説明

有機質汚泥の処理システム及び有機質汚泥の処理方法

【課題】 簡単な構成で日々大量に発生する有機質系廃棄物を確実に処理し、しかも効率よく短期間に処理し、かつ、これを肥料化する。
【解決手段】 有機質汚泥を破砕しつつ微生物を着床させた粉体を混合させ、発酵処理部で空気を供給された有機質汚泥を発酵処理する。発酵処理部は、密閉室内に投入された有機質汚泥中に加温空気を注入する加温空気注入管と、有機質汚泥が微生物発酵して発生する蒸気を含む空気を吸引排出する吸引排出部と、吸引された気体を脱臭させる脱臭部と、を有する。各密閉室は、有機質汚泥の搬入日量の少なくとも2倍以上の容積であり、それぞれの密閉室に2日連続で処理すべき有機質汚泥を搬入しつつそれぞれ2日目の有機質汚泥の搬入後に、密閉室内に投入された有機質汚泥中への加温空気の注入を開始し、これをすべての密閉室について順次、連続して行う少なくとも8個の密閉室を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機質汚泥の処理システム及び有機質汚泥の処理方法に係り、特に、大量に持ち込まれる有機質汚泥の処理を行う有機質汚泥の処理システム及び有機質汚泥の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時の経済、社会生活の高度化は、大量消費と大量投棄を生み出し、それによって環境汚染を生じさせて社会問題となっている。大量投棄により排出される廃棄物には、事業所からのごみ、生産業者が排出する廃棄物、畜産糞尿、食品汚泥、家庭から排出される生ごみ、下水道汚泥等がある。これらのうちで、一般産業廃棄物中での大きな割合を占める食品汚泥については、近時の法改正によりそれらの製造、加工の過程において生じたものは肥料等の原材料として再利用することが数値目標を掲げての国民の使命として位置づけられている。すなわち、処理に要する手間や時間、コストを考えると有機質汚泥(食品製造会社が排出する有機ごみ、外食事業者が排出する生ごみ、畜産糞尿、家庭から排出される生活ごみ、その他の食品汚泥を含む)の処理が重要でかつ早急に実現されなければならない問題である。有機汚泥の処理方法については、文献1、2のように従来から種々の提案がなされている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−35795号
【特許文献2】特開2005−74328号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1の有機汚泥の処理装置は、処理槽内の脱水室に濾布を張設し、その上方を汚泥脱水処理室、下方を脱水濾液室とし、脱水処理室に送気するとともに濾液室を複数の空気室に区画し、各圧力空気室に高圧送気と濾液排出を行わせることにより濾布を逆洗浄してその目詰まりを防止させるようにしたものである。また、特許文献2では、アンモニアを含む有機汚泥を脱水した脱水ケーキが乾燥される乾燥機から発生する高温の乾燥排ガスを、有機汚泥から分離された分離液のアンモニアストリッピングを行う蒸留塔でのキャリアガスとして用いることにより、乾燥排ガスの凝縮手段とその凝縮液の水処理を不要にして、処理設備をコンパクトにしたものである。しかしながら、これらの従来の技術は、いずれもせいぜい事業者単独の施設内での有機廃棄物の処理についてのものであり、いずれも、種々のしかも大量の有機質汚泥を受け入れて毎日処理し、例えば肥料化するものではなく、例えば20t程度の日々大量に発生する有機質汚泥処理には対応できないものであった。