説明

有機電子発光装置

基板、第一の極性の電荷を有機発光層に注入するため前記基板上に配置された第一の電極、前記第一の極性の反対の第二の極性の電荷を有機発光層に注入するため前記第一の電極上に配置された第二の電極、前記第一の電極と前記第二の電極間に配置され、画素間隔Pを有する画素アレイを形成する有機発光層、および前記第二の電極上に配置された封止剤であって、前記第二の電極が前記有機発光層により発せられた光を透過させ、光学構造は封止剤中に供給され、前記第二の電極および前記封止剤は前記光学構造が前記発光層からの距離Dであって、画素間隔Pの半分未満の距離Dに存在するような厚さとなるよう構成される有機電子発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電子発光装置、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード装置は、例えば、PCT/WO/13148およびUS4539507から知られている。これらの装置は一般に、基板2、第一の極性の電荷を注入するため基板2上に配置された第一の電極4、前記第一の極性の反対の第二の極性の電荷を注入するため第一の電極4上に配置された第二の電極6、第一の電極と第二の電極間に配置された有機発光層8、および第二の電極6上に配置された封止剤10から構成される。図1に示した一の配置において、基板2および第一の電極4はそれを通して通過するために有機発光層8により発せられる光を透過させる。図2に示した他の配置においては、第二の電極6および封止剤10がそれを通して通過するために同様に有機発光層8により発せられる光を透過させる。
【0003】
前述した構造の変形が知られている。第一の電極をアノード、第二の電極をカソードとすることができる。あるいは第一の電極をカソード、第二の電極をアノードとすることもできる。電荷の注入および輸送を補助するため、さらなる層を電極と有機発光層との間に提供することもできる。有機発光層における有機材料は低分子、デンドリマーまたはポリマーから構成することができ、りん光の部分、および/または蛍光の部分から構成することができる。発光層は、発光部分、電子輸送部分および正孔輸送部分を含む材料の混合から構成することができる。これらは単分子または別個の分子により提供されうる。
【0004】
前述した型の装置の配列を提供することにより、多数の発光している画素から成るディスプレイを形成することができる。画素は単色のディスプレイを形成するために同様の型にすることができ、または多色のディスプレイを形成するために異なる色にすることができる。
【0005】
有機電子発光装置における問題点は、有機発光層における有機発光材料により発せられる光の大部分が装置から出ていかないことである。その光は装置中で散乱、内部反射、導波、吸収などにより消滅している可能性がある。
【0006】
装置から出ていく光量を増加させるひとつの方法として、マイクロレンズアレイであって、光が装置から出て行くのを補助するため、有機電子発光装置の発光している画素と合わせたアレイのそれぞれのレンズを提供する方法がある。
【0007】
有機電子発光装置においてマイクロレンズを使用した一例は、WO03/007663において開示されており、この文献においては、マイクロレンズアレイは装置の発光構造に向かって基板の反対側に提供されている。
【0008】
JP2002−216947は、装置の発光構造に向かって基板の反対側に備えられているマイクロレンズシートから構成される有機電子発光装置を開示している。
【0009】
JP2002−184567は、マイクロレンズ構造を有し、その上装置の発光構造に向かって基板の反対側に備えられている透明な基板から構成される有機電子発光装置を開示している。
【0010】
EP1275513は、インクジェット印刷によりマイクロレンズを形成することを開示している。
【0011】
JP2003−291406およびJP2003−257627は、マイクロレンズの膜を組立て式に作成すること、およびマイクロレンズの膜を有機電子発光装置に接着性の樹脂を用いて接着させることを開示している。
【0012】
US6,468,590は、シロキサン膜の封止剤から構成される有機発光装置を開示している。また本文献は、レンズは封止剤膜に組み込むことができる、あるいは、エンボス加工の方法によりレンズがシロキサン膜中に直接形成できることも開示している。
