説明

有機電子デバイスのための化合物

本発明は、発光層におけるドーパントとして、または他の層または機能において式(1)の化合物を用いることによる、有機エレクトロルミネセンスデバイス、特に青色発光デバイスの改善に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、新しいタイプの化合物、および有機エレクトロルミネセンスデバイスにおけるその使用に関する。
【0002】
有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLED)における半導体有機化合物の使用は市場への導入がまさに始まったところである。このようなデバイスの一般構造は、例えば US 4539507、US 5151629、EP 0676461、および WO 98/27136 に記載されている。単純なOLEDを含むデバイスは、パイオニア社製のカーラジオ、パイオニア社およびSNMD社製の携帯電話、または有機ディスプレイを有するコダック社製のデジタルカメラにより示される通り市場に既に導入されている。このタイプのさらなる製品は近いうちに導入されるであろう。
【0003】
しかしながら、これらのデバイスは至急の改善を必要とする重大な問題をなお示す。
【0004】
1.特に青色発光の場合において駆動寿命は未だにあまりに低く、従って、今日まで単純な用途のみが商業的に実現可能であった。
2.効率はこの何年かで改善されているが、特に蛍光OLEDについては未だにかなり低く、改善される必要がある。この一つの原因は、青色エミッタとして典型的に用いられる材料の多くについての低いフォトルミネセンス量子収量であり得る。
3.芳香族アミンおよび二重結合系の双方を含む多くの青色発光化合物は熱的に不安定であり、昇華の過程でまたは蒸着の過程で分解する。結果として、これらの系を使用すると必ず大きな損失を伴い、例え使用したとしても高いレベルの技術的な複雑さを伴い、さらに連続的な長期の製造も不可能である。
4.二重結合系を含有する多くの青色発光化合物は、特に加熱時または電子励起時にトランス型立体配置からシス型立体配置への異性化を示す。シス−スチルベン誘導体が光化学的に反応してジヒドロフェナントレンを与え、これは続いて酸化的に反応してフェナントレンを与えることが知られている。これは、これらの反応生成物が反応物質とは異なる電子特性および光化学特性を有するために、デバイスのより乏しい再現性をもたらし得る。
【0005】
直近の技術は、特定のアリールビニルアミンの使用を記載したものであり、これはイデミツによるスチルベン様の系の二重結合上にさらに置換基を有さないものである(例えば、WO 04/013073、WO 04/016575、WO 04/018587)。これらを用いると、良好な寿命が青色発光について報告されている。しかしながら、これらの結果は用いられるホスト材料に高く依存し、従って、挙げられた寿命は絶対値として比較できるものでなく、むしろ最適化されたホスト系における使用の場合においてのみのことである。さらに、これらの化合物は熱的に不安定であり、蒸発させると必ず分解を伴い、従って、蒸着について高いレベルの技術的な複雑さを伴うために明らかな技術的な欠点を伴う。さらなる欠点はこれらの化合物の発光色である。イデミツは深い青色発光(0.15〜0.18の範囲のCIE y座標)を報告しているが、従来技術による単純なデバイスにおいてこれらの色座標を再現することは不可能であった。それどころか、0.30〜0.35の範囲にあるCIE y座標を有する緑色−青色発光がここでは得られた。どのようにして青色発光をこれらの化合物を用いて得ることができるのかは明らかでない。
【0006】
文献に記載されている化合物の二重結合が、上記の問題の少なくともいくつかについての原因であり得るということを我々は疑っている。例えば、二重結合は加熱の過程(例えば化合物の精製のための昇華の過程、またはデバイスの製造における蒸着の過程)で重合する傾向があり、またはデバイスの作動の過程で励起状態においてトランス型立体配置からシス型立体配置に異性化することがある。同一の置換の場合、つまり生成物は反応物質と同じ構造を有するために異性化の結果はさほど深刻ではない場合であっても、無放射の様式で分子の励起エネルギを失活させる。従ってこれらの副反応は有機電子デバイスの効率または寿命を低下させることがある。さらにこれらの副反応は、場合によって、これらの化合物の低い熱的安定性の原因となる。
【0007】
従って、有機エレクトロルミネセンスデバイスにおいて良好な効率と同時に長い寿命をもたらし、かつ熱的に安定であり、よって技術的に問題なく処理することができる青色発光化合物についての要求がなお存在する。驚くべきことに、以下に示すある種の化合物であって、その二重結合がホスト材料中の青色発光ドーパントとしての化学構造に基づいてシス−トランス異性化を示すことのない化合物を含む有機エレクトロルミネセンスデバイスが従来技術に対して明らかな改善を有するということをここに見出した。これらの材料により、高い効率と長い寿命を同時に得ることが可能である。他の機能においても、有機エレクトロルミネセンスデバイスおよび他の有機電子デバイスにおけるこれらの材料は良好な性質を示す。さらに、従来技術による材料とは異なり、これらの化合物を殆ど分解を伴うことなく昇華させ、および蒸着により付着させることができ、従って従来技術による材料よりも取り扱いが明らかにより容易である。従って、これらの化合物と有機電子デバイスにおけるその使用は本発明の主題の一部を形成する。
【0008】
本発明は式(1)の化合物を提供する
【化4】

【0009】
(式中、用いられる記号は、
Aは各々の例で同一であるか異なり、N、PまたはP=Oであり、
X、Yは各々の例で同一であるか異なり、それぞれ、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族系または複素芳香族系(1個以上のR基により置換されていてもよい)であり、
Rは各々の例で同一であるか異なり、1〜40個の炭素原子を有する直鎖のアルキル基、または3〜40個の炭素原子を有する分枝の若しくは環状のアルキル基(これらのそれぞれは、1個以上のR基により置換されていてもよい)(ここで、1個以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、P(=O)(R)、SO、SO、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、−O−、−S−または−CONR−により置き換えられていてもよく、かつ1個以上の水素原子はF、Cl、Br、I、CNまたはNOにより置き換えられていてもよい)、または芳香族系若しくは複素芳香族系(これらは5〜40個の芳香族環原子を有し、かつ1個以上のR基により置換されていてもよい)、またはアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基(これらは5〜40個の芳香族環原子を有し、かつ1個以上のR基により置換されていてもよい)、またはこれらの系の2つ、3つまたは4つの組み合わせであり、またはRは式(2)
【化5】

