有機金属錯体、並びにそれを用いた吸蔵物質及び触媒
【課題】高度な吸蔵特性と優れた触媒作用とを発揮することが可能なポルフィリン構造を有する有機金属錯体、並びに、それを用いた吸蔵物質及び触媒の提供。
【解決手段】ピリジン環を含有するポルフィリン誘導体が、
[M2は金属原子を示す。]で表されるカルボン酸金属錯体を介して結合されていることを特徴とする有機金属錯体。
【解決手段】ピリジン環を含有するポルフィリン誘導体が、
[M2は金属原子を示す。]で表されるカルボン酸金属錯体を介して結合されていることを特徴とする有機金属錯体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属錯体、並びにそれを用いた吸蔵物質及び触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸蔵物質や触媒として利用することが可能な有機金属錯体が種々報告されてきている(例えば、Tomohiko Sato.et al.,Microporous Rhodiumu(II)4,4’,4”,4'”−(21H,23H−porphin−5,10,15,20−tetrayl)tetrakisbenzoate.,Chemistry Letter,2003年発行,Vol.32,No.9,p854−p855(非特許文献1)、及びTomohiko Sato.et al.,Novel microporous rhodiumu(II)carboxylate polymer complexes containing metalloporphyrin.,Journal of Catalysis,2005年発行,Vol.232,p186−p198(非特許文献2)参照)。
【0003】
このような有機金属錯体として、例えば、特開2004−238347号公報(特許文献1)や特開2004−67596号公報(特許文献2)においては、金属原子と、その金属原子に配位した金属ポルフィリン構造を有する配位子とからなる特定の2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体が開示されており、更に、特開2000−63385号公報(特許文献3)においては、特定のジカルボン酸を、銅、クロム、モリブデン、ロジウム、パラジウム及びタングステンから選択される少なくとも1種の2価の金属イオンに配位してなるジカルボン酸金属錯体が開示されている。
【0004】
しかしながら、従来のポルフィリン構造を有する有機金属錯体においては吸蔵特性や触媒作用が未だ十分なものでなかった。
【特許文献1】特開2004−238347号公報
【特許文献2】特開2004−67596号公報
【特許文献3】特開2000−63385号公報
【非特許文献1】Tomohiko Sato.et al.,Microporous Rhodiumu(II)4,4’,4”,4'”−(21H,23H−porphin−5,10,15,20−tetrayl)tetrakisbenzoate.,Chemistry Letter,2003年発行,Vol.32,No.9,p854−p855
【非特許文献2】Tomohiko Sato.et al.,Novel microporous rhodiumu(II)carboxylate polymer complexes containing metalloporphyrin.,Journal of Catalysis,2005年発行,Vol.232,p186−p198
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ポルフィリン構造を有する有機金属錯体であって、高度な吸蔵特性と優れた触媒作用とを発揮することが可能な有機金属錯体、並びに、それを用いた吸蔵物質及び触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のポルフィリン誘導体が特定のカルボン酸金属錯体を介して結合されている有機金属錯体によって、高度な吸蔵特性と優れた触媒作用とを発揮することが可能なポルフィリン構造を有する有機金属錯体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の有機金属錯体は、下記一般式(1):
【0008】
【化1】
【0009】
[式(1)中、M1は窒素原子に配位している金属原子を示すか、或いは窒素原子に結合している2個の水素原子を示し、R1〜R8は同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の置換基を示す。]
で表されるポルフィリン誘導体が、下記一般式(2):
【0010】
【化2】
【0011】
[式(2)中、R9は同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の有機置換基を示し、M2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子を示す。]
で表されるカルボン酸金属錯体を介して結合されていることを特徴とするものである。
【0012】
上記本発明の有機金属錯体としては、下記一般式(3):
【0013】
【化3】
【0014】
[式(3)中、M1は同一でも異なっていてもよく、それぞれ前記一般式(1)中のM1と同義であり、R1〜R8は前記一般式(1)中のR1〜R8と同義であり、Xは前記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体を示す。]
で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有するものが好ましい。
【0015】
上記本発明の有機金属錯体としては、前記一般式(1)中のR1〜R8が、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シリル基、シアノ基、スルホン酸基、メルカプト基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の置換基であることが好ましい。
【0016】
上記本発明の有機金属錯体としては、前記一般式(2)中のR9が、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の有機置換基であることが好ましい。
【0017】
上記本発明の有機金属錯体としては、前記一般式(1)中のM1が、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、チタン、バナジウム、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、タングステン、レニウム及び鉄からなる群から選択される金属原子又は2個の水素原子であることが好ましい。
【0018】
上記本発明の有機金属錯体としては、前記一般式(2)中のM2が、それぞれ、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム及び鉄からなる群から選択される二核構造を形成できる金属原子であることが好ましい。
【0019】
上記本発明の有機金属錯体としては、前記2次元格子構造の繰り返し単位が有する径の異なる複数の細孔のうち最大の細孔の細孔径が0.6〜2.5nmであることが好ましい。
【0020】
また、本発明の吸蔵物質は上記本発明の有機金属錯体を含有することを特徴とするものである。
【0021】
さらに、本発明の触媒は上記本発明の有機金属錯体を含有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高度な吸蔵特性と優れた触媒作用とを発揮することが可能なポルフィリン構造を有する有機金属錯体、並びに、それを用いた吸蔵物質及び触媒を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0024】
先ず、本発明の有機金属錯体について説明する。すなわち、本発明の有機金属錯体は、下記一般式(1):
【0025】
【化4】
【0026】
[式(1)中、M1は窒素原子に配位している金属原子を示すか、或いは窒素原子に結合している2個の水素原子を示し、R1〜R8は同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の置換基を示す。]
