説明

有機電子デバイス用の金属化合物−金属多層電極

【課題】電気活性有機層と電極との間の電荷移動度を高める。
【解決手段】
本発明は:(i)(a)バスとして電気的に接続されている導電層、(b)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源を含む層及び(c)少なくとも1種の導電性金属種を含む導電性金属層を含む多層カソード;(ii)少なくとも1種の電気活性有機層;並びに(iii)導電性金属層に電気的に接続されているアノードを含む有機電子デバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子デバイスに関する。更に詳しくは、本発明は、有機電子デバイス用の金属化合物−金属多層電極に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子デバイスの効率的な作動は、他の因子の中でも、電極と、隣接する媒体との間の電子の電荷の効率的な輸送によって決まる。有機電子デバイスは、電気を光に及び/又は光を電気に変換することに基づいて幾つかの用途で使用されている。有機デバイス又は無機デバイスのどちらかに分類される典型的電気活性デバイスは、図形表示装置及び撮像技術でよく知られている。電気活性デバイスは、多くの用途向けに種々の形状及びサイズで製造されてきた。しかしながら、無機電気活性デバイスは、一般に、必要な高い活性化電圧及び低い輝度で不利を招いている。もう一方で、つい最近開発された有機電気活性デバイスは、製造が簡単なことに加えて、低い活性化電圧及び高い輝度の利点を発現し、従って、更に広範な用途が見込まれる。
【0003】
有機電子デバイスは、一般に、ガラス又は透明プラスチックのような基板上に形成される薄膜構造体である。電気活性層及び随意の隣接の有機半導体層は、カソードとアノードとの間にサンドイッチ状に挟まれる。有機半導体層は、正孔(正電荷)注入層か電子(負電荷)注入層のどちらでもよく、更に、有機材料も含む。電気活性有機層自体は、多層の下層から成っていてもよく、その各層は異なる電気活性有機材料を含む。
【0004】
電気活性有機層と電極との間の電荷移動に対する障壁を低くする又は無くすことは、有機電子デバイスの効率を高めることに大いに寄与する。アルカリ金属及びアルカリ土類金属のような低い仕事関数を有する金属は、電子注入を促進するためにカソード材料の中に使用されることが多い。しかしながら、これらの金属は、自然環境に触れると劣化し易い。従って、これらの材料をカソード材料として使用するデバイスは、厳密な封入が必要である。更に、これらの金属は、隣接の電気活性有機層の中に急速に拡散し、デバイスの性能劣化に繋がることがある。
【特許文献1】米国特許第6525466号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、電気活性有機層と電極との間の電荷移動度を高めることが望ましい。太陽電池のようなエレクトロルミネセンスデバイス及び他の電気活性デバイスも、活性層と、隣接カソードとの間の界面の前後で電子を輸送するための障壁を低くするとメリットを受けることができる。従って、電極と、隣接層との間に電荷を更に容易に効率よく移動させるカソード組立体及び材料を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は:(i)導電層であって、前記導電層はバスとして電気的に接続されていること;(ii)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源を含む層;及び(iii)少なくとも1種の導電性金属種を含む導電性金属層含む多層カソードを提供することにより、前記の及び他のニーズに応える。
【0007】
本発明のもう1つの実施態様は:(i)(a)バスとして電気的に接続されている導電層、(b)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源を含む層、及び(c)少なくとも1種の導電性金属種を含む導電性金属層、を含む多層カソード;(ii)少なくとも1種の電気活性有機層;並びに(iii)導電性金属層に電気的に接続されているアノード、を含む有機電子デバイスを提供する。
【0008】
本発明の、これらの及びその他の態様、長所、及び注目すべき特徴は、次の詳細な説明、付図、及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
典型的有機電子デバイス、例えば有機電気活性デバイスは、(a)アノード、(b)カソード、(c)アノードとカソードとの間に配置されたエレクトロルミネセンス有機層、及び(d)カソードと前記エレクトロルミネセンス有機層との間に配置された電子伝達促進層を含む。電子伝達促進層は、電子注入層、正孔障壁、又はそれの組み合わせ物のうちの少なくとも1種でよい。
【0010】