【0010】
(式中、記号はそれぞれ上記および下記の通りに定義され、破線結合はAへの結合を表す)
であり、
Zは各々の例で同一であるか異なり、二価の基C(R、C=O、C[=C(R]、Si(R、O、S=O、SO、NR、BR、PR、PRO、C(R−C(R、C(R−NR、C(R−C(R−C(R、またはC(R−O−C(Rであり、ここでZは、二重結合とは別に、同じ二重結合上のY基またはX基に、好ましくはオルト位またはペリ位で結合し、従ってさらなる環状の環系を形成し、
は各々の例で同一であるか異なり、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、1〜40個の炭素原子を有する直鎖のアルキル基、アルコキシ基若しくはチオアルコキシ基、または3〜40個の炭素原子を有する分枝の若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基若しくはチオアルコキシ基(各々の場合においてこれらは1個以上のR基により置換されていてもよい)(ここで、1個以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、P(=O)(R)、SO、SO、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、−O−、−S−、または−CONR−により置き換えられていてもよく、かつ1個以上の水素原子はF、Cl、Br、I、CNまたはNOにより置き換えられていてもよい)、または芳香族系若しくは複素芳香族系(これらは5〜40個の芳香族環原子を有し、かつ1個以上のR基により置換されていてもよい)、またはアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基(これらは5〜40個の芳香族環原子を有し、かつ1個以上のR基により置換されていてもよい)、またはこれらの系の2つ、3つまたは4つの組み合わせであり、この基において、2個以上の置換基Rはともに単環または多環の脂肪族環系を形成していてもよく、
は各々の例で同一であるか異なり、H、または1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、
aは各々の例で同一であるか異なり、0または1であり、但し少なくとも1つの添え字は、1つの二重結合につきa=1であり、ここでa=0とは、Zに代えてR基が二重結合およびXまたはYに結合していることを意味する)。
【0011】
記載から明らかであるとしても、R基は互いに環系を形成していてもよく、従って特にスピロ系を形成することができることをここに再び明示的に指摘しておく。
【0012】
本発明に関するアリール基は6〜40個の炭素原子を含み、本発明に関するヘテロアリール基は2〜40個の炭素原子と少なくとも1つのヘテロ原子とを含み、但し炭素原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5つになる。ヘテロ原子は好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。アリール基またはヘテロアリール基は、単純な芳香族環、すなわちベンゼンか、または単純な複素芳香族環、例えばピリジン、ピリミジン、チオフェン等のいずれか、または縮合アリール基または縮合ヘテロアリール基を指す。
【0013】
本発明に関する芳香族環系は、環系に6〜40個の炭素原子を含む。本発明に関する複素芳香族環系は、環系に2〜40個の炭素原子と少なくとも1つのヘテロ原子とを含み、但し、炭素原子とヘテロ原子との合計は少なくとも5個になる。ヘテロ原子は好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。本発明に関して、芳香族環系または複素芳香族環系は必ずしもアリール基またはヘテロアリール基のみを含有する系ではなくて、複数のアリール基またはヘテロアリール基に短い非芳香族単位(H以外の10%未満の原子、好ましくはH以外の5%未満の原子)、例えばsp混成炭素原子、窒素原子または酸素原子が介在していてもよい系を意味すると理解されたい。例えば、本発明に関する芳香族環系は9,9’−スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル等のような系を意味するものと理解されたい。この場合において、芳香族環系または複素芳香族環系の一部は縮合基であってもよい。
【0014】
本発明に関して、C−〜C40−アルキル基(ここで個々の水素原子またはCH基は上記した基により置換されていてもよい)は、より好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−ベチルブチル(bethylbutyl)、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2,−トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、またはオクチニル基を意味すると理解される。C−〜C40−アルコキシ基とは、より好ましくはメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、または2−メチルブトキシを意味すると理解される。芳香族環系または複素芳香族環系(これらは5〜40個の芳香族環原子を有し、いずれの場合においても上記したR基により置換されていてもよく、芳香族化合物または複素芳香族化合物にいずれもの位置を介して結合していてもよい)は、特にベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス−若しくはトランス−インデノフルオレン、トルキセン(truxene)、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5−ジアザアントラセン、2,7−ジアザピレン、2,3−ジアザピレン、1,6−ジアザピレン、1,8−ジアザピレン、4,5−ジアザピレン、4,5,9,10−テトラアザピレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味すると理解される。
【0015】
本発明の好ましい態様において、Rは式(2)の基である。
【0016】
Aは各々の例でNまたはPであり、
Xは各々の例で同一であるか異なり、二価のアリール基またはヘテロアリール基(これらは5〜25個の芳香族環原子を有し、かつ1つ、2つ、3つまたは4つのR基により置換されていてもよい)であり、
Yは各々の例で同一であるか異なり、一価のアリール基またはヘテロアリール基(これらは5〜25個の芳香族環原子を有し、かつ1つ、2つ、3つまたは4つのR基により置換されていてもよい)であり、
Rは各々の例で上記した式(2)の基であり、
Zは各々の例で同一であるか異なり、C(R、SO、BR、P(R)O、C(R−C(R、C(R)2−NRであり、
aは各々の例で0または1であり、ここで各二重結合において1つの添え字a=0であり他方の添え字a=1であり、
およびRはそれぞれ上記した通り
である式(1)の化合物が好ましい。
【0017】
Aは各々の例でNであり、
Xは各々の例で同一であるか異なり、二価のアリール基(これは6〜16個の炭素原子を有し、かつ1つまたは2つのR基により置換されていてもよい)であり、
Yは各々の例で同一であるか異なり、一価のアリール基(これは6〜16個の炭素原子を有し、かつ1つ、2つまたは3つのR基により置換されていてもよい)であり、
Zは各々の例で同一であるか異なり、C(R、P(R)O、またはC(R−C(Rであり、
R、R、Rおよびaはそれぞれ上記した通りである
式(1)の化合物が特に好ましい。
【0018】
この好ましさは、式(1)の化合物が青色発光ドーパントとして用いられる場合に特に当てはまる。他の機能において、有機電子デバイスにおいては基の他の選択、特にAおよびZ基の他の選択が好ましいこともある。
【0019】
さらに、全ての記号Xが同じ芳香族系または複素芳香族系、より好ましくはベンゼンまたはナフタレン、最も好ましくはベンゼンを示す式(1)の化合物が好ましい。全ての記号Xが同じ置換を有することが特に好ましい。
【0020】
同様に、全ての記号Yが同じ芳香族系または複素芳香族系、より好ましくはベンゼンまたはナフタレン、最も好ましくはベンゼンを示す式(1)の化合物が好ましい。全ての記号Yが同一の置換を有することが特に好ましい。
【0021】
さらに、全ての単位Zが同一となるようにそれぞれ選択され、いずれの場合においてもXおよびY上の同じ位置に結合している式(1)の化合物が好ましい。
【0022】
対称構造を有し、かつ3回回転軸を有し、特に全ての単位X、および全ての単位YおよびZ、および全ての置換基RおよびRがそれぞれ同一となるように選択される式(1)の化合物が特に好ましい。
【0023】
これらの好ましさは特に、対称的な構造の化合物のより容易な合成による入手しやすさに起因する。しかしながら、原理上はより複雑な合成方法によって非対称的な構造の化合物を得ることができる。
【0024】
さらに、ベンジル型プロトンを有さない式(1)の化合物が好ましい。これは特にZ基上の基に当てはまる。つまりZ基がC(RまたはC(R−C(Rの場合には、Rは好ましくはHでない。この好ましさの理由は、ベンジル型プロトンの比較的高い反応性であり、従って、ベンジル型プロトンの存在は、場合によりデバイス製造および動作における望ましくない副反応をもたらし得る。
【0025】
本発明の特に好ましい実施形態は式(3)の化合物のものである。
【化6】