で表されるポルフィリン誘導体が、下記一般式(2):
【0027】
【化5】
【0028】
[式(2)中、R9は同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の有機置換基を示し、M2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子を示す。]
で表されるカルボン酸金属錯体を介して結合されていることを特徴とするものである。
【0029】
本発明にかかるポルフィリン誘導体中のM1は、窒素原子に配位している金属原子又は窒素原子に結合している2個の水素原子である。M1が窒素原子に結合している2個の水素原子である場合にはポルフィリン誘導体は下記一般式(4):
【0030】
【化6】
【0031】
で表されるような構造を有する。
【0032】
また、上述のようにM1は、2個の水素原子又は金属原子を示す。このようなM1として選択され得る金属原子としては、ポルフィリン環の内部の窒素原子が配位することが可能な金属原子であればよく特に制限されず、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、タングステン、レニウム、鉄、セリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、ケイ素、カルシウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、テクネチウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、オスミウム、イリジウム等が挙げられる。このようなM1として選択され得る金属原子としては、配位能力の高さとできた化合物の安定性及び毒性の観点から、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、チタン、バナジウム、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、タングステン、レニウム及び鉄からなる群から選択される金属原子であることが好ましい。また、M1としては製造の容易さという観点からは、銅がより好ましく、触媒能がより向上するという観点からは、ロジウム、ルテニウム、チタン、鉄及びセリウムがより好ましい。
【0033】
また、本発明にかかるポルフィリン誘導体中のR1〜R8は同一でも異なっていてもよく、それぞれが一価の置換基である。このような一価の置換基としては特に制限されないが、立体障害とピロール環の電子密度の観点から、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シリル基、シアノ基、スルホン酸基、メルカプト基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の置換基が好ましく、中でも水素原子、メチル基がより好ましい。
【0034】
また、R1〜R8として選択され得るハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、中でもフッ素、塩素が好ましい。
【0035】
また、R1〜R8として選択され得る前記アルキル基、前記ハロゲン化アルキル基、前記アリール基、前記ハロゲン化アリール基としては、炭素数が1〜12(更に好ましくは1〜6)のものがより好ましく、中でも、置換基のかさ高さの観点から、細孔容積を減少させないためにメチル基、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0036】
また、本発明にかかるカルボン酸金属錯体は、上記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体である。
【0037】
本発明にかかるカルボン酸金属錯体中のR9は同一でも異なっていてもよく、それぞれが一価の有機置換基である。このようなR9として選択され得る一価の有機置換基としては特に制限されないが、合成の容易さ、例えば溶媒への溶解性の観点から、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基及びハロゲン化アリール基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、アントリル基又はピレニル基がより好ましく、中でもメチル基、フェニル基が特に好ましい。
【0038】
本発明にかかるカルボン酸金属錯体中のM2は金属原子である。このようなM2として選択され得る金属原子としては二核構造を形成できる金属原子であればよく特に制限されないが、例えば、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、チタン、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、オスミウム、イリジウムが挙げられる。
【0039】
このようなM2として選択され得る金属原子としては、カルボン酸と金属の配位能力の強さの観点から、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム又は鉄が好ましく、中でも銅、ルテニウム、ロジウム又は亜鉛がより好ましい。
【0040】
また、本発明の有機金属錯体としては、下記一般式(3):
【0041】
【化7】
【0042】
[式(3)中、M1は同一でも異なっていてもよく、それぞれ前記一般式(1)中のM1と同義であり、R1〜R8は前記一般式(1)中のR1〜R8と同義であり、Xは前記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体を示す。]
で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有するものが好ましい。このような2次元格子構造を繰り返し単位として有することで、有機金属錯体が有する細孔の細孔径がより大きくなり、吸蔵能及び触媒能がより向上する傾向にある。ここで、本発明にいう細孔とは、上記一般式(3)で表される2次元格子構造が自己集積機能により積層した時に形成される空孔を言い、細孔径とは原子のファンデルワールス半径を考慮した時に、他の原子や分子が存在しない空間内の最大距離をいう。
【0043】
また、本発明の有機金属錯体としては、前記2次元格子構造の繰り返し単位が有する径の異なる複数の細孔のうち最大の細孔の細孔径が0.6〜2.5nmであることが好ましく、1.0〜2.5nmであることがより好ましい。このような細孔径が前記下限未満では細孔径が小さすぎて十分な吸蔵能及び触媒能を発揮できない傾向にあり、他方、前記上限を超えると細孔が分子吸着され難い空間として認識される傾向にある。
【0044】
また、本発明の有機金属錯体においては、その比表面積については特に制限はないが、30m2/g以上であることが好ましく、100m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が前記下限未満では十分な吸蔵能や触媒能を発揮できない傾向にある。このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式、Langmuir吸着等温式を採用して算出することができる。
【0045】
また、細孔容積としては、0.01cm3/g以上であることが好ましく、0.1cm3/g以上であることがより好ましい。細孔容積が前記下限未満では十分な吸蔵能や触媒能を発揮できない傾向にある。
【0046】
次に、本発明の有機金属錯体を製造するための好適な方法について説明する。すなわち、先ず、テトラピリジルポルフィリン及び/又はテトラピリジルポルフィリン金属錯体(前記一般式(1)で表されるポルフィリン誘導体)を溶媒に溶解させた溶液に、テトラキスモノカルボン酸金属二核錯体(前記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体)を反応用有機溶媒に溶解させた溶液を混合し、十分に結晶が析出するまで数日間撹拌する。その後、析出した結晶をろ過し、反応に用いた溶媒で洗浄し、真空乾燥することにより、本発明の有機金属錯体として好適な有機金属錯体(前記一般式(3)で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体)を得ることができる。
