説明

有機電界発光素子、および有機電界発光素子の製造方法

【課題】前面発光構造において、下部電極であるアノードを単一の金属層で形成することができる有機電界発光素子、および有機電界発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】基板300と、基板300上に位置しかつ金属を含むアノード380と、アノード380上に位置する金属フッ化膜385と、金属フッ化膜385上に位置しかつ少なくとも有機発光層を含む有機膜層400と、有機膜層400上に位置するカソード410とを含む有機電界発光素子が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子、および有機電界発光素子の製造方法に関し、より詳細には、前面発光構造において、下部電極であるアノードを単一の金属層で形成することができる有機電界発光素子、および有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、陰極線管(cathode ray tube)のような従来の表示素子の短所を解決するものとして、液晶表示装置(liquid crystal display device)、有機電界発光装置(organic electroluminescence device)またはPDP(Plasma Display Panel)などのような平板型表示装置(flat panel display device)が注目されている。
【0003】
上記液晶表示装置は、自発光素子でなく、受光素子であるから、コントラスト、視野角および大面積化などに限界がある。また、PDPは、自発光素子ではあるが、他の平板型表示装置に比べて、重さが重くて、消費電力が高いだけでなく、製造方法が複雑であるという問題点がある。
【0004】
一方、有機電界発光装置は、自発光素子であるから、視野角、コントラストなどに優れており、バックライトが不要なので、軽量および薄形化が可能であり、かつ消費電力の側面においても有利である。また、直流の低電圧駆動が可能であり、応答速度が速く、全て固体であるため、外部衝撃に強く、また、使用温度範囲も広いだけでなく、製造方法が単純であり、かつ安価であるという長所を有する。
【0005】
図1は、従来の有機電界発光素子を示す断面図である。図1を参照すると、従来の有機電界発光素子では、プラスチックまたは絶縁ガラスからなる基板100上にバッファ層110が形成され、バッファ層110上に半導体層120が形成される。また、半導体層120上にはゲート絶縁膜130が形成される。
【0006】
次に、ゲート絶縁膜130上に、半導体層120領域の一部に対応するようにゲート電極140が形成され、ゲート電極140上には層間絶縁膜150が形成される。
【0007】
その後、従来の有機電界発光素子では、層間絶縁膜150およびゲート絶縁膜130をエッチングしてコンタクトホールが形成され、層間絶縁膜150上にソースおよびドレイン電極161、162が形成される。また、ソースおよびドレイン電極161、162は、コンタクトホールを介して半導体層120に連結される。
【0008】
次に、従来の有機電界発光素子では、基板100上に平坦化膜170が形成される。また、平坦化膜170がエッチングされることにより、ソースおよびドレイン電極161、162のいずれか一方に連結されるビアホールが形成され、平坦化膜170上に、反射膜180を含むアノード185が形成される。この際、反射膜180としては、Al、Agまたはこれらの合金を使用することができ、アノード185としては、ITOまたはIZOを使用することができる。
【0009】
アノード185は、コンタクトホールを介してソースおよびドレイン電極161、162のいずれか一方に連結される。
【0010】
その後、従来の有機電界発光素子では、基板100上に画素定義膜190が形成され、画素定義膜190がエッチングされることにより、アノード185が露出される。次に、従来の有機電界発光素子では、露出されたアノード185上に有機膜層200が形成される。ここで、有機膜層200は、少なくとも発光層を含み、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および電子注入層をさらに含むことができる。
【0011】
その後、従来の有機電界発光素子では基板100の全面にカソード210が形成され、従来の有機電界発光素子が完成する。
【0012】
従来の有機電界発光素子のアノードは、メタルからなる反射膜と、反射膜の上部に透明導電膜とが積層されている構造である。上記のような構造では、下部の反射膜が光を反射させる役割を果たし、上部の透明導電膜が正孔の注入障壁を減少させる役割を果たす。
【0013】
【特許文献1】韓国特許公開2004−0066724号
【特許文献2】韓国特許公開2003−0001735号
【特許文献3】特開2004−241360号公報
【特許文献4】特開2003−077681号公報
【特許文献5】特開2002−270369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の有機電界発光素子では、反射膜と透明導電膜との間の界面での相互作用による暗点発生と、上部の透明導電膜が有する屈折率に起因して発光された光の放出量が減少するという問題点がある。