アノードとカソードとの両端に電圧が印加されるとき、有機エレクトロルミネセンス材料は発光する。電子伝達促進層は、有機電気活性材料との明確な界面を形成できる、又は組成を実質的に純粋な電子伝達促進材料から実質的に純粋な有機電気活性材料へ変化させる連続遷移領域を提供できる。電子注入層は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ローラーコーティング、又はインクゼット印刷から成る群から選ばれる方法によって下地材料の上に堆積され得る。
【0011】
カソードは、陰電荷キャリヤー(電子)を電気活性有機層に注入するように設計され、低い仕事関数、例えば約4eV未満、を有する材料で作られる。カソードとして使用するのに好適な低い仕事関数の材料は、K、Li、Na、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Zn、Zr、Sc、Y、ランタニド系の元素、それの合金、又はそれの混合物である。カソード層の製造に好適な合金材料は、Ag−Mg、Al−Li、In−Mg、及びAl−Caの各合金である。アルミニウム又はカルシウムのような幾種類かの他の金属の比較的薄い層で被覆される、Caのような金属又はLiFのような非金属の薄層(約1〜約10nm)のような層状非金属構造体も可能である。カソードは、物理蒸着、化学蒸着、又はスパッターリングによって下地素子上に堆積され得る。カソードの仕事関数を減少させることにより電子注入に対する及び/又はエレクトロルミネセンス有機層への電子輸送に対する障壁を低くする新規の電子供与材料も開発されてきた。本発明の1つの実施態様は、複数のカソード成分層を含む多層カソードを提供する。もう1つの実施態様では、カソードは2層カソードである。第3の実施態様では、カソードは3層カソードである。
【0012】
図面を概観して、特に図1を参照すると、図面は、本発明の好ましい実施態様を説明するためのものであり、本発明を限定する意図はないことが理解されるであろう。
【0013】
図1に示している本発明の1つの態様では、本発明は:(i)バスとして電気的に接続されている導電層12;(ii)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源を含む層14;及び(iii)少なくとも1種の導電性金属種を含む導電性金属層16、を含む多層カソード10を提供する。
【0014】
時々、界面バスと呼ばれるバス(bus)は、2個の界面電子素子間の導電率(又は電子輸送帯域幅)を改善する電子デバイスである。界面バスは、一次元又は二次元に沿った導電率を改善することが可能である。多層カソードは、薄い金属層及び金属化合物層を含むので、多層カソードの面内導電率はバスの存在によって向上する。
【0015】
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンの供給源は、式:

(式中、Mは、各使用時毎に独立してアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニド金属イオンであり、及びXは、各使用時毎に独立して水酸化物、酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜リン酸塩、亜燐酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩、過塩素酸塩、パークロライト(perchlorite)、BF、PF、ホスホン酸塩、スルホン酸塩、ホウ酸、ボロネート(boronate)、炭酸塩、炭酸水素塩、及び有機カルボン酸塩から成る群から選ばれるアニオンであり、並びにn及びmは、独立して1〜約20の整数である)
を有する。
【0016】
本発明の1つの実施態様では、導電層12は、インジウム−スズ酸化物、金、銀、アルミニウム、白金、クロム、パラジウム、又はそれの組み合わせ物のうちの少なくとも1種を含む。もう1つの実施態様では、導電性金属層16は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、白金、銀、金、水銀、コバルト、銅、ニッケル、ガリウム、炭素、又はそれの組み合わせ物のうちの少なくとも1種を含む。
【0017】
図2に示している本発明の第2の実施態様では、層14は、更に、層16の導電性金属種と同じか又は異なる少なくとも1種の導電性金属15を含む。
【0018】
図3に示している本発明の第3の実施態様では、多層カソード10は、更に、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源、及び少なくとも1種の導電性金属を含み、前記導電性金属は層16の導電性金属種と同じか又は異なる。
【0019】
図4に示している本発明の第4の態様では、多層カソード10は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源を含む層14;少なくとも1種の導電性金属種を含む導電性金属層16;及びアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源、並びに少なくとも1種の導電性金属を含む層15であって、前記導電性金属は層16の導電性金属種と同じか又は異なる。