【0047】
このようなテトラピリジルポルフィリンやテトラピリジルポルフィリン金属錯体並びにテトラキスモノカルボン酸金属二核錯体は、目的とする本発明の有機金属錯体の構造によって適宜選択されるものである。このようなテトラピリジルポルフィリン及び/又はテトラピリジルポルフィリン金属錯体の添加量と、テトラキスモノカルボン酸金属二核錯体の添加量とのモル比としては、バルクで均一な目的物を得るという観点から1:0.1〜1:20程度であることが好ましい。
【0048】
また、このようなテトラピリジルポルフィリンやテトラピリジルポルフィリン金属錯体を溶解させる溶媒としては特に制限されないが、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等が挙げられる。更に、前記反応用有機溶媒としては特に制限されず、水酸基を有する溶媒等が挙げることができる。このような反応用有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンゼン、トルエン、ペンタン、エチルベンゼン、n−ヘキサン、3−メチルペンタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、クロロホルム、エチルプロピルエーテル、アリルエチルエーテル、アセトン、エチルメチルケトンが挙げられる。
【0049】
また、前記溶液を混合する方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜選択して採用することができ、例えば、細管を用いて細管の下層にテトラピリジルポルフィリン及び/又はテトラピリジルポルフィリン金属錯体を溶媒に溶解させた溶液を仕込んだ後、テトラキスモノカルボン酸金属二核錯体をアルコール系溶媒に溶解させた溶液を静かに加える液−液拡散法を採用することができる。
【0050】
また、数日間放置する際の温度条件としては、0〜200℃程度が好ましく、室温(25℃)〜80℃程度であることがより好ましい。また、数日間放置する際の圧力条件としては、0.01〜10MPa程度であることが好ましく、0.1〜1MPa程度であることがより好ましい。
【0051】
以上、本発明の有機金属錯体について説明したが、以下において、本発明の吸蔵物質及び触媒について説明する。
【0052】
本発明の吸蔵物質は、上記本発明の有機金属錯体を含有することを特徴とする。また、本発明の触媒は、上記本発明の有機金属錯体を含有することを特徴とする。このように、本発明の吸蔵物質又は触媒は、それぞれ上記本発明の有機金属錯体を含有しているものであることから、ともに優れた吸蔵能及び触媒能を有している。
【0053】
また、本発明の吸蔵物質及び触媒は上記本発明の有機金属錯体を含有するものであればよく、上記本発明の有機金属錯体そのものが本発明の吸蔵物質又は触媒を構成していても、或いは上記本発明の有機金属錯体を他の基材に担持せしめて本発明の吸蔵物質又は触媒が構成されていてもよい。更に、本発明の吸蔵物質及び触媒の形状は特に限定されず、粉末、顆粒、膜状、球状、繊維状等を挙げることができる。また、円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状等に成形したものであってもよい。
【0054】
このような本発明の吸蔵物質は、例えば水素吸蔵物質等として特に有用である。また、前記本発明の触媒は、例えば、酸化反応用の触媒等として特に有用であり、飽和、不飽和炭化水素の選択的酸化反応を行うことによって有機合成反応の中間体として重要なアルコール化合物やエポキシ化合物等の含酸素化合物を合成するための触媒、或いは水素、窒素、一酸化炭素、含硫黄化合物等の低分子を酸化する触媒等としても使用可能である。また、本発明の触媒は、例えば、種々の悪臭成分、揮発性有機化合物(VOC)若しくは有害成分を(吸着し)分解除去する環境浄化触媒として、工場、車両等において排出される廃ガスの脱臭、浄化装置等に使用可能である。更に、本発明の触媒は、化学工場、食品製造工場、畜産農業、下水・屎尿処理場等の産業用分野だけでなく、例えば、住居、オフィス、車、共用施設、飲食店等における脱臭・消臭剤、脱臭・消臭製品、脱臭・消臭装置として活用できる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
〈錯体の製造〉
先ず、テトラピリジルポルフィリン6mg(0.0097mmol)を20mlのクロロホルムに溶解させた溶液を細管の下層に仕込み、酢酸銅(II)一水和物40mg(0.1002mmol)を20mlのメタノールに溶解させた溶液を上から静かに加え、常圧(0.1MPa程度)、常温(25℃程度)の条件下において、数日間放置し、液−液拡散法により単結晶を析出させた。
【0057】
次に、得られた単結晶をろ過した後、クロロホルムとメタノールの混合溶媒で洗浄し、真空乾燥を施すことにより、上記一般式(1)中のM1が銅(II)(銅の含有率100%)で、R1〜R8がそれぞれ水素原子であり、且つ上記一般式(2)中のR9がメチル基でM2が銅(II)である本発明の有機金属錯体を得た。
【0058】
〈単結晶X線構造解析〉
得られた有機金属錯体に対して単結晶X線構造解析を行った。このような単結晶X線構造解析においては、X線構造解析装置として理学電子株式会社製の商品名「Saturn」を用い、解析ソフトとして理学電子株式会社製の商品名「Crystal Structure」を用いた。また、X線構造解析により得られる構造の様子を見る方向を示す図を図1に示し、図1に示す(a)、(b)、(c)方向の関係を表すベクトル図を図2に示し、(a)、(d)、(e)方向の関係を表すベクトル図を図3に示す。このように(a)方向は2次元格子面と垂直な方向を示し、(b)及び(d)方向は2次元格子面と平行な方向を示し、(c)方向は(a)及び(b)方向とそれぞれ45°の角度となる方向を示し、(e)方向は(a)及び(d)方向とそれぞれ45°の角度となる方向を示す。
【0059】
このようなX線構造解析により得られた(a)方向から見た2次元格子構造の様子を図4に示す。また、(a)方向から見た2次元格子構造の積層した様子を図5に示し、(b)方向から見た2次元格子構造の積層した様子を図6に示す。更に、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の各方向から見た細孔の様子を図7に示す。
【0060】
図4〜7からも明らかなように、得られた有機金属錯体は、上記一般式(3)で表されるM1が銅(II)(銅の含有率100%)であり、R1〜R8がそれぞれ水素原子であり、R9がメチル基であり、且つM2が銅(II)である2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体であることが確認された。また、図7からも明らかなように、得られた有機金属錯体は9方向に孔が空いていることが確認された。また、このような有機金属錯体の有する径の異なる複数の細孔のうち最大の細孔の細孔径は1.0nmであり、大口径の細孔を有する有機金属錯体であることが確認された。
【0061】
〈比表面積、細孔容積、細孔系分布の測定〉
液体窒素温度における窒素ガスの吸脱着等温線を、日本ベル社製の商品名「BELSORP 18」を用いて測定した。測定結果を図8に示す。
【0062】
測定の結果、比表面積は812.08m2/g(BET等温吸着式により算出)及び1035.96m2/g(測定範囲:0〜40KPa、Langmuir吸着等温式により算出)であり、細孔容積は0.4622cm3であった。
【0063】
〈水素吸着量の測定〉
−199.3℃と23.3℃における水素吸着量を測定した。測定の結果から得られた水素の吸脱着等温線のグラフを図9に示す。図9からも明らかなように、本発明の有機金属錯体が吸脱着効果に優れることが確認された。
【0064】
〈熱安定性の測定〉
TG−MS測定により、熱安定性及び発生したガスの同定を行った。温度に対する各種ガスの発生量の変化の関係を示すグラフを図10に示す。