【0026】
(式中、A、Z、Rおよびaは、それぞれ上記した通りに定義される。ここで、置換基Rの最大数は置換可能な水素原子の数に対応する)。
【0027】
式(3)の特に好ましい化合物について、式(1)の化合物について詳述した通りの記号AおよびZについての同じ好ましさが適用される。
【0028】
式(1)または式(3)の好ましい化合物の例は、以下に示す構造(1)〜(30)であり、これらはRにより置換されていてもよいし、または置換されていなくてもよい。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【0029】
本発明の非常に特に好ましい実施形態は、式(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)および(12)のものである。
【化11】

【化12】

【0030】
これらの化合物において、置換基R、RおよびRは、好ましくは、表1に挙げられる置換基から選択される。これらの好ましい置換基の組み合わせは、式(4)〜式(12)の化合物の全てに適用される。
【0031】
表1:式(4)〜(12)の化合物上の特に好ましい置換基
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【0032】
本発明は、さらに、有機電子デバイス、特に有機エレクトロルミネセンスデバイスにおける式(1)または式(3)の化合物の使用を提供する。
【0033】
本発明は、さらに、カソード、アノードおよび少なくとも1つの発光層を含み、少なくとも1つの有機層が式(1)または式(3)の化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスを提供する。
【0034】
発光層の他に、有機エレクトロルミネセンスデバイスはさらなる層を含んでいてもよい。これらは、例えば正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層および/または電子注入層であってよい。しかしながら、これらの層のそれぞれが存在することが必ずしも必要でないということをここに指摘しておく。例えば、特に式(1)または式(3)の化合物が電子伝導性ホスト材料と共にドーパントとして用いられる場合には、有機エレクトロルミネセンスデバイスがいかなる別個の電子輸送層を含まず、発光層が電子注入層またはカソードに直接的に隣接している場合でも非常に良好な結果が得られる。同様に、有機エレクトロルミネセンスデバイスがいかなる別個の正孔輸送層を含まず、発光層が正孔注入層またはアノードに直接的に隣接している場合も好ましいであろう。式(1)または式(3)の化合物が発光層におけるドーパントとして用いられるのみでなく、さらに正孔輸送層における正孔伝導性化合物として(純物質として、または混合物として)用いられる場合も好ましいであろう。
【0035】
式(1)または式(3)の化合物が有機エレクトロルミネセンスデバイスにおいて異なる機能を果たすこともあり得る。これらはこの化合物の正確な構造に依存する。例えば、これらの化合物を、特にエミッタとして、正孔輸送材料として、電子輸送材料として、または電界リン光(electrophosphorescent)デバイスにおいてはマトリックス材料として若しくは正孔障壁材料として使用することができる。
【0036】
適切な発光体は、特に、記号AおよびZが
Aは各々の場合においてNであり、
Zは各々の場合において同一であるか異なり、C(R、C(R−C(R、またはC(R−NR
である化合物である。
【0037】
適切な正孔輸送材料は、特に記号AおよびZが、
Aが各々の例でNまたはPであり、
Zが各々の例で同一であるか異なり、C(R、C(R−C(R、C(R−NR、O、NRまたはPRであり、特にO、NRまたはPR
である化合物である。
【0038】
蛍光デバイスまたはリン光デバイスのための適切な電子輸送材料は、特に、記号AおよびZが、
Aは各々の例でP=Oであり、
Zは各々の例で同一であるか異なり、C(R、C(R−C(R、C(R−NR、C=O、S=O、SO、BRまたはPROであり、特にC=O、S=O、SO、BRまたはPR
である化合物である。
【0039】
電界リン光(electrophosphorescent)デバイスのための適切なマトリックス材料および正孔障壁材料は、特に、記号AおよびZが、
Aは各々の例でP=Oであり、
Zは各々の例で同一であるか異なり、C(R、C(R−C(R、C(R−NR、C=O、S=O、SO、またはPROであり、特にC=O、S=O、SO、またはPR
である化合物である。
【0040】
式(1)または式(3)の化合物を発光体として用いる場合には、好ましくはホスト材料と共に用いる。その際、混合物中の式(1)または式(3)の化合物の割合は、0.1〜99重量%、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜20重量%、特に1〜10重量%である。相応して、混合物中のホスト材料の割合は、1〜99.9重量%、好ましくは50〜99.5重量%、より好ましくは80〜99重量%、特に90〜99重量%である。
【0041】
さらに、有機エレクトロルミネセンスデバイスであって、複数の発光化合物が同じ層または異なる層において用いられ、ここでこれらの化合物のうちの少なくとも1種が式(1)の構造を有することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。
【0042】
より好ましくは、これらの化合物は互いに、380nm〜750nmの間に複数の発光極大を有し、従って白色発光が全体として生じる、すなわち式(1)の化合物とは別に、蛍光またはリン光を発し、かつ黄色、オレンジ色または赤色光を放射する少なくとも1種のさらなる発光化合物が用いられる。
【0043】