また、設備コスト、稼働コストが高価となり現実には大量処理設備の実用化についての難点があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は、簡単な構成で日々大量に発生する有機質系廃棄物を確実に処理し、しかも効率よく短期間に処理し、かつ、これを肥料化することのできる有機質汚泥の処理方法及び有機質汚泥の処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、搬入される有機質汚泥を破砕しつつ微生物を着床させた粉体を混合させる破砕混合部12と、破砕混合後の有機質汚泥を貯留して養生する一次貯留部14と、空気を供給された有機質汚泥を発酵処理する発酵処理部16と、を有し、発酵処理部は、併設された複数の密閉室装置18を含み、該密閉室装置18は、有機質汚泥が投入静置される密閉室181〜190と、密閉室内に投入された有機質汚泥中に加温空気を注入する加温空気注入管32と、有機質汚泥が微生物発酵して発生する蒸気を含む空気を吸引排出する吸引排出部34と、吸引された気体を脱臭させる脱臭部36と、を有し、各密閉室181〜190は、有機質汚泥の搬入日量の少なくとも2倍以上の容積であり、破砕混合、一次貯留を含む4日以内の前処理と、2週間の密閉室発酵と、を複数の密閉室について順次、連続して行うことにより、投入日量に対応する有機質汚泥を毎日処理することを特徴とする有機質汚泥の処理システムから構成される。
【0007】
その際、密閉室181〜190内に投入された有機質汚泥中への加温空気温度は、25度〜35度であるとよい。
【0008】
また、本発明は、有機質汚泥を破砕しつつ微生物を着床させた粉体を混合させる工程と、混合後の有機質汚泥を貯留して切り返し操作で空気を供給する工程と、空気を供給された有機質汚泥を密閉室内に投入静置し加温空気を室内の底部から連続して吹出して有機質汚泥中に注入する工程と、密閉室内の有機質汚泥が微生物発酵し発熱により室内空気部に蒸散させる工程と、室内空気部への蒸散とともに密閉室内の気体を吸引して換気させる工程と、吸引された気体を脱臭させる工程と、を含み、該密閉室を複数併設して、順次作業により、24時間以内で処理投入量と少なくとも同量相当の有機質汚泥発酵処理を行うことを特徴とする有機質汚泥の処理方法から構成される。
【0009】
また、密閉室内の有機質汚泥中への加温空気温度が25度〜35度であり、微生物発酵は、有機質汚泥内部温度が60℃程度に上昇する一次発酵工程と、その後さらに発酵を促進して85℃程度となる二次発酵工程と、を含むようにするよとい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の有機質汚泥の処理システムによれば、搬入される有機質汚泥を破砕しつつ微生物を着床させた粉体を混合させる破砕混合部と、破砕混合後の有機質汚泥を貯留して養生する一次貯留部と、空気を供給された有機質汚泥を発酵処理する発酵処理部と、を有し、発酵処理部は、併設された複数の密閉室装置を含み、該密閉室装置は、有機質汚泥が投入静置される密閉室と、密閉室内に投入された有機質汚泥中に加温空気を注入する加温空気注入管と、有機質汚泥が微生物発酵して発生する蒸気を含む空気を吸引排出する吸引排出部と、吸引された気体を脱臭させる脱臭部と、を有し、各密閉室は、有機質汚泥の搬入日量の少なくとも2倍以上の容積であり、破砕混合、一次貯留を含む4日以内の前処理と、2週間の密閉室発酵と、を複数の密閉室について順次、連続して行うことにより、投入日量に対応する有機質汚泥を毎日処理するから、簡単な構成で日々大量に発生する有機質系廃棄物を確実に処理し、しかも効率よく短期間に処理し、かつ、これを肥料化することができる。
【0011】
また、密閉室内に投入された有機質汚泥中への加温空気温度は、25度〜35度とすることにより、好気性微生物による処理対象の有機質汚泥の好気性発酵を促し、良好な条件により短時間での発酵作用を行わせることができる。
【0012】
また、本発明の有機質汚泥の処理方法によれば、有機質汚泥を破砕しつつ微生物を着床させた粉体を混合させる工程と、混合後の有機質汚泥を貯留して切り返し操作で空気を供給する工程と、空気を供給された有機質汚泥を密閉室内に投入静置し加温空気を室内の底部から連続して吹出して有機質汚泥中に注入する工程と、密閉室内の有機質汚泥が微生物発酵し発熱により室内空気部に蒸散させる工程と、室内空気部への蒸散とともに密閉室内の気体を吸引して換気させる工程と、吸引された気体を脱臭させる工程と、を含み、該密閉室を複数併設して、順次作業により、24時間以内で処理投入量と少なくとも同量相当の有機質汚泥発酵処理を行う構成であるから、簡単な構成で日々大量に発生する有機質系廃棄物を確実に処理し、しかも効率よく短期間に処理し、かつ、これを肥料化することを実現することが可能である。