【0065】
図10からも明らかなように、一段階目の減量(温度範囲:23〜140℃)において細孔内からクロロホルムが抜け、二段階目の減量(温度範囲:190〜400℃)でリンカー部分である酢酸銅(II)の分解が起こることが確認された。
【0066】
〈触媒能の試験〉
得られた有機金属錯体をメチルメルカプタン(CH3SH)の酸化触媒として使用した。生成物としてジメチルジスルフィド(CH3−S−S−CH3)が選択的に得られ、酸化触媒として有効に機能することが明らかになった。
【0067】
(実施例2)
〈錯体の製造〉
先ず、酢酸銅(II)一水和物の代わりに、酢酸イオン二分子と安息香酸二分子とからなる銅(II)二核錯体を用いた以外は実施例1と同様の方法を採用して単結晶を析出させた。なお、このような有機金属錯体の製造に用いた酢酸イオン二分子と安息香酸二分子とからなる銅(II)二核錯体の構造を図11に示す。
【0068】
次に、得られた単結晶をろ過した後、クロロホルムで洗浄し、真空乾燥を施すことにより、上記一般式(1)中のM1が銅(II)(銅の含有率100%)で、R1〜R8がそれぞれ水素原子であり、且つ上記一般式(2)中のR9のうちの2つが酢酸イオンで、R9のうちの残りの2つが安息香酸イオンで、M2が銅(II)である本発明の有機金属錯体を得た。
【0069】
〈単結晶X線構造解析〉
得られた有機金属錯体に対して単結晶X線構造解析を行った。このような単結晶X線構造解析においては、X線構造解析装置として理学電子株式会社製の商品名「Rigaku CCD Mercury」を用い、解析ソフトとして理学電子株式会社製の商品名「Crystal Structure」を用いた。前述の(c)方向から見た2次元格子構造が積層した様子を図12に示す。
【0070】
図12に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた有機金属錯体は、上記一般式(3)中のM1が銅(II)(銅の含有率100%)で、R1〜R8がそれぞれ水素原子であり、且つ上記一般式(2)中のR9のうちの2つが酢酸イオンで、R9のうちの残りの2つが安息香酸イオンで、M2が銅(II)である二次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体であることが確認された。また、図12に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた有機金属錯体の有する細孔径は1.0nm以上であり、大口径の細孔を有する有機金属錯体であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明によれば、高度な吸蔵特性と優れた触媒作用とを発揮することが可能なポルフィリン構造を有する有機金属錯体、並びに、それを用いた吸蔵物質及び触媒を提供することが可能となる。
【0072】
したがって、本発明の有機金属錯体は、吸蔵能及び触媒能に優れるため、水素吸蔵物質や酸化反応用の触媒の材料等として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】X線構造解析により実施例1で得られた有機金属錯体の構造の様子を見る方向を示す図である。
【図2】図1に示す(a)、(b)、(c)方向の関係を表すベクトル図である。
【図3】図1に示す(a)、(d)、(e)方向の関係を表すベクトル図である。
【図4】(a)方向から見た実施例1で得られた有機金属錯体の2次元格子構造の様子を示す図である。
【図5】(a)方向から見た実施例1で得られた有機金属錯体の2次元格子構造が積層した様子を示す図である。
【図6】(b)方向から見た実施例1で得られた有機金属錯体の2次元格子構造の積層した様子を示す図である。
【図7】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の各方向から見た実施例1で得られた有機金属錯体の細孔の様子を示す図である。
【図8】実施例1で得られた有機金属錯体の液体窒素温度における窒素ガスの吸脱着等温線を示すグラフである。
【図9】実施例1で得られた有機金属錯体の−199.3℃と23.3℃とにおける水素の吸脱着等温線を示すグラフである。
【図10】実施例1で得られた有機金属錯体の温度に対する各種ガスの発生量の変化の関係を示すグラフである。
【図11】実施例2で用いた酢酸イオン二分子と安息香酸二分子とからなる銅(II)二核錯体の構造を示す図である。
【図12】(c)方向から見た実施例2で得られた有機金属錯体の2次元格子構造の積層した様子を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属錯体、並びにそれを用いた吸蔵物質及び触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸蔵物質や触媒として利用することが可能な有機金属錯体が種々報告されてきている(例えば、Tomohiko Sato.et al.,Microporous Rhodiumu(II)4,4’,4”,4'”−(21H,23H−porphin−5,10,15,20−tetrayl)tetrakisbenzoate.,Chemistry Letter,2003年発行,Vol.32,No.9,p854−p855(非特許文献1)、及びTomohiko Sato.et al.,Novel microporous rhodiumu(II)carboxylate polymer complexes containing metalloporphyrin.,Journal of Catalysis,2005年発行,Vol.232,p186−p198(非特許文献2)参照)。
【0003】
このような有機金属錯体として、例えば、特開2004−238347号公報(特許文献1)や特開2004−67596号公報(特許文献2)においては、金属原子と、その金属原子に配位した金属ポルフィリン構造を有する配位子とからなる特定の2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体が開示されており、更に、特開2000−63385号公報(特許文献3)においては、特定のジカルボン酸を、銅、クロム、モリブデン、ロジウム、パラジウム及びタングステンから選択される少なくとも1種の2価の金属イオンに配位してなるジカルボン酸金属錯体が開示されている。
【0004】
しかしながら、従来のポルフィリン構造を有する有機金属錯体においては吸蔵特性や触媒作用が未だ十分なものでなかった。
【特許文献1】特開2004−238347号公報
【特許文献2】特開2004−67596号公報
【特許文献3】特開2000−63385号公報
【非特許文献1】Tomohiko Sato.et al.,Microporous Rhodiumu(II)4,4’,4”,4'”−(21H,23H−porphin−5,10,15,20−tetrayl)tetrakisbenzoate.,Chemistry Letter,2003年発行,Vol.32,No.9,p854−p855
【非特許文献2】Tomohiko Sato.et al.,Novel microporous rhodiumu(II)carboxylate polymer complexes containing metalloporphyrin.,Journal of Catalysis,2005年発行,Vol.232,p186−p198
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ポルフィリン構造を有する有機金属錯体であって、高度な吸蔵特性と優れた触媒作用とを発揮することが可能な有機金属錯体、並びに、それを用いた吸蔵物質及び触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のポルフィリン誘導体が特定のカルボン酸金属錯体を介して結合されている有機金属錯体によって、高度な吸蔵特性と優れた触媒作用とを発揮することが可能なポルフィリン構造を有する有機金属錯体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の有機金属錯体は、下記一般式(1):
【0008】
【化1】
