を用いることができる。基板が可撓性を有する場合には、ロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)方式で被覆層を形成できることから、ドライフィルムをラミネートする方法が好ましく用いられる。
硬化性化合物の硬化方法としては、硬化性化合物の種類に応じて適宜選択されるものであり、例えば、紫外線などの電離放射線を照射する方法、加熱する方法が挙げられる。
【0130】
また、被覆層を所望の形状に形成する場合には、紫外線硬化性化合物などの電離放射線硬化性化合物を含有する被覆層形成用塗工液またはドライフィルムを用い、被覆層形成用塗工液の塗布後またはドライフィルムのラミネート後に、紫外線などの電離放射線を所望の形状で照射して硬化性化合物を硬化させ、現像する方法が好ましく用いられる。例えば図2(c)に示すように、基板2の外周部を除いて被覆層6を形成することができるので、その後、基板および封止基材を接着剤層を介して直接貼り合わせることができ、水分や酸素の浸入を効果的に抑制することが可能である。
さらに、被覆層を所望の形状に形成する場合、被覆層形成用塗工液を所望の形状に塗布する方法や、所望の形状のドライフィルムをラミネートする方法も用いることができる。
【0131】
被覆層形成用塗工液は、少なくとも硬化性化合物を含有していればよいが、通常、溶媒を含有し、必要に応じて、重合開始剤などの添加剤を含有する。
溶媒としては、上記硬化性化合物を溶解もしくは分散させるものであれば特に限定されるものではない。中でも、光電変換層を光電変換層形成用塗工液を塗布して形成する場合には、被覆層形成用塗工液に含まれる溶媒と光電変換層形成用塗工液に含まれる溶媒とが相溶性を有さないことが好ましい。被覆層形成用塗工液に含まれる溶媒と光電変換層形成用塗工液に含まれる溶媒とが相溶性を有すると、光電変換層の材料が溶出し、発電特性が低下するおそれがあるからである。
【0132】
被覆層形成用塗工液の塗布方法としては、第2電極層上に光電変換層を覆うように被覆層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
また、被覆層形成用塗工液を所望の形状に塗布する方法としては、例えば、上述の各種印刷法、インクジェット法、ディスペンサー法などが挙げられる。
【0133】
また、ドライフィルムとは、フィルム状に加工されたレジスト材料をいう。ドライフィルムとしては、少なくとも硬化性化合物を含有するフィルム状に加工されたレジスト材料であれば特に限定されるものではない。
ドライフィルムの表面には接着層が形成されていてもよい。接着層は、ドライフィルムおよび第2電極層等を貼り合わせるものであり、接着剤層とは異なる。この場合、ドライフィルムを貼るだけで被覆層を容易に形成することができる。
ドライフィルムのラミネート方法としては、第2電極層上に光電変換層を覆うように密着性良く被覆層を配置することができる方法であれば特に限定されるものではない。
また、ドライフィルムの印刷方法としては、第2電極層上に光電変換層を覆うように被覆層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、スクリーン印刷法が好ましく用いられる。
【0134】
被覆層形成時の雰囲気としては、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気、減圧雰囲気等とすることができる。
【0135】
なお、第1電極層、光電変換層、第2電極層、および被覆層のその他の点については、上記「A.有機薄膜太陽電池」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0136】
2.接着剤配置工程
本発明における接着剤配置工程は、第1電極層、光電変換層、第2電極層および被覆層が順次積層された上記基板上または封止基材上に少なくとも上記基板の外周部に位置するように接着剤を配置する工程である。
【0137】
接着剤を配置する対象としては、少なくとも基板の外周部に接着剤が位置するように接着剤を配置することができればよく、第1電極層、光電変換層、第2電極層および被覆層が順次積層された基板上に接着剤を配置してもよく、封止基材上に接着剤を配置してもよい。
【0138】
接着剤の配置としては、接着剤が少なくとも基板の外周部に位置するように配置されていれば特に限定されるものではなく、基板の外周部のみに位置するように配置してもよく、被覆層を覆うように基板の全面に位置するように配置してもよい。中でも、接着剤を被覆層を覆うように基板の全面に位置するように配置することが好ましい。被覆層と封止基材との間の間隙をなくすことができ、また基板と封止基材との接着力を向上させることができ、水分や酸素の浸入をより効果的に抑制することができるからである。
【0139】
接着剤の配置方法としては、所望の位置に接着剤層を配置することができる方法であれば特に限定されるものではなく、通常、接着剤を塗布する方法が用いられる。接着剤の塗布方法としては、接着剤の形成位置に応じて適宜選択されるものであり、例えば、インクジェット法、ディスペンサー法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等が挙げられる。基板の外周部のみに位置するように接着剤を配置する場合には、インクジェット法やディスペンサー法が好ましく用いられる。