【0013】
装置から出ていく光量を増加させる他の方法として、装置の観察方向に光を反射するため、反射層を提供する方法がある。このような反射層としては、例えばコーナーキューブアレイから構成される再帰反射器がその一例である。この光学構造は、どのような光もその来た方向に反射させることで機能し、その結果、入射した特定のコーナーキューブの中心と反対の方向に空間的に移動させる。もしコーナーキューブ構造が十分に小さければ、空間的な移動はごくわずかである。
【0014】
US2002/0043931は、その上に配置された再帰反射器を有する基板から構成される有機電子発光装置を開示している。
【特許文献1】米国特許公開2002/0043931号
【特許文献2】米国特許6,468,590号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述の配置に関する問題として、光学構造が望ましくない光学上の副作用を引き起こす可能性があることがある。例えば、観察角度を変化させるにつれて、望ましくない光学上の効果が光学構造の存在により導入され、その結果、例えば観察角度により明るさの変化が生じる。この現象は図3に図解してあり、図3は基板24の一方の上にある多数の発光している画素26、およびそれぞれが画素に対応して整列した多くのマイクロレンズ22から構成されるディスプレイを示している。観察者20がディスプレイに対して観察角度Θが増大するように移動する場合、発光している画素間にマイクロレンズの焦点がある時に光強度は低下する。マイクロレンズの焦点が異なる画素上にある時に光強度が増大する。すなわち、発光している画素から装置の平面に対して垂直方向に距離を置いて配置したマイクロレンズアレイにより、画素から発せられた光は装置の平面に対して平行方向に伝播する可能性があり、さらにその光はディスプレイにおいて光学上の欠陥につながる異なる画素に対応するマイクロレンズを通って出ていく可能性がある。これらの光学上の欠陥は観察角度が変化するときに特に明白である。
【0016】
本発明の目的の一つは上述した問題を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第一の側面によれば、基板、第一の極性の電荷を注入するため基板上に配置された第一の電極、第一の極性の反対の第二の極性の電荷を注入するため第一の電極上に配置された第二の電極、第一の電極と第二の電極間に配置され、画素間隔Pを有する画素アレイを形成している有機発光層、および第二の電極上に配置された封止剤であって、第二の電極は有機発光層により発せられる光を透過させ、光学構造は封止剤中に供給され、前記第二の電極および前記封止剤は、光学構造が発光層からの距離Dであって、画素間隔Pの半分未満の距離Dに存在するような厚さとなるよう構成される有機電子発光装置が提供される。
【0018】
画素間隔Pは一の画素の中心から隣接する画素の中心までの距離である。
【0019】
好ましくは距離Dは画素間隔Pの1/3未満である。より好ましくは距離Dは画素間隔Pの1/4未満である。より好ましくは距離Dは画素間隔Pの1/6未満である。より好ましくは距離Dは画素間隔Pの1/8未満である。いくつかの応用においては、距離Dは画素間隔Pの1/10未満となりうる。画素間隔Pに対する距離Dの特定の比率は、必要とされているディスプレイの型次第である。例えば、あるディスプレイには狭い観察角度しか要求されず、それにより請求の範囲の上部のD:Pの比が選択されうる、すなわち距離Dは画素間隔の1/2に近づく。さらに、低コントラストのディスプレイは距離Dが画素間隔の1/2に近付くことで提供されうる。広い観察角度のディスプレイおよび/または高コントラストのディスプレイには、距離Dは画素間隔Pの1/2よりはるかに小さく製作される可能性がある。
【0020】
本発明者は、前述の光学上の副作用が発光画素アレイの画素間隔および発光アレイからの光学構造の距離のどちらにも依存することを発見した。すなわち、P:D比こそが重要であるということである。画素アレイの画素間隔に比して発光している画素アレイに近接した光学構造を提供することにより、光学上の副作用は最小となり、その一方で装置からの光の出力が増大する。
【0021】