【0009】
[式(1)中、M1は窒素原子に配位している金属原子を示すか、或いは窒素原子に結合している2個の水素原子を示し、R1〜R8は同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の置換基を示す。]
で表されるポルフィリン誘導体が、下記一般式(2):
【0010】
【化2】
【0011】
[式(2)中、R9は同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の有機置換基を示し、M2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子を示す。]
で表されるカルボン酸金属錯体を介して結合されていることを特徴とするものである。
【0012】
上記本発明の有機金属錯体としては、下記一般式(3):
【0013】
【化3】
【0014】
[式(3)中、M1は同一でも異なっていてもよく、それぞれ前記一般式(1)中のM1と同義であり、R1〜R8は前記一般式(1)中のR1〜R8と同義であり、Xは前記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体を示す。]
で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有するものが好ましい。
【0015】
上記本発明の有機金属錯体としては、前記一般式(1)中のR1〜R8が、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シリル基、シアノ基、スルホン酸基、メルカプト基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の置換基であることが好ましい。
【0016】
上記本発明の有機金属錯体としては、前記一般式(2)中のR9が、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の有機置換基であることが好ましい。
【0017】
上記本発明の有機金属錯体としては、前記一般式(1)中のM1が、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、チタン、バナジウム、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、タングステン、レニウム及び鉄からなる群から選択される金属原子又は2個の水素原子であることが好ましい。
【0018】
上記本発明の有機金属錯体としては、前記一般式(2)中のM2が、それぞれ、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム及び鉄からなる群から選択される二核構造を形成できる金属原子であることが好ましい。
【0019】
上記本発明の有機金属錯体としては、前記2次元格子構造の繰り返し単位が有する径の異なる複数の細孔のうち最大の細孔の細孔径が0.6〜2.5nmであることが好ましい。
【0020】
また、本発明の吸蔵物質は上記本発明の有機金属錯体を含有することを特徴とするものである。
【0021】
さらに、本発明の触媒は上記本発明の有機金属錯体を含有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高度な吸蔵特性と優れた触媒作用とを発揮することが可能なポルフィリン構造を有する有機金属錯体、並びに、それを用いた吸蔵物質及び触媒を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0024】
先ず、本発明の有機金属錯体について説明する。すなわち、本発明の有機金属錯体は、下記一般式(1):
【0025】
【化4】
【0026】
[式(1)中、M1は窒素原子に配位している金属原子を示すか、或いは窒素原子に結合している2個の水素原子を示し、R1〜R8は同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の置換基を示す。]
で表されるポルフィリン誘導体が、下記一般式(2):
【0027】
【化5】
【0028】
[式(2)中、R9は同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の有機置換基を示し、M2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子を示す。]
で表されるカルボン酸金属錯体を介して結合されていることを特徴とするものである。
【0029】
本発明にかかるポルフィリン誘導体中のM1は、窒素原子に配位している金属原子又は窒素原子に結合している2個の水素原子である。M1が窒素原子に結合している2個の水素原子である場合にはポルフィリン誘導体は下記一般式(4):
【0030】
【化6】
【0031】
で表されるような構造を有する。
【0032】
また、上述のようにM1は、2個の水素原子又は金属原子を示す。このようなM1として選択され得る金属原子としては、ポルフィリン環の内部の窒素原子が配位することが可能な金属原子であればよく特に制限されず、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、タングステン、レニウム、鉄、セリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、ケイ素、カルシウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、テクネチウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、オスミウム、イリジウム等が挙げられる。このようなM1として選択され得る金属原子としては、配位能力の高さとできた化合物の安定性及び毒性の観点から、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、チタン、バナジウム、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、タングステン、レニウム及び鉄からなる群から選択される金属原子であることが好ましい。また、M1としては製造の容易さという観点からは、銅がより好ましく、触媒能がより向上するという観点からは、ロジウム、ルテニウム、チタン、鉄及びセリウムがより好ましい。
【0033】
また、本発明にかかるポルフィリン誘導体中のR1〜R8は同一でも異なっていてもよく、それぞれが一価の置換基である。このような一価の置換基としては特に制限されないが、立体障害とピロール環の電子密度の観点から、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シリル基、シアノ基、スルホン酸基、メルカプト基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の置換基が好ましく、中でも水素原子、メチル基がより好ましい。
【0034】
また、R1〜R8として選択され得るハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、中でもフッ素、塩素が好ましい。
【0035】
また、R1〜R8として選択され得る前記アルキル基、前記ハロゲン化アルキル基、前記アリール基、前記ハロゲン化アリール基としては、炭素数が1〜12(更に好ましくは1〜6)のものがより好ましく、中でも、置換基のかさ高さの観点から、細孔容積を減少させないためにメチル基、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0036】
また、本発明にかかるカルボン酸金属錯体は、上記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体である。
【0037】
本発明にかかるカルボン酸金属錯体中のR9は同一でも異なっていてもよく、それぞれが一価の有機置換基である。このようなR9として選択され得る一価の有機置換基としては特に制限されないが、合成の容易さ、例えば溶媒への溶解性の観点から、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基及びハロゲン化アリール基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、アントリル基又はピレニル基がより好ましく、中でもメチル基、フェニル基が特に好ましい。