好ましいホスト材料は、発光が式(1)の化合物のものよりも短波長側にあるか、または可視領域において全く発光しない有機化合物である。有用なホスト材料には種々の物質のクラスがある。好ましいホスト材料は、オリゴアリーレンのクラス(例えば EP 676461 による2,2’,7,7’−テトラフェニルスピロビフルオレン、またはジナフチルアントラセン)、アトロプ異性体のクラス(例えば未公開の出願 EP 04026402.0に記載されるもの、オリゴアリーレンビニレンのクラス(例えば EP 676461 によればDPVBiまたはスピロ−DPVBi)、多座金属錯体のクラス(例えば WO 04/081017 に記載されるもの)、正孔伝導性化合物のクラス(例えば WO 04/058911 に記載されるもの)、または電子伝導性化合物のクラス、特にケトン、ホスフィンオキシドおよびスルホキシド(例えば未公開の特許出願 DE 102004008304.5 に記載されるもの)から選択される。特に好ましいホスト材料は、ナフタレン、アントラセンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンのクラス、オリゴアリーレンビニレンのクラス、ケトンのクラス、ホスフィンオキシドのクラス、およびスルホキシドのクラスから選択される。
【0044】
正孔輸送材料、電子輸送材料または正孔障壁材料として式(1)または式(3)の化合物が用いられる場合には、当該化合物は純物質として用いられるのが好ましい。特に正孔輸送材料および電子輸送材料としては、これらの化合物は他の有機電子デバイス、例えば有機トランジスタにおける使用に適している。
【0045】
式(1)または式(3)が電界リン光のためのマトリックス材料として用いられる場合には、混合物中のその割合は1〜99.9重量%、好ましくは30〜99.5重量%、より好ましくは50〜99重量%、特に80〜99重量%である。
【0046】
相応して、三重項状態から発光し、従って混合物中で電界リン光を示す発光体の割合は、0.1〜99重量%、好ましくは0.5〜70重量%、より好ましくは1〜50重量%、特に1〜20重量%である。
【0047】
混合比は、溶媒(または溶媒混合物)中で混合することにより、または減圧下、キャリアガス中または真空下での同時蒸着により調節することができる。
【0048】
さらに、有機エレクトロルミネセンスデバイスであって、1つ以上の層が昇華プロセスにより付着されることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。このプロセスにおいて、材料は真空昇華装置において10−5mbar未満、好ましくは10−6mbar未満、より好ましくは10−7mbar未満の圧力で蒸着により付着される。
【0049】
同様に、有機エレクトロルミネセンスデバイスであって、1つ以上の層がOVPD(有機気相成長(Organic Vapour Phase Deposition))により、またはキャリアガス昇華を用いて付着される有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。このプロセスにおいて、材料は10−5mbar〜1barの圧力で付着される。
【0050】
さらに、有機エレクトロルミネセンスデバイスであって、1つ以上の層が溶液から、例えばスピンコーティングにより、またはいずれもの印刷工程、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷若しくはオフセット印刷、より好ましくはLITI(光誘起熱画像化(Light Induced Thermal Imaging)、熱転写印刷)若しくはインクジェット印刷により製造されることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。
【0051】
有機電子デバイスにおける上記の化合物は、従来技術に対して以下の驚くべき利点を有する。
【0052】
1.対応するデバイスの効率は従来技術による系と比較してより高い。これは、二重結合に対して抑制されたシス−トランス異性化の結果として生じるということを我々は推測している。
2.対応するデバイスの安定性は従来技術による系と比較してより優れており、これは特により長い寿命において示される。このより高い安定性は、おそらく、妨げられたシス−トランス異性化の結果として生じる。というのは、異性化の可能性がある場合に形成し得るシス−スチルベン系はさらに光化学的に反応してジヒドロフェナントレン系を与え、その後、続く酸化的反応によりフェナントレン系を与えるためである。この副反応は本発明の系においては起こり得ない。
3.化合物を著しい分解を伴うことなく昇華し、蒸着により付着することができ、従って精製および処理がより容易であり、従来技術による材料よりも、特に二重結合において置換されていないスチルベン単位を含む材料よりも使用に適している。
4.本発明の化合物は調製および処理において、および電子デバイスの駆動において全く異性化を受けず、デバイスの再現性が増す。
【0053】
本明細書および以下の例は、OLEDおよび対応するディスプレイに関する本発明の化合物の使用を目的とする。記載のこの制限に関らず、当業者はさらなる発明活動を必要とすることなく、本発明の化合物を他の電子デバイス、例えばごくわずかな用途を挙げると、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機集積回路(O−IC)、有機太陽電池(O−SC)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機電界クエンチデバイス(organic field-quench device(O−FQD))、発光電気化学セル(LEC)、または有機レーザダイオード(O−Laser)におけるさらなる使用について用いることができる。対応するデバイスにおける本発明の化合物の使用とこれらのデバイス自体も同様に、本発明の主題の一部を形成する。本発明を、また、以下に続く例により詳細に示すが、これらに限定されることを全く意図しない。
【0054】

以下に続く合成は、他に記述がない限り、保護ガス雰囲気下で行った。反応剤はアルドリッチから購入した。トリス(p−ブロモフェニル)アミンは J. Am. Chem. Soc. 1987, 109, 4960-4968 に従って合成した。2−インデニルボロン酸は、J. Org. Chem. 2002, 67, 169-176 に従って合成し、ジエチルホスホン酸2−ブロモベンジルは、Z. Anorg. Allg. Chem. 1994, 620(12), 2041-7 に従って合成した。
【0055】
例1:4,4’,4’’−トリス(1H−インデン−2−イル)トリフェニルアミン(アミン1)の合成
【化13】