【0020】
図5に示している本発明の第5態様では、本発明は、有機トランジスター(FET)又はセンサーのような有機電子デバイス20を提供する。有機電子デバイス20は:(i)(a)バスとして電気的に接続されている導電層12、(b)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源を含む層14、及び(c)少なくとも1種の導電性金属種を含む導電性金属層16を含む多層カソード10;(ii)少なくとも1種の電気活性有機層22;並びに(iii)導電性金属層に電気的に接続されているアノード24、を含む。
【0021】
1つの実施態様では、電気活性有機層22は吸光性である。もう1つの実施態様では、電気活性有機層22は発光性である。第3の実施態様では、有機電子デバイス20は基板26を含む。1つの実施態様では、基板26はデバイスの1つの端部に配置されている。もう1つの実施態様では、基板26はデバイスの両端部に配置されている。1つの実施態様では、基板26はセラミック、ガラス、複合材、プラスチック、又はそれの組み合わせ物のうちの少なくとも1種を含む。1つの実施態様では、基板26は、ポリカーボネート、ポリエステル、又はそれの組み合わせ物を含む。
【0022】
本発明のアノード24は、高い仕事関数;例えば約4.4eVより大きい、例えば約5eV〜約7eV、を有する材料を含む。インジウムスズ酸化物(“ITO”)は一般にこの目的に対して使用される。ITOは、光透過に実質的に透明であり、電気活性有機層22から光が放出され、さほど減衰をすることなく、ITOアノード層の中を伝播する。“実質的に透明な”と言う用語は、10度以下の入射角で、可視波長領域の光の少なくとも50パーセント、好ましくは少なくとも80パーセント、そして更に好ましくは少なくとも90パーセントが厚さ約0.5マイクロメートルのフィルムを透過できることを意味する。アノード層として使用するのに好適な他の材料は、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、インジウム亜鉛酸化物、亜鉛インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、及びそれの混合物である。アノード層は、物理蒸着、化学蒸着、又はスパッターリングによって下地素子上に堆積され得る。そのような導電性酸化物を含むアノードの厚さは、約10nm〜約500nm、好ましくは約10nm〜約200nm、そして更に好ましくは約50nm〜約200nmの範囲内で可能である。例えば層が約50nm未満、好ましくは約20nm未満の厚さを有する、薄い、実質的に透明な金属の層も好適である。アノード24に好適な金属は、約4.4eVより大きいような高い仕事関数を有する金属、例えば銀、銅、タングステン、ニッケル、コバルト、鉄、セレン、ゲルマニウム、金、白金、アルミニウム、クロム、パラジウム、又はそれの混合物又はそれの合金である。1つの実施態様では、ガラス又は高分子材料を含む基板のような実質的に透明な基板上にカソードを配置することが望ましいことがある。
【0023】
1つの実施態様では、有機電子デバイス20は、更に、アノード24と電気活性有機層22との間に配置された正孔注入層28を含む。本発明のもう1つの実施態様では、有機電子デバイス20は、更に、電気活性有機層22と導電性金属層16との間に配置された電子注入層30を含む。
【0024】
正孔注入層28は、正孔と電子が電気活性有機層22の中で最適に組み合わせられるように、正孔を輸送し電子の輸送を阻止する機能を有する。正孔注入層に好適な材料は、米国特許第6,023,371号明細書の中に開示されている、トリアリールジアミン、テトラフェニルジアミン、芳香族第三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、及びポリチオフェンである。好ましい実施態様では、正孔注入層28は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)即ちPEDOT、ポリ(3,4−プロピレレンジオキシチオフェン)即ちPProDOT、又はそれの組み合わせ物のうちの少なくとも1種を含む。
【0025】
電子注入層30は、電気活性有機層22への電子の輸送を高める機能を有する。電子注入層に好適な材料は、米国特許第6,023,371号明細書に開示されている、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムのような有機金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、及びニトロ置換フルオレン誘導体である。
【0026】