【0013】
さらに、密閉室内の有機質汚泥中への加温空気温度が25度〜35度であり、微生物発酵は、有機質汚泥内部温度が60℃程度に上昇する一次発酵工程と、その後さらに発酵を促進して85℃程度となる二次発酵工程と、を含むことにより、好気性微生物による処理対象の有機質汚泥の好気性発酵を促し、良好な条件により短時間での発酵作用を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明の有機質汚泥の処理システム及び有機質汚泥の処理方法は、下水道汚泥、生活生ごみ、家畜糞尿、食品残渣物その他の有機質汚泥の処理手段を提供し、特に、日々排出される大量の有機質廃棄物を簡単な設備で、かつ、比較的に小さなスペースでの設置により、短期間で確実に処理できる有機質汚泥の処理システム及びその方法を提供する。本システム及び方法は、食品生産工場、一般事業所、家庭等から排出される有機質廃棄物、畜産肥育場等から排出される家畜糞尿、その他の有機廃棄物をも対象として処理する。
【0015】
図1ないし図3は、本発明の実施形態に係る有機質汚泥の処理システム及びそれを実現する装置あるいは設備を示しており、図1において、該有機質汚泥の処理システムは、有機質汚泥を破砕しつつ微生物を着床させた粉体を混合させる破砕混合部12と、破砕混合後の有機質汚泥を貯留して養生する一次貯留部14と、空気を供給された有機質汚泥を発酵処理する発酵処理部16と、を有し、発酵処理部は、併設された複数の密閉室装置18を含む。
【0016】
図1の実施形態では、短壁201、長壁202がそれぞれ対向設置されて長四角形状の敷地に長四角形状の外壁が立設され、壁の上端に屋根203が架設されて処理施設20が形成されている。処理施設20の床部の幅方向中央部には、片端から他方端にわたって横方向に搬送レーン22が設けられ、左右の短壁201には開閉扉201a,201bが設けられ、さらに左短壁201に隣接する長辺壁の一部に出入り口202aが形成されている。
【0017】
処理施設20内部は、図1上、左奥から右側に順にストックヤード24、破砕混合部12及び発酵処理部16aがそれぞれ仕切壁W1、W2に仕切られて配置され、処理施設20内部手前側は、破砕混合部12に対向し搬送レーン22を間に挟んで仕切壁W3、W4で仕切られて一次貯留部14が設けられ、さらに、その右側に発酵処理部16bが配置されている。さらに、発酵処理部16a、16bに隣接して袋詰め処理部26が設けられている。
【0018】
ストックヤードに搬入される汚泥は、一般に含水率80%程度である。破砕混合部12は、外部から搬入されてストックヤード24に貯留されている有機質汚泥を破砕しつつ微生物を着床させた粉体を混合させる部位であり、例えばバトルミキサ28からなる混合破砕機が設置されて、そのホッパから、処理すべき有機質汚泥とともに微生物を着床させたパウダを投入し、塊状に固着した汚泥を破砕するとともに、微生物パウダを有機質汚泥に混合させる。混合破砕機を通した微生物を含む汚泥は、例えば5mm粒径程度に粒径が調整される。微生物パウダは、例えばゼオライト、バーミキュライト、オガ粉等を加熱殺菌したものに、バクテリアを培養して得た一次菌体を着床させた液を霧散布して微生物を含むパウダとしたものであり、この微生物パウダを例えば汚泥10に対して重量比1:10程度の割合で投入させ、混合攪拌させる。微生物を含むパウダは、ある程度の湿度を有して調製される。着床される微生物としては、例えばストレプトコッカス、サッカロマイセス、バチルスサブタイル、コリネバクテリウム等がある。
【0019】
一次貯留部14は、破砕混合後の有機質汚泥を貯留して養生する一次貯留手段であり、例えば、上面が開口し、長四角形状に壁で仕切られた内部に破砕混合後の有機質汚泥を投入し、攪拌羽根その他の切り返し装置を用いて汚泥が腐敗しないように切り返し操作で汚泥中に空気を供給する空気の供給装置を備えている。一次貯留部14で一次貯留し次工程の発酵処理部16に処理対処汚泥を搬入させるまでに待機させるとともに、発酵しやすい状態に混合攪拌後の汚泥を安定させ、養生させる。破砕混合部12、一次貯留部14は、発酵処理前の前処理工程を行いつつ、密閉室181〜188への所要量投入時期を待機する前処理部あるいは前処理工程を構成する。