【0056】
15.0g(31mmol)のトリス(p−ブロモフェニル)アミン、19.8g(124mmol)の2−インデニルボロン酸、40.0g(188mmol)のKPO、1lのジオキサンおよび1lの水からなる窒素を飽和した混合物に、800mg(0.72mmol)のPd(PPhを加える。この懸濁液を80℃に7時間加熱する。その後、0.09gのNaCNを加え、水相を除去する。有機相をHOを用いて2回洗浄し、続いてNaSOにて乾燥する。溶媒の除去およびトルエンからの再結晶を繰り返した後に黄色の針状結晶を得る。これはHPLCによればほぼ99.9%の純度を有する。収量は16g(88%)である。
【0057】
H NMR(CDCl,500MHz):δ[ppm]=3.78(s,6H),7.13−7.19(m,12H),7.23−7.28(m,3H),7.38(d,J=7.4Hz,3H),7.46(d,J=7.4Hz,3H),7.56(d,J=8.7Hz,6H)。
【0058】
例2:4,4’,4’’−トリス(1,1,3−トリメチル−1H−インデン−2−イル)トリフェニルアミン(アミン2)の合成
【化14】

【0059】
33.2g(55mmol)の4,4’,4’’−トリス(1H−インデン−2−イル)トリフェニルアミンと300mlのジメチルホルムアミドとの混合物に、4.8g(200mmol)の水素化ナトリウムを少しずつ加える。続いて懸濁液を80℃にまで加熱し、この温度で18.7ml(300mmol)のヨウ化メチルを滴下して混合した後、80℃でさらに50時間撹拌する。その後、混合物に、室温で、100mlのアンモニア溶液および500mlの酢酸エチルを混合し、水相を除去する。有機相を300mlの水で5回洗浄し、続いてNaSOにて乾燥する。溶媒を除去し、トルエンからの再結晶(1.5ml/g)を繰り返した後に、黄色の針状結晶を得る。これはHPLCによれば99.8%の純度を有する。収量は23.7g(60.3%)である。約5×10−5mbarの圧力でT=300℃において昇華をもたらした。
【0060】
H NMR(CDCl,500MHz):δ[ppm]=1.51(s,18H),2.10(s,9H),7.14−7.20(m,9H),7.24−7.27(m,6H),7.40(d,3H),7.47(d,3H),7.58(m,3H)。
【0061】
例3:4,4’,4’’−トリス(スピロ(フルオレン−9,1’−インデン−2−イル)トリフェニルアミン(アミン3)の合成
【化15】

【0062】
a)トリス(4−(2−ブロモフェニルビニル)フェニル)アミン
107.5g(350mmol)のジエチルホスホン酸2−ブロモベンジルおよび1000mlのDMFからなる0℃に冷却した混合物に、67.3g(700mmol)のナトリウムtert−ブトキシドを混合し、30分間撹拌する。この混合物に、1000mlのDMF中の29.6g(90mmol)のトリス(4−ホルミルフェニル)アミンを、0℃で30分に渡り混合した後、0℃でさらに4時間撹拌する。その後この混合物に、撹拌しながら250mlの2.5Nの塩酸水溶液を混合し、続いて600mlの水、その後200mlのエタノールを混合し、さらに30分間撹拌する。沈殿を吸引しながらろ過し、水/エタノール(1:1,v:v)の混合物を毎回200ml用いて2回洗浄し、エタノールを毎回200ml用いて3回洗浄し、続いて減圧下で乾燥する。その際得られた固体を160mlのDMFから再結晶し、最終的に500mlの熱エタノールから撹拌することにより抽出し、減圧下で乾燥する。
H NMRによれば99.0%の純度で、収量は51.0g(65mmol)であり、理論の71.8%に相当する。
【0063】
H NMR(CDCl,500MHz):δ[ppm]=7.66(d,3H),7.58(d,3H),7.47(d,6H),7.39(d,3H),7.30(dd,3H),7.13(d,6H),7.10(dd,3H),7.01(d,3H)。
【0064】
b)4,4’,4’’−トリス(スピロ(フルオレン−9,1’−インデン−2−イル)トリフェニルアミン
300mlのジエチルエーテル中の7.9g(10mmol)のトリス(4−(2−ブロモフェニルビニル)フェニル)アミンの効率よく撹拌している懸濁液に、−78℃で、14.4ml(36mmol)のn−ブチルリチウム(n−ヘキサン中2.5モル)を滴下して混合する。さらに15分間撹拌した後、冷浴を取り除き、反応混合物を室温にまで昇温させ、続いて室温でさらに3時間撹拌する。その後懸濁液に、室温で、200mlのジエチルエーテル中の7.2g(40mmol)のフルオレノンの溶液を滴下して混合し、室温でさらに14時間撹拌する。黄色の懸濁液に、10mlの酢酸および200mlの水の混合物を混合し、30分間十分に撹拌する。有機相を取り出し、500mlの水で2回洗浄し、乾燥するまで濃縮する。固体を500mlのトルエンに溶解し、1.0gのp−トルエンスルホン酸を混合し、それ以上水が分離されなくなるまで水分離器上で沸騰させる(約3時間)。冷却後、黄色溶液をシリカゲルを通してろ過し、トルエンを減圧下で除去して、残渣をDMFから3回再結晶し(10ml/g)、ジオキサンから5回再結晶する(10ml/g)。
H NMRによれば99.9%の純度で、収量は5.1g(4.9mmol)であり、理論の49.2%に相当する。約5×10−5mbarの圧力、T=380℃で昇華をもたらした。
【0065】
H NMR(TCE−d2+1μlのヒドラジン水和物,500MHz):δ[ppm]=7.81(d,6H,フルオレン),7.42(s,3H,H3),7.40(d,3H,H4),7.32(dd,6H,フルオレン),7.17(dd,3H,H5),7.07(dd,6H,フルオレン),6.87(dd,3H,H6),6.81(d,6H,フルオレン),6.76(d,6H,H2),6.43(d,6H,H1),6.38(d,3H,H7)。
【0066】
c)レドックス安定性の検討
4,4’,4’’−トリス(スピロ(フルオレン−9,1’−インデン−2−イル)トリフェニルアミンを空気中、溶液状態で酸化させ対応するラジカルカチオンにする。これはH NMRのフェニル−インデニル部分のスペクトルの大きな線広がりにより確認することができる。アミンへの還元を、例えばヒドラジン水和物を用いて達成することができる(H NMRスペクトルを参照されたい)。このレドックス反応は可逆的であり、レドックスサイクルを繰り返し実行した際でも分子の分解は観察されなかった。
【0067】
例4:4,4’,4’’−トリス(1,1’−ジ−パラ−トリルインデン−2−イル)トリフェニルアミン(アミン4)の合成
【化16】