本発明の電気活性有機層22は、ポリ(n−ビニルカルバゾール)(“PVK”)、ポリフルオレン、ポリ(アルキルフルオレン)、ポリ(パラフェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリシラン、ポリチオフェン、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、ポリ(ピリジンビニレン)、ポリキノキサリン、ポリキノリン、1,3,5−トリス{n−(4−ジフェニルアミノフェニル)フェニルアミノ}ベンゼン、フェニルアントラセン、テトラアリールエテン、クマリン、ルブレン、テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ペリレン、コロネン、及びそれの誘導体、アルミニウム−アセチルアセトナト、ガリウム−アセチルアセトナト、及びインジウム−アセチルアセトナト、アルミニウム−(ピコリル(picoly)メチルケトン)−ビス{2,6−ジ(t−ブチル)フェノキシド}、スカンジウム−(4−メトキシ−ピコリルメチルケトン)−ビス(アセチルアセトナト)、8−ヒドロキシキノリンの有機金属錯体、及び8−ヒドロキシキノリンの有機金属錯体の誘導体、並びにそれの組み合わせ物から成る群から選ばれる。
【0027】
電気活性有機層22は、正孔に対しても電子に対しても輸送媒体として作用する。この層では、励起された種は結合して、より低いエネルギー準位へ降下し、同時に可視領域内の電磁線を放出する。所望の波長領域で活性化するように有機電気活性材料が選ばれる。電気活性有機層22の厚さは、約100〜約300nmの範囲内で保たれるのが好ましい。電気活性有機層22は、ポリマー、コポリマー、ポリマーの混合物、又は不飽和結合を有する比較的低分子量の有機分子でよい。そのような材料は、非局在化π−電子系を有し、この系は、ポリマー鎖又は有機分子に、高移動度を持つ正電荷キャリヤー及び負電荷キャリヤーを支持する能力を付与する。好適な電気活性ポリマーは、ポリ(n−ビニルカルバゾール)(“PVK”、約380−500nmの波長で紫色〜青色を発光する)及びその誘導体;ポリフルオレン、及びポリ(アルキルフルオレン)のようなその誘導体、例えばポリ(9,9−ジヘキシルフルオレン)(410−550nm)、ポリ(ジオクチルフルオレン)(436nmのピークEL放出波長)又はポリ{9,9−ビス(3,6−ジオキサヘプチル)−フルオレン−2,7−ジイル}(400−550nm);ポリ(パラ(prara)フェニレン)(“PPP”)、及びポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(400−550nm)又はポリ(2,5−ジヘプチル−1,4−フェニレン)のようなその誘導体;ポリ(p−フェニレンビニレン)(“PPV”)、並びにジアルコキシ置換PPV及びシアノ置換PPVのようなその誘導体;ポリチオフェン、及びポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(4,4’−ジアルキル−2,2’−ビオチオフェン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)のようなその誘導体;ポリ(ピリジンビニレン)及びその誘導体;
ポリキノキサリン及びその誘導体;並びにポリキノリン及びその誘導体である。これらのポリマー又は1種以上のこれらのポリマーを主成分とするコポリマーと、他のポリマーとの混合物を使うと、発光の色を調整することが可能である。
【0028】
1層以上の電気活性有機層は、別の層の上に連続して層を形成してもよく、各層は、異なる波長領域で放出する異なる電気活性有機材料を含む。そのような組立体によって、電気活性デバイス全体から放出される光の色の調整が容易になる。
【0029】
図6に示している本発明の有機電子デバイス20の第6態様では、層14は、更に、少なくとも1種の導電性金属15を含み、この金属は層16の導電性金属種と同じか又は異なる。
【0030】
図7に示している本発明の有機電子デバイス20の第7態様では、多層カソード10は、更にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源、及び少なくとも1種の導電性金属を含む層15であって、前記導電性金属は層16の導電性金属種と同じか又は異なる。
【0031】
図8に示している本発明の第8態様では、有機電子デバイス20は:(i)(a)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源を含む層14、(b)少なくとも1種の導電性金属種を含む導電性金属層16、及び(c)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源、及び少なくとも1種の導電性金属を含む層15であって、前記導電性金属は層16の導電性金属種と同じであることを含む多層カソード10;(ii)少なくとも1種の電気活性有機層22;並びに(iii)前記導電性金属層16に電気的に接続されているアノード24、を含む。
【0032】
次の実施例は、本発明の種々の特徴及び長所を説明するために包含されていて、本発明を限定することは意図されていない。
[実施例]
実施例1:2層カソード及び3層カソードを持つ有機電子デバイスの作製