【0038】
本発明にかかるカルボン酸金属錯体中のM2は金属原子である。このようなM2として選択され得る金属原子としては二核構造を形成できる金属原子であればよく特に制限されないが、例えば、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、チタン、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、オスミウム、イリジウムが挙げられる。
【0039】
このようなM2として選択され得る金属原子としては、カルボン酸と金属の配位能力の強さの観点から、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム又は鉄が好ましく、中でも銅、ルテニウム、ロジウム又は亜鉛がより好ましい。
【0040】
また、本発明の有機金属錯体としては、下記一般式(3):
【0041】
【化7】
【0042】
[式(3)中、M1は同一でも異なっていてもよく、それぞれ前記一般式(1)中のM1と同義であり、R1〜R8は前記一般式(1)中のR1〜R8と同義であり、Xは前記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体を示す。]
で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有するものが好ましい。このような2次元格子構造を繰り返し単位として有することで、有機金属錯体が有する細孔の細孔径がより大きくなり、吸蔵能及び触媒能がより向上する傾向にある。ここで、本発明にいう細孔とは、上記一般式(3)で表される2次元格子構造が自己集積機能により積層した時に形成される空孔を言い、細孔径とは原子のファンデルワールス半径を考慮した時に、他の原子や分子が存在しない空間内の最大距離をいう。
【0043】
また、本発明の有機金属錯体としては、前記2次元格子構造の繰り返し単位が有する径の異なる複数の細孔のうち最大の細孔の細孔径が0.6〜2.5nmであることが好ましく、1.0〜2.5nmであることがより好ましい。このような細孔径が前記下限未満では細孔径が小さすぎて十分な吸蔵能及び触媒能を発揮できない傾向にあり、他方、前記上限を超えると細孔が分子吸着され難い空間として認識される傾向にある。
【0044】
また、本発明の有機金属錯体においては、その比表面積については特に制限はないが、30m2/g以上であることが好ましく、100m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が前記下限未満では十分な吸蔵能や触媒能を発揮できない傾向にある。このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式、Langmuir吸着等温式を採用して算出することができる。
【0045】
また、細孔容積としては、0.01cm3/g以上であることが好ましく、0.1cm3/g以上であることがより好ましい。細孔容積が前記下限未満では十分な吸蔵能や触媒能を発揮できない傾向にある。
【0046】
次に、本発明の有機金属錯体を製造するための好適な方法について説明する。すなわち、先ず、テトラピリジルポルフィリン及び/又はテトラピリジルポルフィリン金属錯体(前記一般式(1)で表されるポルフィリン誘導体)を溶媒に溶解させた溶液に、テトラキスモノカルボン酸金属二核錯体(前記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体)を反応用有機溶媒に溶解させた溶液を混合し、十分に結晶が析出するまで数日間撹拌する。その後、析出した結晶をろ過し、反応に用いた溶媒で洗浄し、真空乾燥することにより、本発明の有機金属錯体として好適な有機金属錯体(前記一般式(3)で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体)を得ることができる。
【0047】
このようなテトラピリジルポルフィリンやテトラピリジルポルフィリン金属錯体並びにテトラキスモノカルボン酸金属二核錯体は、目的とする本発明の有機金属錯体の構造によって適宜選択されるものである。このようなテトラピリジルポルフィリン及び/又はテトラピリジルポルフィリン金属錯体の添加量と、テトラキスモノカルボン酸金属二核錯体の添加量とのモル比としては、バルクで均一な目的物を得るという観点から1:0.1〜1:20程度であることが好ましい。
【0048】
また、このようなテトラピリジルポルフィリンやテトラピリジルポルフィリン金属錯体を溶解させる溶媒としては特に制限されないが、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等が挙げられる。更に、前記反応用有機溶媒としては特に制限されず、水酸基を有する溶媒等が挙げることができる。このような反応用有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンゼン、トルエン、ペンタン、エチルベンゼン、n−ヘキサン、3−メチルペンタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、クロロホルム、エチルプロピルエーテル、アリルエチルエーテル、アセトン、エチルメチルケトンが挙げられる。
【0049】
また、前記溶液を混合する方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜選択して採用することができ、例えば、細管を用いて細管の下層にテトラピリジルポルフィリン及び/又はテトラピリジルポルフィリン金属錯体を溶媒に溶解させた溶液を仕込んだ後、テトラキスモノカルボン酸金属二核錯体をアルコール系溶媒に溶解させた溶液を静かに加える液−液拡散法を採用することができる。
【0050】
また、数日間放置する際の温度条件としては、0〜200℃程度が好ましく、室温(25℃)〜80℃程度であることがより好ましい。また、数日間放置する際の圧力条件としては、0.01〜10MPa程度であることが好ましく、0.1〜1MPa程度であることがより好ましい。
【0051】
以上、本発明の有機金属錯体について説明したが、以下において、本発明の吸蔵物質及び触媒について説明する。
【0052】
本発明の吸蔵物質は、上記本発明の有機金属錯体を含有することを特徴とする。また、本発明の触媒は、上記本発明の有機金属錯体を含有することを特徴とする。このように、本発明の吸蔵物質又は触媒は、それぞれ上記本発明の有機金属錯体を含有しているものであることから、ともに優れた吸蔵能及び触媒能を有している。
【0053】
また、本発明の吸蔵物質及び触媒は上記本発明の有機金属錯体を含有するものであればよく、上記本発明の有機金属錯体そのものが本発明の吸蔵物質又は触媒を構成していても、或いは上記本発明の有機金属錯体を他の基材に担持せしめて本発明の吸蔵物質又は触媒が構成されていてもよい。更に、本発明の吸蔵物質及び触媒の形状は特に限定されず、粉末、顆粒、膜状、球状、繊維状等を挙げることができる。また、円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状等に成形したものであってもよい。
【0054】
このような本発明の吸蔵物質は、例えば水素吸蔵物質等として特に有用である。また、前記本発明の触媒は、例えば、酸化反応用の触媒等として特に有用であり、飽和、不飽和炭化水素の選択的酸化反応を行うことによって有機合成反応の中間体として重要なアルコール化合物やエポキシ化合物等の含酸素化合物を合成するための触媒、或いは水素、窒素、一酸化炭素、含硫黄化合物等の低分子を酸化する触媒等としても使用可能である。また、本発明の触媒は、例えば、種々の悪臭成分、揮発性有機化合物(VOC)若しくは有害成分を(吸着し)分解除去する環境浄化触媒として、工場、車両等において排出される廃ガスの脱臭、浄化装置等に使用可能である。更に、本発明の触媒は、化学工場、食品製造工場、畜産農業、下水・屎尿処理場等の産業用分野だけでなく、例えば、住居、オフィス、車、共用施設、飲食店等における脱臭・消臭剤、脱臭・消臭製品、脱臭・消臭装置として活用できる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