【0068】
a)4,4’,4’’−トリス(1,1’−ジ−パラ−トリルインデン−2−イル)トリフェニルアミン
300mlのジエチルエーテル中の7.9g(10mmol)のトリス(4−(2−ブロモフェニルビニル)フェニル)アミンの効率よく撹拌している懸濁液に、−78℃で、14.4ml(36mmol)のn−ブチルリチウム(n−ヘキサン中2.5モル)を滴下して混合する。さらに15分間撹拌した後、冷浴を取り除き、反応混合物を室温にまで昇温させ、続いて室温でさらに3時間撹拌する。懸濁液に、室温で、200mlのジエチルエーテル中の8.4g(40mmol)の4,4’−ジメチルベンゾフェノンの溶液を滴下して混合し、室温でさらに14時間撹拌する。黄色の懸濁液に、10mlの酢酸および200mlの水の混合物を混合し、30分間十分に撹拌する。有機相を取り除き、500mlの水で2回洗浄し、濃縮して乾燥させる。固体を500mlのトルエン中に溶解し、これに1.0gのp−トルエンスルホン酸を混合し、それ以上水が分離されなくなるまで水分離器上で沸騰させる(約3時間)。冷却後、黄色の溶液をシリカゲルを通してろ過し、トルエンを減圧下で除去し、残渣をDMFから3回再結晶(10ml/g)、ジオキサンから5回再結晶(8ml/g)する。
H NMRによれば99.9%の純度で、収量は5.9g(5.2mmol)であり、理論の51.4%に相当する。約5×10−5mbarの圧力、T=370Cで昇華をもたらした。
【0069】
H NMR(TCE−d2+1μlのヒドラジン水和物,500MHz):δ[ppm]=7.40(s,3H,H3),7.38(d,3H,H4),7.20(m,12H,AB−p−トリル),7.19(dd,3H,H5),6.89(dd,3H,H6),6.76(d,6H,H2),6.62(m,12H,AB−p−トリル),6.37(d,6H,H1),6.36(d,3H,H7),2.41(s,18H,CH)。
【0070】
b)レドックス安定性の検討
4,4’,4’’−トリス(1,1’−ジ−パラ−トリル−インデン−2−イル)トリフェニルアミンを空気中、溶液状態で酸化して、対応するラジカルカチオンする。これはH NMRシグナルのフェニル−インデニル部分のスペクトルの大きな線広がりにより確認することができる。アミンへの還元を、例えばヒドラジン水和物を用いて行うことができる(H NMRスペクトルを参照されたい)。このレドックス反応は可逆的であり、レドックスサイクルを繰り返し実行した際でも分子の分解は観察されなかった。
【0071】
例5:4,4’,4’’−トリス[5,5,10,10−ジ−スピロ−フルオレニル−5,10−ジヒドロインデノ[2,1−a]インデン−2−イル]アミン(アミン5)の合成
【化17】

【0072】
a)4,4’,4’’−トリス[2,3−ジブロモ−スピロ(フルオレン−9,1’−インデン−2−イル)]トリフェニルアミン
【化18】

【0073】
1000mlのジクロロメタン中に溶解した51.9g(50mmol)の4,4’,4’’−トリス(スピロ(フルオレン−9,1’−インデン−2−イル)トリフェニルアミン(例3に従って合成)の0℃に冷却した混合物に、光を排除しながら0℃で、2.6ml(50mmol)の臭素および100mlのジクロロメタンの混合物を混合し、0℃で4時間撹拌する。ジクロロメタンを減圧下で除去した後に、残渣を少量のエタノールで洗浄し、トルエンから1回再結晶し、減圧下で乾燥する。HPLCによれば約97.0%の純度で、収量は69.4g(46mmol)であり、理論の91.5%に相当する。
【0074】
b)4,4’,4’’−トリス[3−ブロモ−スピロ(フルオレン−1’,9−1H−インデン−2−イル)]トリフェニルアミン
【化19】

【0075】
300mlのTHF中の40.0g(26mmol)の4,4’,4’’−トリス[2,3−ジブロモ−スピロ(フルオレン−9,1’−インデン−2−イル)]トリフェニルアミンの効率よく撹拌している懸濁液に、0℃で、5.1g(45mmol)のカリウムtert−ブトキシドを少量ずつ混合し、室温で1時間撹拌する。続いて混合物を100mlの氷水中に注ぎ入れ、毎回200mlのジクロロメタンを用いて3回抽出し、ジクロロメタン相を300mlの水で3回洗浄し、300mlの飽和NaCl溶液でもう一度洗浄した後、硫酸ナトリウムにて乾燥する。溶媒を減圧下で除去した後に、残渣をDMFから再結晶する。HPLCによれば約98.0%の純度で、収量は28.7g(22.5mmol)であり、理論の85.4%に相当する。
【0076】
c)4,4’,4’’−トリス[5,5,10,10−ジ−スピロ−フルオレニル−5,10−ジヒドロインデノ[2,1−a]インデン−2−イル]アミン
【化20】