【0015】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、前面発光構造において、下部電極であるアノードを単一の金属層で形成することが可能な、新規かつ改良された有機電界発光素子、および有機電界発光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点によれば、基板と、上記基板上に位置し、かつ金属を含むアノードと、上記アノード上に位置する金属フッ化膜と、上記金属フッ化膜上に位置し、かつ少なくとも有機発光層を含む有機膜層と、上記有機膜層上に位置するカソードとを含む有機電界発光素子が提供される。
【0017】
また、上記アノードは、ソースおよびドレイン電極のいずれか一方とオーミック接触する補助電極層をさらに含むとしてもよい。
【0018】
また、上記補助電極層は、ITO、IZOおよびZnOよりなる群から選ばれた1つを使用するとしてもよい。
【0019】
また、上記金属は、Ag、Ag合金、Al、Al合金、Au、Pt、CuまたはSnよりなる群から選ばれた1つを使用するとしてもよい。
【0020】
また、上記アノードは、500〜2000Åの厚さで形成されるとしてもよい。
【0021】
また、上記金属フッ化膜は、1〜1.5nmの厚さで形成されるとしてもよい。
【0022】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の観点によれば、基板を用意する段階と、上記基板上にアノードを形成する段階と、上記アノードを表面処理して、金属フッ化膜を形成する段階と、上記金属フッ化膜上に、少なくとも有機発光層を含む有機膜層を形成する段階と、上記有機膜層上にカソードを形成する段階とを含む有機電界発光素子の製造方法が提供される。
【0023】
また、上記アノードを形成する前に、ソースおよびドレイン電極とオーミック接触する補助電極層を形成する段階をさらに含むとしてもよい。
【0024】
また、上記補助電極層は、ITO、IZOおよびZnOよりなる群から選ばれた1つを使用するとしてもよい。
【0025】
また、上記表面処理は、プラズマ法を使用するとしてもよい。
【0026】
また、上記プラズマ法は、CF3またはSF6をソースとして使用するとしてもよい。
【0027】
また、上記アノードは、Ag、Ag合金、Al、Al合金、Au、Pt、CuまたはSnよりなる群から選ばれた1つを使用するとしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、前面発光構造において、アノードを単一の金属層で形成することが可能となるので、発光効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0030】
(第1の実施形態)
図2〜図4は、本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【0031】
図2を参照すると、本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子は、基板300を備える(すなわち、基板300が用意される。)。ここで、基板300は、例えば、絶縁ガラス、導電性基板またはプラスチックとすることができる。以下、本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子がどのようにして形成されるかについて、説明する。
【0032】
基板300上には、バッファ層310が形成される。ここで、バッファ層310は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはこれらの多重層とすることができる。バッファ層310上には、半導体層320が形成される。ここで、半導体層320は、例えば、非晶質シリコンまたは非晶質シリコンを結晶化した多結晶シリコンとすることができる。
【0033】
次に、基板300の全面には、ゲート絶縁膜330が形成される。ここで、ゲート絶縁膜330は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはこれらの多重層とすることができる。
【0034】
次に、ゲート絶縁膜330上には、半導体層320領域の一部に対応するようにゲート電極340が形成される。ここで、ゲート電極340は、例えば、Al、CuまたはCrなどを使用することができる。さらに、基板300の全面には、層間絶縁膜350が形成される。ここで、層間絶縁膜350は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはこれらの多重層とすることができる。
【0035】
その後、層間絶縁膜350およびゲート絶縁膜330がエッチングされることにより、半導体層320を露出させるコンタクトホール351、352が形成される。次に、層間絶縁膜350上にソースおよびドレイン電極361、362が形成される。ここで、ソースおよびドレイン電極361、362は、例えば、Mo、Cr、Al、Ti、Au、PdまたはAgよりなる群から選ばれた少なくとも1つを使用することができる。また、ソースおよびドレイン電極361、362は、コンタクトホール351、352を介して半導体層320に連結される。