【0020】
図1において、発酵処理部16は、同じ処理施設20内に配置された複数の密閉室装置18を含む。すなわち、破砕混合部12に壁を挟んでつぎつぎに連続隣接するように第1の密閉室群Cm1が設置されるとともに、搬送レーン22を間に挟んで該密閉室群Cm1に対向して連続隣接する第2密閉室群Cm2が設置されている。第1密閉室群Cm1は、壁W5〜W7を挟んで隣り合うように隣接する4個の密閉室181〜184を有すると共に、第2密閉室群Cm2も同様の併設構成で壁W8〜W10を挟んで隣り合うように隣接する5個の密閉室185〜188を有している。それぞれの密閉室181〜188は、搬送レーン22側に開閉ドア30を有し、背面壁Wbと、外壁Wt、並びに天井壁Wcにより、仕切られてある程度の気密を保持した状態に閉鎖されている。
【0021】
密閉室181〜188は、有機汚泥を投入して静置し、微生物発酵させる密閉閉鎖式の発酵槽であり、実施形態において、該密閉室は、それぞれ大容量の空間を有している。すなわち、各密閉室は、有機質汚泥の搬入日量の少なくとも2倍以上の容積を有して構成されている。例えば、ストックヤード24に搬入される日量が20トンとすると、各密閉室は、例えば85トンあるいはそれ以上の汚泥を収容可能な大きさで構成されている。そして、密閉室へ投入する例えば80トンの処理対象汚泥が前処理工程としての一次貯留部14に4日以内程度で貯留され、各密閉室内へは貯留された例えば80トンの汚泥が一度に各密閉室に投入される。すなわち、日々搬入される汚泥を各密閉室容量以内の所要量まで蓄積し、この間腐敗をしないように管理して所要量の蓄積完了後にいっぺんに1つの密閉室に汚泥を投入し、各密閉室についてこれを順次行っていくものである。これによって、密閉室内での有機質汚泥の発酵管理を簡単に行えると共に、処理を確実に行える。
【0022】
図1ないし図3において、密閉室装置18は、さらに加温空気注入管32と、吸引排出部34と、脱臭部36と、を備えている。加温空気注入管32は、図2、3に示すように、例えばコンクリート製床に複数条(例えば3個)の並列溝38を凹設し、それぞれの溝内に埋め込み状に配設されており、外周に多数の空気噴出孔40を形成した金属管から構成されている。空気噴出孔40からは常温程度、例えば25℃〜35℃程度の加温空気が外部に向けて放散される。したがって、密閉室内に処理すべき有機質汚泥を投入して加温空気を噴出させるから該加温空気は直接に有機質汚泥中に注入される。このとき、加温空気の有機質汚泥中への空気の到達距離が充填した密閉室内の有機質汚泥の嵩高さの70%〜90%程度の高さとなる汚泥内部で加温空気がとどまる程度の噴射圧により加温空気が注入管32から噴射される。これによって、微生物発酵による自然な温度上昇が汚泥中水分を蒸発させ、密閉室内の残余空気部42に放出される。
【0023】
図1、2に示すように、密閉室181〜188の背面側に機械室44が設置されており、該機械室44内に各密閉室に対応してブロワ46及びヒータ48を含む加温空気注入駆動装置49が設置され、ヒータ48は対応する密閉室の加温空気注入管32と配管50を介して連通接続されている。それぞれのブロワ46及びヒータ48は、図示しない制御装置に電気的に接続されており、温度センサ56により検出した室内温度と設定室内温度との差が設定範囲となるようにそれぞれの装置をオン、オフさせ、風量調節、温度調節機能を行って、適当な吹出し風量と設定温度に密閉室内温度が調節される。なお、これらの調節は、作業者が手動により行うようにしてもよく、摘み等の調節操作により、加温空気注入管32からの所望の吹出し風量と温度調節により例えば25℃〜35℃で、上記の設定された噴出量あるいは速度で加温空気が加温空気注入管32から汚泥内部に注入させてもよい。
【0024】