一般に、本発明者は発光している画素アレイに近接した光学構造を提供することが有利であることを発見した。本発明者は発光している画素アレイから50ミクロン未満の光学構造を提供できることを発見した。実際に、本発明者は発光している画素アレイから10ミクロン未満、1ミクロン未満、および100nm未満の光学構造を提供できることを発見した。しかしながら画素間の不鮮明さは、いくつかの応用において各画素の境界が見えるのを防止するため、有利となりうることが発見されている。したがって、いくつかの応用において、距離Dは画素の間隔幅の1/100、1/50、1/20、および1/10より大きい方が好ましい可能性がある。したがって、前述のP:Dの比の上限とこれらの下限を組み合わせることにより、ディスプレイの型(高または低コントラスト;広いまたは狭い観察角度)によって製作するために好ましい範囲に達することができる。
【0022】
巨大なスクリーンディスプレイにおいて1mmといった非常に大きな画素間隔に関して、光学構造は、問題となる十分な大きさの光学上の副作用を受けることなく、画素配列から比較的大きな距離をもって配置されることができる。しかし、100ミクロンといったより小さな画素間隔に関しては、問題となる十分な大きさの光学上の副作用を避けるためには、光学構造は画素アレイに近接して、すなわち50ミクロン未満に配置されなければならない。
【0023】
ひとつの配置において、基板、第一の電極、および第二の電極は有機発光層により発せられた光を透過させる。透明な封止剤と組み合わせると、この配置は完全に透明な装置構造となる。
【0024】
好ましくは第一の電極はアノード、第二の電極はカソードである。
【0025】
カソードはアルミニウムの層の上にバリウムの層を含むことができる。これらの各層は好ましくは10nm未満の厚さで、さらに好ましくは約5nmの厚さである。この配置は、良い電気的性質を持ち、その一方で透明なカソードを提供する。さらにカソードは、装置における他の構成材と逆に反応しない。代わりのカソードは銀の層の上にバリウムの層を用いる。これらの各層は好ましくは10nm未満の厚さで、さらに好ましくは約5nmの厚さである。このカソードは前述のバリウム/アルミニウムの配置よりもさらに透明である。
【0026】
封止剤はポリマーや誘電体の交互堆積層を含むことができる。これは湿度および酸素の進入に対してよいバリアを提供することが示されている。
【0027】
封止剤は内側の部分(発光層と同じ側)および外側の部分(発光層の反対側)を含むことができ、前記内側の部分は一あるいは複数の無機材料の層を含み、前記外側の部分は内部に光学構造を有している層を含む。多様な無機材料が内側の部分に用いられうる。酸化金属はひとつの好ましい例である。特に、屈折率整合層を形成している高屈折率の誘電体層は、光の透過を増強するために用いられうる。外側の部分は、好ましくはラッカー材料から作られる。ラッカー材料は、好ましくは紫外線硬化性である。外側の部分は好ましくは成型できる材料から作られる。内側の部分は、前述のようにポリマーおよび誘電体層の交互堆積層を含むことができる。
【0028】
前述の封止剤の構造は、湿度および酸素の進入を防止する内側の部分、および、光学構造を提供するに適した外側の層を提供する。外側の層は湿度および酸素の進入を防止することを補助することができ、封止剤に物理的な強度を与える。内側の層は、光の出力を改善するために屈折率を整合させることができる。内側の部分の厚さは画素間隔に依存することができる。しかし、良好な透過であるためには、一般に、薄い(たとえば10マイクロ未満、より好ましくは5マイクロ未満)。ラッカーは、発光アレイの画素間隔に従って適した深さに提供されている光学構造により、何百ミクロンの厚さとすることができる。
【0029】
光学構造は、凹凸面、回折構造、マイクロレンズアレイ、プリズムアレイ、フレネルレンズアレイ、および再帰反射器のうちのひとつとすることができる。任意に、光学構造は封止剤中に組み込まれる。光学構造は、装置からの光の出力をさらに増大するため、粗面を有することができる。
【0030】
第二の電極層および発光層間に電荷輸送層が提供され、前記電荷輸送層は、前述のように画素間隔に比較して光学構造が発光層に近接近することにより厚さを有する。電荷輸送層が装置の性能を改善できることが知られている。しかし、本発明の実施態様に従って、層の厚さは最適化されることができ、その結果、光学構造は最適なディスプレイとなるように配置される。前述のように、層の厚さは発光アレイの画素間隔に依存するものである。