【0036】
図3を参照すると、その後、基板300の全面に平坦化膜370が形成される。ここで、平坦化膜370は、例えば、ポリアクリル系樹脂(polyacrylates resin)、エポキシ樹脂(epoxy resin)、フェノール樹脂(phenolic resin)、ポリアミド系樹脂(polyamides resin)、ポリイミド系樹脂(polyimides resin)、不飽和ポリエステル系樹脂(unsaturated polyesters resin)、ポリフェニレン系樹脂(poly(phenylenethers) resin)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(poly(phenylenesulfide)resin)、およびベンゾシクロブテン(benzocyclobutene;BCB)よりなる群から選択された1つの物質を使用して形成することができる。
【0037】
また、平坦化膜370は、ソースおよびドレイン電極361、362のいずれか一方を露出させるビアホール371を備えることができる。
【0038】
その後、本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子では、反射特性がある導電物質を用いてアノード380が形成される。これは、従来、前面発光構造を採択する場合において、アノード電極が反射膜を含む透明導電性酸化膜である2層構造で形成されることによって、工程が複雑となり、アノード電極の形成物質が制限されるという短所があるからである。
【0039】
したがって、本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子では、反射特性がある導電物質でアノードを形成することによって、透明導電性膜の必要性が除去される。
【0040】
このとき、反射特性がある導電物質は、金属が好ましく、例えば、Ag、Ag合金、Al、Al合金、Au、Pt、CuまたはSnよりなる群から選ばれた少なくとも1つを使用することができる。また、アノード380は、基板300上に導電物質を積層しパターニングすることによって形成することができる。
【0041】
また、アノード380は、例えば、スパッタリングを使用して形成することが好ましい。また、アノード380は、適切な反射特性を示すことができるように、例えば、500〜2000Å以上の厚さを有するように形成することが好ましい。ここで、アノード380の厚さが500Åより小さい場合には、適切な反射特性を示すことが難しく、また、アノード380の厚さが2000Åより大きい場合には、膜ストレスが大きくなって、後続してアノード380の上部に積層される有機膜または下部の平坦化膜との接着力が低下する。
【0042】
ここで、本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子では、反射特性があるアノードを使用することによって、アノードとして作用し得る仕事関数条件を満足することができなくなる場合がある。
【0043】
したがって、本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子では、反射特性があるアノードの仕事関数を高めるために、アノードの上部に表面処理を行う。ここで、アノード380の表面処理は、例えば、フッ素を含むCF3またはSF6を用いてプラズマ法で表面処理を行うことが好ましい。
【0044】
例えば、アノード380にフッ素を含むCF3またはSF6を用いてプラズマ法で表面処理を行う場合には、アノード380の表面に金属フッ化膜385が形成される。ここで、金属フッ化膜385をなす分子は、金属とフッ素とが共有結合して、双極子モーメントを有するようになる。このとき、双極子モーメントは、正極から負極への方向性を有するようになり、これにより、正孔の注入障壁を効果的に低減することができる。双極子モーメントが大きい物質には、例えば、フッ素があり、フッ素を含むCF3またはSF6をプラズマ法のソースとして使用することができる。なお、プラズマ法のソースとして使用する物質が、フッ素に限られないことは、言うまでもない。
【0045】
ここで、金属フッ化膜385の厚さは、例えば、1〜1.5nmの厚さで形成することが好ましい。金属フッ化膜385の厚さが1nm以下の場合、注入された電荷がトンネリングをすることができない。また、1.5nm以上の場合、注入された電荷がトンネリングをすることはできるが、駆動電圧が上昇してしまうという問題点が発生する。
【0046】
したがって、アノード380上に、双極子モーメントが大きい、例えば、フッ素を含むCF3またはSF6を用いてプラズマ処理を行う場合に、アノードと正孔注入層との間に存在する正孔の注入障壁を減少させることができ、正孔の移動を容易に行わせることができる。
【0047】
上記のように、アノード380に対して、例えば、フッ素を含むCF3またはSF6を用いてプラズマ法で表面処理を行うことによって、アノードを単一の金属層で形成することができるので、発光効率が向上するという利点がある。