吸引排出部34は、有機質汚泥が微生物発酵して発生する蒸気を含む空気を密閉室内から吸引排出する吸引排出手段であり、本実施形態において、各密閉室の背面壁Wbに取付けられた吸引ファン52を含む。さらに、この吸引ファン52に連通して脱臭部36としての脱臭装置が密閉室外部に設けられており、吸引ファンを駆動して吸引排出された密閉室内の高温空気が脱臭装置に送られ、脱臭後の空気は水ジャケット等を配備させた冷却装置で中温程度の温度に冷却されて、ブロワ46に通じる配管により外部からの新鮮空気と共にブロワ側に供給されて加温空気注入管32から再び噴出されて還流するか、あるいは外気放出、その他の適宜の方法で処理される。脱臭装置は、木炭、竹炭、ゼオライト、オガ粉等を複数の層に層分けして充填したタンク内に密閉室の有機質汚泥から発生する蒸気を含む空気を通すことにより、臭気を取りだす。
【0025】
そして、該密閉室装置18のそれぞれの密閉室に前処理が完了する4日以内、すなわち、本実施形態では4日連続で破砕混合工程と一次貯留工程を使用し、その後、14日連続で密閉室内での発酵処理を行う。有機質汚泥の各密閉室内への搬入後に、密閉室内に投入された有機質汚泥中への加温空気の注入を開始し、これをすべての密閉室について順次、連続して行うことにより、例えば日々搬入される日量20トン程度の大量の有機質汚泥を確実に処理することができる。その結果、毎日20トン程度の有機質汚泥を処理設備内に搬送させて保持させることができ、かつ、これら20トンの汚泥を毎日確実に堆肥化処理することができる。
【0026】
本実施形態では、この処理は、8個の密閉室装置により行うようにしているが、各密閉室は、有機質汚泥のストックヤードへの搬入日量の少なくとも2倍以上の容積であり、破砕混合、一次貯留を含む4日以内の前処理と、2週間の密閉室発酵と、を複数の密閉室について順次、連続して行うことにより、搬入日量に対応する有機質汚泥を毎日処理するものである。前処理の4日は、破砕混合処理及び水分調整時間を確保するための前処理時間として適当な時間であるが、この日数よりも1,2日の前後した期間であってもよい。2週間程度の密閉室発酵は、2,3日のずれを生じても良い。なお、図1中、56は、密閉室内の温度センサであり、58は破砕混合工程、一次貯留工程等で出る汚泥中の水分を排水桝へ導く樋、60は排水桝である。
【0027】
次に、図4をも参照し、本実施形態の有機質汚泥の処理システムの作用について、同有機質汚泥の処理方法とともに説明する。有機質下水汚泥RM1、牛糞RM2、有機質食品工業汚泥RM3、食品残渣RM4がそれぞれ図1の処理施設20のストックヤード24に搬入される(S1)。日々搬入される有機質汚泥の種類は、不定であり、日々ストックヤードへ搬入される汚泥の種類の配合構成も特定は困難である。例えば上記の汚泥中の1種類のみもあるし、4種類すべてが混入する場合もある。また、2種類のみ、あるいは3種類のみの場合もある。これらは、たとえば有機質下水汚泥RM1が80%程度、牛糞RM2が55%程度、有機質食品工業汚泥RM3が83%程度、食品残渣RM4が24%程度の含水率であり、一般に搬入後の有機質汚泥は含水率80〜90%である。それぞれの汚泥は、金属、プラスチック片その他の非有機質物質は予めフィルタ処理等により除去されて例えば30トンの有機質系物質のみがストックヤードに搬入される。
【0028】
ストックヤードに搬入された処理対象の有機質汚泥は、例えばタイヤショベルにより隣の破砕混合部12に搬送され、そこに設置されている混合破砕機に微生物パウダとともに投入されて混合、攪拌される(S2)。この際、例えば、微生物パウダを例えば汚泥10に対して重量比1:10程度の割合で投入させ、混合攪拌させる。
【0029】
混合、攪拌後に例えば粒径5mm程度の粒子状の汚泥が形成され、これを更にタイヤショベル等の搬送手段により、搬送レーン22を挟んだ対向位置の一次貯留部14に移送される。一次貯留部では、例えば1時間に数回程度の割合で切り返し装置が一次貯留部の槽体内を往復作動し(S3)、そこに投入した有機質汚泥への酸素供給による腐敗を防止するとともに、発酵しやすい条件を整えるための養生を行う。これで前処理工程が行われる。この破砕混合及び一次貯留工程を含む前処理工程は、例えば4日間で行われる。