【0140】
なお、封止基材および接着剤については、上記「A.有機薄膜太陽電池」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0141】
3.封止工程
本発明における封止工程は、第1電極層、光電変換層、第2電極層および被覆層が順次積層された上記基板ならびに上記封止基材を上記接着剤を介して対向させ貼り合わせる工程である。
【0142】
本発明においては、基板および封止基材を対向させて配置し、密着させ、接着剤を硬化させることにより封止を行うことができる。接着剤の硬化方法としては、接着剤の種類に応じて適宜選択されるものであり、通常、光を照射する、または加熱する方法が用いられる。この際、上述したように、接着剤を被覆層を覆うように基板の全面に位置するように配置することが好ましい。基板と封止基材を密着させ接着剤により封止することで、基板と封止基材の間に空間がなくなる。特に基板が透明樹脂フィルム等のフレキシブル材である場合や封止基材がフィルム状である場合、基板および封止基材の外周部での接着では、基板と封止基材の間の非接着部(接着剤が配置されていない領域)で基板および封止基材のずれが生じ剥離する懸念がある。そのため、全面での密着封止はセル強度に有効である。
【0143】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0144】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
まず、ガラス基板上に陽極となる透明電極としてITOをスパッタ成膜した。次に、透明電極上に、PEDOT/PSS(バイトロン、HCスタルク社製)をダイコートにより所望の厚みに塗布し、大気下150℃にて20分間加熱し、正孔取出し層を形成した。次いで、P3HT(poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl)、Aldrich社製)とPCBM([6,6]-phenyl-C61-butyric acid mettric ester、Nano-C社製)をオルトジクロロベンゼンに分散させ、光電変換層形成用塗工液を調製した。続いて、正孔取出し層上に光電変換層形成用塗工液をダイコートにより所望の厚みに塗布し、窒素下150℃にて15分間焼成を行い、光電変換層を形成した。次いで、光電変換層上に陰極としてLiFおよびAlを順に蒸着成膜した。
【0145】
次に、陰極を覆うように、UV硬化樹脂(新日鉄化学(株)製、UV硬化型カルド樹脂:V−259PA−PH5)をダイコートにより塗布し、120℃で2分間の仮乾燥を行い、所望の開口パターンを有するフォトマスクを介し、UV照射を実施した。この際、UV照射量は500mJ/cm2とした。その後、150℃で30分間の焼成を実施し、被覆層を形成した。被覆層の厚みを触針式膜厚測定装置(DEKTAK、アルバック社製)にて測定したところ、7.5μmであった。次いで、ゲッター層として市販の水分ゲッターシート(SAES S.p.A. Dry Flex)を被覆層上に配置した。次に、ガラス基板の外周部にUV硬化型の接着剤をディスペンス塗布し、封止基材となるガラス基板を配し、UV照射により接着剤を硬化させ、素子を封止した。
【0146】
[実施例2]
まず、PEN基材上に陽極となる透明電極としてITOをスパッタ成膜した。次に、透明電極上に、PEDOT/PSS(バイトロン、HCスタルク社製)をダイコートにより所望の厚みに塗布し、大気下150℃にて20分間加熱し、正孔取出し層を形成した。次いで、次いで、P3HT(poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl)、Aldrich社製)とPCBM([6,6]-phenyl-C61-butyric acid mettric ester、Nano-C社製)をオルトジクロロベンゼンに分散させ、光電変換層形成用塗工液を調製した。続いて、正孔取出し層上に光電変換層形成用塗工液をダイコートにより所望の厚みに塗布し、窒素下150℃にて15分間焼成を行い、光電変換層を形成した。次いで、光電変換層上に陰極としてLiFおよびAlを順に蒸着成膜した。
【0147】
次に、陰極を覆うように、被覆層としてUV硬化ドライフィルムソルダーレジスト(ニチゴーモートン社製:ALPHO−DM125)をラミネート形成した。ドライフィルムの厚みは12.5μmであり、ラミネート後の厚みも12.5μmであった。所望の開口パターンを有するフォトマスクを介し、UV照射にてレジスト画像を形成後、現像により所望の位置に被覆層を形成した。次いで、ペースト状水分ゲッター(SAES S.p.A. Dry Paste)をスクリーン印刷にて被覆層全面に塗布し、ゲッター層を形成した。続いて、ゲッター層までが形成されたPEN基材全面にUV硬化型接着剤をスクリーン印刷塗工し、PENフィルム上にガスバリア層が形成された封止基材をラミネートし、UV照射により接着剤を硬化させ、素子を封止した。