【0031】
本発明者は、先行技術の配置により生じる望ましくない光学上の副作用は、光学構造が発光アレイの画素間隔に比して発光層から離れた間隔に存在する結果であることを発見した。本発明の実施態様は、装置の発光層に近接近して配置された光学構造を提供することにより、この問題を解決する。発光層に近接近した光学構造を提供することにより、発光層と光学構造間でのいかなる散乱、内部反射、吸収等は最小となる。これは装置から出て行く光の割合を増大させる結果となる。さらに、先行技術の配置において生じている望ましくない光学上の効果を回避することができる。
【0032】
本発明の第二の側面によれば、第一の極性の電荷を注入するため基板上に第一の電極を蒸着し、画素間隔Pを有する画素アレイを形成している有機発光層を第一の電極上に蒸着し、第一の極性の反対の第二の極性の電荷を注入するため第一の電極上に第二の電極を蒸着し、第二の電極上に封止剤を蒸着し、封止剤において光学構造を提供し、ここで、第二の電極は発光層により発せられた光を透過させ、第二の電極および封止剤は光学構造が発光層からの距離Dであって、画素間隔Pの半分未満の距離Dとなるような厚さをもたせて蒸着される工程から成る有機発光ダイオード装置の製造方法を提供する。
【0033】
好ましくは、光学構造はエンボス加工、印刷、またはエッチング加工により提供される。
【0034】
もし光学構造がエンボス加工されたなら、封止剤は、その中に光学構造をエンボス加工するために熱により、または配置した後の溶媒の適用により軟化されうる。あるいは、封止剤は蒸着されることができ、エンボス加工の型は封止剤の硬化の前に適用される。
【0035】
一つの好ましい方法において、紫外線を透過させるエンボス加工のモールドはエンボス加工の工程のために使用され、封止剤は、封止剤に適用した時のエンボス加工のモールドを通過する紫外線の照射により硬化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の実施態様は、ほんの一例として添付図面を参照して記載されることができる。
【0037】
図4は、基板40、第一の極性の電荷を注入するため基板40上に配置された第一の電極42、第一の極性の反対の第二の極性の電荷を注入するため第一の電極42上に配置された第二の電極44、第一の電極と第二の電極間に配置され画素間隔Pを有する画素アレイを形成している有機発光層46、および第二の電極44上に配置された薄膜の封止剤48であって、第二の電極44は有機発光層46により発せられる光を透過させ、光学構造50は薄膜の封止剤48において提供され、第二の電極44および薄膜の封止剤48は、光学構造50が発光層46からの距離Dであって、画素間隔Pの半分未満の距離Dに存在するような厚さとなるよう構成される本発明の実施態様を示している。
【0038】
図4に図解した実施態様において、光学構造50はマイクロレンズアレイである。各マイクロレンズは装置の発光層の対応している画素上に配置されている。
【0039】
第一の電極42はアノードが好ましい。アノードはITOから製造することができる。第二の電極44はカソードが好ましい。カソードは、電子発光層に電子を注入できる機能を有する金属から選択される。カソードと電子発光材料間の不利な相互作用の可能性などのように、他の要素はカソードの選択に影響を及ぼす。アルミニウムの層のように単一の金属を含む、または代わりに多くの金属、たとえばWO98/10621に開示されたカルシウムとアルミニウムの二層や、WO98/57381、Appl.Phys.Lett.2002,81(4),634、およびWO02/84759に開示された元素バリウム、または電子注入を補助する誘電体、たとえばWO00/48258に開示されたフッ化リチウムやAppl.Phys.Lett.2001,79(5),2001に開示されたフッ化バリウムの薄層から構成される、多様なカソード構造が知られている。装置に効率的な電子の注入を提供するため、カソードは好ましくは3.5eV未満の、より好ましくは3.2eV未満の、もっとも好ましくは3eV未満の作業機能を有する。
【0040】
本発明の実施態様において、カソードは透明であることが必要である。一つの好ましい透明なカソードは、各層が約5nmの厚さのバリウムの層およびその上に銀の層を利用する。