【0077】
300mlのジエチルエーテル中の12.8g(10mmol)の4,4’,4’’−トリス[3−ブロモ−スピロ(フルオレン−1’,9−1H−インデン−2−イル)]トリフェニルアミンの効率よく撹拌している懸濁液に、−78℃で、14.4ml(36mmol)のn−ブチルリチウム(n−ヘキサン中2.5モル)を滴下して混合する。さらに15分間撹拌した後、冷浴を取り除き、反応混合物を室温にまで昇温させ、続いて室温でさらに3時間撹拌する。その後懸濁液に、室温で、200mlのジエチルエーテル中の7.9g(44mmol)のフルオレンの溶液を混合し、室温でさらに14時間撹拌する。黄色懸濁液に、10mlの酢酸および200mlの水の混合物を混合し、30分間十分に撹拌する。有機相を取り出し、500mlの水で2回洗浄し、濃縮して乾燥させる。固体を500mlのトルエンに溶解し、これに500mgのp−トルエンスルホン酸を混合し、それ以上水が分離されなくなるまで水分離器上で蒸発させる(約3時間)。冷却後、黄色溶液をシリカゲルを通してろ過し、トルエンを減圧下で除去し、残渣をDMFから3回再結晶(15ml/g)し、ジオキサンから5回再結晶(12ml/g)する。H NMRによれば99.9%の純度で、収量は7.5g(4.9mmol)であり、理論の49.2%に相当する。約5×10−5mbarの圧力、T=395℃で昇華をもたらした。
【0078】
H NMR(TCE−d2+1μlのヒドラジン水和物,500MHz):δ[ppm]=7.81(d,6H,フルオレン),7.77(d,6H,フルオレン),7.40(d,3H),7.32(dd,6H,フルオレン),7.30(dd,6H,フルオレン),7.17(dd,3H),7.09(d,3H),7.07(dd,6H,フルオレン),7.01(dd,6H,フルオレン),6.87(dd,3H),6.85(d,6H,フルオレン),6.80(d,6H,フルオレン),6.66(dd,3H),6.46(dd,3H),6.38(d,3H),6.28(d,3H)。
【0079】
c)レドックス安定性の検討
4,4’,4’’−トリス[5,5,10,10−ジ−スピロ−フルオレニル−5,10−ジヒドロインデノ[2,1−a]インデン−2−イル]アミンを空気中、溶液状態で酸化して、対応するラジカルカチオンする。これはH NMRシグナルのフェニル−インデニル部分のスペクトルの大きな線広がりにより確認することができる。アミンへの還元を、例えばヒドラジン水和物を用いて行うことができる(H NMRスペクトルを参照されたい)。このレドックス反応は可逆的であり、レドックスサイクルを繰り返し実行した際でも分子の分解は観察されなかった。
【0080】
例6:OLEDの製造
OLEDを WO 04/058911 に従う一般的な方法により製造し、これは個々のケースにおいて特定の状況に適合させた(例えば最適な効率および色を得るための層の厚さの変化)。
【0081】
以下に続く例7〜11において、種々のOLEDの結果を示す。基本構造、発光層および電子輸送層を除く用いた材料および層の厚さは、より良い比較のために例7〜10において同一である。上記の一般的な方法と同様に、以下の構造を有するOLEDを得る(但し、以下に詳述する正孔輸送層は例7には該当しない)。
【0082】
正孔注入層(HIL) 20nmのPEDOT(水からスピンコーティング;H.C.シュターク(Starck)社、ゴスラー、ドイツから購入;ポリ(3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン)、
正孔輸送層(HTM) 20nmのNaphDATA(蒸着により付着;SynTec社、ウォルフェン、ドイツから購入;4,4’,4’’−トリス(N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン)、
正孔輸送層(HTM) 20nmのS−TAD(蒸着により付着;WO 99/12888 に従って調製;2,2’,7,7’−テトラキス(ジフェニルアミノ)−スピロ−9,9’−ビフルオレン)、
発光層(EML) 材料、濃度および層の厚さについては表1を参照のこと、
電子伝導体(ETL) 材料および層の厚さについては表1を参照のこと、
Ba−Al(カソード) 3nmのBa、その上に150nmのAl。
【0083】
例7において、用いた正孔輸送材料は、上記の2種とは異なり、NPB(N−ナフチル−N−フェニル−4,4’−ジアミノビフェニル)およびHTM1(2,2’,7,7’−テトラキス(ジ−パラ−トリルアミノ)スピロ−9,9’−ビフルオレン)である。
【0084】
まだ最適化されていないこれらのOLEDは、標準方法で特性決定され、この目的で、エレクトロルミネセンススペクトル、効率(cd/Aで測定)、輝度の関数としての、電流−電圧−輝度特性(IUL特性)から計算されるパワー効率(Im/Wで測定)、および寿命を測定する。寿命は、OLEDの初期輝度が、10mA/cmの一定の電流密度で半分にまで低下した後の時間として定義する。
【0085】
表1にいくつかのOLED(例7〜10)の結果をまとめ、層の厚さを含むEMLおよびETLの組成も各々の場合に示す。発光層は、式(1)の発光材料としてドーパントD1(構造例1による)を含む。用いた比較例は、発光化合物として、上記の従来技術に従うドーパントD2を含むか、またはホスト材料のみを含む。用いたホスト材料は、以下に示す化合物H1〜H4である。用いた電子輸送材料は、ETM1(AIQ、SynTec社から購入、トリス(キノリナト)アルミニウム(III))、またはETM2( WO 05/003253 によるビス(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)フェニルホスフィンオキシド)である。表2は、式(1)の発光材料として、ドーパントD1またはドーパントD3を含み、かつ正孔輸送層の変化によって、より優れた効率および寿命のために最適化されたさらなるOLED(例11)の結果をまとめる。
【0086】
より明瞭にするために、用いたドーパントとホスト材料の対応する構造式を以下に示す。
【化21】

【化22】

【表11−1】

【表11−2】

【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)の化合物。
【化1】

(式中、用いられる記号は、
Aは各々の例で同一であるか異なり、N、PまたはP=Oであり、
X、Yは各々の例で同一であるか異なり、それぞれ、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族系または複素芳香族系(1個以上のR基により置換されていてもよい)であり、
Rは各々の例で同一であるか異なり、1〜40個の炭素原子を有する直鎖のアルキル基、または3〜40個の炭素原子を有する分枝の若しくは環状のアルキル基(これらのそれぞれは、1個以上のR基により置換されていてもよい)(ここで、1個以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、P(=O)(R)、SO、SO、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、−O−、−S−または−CONR−により置き換えられていてもよく、かつ1個以上の水素原子はF、Cl、Br、I、CNまたはNOにより置き換えられていてもよい)、または芳香族系若しくは複素芳香族系(これらは5〜40個の芳香族環原子を有し、かつ1個以上のR基により置換されていてもよい)、またはアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基(これらは5〜40個の芳香族環原子を有し、かつ1個以上のR基により置換されていてもよい)、またはこれらの系の2つ、3つまたは4つの組み合わせであり、またはRは式(2)
【化2】