【0030】
次に、一次貯留部14に約80トンの汚泥が蓄積された5日目に、発酵処理部16の例えば85トンの容量の密閉室に80トンの汚泥を一度に投入する。そして、この処理を各密閉室181〜188について、順次行う。各密閉室への汚泥の投入時に同時に、加温空気注入駆動装置49を駆動させて25℃〜35℃程度の加温空気を処理対象汚泥中に注入する。注入後、約7日後程度の時期に一次発酵(S4)により有機質汚泥は好気性発酵し、汚泥中温度は約65℃程度に上昇する。さらに、その後7日目程度で二次発酵(S5)を生じ、汚泥中温度は、約80〜85℃に達する。この間、加温空気注入管32からは上記の常温程度の温風が吹出され、さらに、吸引排出部34及び脱臭部36を介して密閉室内の残余空気部42から発酵による蒸気を含む空気が吸引排出される一方、吸引空気を脱臭して外部等へ排気される。吸引排出部34の吸引ファン52はセンサ56による残余空気部42の検出温度に連動して作動するように制御装置を介して制御されており、常に最適の設定発酵条件を保持するようになっている。
【0031】
そして、各密閉室は、有機質汚泥の搬入日量の少なくとも2倍以上の容積であり、破砕混合、一次貯留を含む4日以内の前処理と、2週間程度の密閉室発酵と、を複数の密閉室について順次、連続して行うことにより、搬入日量に対応する有機質汚泥を毎日処理することができる。また、有機質汚泥中への加温空気の注入を開始し、これをすべての密閉室について順次、連続して行うことにより、24時間以内で処理投入量と少なくとも同量相当の肥料原料を製造する(S6)ことができる。汚泥の発酵完了時には、堆肥化汚泥の体積は約3分の1の20t程度に減容する。そして、第1の密閉室181からすべての完成後の堆肥化汚泥を排出し、袋詰め処理部26の作業スペースに搬送されて袋詰めされ(S7)、製品出荷可能状態とされる(S8)。このとき、例えば含水率が20%〜30%程度に調整されている。
【0032】
図5は、これらの処理工程表であり、第1室から第8室についてそれぞれ4日の前処理と、14日の発酵処理を行って計80トンの汚泥が処理される。図において、4日間の前処理後、80トンの汚泥を密閉室に充填し、同時に加温空気注入駆動を開始させた後、約2週間で発酵完了し、コンポストを得る。第1室は5日から18日が発酵使用され、第2室は、9日から22日、第3室は、13日から26日、以下同様に4日の前処理と14日の発酵処理のローテーションが繰り返されて、8室すべてが使用され、その間、日々20トンの汚泥が処理される。さらに、作業スペースで、3日程度の間隔で袋詰め製品化された10トンの堆肥化製品が完成していく。
【0033】
以下、順次、これを繰り返すことにより、敷地内に隣接した密閉スペースを作るだけの極めて簡単な設備により汚泥の大量処理が可能である。すなわち、20tの汚泥を毎日投入し、毎日、発酵処理後の減容後20t程度の汚泥堆肥化物を処理製造する。つまり、順次作業により、24時間以内で処理投入量と少なくとも同量相当の有機質汚泥発酵処理を行うものである。処理後の堆肥化汚泥は有価物として取引の対象となり、利益をもたらす。上記した実施形態では密閉室及びこれを含む密閉室装置は8個設けているが、それ以上の個数を設置させてもよい。また、密閉室の4個づつの対向配置に限らず、単に直列状に配置させた構成としても良い。
【0034】
図5は、上記の処理システム並びに方法により、製造したコンポストの分析結果の一例を示している。
【0035】
本実施形態の有機質汚泥の処理方法は、有機質汚泥を破砕しつつ微生物を着床させた粉体を混合させる工程と、混合後の有機質汚泥を貯留して切り返し操作で空気を供給する工程と、空気を供給された有機質汚泥を密閉室内に投入静置し加温空気を室内の底部から連続して吹出して有機質汚泥中に注入する工程と、密閉室内の有機質汚泥が微生物発酵し発熱により室内空気部に蒸散させる工程と、室空気部への蒸散とともに密閉室内の気体を吸引して換気させる工程と、吸引された気体を脱臭させる工程と、を含み、該密閉室を複数併設して、順次作業により、24時間以内で処理投入量と少なくとも同量相当の有機質汚泥発酵処理を行うものである。