【0041】
光学装置は湿度および酸素に敏感に反応する傾向がある。したがって、基板は湿度および酸素の進入を防ぐバリアの性質を有することが好ましい。基板は一般にガラスであるが、特に装置の柔軟性が望ましいところでは代わりの基板も使用されうる。たとえば、代替のプラスチックの基板およびバリア層を開示しているUS6268695のようにプラスチックから、またはEP0949850に開示されているように薄いガラスおよびプラスチックの積層板から、基板は構成されうる。
【0042】
装置は、湿度および酸素の進入を防止するため、封止剤により封止される。適当な封止剤は、たとえばWO01/81649にて開示されているような、ポリマーと誘電体の交互堆積層のように、適当なバリアの性質を有する膜を含む。基板や封止剤を通して浸透するいかなる大気中の湿度および/または酸素の吸収のためのゲッタ材料は、基板と封止剤の間に配置されうる。
【0043】
電極層、有機発光層、および薄膜の封止剤は蒸着されることができ、またはたとえばスピンコーティングやインクジェット蒸着により溶液処理されることができる。
【0044】
非常に薄い第二の電極および非常に薄い封止剤を提供することにより、封止剤において提供される光学構造は、発光層46からの距離Dであって、画素間隔Pの半分未満の距離D以内に提供される。
【0045】
図5は、マイクロレンズ構造を包含しない等価な装置に比較して、図4に図解したようなマイクロレンズ構造を包含する有機発光装置のモデリング結果を図解したグラフを示している。画素間隔0.3mmであり、曲率半径は0.3mmである。200万の光線を追跡した。
【0046】
装置からの光の出力の大幅な増加は、大きな観察角度であっても示されている。さらに、マイクロレンズを発光層から遠くに配置している従来技術の配置によるような、観察角度の増大に伴う光強度の周期的な低下は観察されない。
【0047】
もう一つの配置が図6に図解されており、その配置は、基板60、第一の極性の電荷を注入するため基板60上に配置された第一の電極62、第一の極性の反対の第二の極性の電荷を注入するため第一の電極62上に配置された第二の電極64、第一の電極と第二の電極間に配置され画素間隔Pを有する画素アレイを形成している有機発光層66、および第二の電極64上に配置された薄膜の封止剤68であって、基板60、第一の電極62、および第二の電極64が、有機発光層66により発せられる光を透過させ、再帰反射器70は薄膜の封止剤68中に提供され、第二の電極64および薄膜の封止剤68が、再帰反射器70が発光層66からの距離Dであって、画素間隔Pの半分未満の距離Dに存在するような厚さとなるよう構成されている。
【0048】
再帰反射器は、透明な装置構造(つまり透明な基板および電極)の使用および再帰反射層を通した光の出力の最小限の損失によって、ディスプレイを強調するコントラストを作り出す。
【0049】
上端または下端が発光しているかを問わず、コントラストは、不透明な電極が反射しているように、標準的な装置では悪い。円偏光子の使用は、55%から60%の発光の減少を犠牲として反射を除去する。黒い層は電極上に提供されうるが、50%から55%の発光を犠牲とする。
【0050】
図6に示した実施態様は、完全に透明な装置構造、および別名再帰反射器として知られているコーナーキューブのパターン模様のある光学構造を使用する。光学構造は、どのような光もその来た方向に反射させることで機能し、入射した特定のコーナーキューブの中心と反対の方向に空間的に移動させる。もしもコーナーキューブ構造が十分に小さければ、空間的な移動はごくわずかである。
【0051】
ディスプレイが発する光は、観察者および後方のどちらにも向かって二方向に伝播するものである。後方の層において、入射光は由来する画素を通して再帰反射し、本来最初の場所においてその方向に発せられたかのように観察者に向かって通過するものである。光の損失はコーナーキューブの反射率(約10%の損失)と装置中での吸収の組み合わせとなる。もし、最悪の場合のように、発光層の両側から発せられた光が等しい(通常は不安定で、一方のより明るい方を直接に観察者に向かって方向付ける)ならば、光出力において30%の減少、または円偏光子からの全損失の半分という結果となるだろう。
【0052】