〈錯体の製造〉
先ず、テトラピリジルポルフィリン6mg(0.0097mmol)を20mlのクロロホルムに溶解させた溶液を細管の下層に仕込み、酢酸銅(II)一水和物40mg(0.1002mmol)を20mlのメタノールに溶解させた溶液を上から静かに加え、常圧(0.1MPa程度)、常温(25℃程度)の条件下において、数日間放置し、液−液拡散法により単結晶を析出させた。
【0057】
次に、得られた単結晶をろ過した後、クロロホルムとメタノールの混合溶媒で洗浄し、真空乾燥を施すことにより、上記一般式(1)中のM1が銅(II)(銅の含有率100%)で、R1〜R8がそれぞれ水素原子であり、且つ上記一般式(2)中のR9がメチル基でM2が銅(II)である本発明の有機金属錯体を得た。
【0058】
〈単結晶X線構造解析〉
得られた有機金属錯体に対して単結晶X線構造解析を行った。このような単結晶X線構造解析においては、X線構造解析装置として理学電子株式会社製の商品名「Saturn」を用い、解析ソフトとして理学電子株式会社製の商品名「Crystal Structure」を用いた。また、X線構造解析により得られる構造の様子を見る方向を示す図を図1に示し、図1に示す(a)、(b)、(c)方向の関係を表すベクトル図を図2に示し、(a)、(d)、(e)方向の関係を表すベクトル図を図3に示す。このように(a)方向は2次元格子面と垂直な方向を示し、(b)及び(d)方向は2次元格子面と平行な方向を示し、(c)方向は(a)及び(b)方向とそれぞれ45°の角度となる方向を示し、(e)方向は(a)及び(d)方向とそれぞれ45°の角度となる方向を示す。
【0059】
このようなX線構造解析により得られた(a)方向から見た2次元格子構造の様子を図4に示す。また、(a)方向から見た2次元格子構造の積層した様子を図5に示し、(b)方向から見た2次元格子構造の積層した様子を図6に示す。更に、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の各方向から見た細孔の様子を図7に示す。
【0060】
図4〜7からも明らかなように、得られた有機金属錯体は、上記一般式(3)で表されるM1が銅(II)(銅の含有率100%)であり、R1〜R8がそれぞれ水素原子であり、R9がメチル基であり、且つM2が銅(II)である2次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体であることが確認された。また、図7からも明らかなように、得られた有機金属錯体は9方向に孔が空いていることが確認された。また、このような有機金属錯体の有する径の異なる複数の細孔のうち最大の細孔の細孔径は1.0nmであり、大口径の細孔を有する有機金属錯体であることが確認された。
【0061】
〈比表面積、細孔容積、細孔系分布の測定〉
液体窒素温度における窒素ガスの吸脱着等温線を、日本ベル社製の商品名「BELSORP 18」を用いて測定した。測定結果を図8に示す。
【0062】
測定の結果、比表面積は812.08m2/g(BET等温吸着式により算出)及び1035.96m2/g(測定範囲:0〜40KPa、Langmuir吸着等温式により算出)であり、細孔容積は0.4622cm3であった。
【0063】
〈水素吸着量の測定〉
−199.3℃と23.3℃における水素吸着量を測定した。測定の結果から得られた水素の吸脱着等温線のグラフを図9に示す。図9からも明らかなように、本発明の有機金属錯体が吸脱着効果に優れることが確認された。
【0064】
〈熱安定性の測定〉
TG−MS測定により、熱安定性及び発生したガスの同定を行った。温度に対する各種ガスの発生量の変化の関係を示すグラフを図10に示す。
【0065】
図10からも明らかなように、一段階目の減量(温度範囲:23〜140℃)において細孔内からクロロホルムが抜け、二段階目の減量(温度範囲:190〜400℃)でリンカー部分である酢酸銅(II)の分解が起こることが確認された。
【0066】
〈触媒能の試験〉
得られた有機金属錯体をメチルメルカプタン(CH3SH)の酸化触媒として使用した。生成物としてジメチルジスルフィド(CH3−S−S−CH3)が選択的に得られ、酸化触媒として有効に機能することが明らかになった。
【0067】
(実施例2)
〈錯体の製造〉
先ず、酢酸銅(II)一水和物の代わりに、酢酸イオン二分子と安息香酸二分子とからなる銅(II)二核錯体を用いた以外は実施例1と同様の方法を採用して単結晶を析出させた。なお、このような有機金属錯体の製造に用いた酢酸イオン二分子と安息香酸二分子とからなる銅(II)二核錯体の構造を図11に示す。
【0068】
次に、得られた単結晶をろ過した後、クロロホルムで洗浄し、真空乾燥を施すことにより、上記一般式(1)中のM1が銅(II)(銅の含有率100%)で、R1〜R8がそれぞれ水素原子であり、且つ上記一般式(2)中のR9のうちの2つが酢酸イオンで、R9のうちの残りの2つが安息香酸イオンで、M2が銅(II)である本発明の有機金属錯体を得た。
【0069】
〈単結晶X線構造解析〉
得られた有機金属錯体に対して単結晶X線構造解析を行った。このような単結晶X線構造解析においては、X線構造解析装置として理学電子株式会社製の商品名「Rigaku CCD Mercury」を用い、解析ソフトとして理学電子株式会社製の商品名「Crystal Structure」を用いた。前述の(c)方向から見た2次元格子構造が積層した様子を図12に示す。
【0070】
図12に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた有機金属錯体は、上記一般式(3)中のM1が銅(II)(銅の含有率100%)で、R1〜R8がそれぞれ水素原子であり、且つ上記一般式(2)中のR9のうちの2つが酢酸イオンで、R9のうちの残りの2つが安息香酸イオンで、M2が銅(II)である二次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体であることが確認された。また、図12に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた有機金属錯体の有する細孔径は1.0nm以上であり、大口径の細孔を有する有機金属錯体であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明によれば、高度な吸蔵特性と優れた触媒作用とを発揮することが可能なポルフィリン構造を有する有機金属錯体、並びに、それを用いた吸蔵物質及び触媒を提供することが可能となる。
【0072】
したがって、本発明の有機金属錯体は、吸蔵能及び触媒能に優れるため、水素吸蔵物質や酸化反応用の触媒の材料等として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】X線構造解析により実施例1で得られた有機金属錯体の構造の様子を見る方向を示す図である。
【図2】図1に示す(a)、(b)、(c)方向の関係を表すベクトル図である。
【図3】図1に示す(a)、(d)、(e)方向の関係を表すベクトル図である。
【図4】(a)方向から見た実施例1で得られた有機金属錯体の2次元格子構造の様子を示す図である。
【図5】(a)方向から見た実施例1で得られた有機金属錯体の2次元格子構造が積層した様子を示す図である。
【図6】(b)方向から見た実施例1で得られた有機金属錯体の2次元格子構造の積層した様子を示す図である。
【図7】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の各方向から見た実施例1で得られた有機金属錯体の細孔の様子を示す図である。
【図8】実施例1で得られた有機金属錯体の液体窒素温度における窒素ガスの吸脱着等温線を示すグラフである。
【図9】実施例1で得られた有機金属錯体の−199.3℃と23.3℃とにおける水素の吸脱着等温線を示すグラフである。
【図10】実施例1で得られた有機金属錯体の温度に対する各種ガスの発生量の変化の関係を示すグラフである。