次の手順に従って2種類の有機発光デバイスを作製した。これらのデバイスを、インジウムスズ酸化物(即ちITO)でプレコートされたガラス基板の上に作製した(アプライド・フィルムズ(Applied Films))。ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDOT))(バイエル社(Bayer Corporation))の厚さ約65nmの層を、スピンコーティングによって紫外線−オゾン処理済みITO基板の上に堆積させた。この層を空気中、180℃で30分間ベーキングした。PEDOTで被覆したITO基板を、水分及び酸素の存在が1ppm未満である雰囲気管理型(controlled−atmosphere)グローブボックスの中に入れた。このPEDOT層の上に青色発光ポリマー(アメリカン・ダイ・ソース社(American Dye Source,Inc.)、ケベック、カナダ国、製のADS329BE)の厚さ約70nmの層をスピンコートした。カソード材料を2×10−6トルの真空で加熱蒸発させた。1つの例では、カソードは、4nmのNaFに続いて100nmのAlで構成して2層のカソードを得た;もう1つの例では、カソードは、4nmのNaFに続いてNaFとAlが1:2の比の混合物で厚さ約30nmに構成し、次に厚さ100nmのAl層で被覆して3層カソードを得た。デバイスは、エポキシ封止ガラススライドを使って封入した。有機発光デバイスの電流−電圧特性は、プログラム化したケイスレイ(Keithley)236光源測定装置で測定した。輝度は、ミノルタ(Minolta)輝度計(型式LS−110)で測定した。3層カソード付きデバイスは、2層カソード付きデバイスと比較すると、効率ばかりでなく、類似の電流−電圧特性も実証することが判った。2層カソードに必要な厳密な厚さ管理は、3層カソードに対する要求事項ではないことが結論づけられた。2層カソード及び3層カソードを形成する化合物及び金属に対して、(i)金属が化学的に(第1層及び/又は混合物の中の)化合物を還元して中性Naを遊離し、これが有機材料をドーピングする、及び(ii)第1化合物層も下地有機材料を保護し、アルミニウムのような反応性金属によって引起される僅かな損傷の可能性も減らすような作用メカニズムが発現するようであることも結論づけられた。
【0033】
本明細書の中で本発明の幾つかの特徴だけを図示し説明してきたけれども、当業者には多くの修正及び変更が見出されるであろう。従って、添付の特許請求の範囲が、本発明の真の精神の範囲内に含まれるそのような修正及び変更全てを対象に含むために意図されることが理解されるであろう。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による多層カソードの1つの実施態様の略図である。
【図2】本発明による多層カソードのもう1つの実施態様の略図である。
【図3】本発明による多層カソードの第3の実施態様の略図である。
【図4】本発明による多層カソードの第4の実施態様の略図である。
【図5】本発明による有機電子デバイスの1つの実施態様の略図である。
【図6】本発明による有機電子デバイスのもう1つの実施態様の略図である。
【図7】本発明による有機電子デバイスの第3の実施態様の略図である。
【図8】本発明による有機電子デバイスの第4の実施態様の略図である。
【符号の説明】
【0035】
10 多層カソード
12 導電層
16 導電性金属層
20 有機電子デバイス
22 電気活性有機層
24 アノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)導電層であって、前記導電層はバスとして電気的に接続されていること;
(b)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源を含む層;及び
(c)少なくとも1種の導電性金属種を含む導電性金属層、
を含むことを特徴とする多層カソード。
【請求項2】
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンの前記供給源が、式:

(式中、Mは、各使用時毎に独立してアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニド金属イオンであり、及びXは、各使用時毎に独立して水酸化物、酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜リン酸塩、亜燐酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩、過塩素酸塩、パークロライト(perchlorite)、BF、PF、ホスホン酸塩、スルホン酸塩、ホウ酸、炭酸塩、炭酸水素塩、及び有機カルボン酸塩から成る群から選ばれるアニオンであり、並びにn及びmは、独立して1〜約20の整数である)
を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の多層カソード。