(式中、記号はそれぞれ上記および下記の通りに定義され、破線結合はAへの結合を表す)
であり、
Zは各々の例で同一であるか異なり、二価の基C(R、C=O、C[=C(R]、Si(R、O、S=O、SO、NR、BR、PR、PRO、C(R−C(R、C(R−NR、C(R−C(R−C(R、またはC(R−O−C(Rであり、ここでZは、二重結合とは別に、同じ二重結合上のY基またはX基に結合し、従ってさらなる環状の環系を形成し、
は各々の例で同一であるか異なり、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、1〜40個の炭素原子を有する直鎖のアルキル基、アルコキシ基若しくはチオアルコキシ基、または3〜40個の炭素原子を有する分枝の若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基若しくはチオアルコキシ基(各々の場合においてこれらは1個以上のR基により置換されていてもよい)(ここで、1個以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、P(=O)(R)、SO、SO、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、−O−、−S−、または−CONR−により置き換えられていてもよく、かつ1個以上の水素原子はF、Cl、Br、I、CNまたはNOにより置き換えられていてもよい)、または芳香族系若しくは複素芳香族系(これらは5〜40個の芳香族環原子を有し、かつ1個以上のR基により置換されていてもよい)、またはアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基(これらは5〜40個の芳香族環原子を有し、かつ1個以上のR基により置換されていてもよい)、またはこれらの系の2つ、3つまたは4つの組み合わせであり、この基において、2個以上の置換基Rはともに単環または多環の脂肪族環系を形成していてもよく、
は各々の例で同一であるか異なり、H、または1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、
aは各々の例で同一であるか異なり、0または1であり、但し少なくとも1つの添え字は、1つの二重結合につきa=1であり、ここでa=0とは、Zに代えてR基が二重結合およびXまたはYに結合していることを意味する)。
【請求項2】
前記記号および添え字が、
Aは各々の例でNまたはPであり、
Xは各々の例で同一であるか異なり、二価のアリール基またはヘテロアリール基(これらは5〜25個の芳香族環原子を有し、かつ1つ、2つ、3つまたは4つのR基により置換されていてもよい)であり、
Yは各々の例で同一であるか異なり、一価のアリール基またはヘテロアリール基(これらは5〜25個の芳香族環原子を有し、かつ1つ、2つ、3つまたは4つのR基により置換されていてもよい)であり、
Rは各々の例で上記した式(2)の基であり、
Zは各々の例で同一であるか異なり、C(R、SO、BR、P(R)O、C(R−C(R、C(R−NRであり、
aは各々の例で0または1であり、ここで各二重結合において1つの添え字a=0であり他方の添え字a=1であり、
およびRはそれぞれ請求項1に規定した通り
であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記記号および添え字が、
Aは各々の例でNであり、
Xは各々の例で同一であるか異なり、二価のアリール基(これは6〜16個の炭素原子を有し、かつ1つまたは2つのR基により置換されていてもよい)であり、
Yは各々の例で同一であるか異なり、一価のアリール基(これは6〜16個の炭素原子を有し、かつ1つ、2つまたは3つのR基により置換されていてもよい)であり、
Zは各々の例で同一であるか異なり、C(R、P(R)O、またはC(R−C(Rであり、
R、R、Rおよびaはそれぞれ請求項2に定義した通り
である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
全ての記号Xが同じ芳香族系または複素芳香族系、特にベンゼンまたはナフタレンを示し、好ましくは全て等しく置換されていることを特徴とする請求項1〜3の一項以上に記載の化合物。
【請求項5】
全ての記号Yが同じ芳香族系または複素芳香族系、特にベンゼンまたはナフタレンを支援し、好ましくは全て等しく置換されていることを特徴とする請求項1〜4の一項以上に記載の化合物。
【請求項6】
全ての単位Zが、同一であるようにそれぞれ選択されることを特徴とする請求項1〜5の一項以上に記載の化合物。
【請求項7】
対称構造を有し、かつ3回回転軸を有することを特徴とする請求項1〜6の一項以上に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7の一項以上に記載の式(3)に従う化合物。
【化3】

(式中、A、Z、Rおよびaは請求項1に記載した通りにそれぞれ定義され、ここで、置換基Rの最大数は、置換可能な水素原子の数に対応する)。
【請求項9】
構造(1)〜(30)(これらは、Rにより置換されていてもよいし、または置換されていなくてもよい)から選択されることを特徴とする請求項1〜8の一項以上に記載の化合物。
【請求項10】
有機電子デバイスにおける請求項1〜9の一項以上に記載の化合物の使用。
【請求項11】
カソードと、アノードと、少なくとも1つの発光層とを含む有機エレクトロルミネセンスデバイスであって、少なくとも1つの有機層が、請求項1〜9の一項以上に記載の少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項12】
発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、および/または電子注入層を含むことを特徴とする請求項11に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項13】
請求項1〜9の一項以上に記載の化合物が発光体として用いられ、かつ記号AおよびZが、
Aは各々の例で窒素であり、
Zは各々の例で同一であるか異なり、C(R、C(R−C(R、またはC(R−NRである
ことを特徴とする請求項11および/または12に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項14】
請求項1〜9の一項以上に記載の化合物が正孔輸送材料として用いられ、かつ記号AおよびZが、
Aは各々の例で窒素またはリンであり、
Zは各々の例で同一であるか異なり、C(R、C(R−C(R、C(R−NR、O、NRまたはPRである
ことを特徴とする請求項11および/または12に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項15】
請求項1〜9の一項以上に記載の化合物が電子輸送材料として用いられ、かつ記号AおよびZが、
Aは各々の例でP=Oであり、
Zは各々の例で同一であるか異なり、C(R、C(R−C(R、C(R−NR、C=O、S=O、SO、BRまたはPROである
ことを特徴とする請求項11および/または12に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項16】
請求項1〜9の一項以上に記載の化合物が、電界リン光(electrophosphorescent)デバイスにおいてマトリックス材料または正孔障壁材料として用いられ、かつ記号AおよびZが、
Aは各々の例でP=Oであり、
Zは各々の例で同一であるか異なり、C(R、C(R−C(R、C(R−NR、C=O、S=O、SO、BRまたはPROである
ことを特徴とする請求項11および/または12に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項17】
請求項1〜9の一項以上に記載の化合物の1種以上を含む、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機集積回路(O−IC)、有機太陽電池(O−SC)、および有機レーザダイオード(O−Laser)。

【公表番号】特表2008−521857(P2008−521857A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543770(P2007−543770)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012807
【国際公開番号】WO2006/058737
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】