【図11】実施例2で用いた酢酸イオン二分子と安息香酸二分子とからなる銅(II)二核錯体の構造を示す図である。
【図12】(c)方向から見た実施例2で得られた有機金属錯体の2次元格子構造の積層した様子を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[式(1)中、M1は窒素原子に配位している金属原子を示すか、或いは窒素原子に結合している2個の水素原子を示し、R1〜R8は同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の置換基を示す。]
で表されるポルフィリン誘導体が、下記一般式(2):
【化2】
[式(2)中、R9は同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の有機置換基を示し、M2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子を示す。]
で表されるカルボン酸金属錯体を介して結合されていることを特徴とする有機金属錯体。
【請求項2】
下記一般式(3):
【化3】
[式(3)中、M1は同一でも異なっていてもよく、それぞれ前記一般式(1)中のM1と同義であり、R1〜R8は前記一般式(1)中のR1〜R8と同義であり、Xは前記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体を示す。]
で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有することを特徴とする請求項1に記載の有機金属錯体。
【請求項3】
前記一般式(1)中のR1〜R8が、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シリル基、シアノ基、スルホン酸基、メルカプト基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の置換基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機金属錯体。
【請求項4】
前記一般式(2)中のR9が、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の有機置換基であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の有機金属錯体。
【請求項5】
前記一般式(1)中のM1が、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、チタン、バナジウム、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、タングステン、レニウム及び鉄からなる群から選択される金属原子又は2個の水素原子であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の有機金属錯体。
【請求項6】
前記一般式(2)中のM2が、それぞれ、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム及び鉄からなる群から選択される二核構造を形成できる金属原子であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の有機金属錯体。
【請求項7】
前記2次元格子構造の繰り返し単位が有する径の異なる複数の細孔のうち最大の細孔の細孔径が0.6〜2.5nmであることを特徴とする請求項2〜6のうちのいずれか一項に記載の有機金属錯体。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の有機金属錯体を含有することを特徴とする吸蔵物質。
【請求項9】
請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の有機金属錯体を含有することを特徴とする触媒。
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[式(1)中、M1は窒素原子に配位している金属原子を示すか、或いは窒素原子に結合している2個の水素原子を示し、R1〜R8は同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の置換基を示す。]
で表されるポルフィリン誘導体が、下記一般式(2):
【化2】
[式(2)中、R9は同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の有機置換基を示し、M2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子を示す。]
で表されるカルボン酸金属錯体を介して結合されていることを特徴とする有機金属錯体。
【請求項2】
下記一般式(3):
【化3】
[式(3)中、M1は同一でも異なっていてもよく、それぞれ前記一般式(1)中のM1と同義であり、R1〜R8は前記一般式(1)中のR1〜R8と同義であり、Xは前記一般式(2)で表されるカルボン酸金属錯体を示す。]
で表される2次元格子構造を繰り返し単位として有することを特徴とする請求項1に記載の有機金属錯体。
【請求項3】
前記一般式(1)中のR1〜R8が、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シリル基、シアノ基、スルホン酸基、メルカプト基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の置換基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機金属錯体。
【請求項4】
前記一般式(2)中のR9が、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の有機置換基であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の有機金属錯体。
【請求項5】
前記一般式(1)中のM1が、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、チタン、バナジウム、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、タングステン、レニウム及び鉄からなる群から選択される金属原子又は2個の水素原子であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の有機金属錯体。
【請求項6】
前記一般式(2)中のM2が、それぞれ、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム及び鉄からなる群から選択される二核構造を形成できる金属原子であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の有機金属錯体。
【請求項7】
前記2次元格子構造の繰り返し単位が有する径の異なる複数の細孔のうち最大の細孔の細孔径が0.6〜2.5nmであることを特徴とする請求項2〜6のうちのいずれか一項に記載の有機金属錯体。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の有機金属錯体を含有することを特徴とする吸蔵物質。
【請求項9】
請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の有機金属錯体を含有することを特徴とする触媒。
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−169267(P2007−169267A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314501(P2006−314501)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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