コーナーキューブシートは、再帰反射する性質によってコントラストを増大させる。再帰反射器を発光層に近接して配置することにより、望ましくない光学上の副作用につながり得る再帰反射器と発光画素間の吸収および散乱は最小となる。
【0053】
本発明の実施態様は、光学構造と第二の電極間に追加の接着性の層を必要としない装置を提供する。樹脂とカソード間に追加の層なしで樹脂がカソードを封止し、光学構造を形成するように、樹脂は蒸着され、成型され、硬化される。従来技術の配置における、樹脂と作成済みのマイクロレンズフィルム間の接触面での偏向の問題(光学的および物理学的の両方)は回避される。光学構造には作成済みの工程は必要ではなく、封止剤の硬化および光学構造の形成は一つの工程で実行することができる。
【0054】
本発明者は、この方法で非常に薄い薄膜の封止剤中で光学構造を形成できることを発見した。非常に薄い透明なカソードの使用と合わせると、これは発光層に近接近して提供される光学構造となる。
【0055】
作成済みのフィルムを構成するいくつかの先行技術の配置に関するさらなる問題は、シートのように、シートの伸縮/歪曲と、基板とプラスチック膜間で異なる熱膨張の組み合わせにより、膜が取り付けられたとき、画素上の膜において光学構造の正確な配列を確実にすることが難しいことである。その一方、本発明の実施態様に従って、ガラスの型でエンボス加工することは安定性と熱的整合を確実とし、非常に正確に整列した特性を作るために使用されうる。
【0056】
光学構造は、一時的な封止剤の軟化(一般に熱または溶媒を用いる)および薄膜の封止剤を優れた型でエンボス加工することにより形成される。もう一つの方法として、光学構造は、封止剤の硬化の前に、薄膜の封止剤においてエンボス加工されうる。特に好ましい実施態様において、紫外線硬化性ラッカーは薄膜の封止剤のために使用され、封止剤の最終硬化の間に、透明な型(例えばガラス)は、透明な型を通した紫外線の照射(必要であれば熱を加えて)により硬化されるラッカーをエンボス加工するため適用される。
【0057】
本発明者は、光学構造を薄い透明なカソード上に提供された非常に薄い封止剤中にエンボス加工することができることを発見した。好ましくは、薄膜の封止剤はアクリレートのように成型できる紫外線硬化性ラッカーである。薄膜の封止剤はエンボス加工用の潤滑剤を用いてエンボス加工される可能性がある。光学構造は、凹凸面、回折構造、プリズムアレイ、フレネルレンズアレイ、および再帰反射器等を含んでいる非平面構造である可能性がある。特定の光学構造は、装置の特定の使用により選択されうる。たとえば、広い角度での観察には、低硬化の光学構造が提供され、一方で狭い角度での観察には、高硬化の光学構造が提供される可能性がある。
【0058】
エンボス加工の工程の間、エンボス加工されている型/スタンプのきれいな剥離を確実にするため、剥離層が提供されうる。このような層の一例として、四フッ化炭素プラズマのようなフッ素化された層がある。
【0059】
本発明は好ましい実施態様を参照して特に示され、記載されたが、当業者により形式や構成要素において、特許請求の範囲により定義されたように発明の範囲から逸脱することなく多様な変更がなされる可能性があることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】公知の有機発光装置の構造を示している。
【図2】公知の有機発光装置の構造を示している。
【図3】有機発光装置における既知の光学配置についての問題を図解している。
【図4】本発明の実施態様に従って、有機発光装置を示している。
【図5】公知の有機発光装置と比較して、本発明の実施態様に従った有機発光装置のモデリング結果を示している。
【図6】本発明の他の実施態様に従った有機発光装置を示している。
【符号の説明】
【0061】
2 基板
4 第1電極
6 第2電極
8 有機発光層
10 カプセル材
20 観察者
22 マイクロレンズ
24 基板
26 発光画素
40 基板
42 第1電極
44 第2電極
46 有機発光層
48 カプセル材
50 光学構造
60 基板
62 第1電極
64 第2電極
66 有機発光層
68 薄膜カプセル材