【0048】
図4を参照すると、その後、基板300の全面に画素定義膜390が形成される。画素定義膜390は、例えば、ポリアクリル系樹脂(polyacrylates resin)、エポキシ樹脂(epoxy resin)、フェノール樹脂(phenolic resin)、ポリアミド系樹脂(polyamides resin)、ポリイミド系樹脂(polyimides resin)、不飽和ポリエステル系樹脂(unsaturated polyesters resin)、ポリフェニレン系樹脂(poly(phenylenethers) resin)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(poly(phenylenesulfide) resin)、およびベンゾシクロブテン(benzocyclobutene;BCB)よりなる群から選択された少なくとも1つの物質を使用して形成することができる。また、このとき、アノード380を露出させる開口部が形成される。
【0049】
次に、画素定義膜390の開口部により露出されたアノード380上に有機膜層400が形成される。有機膜層400は、少なくとも発光層を含み、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層または電子注入層をさらに含むことができる。
【0050】
次に、基板300の全面にカソード410が形成される。ここで、カソード410は、例えば、Al、Ag、Mg、Au、CaまたはCrよりなる群から選ばれた少なくとも1つを使用することができる。
【0051】
本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子は、上述したようにして形成され、製造される。
【0052】
本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子は、上述したように、アノード380に、例えば、フッ素を用いてプラズマ法で表面処理を行うことによって、アノードを単一の金属層で形成することができるので、発光効率が向上するという利点がある。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る有機電界発光素子について説明する。図5〜図7は、本発明の第2の実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【0054】
図5を参照すると、本発明の第2の実施形態に係る有機電界発光素子は、基板500を備える(すなわち、基板500が用意される。)。ここで、基板500は、例えば、絶縁ガラス、導電性基板またはプラスチックとすることができる。以下、本発明の第2の実施形態に係る有機電界発光素子がどのようにして形成されるかについて、説明する。
【0055】
基板500上にはバッファ層510が形成される。ここで、バッファ層510は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはこれらの多重層とすることができる。バッファ層510上には半導体層520が形成される。ここで、半導体層520は、例えば、非晶質シリコンまたは非晶質シリコンを結晶化した多結晶シリコンとすることができる。
【0056】
次に、基板500の全面にはゲート絶縁膜530が形成される。ここで、ゲート絶縁膜530は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはこれらの多重層とすることができる。
【0057】
次に、ゲート絶縁膜530上には、半導体層520領域の一部に対応するようにゲート電極540が形成される。ここで、ゲート電極540は、例えば、Al、CuまたはCrなどを使用することができる。基板500の全面には層間絶縁膜550が形成される。ここで、層間絶縁膜550は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはこれらの多重層とすることができる。
【0058】
その後、層間絶縁膜550およびゲート絶縁膜530がエッチングされることにより、半導体層520を露出させるコンタクトホール551、552が形成される。次に、層間絶縁膜550上にはソースおよびドレイン電極561、562が形成される。ここで、ソースおよびドレイン電極561、562は、例えば、Mo、Cr、Al、Ti、Au、PdまたはAgよりなる群から選ばれた少なくとも1つを使用することができる。また、ソースおよびドレイン電極561、562は、コンタクトホール551、552を介して半導体層520に連結される。
【0059】
図6を参照すると、その後、基板500の全面には平坦化膜570が形成される。ここで、平坦化膜570は、例えば、ポリアクリル系樹脂(polyacrylates resin)、エポキシ樹脂(epoxy resin)、フェノール樹脂(phenolic resin)、ポリアミド系樹脂(polyamides resin)、ポリイミド系樹脂(polyimides resin)、不飽和ポリエステル系樹脂(unsaturated polyesters resin)、ポリフェニレン系樹脂(poly(phenylenethers) resin)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(poly(phenylenesulfide) resin)、およびベンゾシクロブテン(benzocyclobutene;BCB)よりなる群から選択された少なくとも1つの物質を使用して形成することができる。