【0148】
[比較例1]
被覆層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製した。
【0149】
[実施例3]
ゲッター層を形成しないこと以外は、実施例2と同様にして有機薄膜太陽電池を作製した。
【0150】
[評価]
実施例1の有機薄膜太陽電池においては、陰極形成後での太陽電池特性と比較して、封止後の太陽電池特性では性能低下は確認されなかった。一方、比較例1の有機薄膜太陽電池においては、陰極形成後での太陽電池特性と比較して、封止後の太陽電池特性では変換効率が約30%低下した。これは、接着剤からの脱ガス成分による光電変換層の劣化が促進されたためであると考えられる。
実施例2の有機薄膜太陽電池(ゲッター層あり)と、実施例3の有機薄膜太陽電池(ゲッター層なし)とについて比較すると、初期性能では、陰極形成後での太陽電池特性および封止後の太陽電池特性に関して劣化は確認されなかった。しかしながら、その後3000時間までの保存試験を実施したところ、実施例2の有機薄膜太陽電池(ゲッター層あり)の性能低下は確認されなかったが、実施例3の有機薄膜太陽電池(ゲッター層なし)では太陽電池特性が約30%低下した。フィルム基材では、ガラス基材に比べて基材表面からの水蒸気透過があるために、長期の保存の間に水分が素子中に浸透したと考えられる。フィルム基材を有するフレキシブルな有機薄膜太陽電池を長期間保存する場合はゲッター剤が有効であると考えられる。
【符号の説明】
【0151】
1 … 有機薄膜太陽電池
2 … 基板
3 … 第1電極層
3a … 補助電極
3b … 透明電極
4 … 光電変換層
5 … 第2電極層
6 … 被覆層
7 … 接着剤層
8 … ゲッター層
10 … 封止基材
11 … 正孔取出し層
12 … 電子取出し層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1電極層と、
前記第1電極層上に形成された光電変換層と、
前記光電変換層上に形成された第2電極層と、
前記第2電極層上に前記光電変換層を覆うように形成され、硬化性化合物の硬化物を含有する被覆層と、
少なくとも前記基板の外周部に配置された接着剤層と、
前記被覆層上に配置され、前記接着剤層を介して前記基板に貼り合わされた封止基材と
を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【請求項2】
前記被覆層上にゲッター層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項3】
前記接着剤層が前記被覆層を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項4】
前記硬化性化合物が電離放射線硬化性化合物であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項5】
前記被覆層に前記硬化性化合物を含有するドライフィルムを用いたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の有機薄膜太陽電池が複数個直列または並列に接続されていることを特徴とする有機薄膜太陽電池モジュール。
【請求項7】
硬化性化合物を用いて、第1電極層、光電変換層および第2電極層が順次積層された基板上に前記光電変換層を覆うように被覆層を形成する被覆層形成工程と、
前記第1電極層、前記光電変換層、前記第2電極層および前記被覆層が順次積層された前記基板上または封止基材上に少なくとも前記基板の外周部に位置するように接着剤を配置する接着剤配置工程と、
前記第1電極層、前記光電変換層、前記第2電極層および前記被覆層が順次積層された前記基板ならびに前記封止基材を前記接着剤を介して対向させ貼り合わせる封止工程と
を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記接着剤配置工程にて、前記被覆層を覆うように前記接着剤を配置することを特徴とする請求項7に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記被覆層形成工程にて、前記基板上に前記硬化性化合物を含有する被覆層形成用塗工液を塗布することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記被覆層形成工程にて、前記基板上に前記硬化性化合物を含有するドライフィルムレジストをラミネートすることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記硬化性化合物が紫外線硬化性化合物であり、前記被覆層形成工程にて、前記硬化性化合物を含有する被覆層形成用層に紫外線を照射後、現像して、所望の形状の前記被覆層を形成することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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