【0036】
以上説明した本発明の有機質汚泥の処理システム及び有機質汚泥の処理方法は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の有機質汚泥の処理システム及び有機質汚泥の処理方法は、下水道汚泥、生活生ごみ、家畜糞尿、食品残渣物、食品生産工場、一般事業所等から排出される有機質廃棄物、その他の有機廃棄物を簡単な設備で有効に大量処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る有機質汚泥の処理システムの全体構成平面説明図である。
【図2】図1の処理システムにおける密閉室の一部省略拡大平面説明図である。
【図3】図1の有機質汚泥の処理システムの処理施設の拡大縦断面説明図である。
【図4】図1の処理システムによる処理方法を示すフローチャート図である。
【図5】図1の処理システムによる処理工程の表を示す図である。
【図6】図1の処理システムにより製造したコンポストの成分表の図である。
【符号の説明】
【0039】
12 破砕混合部
14 一次貯留部
16 発酵処理部
18 密閉室装置
32 加温空気注入管
34 吸引排出部
36 脱臭部
Cm1 第1密閉室群、Cm2 第2密閉室群
181〜190 密閉室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入される有機質汚泥を破砕しつつ微生物を着床させた粉体を混合させる破砕混合部と、
破砕混合後の有機質汚泥を貯留して養生する一次貯留部と、
空気を供給された有機質汚泥を発酵処理する発酵処理部と、を有し、
発酵処理部は、併設された複数の密閉室装置を含み、
該密閉室装置は、有機質汚泥が投入静置される密閉室と、
密閉室内に投入された有機質汚泥中に加温空気を注入する加温空気注入管と、
有機質汚泥が微生物発酵して発生する蒸気を含む空気を吸引排出する吸引排出部と、
吸引された気体を脱臭させる脱臭部と、を有し、
各密閉室は、有機質汚泥の搬入日量の少なくとも2倍以上の容積であり、
破砕混合、一次貯留を含む4日以内の前処理と、2週間程度の密閉室発酵と、を複数の密閉室について順次、連続して行うことにより、搬入日量に対応する有機質汚泥を毎日処理することを特徴とする有機質汚泥の処理システム。
【請求項2】
密閉室内に投入された有機質汚泥中への加温空気温度は、25度〜35度であることを特徴とする請求項1記載の有機質汚泥の処理システム。
【請求項3】
有機質汚泥を破砕しつつ微生物を着床させた粉体を混合させる工程と、
混合後の有機質汚泥を貯留して切り返し操作で空気を供給する工程と、
空気を供給された有機質汚泥を密閉室内に投入静置し加温空気を室内の底部から連続して吹出して有機質汚泥中に注入する工程と、
密閉室内の有機質汚泥が微生物発酵し発熱により室内空気部に蒸散させる工程と、
室内空気部への蒸散とともに密閉室内の気体を吸引して換気させる工程と、
吸引された気体を脱臭させる工程と、を含み、
該密閉室を複数併設して、順次作業により、24時間以内で搬入量と少なくとも同量相当の有機質汚泥発酵処理を行うことを特徴とする有機質汚泥の処理方法。
【請求項4】
密閉室内の有機質汚泥中への加温空気温度が25度〜35度であり、
微生物発酵は、有機質汚泥内部温度が60℃程度に上昇する一次発酵工程と、
その後さらに発酵を促進して85℃程度となる二次発酵工程と、を含むことを特徴とする請求項3記載の有機質汚泥の処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−167802(P2007−167802A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371498(P2005−371498)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(503377179)株式会社アーステクノ (1)
【Fターム(参考)】