【0060】
また、平坦化膜570は、ソースおよびドレイン電極561、562のいずれか一方を露出させるビアホール571を備えることができる。
【0061】
次に、平坦化膜570上には、透明導電物質が積層された後、パターニングされることにより、ソースおよびドレイン電極561、562のいずれか一方にオーミック接触するように補助電極層575が形成される。これにより、後続して形成されるアノードとソースおよびドレイン電極561、562との接触特性を向上させることができる。このとき、補助電極層575は、例えば、ITO、IZOまたはZnOよりなる群から選ばれた少なくとも1つを使用して形成する。
【0062】
その後、補助電極層575上に導電物質を積層しパターニングして、アノード580を形成する。ここで、アノード580は、反射特性がある導電物質として金属が好ましく、例えば、Ag、Ag合金、Al、Al合金、Au、Pt、CuまたはSnよりなる群から選ばれた1つを使用することができる。
【0063】
ここで、アノード580は、例えば、スパッタリングを使用して形成することが好ましい。また、アノード580は、適切な反射特性を示すことができるように、例えば、500〜2000Å以上の厚さを有するように形成することが好ましい。アノード580の厚さが500Åより小さい場合には、適切な反射特性を示すことが難しい。また、アノード580の厚さが2000Åより大きい場合には、膜ストレスが大きくなり、後続してアノード580の上部に積層される有機膜または下部の平坦化膜との接着力が低下するからである。
【0064】
ここで、本発明の第2の実施形態に係る有機電界発光素子では、反射特性があるアノードを使用することによって、アノードとして作用し得る仕事関数条件を満足することができなくなる場合がある。
【0065】
したがって、本発明の第2の実施形態に係る有機電界発光素子では、反射特性があるアノードの仕事関数を高めるために、アノードの上部に表面処理を行う。
【0066】
このとき、本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子と同様に、アノード580の表面処理は、例えば、フッ素を含むCF3またはSF6を用いてプラズマ法で表面処理を行うことが好ましい。
【0067】
アノード580に、例えば、フッ素を含むCF3またはSF6を用いてプラズマ法で表面処理を行う場合には、アノード580の表面に金属フッ化膜585が形成される。ここで、金属フッ化膜585をなす分子は、金属とフッ素とが共有結合して、双極子モーメントを有するようになる。このとき、双極子モーメントは、正極から負極への方向性を有するようになり、これにより、正孔の注入障壁を効果的に低減することができる。双極子モーメントが大きい物質には、例えば、フッ素があり、フッ素を含むCF3またはSF6をプラズマ法のソースとして使用することができる。なお、プラズマ法のソースとして使用する物質は、本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子と同様にフッ素に限られないことは、言うまでもない。
【0068】
ここで、金属フッ化膜585の厚さは、例えば、1〜1.5nmの厚さで形成することが好ましい。金属フッ化膜585の厚さが1nm以下の場合、注入された電荷がトンネリングをすることができず、また、1.5nm以上の場合には、注入された電荷がトンネリングをすることができるが、駆動電圧が上昇してしまうという問題点が発生する。
【0069】
したがって、アノード580上に、双極子モーメントが大きい、例えば、フッ素を含むCF3またはSF6を用いてプラズマ処理を行うするようになる場合に、アノードと正孔注入層との間に存在する正孔の注入障壁を減少させることができ、正孔の移動を容易に行わせることができる。
【0070】
上記のように、アノード580に対して、例えば、フッ素を含むCF3またはSF6を用いてプラズマ法で表面処理を行うことによって、アノードを単一の金属層で形成することができるので、発光効率が向上するという利点がある。
【0071】
図7を参照すると、その後、基板500の全面には画素定義膜590が形成される。ここで、画素定義膜590は、例えば、ポリアクリル系樹脂(polyacrylates resin)、エポキシ樹脂(epoxy resin)、フェノール樹脂(phenolic resin)、ポリアミド系樹脂(polyamides resin)、ポリイミド系樹脂(polyimides resin)、不飽和ポリエステル系樹脂(unsaturated polyesters resin)、ポリフェニレン系樹脂(poly(phenylenethers) resin)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(poly(phenylenesulfide) resin)、およびベンゾシクロブテン(benzocyclobutene;BCB)よりなる群から選択された少なくとも1つの物質を使用して形成することができる。また、このとき、アノード580を露出させる開口部が形成される。