70 再帰反射器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、第一の極性の電荷を有機発光層に注入するため基板上に配置された第一の電極、前記第一の極性の反対の第二の極性の電荷を有機発光層に注入するため第一の電極上に配置された第二の電極、第一の電極と第二の電極間に配置され、画素間隔Pを有する画素アレイを形成する有機発光層、および第二の電極上に配置された封止剤であって、前記第二の電極が有機発光層により発せられた光を透過させ、光学構造は封止剤中に提供され、前記第二の電極および前記封止剤は、前記光学構造が発光層からの距離Dであって、画素間隔Pの半分未満の距離Dに存在するような厚さとなるよう構成される有機電子発光装置。
【請求項2】
前記基板、前記第一の電極、および前記第二の電極が前記有機発光層により発せられた光を透過する請求項1に記載の有機電子発光装置。
【請求項3】
前記第一の電極がアノードであり、前記第二の電極がカソードである請求項1または2に記載の有機電子発光装置。
【請求項4】
前記カソードがバリウムの層および銀の層から構成される請求項3に記載の有機電子発光装置。
【請求項5】
前記バリウムおよび銀の各層が10nm未満の厚さである請求項4に記載の有機電子発光装置。
【請求項6】
前記封止剤が一または複数の無機材料の層から構成される内側部分と前記光学構造をその中に有する外側部分から構成される請求項1ないし5に記載の有機電子発光装置。
【請求項7】
前記外側部分がラッカー材料の層である請求項6に記載の有機電子発光装置。
【請求項8】
前記ラッカー材料が紫外線硬化性である請求項7に記載の有機電子発光装置。
【請求項9】
前記外側部分が成型できる材料から製造される請求項6ないし8のいずれかに記載の有機電子発光装置。
【請求項10】
前記光学構造が凹凸面、回折構造、マイクロレンズアレイ、プリズムアレイ、フレネルレンズアレイ、および再帰反射器のうちの1つであり、任意に前記光学構造が封止剤中に組み込まれた請求項1ないし9に記載の有機電子発光装置。
【請求項11】
電荷輸送層が前記第二の電極と前記発光層の間で提供されるものであって、前記電荷輸送層は前記光学構造が発光層から距離Dであって、画素間隔Pの半分未満の距離Dに存在することにより前記電荷輸送層が厚さを有する請求項1ないし10に記載の有機電子発光装置。
【請求項12】
第一の極性の電荷を注入するため基板上に第一の電極を蒸着し、画素間隔Pを有する画素アレイを形成している前記有機発光層を前記第一の電極上に蒸着し、前記第一の極性の反対の第二の極性の電荷を注入するため前記有機発光層上に第二の電極を蒸着し、第二の電極上に封止剤を蒸着する工程を含む有機電子発光装置の製造方法において、封止剤中に光学構造を供給するものであって、前記第二の電極は透明であり、前記第二の電極および前記封止剤は前記光学構造が発光層からの距離Dであって、画素間隔Pの半分未満の距離Dに存在するような厚さとなるよう蒸着される工程から構成される有機電子発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記光学構造がエンボス加工、印刷、またはエッチング加工により提供される請求項12に記載の有機電子発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記光学構造をエンボス加工するため、蒸着後に前記封止剤が熱または溶媒の適用により軟化される請求項13に記載の有機電子発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記封止剤が蒸着され、前記封止剤の硬化の前にエンボス加工の型が適用される請求項13に記載の有機電子発光装置の製造方法。
【請求項16】
紫外線を透過するエンボス加工の型が前記エンボス加工の工程で使用され、前記封止剤に適用するときに前記エンボス加工の型を透過した紫外線の照射により前記封止剤が硬化される請求項13ないし15のいずれかに記載の有機電子発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−525955(P2008−525955A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547610(P2007−547610)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004616
【国際公開番号】WO2006/067368
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【Fターム(参考)】