【請求項3】
前記導電層(a)が、インジウム−スズ酸化物、金、銀、アルミニウム、白金、クロム、パラジウム、又はそれの混合物のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の多層カソード。
【請求項4】
前記導電性金属層(c)が、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、白金、銀、金、水銀、コバルト、銅、ニッケル、ガリウム、炭素、又はそれの組み合わせ物のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の多層カソード。
【請求項5】
前記層(b)が、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源を含み、更に、少なくとも1種の導電性金属を含み、前記導電性金属は層(c)の導電性金属種と同じか又は異なることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の多層カソード。
【請求項6】
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源を含む層(b);
少なくとも1種の導電性金属種を含む導電性金属層(c);
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源、及び少なくとも1種の導電性金属を含む層(b’)であって、前記導電性金属は層(c)の導電性金属種と同じか又は異なること、
を含むことを特徴とする多層カソード。
【請求項7】
層(b)及び層(b’)の中に存在しているアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンの前記供給源が同じでも又は異なってもよく、且つ式:

(式中、Mは、各使用時毎に独立してアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニド金属イオンであり、及びXは、各使用時毎に独立して水酸化物、酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜リン酸塩、亜燐酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩、過塩素酸塩、パークロライト(perchlorite)、BF、PF、ホスホン酸塩、スルホン酸塩、ホウ酸、炭酸塩、炭酸水素塩、及び有機カルボン酸塩から成る群から選ばれるアニオンであり、並びにn及びmは、独立して1〜約20の整数である)
を有することを特徴とする特許請求の範囲第6項に記載の多層カソード。
【請求項8】
前記導電性金属層(c)が、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、白金、銀、金、水銀、コバルト、銅、ニッケル、ガリウム、炭素、又はそれの組み合わせ物のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする特許請求の範囲第6項に記載の多層カソード。
【請求項9】
(i)多層カソードであって;前記カソードが:
(a)導電層であって、前記導電層はバスとして電気的に接続されていること;
(b)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源を含む層;及び
(c)少なくとも1種の導電性金属種を含む導電性金属層、
を含むこと;
(ii)少なくとも1種の電気活性有機層;並びに
(iii)アノードであって、前記アノードは前記導電性金属層に電気的に接続されていること、
を含むことを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項10】
(i)多層カソードであって;前記カソードが:
(a)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源を含む層;
(b)少なくとも1種の導電性金属種を含む導電性金属層;及び
(c)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はランタニドイオンのうちの少なくとも1種の供給源、及び少なくとも1種の導電性金属を含む層であって、前記導電性金属は層(c)の導電性金属種と同じか又は異なること;
(ii)少なくとも1種の電気活性有機層;並びに
(iii)アノードであって、前記アノードは前記導電性金属層に電気的に接続されていること、
を含むことを特徴とする有機電子デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−12821(P2006−12821A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180645(P2005−180645)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】