【0072】
次に、画素定義膜590の開口部により露出されたアノード580上に有機膜層600が形成される。ここで、有機膜層600は、少なくとも発光層を含み、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層または電子注入層をさらに含むことができる。
【0073】
次に、基板500の全面にはカソード610が形成される。カソード610は、例えば、Al、Ag、Mg、Au、CaまたはCrよりなる群から選ばれた少なくとも1つを使用することができる。
【0074】
本発明の第2の実施形態に係る有機電界発光素子は、上述したようにして形成され、製造される。
【0075】
本発明の第2の実施形態に係る有機電界発光素子は、上記のように、アノード580に、例えば、フッ素を含むCF3またはSF6を用いてプラズマ法で表面処理を行うことによって、アノードを単一の金属層で形成することができるので、発光効率が向上するという利点がある。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】従来の有機電界発光素子を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
300 基板
310 バッファ層
320 半導体層
330 ゲート絶縁膜
340 ゲート電極
350 層間絶縁膜
351、352 コンタクトホール
361、362 ソースおよびドレイン電極
370 平坦化膜
380 アノード
385 金属フッ化膜
390 画素定義膜
400 有機膜層
410 カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と;
前記基板上に位置し、かつ金属を含むアノードと;
前記アノード上に位置する金属フッ化膜と;
前記金属フッ化膜上に位置し、かつ少なくとも有機発光層を含む有機膜層と;
前記有機膜層上に位置するカソードと;
を含むことを特徴とする、有機電界発光素子。
【請求項2】
前記アノードは、ソースおよびドレイン電極のいずれか一方とオーミック接触する補助電極層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記補助電極層は、ITO、IZOおよびZnOよりなる群から選ばれた1つを使用することを特徴とする、請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記金属は、Ag、Ag合金、Al、Al合金、Au、Pt、CuまたはSnよりなる群から選ばれた1つを使用することを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記アノードは、500〜2000Åの厚さで形成されることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記金属フッ化膜は、1〜1.5nmの厚さで形成されることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
基板を用意する段階と;
前記基板上にアノードを形成する段階と;
前記アノードを表面処理して、金属フッ化膜を形成する段階と;
前記金属フッ化膜上に、少なくとも有機発光層を含む有機膜層を形成する段階と;
前記有機膜層上にカソードを形成する段階と;
を含むことを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記アノードを形成する前に、ソースおよびドレイン電極とオーミック接触する補助電極層を形成する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記補助電極層は、ITO、IZOおよびZnOよりなる群から選ばれた1つを使用することを特徴とする、請求項8に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記表面処理は、プラズマ法を使用することを特徴とする、請求項7に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記プラズマ法は、CF3またはSF6をソースとして使用することを特徴とする、請求項10に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記アノードは、Ag、Ag合金、Al、Al合金、Au、Pt、CuまたはSnよりなる群から選ばれた1つを使用することを特徴とする、請求項7に記載の有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−165318(P2007−165318A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336633(P2006−336633)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】